(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118056
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】樹脂の熱分解ガスの燃焼装置、および燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23G 7/06 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F23G7/06 D ZAB
F23G7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024231
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】594146179
【氏名又は名称】株式会社新菱
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
【テーマコード(参考)】
3K078
【Fターム(参考)】
3K078AA06
3K078BA05
3K078BA17
(57)【要約】
【課題】樹脂の熱分解ガスを燃焼した後のガスに含まれる未燃ガスやNOxの低減効果が安定して得られる、燃焼装置等を提供する。
【解決手段】樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる、前記熱分解ガスの燃焼装置10であって、前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部4と、供給部4から供給された気体の燃焼室5と、を有し、供給部4が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、前記並行管の前記第一の管の燃焼室5側の底部が、閉じたものであり、前記第二の管の燃焼室5側の底部が、燃焼室5に気体を供給するための開口部を有する、燃焼装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼装置であって、
前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、
前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、
前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、
前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、
前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する、燃焼装置。
【請求項2】
前記供給部が、前記第一の管である前記熱分解ガスを流通させる内筒と、前記第二の管である前記空気を流通させる外筒とを有する二重管を有し、
前記二重管の前記内筒が、側面に前記連通部となる孔を有する請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記燃焼室で燃焼されたガスを排出する排出口が、前記供給部の噴き出し方向から逸れた位置に設けられ、
前記噴き出し方向の軸上は、前記燃焼室の炉壁である、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記樹脂が、エチレンビニルアセテートを含む、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記樹脂含有複合材が太陽光パネルである、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項6】
樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼方法であって、
前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、
前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、
前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、
前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、
前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する燃焼装置を用いて、
前記供給部の前記第一の管に、前記熱分解ガスを流通させ、かつ、前記供給部の前記第二の管に前記空気を流通させる工程(1)と、
前記工程(1)で流通させた前記熱分解ガスを前記連通部に通気させ、前記空気と混合して混合気体とする工程(2)と、
前記工程(2)の前記混合気体を、前記燃焼室に供給して、前記燃焼室で、前記混合気体に含まれる前記熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする工程(3)と、
前記工程(3)の前記処理気体を、前記燃焼室から排出する工程(4)とを有する、燃焼方法。
【請求項7】
前記熱分解ガスを燃焼する供給部と、前記供給部から噴き出した気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通する内筒と、空気を流通する外筒との二重管を有し、前記内筒が、側面に孔を有する燃焼装置を用いる、請求項6に記載の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する熱分解ガスの燃焼装置に関する。また、その熱分解ガスの燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済の太陽光発電パネルや炭素繊維強化樹脂等の樹脂含有複合材から樹脂を熱分解によって除去し、有価物を回収・再資源化することが行われている。樹脂を熱分解する際に発生する熱分解ガスは有害な成分を含む場合があり、燃焼装置で燃焼し、CO2やH2O等の無害なガスにしてから大気に放出することが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1は、樹脂と基材を含む複合材または混合物である被処理物を無端ベルトで搬送しながら非酸化性雰囲気または制御された酸素含有雰囲気で熱処理して加熱処理物を得るトンネル炉を備えた熱処理装置に関する。ここでは、排気ガス排出手段60の燃焼装置61によって燃焼処理された後、外部に排気されることが記載されている(特許文献1段落0050)。
【0004】
特許文献2は、太陽電池モジュールに含まれる、エチレンビニルアセテート(EVA)封止材を含む太陽電池素子から構成材料を回収するための方法に関する。ここでは、被処理物C(太陽電池素子)の熱処理により発生したEVA分解ガスは、炉内雰囲気ガスと共に、熱処理部1b上部に設置された排気口から配管P2を介して外部燃焼炉2へ供給され、LPGガスと共に燃焼されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-103047号公報
【特許文献2】特許第6297254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、樹脂含有複合材の廃棄物の熱分解時に発生するガスには変動があり、燃焼装置で燃焼しても未燃ガスが残留したり、燃焼室の高温領域でNOxが発生したりして、未燃ガスやNOxの低減効果が安定的に得られない場合があることがわかった。
【0007】
かかる状況下、本発明は、樹脂の熱分解ガスを燃焼した後のガスに含まれる未燃ガスやNOxの低減効果が安定して得られる、燃焼装置や燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0009】
<1> 樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼装置であって、前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する、燃焼装置。
<2> 前記供給部が、前記第一の管である前記熱分解ガスを流通させる内筒と、前記第二の管である前記空気を流通させる外筒とを有する二重管を有し、前記二重管の前記内筒が、側面に前記連通部となる孔を有する前記<1>に記載の燃焼装置。
<3> 前記燃焼室で燃焼されたガスを排出する排出口が、前記供給部の噴き出し方向から逸れた位置に設けられ、前記噴き出し方向の軸上は、前記燃焼室の炉壁である、前記<1>または<2>に記載の燃焼装置。
<4> 前記樹脂が、エチレンビニルアセテートを含む、前記<1>~<3>のいずれかに記載の燃焼装置。
<5> 前記樹脂含有複合材が太陽光パネルである、前記<1>~<4>のいずれかに記載の燃焼装置。
<6> 樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼方法であって、前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する燃焼装置を用いて、
前記供給部の前記第一の管に、前記熱分解ガスを流通させ、かつ、前記供給部の前記第二の管に前記空気を流通させる工程(1)と、
前記工程(1)で流通させた前記熱分解ガスを前記連通部に通気させ、前記空気と混合して混合気体とする工程(2)と、
前記工程(2)の前記混合気体を、前記燃焼室に供給して、前記燃焼室で、前記混合気体に含まれる前記熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする工程(3)と、
前記工程(3)の前記処理気体を、前記燃焼室から排出する工程(4)とを有する、燃焼方法。
<7> 前記熱分解ガスを燃焼する供給部と、前記供給部から噴き出した気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通する内筒と、空気を流通する外筒との二重管を有し、前記内筒が、側面に孔を有する燃焼装置を用いる、前記<6>に記載の燃焼方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃焼装置や燃焼方法によれば、樹脂の熱分解ガスを燃焼した後のガスに含まれる未燃ガスやNOxの低減効果が安定して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の燃焼装置を利用する樹脂含有複合材の処理装置の概要図である。
【
図2】本発明の燃焼装置の供給部の一例を示す概要図である。
【
図3】本発明の燃焼装置の供給部の例を示す概要図である。
【
図4】本発明の燃焼装置の供給部の他の例を示す概要図である。
【
図5】本発明の燃焼装置の供給部の他の例を示す概要図である。
【
図6】従来の燃焼装置の構造例を示す概要図である。
【
図7】従来の燃焼装置の構造例を示す概要図である。
【
図8】シミュレーションにより燃焼室の高温領域を検証した図である。
【
図9】シミュレーションにより燃焼室の未燃ガス濃度を検証した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0013】
[本発明の燃焼装置]
本発明の燃焼装置は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼装置であって、前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する。
【0014】
[本発明の燃焼方法]
本発明の燃焼方法は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する前記樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼方法であって、
前記熱分解ガスを含む気体を供給する供給部と、前記供給部から供給された気体の燃焼室と、を有し、前記供給部が、前記熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有し、前記並行管が、前記第一の管内の前記熱分解ガスが前記第二の管に流通するための前記第一の管と前記第二の管が連通する連通部を有し、前記第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものであり、前記第二の管の前記燃焼室側の底部が、前記燃焼室に気体を供給するための開口部を有する燃焼装置を用いて、
前記供給部の前記第一の管に、前記熱分解ガスを流通させ、かつ、前記供給部の前記第二の管に前記空気を流通させる工程(1)と、
前記工程(1)で流通させた前記熱分解ガスを前記連通部に通気させ、前記空気と混合して混合気体とする工程(2)と、
前記工程(2)の前記混合気体を、前記燃焼室に供給して、前記燃焼室で、前記混合気体に含まれる前記熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする工程(3)と、
前記工程(3)の前記処理気体を、前記燃焼室から排出する工程(4)とを有する。
【0015】
なお、本願において本発明の燃焼装置により本発明の燃焼方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。本発明の燃焼装置や、本発明の燃焼方法によれば、樹脂の熱分解ガスを燃焼した後のガスに含まれる未燃ガスやNOxの低減効果が安定して得られる。
【0016】
本発明者らは、樹脂含有複合材の廃棄物の熱分解時に発生する熱分解ガスの燃焼装置による処理を詳しく検討した。熱分解の処理対象の種類や量、加熱処理時の状態、経時変化などに、熱分解ガスはその組成や量が変動することがあり、燃焼装置で燃焼しても、十分に処理できていない未燃ガスが生じる恐れがある。また、燃焼室に高温領域があると、そこでNOxが発生する恐れがある。
【0017】
この原因について、後述するシミュレーションなども通して検証した結果、燃焼装置に用いる燃焼室内での状態が大きく影響していることがわかった。一般的に、簡便で装置の設計上効率的な手法としては、燃焼室を十分な容量として、この燃焼室内に、熱分解ガスと、空気と、燃焼用の気体(LPG)などをそれぞれ供給することが考えられる。そして、燃焼室内での滞留時間などを確保すれば、熱分解ガスは処理されると考えられる。さらに、燃焼室内での滞留時間をより確実に確保するために、邪魔板などを設けることも有効と考えられる。
【0018】
しかし、シミュレーションなどを行った結果、別々にそれぞれのガスを供給すると、燃焼室の手前側でガスがぶつかり合うように設計されていたとしても、燃焼室内で不均一な状態が多くなり、燃焼室の出口まで十分にガスが燃焼されずに、未燃ガスが残ったまま排出されることや、高温となる領域が大きくなるため、NOxの発生が増加することが懸念される状態であることがわかった。
【0019】
このような燃焼室内での不均一さを解消するために、燃焼装置の設計を見直した結果、熱分解ガスを流通する内筒と、空気を流通する外筒との二重管を含み、内筒が、側面に孔を有する供給部などの構成を有する本発明の燃焼装置にすると、燃焼室に入るときに、熱分解ガスと空気が混合され、燃焼室内で均一に燃焼されて、出口から排出されるガスに含まれる未燃ガスやNOxを低減できることを見出した。本発明は、このような知見に基づく。
【0020】
[太陽電池パネルのリサイクル装置]
図1は、本発明の燃焼装置を利用することができる樹脂含有複合材の処理装置の概要図である。ここでは、樹脂含有複合材として太陽光電池パネル(PV(Photovoltaic)パネル)などの太陽光電池素子を、加熱処理して、その構成材料を回収するための処理装置を例に説明する。
【0021】
処理装置100は、搬送ライン21により
図1の左側から右側に向けて、樹脂含有複合材3を搬送する。各室で、樹脂含有複合材3が熱処理などで処理される。処理装置100は、
図1の左側から入口室11、入口シール室12、1次焼成ゾーン13、切替部14、2次焼成ゾーン15、空冷室16、冷却室17、出口シール室18、および出口室19を有する。各室で発生した排ガスなどは、適宜、配管71や配管72、配管73などを通して、スクラバー91(除害塔)で薬液処理等されて排気ライン92から排気される。
【0022】
リサイクル対象となるPVパネルのような樹脂含有複合材3は、処理装置100に搬入されて、1次焼成ゾーン13と、2次焼成ゾーン15で、焼成されて、樹脂などを熱分解して、残留物を、空冷室16、冷却室17で冷却して、出口室19から回収する。このような処理装置の詳細については、前述の特許文献1や特許文献2などを参照することができる。
【0023】
1次焼成ゾーン13や、2次焼成ゾーン15で、焼成による熱処理でされることで、樹脂が熱分解した熱分解ガスが生じる。この熱分解ガスは、各種有機物などを含むため悪臭や環境汚染など有害な恐れがあるため、燃焼装置5で、加熱処理して排出される。本発明は、この燃焼装置に利用することができる。
【0024】
図1では、特に熱分解ガスが多い1次焼成ゾーン13に、燃焼装置10を採用する構成である。燃焼装置10は、供給部4から供給される気体と、LPGタンク631からLPG配管63を通して供給されたLPGガスを混合して、燃焼室5で燃焼する。供給部4は、1次焼成ゾーン13で発生した熱分解ガスを熱分解ガス配管61に通して流通し、空気配管62を通して空気を流通し、これらを混合して、燃焼室5に混合気体を供給する。
【0025】
燃焼室5で燃焼された気体は、排気配管51から排出され、再加熱ライン811と再加熱ライン821に分岐した配管に供給される。この排気される気体は温度が高いため、その一部は、1次焼成ゾーン13内の再加熱部812で1次焼成ゾーン13の加熱に利用されて、排気ライン813から排気ライン73に合流する。また、その一部は、2次焼成ゾーン15内の再加熱部822で2次焼成ゾーン15の加熱に利用されて、排気ライン823から排気ライン73に合流する。
【0026】
図2は、二重管の形状の供給部に用いられる構造の1例を示す斜視図である。
図3は、本発明の燃焼装置の供給部の二重管の形状の供給部の概要図である。
図2は、燃焼室に熱分解ガスを含む気体を供給する供給部の概形と、これらの位置関係の例を示すものである。
図3は、供給部の二重管の形状を説明するための正面視した断面図(
図3(a))や供給口側から見た側面図(
図3(b))である。
【0027】
[燃焼装置]
燃焼装置は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する樹脂の熱分解ガスを燃焼させる装置である。
図1に示すような、太陽光電池パネルなどの樹脂含有複合材の樹脂の熱分解ガスを、処理するために用いられる。この燃焼装置は、熱分解ガスを回収して処理することができる任意の配置で設けることができる。例えば、燃焼装置は、熱分解ガスが発生する主な場となる焼成ゾーンの周辺などに設けて用いることができる。
【0028】
燃焼装置は、熱分解ガスを供給するラインとなる供給部と、熱分解ガスを燃焼させる場となる燃焼室を少なくとも有する。さらに、燃焼させるための着火手段や、燃焼温度を調整するためのガスなどの燃料の供給部、炉内温度を調整や維持するための加熱手段や保温手段、これらの制御のための制御部や、監視のためのセンサーなどを有するものとすることができる。燃焼された後の気体は、排ガスとして出口から排出される。
【0029】
[本発明の燃焼方法のフロー例]
本発明の燃焼方法は、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する、樹脂の熱分解ガスを燃焼させる燃焼方法である。本発明の燃焼方法は、本発明の燃焼装置を用いて、例えば、次のようなフローで行うことができる。
【0030】
工程(1)は、供給部の内筒に、熱分解ガスを流通させ、かつ、供給部の外筒に空気を流通させる工程とすることができる。
工程(2)は、工程(1)で流通させた熱分解ガスと、空気とを、内筒の孔を通気させたときに混合して混合気体とする工程とすることができる。
工程(3)は、工程(2)の混合気体を、燃焼室に噴き出して、燃焼室で、混合気体に含まれる熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする工程とすることができる。
工程(4)は、工程(3)の処理気体を、燃焼室から排出する工程とすることができる。
【0031】
[供給部]
供給部は、燃焼室に熱分解ガスと、空気を混合した混合気体を供給する部分である。供給部は、熱分解ガスを流通させる第一の管と、空気を流通させる第二の管との並行管を有する。また、並行管が、第一の管内の熱分解ガスが第二の管に流通するための第一の管と第二の管が連通する連通部を有する。また、第一の管の燃焼室側の底部が、閉じたものである。また、第二の管の燃焼室側の底部が、燃焼室に気体を供給するための開口部を有する。
【0032】
供給部は、並行管の例として、二重管を用いたものとすることができる。二重管は、内筒と、外筒を有する。例えば、熱分解ガスを流通させる内筒と、空気を流通させる外筒を有する。また、この二重管の内筒は、側面に孔を有するものとすることができる。
【0033】
図3はこのような供給部41に関し、二重管の断面構造(
図3(a))と、側面視した形状(
図3(b))を示す図である。
図3(a)で、内筒の第一の管411は、左側から右側に流れるように熱分解ガスを流通させる。また、外筒の第二の管412は、空気を熱分解ガスとは別の経路から供給され、内筒と並行する部分で、熱分解ガスと同様に左側から右側に流れるように空気を流通させる。
【0034】
図3(a)における右端側は、燃焼室に接続する部分となる。内筒の燃焼室側の底部4111は、蓋がされて閉じた状態である。このため、熱分解ガス単独では、内筒側(第一の管411側)から燃焼室に入り込まない形状となっている。
【0035】
内筒の第一の管411は、燃焼室に接続する部分の手前側で、側面に連通部413となる孔が設けられている。この孔の外部には、外筒に流通させている空気が流れている。第一の管411は下流側の端部となる底部4111が閉じているため、熱分解ガスが単独で燃焼室に流通する流路が無い状態となっている。このため、熱分解ガスは、孔から外筒側に流れ、孔の周辺で空気と混合された混合気体となる。外筒の第二の管412は、燃焼室に接続する部分には、開口部414が設けられているため、この開口部414を通って、燃焼室に、供給部41から混合気体が供給される。
【0036】
これにより、燃焼室には、予め熱分解ガスと空気が混合された状態で供給されるため、熱分解ガスと空気との混合は、燃焼室内でも並行するように流れながら順次行われていき、衝突などが生じずに効率的に均一に反応していく。よって、燃焼室内でムラとなる原因が生じにくくなり、安定した燃焼が生じて、未燃ガスが生じにくくなる。
【0037】
図4は、並行管の形状の他の例にかかる供給部42の例である。
図4(a)は、断面構造である。
図4(b)は、側面視した形状である。角管状の第一の管421内を熱分解ガスが流通し、角管状の第二の管422内を空気が流通する。第一の管421と第二の管422が接する部分に、連通部423が設けられている。第一の管421は底部4211が閉じている。このため、連通部423を通って、熱分解ガスは第二の管422側に流通し、混合されて、開口部424から、燃焼室に混合気体が供給される。
【0038】
図5は、並行管の形状の他の例にかかる供給部43の例である。
図5(a)は、断面構造である。
図5(b)は、側面視した形状である。外筒の第一の管431内を熱分解ガスが流通し、内筒の第二の管432内を空気が流通する。第二の管432の外周の一部に、連通部433となる孔が設けられている。第一の管431は底部4311が閉じている。このため、連通部433を通って、熱分解ガスは第二の管432側に流通し、混合されて、開口部434から、燃焼室に混合気体が供給される。
【0039】
[熱分解ガス]
熱分解ガスは、樹脂含有複合材の樹脂を熱分解処理する際に発生する、樹脂が熱分解されたガスである。樹脂含有複合材は、使用されている樹脂の種類によって、様々な高分子などの有機化合物が含まれる。これらの樹脂には、元素として炭素や窒素、水素、酸素などが含まれ、これらの元素が化学結合等したものが、加熱により分解されて気化したものが熱分解ガスである。
【0040】
熱分解させるとき、気化の効率や、気化させるときの反応、気化したとき成分の特性などを考慮して、適宜、窒素雰囲気下などの不活性ガス下での気化や、空気などの酸素などの存在下での気化などを使い分ける場合がある。本発明の対象はいずれの気化条件で生じた熱分解ガスでもよいが、特に、酸素と反応させる燃焼を行うことがより有効に寄与しやすい、樹脂を窒素雰囲気下などの不活性ガス下で気化させた熱分解ガスなどを対象とすることができる。供給部の内筒に流入させる気体は、樹脂の熱分解ガスと、その熱分解ガスが生じた雰囲気ガス(窒素ガスなど)を含む気体を流入させる。
【0041】
[樹脂複合含有材]
樹脂含有複合材は、樹脂を含む複合材であればどのようなものを対象としてもよい。樹脂含有複合材の構造部材や、マトリックス樹脂、封止剤などに樹脂が用いられており、これらを単に取り外すような機械的な手法や、篩分けなどの選別手段などで樹脂を分離できないときに、熱分解で樹脂を処理するものなどで、本発明は利用できる。
図1は、PVパネルを例に説明したが、これらの他にも、例えば、繊維強化樹脂や、プリント配線板、液晶パネル、合わせガラスなどを対象としてもよい。
【0042】
[樹脂]
樹脂は、複合材に用いられ、熱分解できるものを対象とでき、熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂などを対象とすることができる。エチレンビニルアセテート(EVA)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド、ポリビニルブチラール(PVB)を含むものなどを対象とすることができる。特に、エチレンビニルアセテート(EVA)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルを含むなどを対象とすることができ、エチレンビニルアセテート(EVA)を含むものなどを対象とすることができる。
【0043】
[熱分解ガス/空気の供給量]
第二の管は、空気を供給する配管である。空気に含まれる酸素が、熱分解ガスの燃焼に用いられる。このため、酸素を含むものであればよいが、連続的に燃焼して、消費量も多くなりやすいいことから空気を用いることが経済的に合理的である。熱分解ガスと空気との混合気体は、連続的に燃焼室に供給される。熱分解ガスが燃焼する範囲で、熱分解ガスと空気の比率を、それぞれの流量で調整する。これらの比率は、熱分解ガスの種類や、燃焼室の温度、滞留時間など考慮して燃焼されやすさに基づいて適宜設定する。状況にもよるが、例えば、Nm3(ノルマル立方メートル)に換算した流量(単位例:Nm3/時間)として、第一の管の熱分解ガスの流量:第二の管の空気の流量が、1:0.5~1:100程度や、1:5~1:30程度とすることができる。なお、この流量比において、第一の管の熱分解ガスの流量は、焼成時の樹脂の熱分解ガスとその周囲に雰囲気ガス(窒等)などを含むものとして換算する。
【0044】
[気体の流量]
熱分解ガスと、空気の流量は、熱分解ガスの量や種類などによる燃焼しやすさや、燃焼室の仕様などにより適宜設定できる。特に、燃焼を適切に管理するには、燃焼室での滞留時間などが影響する部分が大きいと考えられるため、燃焼室の容量に基づいて流量の目安を設定することができる。
【0045】
[供給部]
供給部の第一の管や第二の管、孔などの連通部の形状や大きさ、長さ、配置は、熱分解ガスと、空気との流量や、燃焼室への流速、混合比率などを考慮して適宜設定できる。また、供給部を燃焼室に取り付けるとき、そのまま取り付けてもよいし、適宜、接続部分をバッフルとして取り付けてもよい。
【0046】
[燃焼室]
燃焼室は、供給部から供給された気体を燃焼する炉である。燃焼室で、供給部から供給された混合気体を、燃焼室に噴き出して、燃焼室で、混合気体に含まれる熱分解ガスを燃焼させて処理気体とする。燃焼された処理気体は、出口から排出される。
【0047】
燃焼室は、熱分解ガスの燃焼のための反応時間に適した滞留時間とすることができる容積であり、室内でガスが均一に流動し、漏出せず循環するような任意の形状とすることができる。燃焼室は、樹脂含有複合材の処理装置で生じた熱分解ガスを速やかに処理できるように、焼成ゾーンの周囲に配置されることが好ましい。このため、装置のレイアウトを行いやすいように、略方形の炉内に、配管などを接続したものとすることができる。
【0048】
燃焼室は、熱分解ガスを含む混合気体を供給するための供給部の配管と接続されている。燃焼室内は、約800~1400℃程度の燃焼温度が想定される。NOxの発生を抑制する観点から、燃焼温度は1400℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましく、1200℃以下がさらに好ましい。燃焼室には、供給部の他にも、LPGガスなどの燃料を供給する配管の接続や、着火源などを設けることもできる。
【0049】
LPGバーナー(着火源含む)で予め燃焼室を高温(約1000℃)に加熱しておき、そこに熱分解ガスと空気を供給すれば、熱分解ガスの燃焼が開始する。熱分解ガスの燃焼開始後はLPGバーナーを絞っても、熱分解ガスの燃焼熱で燃焼室の高温が維持される。
【0050】
燃焼室で燃焼されたガスを排出する排出口が、供給部の噴き出し方向から逸れた位置に設けられることが好ましい。また、供給部の噴き出し方向の軸上は、燃焼室の炉壁であることが好ましい。このような構成とすることで、燃焼室内で均一に循環して十分に燃焼され、より安定して未燃ガス濃度を低下させた状態で燃焼室から排出することができる。これは、供給部から噴き出した熱分解ガスは、燃焼室内で燃焼しながら、炉壁に衝突するように流れ、炉壁からその周囲に広がりながら炉内で十分に分散しながら均一な燃焼が生じるものと考えられる。
【0051】
後述するシミュレーションでも説明するように、燃焼室内では、熱分解ガスや、空気の供給手法によっては、ガスの混合状態が不均一となり、これが燃焼温度の変化の原因にもなっている。そして、高温すぎると、熱分解ガスは、燃焼しても、NOxなどが生じやすいものとなってしまう。一方、本発明によれば、このような高温となる領域を減らすことができ、これがNOxの低減に寄与しているものと考えられる。
【0052】
[従来の燃焼室]
図6は、従来の燃焼装置の構造例を示す概要図である。
図7は、従来の燃焼装置の他の構造例を示す概要図である。
図6、
図7の燃焼装置は、熱分解ガスを供給する管と、1次空気やLPGガスを供給する管と、混合されやすいように異なる向きから2次空気と、3次空気とを供給するそれぞれの管を有する燃焼室である。
図7の燃焼装置は、
図6の燃焼装置の構造に邪魔板を設けたものである。
【0053】
[シミュレーションによる評価]
燃焼装置における燃焼状態を評価するために、シミュレーションによる解析を行った。
【0054】
・解析例1-1(比較例):
図7は、従来の燃焼装置の構造例を示す概要図である。この形状に準じて、邪魔板を有する形状の解析を行った。
・解析例1-2(比較例):
図6の形状に準じて、邪魔板を外した形状の解析を行った。
・解析例2-1(実施例):
図6に示す燃焼室の形状等を基に解析を行った。また、中央の供給部は、
図2の形状のものを用いた。内筒の直径は83mm、外筒の直径は216mm、内筒の側面の孔は直径36mm×12個とした。なお、2次空気、3次空気は停止して使用した。
【0055】
このシミュレーションの燃焼装置は、燃焼室に直方体状のものを用いた。直方体は、幅2050mm、高さ600mm、奥行2600mmのものとした。また、熱分解ガス(混合気体)は、中央の供給部から供給した。1次空気・LPGの供給部は、供給部と同じ面に20°傾斜させて取り付けた。2次空気の供給部、3次空気の供給部は、直方体の両側面の供給部側から供給した。排出口は、奥行方向の下流側の面の幅方向の両端側にそれぞれ幅300mm・高さ450mmのものとして設けた。
【0056】
表1、表2は、シミュレーションの検討条件である。シミュレーションは、Fluent ver.2019R1を用いて、乱流モデルにRealizable κ-εモデル、燃焼モデルに渦消散モデルを採用して行った。
表1は、各配管から、燃焼室に供給するガスの条件等をまとめたものである。
なお、解析例2-1は、空気などの供給手段を変更したものであり、空気は、供給部から熱分解ガスと混合されて並行管から供給される。このとき、2次空気、3次空気の配管は使用しないものとした。
【0057】
【0058】
シミュレーションに用いた反応式や、各種物性は、PVパネルの熱分解ガスのガス分析結果における各化学種の割合から算出した加重平均値に基づいて設定した。
【0059】
【0060】
図8、
図9はシミュレーションにより解析した各種物性や状態などを示す図である。
図8は、シミュレーションにより燃焼室の高温領域を検証した図である。
図9は、シミュレーションにより燃焼室の未燃ガス濃度を検証した図である。
【0061】
これらのシミュレーション結果から、解析例2-1のように、本発明の燃焼装置の構造は、燃焼が良好であり、未燃ガスの発生を抑制できると考えられる。また、高温領域も小さいことから、NOxの発生を抑制できると考えられる。
【0062】
解析例1-1と解析例1-2は、
図9などにも示すように出口付近でも未燃ガスが残りやすいことが懸念されることがわかった。解析例1-1のように邪魔板を設けると、循環流の形成が阻害され、過剰に供給される空気と混合されにくくなり、高温領域が拡大しやすくなることがわかった。また、解析例1-2のように邪魔板が無い方が、循環流が形成されて燃焼性が良好なことがわかった。しかし、燃焼室に熱分解ガスと空気とを分けて流入させると、混合性が低下して未燃ガスが増加することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、熱分解ガスを燃焼するものであり各種樹脂複合材のリサイクルなどに利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 燃焼装置
100 処理装置
11 入口室
12 入口シール室
13 一次焼成ゾーン
14 切替部
15 二次焼成ゾーン
16 空冷室
17 冷却室
18 出口シール室
19 出口室
21 搬送ライン
3 樹脂含有複合材
4、41~43 供給部
411、421、431 第一の管
4111、4211、4311 底部
412、422、432 第二の管
413、423、433 連通部
414、424、434 開口部
5 燃焼室
51 排気配管
61 熱分解ガス配管
62 空気配管
63 LPG配管
631 LPGタンク
71、72、73 配管
811、821 再加熱ライン
812、822 再加熱部
813、823、92 排気ライン
91 スクラバー