(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118039
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】故障検出及び劣化推定装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20240823BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240823BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240823BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240823BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240823BHJP
H01M 8/04992 20160101ALI20240823BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240823BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240823BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/043
H01M8/04537
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/04992
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024209
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】日比野 良一
(72)【発明者】
【氏名】深谷 徳宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山田 直幸
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127AC13
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA08
5H127DB02
5H127DB03
5H127DB22
5H127DB23
5H127DB49
5H127DB50
5H127DB55
5H127DB63
5H127DB66
5H127DB69
5H127DB72
5H127DB74
5H127DB93
(57)【要約】
【課題】セル電圧が一時的な変動を繰り返す場合であっても、燃料電池の異常や故障を高精度に検出することが可能な故障検出及び劣化推定装置を提供すること。
【解決手段】時刻tにおける燃料電池のFC電流i(t)、第1セル電圧V
1(t)、第1特徴量X
1(t)、及び、第2特徴量X
2(t)を含む出力データを逐次取得する。次に、出力データの中から、i(t)が代表電流i
rである時の時刻t及び第1セル電圧V
1(t)を抽出し、これらを用いて代表I-V特性V
f(t,i
r)を算出する。次に、出力データの中から、i(t)が代表電流i
rである時の時刻t、第1特徴量X
1(t)、及び第2特徴量X
2(t)を抽出し、これらを用いて一時的なセル電圧の変動分Y
m(X
1,X
2)を算出する。次に、V
f(t,i
r)からY
m(X
1,X
2)を差し引くことにより、時刻tにおける平均I-V特性V
mean(t,i
r)を算出する。さらに、V
mean(t,i
r)に基づいて、燃料電池が故障又は劣化したか否かを判断する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた故障検出及び劣化推定装置。
(A)時刻tにおける燃料電池の
(a)FC電流i(t)、
(b)第1セル電圧V1(t)、
(c)第2セル電圧V2(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第1特徴量X1(t)、並びに、
(d)外気温T(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第2特徴量X2(t)
を含む出力データを逐次取得し、これらをメモリに記憶させる第1手段。
但し、「第1セル電圧V1(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧の内、前記燃料電池が間欠運転オフの状態にあるときのセル電圧をいう。
「第2セル電圧V2(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧をいう。
(B)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が代表電流irである時の前記時刻t及び前記第1セル電圧V1(t)を抽出し、これらを用いて代表I-V特性Vf(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第2手段。
(C)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が前記代表電流irである時の前記時刻t、前記第1特徴量X1(t)、及び前記第2特徴量X2(t)を抽出し、これらを用いて一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第3手段。
(D)前記Vf(t,ir)から前記Ym(X1,X2)を差し引くことにより、前記時刻tにおける平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第4手段。
(E)前記Vmean(t,ir)に基づいて、前記燃料電池が故障又は劣化したか否かを判断する第5手段。
【請求項2】
前記V2(t)と相関があるパラメータは、FC間欠運転フラグ、FCパワー、エア流量、エアコンプレッサのモータ回転数、水素ポンプの消費電力、水素ポンプの回転数、FC入口圧力(アノード)、EV冷却水ポンプの回転数、FC冷却水ポンプの回転数、FC用コンバータ電流、車両システムに対する要求パワー、車両システムに対する電流要求値、FC入口圧力(カソード)、アノードガス流量、エアコンプレッサの消費電力、FC発電状態、及び、A/C消費電力からなる群から選ばれるいずれか1以上を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【請求項3】
前記T(t)と相関があるパラメータは、ラジエータ出口の冷却水温度、エアコンプレッサーのモータ温度、エアコンプレッサーのインバータ温度、水素ポンプのモータ温度、FC出口冷却水温度、及び、各補機部品の温度からなる群から選ばれるいずれか1以上を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【請求項4】
前記第3手段は、次の式(2)を用いて前記Ym(X1,X2)を算出する手段を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
Ym(X1,X2)=a0+Σa1pX1(t)p+Σa2qX2(t)q …(2)
但し、
p、qは、それぞれ、1以上の整数、
a0、a1p、及びa2qは、それぞれ、前記代表電流irごとに同定される係数。
【請求項5】
前記第3手段は、ニューラルネットを用いて前記Ym(X1,X2)を算出する手段を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【請求項6】
前記第5手段は、
前記Vmean(t,ir)の減少速度dVmean(t,ir)/dtを逐次算出し、
次の式(3.1)~式(3.6)のいずれか1以上を満たした時に前記燃料電池が故障したと判断する手段
を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|>ε31 …(3.1)
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|≧ε31 …(3.2)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|>ε32 …(3.3)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|≧ε32 …(3.4)
|dVmean(t,ir)/dt|>ε33 …(3.5)
|dVmean(t,ir)/dt|≧ε33 …(3.6)
但し、
dVmean(t-m,ir)/dtは、時刻(t-m)(m>0)における平均I-V特性Vmean(t-m,ir)の減少速度、
ε31、ε32、ε33は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【請求項7】
前記メモリには、前記FC電流i(t)が前記代表電流irである時の非故障モデルVn(t,ir)が記憶されており、
前記第5手段は、次の式(4.1)~式(4.4)のいずれか1以上を満たした時に前記燃料電池が故障したと判断する手段を含む請求項1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|>ε41 …(4.1)
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|≧ε41 …(4.2)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|<ε42 …(4.3)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|≦ε42 …(4.4)
但し、
「非故障モデルVn(t,ir)」は、故障検出及び劣化推定の対象である前記燃料電池と同一仕様の燃料電池の使用履歴と電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下との関係を示すモデル、
ε41、ε42は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【請求項8】
前記Vn(t,ir)は、
(a)物理モデル、又は、
(b)時刻ゼロから前記時刻tまでの前記Vf(t,ir)をr次多項式(rは、1以上10以下の整数)で近似したモデル
である請求項7に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障検出及び劣化推定装置に関し、さらに詳しくは、燃料電池の異常や故障を高精度に、かつ、より早期に検出すること、あるいは、燃料電池の劣化の程度を推定することが可能な故障検出及び劣化推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、単に「燃料電池」ともいう)は、電解質膜の両面に電極触媒を含む触媒層が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の触媒粒子を担持したカーボンと固体高分子電解質(触媒層アイオノマ)との複合体からなる。
燃料電池において、触媒層の外側には、通常、ガス拡散層が配置されている。ガス拡散層の外側には、さらにガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。燃料電池は、通常、このようなMEA、ガス拡散層、及び集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
【0003】
燃料電池を車載動力源として用いた場合、車両の走行状況に応じて燃料電池の電圧が大きく変動する。燃料電池が低負荷状態にある場合、カソード触媒は高電位状態に曝されるためにカソード触媒から触媒成分が溶出しやすくなる。一方、燃料電池が高負荷状態にある場合、カソード触媒は低電位状態に曝されるために溶出した触媒成分がカソード触媒の表面に再析出しやすくなる。そのため、カソード触媒が高電位状態と低電位状態に繰り返し曝されると、カソード触媒が次第に劣化する。カソード触媒が劣化すると、燃料電池のセル電圧も低下する。
【0004】
一方、このような電極触媒の経年劣化とは別の原因で、燃料電池のセル電圧が低下する場合がある。この場合、セル電圧の低下の原因を早期に発見することができれば、燃料電池の保守、点検に要する費用を削減できる可能性がある。そのため、燃料電池の故障検出に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、
(a)燃料電池システムにおける燃料電池スタック電圧の実効値がシミユレータによる模擬結果と一致するように、燃料電池の有効電極面積を算出し、
(b)有効電極面積が正常範囲から外れたときに異常と判断する
燃料電池監視システムが開示されている。
同文献には、このようなシステムにより、保守にかかる工数を大幅に削減し、燃料電池発電システム内部の劣化状況を正確に監視することができる点が記載されている。
【0006】
燃料電池の出力は、通常、時々刻々と変化している。そのため、特定の条件下で計測されるセル電圧が低下した時に、実際のセル電圧の変化のみに基づいて、セル電圧の低下が電極触媒の経年劣化によるものか、あるいは、それ以外の事象(すなわち、燃料電池の異常や故障)によるものかを区別するのは難しい。
【0007】
この点に関し、特許文献1には、有効電極面積が正常範囲から外れたか否かで異常の有無を検出できると記載されている。しかし、特許文献1では、セル電圧の実効値から有効電極面積を推定しており、一時的なセル電圧の変動が考慮されていない。そのため、一時的なセル電圧の変動による電圧低下を有効電極面積の低下と判断し、燃料電池が正常であるにもかかわらず、異常が生じたと誤認するおそれがある。
さらに、燃料電池の故障の有無や劣化の程度を高精度に推定することが可能な装置が提案された例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、セル電圧が一時的な変動を繰り返す場合であっても、燃料電池の異常や故障を高精度に、かつ、より早期に検出すること、あるいは、燃料電池の劣化の程度を高精度に推定することが可能な故障検出及び劣化推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る故障検出及び劣化推定装置は、以下の構成を備えている。
(A)時刻tにおける燃料電池の
(a)FC電流i(t)、
(b)第1セル電圧V1(t)、
(c)第2セル電圧V2(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第1特徴量X1(t)、並びに、
(d)外気温T(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第2特徴量X2(t)
を含む出力データを逐次取得し、これらをメモリに記憶させる第1手段。
但し、「第1セル電圧V1(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧の内、前記燃料電池が間欠運転オフの状態にあるときのセル電圧をいう。
「第2セル電圧V2(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧をいう。
(B)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が代表電流irである時の前記時刻t及び前記第1セル電圧V1(t)を抽出し、これらを用いて代表I-V特性Vf(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第2手段。
(C)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が前記代表電流irである時の前記時刻t、前記第1特徴量X1(t)、及び前記第2特徴量X2(t)を抽出し、これらを用いて一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第3手段。
(D)前記Vf(t,ir)から前記Ym(X1,X2)を差し引くことにより、前記時刻tにおける平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第4手段。
(E)前記Vmean(t,ir)に基づいて、前記燃料電池が故障又は劣化したか否かを判断する第5手段。
【発明の効果】
【0011】
まず、時々刻々と変化するFC電流i(t)、第1セル電圧V1(t)、第1特徴量X1(t)、及び第2特徴量X2(t)を取得し、これらをメモリに記憶させる。
次に、FC電流i(t)が代表電流irである時(例えば、ir=0.2A/cm2である時)の時刻t及びV1(t)をメモリから読み出し、i(t)がirである時のセル電圧の経時変化、すなわち、代表I-V特性Vf(t,ir)を算出する。
同様に、FC電流i(t)が代表電流irである時の時刻t、X1(t)、及びX2(t)をメモリから読み出し、i(t)がirである時の一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出する。
さらに、得られたVf(t,ir)からYm(X1,X2)を差し引くことにより、平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出する。
【0012】
非故障時において、Vf(t,ir)には、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下と、一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)とが含まれる。また、燃料電池が故障した時には、Vf(t,ir)には、さらに故障に起因するセル電圧の低下が加算される。そのため、Vf(t,ir)のみを用いて故障診断を行っても、正確な故障診断はむずかしい。
【0013】
これに対し、非故障時において、Vmean(t,ir)には、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下のみが含まれる。また、燃料電池の故障が生じた時には、Vmean(t,ir)には、さらに故障に起因するセル電圧の低下が加算される。そのため、Vmean(t,ir)の変化を逐次監視すれば、Vmean(t,ir)の変化量から故障の有無を判断することができる。一方、故障が検出されなかったときには、Vmean(t,ir)に基づいて、燃料電池の劣化推定やIV性能推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少の模式図である。
図1(B)は、実際のセル電圧の減少の模式図である。
【
図2】
図2(A)は、セル電圧の変化が電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少のみを含む場合において、故障が発生した時のセル電圧の変化の模式図である。
図2(B)は、セル電圧の変化が電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少と一時的なセル電圧の変動とを含む場合において、故障が発生した時のセル電圧の変化の模式図である。
【0015】
【
図3】燃料電池を搭載した車両の走行データから、任意の時刻tにおけるI-V特性を算出する方法の模式図である。
【
図4】
図4(A)は、代表電流i
rが0.2A/cm
2である時の代表I-V特性V
f(t,i
r)の経時変化の一例である。
図4(B)は、代表電流i
rが0.4A/cm
2である時の代表I-V特性V
f(t,i
r)の経時変化の一例である。
【
図5】ニューラルネットを用いたY
m(X
1,X
2)の算出方法の模式図である。
【0016】
【
図6】
図6(A)は、時刻tにおけるV
mean(t,i
r)の減少速度dV
mean(t,i
r)/dtと、時刻(t-m)におけるV
mean(t-m,i
r)の減少速度dV
mean(t-m,i
r)/dtを用いた故障検出方法の模式図である。
図6(B)は、時刻tにおけるV
mean(t,i
r)の減少速度dV
mean(t,i
r)/dtのみを用いた故障検出方法の模式図である。
【
図7】非故障モデルV
n(t,i
r)を用いた故障検出方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 故障検出及び劣化推定方法]
以下では、本発明に係る故障検出及び劣化推定方法に関し、車両で適用されるFCシステムを対象に説明する。
図1(A)に、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少の模式図を示す。
図1(B)に、実際のセル電圧の減少の模式図を示す。
【0018】
FCスタックで用いられる白金触媒は、車の走行に伴い劣化する。そのため、特定の条件下で計測されるセル電圧Vは、理想的には、
図1(A)に示すように、走行時間tの経過と共に単調に減少する。
しかし、実際の車両において計測されるセル電圧は、
図1(B)に示すように、触媒の経時劣化に起因する単調減少成分に加えて、この単調減少の波形を中心にしてセル電圧が一時的に変動する成分Yを含んでいる。
【0019】
図2(A)に、セル電圧の変化が電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少のみを含む場合において、故障が発生した時のセル電圧の変化の模式図を示す。
図2(B)に、セル電圧の変化が電極触媒の経時劣化によるセル電圧の減少と一時的なセル電圧の変動とを含む場合において、故障が発生した時のセル電圧の変化の模式図を示す。
仮に、
図1(A)に示すように、計測されるセル電圧Vの変化が電極触媒の経時劣化による単調減少成分のみを含んでいる場合、単調減少曲線の傾きdV/dtは、時間の経過と共に連続的に変化する。しかし、ある時刻tにおいて故障が発生すると、
図2(A)に示すように、dV/dtが不連続に変化する。そのため、dV/dtの変化を逐次監視すれば、dV/dtの不連続な変化の有無から、故障の有無を判断することができる。
【0020】
しかしながら、実際に計測されるセル電圧は、
図1(B)に示すように、一時的に変動する成分Yを含んでいる。そのため、
図2(B)に示すように、実際に計測されるセル電圧を監視するだけでは、計測されたセル電圧の変動が故障以外の原因(一時的なセル電圧の変動)によるものか、あるいは、故障によるものかを区別することは難しい。
【0021】
そこで、本発明では、一時的なセル電圧の変動分を種々の方法を用いて推定し、実際に計測されるセル電圧から一時的なセル電圧の変動成分を差し引くことにより、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の減少成分(単調減少成分)を分離する。次いで、分離された単調減少成分の経時変化に基づいて故障の有無を判断する。この点が従来とは異なる。分離方法及び判定方法の詳細については、後述する。
【0022】
[2. 故障検出及び劣化推定装置]
本発明に係る故障検出及び劣化推定装置は、以下の構成を備えている。
【0023】
[構成1]
以下の構成を備えた故障検出及び劣化推定装置。
(A)時刻tにおける燃料電池の
(a)FC電流i(t)、
(b)第1セル電圧V1(t)、
(c)第2セル電圧V2(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第1特徴量X1(t)、並びに、
(d)外気温T(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第2特徴量X2(t)
を含む出力データを逐次取得し、これらをメモリに記憶させる第1手段。
但し、「第1セル電圧V1(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧の内、前記燃料電池が間欠運転オフの状態にあるときのセル電圧をいう。
「第2セル電圧V2(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧をいう。
(B)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が代表電流irである時の前記時刻t及び前記第1セル電圧V1(t)を抽出し、これらを用いて代表I-V特性Vf(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第2手段。
(C)前記出力データの中から、前記FC電流i(t)が前記代表電流irである時の前記時刻t、前記第1特徴量X1(t)、及び前記第2特徴量X2(t)を抽出し、これらを用いて一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第3手段。
(D)前記Vf(t,ir)から前記Ym(X1,X2)を差し引くことにより、前記時刻tにおける平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出し、これを前記メモリに記憶させる第4手段。
(E)前記Vmean(t,ir)に基づいて、前記燃料電池が故障又は劣化したか否かを判断する第5手段。
【0024】
[構成2]
前記V2(t)と相関があるパラメータは、FC間欠運転フラグ、FCパワー、エア流量、エアコンプレッサのモータ回転数、水素ポンプの消費電力、水素ポンプの回転数、FC入口圧力(アノード)、EV冷却水ポンプの回転数、FC冷却水ポンプの回転数、FC用コンバータ電流、車両システムに対する要求パワー、車両システムに対する電流要求値、FC入口圧力(カソード)、アノードガス流量、エアコンプレッサの消費電力、FC発電状態、及び、A/C消費電力からなる群から選ばれるいずれか1以上を含む構成1に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【0025】
[構成3]
前記T(t)と相関があるパラメータは、ラジエータ出口の冷却水温度、エアコンプレッサーのモータ温度、エアコンプレッサーのインバータ温度、水素ポンプのモータ温度、FC出口冷却水温度、及び、各補機部品の温度からなる群から選ばれるいずれか1以上を含む構成1又は2に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【0026】
[構成4]
前記第3手段は、次の式(2)を用いて前記Ym(X1,X2)を算出する手段を含む構成1から3までのいずれか1つに記載の故障検出及び劣化推定装置。
Ym(X1,X2)=a0+Σa1pX1(t)p+Σa2qX2(t)q …(2)
但し、
p、qは、それぞれ、1以上の整数、
a0、a1p、及びa2qは、それぞれ、前記代表電流irごとに同定される係数。
【0027】
[構成5]
前記第3手段は、ニューラルネットを用いて前記Ym(X1,X2)を算出する手段を含む構成1から4までのいずれか1つに記載の故障検出及び劣化推定装置。
【0028】
[構成6]
前記第5手段は、
前記Vmean(t,ir)の減少速度dVmean(t,ir)/dtを逐次算出し、
次の式(3.1)~式(3.6)のいずれか1以上を満たした時に前記燃料電池が故障したと判断する手段
を含む構成1から5までのいずれか1つに記載の故障検出及び劣化推定装置。
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|>ε31 …(3.1)
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|≧ε31 …(3.2)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|>ε32 …(3.3)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|≧ε32 …(3.4)
|dVmean(t,ir)/dt|>ε33 …(3.5)
|dVmean(t,ir)/dt|≧ε33 …(3.6)
但し、
dVmean(t-m,ir)/dtは、時刻(t-m)(m>0)における平均I-V特性Vmean(t-m,ir)の減少速度、
ε31、ε32、ε33は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【0029】
[構成7]
前記メモリには、前記FC電流i(t)が前記代表電流irである時の非故障モデルVn(t,ir)が記憶されており、
前記第5手段は、次の式(4.1)~式(4.4)のいずれか1以上を満たした時に前記燃料電池が故障したと判断する手段を含む構成1から6までのいずれか1つに記載の故障検出及び劣化推定装置。
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|>ε41 …(4.1)
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|≧ε41 …(4.2)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|<ε42 …(4.3)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|≦ε42 …(4.4)
但し、
「非故障モデルVn(t,ir)」は、故障検出及び劣化推定の対象である前記燃料電池と同一仕様の燃料電池の使用履歴と電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下との関係を示すモデル、
ε41、ε42は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【0030】
[構成8]
前記Vn(t,ir)は、
(a)物理モデル、又は、
(b)時刻ゼロから前記時刻tまでの前記Vf(t,ir)をr次多項式(rは、1以上10以下の整数)で近似したモデル
である構成7に記載の故障検出及び劣化推定装置。
【0031】
[2.1. 第1手段]
第1手段は、時刻tにおける燃料電池の
(a)FC電流i(t)、
(b)第1セル電圧V1(t)、
(c)第2セル電圧V2(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第1特徴量X1(t)、並びに、
(d)外気温T(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上を含む第2特徴量X2(t)
を含む出力データを逐次取得し、これらをメモリに記憶させる手段である。
【0032】
[2.1.1. 燃料電池]
本発明において、燃料電池の種類は、特に限定されない。本発明が適用される燃料電池としては、例えば、固体高分子形燃料電池、固体酸化物形燃料電池などがある。
【0033】
[2.1.2. FC電流i(t)]
FC電流i(t)は、故障検出及び劣化推定に用いるデータを選択する際に用いられる。
通常、燃料電池の劣化状態が同一であっても、FC電流i(t)が変わると、それに応じてセル電圧V(t)も変わる。そのため、正確に故障検出及び劣化推定を行うためには、FC電流i(t)がある特定の値であるときのセル電圧V(t)を用いる必要がある。
本発明において、記憶されているデータの中から、FC電流i(t)がある特定の値(代表電流ir)であるときのセル電圧V(t)を抽出し、抽出されたセル電圧V(t)を用いて故障検出及び劣化推定が行われる。この点については、後述する。
【0034】
[2.1.3. 第1セル電圧V1(t)]
「第1セル電圧V1(t)」とは、全時刻における燃料電池のセル電圧の内、燃料電池が間欠運転オフの状態にあるときのセル電圧をいう。
V1(t)は、後述するように、代表I-V特性Vf(t,ir)を算出するために用いられる。換言すれば、V1(t)は、電極触媒の経時劣化を推定するために用いられる。
【0035】
例えば、燃料電池車両の場合、通常、動力源として燃料電池と二次電池とを備えている。この場合、燃料電池は、常時発電しているのではなく、車両に対する要求パワーに応じて、発電を行っている状態(間欠運転オフ状態)と、発電を停止している状態(間欠運転オン状態)が繰り返される。そのため、燃料電池が発電している時のセル電圧だけでなく、停止している時のセル電圧も含めてVf(t,ir)を算出すると、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下を正確に推定することができない。そのため、Vf(t,ir)の算出には、V1(t)が用いられる。
【0036】
[2.1.4. 第1特徴量X1(t)]
「第1特徴量X1(t)」とは、第2セル電圧V2(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上のパラメータをいう。
「相関があるパラメータ」とは、第2セル電圧V2(t)と同視できるパラメータ、あるいは、第2セル電圧V2(t)に換算することが可能なパラメータをいう。
「第2セル電圧V2(t)」とは、全時刻における前記燃料電池のセル電圧をいう。すなわち、第2セル電圧V2(t)には、燃料電池が発電している時(間欠運転オフ時)のセル電圧だけでなく、停止している時(間欠運転オン時)のセル電圧も含まれる。
X1(t)は、後述するように、一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出するための2つのパラメータの内の一つである。
【0037】
一時的なセル電圧の変動の主たる原因の一つは、燃料電池に対する要求パワーの変動である。また、要求パワーの変動は、主として、V2(t)の変動として現れる。そのため、V2(t)は、一時的なセル電圧の変動と強い相関がある。X1(t)としてV2(t)を用いると、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0038】
なお、Ym(X1,X2)を推定する場合、第1特徴量X1(t)として、V2(t)に代えて、又は、これに加えて、V2(t)と相関がある他のパラメータを用いても良い。
このようなパラメータとしては、具体的には、以下のようなものがある。X1(t)には、以下のいずれか1のパラメータを用いても良く、あるいは、2以上のパラメータを組み合わせて用いても良い。
【0039】
(a)燃料電池の間欠運転の状態を示すフラグ(FC間欠運転フラグ)。
(b)燃料電池で発生している電力(FCパワー)。
(c)燃料電池のカソードに供給される空気の流量(エア流量)。
(d)燃料電池のカソードに空気を供給するためのエアコンプレッサのモータ回転数。
(e)燃料電池のアノードに水素を供給するための水素ポンプの消費電力。
(f)燃料電池のアノードに水素を供給するための水素ポンプの回転数。
(g)燃料電池のアノードに供給される水素の圧力(FC入口圧力(アノード))。
【0040】
(h)モータ、インバータなどの駆動系に冷却水を供給するためのポンプの回転数(EV冷却水ポンプの回転数)。
(i)燃料電池に冷却水を供給するための冷却水ポンプの回転数(FC冷却水ポンプの回転数)。
(j)FC用コンバータ電流。
(k)車両システムに対する要求パワー。
(l)車両システムに対する要求電流値。
【0041】
(m)燃料電池のカソードに供給される空気の圧力(FC入口圧力(カソード))。
(n)燃料電池のアノードに供給される水素の流量(アノードガス流量)。
(o)燃料電池のカソードに空気を供給するためのエアコンプレッサの消費電力。
(p)FC発電状態(発電、非発電、起動、修了シーケンスなど)。
(q)空調の消費電力(A/C消費電力)。
【0042】
例えば、X1(t)がFC間欠運転フラグである場合、燃料電池が運転状態にある時のフラグを「1」とし、燃料電池が停止状態にある時にフラグの「0」とする。この場合、時間の経過に伴うFC間欠運転のフラグの変動を平均化処理すると、平均化処理されたFC間欠運転フラグの変動は、V2(t)の変動と強い相関がある。そのため、V2(t)に代えて平均化処理されたFC間欠運転フラグを用いた場合であっても、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0043】
FCパワー、エア流量等も同様であり、これらのパラメータは、V2(t)と正の相関がある。すなわち、基本的には、V2(t)が大きくなるほど、これらのパラメータも大きくなる関係がある。そのため、X1(t)として、V2(t)に代えてこれらのパラメータを用いた場合であっても、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0044】
[2.1.5. 第2特徴量X2(t)]
「第2特徴量X2(t)」とは、外気温T(t)、及び、これと相関があるパラメータからなる群から選ばれるいずれか1以上のパラメータをいう。
「相関があるパラメータ」とは、外気温T(t)と同視できるパラメータ、あるいは、外気温T(t)に換算することが可能なパラメータをいう。
X2(t)は、一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出するための2つのパラメータの内の他の一つである。
【0045】
一時的なセル電圧の変動は、燃料電池に対する要求パワーの変動だけでなく、外気温T(t)の変動によっても生じる。また、T(t)の変動は、燃料電池の発電効率だけでなく、燃料電池の補機の消費電力にも影響を及ぼす。そのため、T(t)は、一時的なセル電圧の変動と強い相関がある。X2(t)として、T(t)を用いると、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0046】
なお、Ym(X1,X2)を推定する場合、第2特徴量X2(t)として、T(t)に代えて、又は、これに加えて、T(t)と相関がある他のパラメータを用いても良い。
このようなパラメータとしては、具体的には、以下のようなものがある。X2(t)には、以下のいずれか1のパラメータを用いても良く、あるいは、2以上のパラメータを組み合わせて用いても良い。
【0047】
(a)燃料電池を冷却するためのラジエータ出口の冷却水温度。
(b)燃料電池のカソードに空気を供給するためのエアコンプレッサーのモータ温度。
(c)燃料電池のカソードに空気を供給するためのエアコンプレッサーのインバータ温度、
(d)燃料電池のアノードに水素を供給するための水素ポンプのモータ温度。
(e)燃料電池から排出される冷却水の温度(FC出口冷却水温度)。
(f)上記以外の各補機部品の温度。
【0048】
例えば、X2(t)が、燃料電池を冷却するためのラジエータ出口の冷却水温である場合、冷却水温の変動は、T(t)の変動と強い相関がある。一般に、T(t)が高くなるほど、冷却水温も高くなる。そのため、T(t)に代えて冷却水温を用いた場合であっても、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0049】
エアコンプレッサーのモータ温度、エアコンプレッサーのインバータ温度等も同様であり、これらのパラメータは、T(t)と正の相関がある。すなわち、基本的には、T(t)が高くなるほど、これらのパラメータも大きくなる関係がある。そのため、X2(t)として、T(t)に代えてこれらのパラメータを用いた場合であっても、Ym(X1,X2)を高精度に推定することができる。
【0050】
[2.2. 第2手段]
第2手段は、出力データの中から、FC電流i(t)が代表電流irである時の時刻t及び第1セル電圧V1(t)を抽出し、これらを用いて代表I-V特性Vf(t,ir)を算出し、これをメモリに記憶させる手段である。
【0051】
「代表I-V特性Vf(t,ir)」とは、FC電流i(t)が代表電流irである時の、時刻tとセル電圧V(t)との関係を示す一群のデータをいう。
「代表電流ir」とは、故障検出及び劣化推定を行う場合において、非故障時のセル電圧V(t)と故障時のセル電圧V(t)とを比較する際の基準となるFC電流i(t)をいう。
【0052】
代表電流irは、1個であっても良く、あるいは、2個以上であっても良い。
換言すれば、故障検出は、
(a)いずれか1個の代表電流ir(例えば、ir=0.2A/cm2である時)に対するVf(t,ir)が後述する条件を満たした時に故障と判断しても良く、あるいは、
(b)2個以上の代表電流ir(例えば、ir=0.2A/cm2、0.4A/cm2、及び、0.6A/cm2である時)に対するVf(t,ir)が、それぞれ、同時に後述する要件を満たしたときに故障と判断しても良い。
【0053】
[2.2.1. 任意の時刻tにおけるI-V特性の算出]
図3に、燃料電池を搭載した車両の走行データから、任意の時刻tにおけるI-V特性を算出する方法の模式図を示す。燃料電池車両が完成した後、実際に車両を走行させると、走行状況に応じてセル電圧V(t)、FC電流i(t)などが時々刻々と変化する。これらを車両計測データとして、逐次メモリに記憶させる。
【0054】
実際に車両を走行させると、燃料電池の発電条件は、軽負荷(低電流、高電圧)の状態から高負荷(高電流、低電圧)の状態に至るまで様々に変化する。一方、電極触媒の経時劣化は徐々に進行する。そのため、電極触媒の経時劣化に関し、ある時間間隔内(時刻t±α内)にあるデータは、「ある時刻tにおけるデータ」と見なすことができる。
そのため、時刻(t±α)内にあるデータの中から、FC電流i(t)と第1セル電圧V1(t)との組み合わせからなる様々なデータを抽出すると、ある時刻tにおけるI-V特性を得ることができる。αの値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。αの値は、通常、1時間~10時間程度である。
【0055】
図3の上図は、走行時間が0hである時(すなわち、走行時間が0hと見なせる時)のI-V特性の一例を示す。「○」は、それぞれ、抽出されたデータを表す。
図3に示す例では、FC電流i(t)が0.2、0.4、0.6、0.8、及び、1.0A/cm
2であるときの第1セル電圧V
1(t)が示されている。これらのデータを適当な関数で近似すると、走行時間が0hであり、かつ、任意の電流i(t)における第1セル電圧V
1(t)を算出することができる。例えば、これらのデータを3次関数で近似する場合、走行時間が0hである時のI-V特性は、次の式(1.1)で表される。
【0056】
Vf1(t,i)=a1i3+b1i2+c1i+d1 …(1.1)
但し、
Vf1(t,i)は、走行時間が0hであり、かつ、FC電流がi(t)である時の第1セル電圧、
a1、b1、c1、及び、d1は、それぞれ、走行時間ごとに同定される係数。
【0057】
図3の中段及び下段は、それぞれ、走行時間が3000h及び5000hである時のI-V特性の一例を示す。走行時間が3000h又は5000hである時も同様であり、蓄積されたデータの中から走行時間が3000h又は5000hと見なせるFC電流i(t)と第1セル電圧V
1(t)との組み合わせからなる様々なデータを抽出し、これらを適当な関数で近似すれば良い。例えば、これらのデータを3次関数で近似する場合、走行時間が3000h又は5000hである時のI-V特性は、それぞれ、次の式(1.2)又は式(1.3)で表される。
【0058】
Vf2(t,i)=a2i3+b2i2+c2i+d2 …(1.2)
但し、
Vf2(t,i)は、走行時間が3000hであり、かつ、FC電流がi(t)である時の第1セル電圧、
a2、b2、c2、及び、d2は、それぞれ、走行時間ごとに同定される係数。
【0059】
Vf3(t,i)=a3i3+b3i2+c3i+d3 …(1.3)
但し、
Vf3(t,i)は、走行時間が5000hであり、かつ、FC電流がi(t)である時の第1セル電圧、
a3、b3、c3、及び、d3は、それぞれ、走行時間ごとに同定される係数。
【0060】
なお、一般に、走行時間が長くなるほど、電極触媒の経時劣化が進行する。そのため、Vf2(t,i)は、通常、Vf1(t,i)より低い値となる。同様に、Vf3(t,i)は、通常、Vf2(t,i)より低い値となる。
【0061】
[2.2.2. 代表I-V特性の算出]
任意の時刻tにおけるI-V特性が分かると、FC電流i(t)が代表電流irである時の時刻t及び第1セル電圧V1(t)を知ることができる。また、これらが分かると、これらを用いて代表I-V特性Vf(t,ir)を算出することができる。
【0062】
図4(A)に、代表電流i
r=0.2A/cm
2である時の代表I-V特性V
f(t,i
r)の経時変化の一例を示す。
図4(B)に、代表電流i
r=0.4A/cm
2である時の代表I-V特性V
f(t,i
r)の経時変化の一例を示す。
図4(A)及び
図4(B)は、それぞれ、
図3に示すデータの中から、FC電流i(t)が0.2A/cm
2又は0.4A/cm
2である時の第1セル電圧V
1(t)を抜き出し、V
1(t)を時刻tに対して描いたものである。
【0063】
代表I-V特性Vf(t,ir)は、セル電圧の一時的な変動分Ym(X1,X2)と、それ以外の成分Vmean(t,ir)とを含む。Vmean(t,ir)は、通常、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下のみからなる。しかし、燃料電池が故障した時には、Vmean(t,ir)には、さらに故障に起因するセル電圧の低下が加算される。
従って、正確に故障判定を行うためには、Vf(t,ir)からYm(X1,X2)を差し引き、Vmean(t,ir)を分離する必要がある。そのためには、まずYm(X1,X2)を知る必要がある。
【0064】
[2.3. 第3手段]
第3手段は、出力データの中から、FC電流i(t)が代表電流irである時の時刻t、第1特徴量X1(t)、及び第2特徴量X2(t)を抽出し、これらを用いて一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出し、これをメモリに記憶させる手段である。
【0065】
制御対象である燃料電池と同一仕様の燃料電池について、予め、YmとX1及びX2との関係を表す関数又はこれに相当するもの取得しておき、これをメモリに記憶させておく。
実際の故障検出の際には、まず、蓄積されたデータの中から、FC電流i(t)が代表電流irである時の
(a)時刻t、
(b)第2セル電圧V2(t)及び/又はこれと等価なパラメータを含む第1特徴量X1(t)、並びに、
(c)外気温T(t)及び/又はこれと等価なパラメータを含む第2特徴量X2(t)
を抽出する。
次いで、X1(t)及びX2(t)を予め取得した関数又はこれに相当するものに代入し、Ym(X1,X2)を算出する。
【0066】
Ym(X1,X2)の算出方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。Ym(X1,X2)の算出方法としては、具体的には、以下のような方法がある。
【0067】
[2.3.1. 重回帰モデルを用いる方法]
第3手段は、次の式(2)を用いてYm(X1,X2)を算出する手段を含んでいても良い。
Ym(X1,X2)=a0+Σa1pX1(t)p+Σa2qX2(t)q …(2)
但し、
p、qは、それぞれ、1以上の整数、
a0、a1p、及びa2qは、それぞれ、代表電流irごとに同定される係数。
【0068】
本願発明者らによる車両の計測データの解析から、一時的なセル電圧の変動分Yは、第1特徴量X1(t)及び第2特徴量X2(t)と相関が高いことが明らかとなった。式(2)は、このような知見に基づいて、Ym(Yの推定値)をX1(t)のp次多項式とX2(t)のq次多項式の和で近似した重回帰モデルである。
【0069】
式(2)を用いてYm(X1,X2)を算出する場合、予め故障検出の対象である燃料電池と同一仕様の燃料電池について試験を行い、X1(t)、X2(t)が変動したときの実際のセル電圧の変動分Yが、式(2)で表されるモデル式の変動分Ymに一致するように、X1(t)及びX2(t)の次数p及びq、並びに、各係数a0、a1p、及び、a2qを同定しておく。各係数は、代表電流irごとに同定しておく。さらに、同定されたこれらの係数をメモリに記憶させておく。
実際の故障検出においては、取得されたX1(t)及びX2(t)を式(2)に代入する。これにより、任意の時刻tにおいて、FC電流i(t)が代表電流irである時のYm(X1,X2)を算出することができる。
【0070】
[2.3.2. ニューラルネットワークを用いる方法]
第3手段は、ニューラルネットを用いて前記Ym(X1,X2)を算出する手段を含んでいても良い。
予め故障検出の対象である燃料電池と同一仕様の燃料電池について、ニューラルネットを用いてYmとX1及びX2との関係について学習させ、予測モデルを構築しておく。
実際の故障検出においては、取得されたX1(t)及びX2(t)を構築された予測モデルに入力する。これにより、任意の時刻tにおいて、FC電流i(t)が代表電流irである時のYm(X1,X2)を出力させることができる。
【0071】
図5に、ニューラルネットを用いたY
m(X
1,X
2)の算出方法の模式図を示す。
図5は、ニューラルネットの一例であり、特徴量X
1、X
2に対して、Y
mを予測するモデルとなっている。
【0072】
[2.4. 第4手段]
第4手段は、Vf(t,ir)からYm(X1,X2)を差し引くことにより、時刻tにおける平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出し、これをメモリに記憶させる手段である。
【0073】
「平均I-V特性Vmean(t,ir)」とは、FC電流i(t)が代表電流irである時の、時刻tと、一時的なセル電圧の変動分を除いたセル電圧Vとの関係を示す一群のデータをいう。
非故障時において、Vmean(t,ir)は、理想的には、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の低下のみを含む。しかし、非故障時には、Vmean(t,ir)は、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の低下分に故障に起因するセル電圧の低下が加算された値となる。そのため、Vmean(t,ir)を用いると、正確に故障検出をすることができる。
【0074】
[2.5. 第5手段]
第5手段は、Vmean(t,ir)に基づいて、燃料電池が故障又は劣化したか否かを判断する手段である。
本発明において、Vmean(t,ir)を用いた故障検出の方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。故障検出方法としては、具体的には以下のようなものがある。これらは、いずれか1つを用いても良く、あるいは、物理的に可能な限りにおいて、2つ以上を組み合わせて用いても良い。
【0075】
[2.5.1. dVmean(t,ir)/dtを用いた故障検出方法]
第5手段は、
Vmean(t,ir)の減少速度dVmean(t,ir)/dtを逐次算出し、
次の式(3.1)~式(3.6)のいずれか1以上を満たした時に燃料電池が故障したと判断する手段
を含んでいても良い。
【0076】
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|>ε31 …(3.1)
|dVmean(t,ir)/dt-dVmean(t-m,ir)/dt|≧ε31 …(3.2)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|>ε32 …(3.3)
|[dVmean(t,ir)/dt]/[dVmean(t-m,ir)/dt]|≧ε32 …(3.4)
|dVmean(t,ir)/dt|>ε33 …(3.5)
|dVmean(t,ir)/dt|≧ε33 …(3.6)
但し、
dVmean(t-m,ir)/dtは、時刻(t-m)(m>0)における平均I-V特性Vmean(t-m,ir)の減少速度、
ε31、ε32、ε33は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【0077】
「t-m」は、時刻tにおいて取得された現在データと対比するための過去データが取得された時刻を表す。mの値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
【0078】
図6(A)に、時刻tにおけるV
mean(t,i
r)の減少速度dV
mean(t,i
r)/dtと、時刻(t-m)におけるV
mean(t-m,i
r)の減少速度dV
mean(t-m,i
r)/dtを用いた故障検出方法の模式図を示す。
図6(B)に、時刻tにおけるV
mean(t,i
r)の減少速度dV
mean(t,i
r)/dtのみを用いた故障検出方法の模式図を示す。
上述したように、故障が発生した場合、V
mean(t,i
r)には、故障に起因するセル電圧の減少が加算されるため、V
mean(t,i
r)は、電極触媒の経時劣化のみに基づいて想定される値よりも小さくなる。その結果、
図6に示すように、dV
mean(t,i
r)/dtは、電極触媒の経時劣化のみに基づいて想定される値よりも負に大きくなる。
【0079】
そのため、式(3.1)又は式(3.2)に示すように、現在の時刻tにおけるdV
mean(t,i
r)/dtと、過去のある時刻(t-m)におけるdV
mean(t-m,i
r)/dtとの差の絶対値がある閾値ε
31を超えている時、又はε
31以上である時には、故障が発生したと判断することができる(
図6(A))。
あるいは、式(3.3)又は式(3.4)に示すように、dV
mean(t-m,i
r)/dtに対するdV
mean(t,i
r)/dtの比の絶対値がある閾値ε
32を超えている時、又はε
31以上である時には、故障が発生したと判断することができる(
図6(A))。
あるいは、式(3.5)又は式(3.6)に示すように、dV
mean(t,i
r)/dtの絶対値がある閾値ε
33を超えている時、又はε
33以上である時には、故障が発生したと判断することができる(
図6(B))。
【0080】
一方、故障が検出されなかった場合、Vmean(t,ir)は、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の低下が考慮されたIV特性の推定値を表す。そのため、Vmean(t,ir)を用いて、劣化推定、燃料消費予測、航続距離予測などが可能となる。
【0081】
[2.5.2. 非故障モデルVn(t,ir)を用いた故障検出方法]
メモリには、FC電流i(t)が代表電流irである時の非故障モデルVn(t,ir)が記憶されていても良い。
この場合、第5手段は、次の式(4.1)~式(4.4)のいずれか1以上を満たした時に燃料電池が故障したと判断する手段を含んでいても良い。
【0082】
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|>ε41 …(4.1)
|Vmean(t,ir)-Vn(t,ir)|≧ε41 …(4.2)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|<ε42 …(4.3)
|Vmean(t,ir)/Vn(t,ir)|≦ε42 …(4.4)
但し、ε41、ε42は、それぞれ、故障の有無を判定するための閾値。
【0083】
[A. 非故障モデルVn(t,ir)]
「非故障モデルVn(t,ir)」とは、故障検出の対象である燃料電池と同一仕様の燃料電池の使用履歴と、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下との関係を示すモデルをいう。換言すれば、非故障モデルVn(t,ir)とは、故障が生じていないと仮定したした時の使用履歴とセル電圧との関係を示すモデルをいう。
【0084】
Vn(t,ir)は、使用履歴とセル電圧との関係を導くことができるものである限りにおいて、特に限定されない。Vn(t,ir)としては、例えば、
(a)物理モデル、
(b)時刻ゼロから時刻tまでのVf(t,ir)をr次多項式(rは、1以上10以下の整数)で近似したモデル
などがある。
【0085】
[A.1. 物理モデル]
Vn(t,ir)は、物理モデルであっても良い。「物理モデル」とは、理論式を用いて電極触媒の経時劣化を推定し、推定された電極触媒の経時劣化に基づいて、時刻tにおけるセル電圧V(t)を推定することが可能なモデルをいう。
例えば、参考文献1には、燃料電池触媒の劣化予測方法が開示されている。同文献に記載の方法を用いると、時刻tにおけるセル電圧V(t)、FC電流i(t)、及びセル温度T(t)が与えられた時の、時刻tにおける白金触媒表面積ECSA(t)を推定することができる。さらに、得られたECSA(t)を次の式(5)に代入すると、任意の時刻tにおいて、FC電流i(t)が代表電流irである時の非故障時のセル電圧Vn(t,ir)を算出することができる。
[参考文献1]特開2010-236989号公報
【0086】
Vn(t,ir)=V(0,ir)+K・ln{ECSA(t)/ECSA(0)} …(5)
但し、
Vn(t,ir)は、時刻tにおける非故障時のセル電圧[V]、
irは、代表電流[A/cm2]
tは、時刻[s]、
Kは、定数。
【0087】
[A.2. r次多項式]
Vn(t,ir)は、時刻ゼロから時刻tまでのVf(t,ir)をr次多項式(rは、1以上10以下の整数)で近似したモデルであっても良い。
一時的なセル電圧の変動を含むVf(t,ir)をr次多項式(相対的に低次の多項式)で近似すると、一時的なセル電圧の変動が相殺された平均的なI-V特性が得られる。故障が生じていない場合、r次多項式で近似されたI-V特性は、故障に起因するセル電圧の低下を含まないVmean(t,ir)に似た形状になる。
【0088】
しかし、故障が生じた場合、r次多項式で近似されたI-V特性は、故障前のI-V特性と故障後のI-V特性の双方を含むデータを用いて近似が行われる。そのため、r次多項式は、故障が生じた直後は故障によるセル電圧の低下が反映されにくい。一方、Vmean(t,ir)は、故障によるセル電圧の低下が直ちに反映される。そのため、r次多項式で近似されたI-V特性とVmean(t,ir)とを対比すると、故障の有無を判断することができる。
【0089】
[A.3. 検出方法]
図7に、非故障モデルV
n(t,i
r)を用いた故障検出方法の模式図を示す。
図7に示すように、故障が発生すると、V
mean(t,i
r)は、V
n(t,i
r)に比べて低くなる。そのため、式(4.1)又は式(4.2)に示すように、現在の時刻tにおけるV
mean(t,i
r)と、V
n(t,i
r)との差の絶対値がある閾値ε
41を超えている時、又はε
41以上である時には、故障が発生したと判断することができる。
あるいは、式(4.3)又は式(4.4)に示すように、V
n(t,i
r)/dtに対するV
mean(t,i
r)の比の絶対値がある閾値ε
42未満である時、又はε
42以下である時には、故障が発生したと判断することができる。
【0090】
一方、故障が検出されなかった場合、Vmean(t,ir)だけでなくVn(t,ir)もまた、電極触媒の経時劣化によるセル電圧の低下が考慮されたIV特性の推定値を表す。そのため、Vmean(t,ir)又はVn(t,ir)を用いて、劣化推定、燃料消費予測、航続距離予測などが可能となる。
【0091】
[4. 作用]
まず、時々刻々と変化するFC電流i(t)、第1セル電圧V1(t)、第1特徴量X1(t)、及び第2特徴量X2(t)を取得し、これらをメモリに記憶させる。
次に、FC電流i(t)が代表電流irである時(例えば、ir=0.2A/cm2である時)の時刻t及びV1(t)をメモリから読み出し、i(t)がirである時のセル電圧の経時変化、すなわち、代表I-V特性Vf(t,ir)を算出する。
同様に、FC電流i(t)が代表電流irである時の時刻t、X1(t)、及びX2(t)をメモリから読み出し、i(t)がirである時の一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)を算出する。
さらに、得られたVf(t,ir)からYm(X1,X2)を差し引くことにより、平均I-V特性Vmean(t,ir)を算出する。
【0092】
非故障時において、Vf(t,ir)には、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下と、一時的なセル電圧の変動分Ym(X1,X2)とが含まれる。また、燃料電池が故障した時には、Vf(t,ir)には、さらに故障に起因するセル電圧の低下が加算される。そのため、Vf(t,ir)のみを用いて故障診断を行っても、正確な故障診断はむずかしい。
【0093】
これに対し、非故障時において、Vmean(t,ir)には、電極触媒の経時劣化に起因するセル電圧の低下のみが含まれる。また、燃料電池の故障が生じた時には、Vmean(t,ir)には、さらに故障に起因するセル電圧の低下が加算される。そのため、Vmean(t,ir)の変化を逐次監視すれば、Vmean(t,ir)の変化量から故障の有無を判断することができる。一方、故障が検出されなかったときには、Vmean(t,ir)に基づいて、燃料電池の劣化推定やIV性能推定を行うことができる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る故障検出及び劣化推定装置は、燃料電池を搭載した車両の燃料電池の故障判定、劣化推定、消費燃料予測、航続距離予測などに用いることができる。