(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118079
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】モータ制御装置、およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240823BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024269
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】細谷 義勝
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA06
5H501DD01
5H501FF01
5H501FF05
5H501JJ03
5H501KK07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータの駆動を再開する際にモータが高速回転することを抑制できるモータ制御装置およびモータユニットを提供すること。
【解決手段】モータの回転数を制御可能なモータ制御装置であって、モータ制御装置は、回転数指示電圧に基づいてモータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第1駆動制御と、回転数指示電圧によらずモータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第2駆動制御と、を実行可能な制御部を備える。第1駆動制御において、回転数指示電圧が駆動停止電圧以上の電圧になると、モータの駆動を停止する。モータの駆動を停止させた後、回転数指示電圧が駆動再開電圧以下の電圧になった場合、第2駆動制御によってモータの駆動を再開する。第2駆動制御におけるモータの回転数目標値は、第1駆動制御におけるモータの回転数目標値よりも小さい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転数を制御可能なモータ制御装置であって、
前記モータ制御装置は、
回転数指示電圧に基づいて前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第1駆動制御と、
前記回転数指示電圧によらず前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第2駆動制御と、
を実行可能な制御部を備え、
前記第1駆動制御において、前記回転数指示電圧が駆動停止電圧以上の電圧になると、前記モータの駆動を停止し、
前記モータの駆動を停止させた後、前記回転数指示電圧が駆動再開電圧以下の電圧になった場合、前記第2駆動制御によって前記モータの駆動を再開し、
前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値よりも小さい、モータ制御装置。
【請求項2】
前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値における最大値の50%以下である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値における最大値の30%以上である、請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、一定値である、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2駆動制御において、前記回転数指示電圧が、前記駆動再開電圧よりも小さい復帰電圧以下になった場合に、前記第2駆動制御から前記第1駆動制御に切り替える、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置によって制御されるモータと、
を備える、モータユニット。
【請求項7】
前記モータは、ローラコンベアを駆動するローラモータである、請求項6に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、およびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転数を指示するモータ駆動信号が上限値を超える異常状態を検出すると、モータの回転速度を失速させるモータ駆動制御装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータ駆動制御装置では、モータの回転速度を失速させた後に上限値より低いモータ駆動信号を受信すると、モータ駆動信号に応じた回転数でモータの駆動を再開する場合があった。モータが例えば荷物等の搬送物を搬送するローラコンベヤの駆動源として用いられる場合、モータの駆動を失速させために搬送物の搬送が停止した後に、モータが高速回転を指示するモータ駆動信号を受信すると、モータが急に高速回転を開始する。したがって、搬送物がローラとスリップし易くなるため、搬送物の搬送不良が発生することがあった。また、係る搬送不良が発生せずローラコンベヤが搬送物を搬送できた場合、ローラコンベヤの管理者等はローラコンベヤが正常に動作していると認識してしまうため、モータ駆動信号が上限値を超える異常状態が発生したことを認識しづらいことが問題であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、モータの駆動を再開する際にモータが高速回転することを抑制できるモータ制御装置およびモータユニットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ制御装置の一つの態様は、モータの回転数を制御可能なモータ制御装置であって、前記モータ制御装置は、回転数指示電圧に基づいて前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第1駆動制御と、前記回転数指示電圧によらず前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第2駆動制御と、を実行可能な制御部を備える。前記第1駆動制御において、前記回転数指示電圧が駆動停止電圧以上の電圧になると、前記モータの駆動を停止する。前記モータの駆動を停止させた後、前記回転数指示電圧が駆動再開電圧以下の電圧になった場合、前記第2駆動制御によって前記モータの駆動を再開する。前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値よりも小さい。
【0007】
本発明のモータユニットの一つの態様は、上記のモータ制御装置と、前記モータ制御装置によって制御されるモータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、モータ制御装置およびモータユニットにおいて、モータの駆動を再開する際にモータが高速回転することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のコンベヤシステムを示す外観図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のコンベヤシステムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のローラコンベヤを示す外観図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のモータ制御装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、一実施形態の第1駆動制御における回転数指示電圧と回転数目標値との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の第2駆動制御における回転数指示電圧と回転数目標値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータ制御装置およびモータユニットについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
各図に示す、Z軸方向は、正の側(+Z側)を鉛直方向上方側とし、負の側(-Z側)を鉛直方向下方側とする鉛直方向である。各図に示す、第1方向D1は、本実施形態のローラコンベヤが搬送物を搬送する方向である。第1方向D1は、鉛直方向と直交する方向である。各図に示す、第2方向D2は、鉛直方向および第1方向D1の両方と直交する方向である。
【0012】
図1に示す本実施形態のコンベヤシステム10は、荷物等の搬送物5を搬送する搬送装置である。コンベヤシステム10は、例えば、搬送物5の仕分け等を行う物流拠点において使用される。コンベヤシステム10は、互いに直列に連結される複数のローラコンベヤ11と、
図2に示すシステム制御装置40と、によって構成される。コンベヤシステム10を構成するローラコンベヤ11の個数は、コンベヤシステム10の全長等によって適宜決めることができる。
【0013】
図3に示すように、ローラコンベヤ11は、一対のフレーム12a,12bと、複数のローラ13と、複数の駆動ベルト15と、モータユニット20と、を有する。モータユニット20は、モータ21と、モータ制御装置30と、を備える。
図1に示すように、ローラコンベヤ11は、複数のローラ13およびモータ21に載置された搬送物5を、複数のローラ13およびモータ21の回転によって第1方向D1に搬送する。
【0014】
図3に示すように、一対のフレーム12a,12bのそれぞれは、第1方向D1に延びる。一対のフレーム12a,12bは、第2方向D2に互いに間隔をあけて対向して配置される。
【0015】
本実施形態において、複数のローラ13のそれぞれは、図示しない回転軸線を中心として第2方向D2に延びる円柱状である。回転軸線は、第2方向D2と平行な方向に延びる仮想軸線である。複数のローラ13のそれぞれは、回転軸線を中心として第2方向D2に延びる円筒状の中空ローラであってもよい。第2方向D2において、各ローラ13は、1対のフレーム12a,12bの間に配置される。各ローラ13は、第1方向D1に互いに間隔をあけて配置される。各ローラ13の第2方向D2の一端は、フレーム12aに回転軸線を中心として回転可能に支持される。各ローラ13の第2方向D2の他端は、フレーム12bに回転軸線を中心として回転可能に支持される。これらにより、各ローラ13は、回転軸線を中心として回転可能である。本実施形態において、ローラコンベヤ11は、9本のローラ13を有する。ローラコンベヤ11が有するローラ13の本数は、9本に限定されず、8本以下であってもよいし、10本以上であってもよい。
【0016】
モータユニット20は、ローラコンベヤ11を駆動する。なお、本発明において、「ローラコンベヤ11を駆動する」とは、モータ21の回転によって複数のローラ13を回転させることを意味する。本実施形態において、モータ21は、ローラコンベヤ11を駆動するローラモータである。
【0017】
モータ21は、中心軸線Jを中心として第2方向D2に延びる円柱状である。中心軸線Jは、第2方向D2と平行な方向に延びる仮想軸線である。第2方向D2において、モータ21は、1対のフレーム12a,12bの間に配置される。第1方向D1において、モータ21は、複数のローラ13のうち互いに第1方向D1に隣り合って配置される1対のローラ13同士の間に配置される。本実施形態において、モータ21は、中心軸線Jを中心として第2方向D2に延びる円筒状の筒状部21aと、図示しないステータと、を有する。筒状部21aは、ステータを内部に収容する。筒状部21aの外周面は、外部に露出する。筒状部21aは、中心軸線J回りに回転可能に1対のフレーム12a,12bに支持される。なお、以下の説明において、「モータ21の回転」は、「筒状部21aの中心軸線J回りの回転」を意味する。また、「モータ21の回転数」は、「筒状部21aの回転数」を意味する。
【0018】
複数の駆動ベルト15は、モータ21の回転を複数のローラ13に伝達する。本実施形態において、複数の駆動ベルト15のそれぞれは、環状のベルトである。本実施形態において、ローラコンベヤ11は、9個の駆動ベルト15を有する。各駆動ベルト15は、互いに第1方向D1に隣り合う2本のローラ13同士に、または第1方向D1に隣り合うローラ13と筒状部21aとに、巻き掛けられている。各駆動ベルト15が巻き掛けられる1対のローラ13、またはローラ13と筒状部21aの組み合わせは、互いに異なる。本実施形態において、駆動ベルト15は、ローラ13および筒状部21aそれぞれの第2方向D2の端部に巻き掛けられている。筒状部21aが中心軸線J回りに回転すると、各ローラ13には各駆動ベルト15を介して筒状部21aの回転が伝達される。これにより、各ローラ13は、各ローラ13の回転軸線周りに回転する。第2方向D2に見て、各ローラ13の回転方向は筒状部21aの回転方向と同じ方向である。よって、ローラコンベヤ11は、複数のローラ13および筒状部21aによって搬送物5を第1方向D1に搬送できる。
【0019】
システム制御装置40は、コンベヤシステム10の動作を制御する。本実施形態において、システム制御装置40は、コンベヤシステム10を構成する複数のローラコンベヤ11のモータ21の回転数を制御する。
図2に示すように、システム制御装置40は、各ローラコンベヤ11のモータユニット20が有するモータ制御装置30に信号線41を介して電気的に接続される。システム制御装置40は、各モータ制御装置30に、モータ21の回転数を指示する回転数指示電圧Viを伝送する。各モータ制御装置30に伝送される回転数指示電圧Viは同じ電圧であってもよいし、互いに異なる電圧であってもよい。各モータ21のそれぞれが、回転数指示電圧Viに基づいた回転数で回転することにより、コンベヤシステム10は搬送物5を所望の搬送速度で搬送する。
【0020】
モータ制御装置30は、モータ21の回転数を制御可能である。
図3に示すように、モータ制御装置30は、フレーム12aに固定される。モータ制御装置30は、フレーム12bに固定されてもよい。第1方向D1において、モータ制御装置30は、フレーム12aを挟んでモータ21と第2方向D2に対向する位置に配置される。
図2に示すように、モータ制御装置30は、制御部31と、電源部32と、を備える。
【0021】
制御部31は、信号線41を介して、システム制御装置40と電気的に接続される。制御部31は、システム制御装置40から伝送された回転数指示電圧Viに応じてモータ21の回転数を制御する。制御部31は、第1駆動制御C1と、第2駆動制御C2と、を実行可能である。第1駆動制御C1において、制御部31は、回転数指示電圧Viに基づいてモータ21の回転数目標値Rvを決定し、モータ21の回転数を制御する。第2駆動制御C2において、制御部31は、回転数指示電圧Viによらずモータ21の回転数目標値Rvを決定し、モータ21の回転数を制御する。なお、以下の説明では、「モータ21の回転数目標値Rv」を単に「回転数目標値Rv」と呼ぶ場合がある。第1駆動制御C1および第2駆動制御C2については、後段で詳細に説明する。
【0022】
電源部32は、制御部31およびモータ21のそれぞれと電気的に接続される。制御部31は、回転数目標値Rvに応じた、駆動電流Idを生成するとともに、駆動電流Idをモータ21の図示しないステータに供給する。これにより、モータ制御装置30は、回転数目標値Rvに応じた所望の回転数でモータ21を回転できる。本実施形態において、電源部32は、インバータ回路である。なお、電源部32は、モータ制御装置30に配置されていなくてもよく、モータ21の内部に配置されてもよい。
【0023】
次に、本実施形態のモータ制御装置30の制御方法について説明する。
図4は、本実施形態のモータ制御装置30の制御方法を示すフローチャートである。ローラコンベヤ11が停止している状態から、搬送物5の搬送を開始する場合(S01)、モータ制御装置30は、第1駆動制御C1でモータ21の回転数を制御する(S02)。
【0024】
図5に本実施形態の第1駆動制御C1における回転数指示電圧Viと回転数目標値Rvとの関係を示す。
図5の横軸は、回転数指示電圧Vi[V]である。
図5の縦軸は、回転数目標値Rv[rpm]である。第1駆動制御C1において、制御部31は、回転数指示電圧Viに基づいてモータ21の回転数目標値Rvを決定し、モータ21の回転数を制御する。第1駆動制御C1では、回転数指示電圧Viが第1電圧V1未満の範囲において、回転数目標値Rvは0[rpm]である。つまり、回転数指示電圧Viが第1電圧V1未満の場合、モータ21の停止した状態が維持される。なお、第1電圧V1は、例えば、2.0[V]以上、2.5[V]以下である。
【0025】
第1駆動制御C1では、回転数指示電圧Viが第1電圧V1以上、第2電圧V2未満の範囲において、回転数目標値Rvは回転数指示電圧Viに略正比例する。よって、回転数指示電圧Viが第1電圧V1以上、第2電圧V2未満の範囲では、回転数指示電圧Viが大きくなるにしたがって、モータ21の回転数は大きくなる。なお、第2電圧V2は、例えば、9.0[V]以上、10.0[V]以下である。本実施形態において、回転数指示電圧Viが第2電圧V2の場合における回転数目標値Rvである第1回転数目標値R1は、例えば、5500[rpm]以上、6000[rpm]以下である。なお、第1回転数目標値R1は、第1駆動制御C1における回転数目標値Rvの最大値である。モータ21の駆動を開始する際において、システム制御装置40は回転数指示電圧Viを徐々に大きくし、モータ21の回転数を徐々に高める。これにより、モータ21が急に高速回転することを抑制できるため、停止した状態の搬送物5が加速できずに複数のローラ13およびモータ21とスリップする搬送不良が発生することを抑制できる。よって、ローラコンベヤ11は、搬送物5を安定して搬送できる。
【0026】
第1駆動制御C1では、回転数指示電圧Viが第2電圧V2以上、駆動停止電圧Vs未満の範囲において、回転数目標値Rvは第1回転数目標値R1で一定である。よって、回転数指示電圧Viが第2電圧V2以上、駆動停止電圧Vs未満の範囲では、モータ21は一定の回転数で回転する。したがって、システム制御装置40が回転数指示電圧Viを、例えば、第1電圧V1と駆動停止電圧Vsと間の電圧にする場合、回転数指示電圧Viが電気ノイズ等により変動しても、筒状部21aおよび複数のローラ13を一定の回転数で回転させることができる。そのため、ローラコンベヤ11における搬送物5の搬送速度が変動することを抑制し易い。したがって、コンベヤシステム10を構成する各ローラコンベヤ11の搬送速度のばらつきを低減し易いため、コンベヤシステム10における搬送物5の搬送速度を安定させることができる。なお、駆動停止電圧Vsは、例えば、12.5[V]以上、13.5[V]以下である。
【0027】
第1駆動制御C1では、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の範囲において、回転数目標値Rvは0[rpm]である。よって、
図4に示すように、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧の場合(S03)、モータ制御装置30は、モータ21の駆動を停止する(S04)。本実施形態のコンベヤシステム10では、正常に動作している場合、システム制御装置40からモータ制御装置30に伝送される回転数指示電圧Viは、駆動停止電圧Vsより小さい電圧になる。よって、モータ制御装置30が検出した回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧の場合、コンベヤシステム10に何らかの不具合が生じていることが考えられる。具体的には、モータ制御装置30が検出した回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧の場合、例えば、
図2に示す信号線41の絶縁性を確保する絶縁被覆の一部が破損したために、信号線41が導電性を有する部材と接触して短絡する等の不具合が発生していることが考えられる。本実施形態のコンベヤシステム10では、係る不具合が発生していることをコンベヤシステム10の管理者等に認識させるため、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧になると、モータ制御装置30はモータ21の駆動を停止する。
【0028】
図4に示すように、モータ制御装置30は、モータ21の駆動を停止させた後(S04)において、回転数指示電圧Viが、駆動再開電圧Vd以下の電圧になった場合(S05)、第2駆動制御C2によって、モータ21の駆動を再開する(S06,S07)。回転数指示電圧Viが、駆動再開電圧Vd以下の電圧になる場合とは、例えば、信号線41と導電性を有する部材との接触が不安定であるため、信号線41と係る部材とが離れることにより、信号線41と係る部材とが絶縁されていることが考えられる。
【0029】
図6に本実施形態の第2駆動制御C2における回転数指示電圧Viと回転数目標値Rvとの関係を実線で示す。
図6の横軸は、回転数指示電圧Viである。
図6の縦軸は、回転数目標値Rvである。本実施形態において、駆動再開電圧Vdは、駆動停止電圧Vsよりも小さい電圧である。なお、駆動再開電圧Vdは、駆動停止電圧Vsと同じ電圧であってもよい。駆動再開電圧Vdは、例えば、11.8[V]以上、12.2[V]以下である。また、復帰電圧Vrは、駆動再開電圧Vdよりも小さい電圧である。復帰電圧Vrは、例えば、4.0[V]~5.0[V]である。
【0030】
第2駆動制御C2において、回転数指示電圧Viが復帰電圧Vrより大きく、駆動停止電圧Vs未満の範囲である定速度電圧範囲ΔVcにおいて、第2駆動制御C2の回転数目標値Rvは、固定回転数目標値Rcに決定される。つまり、制御部31は、回転数指示電圧Viによらず回転数目標値Rvを固定回転数目標値Rcに決定する。固定回転数目標値Rcは、例えば、2200[rpm]以上、2500[rpm]以下である。
【0031】
図6に、第1駆動制御C1における回転数指示電圧Viと回転数目標値Rvとの関係を破線で示す。定速度電圧範囲ΔVcにおいて、第2駆動制御C2における回転数目標値Rvである固定回転数目標値Rcは、第1駆動制御C1における回転数目標値Rvよりも小さい。固定回転数目標値Rcは、第1駆動制御C1における回転数目標値Rvの最大値である第1回転数目標値R1の50%以下である。また、固定回転数目標値Rcは、第1回転数目標値R1の30%以上である。
【0032】
第2駆動制御C2では、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の範囲において、回転数目標値Rvは0[rpm]である。よって、
図4に示すように、第2駆動制御C2において、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧になると(S08)、モータ制御装置30はモータ21の駆動を停止する(S04)。したがって、上述の第1駆動制御C1と同様に、信号線41が短絡する等の不具合が発生したことをコンベヤシステム10の管理者等に認識させることができる。その後、回転数指示電圧Viが、駆動再開電圧Vd以下の電圧になった場合(S05)、第2駆動制御C2によって、モータ21の駆動を再開する(S06,S07)。
【0033】
第2駆動制御C2において、回転数指示電圧Viが復帰電圧Vrよりも大きい電圧である場合(S09)、制御部31は第2駆動制御C2を継続する。制御部31は、システム制御装置40から搬送物5の搬送を終了する指示を受信すると(S10)、モータ21の駆動を停止して、搬送物5の搬送を終了する(S12)。
【0034】
また、制御部31は第2駆動制御C2を実行している際に、回転数指示電圧Viが復帰電圧Vr以下の電圧になった場合(S09)、第2駆動制御C2から第1駆動制御C1に切り替え、第1駆動制御C1を実行する(S02)。回転数指示電圧Viが復帰電圧Vr以下の電圧になる場合には、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vsを超えた原因が解消されたことを、管理者がシステム制御装置40に入力する等によってシステム制御装置40が認識すると、回転数指示電圧Viを復帰電圧Vr以下の電圧にする場合がある。また、システム制御装置40は、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vsを超えた原因が解消されたことを自己検知してもよい。制御部31は、第1駆動制御C1の実行中に、システム制御装置40から搬送物5の搬送を終了する指示を受信すると(S11)、モータ21の駆動を停止させて、搬送物5の搬送を終了する(S12)。
【0035】
モータ制御装置30における制御部31は、上述したモータ21の制御を実行するコンピュータである。制御部31には、本実施形態のモータ21の制御方法をコンピュータである制御部31に実行させる制御プログラムがインストールされている。制御部31の各構成要素における機能の少なくとも一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが、図示しない記憶部に記憶された制御プログラム、すなわちソフトウェアを実行することで実現される。
【0036】
なお、制御部31の各構成要素の機能の少なくとも一部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などの回路部を含むハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されていてもよい。制御部31は、図示しない記憶部を備えてもよい。この場合、図示しない記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(hard disk drive)、およびフラッシュメモリなどの記憶媒体によって実現される。
【0037】
本実施形態によれば、モータ制御装置30は、回転数指示電圧Viに基づいてモータ21の回転数目標値Rvを決定し、モータ21の回転数を制御する第1駆動制御C1と、回転数指示電圧Viによらずモータ21の回転数目標値Rvを決定し、モータ21の回転数を制御する第2駆動制御と、を実行可能な制御部31を備える。第1駆動制御C1において、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vs以上の電圧になると、モータ21の駆動を停止する。モータ21の駆動を停止させた後、回転数指示電圧Viが駆動再開電圧Vd以下の電圧になった場合、第2駆動制御C2によってモータ21の駆動を再開し、第2駆動制御C2におけるモータ21の回転数目標値Rvは、第1駆動制御C1におけるモータ21の回転数目標値Rvよりも小さい。よって、モータ21の駆動を再開する際の回転数指示電圧Viが、第1駆動制御C1においてモータ21を高速で回転させる電圧であっても、制御部31は、回転数指示電圧Viによらず、第1駆動制御C1の回転数目標値Rvよりも小さい回転数目標値Rvでモータ21の駆動を再開する。したがって、本実施形態のモータ制御装置30およびモータユニット20では、モータ21の駆動を再開する際に、モータ21が高速回転することを抑制できる。これにより、ローラコンベヤ11上で停止している搬送物5が加速できずに、複数のローラ13およびモータ21とスリップする搬送不良が発生することを抑制できる。したがって、モータ21の駆動を再開する際において、ローラコンベヤ11は搬送物5を安定して搬送できる。
【0038】
また、本実施形態では、モータ21の駆動を再開した後のモータ21の回転数が、第1駆動制御C1におけるモータ21の回転数よりも小さい回転数であるため、ローラコンベヤ11が搬送物5を搬送する搬送速度は、第1駆動制御C1における搬送速度よりも低速度になる。したがって、コンベヤシステム10の管理者等は、ローラコンベヤ11の搬送速度が他のローラコンベヤの搬送速度よりも遅いことを認識できるため、ローラコンベヤ11の回転数指示電圧Viに不具合が発生したことを速やかに認識できる。したがって、管理者等は、回転数指示電圧Viが高くなった不具合の原因を速やかに解消できる。
【0039】
本実施形態によれば、第2駆動制御C2におけるモータ21の回転数目標値Rvは、第1駆動制御C1におけるモータ21の回転数目標値Rvにおける最大値の50%以下である。よって、モータ21の駆動を再開する際に、モータ21が高速回転することを好適に抑制し易いため、ローラコンベヤ11上で停止している搬送物5が加速できずに、複数のローラ13およびモータ21とスリップする搬送不良が発生することを好適に抑制できる。したがって、モータ21の駆動を再開する際において、ローラコンベヤ11によって、搬送物5をより安定して搬送できる。
【0040】
また、本実施形態では、ローラコンベヤ11の搬送速度を、第1駆動制御C1で制御される他のローラコンベヤの搬送速度よりも十分に遅くできるため、管理者等は、ローラコンベヤ11の搬送速度が他のローラコンベヤの搬送速度よりも遅いことをより容易に認識できる。したがって、管理者等は、より速やかに回転数指示電圧Viが高くなった不具合の原因を解消できる。
【0041】
本実施形態によれば、第2駆動制御C2におけるモータ21の回転数目標値Rvは、第1駆動制御C1におけるモータ21の回転数目標値Rvにおける最大値の30%以上である。したがって、第2駆動制御C2における搬送物5の搬送速度が低下しすぎることを抑制できるため、コンベヤシステム10全体の搬送物5の搬送量が低下しすぎることを抑制できる。
【0042】
本実施形態よれば、第2駆動制御C2におけるモータ21の回転数目標値Rvは、一定値である。よって、第2駆動制御C2によって、モータ21の回転数を制御している際に、例えば、信号線41と導電性を有する部材との接触および離間が繰り返し発生することによって、制御部31が検出する回転数指示電圧Viが変動する場合においても、モータ21の回転数を安定させることができる。したがって、ローラコンベヤ11の搬送物5の搬送速度が変動することを抑制できる。
【0043】
本実施形態によれば、制御部31は、第2駆動制御C2において、回転数指示電圧Viが、駆動再開電圧Vdよりも小さい復帰電圧Vr以下になった場合に、第2駆動制御C2から第1駆動制御C1に切り替える。上述のように、システム制御装置40は、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vsを超えた原因が解消されたことを認識すると、回転数指示電圧Viを復帰電圧Vr以下の電圧にする。これにより、回転数指示電圧Viが駆動停止電圧Vsを超えた原因が解消されると、制御部31は速やかに第1駆動制御C1を実行できるため、速やかにモータ21の回転数を高めることができる。よって、ローラコンベヤ11の搬送物5の搬送速度を速やかに高めることができる。したがって、コンベヤシステム10全体の搬送物5の搬送量を速やかに回復させることができる。
【0044】
以上に、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。
【0045】
ローラコンベヤが備えるモータの個数は1個に限定されず、ローラコンベヤは2個以上のモータを備えていてもよい。ローラコンベヤが2個以上のモータを備える場合、各モータの回転数を制御するモータ制御装置は、モータ毎に設けられてもよいし、1個のモータ制御装置によって複数個のモータの回転数を制御してもよい。
【0046】
駆動停止電圧、駆動再開電圧、および復帰電圧それぞれの電圧値は、本実施形態の電圧値に限定されず、制御装置およびモータ制御装置の構成等によって適宜定めることができる。また、固定回転数目標値は、本実施形態の目標値に限定されず、ローラコンベヤおよびモータの構成等によって適宜定めることができる。
【0047】
また、モータ制御装置の制御方法は本実施形態の制御方法に限定されず、例えば、制御部は、第2駆動制御において回転数指示電圧Viが復帰電圧Vr以下の電圧になっても、第1駆動制御に切り替えず、継続して第2駆動制御を実行してもよい。
【0048】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) モータの回転数を制御可能なモータ制御装置であって、前記モータ制御装置は、回転数指示電圧に基づいて前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第1駆動制御と、前記回転数指示電圧によらず前記モータの回転数目標値を決定し、モータの回転数を制御する第2駆動制御と、を実行可能な制御部を備え、前記第1駆動制御において、前記回転数指示電圧が駆動停止電圧以上の電圧になると、前記モータの駆動を停止し、前記モータの駆動を停止させた後、前記回転数指示電圧が駆動再開電圧以下の電圧になった場合、前記第2駆動制御によって前記モータの駆動を再開し、前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値よりも小さい、モータ制御装置。
(2) 前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値における最大値の50%以下である、(1)に記載のモータ制御装置。
(3) 前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、前記第1駆動制御における前記モータの回転数目標値における最大値の30%以上である、(2)に記載のモータ制御装置。
(4) 前記第2駆動制御における前記モータの回転数目標値は、一定値である、(1)から(3)のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
(5) 前記制御部は、前記第2駆動制御において、前記回転数指示電圧が、前記駆動再開電圧よりも小さい復帰電圧以下になった場合に、前記第2駆動制御から前記第1駆動制御に切り替える、(1)から(4)のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
(6) (1)から(5)のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、前記モータ制御装置によって制御されるモータと、を備える、モータユニット。
(7) 前記モータは、ローラコンベアを駆動するローラモータである、(6)に記載のモータユニット。
【符号の説明】
【0049】
11…ローラコンベヤ、20…モータユニット、21…モータ、30…モータ制御装置、31…制御部、C1…第1駆動制御、C2…第2駆動制御、Rv…回転数目標値、Vd…駆動再開電圧、Vi…回転数指示電圧、Vr…復帰電圧、Vs…駆動停止電圧