(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118076
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ソリッドタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20240823BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B60C7/00 B
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024262
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 繁之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA27
3D131BA03
3D131BB03
3D131BB19
3D131BC13
3D131BC42
3D131CC02
(57)【要約】
【課題】 操縦安定性能と乗り心地性能との両立し得るソリッドタイヤを提供する。
【解決手段】 本発明は、内部に空気が入っていない中実のソリッドタイヤ1である。ソリッドタイヤ1は、接地面2sを有するトレッド層2と、リム組み時にリムに接するベース面3sを有するベース層3と、トレッド層2とベース層3との間に配され、かつ、トレッド層2及びベース層3と異なるゴム材4Gにより構成されたセンター層4とを含んでいる。センター層4のゴム材4Gは、タイヤ周方向に配向された短繊維4aを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドタイヤであって、
接地面を有するトレッド層と、
リム組み時にリムに接するベース面を有するベース層と、
前記トレッド層と前記ベース層との間に配され、かつ、前記トレッド層及び前記ベース層と異なるゴム材により構成されたセンター層とを含み、
前記センター層の前記ゴム材は、タイヤ周方向に配向された短繊維を含む、
ソリッドタイヤ。
【請求項2】
前記センター層の前記ゴム材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率E*1が、タイヤ半径方向の30℃における複素弾性率E*2よりも大きい、請求項1に記載のソリッドタイヤ。
【請求項3】
前記複素弾性率E*1は、前記複素弾性率E*2の2倍以上である、請求項2に記載のソリッドタイヤ。
【請求項4】
前記複素弾性率E*1は、70~300MPaである、請求項3に記載のソリッドタイヤ。
【請求項5】
前記複素弾性率E*2は、10~30MPaである、請求項4に記載のソリッドタイヤ。
【請求項6】
前記短繊維は、2~100μmの繊維径を有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のソリッドタイヤ。
【請求項7】
前記短繊維は、1~20mmの繊維長を有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のソリッドタイヤ。
【請求項8】
前記短繊維は、有機繊維である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のソリッドタイヤ。
【請求項9】
前記センター層のタイヤ子午線断面における前記短繊維の断面積の総和は、前記センター層の断面積の4%~40%である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のソリッドタイヤ。
【請求項10】
前記センター層は、前記ベース面から前記接地面までのタイヤ半径方向の最大高さの10%~50%のタイヤ半径方向の厚さを有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のソリッドタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空気が入っていない中実のソリッドタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフト等の産業車両に用いられるソリッドタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、トレッドゴム層とベースゴム層との間の中間ゴム層を、トレッドゴム層及びベースゴム層よりも硬度が高いゴム組成で形成することで操縦安定性を向上したソリッドタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のソリッドタイヤは、中間層のゴム硬度が高いことにより、使用形態によっては乗り心地性能が制限される場合があり、操縦安定性能と乗り心地性能との両立に関して改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、操縦安定性能と乗り心地性能との両立し得るソリッドタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ソリッドタイヤであって、接地面を有するトレッド層と、リム組み時にリムに接するベース面を有するベース層と、前記トレッド層と前記ベース層との間に配され、かつ、前記トレッド層及び前記ベース層と異なるゴム材により構成されたセンター層とを含み、前記センター層の前記ゴム材は、タイヤ周方向に配向された短繊維を含む、ソリッドタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のソリッドタイヤは、上述の構成を備えることにより、操縦安定性能と乗り心地性能との両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のソリッドタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のソリッドタイヤ1を示す回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
図1に示されるように、本実施形態のソリッドタイヤ1は、接地面2sを有するトレッド層2と、リム組み時にリムに接するベース面3sを有するベース層3とを含んでいる。ここで、ソリッドタイヤ1とは、内部に空気が入っていない中実のタイヤである。また、トレッド層2には、接地面2sとしての性能が求められ、ベース層3には、リムに固定する性能が求められる。
【0010】
本実施形態のソリッドタイヤ1は、トレッド層2とベース層3との間に配されセンター層4を含んでいる。センター層4は、トレッド層2のゴム材2G及びベース層3のゴム材3Gと異なるゴム材4Gにより構成されるのが望ましい。このようなセンター層4は、柔らかいゴム材4Gにより形成されることで、ソリッドタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。ここで、センター層4には、クッション性及び発熱特性を付与する性能が求められる。
【0011】
図2は、センター層4の部分断面図である。
図2に示されるように、本実施形態のセンター層4のゴム材4Gは、タイヤ周方向に配向された短繊維4aを含んでいる。このようなセンター層4は、タイヤ周方向の弾性率がタイヤ半径方向の弾性率よりも大きく、タイヤ軸方向の変形を抑制して横剛性を向上させ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。このため、本実施形態のソリッドタイヤ1は、操縦安定性能と乗り心地性能との両立することができる。
【0012】
より好ましい態様として、短繊維4aは、有機繊維である。有機繊維としては、例えば、ポリエステル、ナイロン等が挙げられる。このような短繊維4aは、強度及び耐熱性に優れており、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能と耐久性能とを両立させることに役立つ。
【0013】
センター層4のゴム材4Gは、例えば、ミキシングされた後に押出機、カレンダーロール等を用いて平板状に成形される。このようなゴム材4Gは、短繊維4aの繊維長方向を一方向に配向することができる。センター層4は、ゴム材4Gの短繊維4aの繊維長方向がタイヤ周方向となるように配することで、タイヤ周方向に配向された短繊維4aを含むことができる。
【0014】
短繊維4aは、好ましくは、2~100μmの繊維径dを有している。短繊維4aの繊維径dが2μm以上であることで、ゴム材4Gをミキシングするときにも繊維が切断されることなく、短繊維4aの繊維長方向をタイヤ周方向に配向させることができる。短繊維4aの繊維径dが100μm以下であることで、タイヤ半径方向の弾性率が大きくなることを抑制し、ソリッドタイヤ1の良好な乗り心地性能を維持することができる。
【0015】
短繊維4aは、好ましくは、1~20mmの繊維長を有している。短繊維4aの繊維長が1mm以上であることで、繊維径dとの差を十分に確保し、短繊維4aの繊維長方向をタイヤ周方向に配向させることができる。短繊維4aの繊維長が20mm以下であることで、ゴム材4Gをミキシングするときにも繊維が切断されることなく、短繊維4aの繊維長方向をタイヤ周方向に配向させることができる。
【0016】
センター層4のタイヤ子午線断面における短繊維4aの断面積の総和は、好ましくは、センター層4の断面積の4%~40%である。ここで、短繊維4aの断面積の総和は、センター層4の任意の位置における単位面積当たりの短繊維4aの断面積の総和として認識される。
【0017】
短繊維4aの断面積の総和がセンター層4の断面積の4%以上であることで、短繊維4aの配向によるタイヤ周方向の弾性率を確実に向上させ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることに役立つ。短繊維4aの断面積の総和がセンター層4の断面積の40%以下であることで、ゴム成分によるタイヤ半径方向の小さい弾性率を維持し、ソリッドタイヤ1の乗り心地性能を向上させることに役立つ。
【0018】
本実施形態のセンター層4のゴム材4Gは、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率E*1が、タイヤ半径方向の30℃における複素弾性率E*2よりも大きい。このようなゴム材4Gは、センター層4のタイヤ周方向の弾性率をタイヤ半径方向の弾性率よりも確実に大きくすることができ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。
【0019】
ここで、本明細書において、複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、動的粘弾性測定装置を用いて測定された値である。
初期歪:5%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:30℃
【0020】
なお、複素弾性率E*を測定するためのゴムサンプルは、加硫後のソリッドタイヤ1から長さ20mm、幅4mm、厚さ1mmの大きさに採取されたものである。複素弾性率E*1を測定するためのゴムサンプルは、サンプルの長さ方向がタイヤ周方向となるように採取されたものである。複素弾性率E*2を測定するためのゴムサンプルは、サンプルの長さ方向がタイヤ半径方向となるように採取されたものである。
【0021】
タイヤ周方向の複素弾性率E*1は、タイヤ半径方向の複素弾性率E*2の2倍以上であるのが望ましい。複素弾性率E*1が複素弾性率E*2の2倍以上であることで、タイヤ周方向の弾性率とタイヤ半径方向の弾性率との差異を大きくすることができ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能と乗り心地性能との両立させることができる。このような観点から、複素弾性率E*1は、より好ましくは、複素弾性率E*2の5倍以上であり、更に好ましくは、複素弾性率E*2の7倍以上である。
【0022】
タイヤ周方向の複素弾性率E*1は、好ましくは、70~300MPaである。複素弾性率E*1が70MPa以上であることで、タイヤ軸方向の変形をより確実に抑制して横剛性を向上することができ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。複素弾性率E*1が300MPa以下であることで、ソリッドタイヤ1の横剛性が過度に大きくなり、操舵に対する応答が機微になることを抑制することができ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。
【0023】
タイヤ半径方向の複素弾性率E*2は、好ましくは、10~30MPaである。複素弾性率E*2が10MPa以上であることで、走行時の揺れに対する収縮性を向上することができ、ソリッドタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。複素弾性率E*2が30MPa以下であることで、走行時の突き上げに対するクッション性を向上することができ、ソリッドタイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。
【0024】
図1に示されるように、センター層4は、ベース面3sから接地面2sまでのタイヤ半径方向の最大高さHの10%~50%のタイヤ半径方向の厚さtを有するのが好ましい。厚さtが最大高さHの10%以上であることで、ソリッドタイヤ1の横剛性を確実に向上させることができ、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。厚さtが最大高さHの50%以下であることで、十分な大きさのトレッド層2とベース層3とを維持することができ、ソリッドタイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0025】
トレッド層2のゴム材2Gは、例えば、グリップ性と耐摩耗性とに優れたゴムが好適に採用される。このようなトレッド層2は、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能と耐久性能とを両立させるのに役立つ。
【0026】
ベース層3のゴム材3Gは、例えば、弾性率の大きいゴムが好適に採用される。ベース層3のゴム材3Gは、例えば、短繊維やスチールコードを含んでいてもよい。このようなベース層3は、ソリッドタイヤ1の操縦安定性能と耐久性能とを両立させるのに役立つ。
【0027】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0028】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0029】
[本発明1]
ソリッドタイヤであって、
接地面を有するトレッド層と、
リム組み時にリムに接するベース面を有するベース層と、
前記トレッド層と前記ベース層との間に配され、かつ、前記トレッド層及び前記ベース層と異なるゴム材により構成されたセンター層とを含み、
前記センター層の前記ゴム材は、タイヤ周方向に配向された短繊維を含む、
ソリッドタイヤ
【0030】
[本発明2]
前記センター層の前記ゴム材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率E*1が、タイヤ半径方向の30℃における複素弾性率E*2よりも大きい、本発明1に記載のソリッドタイヤ。
【0031】
[本発明3]
前記複素弾性率E*1は、前記複素弾性率E*2の2倍以上である、本発明2に記載のソリッドタイヤ。
【0032】
[本発明4]
前記複素弾性率E*1は、70~300MPaである、本発明2又は3に記載のソリッドタイヤ。
【0033】
[本発明5]
前記複素弾性率E*2は、10~30MPaである、本発明2ないし4のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【0034】
[本発明6]
前記短繊維は、2~100μmの繊維径を有する、本発明1ないし5のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【0035】
[本発明7]
前記短繊維は、1~20mmの繊維長を有する、本発明1ないし6のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【0036】
[本発明8]
前記短繊維は、有機繊維である、本発明1ないし7のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【0037】
[本発明9]
前記センター層のタイヤ子午線断面における前記短繊維の断面積の総和は、前記センター層の断面積の4%~40%である、本発明1ないし8のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【0038】
[本発明10]
前記センター層は、前記ベース面から前記接地面までのタイヤ半径方向の最大高さの10%~50%のタイヤ半径方向の厚さを有する、本発明1ないし9のいずれかに記載のソリッドタイヤ。
【符号の説明】
【0039】
1 ソリッドタイヤ
2 トレッド層
2s 接地面
3 ベース層
3s ベース面
4 センター層
4G ゴム材
4a 短繊維