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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118063
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電子ゴーグル
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20240823BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240823BHJP
   A61F 9/02 20060101ALI20240823BHJP
   B23K 9/32 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/00 P
A61F9/02 374
A61F9/02 350
B23K9/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024241
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】523060390
【氏名又は名称】芝原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝原 利幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和男
(72)【発明者】
【氏名】楠本 利行
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA00
4E168CA06
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA28
4E168KA16
(57)【要約】
【課題】 溶接時の強い発光から目を保護すると共に、溶接の作業性を向上することが可能な電子ゴーグルを提供する。
【解決手段】 電子ゴーグル10は、作業者の顔面に取り付けられる筐体11と、筐体11に取り付けられたカメラユニット13と、カメラユニット13に入射される光を制限するフィルタユニット17,18と、カメラユニット13で撮影した画像を表示する表示ユニット19と、を備えている。表示ユニット19は、作業者が表示ユニット19を目視可能となった状態で、カメラユニット13と互いに重なり合って筐体11に取り付けられている。フィルタユニット17,18は、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタ17A,18Aと、ガイド光Gが透過可能なバンドパスフィルタ17B,18Bと、を備えている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド光によって指示した溶接位置に溶接用のレーザー光を照射するレーザー溶接に使用され、レーザー溶接による溶接部位を可視化する電子ゴーグルであって、
作業者の顔面に取り付けられる筐体と、前記筐体に取り付けられたカメラユニットと、前記カメラユニットに入射される光を制限するフィルタユニットと、前記カメラユニットで撮影した画像を表示する表示ユニットと、を備え、
前記表示ユニットは、前記作業者が前記表示ユニットを目視可能となった状態で、前記カメラユニットと互いに重なり合って前記筐体に取り付けられており、
前記フィルタユニットは、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光の反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタと、
前記ガイド光が透過可能なバンドパスフィルタと、を備えたことを特徴とする電子ゴーグル。
【請求項2】
前記減衰フィルタは、
溶接中のプラズマ発光を減衰させる第1減衰フィルタと、
溶接加工点の輻射光を減衰させる第2減衰フィルタと、
溶接加工を行うレーザー光の反射光と散乱光を減衰させる第3減衰フィルタと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子ゴーグル。
【請求項3】
前記カメラユニットは、前記作業者の左眼用の画像を撮影する左側撮像素子と、前記作業者の右眼用の画像を撮影する右側撮像素子と、を備え、
前記表示ユニットは、前記左側撮像素子が撮影した左眼用の画像を表示する左表示部と、前記右側撮像素子が撮影した右眼用の画像を表示する右表示部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子ゴーグル。
【請求項4】
前記カメラユニットおよび前記表示ユニットは、画像処理装置に接続されており、
前記画像処理装置は、前記カメラユニットで撮影した画像の信号を、前記表示ユニットに出力することを特徴とする請求項1に記載の電子ゴーグル。
【請求項5】
前記画像処理装置は、前記表示ユニットとは別個の表示装置に接続されており、前記カメラユニットで撮影した画像の信号を、前記表示装置に出力することを特徴とする請求項4に記載の電子ゴーグル。
【請求項6】
前記表示装置は、タッチパネルによって構成され、
前記画像処理装置は、前記カメラユニットで撮影した画像に前記タッチパネルに入力された情報を加えた信号を、前記表示ユニットに出力することを特徴とする請求項5に記載の電子ゴーグル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接部位を可視化する電子ゴーグルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアーク溶接、レーザー溶接等のような溶接では、高温になった溶接部が強く発光する。一方、高品質の溶接のためには、加工点を凝視しつつ、溶接を行う必要がある。さらには、発光点の光を遮光(減光)しつつ、加工部位を可視化したいという要求もある。一般的な遮光具(フェイスシールド)では、強い発光から目を保護し、減光された光を見ることで、加工部を観察する。これに対し、加工状態をカメラで撮影し、ディスプレイに表示する電子ゴーグルが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-313850号公報
【特許文献2】特開2020-189332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子ゴーグルを用いた場合、極めて激しい発光では、眩し過ぎて加工点を観察することが困難になる。即ち、一般的なカメラで画像を取得する場合は、溶接による発光の光強度がカメラのダイナミックレンジを超えてしまい、白飛びが生じてしまう。これに対し、特許文献2に開示されたシステムでは、高輝度の発光が近接する溶接加工点を可視化するために、高いダイナミックレンジを有するカメラを採用している。しかしながら、このような高性能のカメラは高価になる傾向があり、電子ゴーグルの製造コストが上昇するという問題がある。
【0005】
また、レーザー溶接では、溶接位置を指示するガイド光を用いることが一般的であり、加工作業時にガイド光のスポットを可視化する必要がある。これに対し、溶接時の白飛びを防止するために、カメラに入射する光の減衰量を大きくすると、ガイド光が十分に目視することができなくなる。このため、溶接の開始前に、電子ゴーグルを一旦外して溶接位置を確認する必要があり、溶接の作業性が低下するという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、溶接時の強い発光から目を保護すると共に、溶接の作業性を向上することが可能な電子ゴーグルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガイド光によって指示した溶接位置に溶接用のレーザー光を照射するレーザー溶接に使用され、レーザー溶接による溶接部位を可視化する電子ゴーグルであって、作業者の顔面に取り付けられる筐体と、前記筐体に取り付けられたカメラユニットと、前記カメラユニットに入射される光を制限するフィルタユニットと、前記カメラユニットで撮影した画像を表示する表示ユニットと、を備え、前記表示ユニットは、前記作業者が前記表示ユニットを目視可能となった状態で、前記カメラユニットと互いに重なり合って前記筐体に取り付けられており、前記フィルタユニットは、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光の反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタと、前記ガイド光が透過可能なバンドパスフィルタと、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶接時の強い発光から目を保護すると共に、溶接の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による電子ゴーグルを作業者が装着してレーザー溶接を行う状態を示す説明図である。
図2】第1の実施形態による電子ゴーグルを作業者が装着した状態を示す正面図である。
図3図2中の電子ゴーグルを示す斜視図である。
図4図2中の電子ゴーグルの内部構成を模式的に示す平面図である。
図5】第1の実施形態による電子ゴーグルと画像処理装置とを示す説明図である。
図6】電子ゴーグルへの入射光、フィルタユニットの透過率、フィルタユニットの透過光と光の波長との関係を示す特性線図である。
図7】第2の実施形態による電子ゴーグル、VRゴーグルと画像処理装置とを示す説明図である。
図8】第3の実施形態による電子ゴーグル、モニタ装置、3D眼鏡と画像処理装置とを示す説明図である。
図9】第4の実施形態による電子ゴーグル、携帯端末と画像処理装置とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による電子ゴーグルを添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
図1ないし図6は、第1の実施形態を示している。図1に示すように、レーザー溶接を行うハンドトーチ型レーザー溶接機は、レーザー光を出力する溶接ヘッド1(レーザー加工ヘッド)を備えている。溶接ヘッド1は、作業者が手で把持する取手を備えた本体部2と、レーザー光Lを出力する出力部3とを備えている。出力部3は、高出力のレーザー光Lを出力するのに加え、溶接位置を指示するためのガイド光Gを出力する。レーザー光Lは、ガイド光Gのスポット位置に照射される。このため、作業者は、ガイド光Gのスポットを目視することによって、レーザー溶接によって母材Mが接合される箇所を確認することができる。このとき、レーザー光Lは、例えば波長が970~1100nm程度の赤外線(赤外光)となっている。ガイド光Gは、可視光線であり、例えば赤色光となっている。
【0012】
電子ゴーグル10は、ガイド光Gによって指示した溶接位置に溶接用のレーザー光Lを照射するレーザー溶接に使用される。電子ゴーグル10は、レーザー溶接による溶接部位を可視化する。図2ないし図5に示すように、電子ゴーグル10は、筐体11、カメラユニット13、フィルタユニット17,18、表示ユニット19を備えている。また、カメラユニット13および表示ユニット19は、画像処理装置20に接続されている(図2図5参照)。
【0013】
筐体11は、例えば四角形の箱形状に形成されており、作業者の両目を覆う(図1図2参照)。図3および図4に示すように、筐体11は、作業者の視線の先に配置され、カメラユニット13および表示ユニット19が取り付けられる固定部11Aと、固定部11Aの周囲を取り囲んで作業者の顔面に向けて延びる枠体部11Bとを備えている。枠体部11Bの左右方向の両端部と上端部には、帯状部材としてバンド12が取り付けられている。バンド12は、筐体11を作業者の眼前に固定するために、作業者の頭部後方および頭部上方に巻き付けられる。これにより、バンド12は、作業者の顔面に筐体11が装着された状態が保持されるように、筐体11を支持する。
【0014】
なお、筐体11は、作業者の両目部分だけを覆う箱形状のものに限らない。例えば、筐体11は、作業者の顔面全体を覆うマスク形状のものでもよく、作業者の頭部を全体的または部分的に覆うヘルメット形状のものでもよい。
【0015】
カメラユニット13は、筐体11に取り付けられている。図4および図5に示すように、カメラユニット13は、作業者の左眼用と右眼用の2つのカメラモジュール14,15を備えている。カメラモジュール14,15は、基板16に取り付けられている。
【0016】
左眼用のカメラモジュール14は、撮像素子14A、レンズ14Bを備えている。撮像素子14Aは、例えばCMOSイメージセンサ、CCD等である。レンズ14Bは、撮像素子14Aの入力側(前面側)に配置されている。撮像素子14Aには、レンズ14Bで集光された光が入射される。レンズ14Bは、溶接部位を拡大して撮影可能とするためにズーム式の光学系を構成することが望ましい。撮像素子14Aは、図示しない画像信号プロセッサ(ISP)に接続されている。画像信号プロセッサは、画像データを電気信号に変換して出力する。
【0017】
右眼用のカメラモジュール15は、左眼用のカメラモジュール14とほぼ同様に構成されている。このため、カメラモジュール15は、撮像素子15A、レンズ15Bを備えている。撮像素子15Aは、撮像素子14Aと同様に構成されている。レンズ15Bは、撮像素子15Aと同様に構成されている。撮像素子15Aも、撮像素子14Aと同様に、画像信号プロセッサ(図示せず)に接続されている。
【0018】
カメラモジュール14は、作業者の左眼と対応した位置に配置されている。カメラモジュール14は、作業者の左眼用の画像が入力される。従って、撮像素子14Aは、左側撮像素子を構成し、作業者の左眼用の画像を撮影する。
【0019】
カメラモジュール15は、作業者の右眼と対応した位置に配置されている。カメラモジュール15は、作業者の右眼用の画像が入力される。従って、撮像素子15Aは、右側撮像素子を構成し、作業者の右眼用の画像を撮影する。
【0020】
フィルタユニット17,18は、カメラユニット13に入射される光を制限する。フィルタユニット17は、カメラモジュール14の入力側(前面側)に取り付けられている。フィルタユニット18は、カメラモジュール15の入力側(前面側)に取り付けられている。
【0021】
図4に示すように、フィルタユニット17は、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタ17Aと、ガイド光Gが透過可能なバンドパスフィルタ17Bと、とを備えている。減衰フィルタ17Aとバンドパスフィルタ17Bは、互いに重なり合って配置されている。これに加え、フィルタユニット17は、カメラモジュール14(撮像素子14A)に入射される全体の光量を減衰させるNDフィルタ(Neutral Density Filter)17Cを備えている。NDフィルタ17Cは、全帯域の光量を調整する。NDフィルタ17Cは、減衰フィルタ17A、バンドパスフィルタ17Bと重なり合って配置されている。これにより、フィルタユニット17は、図6に示す透過率の波長分布となった特性を有している。カメラモジュール14には、減衰フィルタ17A、バンドパスフィルタ17BおよびNDフィルタ17Cを通過した光が入射される。
【0022】
ここで、ガイド光Gは、例えば600nm帯(より具体的には、630nm~650nm)の赤色光である。ガイド光Gは、半導体レーザーで実現することが多い。このため、ガイド光Gには、赤色付近の波長の光がよく使用される。これに限らず、将来的に緑色や青色のレーザーが安価になり、用途に合致すれば、それらの波長の光もガイド光に適用される可能性がある。バンドパスフィルタ17Bの通過帯域は、ガイド光Gの波長を考慮して設定されている。バンドパスフィルタ17Bは、ガイド光Gの帯域の光を通過させ、他の帯域の光を減衰させる。
【0023】
減衰フィルタ17Aは、溶接中のプラズマ発光を減衰させる第1減衰フィルタ17A1と、溶接加工点の輻射光を減衰させる第2減衰フィルタ17A2と、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる第3減衰フィルタ17A3と、を備えている。第1減衰フィルタ17A1、第2減衰フィルタ17A2、第3減衰フィルタ17A3およびNDフィルタ17Cによる光の減衰量は、撮像素子14Aに入射される光の強度が撮像素子14Aのダイナミックレンジの範囲内となるように設定されている。フィルタユニット17は、第1減衰フィルタ17A1、第2減衰フィルタ17A2、第3減衰フィルタ17A3、バンドパスフィルタ17BおよびNDフィルタ17Cが重なり合うことによって構成されている。なお、第1減衰フィルタ17A1、第2減衰フィルタ17A2、第3減衰フィルタ17A3、バンドパスフィルタ17BおよびNDフィルタ17Cの順序は、図4に示したものに限らず、任意の順序で配置してよい。また、第1減衰フィルタ17A1、第2減衰フィルタ17A2、第3減衰フィルタ17A3等によって十分な減衰量が得られる場合には、NDフィルタ17Cは省いてもよい。
【0024】
ここで、プラズマ発光の波長は、例えば300nm~680nmの広い可視光範囲が想定される。この中で、プラズマ発光の主たるものとしては、300nm~450nmの光が想定される。第1減衰フィルタ17A1が減衰させる光の帯域は、プラズマ発光の波長を考慮して設定されている。第1減衰フィルタ17A1は、プラズマ発光の帯域の光を減衰させ、他の帯域の光を通過させる。
【0025】
輻射光の波長は、500nm~10000nmが想定される。この中で、輻射光の主たるものとしては、600nm~2000nmの光が想定される。第2減衰フィルタ17A2が減衰させる光の帯域は、輻射光の波長を考慮して設定されている。第2減衰フィルタ17A2は、輻射光の帯域の光を減衰させ、他の帯域の光を通過させる。
【0026】
加工用のレーザー光Lは、例えば1000nm帯の赤外光である。具体的な一例として、光源にNdYAGレーザーを用いた場合には、レーザー光Lの波長は、1064nmである。光源にYbファイバレーザーを用いた場合には、レーザー光Lの波長は、1030nm~1040nmや1070nm~1080nmである。第3減衰フィルタ17A3が減衰させる光の帯域は、レーザー光Lの波長を考慮して設定されている。第3減衰フィルタ17A3は、レーザー光Lの帯域の光を減衰させ、他の帯域の光を通過させる。
【0027】
フィルタユニット18は、フィルタユニット17と同様に構成されている。このため、フィルタユニット18は、減衰フィルタ17A、バンドパスフィルタ17Bと同様の減衰フィルタ18A、バンドパスフィルタ18Bを備えている。減衰フィルタ18A、バンドパスフィルタ18Bは、重なり合って配置されている。これに加え、フィルタユニット18は、NDフィルタ17Cと同様のNDフィルタ18Cを備えている。NDフィルタ18Cは、減衰フィルタ18A、バンドパスフィルタ18Bと重なり合って配置されている。これにより、フィルタユニット18は、図6に示す透過率の波長分布となった特性を有している。カメラモジュール15には、減衰フィルタ18A、バンドパスフィルタ18BおよびNDフィルタ18Cを通過した光が入射される。
【0028】
減衰フィルタ18Aは、溶接中のプラズマ発光を減衰させる第1減衰フィルタ18A1と、溶接加工点の輻射光を減衰させる第2減衰フィルタ18A2と、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる第3減衰フィルタ18A3と、を備えている。第1減衰フィルタ18A1、第2減衰フィルタ18A2、第3減衰フィルタ18A3およびNDフィルタ18Cによる光の減衰量は、撮像素子15Aに入射される光の強度が撮像素子15Aのダイナミックレンジの範囲内となるように設定されている。即ち、第1減衰フィルタ18A1、第2減衰フィルタ18A2、第3減衰フィルタ18A3の帯域や光の減衰量は、第1減衰フィルタ17A1、第2減衰フィルタ17A2、第3減衰フィルタ17A3と同様に設定されている。フィルタユニット18は、第1減衰フィルタ18A1、第2減衰フィルタ18A2、第3減衰フィルタ18A3、バンドパスフィルタ18BおよびNDフィルタ18Cが重なり合うことによって構成されている。なお、第1減衰フィルタ18A1、第2減衰フィルタ18A2、第3減衰フィルタ18A3等によって十分な減衰量が得られる場合には、NDフィルタ18Cは省いてもよい。例えば撮像素子14A,15Aのダイナミックレンジが互いに異なる場合には、フィルタユニット17,18の減衰量は、撮像素子14A,15Aのダイナミックレンジに応じて互いに異なる値に設定してもよい。
【0029】
表示ユニット19は、カメラユニット13で撮影した画像を表示する。表示ユニット19は、例えば液晶パネル、有機ELパネル等によって形成されている。表示ユニット19は、作業者が表示ユニット19を目視可能となった状態で、カメラユニット13と互いに重なり合って筐体11に取り付けられている。
【0030】
表示ユニット19は、撮像素子14Aが撮影した左眼用の画像を表示する左表示部19Aと、撮像素子15Aが撮影した右眼用の画像を表示する右表示部19Bと、を備えている。左表示部19Aと左眼との間には、左表示部19Aに表示される画像を拡大する接眼レンズ19Cが配置されている。同様に、右表示部19Bと右眼との間には、右表示部19Bに表示される画像を拡大する接眼レンズ19Dが配置されている。左表示部19Aおよび右表示部19Bは、カラー画像が表示可能となっている。なお、左表示部19Aおよび右表示部19Bは、カラー画像に限らず、モノクロ画像を表示するものでもよい。作業者は、左表示部19Aの表示画像を左眼で目視し、右表示部19Bの表示画像を右眼で目視する。これにより、作業者は、溶接部位を立体的に目視することができる。
【0031】
画像処理装置20は、例えば汎用コンピュータや専用コンピュータ等によって構成されている。画像処理装置20は、カメラユニット13および表示ユニット19に電気的に接続されている。このため、画像処理装置20は、接続ケーブル21を用いてカメラユニット13および表示ユニット19に接続されている。カメラユニット13および表示ユニット19は、接続ケーブル21を通じて、画像処理装置20から駆動電力が供給される。カメラユニット13は、撮影した画像の信号を、接続ケーブル21を通じて画像処理装置20に出力する。画像処理装置20からの表示画像の信号(立体視映像の信号)は、接続ケーブル21を通じて表示ユニット19に入力される。これにより、画像処理装置20は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19に出力する。
【0032】
なお、図2および図5は、画像処理装置20が筐体11と別個に設けられた場合を例示したが、本発明はこれに限らない。例えば画像処理装置20を小型の専用マイクロコンピュータ等によって構成する場合には、画像処理装置20を筐体11に取り付けてもよい。
【0033】
カメラユニット13および表示ユニット19は、筐体11に設けられた例えば電池等の別電源によって駆動してもよい。また、カメラユニット13および表示ユニット19と画像処理装置20との間は、無線信号を送信と受信する構成としてもよい。即ち、カメラユニット13および表示ユニット19と画像処理装置20との間は、有線に限らず、無線で接続してもよい。
【0034】
画像処理装置20は、カメラユニット13で取り込んだ画像を表示ユニット19に転送する際に、電子ゴーグル10を装着した作業者が、両目で立体視するときの違和感を減らすために、左右の目に対応する表示画像の「XY位置」や、「表示倍率」を調整する機能を有している。カメラ側に実装したレンズとの兼ね合いもあるが、作業者毎に「XY位置」、「表示倍率」を最適に調整することが、違和感のない、疲労低減化にとって重要である。作業者が電子ゴーグル10を装着した状態で調整するものに限らず、「XY位置」、「表示倍率」は、事前に調整して、保存しておいた値を利用してもよい。
【0035】
また、電子ゴーグル10は、接眼レンズ19C,19Dを備えるものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、画像処理装置20は、カメラユニット13から取得した画像をフーリエ変換し、表示する「XY位置」や「表示倍率」を調整することで、表示ユニット19に立体画像を表示してもよい。この場合、接眼レンズが不要で、違和感のない電子ゴーグルを実現することができる。
【0036】
次に、図1図2および図5を参照して、電子ゴーグル10を用いたレーザー溶接の溶接作業について説明する。
【0037】
まず、作業者は、母材Mを接合可能な状態で作業台上に載置する。その後、作業者は、レーザー溶接機の溶接ヘッド1を把持して、レーザー溶接を準備する。次に、作業者は、電子ゴーグル10に駆動電力を供給した状態で、顔面に電子ゴーグル10を装着する。このとき、電子ゴーグル10の表示ユニット19には、カメラユニット13で撮影した画像がリアルタイムで表示される。このため、作業者は、表示ユニット19を目視することで、電子ゴーグル10を透過した視線の先にある母材M等の状態を確認することができる。
【0038】
次に、作業者は、溶接ヘッド1に設けられたスイッチ(図示せず)を操作して、出力部3からガイド光Gを出力させる。この状態で、作業者は、ガイド光Gのスポットが母材Mの開先位置となるように、溶接ヘッド1を移動させる。このとき、カメラユニット13には、光を減衰させるフィルタユニット17,18が取り付けられている。しかしながら、フィルタユニット17,18は、ガイド光Gを透過させるバンドパスフィルタ17B,18Bを備えている。このため、カメラユニット13は、フィルタユニット17,18を透過したガイド光Gを撮影することができる。
【0039】
この結果、作業者は、電子ゴーグル10を装着した状態でも、電子ゴーグル10の表示ユニット19を目視することによって、ガイド光Gを確認することができる。従って、作業者は、電子ゴーグル10を装着した状態で、溶接ヘッド1を移動させて、出力部3の先端を母材Mの開先位置に近付けることができる。この状態で、作業者は、溶接ヘッド1を操作して溶接ヘッド1の出力部3からレーザー溶接用のレーザー光Lを出力する。これにより、レーザー光Lは、母材Mの開先位置に集光され、母材Mが接合される。
【0040】
このとき、レーザー溶接に伴って、溶接部位等から強い発光が生じる。一つはプラズマ発光である。また、被加工材料(母材M)が高温になることによって輻射光が生じる。これに加え、レーザー光Lの反射光や散乱光が溶接部位から放射される。これらの発光を高い光学濃度の光フィルタを用いて減衰させた場合、光学濃度が高過ぎると、発光が生じていないときは、暗くなり過ぎて、加工点や加工物が見えない。
【0041】
これに対し、フィルタユニット17,18は、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光の反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタ17A,18Aを備えている。このため、カメラユニット13は、撮像素子14A,15Aのダイナミックレンジの範囲内で、プラズマ発光等を検出する。従って、レーザー溶接によってプラズマ発光等が発生しても、作業者は、電子ゴーグル10の表示ユニット19を目視することによって、両目を保護しつつ、溶接部位の状態を確認することができる。
【0042】
レーザー溶接が終了すると、作業者は、溶接ヘッド1のスイッチをOFFに切り替えて、レーザー光Lおよびガイド光Gの出力を停止させる。その後、作業者は、電子ゴーグル10を頭部から取り外し、接合部位の状態を肉眼で目視確認する。
【0043】
かくして、本実施形態による電子ゴーグル10は、作業者の顔面に取り付けられる筐体11と、筐体11に取り付けられたカメラユニット13と、カメラユニットに入射される光を制限するフィルタユニット17,18と、カメラユニット13で撮影した画像を表示する表示ユニット19と、を備え、表示ユニット19は、作業者が表示ユニット19を目視可能となった状態で、カメラユニット13と互いに重なり合って筐体11に取り付けられており、フィルタユニット17,18は、溶接中のプラズマ発光、溶接加工点の輻射光、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる減衰フィルタ17A,18Aと、ガイド光Gが透過可能なバンドパスフィルタ17B,18Bと、を備えている。
【0044】
例えば、従来技術による電子ゴーグルでは、ガイド光Gの波長帯を含む光を減衰させるフィルタを用いている。このため、従来技術では、ガイド光Gのスポットを確認するために、電子ゴーグルを一旦取り外して、ガイド光Gのスポットを肉眼で目視する必要がある。その後、レーザー溶接作業を開始するときに、電子ゴーグルを再度装着する必要があり、溶接の開始位置がずれる虞れがあるのに加え、作業性が低下するという問題がある。
【0045】
これに対し、第1の実施形態による電子ゴーグル10では、ガイド光Gは、フィルタユニット17,18を透過してカメラユニット13で撮影される。このため、作業者は、電子ゴーグル10を装着した状態で、表示ユニット19に表示される画像を目視することによって、ガイド光Gのスポットを確認することができる。この結果、電子ゴーグル10を装着した状態で、ガイド光Gのスポットを溶接の開始位置に合わせることができるから、溶接の開始位置のばらつきを抑制することができる。これに加え、電子ゴーグル10を装着した状態で、溶接ヘッド1の移動や操作を行って、レーザー溶接を開始することができる。このため、電子ゴーグル10の着脱を繰り返す必要がなく、レーザー溶接の作業性を高めることができる。
【0046】
また、加工により生じる光だけでは、従来の溶接用保護具(フェイスシールド)では、加工点の近傍(開先)を見ることができない。このため、溶接の進行方向の確認が不十分になる傾向がある。これに加え、溶接などの作業部位が可視化された場合でも、作業者は、その出来栄えや溶接ヘッド1(ハンドトーチ)の使い方が適切か否かを判断することができない。
【0047】
これに対し、第1の実施形態による電子ゴーグル10では、レーザー溶接の開始後は、フィルタユニット17,18によってプラズマ発光、輻射光、レーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させることができる。このため、レーザー加工(溶接)中のプラズマ発光に起因する眩しさを低減できる。また、レーザー加工時に、加工点が高温になることによる可視光波長から赤外光波長にかけての輻射光を低減することができる。さらに、レーザー光Lの反射や散乱による光も低減することができる。これにより、カメラユニット13で取得できる画像の見易さ(可視化性能)を向上させることができる。この結果、白飛びがなく、かつ、暗くなり過ぎることもなく、例えば肉盛り状態や開先のような加工部位の様子を確認できる画像が取得できる。
【0048】
また、減衰フィルタ17A,18Aは、溶接中のプラズマ発光を減衰させる第1減衰フィルタ17A1,18A1と、溶接加工点の輻射光を減衰させる第2減衰フィルタ17A2,18A2と、溶接加工を行うレーザー光Lの反射光と散乱光を減衰させる第3減衰フィルタ17A3,18A3と、を備えている。このため、例えばプラズマ発光、輻射光、反射光、散乱光等の光強度に応じて、それぞれの波長帯の光の減衰量を第1減衰フィルタ17A1,18A1、第2減衰フィルタ17A2,18A2、第3減衰フィルタ17A3,18A3によって個別に調整することができる。
【0049】
また、カメラユニット13は、作業者の左眼用の画像を撮影する撮像素子14A(左側撮像素子)と、作業者の右眼用の画像を撮影する撮像素子15A(右側撮像素子)と、を備え、表示ユニット19は、撮像素子14Aが撮影した左眼用の画像を表示する左表示部19Aと、撮像素子15Aが撮影した右眼用の画像を表示する右表示部19Bと、を備えている。このため、作業者は、左眼で左表示部19Aを目視し、右眼で右表示部19Bを目視することによって、肉眼で目視した場合と同様の画像を見ることができる。
【0050】
例えば単一のカメラで得られる画像では、奥行き感を得ることができず、溶接作業の作業性が低下する。これに対し、第1の実施形態による電子ゴーグル10は、視差を有する2つのカメラモジュール14,15(撮像素子14A,15A)で取得した画像を、表示ユニット19の左表示部19Aと右表示部19Bで作業者の左眼と右眼に別個に表示する。このため、作業者は、電子ゴーグル10を用いることによって、溶接作業中の接合部位を立体的に視認することができる。
【0051】
さらに、カメラユニット13および表示ユニット19は、画像処理装置20に接続されており、画像処理装置20は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19に出力する。このため、作業者は、表示ユニット19を目視することによって、カメラユニット13の撮影方向にある溶接の接合部位を確認することができる。また、作業者は、表示ユニット19に表示された画像を目視するから、溶接時に強いプラズマ発光等が生じるときでも、作業者は、このプラズマ発光等を直接的に目視することはなく、カメラユニット13および表示ユニット19を用いて間接的に目視することになる。このため、強いプラズマ発光等から作業者の両眼を保護することができる。
【0052】
このように、第1の実施形態による電子ゴーグル10は、特定の波長を減衰させる減衰フィルタ17A,18Aと、バンドパスフィルタ17B,18Bとを組み合わせて、カメラユニット13の前に配置することで、ガイド光Gを透過させつつ、加工部位の可視化と、目を保護する機能を備えることができた。これにより、レーザー溶接の作業性向上を実現することができる立体視可能な電子ゴーグル10を提供することができた。
【0053】
それらの作用により、ハンドトーチの溶接開始位置をガイド光Gで容易に確認できる。複数のカメラモジュール14,15の取り付け位置や、角度を適切に調節し、表示ユニット19と接眼レンズ19C,19D等のレンズ系も適切に調節することで、手を伸ばした感覚のところに実際のものがあるように調節することができ、実作業場で違和感の無い立体視が可能となった。また、ガイド光Gが赤色波長以外の場合も透過特性を考慮した光学フィルタ(バンドパスフィルタ17B,18B)に置き換えることで、容易に対処可能である。
【0054】
なお、第1の実施形態では、各波長帯を抑制する光学フィルタを複数組み合わせる、即ち光学フィルタを複数段重ねる構成とした。本発明はこれに限らず、例えば光学薄膜の設計理論により設計・製作された複数の波長帯の透過・反射(抑制)機能を有する単一の光学フィルタで実現してもよい。また、フィルタユニット17,18は、カメラモジュール14,15に取り付けるものとしたが、筐体11に取り付けてもよい。フィルタユニット17,18、第1減衰フィルタ17A1,18A1、第2減衰フィルタ17A2,18A2、第3減衰フィルタ17A3,18A3、NDフィルタ17C,18Cは、カメラモジュール14,15等に対して交換可能に取り付けてもよい。この場合、ガイド光G、レーザー光L、プラズマ発光、輻射光等の波長や強度等に応じた最適なフィルタユニットを選択して、カメラモジュール等に取り付けることができる。
【0055】
次に、図7は第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、画像処理装置は、表示ユニットとは別個の表示装置に接続されており、カメラユニットで撮影した画像の信号を、表示装置に出力することにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
第2の実施形態による画像処理装置30は、第1の実施形態による画像処理装置20とほぼ同様に構成されている。このため、画像処理装置30は、電子ゴーグル10のカメラユニット13および表示ユニット19に電気的に接続されている。画像処理装置30は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19に出力する。これにより、表示ユニット19には、カメラユニット13で撮影した画像が表示される。
【0057】
また、画像処理装置30は、表示ユニット19とは別個の表示装置としてVR(Virtual Realty)ゴーグル31に接続されている。VRゴーグル31は、表示ユニット19と同様の表示部32と、接眼レンズ33A,33Bとを備えている。
【0058】
図7には、画像処理装置30とVRゴーグル31との間は、ケーブル34を用いて有線で接続した場合を例示した。本発明はこれに限らず、画像処理装置30とVRゴーグル31との間は、各種の通信規格を用いて無線で接続してもよい。
【0059】
画像処理装置30は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、VRゴーグル31に出力する。このとき、VRゴーグル31の表示部32には、表示ユニット19と同様に、左表示部19Aの画像と右表示部19Bの画像が表示される。
【0060】
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、画像処理装置30は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19とは別個のVRゴーグル31に出力する。このため、作業者が溶接作業を行うときに、作業者と異なる人がVRゴーグル31を目視することによって、作業者による溶接作業の詳細を確認することができる。これにより、例えばベテランの指導者が不慣れな作業者(実習者)を指導する場合には、指導者がVRゴーグル31を目視することによって、作業者の溶接作業の状態や溶接部位の詳細をリアルタイムに確認することができる。この結果、溶接作業後に溶接部位を確認する場合に比べて、作業者による溶接ヘッド1の動かし方やレーザー光Lの照射位置を把握し易いから、指導者は、これらを踏まえて適切な助言を作業者に伝えることができる。
【0061】
このように、第2の実施形態による電子ゴーグルシステムでは、電子ゴーグル10とVRゴーグル31とを用いることによって、作業者(実習者)と指導者とで溶接作業の情報を共有することができる。これにより、指導者はVRゴーグル31を見ることにより、口頭で作業者に溶接作業の具体的な指示を行うことができ、レーザー溶接の作業性向上を実現することができる。また、溶接作業の指導が可能な電子ゴーグルシステムとなるから、指導者は、VRゴーグル31を用いて溶接部位を立体的に観察することができる。このため、平面的な画像を目視する場合に比べて、指導者は、臨場感を有する具体的な指示を行うことができる。
【0062】
なお、第2の実施形態では、表示装置がVRゴーグル31である場合を例示したが、本発明はこれに限らない。例えば表示装置は、例えば液晶パネルや有機EL等からなるモニタ装置でもよく、モニタ画面を備えたタブレット、スマートフォン等の携帯端末でもよい。表示装置がモニタ装置等である場合、表示装置に表示される画面は、例えば表示ユニット19の左表示部19Aの画像でもよく、右表示部19Bの画像でもよく、左表示部19Aの画像と右表示部19Bの画像を合成した立体的な画像でもよい。
【0063】
次に、図8は第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、画像処理装置は、カメラユニットで撮影した画像の信号を、タッチパネルに出力すると共に、カメラユニットで撮影した画像にタッチパネルに入力された情報を加えた信号を、表示ユニットに出力することにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1,第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
第3の実施形態による画像処理装置40は、第1の実施形態による画像処理装置20とほぼ同様に構成されている。このため、画像処理装置40は、電子ゴーグル10のカメラユニット13および表示ユニット19に電気的に接続されている。画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19に出力する。これにより、表示ユニット19には、カメラユニット13で撮影した画像が表示される。
【0065】
画像処理装置40は、タッチパネル41Aを有するモニタ装置41に接続されている。このとき、タッチパネル41Aは、表示ユニット19とは別個の表示装置を構成している。タッチパネル51Aは、例えば液晶パネルや有機EL等からなるモニタを備えている。画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、モニタ装置41のタッチパネル41Aに出力する。具体的には、画像処理装置40は、表示ユニット19の左表示部19Aの画像と右表示部19Bの画像をモニタ装置41に出力する。
【0066】
このとき、モニタ装置41は、3D眼鏡42と連動し、立体映像(3D映像)が表示可能となっている。3D眼鏡42は、例えば液晶シャッタを有している。モニタ装置41は、左眼用と右眼用の画像を交互に高速に切り替えて表示する。即ち、モニタ装置41は、左表示部19Aの画像と右表示部19Bの画像を交互に切り替えて表示する。3D眼鏡42は、モニタ装置41に表示される画像と同期して、左眼用の画像が表示されるときには右眼のシャッタ42Bを閉じ、右眼用の画像の時には左眼のシャッタ42Aを閉じる。これにより、3D眼鏡42を掛けた人(例えば指導者)は、作業者と同様に、溶接部位等を立体的に視認することができる。
【0067】
また、モニタ装置41のタッチパネル41Aは、その画面にペンや指先で触れることによって、画像や記号を入力することができる。タッチパネル41Aに入力された画像情報は、画像処理装置40に出力される。画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像にタッチパネル41Aに入力された情報を加えた信号を、表示ユニット19に出力する。これにより、表示ユニット19には、カメラユニット13で撮影した画像と、タッチパネル41Aに入力された情報とが合成された画像が表示される。
【0068】
図8には、画像処理装置40とタッチパネル41A(モニタ装置41)との間は、ケーブル43を用いて有線で接続した場合を例示した。本発明はこれに限らず、画像処理装置40とモニタ装置41との間は、各種の通信規格を用いて無線で接続してもよい。同様に、図8には、画像処理装置40と3D眼鏡42との間は、ケーブル44を用いて有線で接続した場合を例示したが、無線で接続してもよい。
【0069】
かくして、第3の実施形態でも、第1,第2の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19とは別個のモニタ装置41に出力する。このため、作業者が溶接作業を行うときに、指導者がモニタ装置41のタッチパネル41Aを目視することによって、作業者による溶接作業の詳細を確認することができる。
【0070】
また、画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、モニタ装置41のタッチパネル41Aに出力する。このとき、タッチパネル41Aの表示画面には、指導者が記号や図形を書き込むことができる。このため、指導者は、例えば溶接開始位置やレーザー光Lの照射位置のずれ等をタッチパネル41Aに記入することができる。これに加え、画像処理装置40は、カメラユニット13で撮影した画像にタッチパネル41Aに入力された情報を加えた信号を、表示ユニット19に出力する。このため、指導者からの指導内容や指示内容は、表示ユニット19を用いてリアルタイムで作業者に伝えることができる。
【0071】
このように、第3の実施形態による電子ゴーグルシステムでは、電子ゴーグル10とモニタ装置41等を用いることによって、作業者(実習者)と指導者が溶接作業の情報を共有することができる。また、電子ゴーグル10の表示ユニット19には、指導者からのタッチパネル41A上の指示が表示される。このため、レーザー溶接の作業性向上を実現することができ、溶接作業の指導が可能な電子ゴーグルシステムを実現することができる。これに加え、指導者は、モニタ装置41と3D眼鏡42とによって溶接作業を立体的に観察することができる。このため、指導者は、平面的な画像を目視した場合に比べて、臨場感をもって溶接作業を把握することができ、タッチパネル41Aに記入した記号や図形を用いて具体的な助言・指導を行うことができる。
【0072】
なお、第3の実施形態では、立体映像を取得するために、シャッタを備えた3D眼鏡42を用いるものとしたが、本発明はこれに限らない。例えばモニタ装置41が偏波面の異なる2種類の画像を表示可能であれば、2種類の画像に対応して左眼用と右眼用の2つの偏光フィルタを備えた3D眼鏡を用いてもよい。この場合、3D眼鏡は、画像処理装置40に接続する必要がなく、駆動電力も不要になる。
【0073】
次に、図9は第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、画像処理装置は、カメラユニットで撮影した画像の信号を、タッチパネル付きの携帯端末に出力することにある。なお、第4の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
第4の実施形態による画像処理装置50は、第1の実施形態による画像処理装置20とほぼ同様に構成されている。このため、画像処理装置50は、電子ゴーグル10のカメラユニット13および表示ユニット19に電気的に接続されている。画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19に出力する。これにより、表示ユニット19には、カメラユニット13で撮影した画像が表示される。
【0075】
画像処理装置50は、タッチパネル51Aを有する携帯端末51に接続されている。このとき、タッチパネル51Aは、表示ユニット19とは別個の表示装置を構成している。タッチパネル51Aは、例えば液晶パネルや有機EL等からなるモニタを備えている。携帯端末51は、例えばタブレット、スマートフォン等である。タッチパネル51Aは、その画面にペンや指先で触れることによって、画像や記号を入力することができる。タッチパネル51Aに入力された画像情報は、画像処理装置50に出力される。
【0076】
図9には、画像処理装置50と携帯端末51との間は、ケーブル52を用いて有線で接続した場合を例示した。本発明はこれに限らず、画像処理装置50と携帯端末51との間は、各種の通信規格を用いて無線で接続してもよい。
【0077】
画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、携帯端末51のタッチパネル51Aに出力する。このとき、タッチパネル51Aには、例えば表示ユニット19の左表示部19Aの画像と同じ画像が表示される。なお、タッチパネル51Aに表示される画像は、左表示部19Aの画像に限らず、右表示部19Bの画像でもよく、左表示部19Aの画像と右表示部19Bの画像を合成した立体的な画像でもよい。また、画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像にタッチパネル51Aに入力された情報を加えた信号を、表示ユニット19に出力する。
【0078】
かくして、第4の実施形態でも、第1,第3の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第4の実施形態では、画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、表示ユニット19とは別個の携帯端末51に出力する。このため、作業者が溶接作業を行うときに、指導者が携帯端末51を目視することによって、作業者による溶接作業の詳細を確認することができる。
【0079】
また、画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像の信号を、携帯端末51のタッチパネル51Aに出力する。このとき、タッチパネル51Aの表示画面には、指導者が記号や図形を書き込むことができる。このため、指導者は、例えば溶接開始位置やレーザー光Lの照射位置のずれ等をタッチパネル51Aに記入することができる。これに加え、画像処理装置50は、カメラユニット13で撮影した画像にタッチパネル51Aに入力された情報を加えた信号を、表示ユニット19に出力する。このため、指導者からの指導内容や指示内容は、表示ユニット19を用いてリアルタイムで作業者に伝えることができる。
【0080】
このように、第4の実施形態による電子ゴーグルシステムでは、電子ゴーグル10と携帯端末51を用いることによって、作業者(実習者)と指導者が溶接作業の情報を共有することができる。また、電子ゴーグル10の表示ユニット19には、指導者からのタッチパネル51A上の指示が表示される。このため、レーザー溶接の作業性向上を実現することができ、溶接作業の指導が可能な電子ゴーグルシステムを実現することができる。
【0081】
なお、第4の実施形態では、画像処理装置50は、タッチパネル51Aを有する携帯端末51に接続した場合を例示したが、本発明はこれに限らない。画像処理装置50は、タッチパネル51Aを有する固定式のモニタ装置に接続してもよい。また、溶接部位等を目視確認するだけであれば、タッチパネルである必要はなく、タッチパネル機能を省いたモニタ装置等を画像処理装置に接続してもよい。
【0082】
第4の実施形態による電子ゴーグルシステムは、レーザー溶接作業に適用するものとした。このような指導者による指導が可能な電子ゴーグルシステムは、レーザー溶接作業に限らず、例えば電気アーク溶接作業などの他の溶接作業にも適用可能である。この場合、ガイド光Gを使用しないアーク溶接では、レーザー溶接用のフィルタユニット17,18を備えた電子ゴーグル10を用いる必要はない。このため、従来技術による電子ゴーグルとして、溶接作業時のプラズマ発光、加工部の発熱による発光を必要に応じて、所望の光減衰量を調節できる光学フィルタを備えたものを使用してもよい。この構成は、第2,第3の実施形態にも適用可能である。
【0083】
第4の実施形態による電子ゴーグルシステムでは、指導者がタッチパネル51Aに入力した指示を、作業者の電子ゴーグル10にリアルタイムに表示して、溶接作業の指導を行うものとした。本発明はこれに限らず、例えば電子ゴーグル10を装着して、指導者が適切なレーザー溶接作業の指示を行った映像(電子ゴーグル10や携帯端末51に表示された映像)を画像処理装置50、制御コンピュータ、記録装置等に録画してもよい。この場合、録画内容を、溶接技術の伝承ツールとして使用することができる。具体的には、実習者が、電子ゴーグル10を装着した状態で、録画された作業内容を視聴することで、適切な作業の様子を立体視しながら身に付けることが可能になる。この構成は、第3の実施形態にも適用可能である。
【0084】
前記各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 電子ゴーグル
11 筐体
13 カメラユニット
14,15 カメラモジュール
14A,15A 撮像素子
17,18 フィルタユニット
17A,18A 減衰フィルタ
17A1,18A1 第1減衰フィルタ
17A2,18A2 第2減衰フィルタ
17A3,18A3 第3減衰フィルタ
17B,18B バンドパスフィルタ
17C,18C NDフィルタ
19 表示ユニット
19A 左表示部
19B 右表示部
20,30,40,50 画像処理装置
31 VRゴーグル(表示装置)
41 モニタ装置
41A タッチパネル(表示装置)
42 3D眼鏡
51 携帯端末
51A タッチパネル(表示装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9