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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118077
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/04 20060101AFI20240823BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20240823BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240823BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B60C5/04 A
B60C3/04 B
B60C11/00 F
B60C15/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024263
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】長澤 宏器
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA36
3D131AA37
3D131AA39
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC44
3D131CA03
3D131DA03
3D131DA09
3D131DA12
3D131DA34
3D131DA43
3D131EA08U
3D131GA19
3D131HA38
(57)【要約】
【課題】 ロードノイズの低減と転がり抵抗の低減とを両立し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 本発明は、トレッド部2と、トレッド部2に配されたベルト層7と、タイヤ内腔を規定する内腔面1iとを含む空気入りタイヤ1である。空気入りタイヤ1は、無負荷の正規状態でのタイヤ断面高さH1を有している。正規状態に、正規荷重の70%の荷重が負荷された荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面において、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eを通るタイヤ半径方向線と内腔面1iとの交点を第1点P1とし、タイヤ最大幅位置Pmを通るタイヤ軸方向線と内腔面1iとの交点を第2点P2とし、第1点P1から第2点P2までの内腔面1iの中点を第3点P3としたときに、内腔面1iは、第1点P1、第2点P2及び第3点P3を通る単一円弧である。単一円弧の曲率半径Rは、タイヤ断面高さH1の23%~40%である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
前記トレッド部に配されたベルト層と、
タイヤ内腔を規定する内腔面とを含み、
正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態でのタイヤ断面高さH1を有し、
前記正規状態に、正規荷重の70%の荷重が負荷された荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面において、
前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を通るタイヤ半径方向線と前記内腔面との交点を第1点とし、
タイヤ最大幅位置を通るタイヤ軸方向線と前記内腔面との交点を第2点とし、
前記第1点から前記第2点までの前記内腔面の中点を第3点としたときに、
前記内腔面は、前記第1点、前記第2点及び前記第3点を通る単一円弧であり、
前記単一円弧の曲率半径Rは、前記タイヤ断面高さH1の23%~40%である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記曲率半径Rは、前記タイヤ断面高さH1の28%~35%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤ断面高さH1と、前記荷重負荷状態でのタイヤ断面高さH2との差(H1-H2)は、前記タイヤ断面高さH1の15%~25%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記正規状態でのタイヤ外径D1は、ETRTO規格のタイヤ外径Dsの100%~103%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWは、前記正規状態でのタイヤ断面幅W1の70%~90%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWは、前記正規状態でのタイヤ断面幅W1の75%~85%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記正規リムに接するビード部を含み、
前記正規状態において、
前記ビード部は、タイヤ周方向に延びるビードコアと、前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスとを有し、
前記ビードコアのタイヤ半径方向の外端から前記ビードエーペックスのタイヤ半径方向の外端までの距離L1は、前記タイヤ断面高さH1の23%~35%である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロードノイズと転がり抵抗とを低減し得る空気入りタイヤが種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、サイド外側プロファイルが単一の曲率半径を有する第1円弧により形成された空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-019400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空気入りタイヤは、無負荷の状態での形状を特定するものであり、実際の使用される状態である荷重負荷状態の形状を特定していないことから、ロードノイズと転がり抵抗との低減に関して、更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ロードノイズの低減と転がり抵抗の低減とを両立し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、前記トレッド部に配されたベルト層と、タイヤ内腔を規定する内腔面とを含み、正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態でのタイヤ断面高さH1を有し、前記正規状態に、正規荷重の70%の荷重が負荷された荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面において、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を通るタイヤ半径方向線と前記内腔面との交点を第1点とし、タイヤ最大幅位置を通るタイヤ軸方向線と前記内腔面との交点を第2点とし、前記第1点から前記第2点までの前記内腔面の中点を第3点としたときに、前記内腔面は、前記第1点、前記第2点及び前記第3点を通る単一円弧であり、前記単一円弧の曲率半径Rは、前記タイヤ断面高さH1の23%~40%である、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上述の構成を備えることにより、ロードノイズの低減と転がり抵抗の低減とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1の部分断面図である。
図3】ビード部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1の荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面図である。本明細書において、「荷重負荷状態」とは、正規状態の空気入りタイヤ1に、正規荷重の70%の荷重が負荷された状態である。
【0010】
ここで、「正規状態」とは、空気入りタイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、空気入りタイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0011】
「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、リム組み可能であって、エア漏れを生じさせないリムのうち、最もリム径が小さく、その中で最もリム幅が小さいリムである。
【0012】
「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0013】
「正規荷重」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。「正規荷重」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、空気入りタイヤ1を使用する上で適用可能な最大の荷重としてメーカー等がタイヤ毎に定める荷重である。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、乗用車用タイヤとして好適に用いられる。空気入りタイヤ1は、乗用車用タイヤに限定されるものではなく、例えば、重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技車両用タイヤ、産業車両用タイヤ等、種々のタイヤに適用され得る。
【0015】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含んでいる。サイドウォール部3は、例えば、トレッド部2のタイヤ軸方向両側からタイヤ半径方向内側に延びる部分である。ビード部4は、例えば、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に位置する部分である。本実施形態のビード部4は、正規リムに接する部分である。
【0016】
ビード部4は、例えば、タイヤ周方向に延びる環状のビードコア5と、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックス8とを有している。ビードコア5は、例えば、スチールワイヤから形成されている。ビードエーペックス8は、例えば、硬質のゴムから形成されている。このようなビード部4は、高い剛性を有するので、荷重負荷状態の変形が抑制され、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。
【0017】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、一対のビード部4の間を延びるカーカス6と、トレッド部2に配されたベルト層7とを含んでいる。ベルト層7は、例えば、カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されている。空気入りタイヤ1は、カーカス6の内側で、タイヤ内腔を規定する内腔面1iを含むのが望ましい。
【0018】
本実施形態のトレッド部2は、一対のトレッド端Teの間に延びる接地面2sを有している。ここで、トレッド端Teは、荷重負荷状態の空気入りタイヤ1がキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。空気入りタイヤ1は、荷重負荷状態での一対のトレッド端Teの間のタイヤ軸方向の距離であるタイヤトレッド幅TWを有している。なお、一対のトレッド端Teの間のタイヤ軸方向の中央位置が、タイヤ赤道Cである。
【0019】
図2は、図1の部分断面図である。図2には、無負荷の正規状態の空気入りタイヤ1のプロファイルが二点鎖線で示されている。図2に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、無負荷の正規状態でのタイヤ断面高さH1とタイヤ断面幅W1とを有している。
【0020】
ここで、タイヤ断面高さH1は、正規状態の空気入りタイヤ1のビードベースラインBLからタイヤ赤道Cにおける接地面2sまでのタイヤ半径方向の距離である。また、タイヤ断面幅W1は、正規状態の空気入りタイヤ1のタイヤ最大幅位置Pmにおけるサイドウォール部3の外面3s間の距離である。
【0021】
タイヤ最大幅位置Pmは、サイドウォール部3の外面3sのプロファイルにおいて、最もタイヤ幅方向外側に位置する部分である。タイヤ最大幅位置Pmは、例えば、最もタイヤ幅方向外側に位置する部分がタイヤ半径方向において一定の範囲を有する場合、その範囲のタイヤ半径方向の中心位置である。
【0022】
なお、タイヤ最大幅位置Pmは、サイドウォール部3の外面3sのプロファイルに基づき規定されるのが望ましい。サイドウォール部3の外面3sのプロファイルは、例えば、単一の円弧、複数の曲率の円弧、曲線又は直線が組み合わされたものである。ここで、サイドウォール部3の外面3sのプロファイルは、装飾用のセレーション、標章表示用のリブ、保護用のプロテクトリブ等の部分的な凹凸を含まない形状として規定される。
【0023】
荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面において、本実施形態の内腔面1iは、以下に規定される第1点P1、第2点P2及び第3点P3を通る単一円弧である。すなわち、本実施形態の荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面における内腔面1iの第1点P1から第2点P2までの形状が、単一円弧である。このような内腔面1iは、荷重負荷状態のサイドウォール部3の変形を抑制し、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。
【0024】
なお、荷重負荷状態の内腔面1iの形状は、例えば、シミュレーションにより設定することができる。また、完成品の荷重負荷状態の内腔面1iの形状は、例えば、荷重負荷状態の空気入りタイヤ1を断面撮像手段により観察することで確認することができる。
【0025】
ここで、第1点P1は、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eを通るタイヤ半径方向線と内腔面1iとの交点である。また、第2点P2は、タイヤ最大幅位置Pmを通るタイヤ軸方向線と内腔面1iとの交点である。そして、第3点P3は、第1点P1から第2点P2までの内腔面1iの中点である。
【0026】
単一円弧の曲率半径Rは、好ましくは、タイヤ断面高さH1の28%~35%である。曲率半径Rがタイヤ断面高さH1の28%以上であることで、サイドウォール部3の良好な剛性が維持され、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることができる。
【0027】
曲率半径Rがタイヤ断面高さH1の35%以下であることで、空気入りタイヤ1が過度に大きくなりことを抑制し、空気入りタイヤ1の転がり抵抗を低減させることができる。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、ロードノイズの低減と転がり抵抗の低減とを両立することができる。
【0028】
また、曲率半径Rがタイヤ断面高さH1の23%~40%であることで、サイドウォール部3の剛性を均一化することができ、空気入りタイヤ1の操縦安定性能及び乗り心地性能を向上させることができる。このような観点から、曲率半径Rは、より好ましくは、タイヤ断面高さH1の28%~35%であり、更に好ましくは、タイヤ断面高さH1の30%~32%である。
【0029】
より好ましい態様として、カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A、6Bを含んでいる。2枚のカーカスプライ6A、6Bは、例えば、トレッド部2において、タイヤ半径方向内側に位置する第1カーカスプライ6Aと、第1カーカスプライ6Aのタイヤ半径方向外側に位置する第2カーカスプライ6Bとを含んでいる。
【0030】
カーカスプライ6A、6Bの少なくとも1枚は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なり、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含むのが望ましい。本実施形態の第1カーカスプライ6Aと第2カーカスプライ6Bは、それぞれ、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。このようなカーカス6は、ビード部4の剛性を向上させ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。
【0031】
カーカスプライ6A、6Bの少なくとも1枚は、折返し部6bのタイヤ半径方向の外端6eが、タイヤ最大幅位置Pmよりもタイヤ半径方向外側に位置するのが望ましい。カーカス6は、例えば、第1カーカスプライ6Aの折返し部6bの外端6eが、タイヤ最大幅位置Pmよりもタイヤ半径方向外側に位置し、第2カーカスプライ6Bの折返し部6bの外端6eが、タイヤ最大幅位置Pmよりもタイヤ半径方向内側に位置している。このようなカーカス6は、サイドウォール部3の剛性と軽量化とを両立することができ、空気入りタイヤ1のロードノイズと転がり抵抗とを低減させることができる。
【0032】
カーカスプライ6A、6Bは、例えば、有機繊維コードからなるカーカスコード(図示省略)を含んでいる。有機繊維コードとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維及びレーヨン繊維からなる群より選択される1種単独又は2種以上のハイブリッド繊維のコードが挙げられる。
【0033】
カーカスコードは、好ましくは、タイヤ周方向に対して、25~90°の角度で配列されている。カーカスコードがタイヤ周方向に対して90°未満の角度で傾斜する場合、第1カーカスプライ6Aのカーカスコードと第2カーカスプライ6Bのカーカスコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜するのが望ましい。カーカス6には、例えば、バイアス構造が採用されていてもよい。ここで、カーカスコードの角度は、正規状態の空気入りタイヤ1における角度であり、例えば、トレッド部2を部分的に剥離させることで確認することができる。
【0034】
ベルト層7は、少なくとも1枚、好ましくは、2枚以上、本実施形態では2枚のベルトプライ7A、7Bを含んでいる。2枚のベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ半径方向内側に位置する第1ベルトプライ7Aと、第1ベルトプライ7Aの外側に位置する第2ベルトプライ7Bとを含んでいる。本実施形態のベルト層7の外端7eは、第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の外端7eである。このようなベルト層7は、トレッド部2の剛性を向上することができ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることができる。
【0035】
ベルトプライ7A、7Bは、例えば、スチールコードからなるベルトコード(図示省略)を含んでいる。ベルトコードは、例えば、スチール単線であってもよく、複数のスチールフィラメントを撚り合わせた撚り線であってもよい。
【0036】
ベルトコードは、例えば、タイヤ周方向に対して10~30°の角度で配されている。第1ベルトプライ7Aのベルトコードと第2ベルトプライ7Bのベルトコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜するのが望ましい。このようなベルト層7は、トレッド部2の剛性をバランスよく高め、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることができる。ここで、ベルトコードの角度は、正規状態の空気入りタイヤ1における角度であり、例えば、トレッド部2を部分的に剥離させることで確認することができる。
【0037】
本実施形態のベルト層7の外端7eは、トレッド端Teよりもタイヤ軸方向外側に位置している。このようなベルト層7は、トレッド部2の接地面2s全体の剛性を向上することができ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。
【0038】
荷重負荷状態での一対のトレッド端Te間のタイヤトレッド幅TWは、好ましくは、正規状態でのタイヤ断面幅W1の70%~90%である。荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWが正規状態でのタイヤ断面幅W1の70%以上であることで、単一円弧の曲率半径Rを大きくすることができ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。
【0039】
荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWが正規状態でのタイヤ断面幅W1の90%以下であることで、接地面積が過度に大きくなることを抑制し、空気入りタイヤ1のロードノイズの低減と転がり抵抗の低減とを両立させることに役立つ。このような観点から、荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWは、より好ましくは、正規状態でのタイヤ断面幅W1の75%~85%であり、更に好ましくは、正規状態でのタイヤ断面幅W1の80%~85%である。
【0040】
無負荷の正規状態のタイヤ断面高さH1と、荷重負荷状態でのタイヤ断面高さH2との差(H1-H2)は、好ましくは、タイヤ断面高さH1の15%~25%である。差(H1-H2)が、タイヤ断面高さH1の15%以上であることで、路面からの入力を適度に吸収し、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることができる。差(H1-H2)が、タイヤ断面高さH1の25%以下であることで、サイドウォール部3の良好な剛性を維持することができ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減させることに役立つ。このような観点から、差(H1-H2)は、より好ましくは、タイヤ断面高さH1の18%~22%である。
【0041】
正規状態でのタイヤ外径D1は、好ましくは、ETRTO規格のタイヤ外径Dsの100%~103%である。正規状態でのタイヤ外径D1がETRTO規格のタイヤ外径Dsの100%以上であることで、タイヤ内腔に充填される空気容量が大きく、空気入りタイヤ1の転がり抵抗を低減することに役立つ。正規状態でのタイヤ外径D1がETRTO規格のタイヤ外径Dsの103%以下であることで、タイヤ重量が過度に大きくなることを抑制し、空気入りタイヤ1の低燃費性能を向上させることに役立つ。
【0042】
図3は、正規状態のビード部4の拡大断面図である。図2及び図3に示されるように、正規状態でのビードコア5のタイヤ半径方向の外端5eからビードエーペックス8のタイヤ半径方向の外端8eまでの距離L1は、好ましくは、正規状態でのタイヤ断面高さH1の23%~35%である。
【0043】
距離L1がタイヤ断面高さH1の23%以上であることで、ビード部4の剛性を確実の向上させ、空気入りタイヤ1のロードノイズを低減することができる。距離L1がタイヤ断面高さH1の35%以下であることで、ビード部4の剛性が過度に大きくなることを抑制し、空気入りタイヤ1の良好な乗り心地性能を維持することができる。このような観点から、距離L1は、より好ましくは、タイヤ断面高さH1の27%~31%である。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0045】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0046】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
前記トレッド部に配されたベルト層と、
タイヤ内腔を規定する内腔面とを含み、
正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態でのタイヤ断面高さH1を有し、
前記正規状態に、正規荷重の70%の荷重が負荷された荷重負荷状態でのタイヤ子午線断面において、
前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端を通るタイヤ半径方向線と前記内腔面との交点を第1点とし、
タイヤ最大幅位置を通るタイヤ軸方向線と前記内腔面との交点を第2点とし、
前記第1点から前記第2点までの前記内腔面の中点を第3点としたときに、
前記内腔面は、前記第1点、前記第2点及び前記第3点を通る単一円弧であり、
前記単一円弧の曲率半径Rは、前記タイヤ断面高さH1の23%~40%である、
空気入りタイヤ。
【0047】
[本発明2]
前記曲率半径Rは、前記タイヤ断面高さH1の28%~35%である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
【0048】
[本発明3]
前記タイヤ断面高さH1と、前記荷重負荷状態でのタイヤ断面高さH2との差(H1-H2)は、前記タイヤ断面高さH1の15%~25%である、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【0049】
[本発明4]
前記正規状態でのタイヤ外径D1は、ETRTO規格のタイヤ外径Dsの100%~103%である、本発明1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0050】
[本発明5]
前記荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWは、前記正規状態でのタイヤ断面幅W1の70%~90%である、本発明1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0051】
[本発明6]
前記荷重負荷状態でのタイヤトレッド幅TWは、前記正規状態でのタイヤ断面幅W1の75%~85%である、本発明1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0052】
[本発明7]
前記正規リムに接するビード部を含み、
前記正規状態において、
前記ビード部は、タイヤ周方向に延びるビードコアと、前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスとを有し、
前記ビードコアのタイヤ半径方向の外端から前記ビードエーペックスのタイヤ半径方向の外端までの距離L1は、前記タイヤ断面高さH1の23%~35%である、本発明1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0053】
1 空気入りタイヤ
1i 内腔面
2 トレッド部
7 ベルト層
7e 外端
図1
図2
図3