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特開2024-118068緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118068
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/00 20180101AFI20240823BHJP
   A01G 25/02 20060101ALI20240823BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20240823BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A01G20/00
A01G25/02 601J
A01G25/02 602D
A01G25/02 604
A01G27/00 504Z
A01G31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024250
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】390014649
【氏名又は名称】日本地工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢内 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B314NA05
2B314PB02
2B314PD37
2B314PD40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ると共に、建物の外壁ならびに外壁近傍の大気の温度上昇を好適に防止することが可能な緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システムを提供する。
【解決手段】登はん植物を支持しながら所定の方向に案内させる登はん緑化チューブ50(登はん補助部材)を、内部全体を中空構造とし且つ貯水可能とし、内部の貯水量が所定量を超える場合に水が染み出すケーシングチューブ1によって構成する。鉛直方向に向いた上記登はん緑化チューブ50を水平方向に沿って複数配列し、上部はドリッパー2を介して灌水チューブ13に連通させ、下部はドリッパー2を介して大気に開放させる。灌水チューブ13の上流側には貯水タンク10を配置し、貯水タンク10の出口部には電磁弁11を設け、貯水タンク10から灌水チューブ13への給水は、電磁弁11の開・閉によって行うようにする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が登はんする際に植物を支持し登はん方向を案内するための緑化補助部材(50)であって、
前記緑化補助部材(50)は内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能であり、
貯水量が所定量を超える場合、表面の水密性が破壊されて該表面から水が染み出るように構成されている
ことを特徴とする緑化補助部材。
【請求項2】
請求項1に記載の緑化補助部材において、
前記緑化補助部材(50)は両端部に水を滴下させる点滴装置(2)を備える
ことを特徴とする緑化補助部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緑化補助部材において、
前記緑化補助部材(50)は建物の壁面に沿って配設される
ことを特徴とする緑化補助部材。
【請求項4】
請求項1に記載の緑化補助部材において、
前記緑化補助部材(50)は、水を滴下させる前記点滴装置(2)を取り付けるための圧挿入式の結合部材(3,3’)を備える
ことを特徴とする緑化補助部材。
【請求項5】
植物が登はんする際に植物を支持し登はん方向を案内するための1又は複数の緑化補助部材(50)と、
前記緑化補助部材(50)に水を給水する給水手段(10)と、を備えた緑化灌水システム(100)であって、
前記緑化補助部材(50)は内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能であり、
貯水量が所定量を超える場合、表面の水密性が破壊されて該表面から水が染み出るように構成されている
ことを特徴とする緑化灌水システム。
【請求項6】
請求項5に記載の緑化灌水システムにおいて、
前記緑化補助部材(50)は両端部に水を滴下させる点滴装置(2)を備える
ことを特徴とする緑化灌水システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の緑化灌水システムにおいて、
前記緑化補助部材(50)は建物の壁面に沿って配設される
ことを特徴とする緑化灌水システム。
【請求項8】
請求項5に記載の緑化灌水システムにおいて、
前記緑化補助部材(50)は、水を滴下させる前記点滴装置(2)を取り付けるための圧挿入式の結合部材(3,3’)を備える
ことを特徴とする緑化灌水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システムに関し、より詳細には登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ると共に、建物の外壁ならびに外壁近傍の大気の温度上昇を好適に防止することが可能な緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁に沿って金網、複数のワイヤー又は複数の長尺棒(緑化補助部材)を設置して、植物がこれら緑化補助部材に沿って壁面を登はんするようにし、これにより壁面を植物で被覆・装飾するようにした壁面緑化が広く行われている。壁面緑化は壁面が緑色に彩られるため、壁面の外観、ひいては都市の景観も美しいものになる。一方、植物は大気中の二酸化炭素(CO)を取り込んで光合成を行い、光合成の過程で酸素(O)を排出するため、壁面緑化は近年の二酸化炭素排出量削減、カーボンニュートラル化ならびに人の健康の観点からも好ましいと言える。
【0003】
また、壁面を植物で被覆・装飾することは、太陽光が壁面に直接入射しなくなるため、壁面が高温化することを防止し、これにより建物全体が高温化することを防止することになる。その結果、夏季においては冷房による空調装置の負荷が軽減され、電力量の増大が抑制されることになる。同様に、冬季においては、室内の熱が壁面を介して外気に伝達しにくくなるため、暖房による空調装置の負荷が軽減され、電力量の増大が抑制されることになる。すなわち、壁面緑化は省エネルギーの観点からも好ましいと言える。
【0004】
ところで、壁面に沿ってL形ブラケットを介して中空・長軸のレール部材を水平に配設し、そのレール部材を高さ方向に沿って複数配設し、更にレール部材とレール部材との間に植物が登はんするための複数のワイヤーを配設した壁面緑化装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
この壁面緑化装置では、レール部材の内部に配水ホースが配設されている。配水ホースには各ワイヤーに対し別個独立に給水ホースが分岐する形態でそれぞれ配設されている。そして配水ホースにはポンプが接続され、ポンプはコントローラによって、所定の時間間隔かつ所定の流量で、各給水ホースを介して各ワイヤーに巻き付いた各植物に灌水するように構成されている。なお、植物に灌水される水は、ワイヤーの上端に接続されたコイルばねに一旦貯水され、コイルばねをオーバーフローしてワイヤーに沿って上方から下方へ流下するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-55180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の壁面緑化装置では、植物に灌水される水はワイヤーに沿って上方から下方へ流下するようになっている。即ち、給水ホースから吐出される水は、重力によって加速されながらワイヤーに沿って上方から下方へ流下することになる。そのため、大部分の水は植物をスルーして下方へ流下することになる。従って、上記特許文献1に記載された壁面緑化装置では登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ないという問題がある。
【0008】
また、夏場、都市部においてはビル群および路面の熱こもり、ビル群および路面からの反射熱、空調設備(室外機)からの排熱、自動車の排気ガス等によって大気自体が高温になる。そして高温化した大気は対流によって室内に侵入し室内を高温化させることになる。上記壁面緑化装置は太陽光を遮蔽することは可能であるが、高温化した大気の室内への侵入を阻止することは難しいと考えられる。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ると共に、建物の外壁ならびに外壁近傍の大気の温度上昇を好適に防止することが可能な緑化補助部材及びそれを使用した緑化灌水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る緑化補助部材は、植物が登はんする際に植物を支持し登はん方向を案内するための緑化補助部材(50)であって、前記緑化補助部材(50)は内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能であり、貯水量が所定量を超える場合、表面の水密性が破壊されて該表面から水が染み出るように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成では、緑化補助部材(50)内部に供給された水は、表面から染み出す形態でゆっくりと(極めて遅い速度で)外部に流出することになる。表面から染み出た水は、下方に流下せずに表面に一時的に保持されることになる。そして、表面に保持された水は、新たに染み出た水によって表面から押し出され、登はん植物の茎、枝、葉を順々に濡らすことになる。このように、緑化補助部材(50)の表面からの水の染み出しが続くことにより、水がゆっくりと茎、枝、葉と移動する過程で、水の一部は植物によって吸収され、その他は大気の熱、壁面の熱を吸収して気化することになる。その結果、登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ると共に、建物の外壁ならびに外壁近傍の大気の温度上昇を好適に抑制することが可能となる。
【0012】
本発明に係る緑化補助部材の第2の特徴は、前記緑化補助部材(50)は両端部に水を滴下させる点滴装置(2)を備えることである。
【0013】
上記構成では、点滴の形態により給水・排水することにより、緑化補助部材(50)の内部に水を溜めることができると共に、表面から染み出た分に相当する水を補充し、水の表面染み出し状態を好適に持続させることが可能となる。
【0014】
本発明に係る緑化補助部材の第3の特徴は、前記緑化補助部材(50)は建物の外壁に沿って配設されることである。
【0015】
上記構成では、登はん植物の茎、枝、葉に付着した水によって、登はん植物近傍の大気は、水の気化熱相当分を奪われ、間接的に冷却されることになる。その結果、大気の温度および大気に接する外壁の温度上昇を好適に抑制することが可能となる。
【0016】
本発明に係る緑化補助部材の第4の特徴は、前記緑化補助部材(50)は、水を滴下させる前記点滴装置(2)を取り付けるための圧挿入式の結合部材(3,3’)を備えることである。
【0017】
上記構成では、緑化補助部材(50)と点滴装置(2)との接続部からの漏水を防止すると共に、緑化補助部材(50)の組み立てに係る時間を短縮することができる。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る緑化灌水システムは、植物が登はんする際に植物を支持し登はん方向を案内するための複数の緑化補助部材(50)と、前記緑化補助部材(50)に水を給水する給水手段(10)と、を備えた緑化灌水システム(100)であって、前記緑化補助部材(50)は内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能であり、貯水量が所定量を超える場合、表面の水密性が破壊されて該表面から水が染み出るように構成されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成では、複数の緑化補助部材(50)に水をそれぞれ供給し、緑化補助部材(50)の上記機能(水の表面染み出し、水の表面染み出しによる植物への灌水、植物に付着した水の気化熱による大気および大気に接する外壁の冷却等)を発揮させることが可能となる。
【0020】
本発明に係る緑化灌水システムの第2の特徴は、前記緑化補助部材(50)は両端部に水を滴下させる点滴装置(2)を備えることである。
【0021】
上記構成では、複数の緑化補助部材(50)に対し点滴の形態で水を均等に供給し又は排水することにより、水を表面から染み出させることが可能となる。これにより、各緑化補助部材(50)に支持された登はん植物について茎、枝、葉を十分に濡らすことが可能となる。
【0022】
本発明に係る緑化灌水システムの第3の特徴は、前記緑化補助部材(50)は建物の外壁に沿って配設されることである。
【0023】
上記構成では、緑化補助部材(50)の表面から染み出た水が気化熱相当の熱を外壁および外壁近傍の大気から奪うことにより、外壁および外壁近傍の大気を冷却することが可能となる。
【0024】
本発明に係る緑化灌水システムの第4の特徴は、前記緑化補助部材(50)は、水を滴下させる前記点滴装置(2)を取り付けるための圧挿入式の結合部材(3,3’)を備えることである。
【0025】
上記構成では、緑化補助部材(50)と点滴装置(2)との接続部からの漏水を防止すると共に、緑化灌水システム(100)の組み立てに係る時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の緑化補助部材(50)及びそれを使用した緑化灌水システム(100)によれば、登はん植物の枝・葉に到るまで十分に灌水することが出来ると共に、建物の外壁ならびに外壁近傍の大気の温度上昇を好適に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る登はん緑化チューブの正面図である。
図2図1のA部の断面拡大図である。
図3図1のB部の断面拡大図である。
図4】本発明に係る他のコネクターを示す説明図である。
図5】本発明に係るシール材によって水密性が保持されたコネクターを示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る登はん緑化灌水システムを示す説明図である。
図7】ケーシングチューブ内部における水の水位上昇を示す説明図である。
図8】ケーシングチューブ表面における水の染み出しを示す説明図である。
図9】染み出した水の登はん植物に沿った流動を示す説明図である。
図10】染み出した水の蒸発を示す説明図である。
図11】登はん緑化灌水システムにおける電磁弁の動作時間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る登はん緑化チューブ50を示す説明図である。図1は登はん緑化チューブ50の正面図である。図2図1のA部の断面拡大図である。
【0030】
この登はん緑化チューブ50は、内部全体が中空構造を成すケーシングチューブ1と、ケーシングチューブ1に水を滴下するドリッパー2と、ケーシングチューブ1とドリッパー2を接続するためのコネクター3とから構成され、ケーシングチューブ1の内部の貯水量が所定量を超える場合、ケーシングチューブ1の表面から水が染み出るように構成されている。なお、ここで言う「水が表面から染み出る」とは、表面から流出した直後の水が流下せずに表面に一時的に留まることができる程度に非常にゆっくりとした速度で表面から外部に流出する、ということを意味している。以下、各構成について更に説明する。
【0031】
図2に示されるように、本実施形態で使用されるケーシングチューブ1は、断面が山部1aと谷部1bから成る凹凸形状の金属板材を、ロール成形しながら且つ山部1aと谷部1bが係合するように、スパイラル(螺旋)状に巻いたものを、所定の長さに切断し端末処理したものである。従って、ケーシングチューブ1は内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能であり、更にはフレキシブル性(可撓性)、伸縮性を有している。
【0032】
また、山部1a、谷部1bは所定のピッチPでねじ状に形成されている。山部1aと谷部1bとの係合部1cは、山部1aの内周面と谷部1bの外周面が接合(密着)しているのみである。従って、ケーシングチューブ1の内部の貯水量が上昇するに従い、山部1aと谷部1bの接合部の密着が弱くなり、終いには山部1aと谷部1bの係合部1cから水が染み出るようになる。
【0033】
なお、本発明に係るケーシングチューブ1は、内部全体が中空構造を成し且つ貯水可能で、貯水量が所定量を超える場合に水が表面から染み出る構造を有していれば良く、従って、上記山部1aと谷部1bがスパイラル状に形成されたものだけに限定されない。例えば、表面に多数の穴が設けられた有機物(例えば、合成樹脂)製または無機物(例えば、セラミック)製の多孔質のケーシングチューブであっても良い。
【0034】
また、断面形状についても、丸形に限らず角形或いは矩形であっても良い。また、ケーシングチューブ1として市販品(例えば型式:KS-6N)を使用することも可能である。
【0035】
図1に戻って、ドリッパー2は、例えばプラスチック成形品で所定の点滴流量を有している。水が流入・流出する入口ポート2a及び出口ポート2bは、後述する灌水チューブ13(図4)とコネクター3にそれぞれ差し込まれるため、先細のテーパー状を成している。また、上部のドリッパー2の点滴流量と下部のドリッパー2の点滴流量は、互いに同じであっても異なっていても良い。或いは下部のドリッパー2を省略することも可能である。下部のドリッパー2を省略する場合、ケーシングチューブ1の端部はコネクター3に代えてエンドキャップ(閉栓)が装着されることになる。
【0036】
図3に示されるように、コネクター3は、例えば金属製で大小2つの円筒部が結合した二段円筒構造を成している。外径の大きい大円筒部3aは、ケーシングチューブ1の山部1aと谷部1bに噛み合うスパイラル(螺旋)状の雌ねじ部3a1が形成されている。また、大円筒部3aの開口端には、開口端からの漏水を防止するシールテープ3a2が巻かれている。
【0037】
一方、外径の小さい小円筒部3bは、ドリッパー2の出口ポート2bが挿入される貫通穴3b1を有している。ドリッパー2の出口ポート2bにはラバーチューブ3b2が取り付けられ、貫通穴3b1に圧挿入されるようになっている。ラバーチューブ3b2の弾性復元力によりラバーチューブ3b2が貫通穴3b1に圧着することによって、小円筒部3bの開口端からの漏水を防止することが可能となる。なお、コネクター3として市販品(例えば型式:KS6NS-5.4)を使用することも可能である。
【0038】
ところで、コネクター3は、シールテープ3a2とラバーチューブ3b2によって、ケーシングチューブ1、ドリッパー2に対する水密性をそれぞれ確保している。すなわち、登はん緑化チューブ50を組み立てるには、ドリッパー2に対しては(1)ラバーチューブ3b2を出口ポート2bに予め取り付ける作業、(2)ラバーチューブ3b2が取り付けられた出口ポート2bをコネクター3の貫通穴3b1に圧挿入する作業がそれぞれ必要となる。また、ケーシングチューブ1に対しては(1’)大円筒部3aの開口端との隙間をシールテープ3a2によって密封する作業が必要となる。以下に、これら作業の内、少なくとも上記(1)(1’)の作業を不要とするコネクター3’について説明する。
【0039】
図4は、本発明に係る他のコネクター3’を示す説明図である。
このコネクター3’は、例えば耐候性を有するプラスチック成形品で貫通穴31の途中に段差33が形成され、段差33からは貫通穴31より内径が大きい拡径部32が一定に成形されている。ケーシングチューブ1から水が溢れ出る場合、溢れ出た水はドリッパー2の出口ポート2bを押し上げる。これにより、ドリッパー2の出口ポート2bの大きい方の周状縁部2b1が段差33に当接して、貫通穴31からの漏水を防止することになる。なお、拡径部32は単なる円筒に限定されずドリッパー2の出口ポート2bのようにテーパー形状を持つタイプ(一部拡径・一部縮径)のものであっても良い。
【0040】
雌ねじ部34は、ケーシングチューブ1の山部1aと係合する溝部34aが螺旋状に形成されている。従って、ケーシングチューブ1を雌ねじ部34にねじ込むことにより、ケーシングチューブ1の山部1aと、雌ねじ部34の溝部34aが噛み合うことにより、ケーシングチューブ1とコネクター3’との間の水密性を保持することになる。
【0041】
従って、上記コネクター3’によれば、登はん緑化チューブ50の組立は、ケーシングチューブ1をコネクター3’の雌ねじ部34にねじ込んで、ドリッパー2の出口ポート2bをコネクター3’の貫通穴31に圧挿入して出口ポート2bの周状縁部2b1を貫通穴31の段差33に係合させることにより完了することになる。その結果、登はん緑化チューブ50の組立に係る時間は大幅に短縮されることになる。
【0042】
なお、コネクター3’の寸法公差あるいはドリッパー2の寸法公差により、出口ポート2bの周状縁部2b1と貫通穴31の段差33がうまく係合しない場合が起こり得る。同様にケーシングチューブ1の山部1aと雌ねじ部34の溝部34aがうまく噛み合わない場合が起こり得る。このような場合に、図5に示されるように、ドリッパー2とコネクター3’との接合部、或いはケーシングチューブ1とコネクター3’との接合部にシール材35を塗ることにより、ドリッパー2とコネクター3’との間の水密性、並びにケーシングチューブ1とコネクター3’との間の水密性を好適に確保することができるようになる。シール材35としては、例えば市販品の「液体ガスケット」等を使用することができる。以下に、この登はん緑化チューブ50を利用した登はん植物に対する灌水システムについて説明する。
【0043】
図6は、本発明の一実施形態に係る登はん緑化灌水システム100を示す説明図である。
この登はん緑化灌水システム100では、複数の上記登はん緑化チューブ50が水平方向に沿って例えば建物の外壁、塀またはベランダの手摺等に設置され、登はん植物を支持しながら登はん方向を案内する補助部材として使用されている。
【0044】
構成としては、複数の上記登はん緑化チューブ50と、登はん植物に灌水するための水を貯水する貯水タンク10と、貯水タンク10からの給水をオン(開)/オフ(閉)する電磁弁11と、貯水タンク10に直結した上流元チューブ12と、各登はん緑化チューブ50に水をそれぞれ給水する灌水チューブ13と、上流元チューブ12と灌水チューブ13を連結する中間チューブ14と、各登はん緑化チューブ50を支持しながら外壁等に取り付けられるL形プレート20と、登はん植物が根を張るための培地を収容するプランター30と、電磁弁11を制御するコントローラ40とを具備して登はん緑化灌水システム100は構成されている。以下、各構成について説明する。
【0045】
貯水タンク10は、登はん緑化チューブ50よりも高所(例えば、建物の屋上または民家の屋根)に設置され、登はん植物に対する灌水源となる雨水を貯水するタンクである。貯水タンク10は耐候性を有する合成樹脂、金属あるいはコンクリート等のセメント複合材から作られている。
【0046】
電磁弁11は、通常閉状態(ノーマルクローズ)の、いわゆるオン(開)・オフ(閉)弁で、弁体(弁座)が電動アクチュエータ(例えばソレノイド)によってオン(開)/オフ(閉)駆動される。電動アクチュエータはリレー又は半導体スイッチング素子(例えば、パワートランジスター)によって通電され、電動アクチュエータの通電時間は電磁弁11のオン(開)時間に対応している。
【0047】
電磁弁11がオン(開)になる場合、貯水タンク10の水は、重力の作用によって上流元チューブ12→中間チューブ14→灌水チューブ13、という経路で複数の登はん緑化チューブ50にそれぞれ給水されることになる。登はん緑化チューブ50に給水された水は一部がケーシングチューブ1の表面から染み出して行き、残りは下方のドリッパー2を介してプランター30内の培地に給水されることになる。なお、詳細については図7から図10を参照しながら後述するが、ケーシングチューブ1の表面から染み出した水は、大気または建物外壁から気化熱を奪い蒸発することにより、大気または建物外壁を冷却し大気または建物外壁の温度上昇を好適に抑制する。
【0048】
図11に示される電磁弁11をオン(開)にする開時刻T1、オフ(閉)にする閉時刻T2については、コントローラ40の記憶部(メモリー)に予め記憶されている。
【0049】
本実施形態で使用される、ケーシングチューブ1以外の全てのチューブは、例えば耐候性を有する合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等)から作られている。或いは、耐候性を有する金属配管、例えばステンレス製配管から作ることも可能である。
【0050】
また、これらのチューブは、チューブクランプ21によって外壁、塀、或いはベランダの手摺等に固定されるようになっている。
【0051】
灌水チューブ13には、上方のドリッパー2を差し込むための複数の貫通穴13a(図示せず)が個別に形成されている。灌水チューブ13とドリッパー2との接合部は接着剤(合成樹脂)によってシール処理が施されている。
【0052】
ポンプ15は、貯水タンク10の貯水量が灌水に最低限必要な貯水量(下限水量)を下回る場合に、水源18から水を貯水タンク10に給水するために使用される。ポンプ15は手動または自動的に駆動(オン)されるようになっている。なお、貯水タンク10の近くに公共の水道設備(図示せず)が設けられている場合は、その水道設備(図示せず)から貯水タンク10に手動または自動的に給水するようにしても良い。
【0053】
また、貯水タンク10は内部には水位センサ10aが設けられている。水位センサ10aの計測信号は、コントローラ40によって常時取り込まれ、コントローラ40は現在の水量が下限水量を下回っていないか否かを常時チェックしている。そして、現在の水量が下限水量を下回っている場合、コントローラ40は、例えば、赤色ランプ41を点滅させる。一方、下限水量を下回っていない場合、コントローラ10は緑色ランプ42を点灯させる。なお、青色ランプ43は、例えば電磁弁11がオン(開)の間、点灯されることになる。
【0054】
L形プレート20は、水平部20hと垂直部20vとから構成されている。水平部20hには、登はん緑化チューブ50を通すための複数の貫通穴20h1(図示せず)が個別に設けられている。垂直部20vには外壁に固定するためのアンカー部材(アンカーボルト、フック等)を通すための貫通穴20v1が個別に設けられている。
【0055】
コントローラ40は、例えば、PLC(Programmable Logic Controllerの略語で、シーケンサとも呼ばれる)を使用することができる。また、コントローラ40はWi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信機能、または携帯電話通信機能、或いは有線通信機能を有することも可能である。コントローラ40が通信機能を有する場合、コントローラ40はこれらの通信機能を使用してインターネットに接続して管理人のスマートフォン、タブレット等の携帯端末装置又はパーソナルコンピュータ(PC)或いはサーバーに、貯水タンク10の貯水量または電磁弁11の開閉ステータス等について通知するようになっている。
【0056】
なお、コントローラ40はプログラムを実行するための必要最小限のメモリ(例えばRAM)のみを有し、必要なプログラム及び各種パラメータ等については無線又は有線通信回線を介してインターネット上のクラウドサーバーにアクセスして取り込み、プログラムの実行結果についてはクラウドサーバーに保存するようにすることも可能である。
【0057】
登はん緑化チューブ50は、上方をコネクター3を介してL形プレート20によって支持される一方、下方をファスナー4を介してL形プレート20に固定されている。以下に、登はん緑化灌水システム100についての大気または建物外壁を冷却する機能について説明する。
【0058】
図7図10は、本発明に係る登はん緑化灌水システム100の大気または外壁を冷却する機能を示す説明図である。図7はケーシングチューブ1内部における水の水位上昇を示している。図8はケーシングチューブ1表面における水の染み出しを示している。図9は染み出した水の登はん植物に沿った流動を示している。図10は染み出した水の蒸発を示している。
【0059】
図11に示されるように、一日の内で時刻T1になると、電磁弁11が自動的に開となる。この場合、貯水タンク10内の水は上流元チューブ12、中間チューブ14および灌水チューブ13を通って各登はん緑化チューブ50にそれぞれ給水される。その結果、ケーシングチューブ1の内部に水が入水する。上部のドリッパー2に供給される水のエネルギー(水頭)は、下部のドリッパー2に供給される水のエネルギーより大きいため、同一仕様のドリッパー2であっても、上部のドリッパー2の点滴流量は、下部のドリッパー2より大きい。従って、図7に示されるように、時間の経過と共にケーシングチューブ1内に水が溜まり始め、水の水位hが上昇する。
【0060】
図8に示されるように、水の水位hがある水位hthを超える場合、ケーシングチューブ1の山部1aと谷部1bの係合部1cにおける水密性が破壊され、係合部1cから水が染み出し始める。その結果、ケーシングチューブ1表面が濡れることになる。
【0061】
図9に示されるように、ケーシングチューブ1の係合部1cから染み出た水は、後から染み出した水に押されながら登はん植物の茎部K、枝部Eに沿ってゆっくりと流動して葉部Hに到達する。
【0062】
図10に示されるように、ケーシングチューブ1の係合部1cから染み出た水は、葉部Hに到達する過程で大気から気化熱相当分の熱を吸収して蒸発する。大気は気化熱相当分の熱を奪われるため温度上昇が抑制されることになる。大気と接する外壁の温度上昇についても抑制されることになる。
【0063】
以上、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る登はん緑化チューブ50及びそれを使用した登はん緑化灌水システム100について説明してきたが、本発明の実施形態は上記だけに限定されることはない。即ち、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において種々の変更・修正を加えることが可能である。例えば、コントローラ40を廃して電磁弁11の開・閉は手動にて操作することも可能である。
【0064】
また、コントローラ40にAI機能を具備させ、更には大気の温度を計測する温度センサ、雨量を計測する降雨センサ、ならびに日射量を計測する日射センサ等を接続して、電磁弁11の開時刻T1(図11)と閉時刻T2を大気の状況に応じて自動的に決定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 ケーシングチューブ
1a 山部
1b 谷部
1c 係合部
2 ドリッパー(点滴装置)
2’ コネクター付きドリッパー
2a 入口ポート
2b 出口ポート
3,3’ コネクター
3a 大円筒部
3a1 雌ねじ部
3a2 シールテープ
3b 小円筒部
3b1 貫通穴
3b2 ラバーチューブ
4 ファスナー
10 貯水タンク
10a 液位センサ
11 電磁弁
12 上流元チューブ
13 灌水チューブ
13a 貫通穴13a
14 中間チューブ
15 ポンプ
16 吸込チューブ
17 揚水チューブ
18 水源
20 L形プレート
20h 水平部
20h1 貫通穴
20v 垂直部
20v1 貫通穴
21 チューブクランプ
30 プランター
31 貫通穴
32 拡径部
33 段差
34 雌ねじ部
34a 溝部
35 シール材
40 コントローラ
41 赤色ランプ
42 緑色ランプ
43 青色ランプ
50 登はん緑化チューブ(緑化補助部材)
100 登はん緑化灌水システム(緑化灌水システム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11