(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118080
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果素子及び磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
H10N 50/20 20230101AFI20240823BHJP
H10N 50/80 20230101ALI20240823BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20240823BHJP
【FI】
H10N50/20
H10N50/80 Z
H10B61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024270
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小村 英嗣
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119BB01
4M119BB03
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD07
4M119DD08
4M119DD17
4M119DD22
4M119DD32
4M119DD47
4M119EE03
4M119JJ03
4M119JJ04
4M119KK18
5F092AB07
5F092AC08
5F092AC12
5F092AC26
5F092AD25
5F092BB10
5F092BB17
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB24
5F092BB31
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB38
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB44
5F092BB53
5F092BB55
5F092BC03
5F092BC07
5F092FA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部磁場の影響を受けにくく、動作への悪影響の少ない磁気抵抗効果素子及び磁気メモリを提供することを目的とする。
【解決手段】周囲が絶縁層90で覆われている磁気抵抗効果素子100及びトランジスタTrを有する磁気メモリ200であって、磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク配線20と、前記スピン軌道トルク配線に接続された積層体10と、前記積層体の前記スピン軌道トルク配線が接する面と反対側の面に接続されたマスク層30と、前記積層体の周囲を少なくとも囲むシールド層40と、を備える。前記シールド層の少なくとも一部は、前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層の周囲を、前記積層体の積層方向から見て前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層から離間した位置で囲む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン軌道トルク配線と、
前記スピン軌道トルク配線に接続された積層体と、
前記積層体の前記スピン軌道トルク配線が接する面と反対側の面に接続されたマスク層と、
前記積層体の周囲を少なくとも囲むシールド層と、を備え、
前記シールド層の少なくとも一部は、前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層の周囲を、前記積層体の積層方向から見て前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層から離間した位置で囲む、磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記シールド層は、前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層の周囲を囲む壁部と、前記マスク層と対向し前記マスク層の一面の少なくとも一部を覆う蓋部と、を備える、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記蓋部の少なくとも一部は、前記積層方向から見て、前記積層体と重なる位置にある、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記蓋部の少なくとも一部は、前記マスク層と接している、請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記マスク層と前記シールド層とを繋ぐ接続部をさらに有し、
前記マスク層は、軟磁性体を含む、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気抵抗効果素子を含む、磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子及び磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子は、磁気抵抗効果素子として知られている。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)への応用が可能である。
【0003】
MRAMは、磁気抵抗効果素子が集積された記憶素子である。MRAMは、磁気抵抗効果素子における非磁性層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の向きが変化すると、磁気抵抗効果素子の抵抗が変化するという特性を利用してデータを読み書きする。強磁性層の磁化の向きは、例えば、電流が生み出す磁場を利用して制御する。また例えば、強磁性層の磁化の向きは、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流すことで生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用して制御する。
【0004】
STTを利用して強磁性層の磁化の向きを書き換える場合、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す。書き込み電流は、磁気抵抗効果素子の特性劣化の原因となる。
【0005】
近年、書き込み時に磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流さなくてもよい方法に注目が集まっている(例えば、特許文献1)。その一つの方法が、スピン軌道トルク(SOT)を利用した書込み方法である。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じたスピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により誘起される。磁気抵抗効果素子内にSOTを誘起するための電流は、磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する方向に流れる。すなわち、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す必要がなく、磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スピン軌道トルクは、外部磁場、環境温度等の影響を受けやすく、環境によって特性が変化しやすい。スピン軌道トルクを利用した書き込みは、外部磁場の影響を低減することが求められる。外部磁場の影響を低減する手段の一つとして磁気シールドがある。磁気シールドは、内部の素子への外部磁場の影響を低減する。しかしながら、スピン軌道トルクを利用するスピン軌道トルク型の磁気抵抗効果素子の場合、磁気シールドが動作に悪影響を及ぼす場合がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、外部磁場の影響の受けにくく、動作に悪影響を及ぼしにくい磁気抵抗効果素子及び磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかる磁気抵抗効果素子は、スピン軌道トルク配線と、積層体と、マスク層と、シールド層と、を備える。積層体は、前記スピン軌道トルク配線に接続されている。マスク層は、前記積層体の前記スピン軌道トルク配線が接する面と反対側の面に接続されている。シールド層は、前記積層体の周囲を少なくとも囲む。前記シールド層の少なくとも一部は、前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層の周囲を、前記積層体の積層方向から見て前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層から離間した位置で囲む。
【0011】
(2)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記シールド層は、前記スピン軌道トルク配線及び前記マスク層の周囲を囲む壁部と、前記マスク層と対向し前記マスク層の一面の少なくとも一部を覆う蓋部と、を備えてもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記蓋部の少なくとも一部は、前記積層方向から見て、前記積層体と重なる位置にあってもよい。
【0013】
(4)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子において、前記蓋部の少なくとも一部は、前記マスク層と接していてもよい。
【0014】
(5)上記態様にかかる磁気抵抗効果素子は、前記マスク層と前記シールド層とを繋ぐ接続部をさらに有してもよい。前記マスク層は、軟磁性体を含む。
【0015】
(6)第2の態様にかかる磁気メモリは、上記態様に係る磁気抵抗効果素子を含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示にかかる磁気抵抗効果素子及び磁気メモリは、外部磁場の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態にかかる磁気メモリの回路図である。
【
図2】第1実施形態にかかる磁気メモリの特徴部分の断面図である。
【
図3】第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図4】第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の別の断面図である。
【
図5】第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の平面図である。
【
図6】比較例にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図7】第2実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図8】第2実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の別の断面図である。
【
図9】第2実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の平面図である。
【
図10】第3実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図11】第3実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の別の断面図である。
【
図12】第3実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の平面図である。
【
図13】第4実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【
図14】第5実施形態にかかる磁気抵抗効果素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
まず方向について定義する。後述する基板Sub(
図2参照)の一面の一方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、スピン軌道トルク配線20の長手方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。z方向は、各層が積層される積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0020】
本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。また本明細書で「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されない。例えば、二つの層が物理的に接している場合に限られず、二つの層の間が他の層を間に挟んで接続している場合も「接続」に含まれる。また本明細書での「接続」は電気的な接続も含む。
【0021】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる磁気メモリ200の構成図である。磁気メモリ200は、複数の磁気抵抗効果素子100と、複数の書き込み配線WLと、複数の共通配線CLと、複数の読出し配線RLと、複数の第1スイッチング素子Sw1と、複数の第2スイッチング素子Sw2と、複数の第3スイッチング素子Sw3と、を備える。磁気メモリ200は、例えば、磁気抵抗効果素子100がアレイ状に配列されている。
【0022】
それぞれの書き込み配線WLは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。それぞれの共通配線CLは、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。それぞれの共通配線CLは、基準電位と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。共通配線CLは、複数の磁気抵抗効果素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁気抵抗効果素子100に亘って設けられてもよい。それぞれの読出し配線RLは、電源と1つ以上の磁気抵抗効果素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気メモリ200に接続される。
【0023】
それぞれの磁気抵抗効果素子100は、第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2、第3スイッチング素子Sw3のそれぞれに接続されている。第1スイッチング素子Sw1は、磁気抵抗効果素子100と書き込み配線WLとの間に接続されている。第2スイッチング素子Sw2は、磁気抵抗効果素子100と共通配線CLとの間に接続されている。第3スイッチング素子Sw3は、複数の磁気抵抗効果素子100に亘る読出し配線RLに接続されている。
【0024】
所定の第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された書き込み配線WLと共通配線CLとの間に書き込み電流が流れる。書き込み電流が流れることで、所定の磁気抵抗効果素子100にデータが書き込まれる。所定の第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3をONにすると、所定の磁気抵抗効果素子100に接続された共通配線CLと読出し配線RLとの間に読み出し電流が流れる。読出し電流が流れることで、所定の磁気抵抗効果素子100からデータが読み出される。
【0025】
第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子Sw1、第2スイッチング素子Sw2及び第3スイッチング素子Sw3は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
【0026】
図1に示す磁気メモリ200は、同じ読出し配線RLに接続された磁気抵抗効果素子100が第3スイッチング素子Sw3を共用している。第3スイッチング素子Sw3は、それぞれの磁気抵抗効果素子100に設けられていてもよい。またそれぞれの磁気抵抗効果素子100に第3スイッチング素子Sw3を設け、第1スイッチング素子Sw1又は第2スイッチング素子Sw2を同じ配線に接続された磁気抵抗効果素子100で共用してもよい。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る磁気メモリ200の特徴部分の断面図である。
図2は、磁気抵抗効果素子100を後述するスピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。
【0028】
図2に示す第1スイッチング素子Sw1及び第2スイッチング素子Sw2は、トランジスタTrである。第3スイッチング素子Sw3は、読出し配線RLと電気的に接続され、例えば、
図2のy方向の異なる位置にある。トランジスタTrは、例えば電界効果型のトランジスタであり、ゲート電極Gとゲート絶縁膜GIと基板Subに形成されたソースS及びドレインDとを有する。ソースSとドレインDは、電流の流れ方向によって既定されるものであり、これらは同一の領域である。ソースSとドレインDの位置関係は、反転していてもよい。基板Subは、例えば、半導体基板である。
【0029】
トランジスタTrと磁気抵抗効果素子100とは、第1ビア配線50又は第2ビア配線60を介して、電気的に接続されている。またトランジスタTrと書き込み配線WL及びトランジスタTrと共通配線CLとはそれぞれ、ビア配線W1で接続されている。ビア配線W1は、例えば、z方向に延びる。読出し配線RLは、電極Eを介して積層体10に接続されている。ビア配線W1、電極Eは、導電性を有する材料を含む。
【0030】
第1ビア配線50は、磁気抵抗効果素子100のスピン軌道トルク配線20に接続されている。第2ビア配線60は、第1ビア配線50と異なる位置で、磁気抵抗効果素子100のスピン軌道トルク配線20に接続されている。z方向から見て、第1ビア配線50と第2ビア配線60とは、積層体10をx方向に挟む。第1ビア配線50及び第2ビア配線60は、導電性を有する材料を含む。
【0031】
磁気抵抗効果素子100及びトランジスタTrの周囲は、絶縁層90で覆われている。絶縁層90は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層90は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化アルミニウム(AlN)等である。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100の断面図である。
図3は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子100を切断した断面である。
図4は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100の別の断面図である。
図4は、スピン軌道トルク配線20のx方向の中心を通るyz平面で磁気抵抗効果素子100を切断した断面である。
図5は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100をz方向から見た平面図である。
【0033】
磁気抵抗効果素子100は、例えば、積層体10とスピン軌道トルク配線20とマスク層30とシールド層40とを備える。積層体10、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30とシールド層40との間は、絶縁層90で充填されている。
【0034】
磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク(SOT)を利用した磁性素子であり、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子、スピン注入型磁気抵抗効果素子、スピン流磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。
【0035】
磁気抵抗効果素子100は、データを記録、保存する素子である。磁気抵抗効果素子100は、積層体10のz方向の抵抗値でデータを記録する。積層体10のz方向の抵抗値は、スピン軌道トルク配線20に沿って書き込み電流を印加し、スピン軌道トルク配線20から積層体10にスピンが注入されることで変化する。積層体10のz方向の抵抗値は、積層体10のz方向に読出し電流を印加することで読み出すことができる。
【0036】
積層体10は、スピン軌道トルク配線20に接続されている。
図3に示す積層体10は、例えば、スピン軌道トルク配線20上に積層されている。
【0037】
積層体10は、柱状体である。積層体10のz方向からの平面視形状は、例えば、円形、楕円形、四角形である。積層体10の側面は、例えば、z方向に対して傾斜する。
【0038】
積層体10は、例えば、第1強磁性層1と第2強磁性層2と非磁性層3と下地層4とキャップ層5とを備える。積層体10は、非磁性層3を挟む第1強磁性層1と第2強磁性層2との磁化の相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。
【0039】
第1強磁性層1は、例えば、スピン軌道トルク配線20と面する。第1強磁性層1は、スピン軌道トルク配線20と直接接してもよいし、下地層4を介して間接的に接してもよい。第1強磁性層1は、例えば、スピン軌道トルク配線20上に積層されている。
【0040】
第1強磁性層1にはスピン軌道トルク配線20からスピンが注入される。第1強磁性層1の磁化は、注入されたスピンによりスピン軌道トルク(SOT)を受け、配向方向が変化する。第1強磁性層1は磁化自由層と言われる。
【0041】
第1強磁性層1は、強磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Co-Ho合金、Sm-Fe合金、Fe-Pt合金、Co-Pt合金、CoCrPt合金である。
【0042】
第1強磁性層1は、ホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはX2YZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、Co2FeSi、Co2FeGe、Co2FeGa、Co2MnSi、Co2Mn1-aFeaAlbSi1-b、Co2FeGe1-cGac等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
【0043】
第2強磁性層2は、非磁性層3を挟んで、第1強磁性層1と対向する。第2強磁性層2は、強磁性体を含む。第2強磁性層2の磁化は、所定の外力が印加された際に第1強磁性層1の磁化よりも配向方向が変化しにくい。第2強磁性層2は、磁化固定層、磁化参照層と言われる。
図3に示す積層体10は、磁化固定層が基板Subから離れた側にあり、トップピン構造と呼ばれる。
【0044】
第2強磁性層2を構成する材料として、第1強磁性層1を構成する材料と同様のものが用いられる。
【0045】
第2強磁性層2は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)でもよい。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。第2強磁性層2は、二つの磁性層とこれらに挟まれるスペーサ層とを有してもよい。二つの強磁性層が反強磁性カップリングすることで、第2強磁性層2の保磁力が大きくなる。強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0046】
非磁性層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2とに挟まれる。非磁性層3は、非磁性体を含む。非磁性層3が絶縁体の場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としては、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、及び、MgAl2O4等を用いることができる。また、これらの他にも、Al、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAl2O4はコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。非磁性層3が金属の場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。さらに、非磁性層3が半導体の場合、その材料としては、Si、Ge、CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In,Ga)Se2等を用いることができる。
【0047】
下地層4は、例えば、第1強磁性層1とスピン軌道トルク配線20との間にある。下地層4は、無くてもよい。
【0048】
下地層4は、例えば、バッファ層とシード層とを含む。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、バッファ層上に形成される。
【0049】
バッファ層は、例えば、例えば、Ta(単体)、TaN(窒化タンタル)、CuN(窒化銅)、TiN(窒化チタン)、NiAl(ニッケルアルミニウム)である。シード層は、例えば、Pt、Ru、Zr、NiCr合金、NiFeCrである。
【0050】
キャップ層5は、第2強磁性層2上にある。キャップ層5は、例えば、第2強磁性層2の磁気異方性を強める。キャップ層5は、例えば、第2強磁性層2の垂直磁気異方性を強める。キャップ層5は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。キャップ層5の膜厚は、例えば、0.5nm以上5.0nm以下である。
【0051】
積層体10は、第1強磁性層1、第2強磁性層2、非磁性層3、下地層4及びキャップ層5以外の層を有してもよい。
【0052】
スピン軌道トルク配線20は、例えば、z方向から見てx方向の長さがy方向より長く、x方向に延びる。書き込み電流は、第1ビア配線50と第2ビア配線60との間を、スピン軌道トルク配線20に沿ってx方向に流れる。
【0053】
スピン軌道トルク配線20は、スピン軌道相互作用及び界面ラシュバ効果によってスピン流を誘起し、第1強磁性層1にスピンを注入する。スピン軌道トルク配線20は、例えば、第1強磁性層1の磁化を反転できるだけのスピン軌道トルク(SOT)を第1強磁性層1の磁化に与える。
【0054】
スピンホール効果は、電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の流れる方向と直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果は、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で、通常のホール効果と共通する。通常のホール効果は、磁場中で運動する荷電粒子の運動方向がローレンツ力によって曲げられる。これに対し、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる。
【0055】
例えば、スピン軌道トルク配線20に電流が流れると、一方向に偏極した第1スピンと、第1スピンと反対方向に偏極した第2スピンとが、それぞれ電流の流れる方向と直交する方向にスピンホール効果によって曲げられる。例えば、-y方向に偏極した第1スピンは、進行方向であるx方向から+z方向に曲げられ、+y方向に偏極した第2スピンは、進行方向であるx方向から-z方向に曲げられる。
【0056】
非磁性体(強磁性体ではない材料)は、スピンホール効果により生じる第1スピンの電子数と第2スピンの電子数とが等しい。すなわち、+z方向に向かう第1スピンの電子数と-z方向に向かう第2スピンの電子数とは等しい。第1スピンと第2スピンは、スピンの偏在を解消する方向に流れる。第1スピン及び第2スピンのz方向への移動において、電荷の流れは互いに相殺されるため、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0057】
第1スピンの電子の流れをJ↑、第2スピンの電子の流れをJ↓、スピン流をJSと表すと、JS=J↑-J↓で定義される。スピン流JSは、z方向に生じる。第1スピンは、スピン軌道トルク配線20から第1強磁性層1に注入される。
【0058】
スピン軌道トルク配線20は、スピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物、金属窒化物のいずれかを含む。
【0059】
スピン軌道トルク配線20は、例えば、原子番号が39以上の重金属、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、トポロジカル絶縁体からなる群から選択される何れかを含む。またスピン軌道トルク配線20は、磁性材料を含んでもよい。
【0060】
スピン軌道トルク配線20は、例えば、主成分として非磁性の重金属を含む。重金属は、イットリウム(Y)以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は、例えば、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属である。非磁性の重金属は、その他の金属よりスピン軌道相互作用が強く生じる。スピンホール効果はスピン軌道相互作用により生じ、スピン軌道トルク配線20内にスピンが偏在しやすく、スピン流JSが発生しやすくなる。
【0061】
マスク層30は、積層体10のスピン軌道トルク配線20が接する面と反対側の面に接続されている。マスク層30は、例えば、積層体10のキャップ層5上にある。マスク層30は、電極Eと積層体10に挟まれる。
【0062】
マスク層30は、製造時にスピン軌道トルク配線20を加工する際に用いられるハードマスクの一部である。マスク層30の外形は、スピン軌道トルク配線20の外形と略一致する。マスク層30は、スピン軌道トルク配線20と対向する。例えば、マスク層30のx方向の長さは、スピン軌道トルク配線20の第1面の長さと略一致する。第1面は、スピン軌道トルク配線20のマスク層30側の面である。
【0063】
マスク層30は、例えば、Al、Cu、Ta、Ti、Zr、NiCr、窒化物(例えばTiN、TaN、SiN)、酸化物(例えばSiO2)を含む。マスク層30は、シールド層40と同じ材料でもよい。
【0064】
シールド層40は、積層体10の周囲を少なくとも囲む。シールド層40は、積層体10への外部磁場の侵入を防ぐ。シールド層40は、磁気シールドである。
【0065】
シールド層40の少なくとも一部は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。シールド層40は、z方向から見てスピン軌道トルク配線20及びマスク層30と離間する。シールド層40は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30と同じ高さ位置において、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間する。シールド層40は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の外側にある。シールド層40は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を環状に囲む。環状のシールド層40に沿って環状電流が流れることで、磁気シールド効果が高まる。
【0066】
シールド層40とスピン軌道トルク配線20との距離は、0より大きい。シールド層40とスピン軌道トルク配線20との距離は、例えば、30nm以下である。シールド層40とスピン軌道トルク配線20との距離が離れすぎないことで、磁気メモリ200の集積性を高めることができる。シールド層40の内周のx方向の距離は、スピン軌道トルク配線20のx方向の長さより長い。シールド層40の内周のy方向の距離は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅より長い。
【0067】
シールド層40は、磁気遮断性の高い公知の材料を含む。シールド層40は、例えば、Ni及びFeを含む合金、センダスト、FeCoを含む合金、Fe、Co、及びNiを含む合金との軟磁性体材料である。
【0068】
シールド層40は、例えば、スピン軌道トルク配線20、積層体10及びマスク層30が存在する階層に亘って存在する。シールド層40のz方向の下端は、例えば、スピン軌道トルク配線20の下面より下方にある。シールド層40のz方向の上端は、例えば、マスク層30の上面より上方にある。
【0069】
次いで、磁気メモリ200の製造方法について説明する。磁気メモリ200は、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
【0070】
まず基板Subの所定の位置に、不純物をドープしソースS、ドレインDを形成する。次いで、ソースSとドレインDとの間に、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極Gを形成する。ソースS、ドレインD、ゲート絶縁膜GI及びゲート電極GがトランジスタTrとなる。基板Subは、トランジスタTrが形成された市販の半導体回路基板を用いてもよい。
【0071】
次いで、トランジスタTrを覆うように絶縁層90を形成する。また絶縁層90に開口部を形成し、開口部内に導電体を充填することでビア配線W1、第1ビア配線50及び第2ビア配線60が形成される。書き込み配線WL、共通配線CLは、絶縁層90を所定の厚みまで積層した後、絶縁層90に溝を形成し、溝に導電体を充填することで形成される。
【0072】
次いで、絶縁層90、第1ビア配線50及び第2ビア配線60の一面に、スピン軌道トルク配線20となる層、積層体10となる層を順に積層する。そして積層体10を所定の形状に加工し、積層体10の周囲を絶縁層90で覆う。次いで、マスク層30を積層体10及び絶縁層90上に形成する。マスク層30を介して、スピン軌道トルク配線20となる層を所定の形状に加工する。ついで、マスク層30の周囲を絶縁層90で覆い、絶縁層90の周囲にシールド層40を形成する。このような手順で、磁気抵抗効果素子100が得られる。
【0073】
第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100は、シールド層40がスピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間した位置で、積層体10を囲むことで、シールド層40が磁気抵抗効果素子100の動作に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0074】
図6は、比較例に係る磁気抵抗効果素子101の断面図である。比較例に係る磁気抵抗効果素子101は、シールド層41が配置されている位置が、磁気抵抗効果素子100と異なる。
【0075】
シールド層41は、積層体10の周囲を囲む。シールド層41は、z方向から見て、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30と重なっており、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲んでいない。積層体10への外部磁場の影響を低減するためには、
図6に示すように、積層体10の近傍にシールド層41を配置することが効果的である。シールド層41と積層体10との距離が離れる程、漏れ磁場等の侵入するリスクが高まるためである。
【0076】
しかしながら、
図6に示す位置にシールド層41を配置すると、スピン軌道トルク配線20とシールド層41との間、及び、マスク層30とシールド層41との間にキャパシタンスが生じる。この場合、スピン軌道トルク配線20に沿って流れる書き込み電流の流れが、乱される。これらの間のキャパシタンスが小さい場合は、書き込み電流の一部がシールド層41及びマスク層30を介して迂回する場合もある。このような書き込み電流は、磁気抵抗効果素子101の適切な動作を阻害する。
【0077】
これに対し、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子100は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間した位置にシールド層40を配置している。そのため、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子100は、書き込み電流がシールド層40を介して迂回する等の不適切な動作を起こしにくい。シールド層40は、シールド層41より積層体10から離れた位置に配置されることになるが、シールド層40は積層体10を囲むため、十分外部磁場の影響を低減できる。
【0078】
「第2実施形態」
図7は、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102の断面図である。
図7は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子102を切断した断面である。
図8は、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102の別の断面図である。
図8は、スピン軌道トルク配線20のx方向の中心を通るyz平面で磁気抵抗効果素子102を切断した断面である。
図9は、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102をz方向から見た平面図である。
【0079】
磁気抵抗効果素子102は、シールド層42の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。磁気抵抗効果素子102において、磁気抵抗効果素子100と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省く。
【0080】
シールド層42は、積層体10の周囲を少なくとも囲む。シールド層42の少なくとも一部は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。シールド層42は、z方向から見てスピン軌道トルク配線20及びマスク層30と離間し、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の外側にある。シールド層42には、シールド層40と同様の材料が用いられる。
【0081】
シールド層42は、壁部42Aと蓋部42Bとを有する。壁部42Aは、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。壁部42Aは、z方向から見て、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間する。蓋部42Bは、マスク層30と対向しマスク層30の一面の少なくとも一部を覆う。蓋部42Bは開口を有し、開口内に電極Eが形成されている。開口は、z方向から見て、積層体10と重なる位置にある。
【0082】
第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100と同様の効果を奏する。またシールド層42が蓋部42Bを有することで、積層体10への外部磁場の影響をより低減できる。
【0083】
「第3実施形態」
図10は、第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子103の断面図である。
図10は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子103を切断した断面である。
図11は、第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子103の別の断面図である。
図11は、スピン軌道トルク配線20のx方向の中心を通るyz平面で磁気抵抗効果素子103を切断した断面である。
図12は、第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子103をz方向から見た平面図である。
【0084】
磁気抵抗効果素子103は、シールド層43の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。磁気抵抗効果素子103において、磁気抵抗効果素子100と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省く。
【0085】
シールド層43は、積層体10の周囲を少なくとも囲む。シールド層43の少なくとも一部は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。シールド層43は、z方向から見てスピン軌道トルク配線20及びマスク層30と離間し、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の外側にある。シールド層43には、シールド層40と同様の材料が用いられる。
【0086】
シールド層43は、壁部43Aと蓋部43Bとを有する。壁部43Aは、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。壁部43Aは、z方向から見て、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間する。蓋部43Bは、マスク層30と対向しマスク層30の一面の少なくとも一部を覆う。蓋部43Bの少なくとも一部は、z方向から見て、積層体10と重なる位置にある。積層体10の上面は、例えば、蓋部43Bで覆われている。蓋部42Bは開口を有し、開口内に電極Eが形成されている。開口は、z方向から見て、積層体10と重ならない位置にある。
【0087】
第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子103は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100と同様の効果を奏する。またシールド層43が蓋部43Bを有することで、積層体10への外部磁場の影響をより低減できる。また積層体10の直上の位置に蓋部43Bがあることで、積層体10への外部磁場の侵入をより抑制できる。
【0088】
「第4実施形態」
図13は、第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子104の断面図である。
図13は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子104を切断した断面である。第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子104のyx断面図及びz方向からの平面図は、
図8、
図9と同様である。
【0089】
第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子104は、接続部70を有する点が、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102と異なる。磁気抵抗効果素子104において、磁気抵抗効果素子102と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省く。
【0090】
接続部70は、マスク層30とシールド層42とを繋ぐ。接続部70は、例えば、マスク層30の上面に接続されている。この場合、マスク層30は、軟磁性体を含む。接続部70は、例えば、シールド層42と同様の材料を含む。
【0091】
第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子104は、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子102と同様の効果を奏する。またマスク層30とシールド層42とが接続部70で接続されることで、マスク層30とシールド層42と接続部70が一体となって磁気シールドの機能を果たし、積層体10への外部磁場の侵入をより抑制できる。
【0092】
「第5実施形態」
図14は、第5実施形態に係る磁気抵抗効果素子105の断面図である。
図14は、スピン軌道トルク配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で磁気抵抗効果素子105を切断した断面である。
【0093】
第5実施形態に係る磁気抵抗効果素子105は、シールド層44の形状が磁気抵抗効果素子100と異なる。磁気抵抗効果素子105において、磁気抵抗効果素子100と同じ構成は同じ符号を付し、説明を省く。
【0094】
シールド層44は、積層体10の周囲を少なくとも囲む。シールド層44の少なくとも一部は、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。シールド層44は、z方向から見てスピン軌道トルク配線20及びマスク層30と離間し、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の外側にある。シールド層44には、シールド層40と同様の材料が用いられる。
【0095】
シールド層44は、壁部44Aと蓋部44Bとを有する。壁部44Aは、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30の周囲を囲む。壁部44BAは、z方向から見て、スピン軌道トルク配線20及びマスク層30から離間する。蓋部44Bは、マスク層30と対向しマスク層30の一面の少なくとも一部を覆う。蓋部44Bは、マスク層30と接する。この場合、マスク層30は、軟磁性体を含む。
【0096】
第5実施形態に係る磁気抵抗効果素子105は、第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子102と同様の効果を奏する。
【0097】
ここまで、いくつかの実施形態を例示し、本発明の好ましい態様を例示したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、それぞれの実施形態における特徴的な構成を他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 第1強磁性層
2 第2強磁性層
3 非磁性層
4 下地層
5 キャップ層
10 積層体
20 スピン軌道トルク配線
30 マスク層
40、41、42、43 シールド層
42A、43A 壁部
42B、43B 蓋部
50 第1ビア配線
60 第2ビア配線
70 接続部
90 絶縁層
100、101、102、103、104 磁気抵抗効果素子
200 磁気メモリ