(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118074
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】防水層改修具及び防水層改修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/03 20060101AFI20240823BHJP
E04D 5/14 20060101ALI20240823BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20240823BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
E04G23/03
E04D5/14 J
E04D5/00 D
E04G23/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024259
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA05
2E176AA23
2E176BB25
2E176BB38
(57)【要約】
【課題】容易に防水用固定具を探し出すことを行うことを可能にし、さらに防水層の改修作業の作業時間を短縮することを可能とする防水層改修具及び防水層改修方法を提供する。
【解決手段】防水下地1上に固定された防水用固定具4の上面に防水シート3を固定してある防水層L1の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修具であって、防水シート3の上方から防水用固定具4を検知する検知部21と、検知部21により検知された防水用固定具4よりも上側に位置する部材における防水用固定具4の真上に対応する位置に、改修シートを固定するための改修用固定具を設置する位置を示す印を付与する印付与機構23と、が備えられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修具であって、
前記防水シートの上方から前記防水用固定具を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記防水用固定具よりも上側に位置する部材における前記防水用固定具の真上に対応する位置に、前記改修シートを固定するための改修用固定具を設置する位置を示す印を付与する印付与機構と、が備えられている防水層改修具。
【請求項2】
前記印付与機構は、前記防水層の表面に前記印を描写することで前記印を付与する請求項1に記載の防水層改修具。
【請求項3】
前記印付与機構に、前記防水用固定具よりも上側に位置する部材のうち最上層に位置する最上層部材の表面を押圧する押圧部材が備えられ、
前記印付与機構は、前記押圧部材によって前記最上層部材の表面を押圧して前記最上層部材の表面を凹状又は凸状に変形させることで前記印を付与する請求項1に記載の防水層改修具。
【請求項4】
前記検知部は、異なる位置に配置された複数のセンサーを有し、
前記センサーは、前記センサーの周辺領域に存在する前記防水用固定具を検知可能に構成され、
前記検知部は、複数の前記センサーのうち、いずれの前記センサーが前記防水用固定具を検知したのかを特定可能に構成されている請求項1に記載の防水層改修具。
【請求項5】
防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修方法であって、
前記防水用固定具を検知する検知具を用いて前記防水用固定具を検知し、前記防水用固定具が設置されている設置位置を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定された前記防水用固定具の上方位置に、前記改修シートを固定するための改修用固定具を設置する位置を示す印を付与する印付与ステップと、を含む防水層改修方法。
【請求項6】
前記印が付与されている位置に前記改修用固定具を載置する載置ステップと、
前記防水用固定具と前記改修用固定具とを機械的に連結する連結ステップと、を含む請求項5に記載の防水層改修方法。
【請求項7】
前記改修用固定具の上面に、前記改修シートを接着させる改修シート接着ステップを含む請求項6に記載の防水層改修方法。
【請求項8】
前記特定ステップの前に、前記改修シートを敷設する改修シート敷設ステップを含み、
前記印付与ステップでは、前記改修シートの表面に前記印を付与する請求項5に記載の防水層改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修具及び防水層改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防水層の改修においては、改修用固定具を用いて、既設の防水シートの上に新たな防水シートを敷設固定する。当該改修においては、特許文献1に示されるように、改修用固定具は、既設の防水シート(文献では、「第1防水シート」)を固定してある防水用固定具(文献では、「防水シート固定具」)にリベット等で連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防水用固定具は既設の防水シートの下にあるので、防水用固定具を見つけ難く、防水シートの上から防水用固定具の位置を特定する作業に時間を要していた。また、特定された防水用固定具の上方に改修用固定具を配置する必要があるが、その位置合わせの作業に時間を要していた。このように、従来の防水層の改修作業には効率化の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、防水層の改修作業の効率化を可能とする防水層改修具及び防水層改修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防水層改修具は、防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修具であって、前記防水シートの上方から前記防水用固定具を検知する検知部と、前記検知部により検知された前記防水用固定具よりも上側に位置する部材における前記防水用固定具の真上に対応する位置に、前記改修シートを固定するための改修用固定具を設置する位置を示す印を付与する印付与機構と、が備えられている。
【0007】
この発明によれば、検知部により防水シートの下の防水用固定具を検知できるので、防水用固定具の位置の特定作業が容易になる。そして改修用固定具を設置する位置を示す印が印付与機構により付与されるので、改修用固定具を配置する作業が容易になる。したがって、防水層の改修作業の効率化が可能となる。
【0008】
本発明においては、前記印付与機構は、前記防水層の表面に前記印を描写することで前記印を付与すると好適である。
【0009】
この構成によれば、例えば、防水層の表面に、作業者が認識し易い色や形に描写された印を付与することで、作業者は容易に認識することができる印を目印として改修作業を行うことが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記印付与機構に、前記防水用固定具よりも上側に位置する部材のうち最上層に位置する最上層部材の表面を押圧する押圧部材が備えられ、前記印付与機構は、前記押圧部材によって前記最上層部材の表面を押圧して前記最上層部材の表面を凹状又は凸状に変形させることで前記印を付与すると好適である。
【0011】
この構成によれば、最上層部材を押圧することで印を付与するため、インク等の消耗品を使用せずに印を付与することが可能となり、コストの削減を図ることが可能となる。また、インクやレーザーマーカー等を使用して印を付与する場合、砂埃等で最上層部材の表面が汚れていると、砂埃等により印の付与が阻害されるという不都合が生じることがあるが、押圧部材を使用して印を付与する場合、このような不都合が生じることを軽減することが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記検知部は、異なる位置に配置された複数のセンサーを有し、前記センサーは、前記センサーの周辺領域に存在する前記防水用固定具を検知可能に構成され、前記検知部は、複数の前記センサーのうち、いずれの前記センサーが前記防水用固定具を検知したのかを特定可能に構成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、作業者は、複数のセンサーのうち、防水用固定具を検知したセンサーの位置を確認することで、防水用固定具が存在する方向を特定することができ、さらに、すべてのセンサーが防水用固定具を検知したとき、複数のセンサーの中心位置付近に防水用固定具が存在することを特定することができる。その結果、高い精度で防水用固定具の位置を特定することが可能となる。
【0014】
本発明の防水層改修方法は、防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いられる防水層改修方法であって、前記防水用固定具を検知する検知具を用いて前記防水用固定具を検知し、前記防水用固定具が設置されている設置位置を特定する特定ステップと、前記特定ステップにより特定された前記防水用固定具の上方位置に、前記改修シートを固定するための改修用固定具を設置する位置を示す印を付与する印付与ステップと、を含む。
【0015】
この発明によれば、特定ステップでは検知具を用いて防水シートの下の防水用固定具を検知できるので、防水用固定具の位置の特定作業が容易になる。そして改修用固定具を設置する位置を示す印が印付与ステップにより付与されるので、改修用固定具を配置する作業が容易になる。したがって、防水層の改修作業の効率化が可能となる。
【0016】
本発明においては、前記印が付与されている位置に前記改修用固定具を載置する載置ステップと、前記防水用固定具と前記改修用固定具とを機械的に連結する連結ステップと、を含むと好適である。
【0017】
この方法によれば、印を目印として、改修用固定具の載置作業や、改修用固定具と防水用固定具とを連結する作業を行えばよく、容易に改修工事を行うことが可能となる。また、改修用固定具を、既設されている防水用固定具に連結することで固定することから、直接防水下地に固定する作業を行わずに、改修用固定具を固定することが可能となる。その結果、例えば防水下地に固定用ビス等を挿通するための孔を形成する作業が不要となり、騒音の発生を回避することが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記改修用固定具の上面に、前記改修シートを接着させる改修シート接着ステップを含むと好適である。
【0019】
この方法によれば、防水用固定具を介して防水下地上に固定された改修用固定具に、改修シートが接着固定される構成となり、安定した状態で改修用シートを設置することができる。
【0020】
本発明においては、前記特定ステップの前に、前記改修シートを敷設する改修シート敷設ステップを含み、前記印付与ステップでは、前記改修シートの表面に前記印を付与すると好適である。
【0021】
この方法によれば、改修用シートを敷設した後に、印が付与された箇所に改修用固定具を設置することで、改修用固定具は、改修用シートを上方から押さえつけるように固定する構成となる。この構成により、防水下地上に固定された防水用固定具に、改修用シート及び改修用固定具が固定される構成となり、接着剤を使用せずに安定した状態で改修用シート及び改修用固定具を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】防水用固定具に防水シートを敷設する状況を示す断面図である。
【
図3】防水シートの上に絶縁シートを敷設する状況を示す断面図である。
【
図4】防水層改修具の構成及び使用状況を示す平面図である。
【
図5】防水層改修具の構成及び使用状況を示す断面図である。
【
図6】防水層の表面に印が付与された状況を示す斜視図である。
【
図7】改修用固定具を防水用固定具に連結したときの構成を示す断面図である。
【
図9】防水層改修方法の概要を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態については、屋根に対して屋外側を「上方」、「上」とし、屋根に対して屋内側を「下方」、「下」とする。
【0024】
[防水層の基本構成について]
図1に、本発明の防水層改修方法を実施する前の建物の屋根を示している。防水下地1の上に、ボード状の断熱材2が敷き並べられ、断熱材2の上に、固定された防水用固定具4の上面に防水シート3を固定してある防水層L1が構成されている。
【0025】
防水下地1は、本実施形態では、コンクリート製の陸屋根であるが、これに限られたものではなく、ALC造、木造、鋼製、金属折版屋根等の従来の防水構造に使用されているものであれば、どのような材質、構造であってもよい。防水層L1が構成されているものであれば、屋根以外のものであってもよい。
【0026】
断熱材2は、例えば、ウレタン系のフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、断熱材2は、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0027】
[シート固定具について]
断熱材2上には、互いに間隔をあけた状態で、複数の防水用固定具4が配置されており、防水用固定具4の上面に、防水シート3が接着固定されている。
【0028】
防水用固定具4は、例えば、直径50~100mm程度のステンレス鋼製の円板から構成されている。
図2及び
図3に示すように、防水用固定具4の上面には、防水シート3に対する接着材として熱可塑性合成樹脂からなるホットメルト接着層H1が被覆されている。
【0029】
防水用固定具4は、上に突出する突出部位4aを有する。突出部位4aの上面が、防水シート3が固定される面(固定面4b)である。突出部位4aは円環形状である(
図1参照)。固定面4bに、上述のホットメルト接着層H1が被覆されている。
【0030】
防水用固定具4は、固定部材8により防水下地1に固定されている。本実施形態では、固定部材8は、ビスにて構成されている。固定部材8を、防水用固定具4の中央の穴に通した状態で、断熱材2に上から貫入させてある。さらに、固定部材8を防水下地1に螺合させることにより、固定部材8が防水用固定具4を防水下地1に固定してある。
【0031】
[防水シートについて]
防水シート3は、例えば塩化ビニル樹脂等、防水性を有する素材をシート状に形成して構成されている。
【0032】
防水用固定具4と防水シート3との固定は、防水用固定具4のホットメルト接着層H1上に防水シート3を被せた後、防水シート3の上から図示しない電磁誘導加熱装置によって防水用固定具4を誘導加熱し、その熱でホットメルト接着層H1を溶融させて防水用固定具4と防水シート3とを接着させる。
【0033】
以上のような防水層L1も、耐久年が経過するに伴って、改修する必要がある。
図8は、防水下地1上に固定された防水用固定具4の上面に防水シート3を固定してある防水層L1の上に、新たに改修シート10を敷設する改修工事に用いられる本発明の防水層改修方法を実施した後の防水層L2を示す断面図である。
【0034】
図8に示すように、防水シート3のうちの防水用固定具4と重なる位置に、防水層改修用の改修シート10を固定するための改修用固定具11が配置されている。防水用固定具4と改修用固定具11とは、ビス12で機械的に連結してある。改修用固定具11の上面に、ホットメルト接着層H2(
図7参照)の接着剤で改修シート10を固定し、新たな防水層L2を形成してある。
【0035】
防水シート3下に設置されている防水用固定具4は、
図4及び
図5に示すような防水層改修具20を用いて、設置されている位置を特定する。以下に、防水層改修具20の構成について説明する。
【0036】
[防水層改修具について]
図4及び
図5に示すように、防水層改修具20には、防水シート3の上方から防水用固定具4を検知する検知部21と、改修用固定具11を設置する位置を示す印Mを付与する印付与機構23とが備えられている。
【0037】
検知部21は、防水用固定具4を検出するセンサーとして、異なる位置に配置された4つの位置検出コイルユニット22を備える。位置検出コイルユニット22は、位置検出コイルユニット22の周辺領域に存在する防水用固定具4を検知可能に構成されている。
【0038】
防水層改修具20を防水層L1の表面上に摺動させることにより、防水用固定具4を検出することができる。具体的には、改修シート10中の可塑剤が防水シート3に移行しないように、絶縁シート13を防水層L1の上に敷設した場合は、防水層改修具20を絶縁シート13(
図3参照)の表面上に摺動させ、絶縁シート13を敷設しない場合は、例えば、防水シート3の表面上に防水層改修具20を摺動させる。作業者は、検出した箇所を改修用固定具11の設置位置として特定することができる。
【0039】
4つの位置検出コイルユニット22は、鉛直軸VLの周りに中心角90度のピッチで配置され、一つの防水用固定具4のうちのそれぞれ異なる位置を検知するように構成されている。
【0040】
検知部21は、複数の位置検出コイルユニット22のうち、いずれの位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検知したのかを特定できる報知装置40を備える。本実施形態では、報知装置40として、位置検出コイルユニット22の配置に対応するように配置された複数の照明装置が備えられ、これらの照明装置が点灯することで報知する構成が備えられている。ここで、報知装置40は、照明装置に限られものではなく、例えば、音で報知する音発生装置、画像を表示する表示装置等が備えられていてもよい。
【0041】
例えば、4つの位置検出コイルユニット22のうち、前側に配置されている位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検出しているとき、作業者は、検知部21の前方に防水用固定具4が存在していることを知ることができる。そして、すべての位置検出コイルユニット22が、防水用固定具4を検知したとき、検知部21は防水用固定具4の上方に位置している。作業者は、この位置を、改修用固定具11の設置位置として特定することができる。
【0042】
図5及び
図6に示すように、防水層改修具20は、防水用固定具4の設置位置を特定した後、印付与機構23を用いて防水層L1又は絶縁シート13の表面に印Mを付与する。
【0043】
本実施形態では、印付与機構23に、レーザーマーカー装置24が備えられている。レーザーマーカー装置24は、防水層L1の表面のうち複数の位置検出コイルユニット22の略中央位置に対応する箇所に照射し、改修用固定具11を設置する位置を示す印Mを描写するように構成されている。本実施形態では、印Mとして、防水用固定具4を囲う外周円が描写される。この構成により、検知部21により検知された防水用固定具4のよりも上側に位置する部材における防水用固定具4の真上に対応する位置に、改修用固定具11を設置する位置を示す印Mを付与する。
【0044】
本実施形態では、印付与機構23による印付与処理は、すべての位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検出したとき、自動的に行われる。
【0045】
以下に、防水層改修具20を用いて、防水下地1上に固定された防水用固定具4の上面に防水シート3を固定してある防水層L1の上に新たに改修シート10を敷設する改修工事の各工程について、
図9に従って説明する。
【0046】
<絶縁シート敷設ステップ>
本実施形態では、絶縁シート敷設ステップS01では、
図3に示すように、改修シート10中の可塑剤が防水シート3に移行しないように、絶縁シート13を敷設する。絶縁シート13を敷設した後、特定ステップS02を実施する。ここで、一枚の絶縁シート13を敷設した後に特定ステップS02を実施してもよく、防水下地1の全面又は所定の区画に対して絶縁シート13を敷設した後、特定ステップS02を実施してもよい。
【0047】
<特定ステップ>
特定ステップS02では、
図4及び
図5に示すように、防水用固定具4を検知する検知具として防水層改修具20を使用して、防水用固定具4の位置を特定する。防水層改修具20を防水層L1の表面、つまり、絶縁シート13の表面の上を、防水用固定具4を検知できるまで移動させる。
【0048】
すべての位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検知したとき、その位置を防水用固定具4が設置されている設置位置として特定する。
【0049】
<印付与ステップ>
図5に示すように、防水層L1の表面、つまり、絶縁シート13の表面のうちの上述の特定ステップS02により特定された防水用固定具4のよりも上側に位置する部材(本実施形態では、絶縁シート13)における防水用固定具4の真上に対応する位置に、印Mを付与する印付与ステップS03を実施する。本実施形態では、すべての位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検知したとき、自動的に印Mが付与される。付与された印Mは、改修シート10を固定するための改修用固定具11を設置する位置を示すものとなる。
【0050】
本実施形態では、防水層改修具20の印付与機構23を用いて、絶縁シート13の表面に印Mを付与する。つまり、作業者は、防水層改修具20を用いて、特定ステップS02と印付与ステップS03とを、実施することができる。
【0051】
<載置ステップ>
印付与ステップS03により印Mが付与されている位置に改修用固定具11を載置する載置ステップS04を実施する。改修用固定具11を載置した後、連結ステップS05を実施する。本実施形態では、一つの改修用固定具11を載置した後に連結ステップS05を実施し、改修用固定具11ごとに載置ステップS04と連結ステップS05を繰り返すように実施する。
【0052】
<連結ステップ>
連結ステップS05では、
図7に示すように、改修用固定具11と防水用固定具4とを、ビス12で機械的に連結する。具体的には、改修用固定具11に貫通孔11aが形成されており、改修用固定具11と防水用固定具4とを機械的に連結するために、改修用固定具11の貫通孔11aに対応させて、絶縁シート13、防水シート3及び防水用固定具4にドリル等でビス挿通用の孔を穿つ。それらの孔及び貫通孔11aにビス12を挿通させた後、インパクトドライバー等の工具でビス12をビス挿通用の孔に螺合させることにより、改修用固定具11を防水用固定具4に連結させる。このとき、ビス12の代わりに、先端部にドリル部を有するドリルネジやリベット止め等の連結手段を使用してもよい。
【0053】
すべての改修用固定具11を防水用固定具4に連結させた後、改修シート接着ステップS06を実施する。
【0054】
<改修シート接着ステップ>
改修シート接着ステップS06では、絶縁シート13及び改修用固定具11の上面に、改修シート10を載置する。改修用固定具11の表面には、防水用固定具4と同様に、ホットメルト接着層H2が被覆されている。改修シート10の上から電磁誘導加熱装置によって改修用固定具11を誘導加熱して、その熱でホットメルト接着層H2を溶融させて改修用固定具11の上面に改修シート10を接着させ、新たな防水層L2を形成する。
【0055】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0056】
(1)上記実施形態では、印付与機構23に、レーザーマーカー装置24が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、印付与機構23に、防水用固定具4よりも上側に位置する部材のうち最上層に位置する最上層部材を押圧する押圧部材が備えられ、押圧部材によって防水層L1の表面を押圧して最上層部材の表面を凹状又は凸状に変形させることで印Mを付与する構成としてもよい。また、印付与機構23に、インクジェット式の噴射ノズルが備えられ、印付与ステップS03では、インクを用いて絶縁シート13の表面に印Mを付与する構成としてもよい。さらに、印付与機構23に、絶縁シート13の表面に印Mを押印するスタンプ式のマーキング装置が備えられ、印付与ステップS03では、マーキング装置を用いて絶縁シート13の表面に印Mを付与する構成としてもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、防水用固定具4を検出するセンサーとして、複数の位置検出コイルユニット22が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防水用固定具4を検出するセンサーとして、電磁波を放射する放射装置と、放射された電磁波の反射波を受信するアンテナを備えてもよい。
【0058】
(3)検知部21に、複数の位置検出コイルユニット22と連動して動く上部押圧部が備えられ、作業者が上部押圧部を下方に押圧することにより、複数の位置検出コイルユニット22が絶縁シート13の表面に近づき、さらに絶縁シート13に当接する構成としてもよい。この構成により、位置検出コイルユニット22は、防水用固定具4に近づいた状態で検知することが可能となる。さらに、上部押圧部は、付勢部材が設けられ、付勢部材の付勢力により、元の位置に戻るように構成されていてもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、すべての位置検出コイルユニット22が防水用固定具4を検知したとき、自動的に印付与機構23によって印Mが付与される構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、人為操作により印付与機構23によって印Mが付与される構成としてもよい。
【0060】
(5)上記実施形態では、印付与ステップS03において、印付与機構23によって印Mが付与される例を基に説明したが、印付与機構23の代わりに作業者が筆記具等で印Mを付与してもよい。
【0061】
(6)上記実施形態では、改修用固定具11の上面に改修シート10を接着させる方法を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特定ステップS02の前に、改修シート10を敷設する改修シート敷設ステップを含む方法を採用してもよい。このとき、印付与ステップS03では、改修シート10の表面に印Mを付与する方法となる。
【0062】
また、改修用固定具11は、改修シート10を上方から押さえつけるように固定する構成となる。この構成により、防水下地上に固定された防水用固定具4に、改修用シート及び改修用固定具11が固定される構成となり、接着剤を使用せずに安定した状態で改修用シート及び改修用固定具11を設置することが可能となる。このとき、さらにパッチシートで改修用固定具11を覆うことで、水密性を確保することができる。
【0063】
(7)本実施形態では、載置ステップS04においては、一つの改修用固定具11を載置し、その後に連結ステップS05を実施することで、改修用固定具11ごとに載置ステップS04と連結ステップS05を繰り返すように実施する例を基に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、載置ステップS04においては、すべての印Mが付与された位置に改修用固定具11を載置し、その後にすべての改修用固定具11に対して連結ステップS05を実施してもよい。また、一枚の改修シート10の敷設箇所に対応する区画ごと等、所定の区画ごとに載置ステップS04と連結ステップS05とを繰り返すように実施してもよい。
【0064】
(8)上記実施形態では、印Mとして、防水用固定具4を囲う外周円が描写される構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防水用固定具4の中心部分に描かれる円形、四角形、星形等の図形が描かれていてもよく、防水用固定具4を囲う1つ又は複数の円弧であってもよく、また、防水用固定具4を囲う四角形状の枠等が描かれていてもよい。
【0065】
(9)上記実施形態では、改修工事の工程に、絶縁シート敷設ステップS01を含む例を基に説明したが、絶縁シート敷設ステップS01を含まないものとしてもよい。このとき、印付与機構23は、防水シート3上に印Mを付与する。
【0066】
(10)上記実施形態では、改修用固定具11に貫通孔11aが形成されている構成を例に説明したが、これに限られたものではなく、例えば、貫通孔11aの代わりに、ビス12を挿通可能な凹部が形成されていてもよい。このとき、連結ステップS05では、例えば、ドリル等でビス挿通用の孔を穿つとき、凹部の底にも孔を穿つことで、ビス12を挿通させることができる。
【0067】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、防水下地上に固定された防水用固定具の上面に防水シートを固定してある防水層の上に新たに改修シートを敷設する改修工事に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :防水下地
3 :防水シート
4 :防水用固定具
10 :改修シート
11 :改修用固定具
20 :防水層改修具
21 :検知部
22 :センサー(位置検出コイルユニット)
23 :印付与機構
L1 :防水層
M :印
S02 :特定ステップ
S03 :印付与ステップ
S04 :載置ステップ
S05 :連結ステップ
S06 :改修シート接着ステップ