(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118057
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電極製造設備および電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240823BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240823BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240823BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240823BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024234
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】東尾 直人
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078BB33
5E082AB09
5E082LL21
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA11
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】電極を製造する際の乾燥工程での低コスト化
【解決手段】
電極製造設備10は、乾燥機11と、第1配管12と、溶媒回収装置13と、外気導入管14と、熱交換器15と、第2配管16とを備えている。第1配管12は、乾燥機11から排出される排気を溶媒回収装置13に送る配管である。溶媒回収装置13は、乾燥機11から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する装置である。熱交換器15は、乾燥機11から排出される排気と、外気導入管14との間で熱交換が行われるように構成された装置である。第2配管は、溶媒回収装置13を通過した後の排気が排出される配管13cと、外気導入管14のうち熱交換器15よりも上流側とに接続され、溶媒回収装置13を通過した後の排気の少なくとも一部を外気導入管14に送る配管である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機と、
前記乾燥機から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する溶媒回収装置と、
前記乾燥機から排出される排気を前記溶媒回収装置に送る第1配管と、
外気を導入し、前記乾燥機に送る外気導入管と、
前記第1配管と前記外気導入管との間で熱交換が行われるように構成された熱交換器と、
前記溶媒回収装置を通過した後の排気が排出される配管と、前記外気導入管のうち前記熱交換器よりも上流側とに接続され、前記溶媒回収装置を通過した後の排気の少なくとも一部を前記外気導入管に送る第2配管と
を備え
前記乾燥機は、
乾燥炉と、
前記外気導入管を通じて供給される空気を加熱し、前記乾燥炉内に供給するヒータと、
前記乾燥炉内の予め定められた搬送経路に沿って、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する搬送装置と
を備えた、
電極製造設備。
【請求項2】
前記第2配管の流量を調整する調整弁をさらに備えた、請求項1に記載された電極製造設備。
【請求項3】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記外気導入管を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方を検知し、
検知した温度と露点とのうち少なくとも一方に基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
請求項2に記載された電極製造設備。
【請求項4】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記第2配管を流れる排気に含まれる前記有機溶媒の濃度を検知し、
検知した前記有機溶媒の濃度に基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
請求項2に記載された電極製造設備。
【請求項5】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記外気導入管を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方と、前記有機溶媒の濃度とを検知し、
検知した温度と露点とのうち少なくとも一方と、前記有機溶媒の濃度とに基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
請求項2に記載された電極製造設備。
【請求項6】
前記乾燥機に外気を送る外気導入管は、前記熱交換器よりも下流において、加温装置をさらに備えた、請求項1から5までの何れか一項に記載された電極製造設備。
【請求項7】
前記加温装置が、ヒートポンプに接続された熱交換コイルである、請求項6に記載された電極製造設備。
【請求項8】
乾燥機と、
前記乾燥機から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する溶媒回収装置と、
前記乾燥機から排出される排気を前記溶媒回収装置に送る第1配管と、
外気を導入し、前記乾燥機に送る外気導入管と、
前記第1配管と前記外気導入管との間で熱交換が行われるように構成された熱交換器と
を備え
前記乾燥機は、
乾燥炉と、
前記外気導入管を通じて供給される空気を加熱し、前記乾燥炉内に供給するヒータと、
前記乾燥炉内の予め定められた搬送経路に沿って、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する搬送装置と
を備え、
前記乾燥機に外気を送る外気導入管は、前記熱交換器よりも下流において、加温装置を備えた、
電極製造設備。
【請求項9】
前記加温装置が、ヒートポンプに接続された熱交換コイルである、請求項8に記載された電極製造設備。
【請求項10】
電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程と
を含み、
前記乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合され、かつ、前記乾燥工程で出た排気と熱交換された上で乾燥機に導入される、
電極製造方法。
【請求項11】
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の温度と露点とのうち少なくとも一方に基づいて調整される、請求項10に記載された電極製造方法。
【請求項12】
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の、有機溶媒の濃度に基づいて調整される、請求項10に記載された電極製造方法。
【請求項13】
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の、温度と露点とのうち少なくとも一方と、有機溶媒の濃度とに基づいて調整される、請求項10に記載された電極製造方法。
【請求項14】
前記乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合された気体が、前記乾燥工程で出た排気と熱交換された後で、さらに加温された上で、前記乾燥機に導入される、請求項10から13までの何れか一項に記載された電極製造方法。
【請求項15】
電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥機から排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程と
を含み、
前記乾燥工程では、外気が、前記乾燥工程で出た排気と熱交換され、さらに、加温された上で、前記乾燥機に導入される、
電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造設備および電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-097917号公報は、スラリー塗膜を有する基材を搬送しながら乾燥する乾燥装置が開示されている。特開2012-097917号公報に開示された乾燥装置は、基材上の塗膜を乾燥する乾燥炉と、乾燥炉内のガスを乾燥炉外に排出する排気口とを備えている。乾燥炉は、前記基材の搬送方向に沿って、乾燥雰囲気が互いに異なる複数の乾燥ゾーンを有している。乾燥炉の排気口は、前記複数の乾燥ゾーンのうち、最も上流側に位置する乾燥ゾーンよりも下流側に配置されている。かかる乾燥装置によれば、最上流側の乾燥ゾーン(即ち乾燥の初期段階)においては、スラリー塗膜から蒸発した溶媒が排気されず、乾燥炉内における溶媒ガスの濃度が高くなる。乾燥炉内の溶媒ガス濃度が高くなると、飽和蒸気圧に近づくため、溶媒の蒸発が阻害される。このことによって、乾燥初期におけるスラリー塗膜の急激な乾燥が抑制され、乾燥初期においてスラリー塗膜が急激に乾燥されることによってマイグレーションが生じるのを防止することができる、と記載されている。
【0003】
特開2008-114203公報には、有機溶媒を回収する方法が開示されている。有機溶媒が用いられる場合、乾燥工程の排気に有機溶媒が含まれるため、有機溶媒を回収する必要がある。有機溶媒を回収する方法には、乾式と湿式とがある。乾式の処理では、例えば、乾燥工程の排気を間接的な熱交換器によって、冷却水などで冷却し、排気中の溶媒成分を凝縮し、回収する。湿式の処理では、水を吸収剤とするガス吸収方法である。湿式の処理では、水が噴霧される吸収塔に排気を導入することによって、排気中の溶媒成分を水に吸収する。同公報では、湿式では、温度が低いほど溶媒成分が吸収される効率が良好である、とされている。このため吸収塔に導入される排ガスは前もって冷却され、多量の水と気液接触されるとよい、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-097917号公報
【特許文献2】特開2008-114203公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のEV化に伴ってリチウムイオン二次電池の需要増が予想されているところ、リチウムイオン二次電池の大量生産において、莫大なコスト増が見込まれる。特に、電極を製造する際の乾燥工程で必要とされるエネルギを低く抑え、生産コストを抑えたいと考えている。乾燥後の排気から有機溶媒を回収する方法では、有機溶媒が凝縮する程度にまで排気を冷やす必要がある乾式に比べて、有機溶媒を水に吸収させる湿式が有利であると本発明者は考えており、湿式で有機溶媒を回収することを含めて、生産コストを抑えたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される電極製造設備は、乾燥機と、溶媒回収装置と、第1配管と、外気導入管と、熱交換器と、第2配管とを備えている。
乾燥機は、乾燥炉と、ヒータと、搬送装置とを備えている。ここで、ヒータは、外気導入管を通じて供給される空気を加熱し、乾燥炉内に供給する装置である。搬送装置は、乾燥炉内の予め定められた搬送経路に沿って、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する装置である。
溶媒回収装置は、乾燥機から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する装置である。第1配管は、乾燥機から排出される排気を溶媒回収装置に送る配管である。外気導入管は、外気を導入し、乾燥機に送る配管である。熱交換器は、第1配管と外気導入管との間で熱交換が行われるように構成された装置である。第2配管は、溶媒回収装置を通過した後の排気が排出される配管と、外気導入管のうち熱交換器よりも上流側とに接続され、溶媒回収装置を通過した後の排気の少なくとも一部を外気導入管に送る配管である。
【0007】
かかる電極製造設備によれば、第2配管から供給される溶媒回収装置を通過した後の排気が外気導入管に混合され、さらに、熱交換器において乾燥機の排気と熱交換される。このため、乾燥機に導入される外気の温度を予め上昇させることができ、乾燥機のヒータで必要とされるエネルギが低く抑えられる。
【0008】
この場合、乾燥機に外気を送る外気導入管は、熱交換器よりも下流において、加温装置をさらに備えていてもよい。また、電極製造設備の他の形態として、第2配管を設けずに、乾燥機に外気を送る外気導入管に、熱交換器よりも下流において加温装置が備えられていてもよい。
【0009】
ここで開示される電極製造方法は、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程で排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程とを含んでいる。乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合され、かつ、乾燥工程で出た排気と熱交換された上で乾燥機に導入される。この場合、乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合された気体が、乾燥工程で出た排気と熱交換された後で、さらに加温された上で、乾燥機に導入されてもよい。
【0010】
また、他の形態として電極製造方法は、、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥機から排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程とを含んでいる。乾燥工程では、外気が乾燥工程で出た排気と熱交換され、さらに、加温された上で、乾燥機に導入される。
【0011】
これらの電極製造方法によれば、乾燥機に導入される外気の温度を予め上昇させることができ、乾燥機のヒータで必要とされるエネルギが低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、電極製造設備10の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ここでの開示を説明する。特に限定されない限りにおいて、ここでの開示は、本願の特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、電極製造設備10の構成を示す構成図である。電極製造設備10は、例えば、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイスに用いられる電極シートを製造する製造装置として用いられる。電極製造設備10で製造される電極は、集電体となるシート状の基材に、電極活物質粒子を含む活物質層が形成されたものである。電極シートを製造方法には、電池用電極の電極活物質粒子を含む合剤スラリーが用意される工程と、合剤スラリーが基材に塗布される工程(塗布工程)と、塗布された合剤スラリーを乾燥させる工程(乾燥工程)とが含まれる。
【0015】
電池用電極の活物質を含む合剤スラリーには、例えば、電極活物質粒子、バインダなどが溶媒に含まれている。合剤スラリーは、合剤ペーストとも称される。合剤スラリーが基材に塗布される工程では、用意された合剤スラリーが、シート状の基材に塗布される。電極シートの基材には、アルミ箔や銅箔などの金属箔が用いられうる。ここで、電極シートの基材は、例えば、帯状のシートで用意される。合剤スラリーが基材に塗布される工程では、ロールtoロールで搬送される電極シートの上に、ダイなどを通じて合剤スラリーが供給される。塗布された合剤スラリーを乾燥させる工程では、塗布された合剤スラリーを乾燥させることによって、電極シートの上に電極活物質粒子を含む活物質層が形成される。乾燥工程では、電極シートが乾燥炉内を通され、電極シートに塗布された合剤スラリーが乾燥させられる。乾燥工程を経た活物質層は、プレス工程などを経て、所定の厚さ、密度に調整される。
【0016】
リチウムイオン二次電池の正極スラリーは、有機溶媒を用いるものが主流となっている。正極スラリーは、例えば、材料を結着させるバインダとしてポリフッ化ビニリデン(以下、PVdF)、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMP)のような有機溶媒が用いられうる。他方で、リチウムイオン二次電池の負極スラリーは、水系分散型バインダであるスチレン-ブタジエンゴム(以下、SBR)、および溶媒として水を用いたスラリーが主流となっている。なお、正極スラリー、負極スラリーに用いられる材料は、特段、言及されない限りにおいて、ここで例示される材料に限定されない。
【0017】
塗布工程で塗布される合剤スラリーには、所要の量の溶媒が含まれる。塗布された合剤スラリーを乾燥させる工程では、かかる溶媒を蒸発させる必要がある。このため、リチウムイオン二次電池の量産では、電極シートの製造における乾燥工程において、多くの熱が必要になる。また、有機溶媒が用いられる場合には、乾燥工程の排気に有機溶媒が含まれる。このため、有機溶媒を回収する必要がある。
【0018】
電極製造設備10は、
図1に示されているように、乾燥機11と、第1配管12と、溶媒回収装置13と、外気導入管14と、熱交換器15と、第2配管16と、加温装置20と、制御装置40とを備えている。
【0019】
〈乾燥機11〉
乾燥機11は、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる装置である。
図1に示された形態では、乾燥機11は、乾燥炉11aと、ヒータ11bと、搬送装置11cとを備えている。
【0020】
ここで、乾燥炉11aは、断熱材で囲われた炉体で構成されうる。乾燥炉11a内では、閉じられた空間に乾燥雰囲気が形成される。乾燥炉11aには、合剤スラリーが塗布された集電体が導入される入口11a1と、出口11a2とが設けられている。乾燥炉11a内には、合剤スラリーが塗布された集電体が搬送される予め定められた搬送経路が設定されている。乾燥炉11a内は、合剤スラリーに含まれる溶媒が蒸発しうる温度、例えば、100℃以上の乾燥雰囲気が形成される。
【0021】
ヒータ11bは、例えば、外気導入管14を通じて供給される空気を加熱し、乾燥炉11a内に供給する装置である。ヒータ11bは、例えば、電気ヒータで構成されうる。なお、ヒータ11bは、電気ヒータに限定されず、ガスヒータなどでもよい。溶媒にNMPが用いられている場合、ヒータ11bは、外気導入管14を通じて供給される空気を予め定められた温度(例えば、115℃)に加熱して乾燥機11に供給する。
【0022】
搬送装置11cは、合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する装置でありうる。合剤スラリーが塗布された集電体は、例えば、帯状のシートであり、乾燥炉11a内の予め定められた搬送経路に沿って搬送される。合剤スラリーは、乾燥炉11aに入る前に、集電体に塗布されるとよい。この実施形態では、集電体の搬送経路のうち乾燥炉11aの入口11a1よりも上流側に、集電体に合剤スラリーを塗布する塗布装置11dが設けられている。ここで、集電体に塗布される合剤スラリーは、電極活物質粒子が有機溶媒(例えば、NMP)中に分散したスラリーでありうる。
【0023】
〈第1配管12〉
第1配管12は、乾燥機11から排出される排気を溶媒回収装置13に送る配管である。ここで、乾燥機11から排出される排気には、溶媒成分が含まれる。溶媒成分に用いられるNMPのような有機溶媒は、水より高沸点である。このため、乾燥機11から排出される排気は、例えば、100℃程度の温度を有している。
図1に示されているように、第1配管12は、乾燥炉11aから熱交換器15を通って、溶媒回収装置13に至るように配管されている。
図1に示された形態では、第1配管12には、送風ファン12aが設けられている。乾燥機11から排出される排気は、送風ファン12aによって溶媒回収装置13に強制的に送られる。送風ファン12aは、第1配管12のうち溶媒回収装置13の手前に設けられているとよい。送風ファン12aは、後述する外気導入管14に設けられる送風ファン14aと併せて乾燥機11内の乾燥条件が最適となるように制御される。乾燥機11から溶媒回収装置13に送られる排気の流速は、送風ファン12aが制御されることによって制御されうる。また、流速の安定性の担保の為、配管の長さに応じて第1配管12の途中に送風ファンを設置してもよい。設備中に設けられた送風ファンの風量は、例えば、乾燥炉内の条件を維持するために制御されるとよい。
【0024】
〈溶媒回収装置13〉
溶媒回収装置13は、湿式の回収装置である。
図1に示された形態では、水供給配管13aを通じて水が溶媒回収装置13に供給され、乾燥機11から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する装置である。NMPのような有機溶媒は、水に溶解しやすい。このため、乾燥機11から排出される排気に水が散水されることによって、排気に含まれる有機溶媒が水に吸収されて効率よく回収される。
【0025】
図2は、溶媒回収装置13の模式図である。溶媒回収装置13は、互いに区切られた複数の回収槽61a~61dを備えている。回収槽61a~61dの上部には、乾燥機11から排出される排気が流通する配管62が通されている。回収槽61a~61dは、配管62の入口側から出口側に向けて順に並んでいる。配管62には、排気から有機溶媒を分離するための充填剤62a~62dが封入されている。充填材は、例えば、デミスターと称されるメッシュ材でありうる。
【0026】
溶媒回収装置13に供給される水は、それぞれ回収槽61a~61dに供給される。溶媒回収装置13に供給される水は、例えば、純水など必要な水質となるように調整された水が用いられうる。水は、回収槽61a~61d内で溜まった水の水位が予め定められた水位になるように供給される。水は、充填剤62a~62dに散水されるとよい。また、回収槽61a~61d内で溜まった水がポンプ63a~63dで汲み上げられ、回収槽61a~61dの上部から散水されうる。回収槽61a~61dの上部から散水された水は、充填剤62a~62dに含まれる。乾燥機11から排出される排気に含まれる有機溶媒は、充填剤62a~62dを通過する際に水に吸収される。
【0027】
有機溶媒を吸収した水は、回収槽61a~61dに溜まる。回収槽61a~61dに溜まった水は、出口側の回収槽61dから入口側の回収槽61aに向けて順に送られる。このため、入口側の回収槽61aに向けて有機溶媒の濃度が濃くなる。例えば、各回収槽61a~61dで回収槽61aに溜まった水の有機溶媒の濃度が測定され、その測定値に基づいて有機溶媒の濃度が予め定められた濃度になった場合に、弁が開き次の回収槽に送られる。入口側の回収槽61aは、有機溶媒の濃度が高くなり、順次、溶媒回収装置13から排水される。
【0028】
有機溶媒を吸収した水は、
図1に示されているように、再処理設備13bなどで蒸留されることによって有機溶媒と水とに分離されうる。有機溶媒と分離された水は、溶媒回収装置13において再度利用されてもよい。また、分離された有機溶媒は、再利用可能なように再精製されうる。溶媒回収装置13において、水に有機溶媒が吸収された後の排気は配管13cを通じて排出される。溶媒回収装置13から排出される排気が流通する配管13cには、後述するように第2配管16が接続されている。
図1に示された例では、再処理設備13bは、場内に設けられている。再処理設備13bは、例えば、場外に設けられてもよい。この場合、有機溶媒を吸収した水を貯留する貯留タンクを設置し、タンクローリーなどで場外の再処理設備13bに運搬し、有機溶媒の再処理が行われてもよい。
【0029】
〈外気導入管14〉
外気導入管14は、外気を導入し、乾燥機11に送る配管である。外気導入管14は、熱交換器15を通じて乾燥機11に至るように配管されている。
図1に示された形態では、溶媒回収装置13から排出される排気の一部は、第2配管16を通じて外気導入管14に供給されるように構成されている。外気導入管14には、熱交換器15の手前に送風ファン14aが設けられている。かかる送風ファン14aによって外気導入管14から熱交換器15に強制的に外気が送られる。外気導入管14から熱交換器15に送られる外気の流速は、送風ファン14aが制御されることによって制御されうる。また、外気導入管14には、乾燥機11の手前に送風ファン14bが設けられている。送風ファン14bによって外気導入管14から乾燥機11に強制的に外気が送られる。外気導入管14から乾燥機11に送られる外気の流速は、送風ファン14bが制御されることによって制御されうる。
【0030】
〈熱交換器15〉
熱交換器15では、第1配管12と外気導入管14との間で熱交換が行われるように構成されている。かかる熱交換器15によって、第1配管12を流れる乾燥機11から排出される排気と、外気導入管14から導入される外気とが熱交換される。このため、乾燥機11に導入される外気の温度を予め高くすることができる。また、第1配管12を流れる乾燥機11から排出される排気は、熱交換器15を経て溶媒回収装置13に供給される。熱交換器15では、乾燥機11から排出される排気の温度が下げられる。溶媒回収装置13では、乾燥機11から排出される排気の温度が低い方が、排気に含まれる溶媒が凝縮しやすく、有機溶媒を水に効率よく吸収させることができる。
【0031】
〈第2配管16〉
第2配管16は、溶媒回収装置13から排出される排気が流通する配管13cと、外気導入管14のうち熱交換器15よりも上流側とに接続されている。第2配管16は、溶媒回収装置13を通過した後の排気の少なくとも一部を外気導入管14に送る配管である。第2配管16によって、外気導入管14に溶媒回収装置13を通過した後の排気の一部が導入され、その後、熱交換器15を通って乾燥機11に供給されている。第2配管16によって、外気導入管14に溶媒回収装置13を通過した後の排気の一部が導入されることによって、熱交換器15に供給される空気の温度を安定させることができる。
【0032】
ここで、外気導入管14に導入される外気の温度は、年平均では、16℃程度を想定している。外気導入管14に導入される外気は、季節や時間により変動する。例えば、夏の昼間の時間帯であれば、35℃程度になりうる。また、冬の夜の時間帯であれば、-2℃程度になりうる。このように、外気導入管14に導入される外気は、年間を通じて安定しない。他方で、乾燥機11から排出される排気は、100℃程度である。
【0033】
溶媒回収装置13では、散水される水と交わるので排気の温度が下がるものの、溶媒回収装置13から排出される排気は、40℃程度を維持しており、外気よりも高い。第2配管16を通じて外気導入管14に溶媒回収装置13を通過した後の排気の一部が導入されることによって、乾燥機11に導入される外気の温度を上昇させることができ、乾燥機11のヒータ11bで外気を加熱するのに要する熱量を低減させることが期待できる。
【0034】
例えば、外気導入管14に導入される外気が16℃であり、乾燥機11から排出される排気が100℃である場合、第2配管16から溶媒回収装置13の排気が導入されずに、そのまま熱交換器15で熱交換されたとする。その場合、熱交換器15を通じて外気は41℃程度になりうる。これを乾燥機11では115℃程度の熱気にする必要があるので、乾燥機11のヒータ11bで外気を加熱するのに相当の熱量が必要になる。
【0035】
これに対して、外気導入管14に導入される外気に、第2配管16から溶媒回収装置13の排気が導入されると、熱交換器15に供給される空気は、29℃に上昇させることができる。そして、熱交換器15を通じて51℃に上昇させることができる。これを乾燥機11では115℃程度の熱気にする必要があるが、外気導入管14に導入される外気に、第2配管16から溶媒回収装置13の排気が導入されることにより、導入される外気が10℃程度上昇している。これにより、乾燥機11のヒータ11bで外気の加熱に要する熱量を低減させることが期待できる。
【0036】
このように、外気は、外気導入管14に導入された後、第2配管16から供給される溶媒回収装置13を通過した後の排気が外気導入管14に混合され、さらに、熱交換器15において乾燥機11の排気と熱交換される。これにより、乾燥機11の排気の熱が利用され、乾燥機11に導入される外気の温度を予め上昇させることができる。これにより、乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギが低く抑えられる。また、溶媒回収装置13から排出される排気の温度は、年間を通して安定しており、外気導入管14で供給される外気の温度を安定させることできる。
【0037】
ここで、溶媒回収装置13を通過した後の排気は、高湿度の排気である。第2配管16の流量を調整する調整弁16aをさらに備えているとよい。第2配管16に調整弁16aが設けられていることによって、外気導入管14に導入される溶媒回収装置13を通過した後の排気が調整されうる。これにより、外気導入管14を流れる気体の温度や露点を制御できる。
【0038】
例えば、制御装置40は、第2配管16のうち、外気導入管14よりも下流で熱交換器15よりも上流において、外気導入管14を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方を検知し、検知した数値に基づいて、調整弁16aの開度を制御する処理が実行されるように構成されているとよい。これにより、外気導入管14を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方をフィードバックしつつ、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量を調整することができる。
【0039】
制御装置40は、第2配管16を通じて溶媒回収装置13を通過した後の排気が導入された後で、外気導入管14を流通する気体の温度または露点を外気導入管14に設けられたセンサー14cによって検出し、第2配管16に設けられた調整弁16aの開度を調整するように構成されているとよい。外気導入管14を流通する気体の温度または露点を考慮して、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が調整されるとよい。
【0040】
ここで外気導入管14を流通する気体は、乾燥機11に送られる。外気導入管14を流通する気体の温度は高いほどよいが、外気導入管14を流通する気体の湿度は低いほどよい。第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気は、高湿度の排気である。このため、外気導入管14を流通する気体の温度に加えて露点も考慮して、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が調整されるとよい。より好ましくは、外気導入管14を流通する気体の温度と露点とに基づいて、第2配管16の流量を調整する調整弁16aが制御されるとよい。
【0041】
例えば、外気導入管14を流通する気体の露点が、予め定められた露点よりも低い場合には、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が多くなるように調整弁16aの開度が調整されるとよい。外気導入管14を流通する気体の露点が、予め定められた露点よりも高い場合には、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が少なくなるように調整弁16aの開度が調整されるとよい。また、外気導入管14を流通する気体の露点が予め定められた設定値よりも高くなると、調整弁16aが閉じられるように調整されてもよい。
【0042】
また、外気導入管14を流通する気体の温度が、予め定められた温度よりも低い場合には、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が多くなるように調整弁16aの開度が調整されるとよい。外気導入管14を流通する気体の温度が、予め定められた温度よりも高い場合には、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が少なくなるように調整弁16aの開度が調整されるとよい。また、外気導入管14を流通する気体の温度が予め定められた設定値よりも高くなると、調整弁16aが閉じられるように調整されてもよい。
【0043】
制御装置40は、第2配管16のうち、外気導入管14よりも下流で熱交換器15よりも上流において、第2配管16を流れる排気に含まれる有機溶媒の濃度を検知し、検知した有機溶媒の濃度に基づいて、調整弁16aの開度を制御する処理が実行されるように構成されていてもよい。これにより、外気導入管14の有機溶媒の濃度が監視されつつ、第2配管16を通じて外気導入管14に導入される排気の量が調整される。
【0044】
制御装置40は、第2配管16を通じて溶媒回収装置13を通過した後の排気が導入された後で、外気導入管14を流通する気体の有機溶媒の濃度を外気導入管14に設けられたセンサー14cによって検出し、第2配管16に設けられた調整弁16aの開度を調整するように構成されているとよい。ここで、乾燥機11に導入される外気において有機溶媒の濃度が、予め定められた濃度を超えると、乾燥機11で合剤スラリーの乾燥が遅くなる。乾燥機11での合剤スラリーの乾燥が遅くならない程度に、乾燥機11に導入される外気の有機溶媒の濃度が制限されるとよい。また、有機溶媒は危険物である事が多いため、安全上の観点からあらかじめ定められた濃度を超える場合、第2配管16に設けられた調整弁16aを遮断するよう構成されてもよい。
【0045】
このように、第2配管16に設けられた調整弁16aの開度は、第2配管16を通じて溶媒回収装置13を通過した後の排気が導入された後で、外気導入管14を流通する気体の温度と露点とのうち少なくとも一方と、有機溶媒の濃度とに基づいて、調整されるように構成されているとよい。これによって、外気導入管14を通じて乾燥機11に導入される外気の温度や露点や有機溶媒の濃度を制御できる。例えば、第2配管16に設けられた調整弁16aは、温度と露点とのうち少なくとも一方点に基づいて、調整弁16aの開度が調整され、かつ、有機溶媒の濃度が予め定められた濃度を超える場合には、調整弁16aを閉じられるように制御されてもよい。また、温度と露点の2点で制御するようにしてもよい。例えば、温度に基づいて調整弁16aの開度調整を行いつつ、露点が一定の値を超えた場合には、調整弁16aの開度上昇を抑制してもよい。この場合、例えば、第2配管16を通じて溶媒回収装置13を通過した後の排気が導入された後で、外気導入管14を流通する気体の温度が、温度制御の為、設定した数値より低い場合でも、露点が一定の値を超えた場合には、調整弁16aの開度を上昇させることが抑制される。これにより、外気導入管14を流通する気体の露点が、一定値以上への上昇することが抑えられうる。このように調整弁16aの開度などは、センサー14cによって測定される外気導入管14を流通する気体の品質が予め定められた品質に調整されるようにするよう制御されるとよい。
【0046】
〈加温装置20〉
図1に示された形態では、外気導入管14は、さらに加温装置20を備えている。加温装置20は、乾燥機11に外気を送る外気導入管14のうち熱交換器15よりも下流に設けられている。熱交換器15よりも下流において、外気導入管14を通じて乾燥機11に送られる気体を加熱する装置である。この実施形態では、加温装置20は、ヒートポンプ21と、熱交換コイル22とを備えている。熱交換コイル22は、外気導入管14の途中に設置され、プレート式など外気導入管14の温度を一定値以上に上昇させるのに充分な能力を備えた熱交換器である。ヒートポンプ21は、温水ヒートポンプユニットであり得る。例えば、温水ヒートポンプユニットは、吸熱部と放熱部からなる熱媒体の循環システムを備えたヒートポンプユニットである。温水ヒートポンプユニットは、吸熱部にて系外の水熱源や、空気熱源から受熱し、放熱部よりヒートポンプ21と熱交換コイル22の間を循環する熱搬送系へ放熱する。これにより、熱交換コイル22に、所要の温水を供給することができる。
【0047】
熱交換コイル22では、ヒートポンプ21から、例えば、90℃程度の温水が供給され、外気導入管14を流れる気体が加温される。そして、熱交換コイル22で加温された外気が、乾燥機11に供給される。熱交換器15から排出される外気導入管14を流れる気体の温度が51℃程度である場合、加温装置20を通じて、外気導入管14を流れる気体が加温されることによって、乾燥機11に供給される外気の温度を80℃程度に上げることができる。ヒートポンプ21によれば、少ない投入エネルギで、大きな熱エネルギとして利用できる。このように、加温装置20によって、外気がさらに加温されてから乾燥機11に供給されるので、乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギを格段に低く抑えることができる。
【0048】
例えば、加温装置20の下流に設けられたセンサー23によって、外気導入管14を流通する気体の温度を検出し、ヒートポンプ21に設けられた調整弁24の開度が制御されるように構成されていてもよい。外気導入管14を流通する気体の温度に基づいて調整弁24の開度が制御されることによって、ヒートポンプ21に流通する熱媒の量が制御され、外気導入管14を流通する気体を安定した温度に加温することができる。このように熱交換コイル22において外気導入管14を流通する気体との間で熱交換される熱量が調整されるとよい。これにより、乾燥機11に供給される外気の温度が調整されうる。また、ヒートポンプ21では、他の熱媒を冷やすことができる。例えば、水を熱媒とすることができる。水を熱媒とすることによって、例えば、10℃程度の冷水をえることができ、外部の設備でエネルギを消費して冷やす必要がある空調用冷水や機械用冷却水が副産物として得られる。これにより、更なるエネルギ削減の効果が得られる。
【0049】
なお、ここでは、加温装置20として、外気導入管14を流通する気体を効率的に加温できるヒートポンプと熱交換コイルを用いた形態を例示した。加温装置20は、熱交換器15よりも下流において、外気導入管14を通じて乾燥機11に送られる気体を加熱する装置であればよく、これに限定されない。
【0050】
このように、外気導入管14に溶媒回収装置13の排気が導入されることによって、外気導入管14を通じて乾燥機11に導入される外気の温度を上げることができる。これにより乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギを低く抑えることができる。さらに、加温装置20によって熱交換器15を経て乾燥機11に供給される外気を加温することによって、乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギが格段に低く抑えられる。乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギを低く抑えるとの観点では、外気導入管14に溶媒回収装置13の排気を導入することだけ、加温装置20によって加温することだけ、でもそれぞれ効果がある。第2配管16によって外気導入管14に溶媒回収装置13の排気を導入した上で、熱交換器15を経て加温し、さらに加温装置20によって加温することによって、加温装置20に要する容量を低く抑えることができる。このため、加温装置20の小型化を測ることができ、設備コストやランニングも低く抑えられる。
【0051】
ここで電極製造方法は、乾燥工程と、溶媒回収工程とを備えている。乾燥工程は、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる工程である。乾燥工程は、上述した電極製造設備10では、乾燥機11で具現化されている。溶媒回収工程は、乾燥工程で排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます工程である。溶媒回収工程は、上述した電極製造設備10では、溶媒回収装置13で具現化されている。乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合され、かつ、乾燥工程で出た排気と熱交換された上で乾燥機11に導入されるとよい。これにより、乾燥機11に導入される外気の温度を上げることができる。これにより乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギが低く抑えられる。
【0052】
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の露点に基づいて調整されてもよい。また、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の、有機溶媒の濃度に基づいて調整されてもよい。溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の、露点と有機溶媒の濃度とに基づいて調整されてもよい。例えば、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の温度に基づいて調整されてもよい。溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の、温度と有機溶媒の濃度とに基づいて調整されてもよい。溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量は、混合後の気体の、温度と露点、有機溶媒の濃度とに基づいて調整されてもよい。
【0053】
電極製造方法は、乾燥工程では、外気が前記乾燥工程で出た排気と熱交換され、さらに、加温された上で、乾燥機に導入されてもよい。これにより乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギが低く抑えられる。例えば、乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合された気体が、乾燥工程で出た排気と熱交換された後で、さらに加温された上で、乾燥機に導入されてもよい。これにより乾燥機11のヒータ11bで必要とされるエネルギが格段に低く抑えられる。
【0054】
以上、ここで開示される発明について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される発明の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0055】
以上の通り、本明細書には、以下の各項に記載の開示が含まれている。
項1:
乾燥機と、
前記乾燥機から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する溶媒回収装置と、
前記乾燥機から排出される排気を前記溶媒回収装置に送る第1配管と、
外気を導入し、前記乾燥機に送る外気導入管と、
前記第1配管と前記外気導入管との間で熱交換が行われるように構成された熱交換器と、
前記溶媒回収装置を通過した後の排気が排出される配管と、前記外気導入管のうち前記熱交換器よりも上流側とに接続され、前記溶媒回収装置を通過した後の排気の少なくとも一部を前記外気導入管に送る第2配管と
を備え
前記乾燥機は、
乾燥炉と、
前記外気導入管を通じて供給される空気を加熱し、前記乾燥炉内に供給するヒータと、
前記乾燥炉内の予め定められた搬送経路に沿って、電極活物質粒子が有機溶媒(NMP)中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する搬送装置と
を備えた、
電極製造設備。
【0056】
項2:
前記第2配管の流量を調整する調整弁をさらに備えた、項1に記載された電極製造設備。
【0057】
項3:
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記外気導入管を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方を検知し、
検知した温度と露点とのうち少なくとも一方に基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
項2に記載された電極製造設備。
【0058】
項4:
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記第2配管を流れる排気に含まれる前記有機溶媒の濃度を検知し、
検知した前記有機溶媒の濃度に基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
項2に記載された電極製造設備。
【0059】
項5:
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2配管のうち、前記外気導入管よりも下流で前記熱交換器よりも上流において、前記外気導入管を流れる気体の温度と露点とのうち少なくとも一方と、前記有機溶媒の濃度とを検知し、
検知した温度と露点とのうち少なくとも一方と、前記有機溶媒の濃度とに基づいて、前記調整弁の開度を制御する処理が実行されるように構成された、
項2に記載された電極製造設備。
【0060】
項6:
前記乾燥機に外気を送る外気導入管は、前記熱交換器よりも下流において、加温装置をさらに備えた、項1~5までの何れか一つに記載された電極製造設備。
【0061】
項7:
前記加温装置が、ヒートポンプに接続された熱交換コイルである、項6に記載された電極製造設備。
【0062】
項8:
乾燥機と、
前記乾燥機から排出される排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込まして回収する溶媒回収装置と、
前記乾燥機から排出される排気を前記溶媒回収装置に送る第1配管と、
外気を導入し、前記乾燥機に送る外気導入管と、
前記第1配管と前記外気導入管との間で熱交換が行われるように構成された熱交換器と
を備え
前記乾燥機は、
乾燥炉と、
前記外気導入管を通じて供給される空気を加熱し、前記乾燥炉内に供給するヒータと、
前記乾燥炉内の予め定められた搬送経路に沿って、電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を搬送する搬送装置と
を備え、
前記乾燥機に外気を送る外気導入管は、前記熱交換器よりも下流において、加温装置を備えた、
電極製造設備。
【0063】
項9:
前記加温装置が、ヒートポンプに接続された熱交換コイルである、項8に記載された電極製造設備。
【0064】
項10:
電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程と
を含み、
前記乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合され、かつ、前記乾燥工程で出た排気と熱交換された上で乾燥機に導入される、
電極製造方法。
【0065】
項11:
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の温度と露点とのうち少なくとも一方に基づいて調整される、項10に記載された電極製造方法。
【0066】
項12:
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の、有機溶媒の濃度に基づいて調整される、項10に記載された電極製造方法。
【0067】
項13:
溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合される量が、混合後の気体の、温度と露点とのうち少なくとも一方と有機溶媒の濃度とに基づいて調整される、項10に記載された電極製造方法。
【0068】
項14:
前記乾燥工程では、溶媒回収工程で水が噴霧された後の排気の一部が外気に混合された気体が、前記乾燥工程で出た排気と熱交換された後で、さらに加温された上で、前記乾燥機に導入される、項10から13までの何れか一つに記載された電極製造方法。
【0069】
項15:
電極活物質粒子が有機溶媒中に分散した合剤スラリーが塗布されたシート状の集電体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥機から排出される排気に水を噴霧し、排気に含まれる有機溶媒を水に溶け込ます溶媒回収工程と
を含み、
前記乾燥工程では、外気が前記乾燥工程で出た排気と熱交換され、さらに、加温された上で、前記乾燥機に導入される、
電極製造方法。
【符号の説明】
【0070】
10 電極製造設備
11 乾燥機
11a 乾燥炉
11a1 入口
11a2 出口
11b ヒータ
11c 搬送装置
11d 塗布装置
12 第1配管
12a 送風ファン
13 溶媒回収装置
13a 水供給配管
13b 再処理設備
13c 溶媒回収装置13から排出される排気が流通する配管
14 外気導入管
14a 送風ファン
14b 送風ファン
14c センサー
15 熱交換器
16 第2配管
16a 調整弁
20 加温装置
21 ヒートポンプ
22 熱交換コイル
23 センサー
24 調整弁
40 制御装置
61a 回収槽
61a~61d 回収槽
61d 回収槽
62 溶媒回収装置13において乾燥機11から排出される排気が流通する配管
62a~62d 充填剤
63a~63d ポンプ