(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118052
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】レベルシフタ、ドライブ回路、スイッチング電源装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240823BHJP
H03K 19/0185 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H03K19/0185 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024227
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
【テーマコード(参考)】
5H740
5J056
【Fターム(参考)】
5H740AA04
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J056AA11
5J056BB34
5J056CC21
5J056CC29
5J056DD13
5J056DD28
5J056DD55
(57)【要約】
【課題】誤動作を防止でき且つ遅延時間を抑制することができるレベルシフタを提供する。
【解決手段】レベルシフタ(LS2)は、第1~3信号生成部(11、12、13)を備える。第1,2信号生成部は、第1電圧が第2電圧より高い場合には第1電圧に基づく第1内部電圧を、第2電圧が第1電圧より高い場合には第2電圧に基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いる。第3信号生成部は、第2電圧を上側電源電圧として用いる。第1信号生成部は、第3電圧が第4電圧より高い場合には第3電圧に基づく第3内部電圧を、第4電圧が第3電圧より高い場合には第4電圧に基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いる。第3電圧は第1電圧より低く、第4電圧は第2電圧より低い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に応じた第1の二値信号を生成するように構成された第1信号生成部と、
前記第1の二値信号に応じた第2の二値信号を生成するように構成された第2信号生成部と、
前記第2の二値信号に応じた第3の二値信号を生成するように構成された第3信号生成部と、を備え、
前記第1信号生成部及び前記第2信号生成部は、第1電圧が第2電圧より高い場合には前記第1電圧に基づく第1内部電圧を、前記第2電圧が前記第1電圧より高い場合には前記第2電圧に基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いるように構成され、
前記第3信号生成部は、前記第2電圧を上側電源電圧として用いるように構成され、
前記第1信号生成部は、第3電圧が第4電圧より高い場合には前記第3電圧に基づく第3内部電圧を、前記第4電圧が前記第3電圧より高い場合には前記第4電圧に基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いるように構成され、
前記第2信号生成部及び前記第3信号生成部は、前記第4電圧を下側電源電圧として用いるように構成され、
前記第3電圧は前記第1電圧より低く、前記第4電圧は前記第2電圧より低い、レベルシフタ。
【請求項2】
前記第1内部電圧及び前記第2内部電圧を生成するように構成された上側電源部を備える、請求項1に記載のレベルシフタ。
【請求項3】
前記上側電源部は、
アノードに前記第1電圧が印加されるように構成された第1ダイオードと、
アノードに前記第2電圧が印加されるように構成された第2ダイオードと、を備え、
前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードの各カソードが前記第1信号生成部及び前記第2信号生成部に接続される、請求項2に記載のレベルシフタ。
【請求項4】
前記第3内部電圧及び前記第4内部電圧を生成するように構成された下側電源部を備える、請求項1に記載のレベルシフタ。
【請求項5】
前記下側電源部は、
アノードに前記第3電圧が印加されるように構成された第3ダイオードと、
アノードに前記第4電圧が印加されるように構成された第4ダイオードと、を備え、
前記第3ダイオード及び前記第4ダイオードの各カソードが前記第1信号生成部に接続される、請求項4に記載のレベルシフタ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のレベルシフタを備え、スイッチング素子を駆動するように構成されている、ドライブ回路。
【請求項7】
請求項6に記載のドライブ回路と、
前記スイッチング素子である第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに発生する前記第4電圧から前記第2電圧を生成するように構成されたブートストラップ回路と、
を備える、スイッチング電源装置。
【請求項8】
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子はそれぞれ、GANデバイスである、請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
請求項7に記載のスイッチング電源装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、レベルシフタ、ドライブ回路、スイッチング電源装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
降圧型スイッチング電源装置の電力密度向上を実現する技術として、高周波でも高い降圧比を実現することができるスイッチング電源装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、近年のスイッチング電源装置における大電力要求に対する解決手段として、スイッチング素子にGaNデバイスを用いる手法が台頭してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
降圧型スイッチング電源装置の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子として用いられるGaNデバイスが高周波条件下で相補的にスイッチングする際に、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の接続ノードに発生するスイッチング電圧は、デッドタイム中に負側に大きく落ち込む。
【0006】
スイッチング電圧の負側への大きな落ち込みによって、降圧型スイッチング電源装置の制御回路に設けられるレベルシフタが誤動作するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているレベルシフタは、入力信号に応じた第1の二値信号を生成するように構成された第1信号生成部と、前記第1の二値信号に応じた第2の二値信号を生成するように構成された第2信号生成部と、前記第2の二値信号に応じた第3の二値信号を生成するように構成された第3信号生成部と、を備える。前記第1信号生成部及び前記第2信号生成部は、第1電圧が第2電圧より高い場合には前記第1電圧に基づく第1内部電圧を、前記第2電圧が前記第1電圧より高い場合には前記第2電圧に基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いるように構成されている。前記第3信号生成部は、前記第2電圧を上側電源電圧として用いるように構成されている。前記第1信号生成部は、第3電圧が第4電圧より高い場合には前記第3電圧に基づく第3内部電圧を、前記第4電圧が前記第3電圧より高い場合には前記第4電圧に基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いるように構成されている。前記第2信号生成部及び前記第3信号生成部は、前記第4電圧を下側電源電圧として用いるように構成されている。前記第3電圧は前記第1電圧より低く、前記第4電圧は前記第2電圧より低い。
【0008】
本明細書中に開示されているドライブ回路は、上記構成のレベルシフタを備え、スイッチング素子を駆動するように構成されている。
【0009】
本明細書中に開示されているスイッチング電源装置は、上記構成のドライブ回路と、前記スイッチング素子である第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに発生する前記第4電圧から前記第2電圧を生成するように構成されたブートストラップ回路と、を備える。
【0010】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成のスイッチング電源装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本明細書中に開示されている発明によれば、レベルシフタの誤動作を防止でき且つレベルシフタ内での遅延時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、スイッチング電源装置の比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスイッチング電源装置の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、比較例に係るレベルシフタの一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すレベルシフタの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、スイッチング電源装置の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るレベルシフタの概略構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るレベルシフタの具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すレベルシフタの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0014】
<スイッチング電源装置(比較例)>
図1は、スイッチング電源装置の比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)を示す図である。本比較例のスイッチング電源装置100は、制御部CNT1と、ドライバ回路DRV1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2と、インダクタL1と、出力コンデンサC0と、ブートストラップ回路BST1と、を備える。ドライバ回路DRV1は、レベルシフタLS1と、ドライバD1及びD2と、を備え、スイッチング素子を駆動する回路である。
【0015】
スイッチング素子であるNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2は、直列接続される。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2はGANデバイスである。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2より高電位側に設けれられるハイサイドスイッチである。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1より低電位側に設けれられるローサイドスイッチである。
【0016】
制御部CNT1は、制御信号HD0及びLDを出力する。制御信号HD0と制御信号LDとは、基本的に一方がHIGHレベルであるときに他方がLOWレベルである。なお、制御部CNT1は、制御信号HD0及びLDの双方がLOWレベルであるデッドタイムを設ける。
【0017】
レベルシフタLS1は、制御信号HD0をレベルシフトした制御信号HDを出力する。ドライバD1は、制御信号HDを増幅したゲート駆動信号HGをNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1のゲートに供給し、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1を駆動する。ドライバD1は、ブートストラップ電圧BSTを正側電源電圧として用い、スイッチング電圧SWを負側電源電圧として用いる。
【0018】
ドライバD2は、制御信号LDを増幅したゲート駆動信号LGをNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2のゲートに供給し、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2を駆動する。ドライバD2は、定電圧VREG(<入力電圧VIN)を正側電源電圧として用い、グランド電圧GND(=0V)を負側電源電圧として用いる。定電圧VREGは、グランド電圧GNDより高い電圧である。
【0019】
入力電圧VINは、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1のドレインに印加される。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2のソースにグランド電圧GNDが印加される。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2のスイッチングによって、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及び2の接続ノードにスイッチング電圧SWが発生する。
【0020】
インダクタL1及び出力コンデンサC0は、スイッチング電圧SWを平滑化して出力電圧VOUTを生成する。
【0021】
ブートストラップ回路BST1は、定電圧VREG及びスイッチング電圧SWを用いて、入力電圧VIN及びスイッチング電圧SWより高いブートストラップ電圧BSTを生成する。
【0022】
図2は、スイッチング電源装置100の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
図2では、上から順に、ゲート駆動信号HGと、ゲート駆動信号LGと、スイッチング電圧SWと、が描写されている。ゲート駆動信号HG及びLGの双方がLOWレベルであるデッドタイムDTにおいて、インダクタL1に流れる電流によってスイッチング電圧SWが負側に落ち込む。
【0023】
仮にNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2がSiデバイスとすると、デッドタイムDTにおけるスイッチング電圧SWの負側への落ち込み量NVは、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2のボディダイオードの順方向電圧である約0.7Vとなる。
【0024】
GaNデバイスであるNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2にはボディダイオードが存在しないが、ドレイン電圧に対してゲート電圧が高くなりゲート電圧とドレイン電圧との差が閾値電圧を超えるとチャネルが形成される。このため、デッドタイムDTにおけるスイッチング電圧SWの負側への落ち込み量NVは、GaNデバイスであるNチャネル型MOS電界効果トランジスタQ2の閾値電圧である約2.5Vとなる。
【0025】
つまり、スイッチング電源装置100では、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2がGaNデバイスであるため、デッドタイムDTにおけるスイッチング電圧SWの負側への落ち込み量NVが大きくなる。
【0026】
図3は、比較例に係るレベルシフタLS1の一構成例を示す図である。
図3に示す構成例のレベルシフタLS1は、バッファB1と、インバータINV1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM1及びM2と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM3及びM4と、バッファB2と、を備える。
【0027】
図4は、
図3に示すレベルシフタの各部電圧等を示すタイミングチャートである。
図4は、スイッチング電圧SWが0Vを維持している期間からデッドタイムを経由して立ち上がる期間に遷移する部分のタイミングチャートである。
図4では、上から順に、ブートストラップ電圧BSTと、制御信号HD0及びスイッチング電圧SWと、レベルシフタLS1から見た制御信号HD0と、制御信号HDと、が描写されている。
【0028】
制御信号HD0は、レベルシフタLS1の入力信号である。レベルシフタLS1から見た制御信号HD0の波形は、レベルシフタLS1の負側電源電圧であるスイッチング電圧SWを基準してみた場合の信号波形である。制御信号HDは、レベルシフタLS1の出力信号である。
【0029】
スイッチング電圧SWが負側に大きく落ち込むことによって、0Vである制御信号HD0がスイッチング電圧SWよりブートストラップ電圧BSTに近づく期間T1が現れる。この期間T1において、レベルシフタLS1は、0Vである制御信号HD0をHIGHレベルの入力信号であるとみなして誤動作して制御信号HDをHIGHレベルの出力信号としてしまう。
【0030】
上記の考察に鑑み、以下では、レベルシフタの誤動作を防止できる新規な実施形態を提案する。
【0031】
<スイッチング電源装置(実施形態)>
図5は、スイッチング電源装置の実施形態を示す図である。本実施形態のスイッチング電源装置200は、ドライバ回路DRV1の代わりにドライバ回路DRV1を備える点で上述したスイッチング電源装置100と異なり、それ以外の点で上述したスイッチング電源装置100と基本的に同様である。ドライバ回路DRV2は、レベルシフタLS2と、ドライバD1及びD2と、を備え、スイッチング素子を駆動する回路である。
【0032】
図6は、レベルシフタLS2の概略構成例を示す図である。
図6に示す概略構成例のレベルシフタLS2は、前段部10と、第1信号生成部11と、第2信号生成部12と、第3信号生成部13と、を備える。
【0033】
前段部10は、レベルシフタLS2の入力信号である制御信号HD0をアップシフトした中間信号S0を生成する。
【0034】
第1信号生成部11は、中間信号S0に応じた第1の二値信号S1を生成する。中間信号S0は、制御信号HD0に応じた二値信号である。したがって、第1信号生成部11は、レベルシフタLS2の入力信号である制御信号HD0に応じた第1の二値信号S1を生成する。
【0035】
第2信号生成部12は、第1の二値信号S1に応じた第2の二値信号S2を生成する。
【0036】
第3信号生成部13は、第2の二値信号S2に応じた制御信号HDを生成する。制御信号HDは、第2の二値信号S2に応じた二値信号である。
【0037】
第1信号生成部11及び第2信号生成部12は、定電圧VREGがブートストラップ電圧BSTより高い場合には定電圧VREGに基づく第1内部電圧を、ブートストラップ電圧BSTが定電圧VREGより高い場合にはブートストラップ電圧BSTに基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いる。第1内部電圧は、定電圧VREGより第1所定値だけ低い電圧である。第2内部電圧は、ブートストラップ電圧BSTより第2所定値だけ低い電圧である。
【0038】
第3信号生成部13は、ブートストラップ電圧BSTを上側電源電圧として用いる。
【0039】
第1信号生成部11は、グランド電圧GNDがスイッチング電圧SWより高い場合にはグランド電圧GNDに基づく第3内部電圧を、スイッチング電圧SWがグランド電圧GNDより高い場合にはスイッチング電圧SWに基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いる。第3内部電圧は、グランド電圧GNDより第3所定値だけ低い電圧である。第4内部電圧は、スイッチング電圧SWより第4所定値だけ低い電圧である。
【0040】
第2信号生成部12及び第3信号生成部13は、スイッチング電圧SWを下側電源電圧として用いる。
【0041】
上側電源部14は、第1内部電圧及び第2内部電圧を生成する。上側電源部14は、定電圧VREGがブートストラップ電圧BSTより高い場合には第1内部電圧を、ブートストラップ電圧BSTが定電圧VREGより高い場合には第2内部電圧を第1信号生成部11及び第2信号生成部12に供給する。
【0042】
下側電源部15は、第3内部電圧及び第4内部電圧を生成する。下側電源部15は、グランド電圧GNDがスイッチング電圧SWより高い場合には第3内部電圧を、スイッチング電圧SWがグランド電圧GNDより高い場合には第4内部電圧を第1信号生成部11に供給する。
【0043】
定電圧VREGがブートストラップ電圧BSTより高い場合に第1信号生成部11が第1内部電圧を上側電源電圧として用いることで、第1信号生成部11は、0Vである中間信号S0をLOWレベルであると判定することができる。したがって、レベルシフタLS2は、0Vである制御信号HD0をHIGHレベルの入力信号であるとみなして誤動作することを防止できる。
【0044】
そして、第2信号生成部12及び第3信号生成部13によって、中間信号S0は制御信号HDに変換される。制御信号HDは、HIGHレベルであるときにブートストラップ電圧BSTと同じ値になり、LOWレベルであるときにスイッチング電圧SWと同じ値になる。
【0045】
上述した通り、第1信号生成部11は、定電圧VREGがブートストラップ電圧BSTより高い場合には定電圧VREGに基づく第1内部電圧を、ブートストラップ電圧BSTが定電圧VREGより高い場合にはブートストラップ電圧BSTに基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いる。また、第1信号生成部11は、グランド電圧GNDがスイッチング電圧SWより高い場合にはグランド電圧GNDに基づく第3内部電圧を、スイッチング電圧SWがグランド電圧GNDより高い場合にはスイッチング電圧SWに基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いる。これにより、第1信号生成部11の上側電源電圧と下側電源電圧との電圧差を低く抑えることができる。したがって、第1信号生成部11に高耐圧素子を設ける必要がなくなり、その結果、レベルシフタLS2は、高耐圧素子によって生じる信号の遅延時間を抑制することができる。
【0046】
図7は、レベルシフタLS2の具体例を示す図である。
【0047】
図7に示すレベルシフタLS2の前段部10は、バッファB1と、インバータINV1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM1及びM2並びにPチャネル型MOS電界効果トランジスタM3及びM4を含むレベルシフタと、を備える。
【0048】
バッファB1の正側電源電圧は定電圧VREGである。バッファB1の負側電源電圧はグランド電圧GNDである。
【0049】
Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM1及びM2並びにPチャネル型MOS電界効果トランジスタM3及びM4を含むレベルシフタの正側電源電圧は電圧BST’である。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM1及びM2並びにPチャネル型MOS電界効果トランジスタM3及びM4を含むレベルシフタの負側電源電圧はグランド電圧GNDである。
【0050】
図7に示すレベルシフタLS2の第1信号生成部11は、バッファB2である。
【0051】
バッファB2の正側電源電圧は電圧BST’である。バッファB2の負側電源電圧は電圧SW’である。
【0052】
図7に示すレベルシフタLS2の第2信号生成部12は、インバータINV2と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM5及びM6並びにNチャネル型MOS電界効果トランジスタM7及びM8を含むダウンシフタと、を備える。
【0053】
Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM5及びM6並びにNチャネル型MOS電界効果トランジスタM7及びM8を含むダウンシフタの正側電源電圧は電圧BST’である。Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM5及びM6並びにNチャネル型MOS電界効果トランジスタM7及びM8を含むダウンシフタの負側電源電圧はスイッチング電圧SWである。
【0054】
図7に示すレベルシフタLS2の第3信号生成部13は、バッファB3である。
【0055】
バッファB3の正側電源電圧はブートストラップ電圧BSTである。バッファB3の負側電源電圧はスイッチング電圧SWである。
【0056】
図7に示すレベルシフタLS2のダイオードDi1及びDi2は、上側電源部14の具体例である。
【0057】
ダイオードDi1のアノードに定電圧VREGが印加される。ダイオードDi2のアノードにブートストラップ電圧BSTが印加される。
【0058】
定電圧VREGがブートストラップ電圧BSTより高い場合、ダイオードDi1及びDi2の各カソードに印加される電圧BST’は、定電圧VREGからダイオードDi1の順方向電圧だけ降下した電圧となる。一方、ブートストラップ電圧BSTが定電圧VREGより高い場合、ダイオードDi1及びDi2の各カソードに印加される電圧BST’は、ブートストラップ電圧BSTからダイオードDi2の順方向電圧だけ降下した電圧となる。
【0059】
図7に示すレベルシフタLS2のダイオードDi3及びDi4は、下側電源部15の具体例である。
【0060】
ダイオードDi3のアノードにグランド電圧GNDが印加される。ダイオードDi4のアノードにスイッチング電圧SWが印加される。
【0061】
グランド電圧GNDがスイッチング電圧SWより高い場合、ダイオードDi3及びDi4の各カソードに印加される電圧SW’は、グランド電圧GNDからダイオードDi3の順方向電圧だけ降下した電圧となる。一方、スイッチング電圧SWがグランド電圧GNDより高い場合、ダイオードDi3及びDi4の各カソードに印加される電圧SW’は、スイッチング電SWからダイオードDi4の順方向電圧だけ降下した電圧となる。
【0062】
図7に示すレベルシフタLS2は、コンデンサC1も備える。コンデンサC1の第1端は、ダイオードDi1及びDi2の各カソードに接続される。コンデンサC1の第2端は、ダイオードDi3及びDi4の各カソードに接続される。
【0063】
図8は、
図7に示すレベルシフタLS2の各部電圧等を示すタイミングチャートである。
図8では、上から順に、ブートストラップ電圧BST及び電圧BST’と、制御信号HD0、電圧SW’、及びスイッチング電圧SWと、中間信号S0と、第2の二値信号S2と、制御信号HDと、が描写されている。
【0064】
スイッチング電圧SWが負側に大きく落ち込むことによって、0Vである制御信号HD0がスイッチング電圧SWよりブートストラップ電圧BSTに近づく期間T1において、中間信号S0は、電圧BST’より電圧SW’に近づく。したがって、この期間T1において、レベルシフタLS2は、0Vである制御信号HD0をLOWレベルの入力信号であると正しく判定して制御信号HDをLOWレベルの出力信号とする。
【0065】
<適用例>
図9は、車両Xの外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリから出力される電圧の供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置は、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0066】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0067】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]、DRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0068】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0069】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う制動ユニットである。
【0070】
電子機器X15は、ドアロック、防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0071】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品又はメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0072】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0073】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0074】
なお、先に説明したスイッチング電源装置200は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。また、先に説明したスイッチング電源装置200の用途としては、車両Xに搭載される電源に限定されず、例えば産業機器に搭載される電源であってもよい。
【0075】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0076】
上述した実施形態では、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2はGaNデバイスであったが、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2は例えばSiデバイスであってもよい。Nチャネル型MOS電界効果トランジスタQ1及びQ2がSiデバイスである場合には、デッドタイムにおけるスイッチング電圧の負側への落ち込みは小さいが、定電圧VREGが例えば3V等の低い電圧であればレベルシフタが誤動作するおそれがあるからである。
【0077】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0078】
本開示のレベルシフタ(LS2)は、入力信号に応じた第1の二値信号を生成するように構成された第1信号生成部(11)と、前記第1の二値信号に応じた第2の二値信号を生成するように構成された第2信号生成部(12)と、前記第2の二値信号に応じた第3の二値信号を生成するように構成された第3信号生成部(13)と、を備え、前記第1信号生成部及び前記第2信号生成部は、第1電圧が第2電圧より高い場合には前記第1電圧に基づく第1内部電圧を、前記第2電圧が前記第1電圧より高い場合には前記第2電圧に基づく第2内部電圧を上側電源電圧として用いるように構成され、前記第3信号生成部は、前記第2電圧を上側電源電圧として用いるように構成され、前記第1信号生成部は、第3電圧が第4電圧より高い場合には前記第3電圧に基づく第3内部電圧を、前記第4電圧が前記第3電圧より高い場合には前記第4電圧に基づく第4内部電圧を下側電源電圧として用いるように構成され、前記第2信号生成部及び前記第3信号生成部は、前記第4電圧を下側電源電圧として用いるように構成され、前記第3電圧は前記第1電圧より低く、前記第4電圧は前記第2電圧より低い構成(第1の構成)である。
【0079】
上記第1の構成のレベルシフタにおいて、前記第1内部電圧及び前記第2内部電圧を生成するように構成された上側電源部(14)を備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0080】
上記第2の構成のレベルシフタにおいて、前記上側電源部は、アノードに前記第1電圧が印加されるように構成された第1ダイオード(Di1)と、アノードに前記第2電圧が印加されるように構成された第2ダイオード(Di2)と、を備え、前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードの各カソードが前記第1信号生成部及び前記第2信号生成部に接続される構成(第3の構成)であってもよい。
【0081】
上記第1~第3いずれかの構成のレベルシフタにおいて、前記第3内部電圧及び前記第4内部電圧を生成するように構成された下側電源部(15)を備える構成(第4の構成)であってもよい。
【0082】
上記第4の構成のレベルシフタにおいて、前記下側電源部は、アノードに前記第3電圧が印加されるように構成された第3ダイオード(Di3)と、アノードに前記第4電圧が印加されるように構成された第4ダイオード(Di4)と、を備え、前記第3ダイオード及び前記第4ダイオードの各カソードが前記第1信号生成部に接続される構成(第5の構成)であってもよい。
【0083】
本開示のドライブ回路(DRV2)は、上記第1~第5いずれかの構成のレベルシフタを備え、スイッチング素子(Q1、Q2)を駆動するように構成されている構成(第6の構成)である。
【0084】
本開示のスイッチング電源装置は、上記第6の構成のドライブ回路と、前記スイッチング素子である第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに発生する前記第4電圧から前記第2電圧を生成するように構成されたブートストラップ回路(BST1)と、を備える構成(第7の構成)である。
【0085】
上記第7の構成のスイッチング電源装置において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子はそれぞれ、GANデバイスである構成(第8の構成)であってもよい。
【0086】
本開示の車両(X)は、上記第7又は第8の構成のスイッチング電源装置を備える構成(第9の構成)である。
【符号の説明】
【0087】
10 前段部
11~13 第1~第3信号生成部
100、200 スイッチング電源装置
B1~B3 バッファ
BST1 ブートストラップ回路
C0 出力コンデンサ
C1 コンデンサ
CNT1 制御部
D1、D2 ドライバ
Di1~Di4 ダイオード
DRV1、DRV2 ドライブ回路
INV1、INV2 インバータ
LS1、LS2 レベルシフタ
L1 インダクタ
M1、M2、M7、M8Q1、Q2 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
M3、M4、M5、M6 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
X 車両
X11~X18 電子機器