(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118081
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240823BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024271
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】荒木 信洋
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770CA01
5H770CA02
5H770DA11
5H770DA17
5H770DA22
5H770DA41
5H770GA13
5H770GA17
5H770JA17Y
5H770LA00X
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子が故障しても、負荷への電力供給が停止しないような給電装置を提供する。
【解決手段】給電装置1は、軌道回路2に電力を供給する。給電装置1は、複数のスイッチング素子SW1~SW4を有し、電源及び軌道回路2に対して電気的に接続されるとともに、互いに電気的に並列に接続された複数の電源回路11,12と、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御することにより、複数の電源回路11,12による軌道回路2への電力の供給を制御する駆動制御部130と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する給電装置であって、
複数のスイッチング素子を有し、電源及び前記負荷に対して電気的に接続されるとともに、互いに電気的に並列に接続された複数の電力変換部と、
前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記複数の電力変換部による前記負荷への電力の供給を制御する駆動制御部と、
を有する、
給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給電装置において、
前記駆動制御部は、前記複数の電力変換部から出力される電流が前記電力変換部ごとに異なるように、前記複数の電力変換部において前記複数のスイッチング素子の駆動をそれぞれ制御する、
給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給電装置において、
前記駆動制御部は、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合に、故障していない電力変換部から出力される電流を制御するように、前記故障していない電力変換部における複数のスイッチング素子の駆動を制御する、
給電装置。
【請求項4】
請求項1に記載の給電装置において、
前記複数の電力変換部は、それぞれ、
前記複数のスイッチング素子によって構成されるスイッチング回路と、
前記スイッチング回路よりも前記電源側に、前記電源に対して電気的に並列に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサよりも前記電源側に、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合に、前記一部の電力変換部内を前記スイッチング回路側から前記電源側に流れるリターン電流を遮断可能な電流遮断部と、
を有する、
給電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の給電装置において、
前記複数の電力変換部は、それぞれ、
前記複数のスイッチング素子のうち故障したスイッチング素子を検出可能な故障箇所検出部を有する、
給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電力を供給する給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に電力を供給する給電装置が知られている。このような給電装置として、例えば特許文献1に開示されるように、軌道に支持されつつ走行する移動体に電力を供給する電力供給システムが知られている。
【0003】
前記特許文献1に開示されている電力供給システムは、給電線と共に共振回路を構成するように前記給電線に接続されたコンデンサと、リアクトルを前記給電線に並列に接続させた入り状態と前記リアクトルが前記給電線に電気的に接続されていない切り状態とを選択的に取るスイッチ素子を有するスイッチ回路と、前記スイッチ素子の状態を切り替える切替制御手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されている電力供給システムのような給電装置では、スイッチ素子(スイッチング素子)が故障した場合には、負荷への電力供給を停止させるのが一般的である。しかし、移動体の走行状態や運用によっては、負荷への電力供給の停止を望まない場合がある。そのため、スイッチング素子が故障した場合でも、前記負荷への電力供給が停止しないような給電装置が求められている。
【0006】
本発明の目的は、スイッチング素子が故障しても、負荷への電力供給が停止しないような給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る給電装置は、負荷に電力を供給する給電装置である。前記給電装置は、複数のスイッチング素子を有し、電源及び前記負荷に対して電気的に接続されるとともに、互いに電気的に並列に接続された複数の電力変換部と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記複数の電力変換部による前記負荷への電力の供給を制御する駆動制御部と、を有する(第1の構成)。
【0008】
これにより、互いに電気的に並列に接続された複数の電力変換部における複数のスイッチング素子を駆動することにより、前記複数の電力変換部から負荷に電力を供給できる。よって、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部においてスイッチング素子が故障した場合でも、駆動制御部によって他の電力変換部における複数のスイッチング素子を駆動することにより、前記他の電力変換部から前記負荷に電力を供給することができる。
【0009】
したがって、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部においてスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置から前記負荷に電力を継続して供給することができる。
【0010】
前記第1の構成において、前記駆動制御部は、前記複数の電力変換部から出力される電流が前記電力変換部ごとに異なるように、前記複数の電力変換部において前記複数のスイッチング素子の駆動をそれぞれ制御する(第2の構成)。
【0011】
これにより、複数の電力変換部から出力する電流を異ならせることができる。よって、それぞれの電力変換部における複数のスイッチング素子の劣化の度合いを異ならせることができる。したがって、前記複数の電力変換部においてスイッチング素子の故障の発生タイミングを変えることができる。
【0012】
よって、各電力変換部のスイッチング素子が同時に故障するのを防止できる。したがって、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置から前記負荷に電力を継続して供給することができる。
【0013】
前記第2の構成において、前記駆動制御部は、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合に、故障していない電力変換部から出力される電流を制御するように、前記故障していない電力変換部における複数のスイッチング素子の駆動を制御する(第3の構成)。
【0014】
これにより、複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合に、故障していない電力変換部の複数のスイッチング素子を駆動させることにより、前記故障していない電力変換部から負荷に電力を供給することができる。
【0015】
したがって、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置から前記負荷に電力を継続して供給することができる。
【0016】
前記第1の構成において、前記複数の電力変換部は、それぞれ、前記複数のスイッチング素子によって構成されるスイッチング回路と、前記スイッチング回路よりも前記電源側に、前記電源に対して電気的に並列に接続されたコンデンサと、前記コンデンサよりも前記電源側に、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部におけるスイッチング素子が故障した場合に、前記一部の電力変換部内を前記スイッチング回路側から前記電源側に流れるリターン電流を遮断可能な電流遮断部と、を有する(第4の構成)。
【0017】
これにより、複数の電力変換部のうち一部の電力変換部のスイッチング素子が故障してスイッチング回路が短絡状態になった場合でも、残りの電力変換部から、前記一部の電力変換部のスイッチング回路を介して電源側に流れるリターン電流を、電流遮断部によって遮断することができる。よって、電気的に並列に接続された複数の電力変換部の一部におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置の電源側が損傷を受けるのを防止できる。
【0018】
しかも、前記電流遮断部は、前記スイッチング回路に対して電源側に位置しているコンデンサよりも前記電源側に位置しているため、前記電源から前記コンデンサに電流を流して充電する際に、前記電流遮断部によって電流を遮断することができる。よって、前記コンデンサの充電時に、前記コンデンサに突入電流が流れるのを防止できる。
【0019】
前記第1の構成において、前記複数の電力変換部は、それぞれ、前記複数のスイッチング素子のうち故障したスイッチング素子を検出可能な故障箇所検出部を有する(第5の構成)。
【0020】
これにより、複数の電力変換部のうち一部の電力変換部のスイッチング素子が故障した場合、前記一部の電力変換部においてどのスイッチング素子が故障したのかを容易に検出することができる。よって、故障したスイッチング素子を容易に交換することができる。したがって、電力変換部のスイッチング素子が故障した場合でも、前記電力変換部を迅速に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態に係る給電装置は、複数のスイッチング素子を有し、電源及び前記負荷に対して電気的に接続されるとともに、互いに電気的に並列に接続された複数の電力変換部と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記複数の電力変換部による前記負荷への電力の供給を制御する駆動制御部と、を有する。
【0022】
これにより、前記複数の電力変換部のうち一部の電力変換部においてスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置から前記負荷に電力を継続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る給電装置と複数の軌道回路とを有する電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、チョッパ駆動制御部の構成を機能ブロックで示す図である。
【
図3】
図3は、トランスの1次側電圧と電源回路の出力電流との関係の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、一方のチョッパ用スイッチング素子がオン状態のときに、他方のチョッパ用スイッチング素子がオフ状態である指令信号の波形の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一方のチョッパ用スイッチング素子がオフ状態のときに、他方のチョッパ用スイッチング素子がオン状態である指令信号の波形の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る給電装置を含む電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る給電装置を含む電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、故障検出部の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、駆動信号とスイッチング素子の出力信号との関係を示す模式図である。
【
図10】
図10は、論理回路に入力される信号と判定信号との関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は、論理回路に入力される信号と判定信号との関係を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態4に係る給電装置を含む電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態5に係る給電装置を含む電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態5に係る給電装置を含む電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図15】
図15は、その他の実施形態に係る給電装置のチョッパ駆動制御部の構成を機能ブロックで示す図である。
【
図16】
図16は、信号生成部が1つの比較部を有する故障検出部の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る給電装置1と複数の軌道回路2とを有する電力供給システムP1の概略構成を示す図である。給電装置1は、電気的に並列に接続された複数の軌道回路2(負荷)に電力を供給する軌道電源盤である。複数の軌道回路2は、例えば軌道に沿って走行する移動体に電力を供給する回路である。給電装置1には、図示しない電源から電力が供給される。
【0026】
電力供給システムP1は、給電装置1から複数の軌道回路2に対して電力を供給するトランス3と、軌道回路2と、共振回路を構成する複数のコンデンサ4とを有する。複数のコンデンサ4は、トランス3と複数の軌道回路2との間に位置し、互いに電気的に並列に接続されている。
【0027】
複数の軌道回路2は、トランス3に電気的に接続されているとともに、互いに電気的に並列に接続されている。複数の軌道回路2は、それぞれ、固有のインダクタンス21を有する。
【0028】
給電装置1は、電気的に並列に接続された複数の電源回路11,12(電力変換部)を有する。複数の電源回路11,12は、図示しない電源に対して電気的に接続されている。本実施形態では、給電装置1は、2つの電源回路11,12を有する。また、本実施形態では、2つの電源回路11,12は、同一の構成を有する。よって、以下では、電源回路11のみについて説明する。
【0029】
電源回路11は、整流回路111と、コンデンサ112と、チョッパ用スイッチング素子113と、インダクタ114と、インダクタ115と、電流型インバータ116と、駆動制御部130とを有する。
【0030】
電源回路11の入力側には、図示しない電源が電気的に接続されている。給電装置1は、電源回路11と電源との間に遮断器13を有する。遮断器13は、例えば、3相3線式である。
【0031】
電源回路11の出力側には、トランス3が電気的に接続されている。給電装置1は、電源回路11とトランス3との間に遮断器15を有する。遮断器15は、例えば、単相2線式である。
【0032】
整流回路111は、電源回路11の入力側に位置し、図示しない電源に電気的に接続されている。整流回路111は、前記電源に対して三相の配線によって電気的に接続されている。整流回路111は、例えば全波整流回路を構成する複数のダイオードを有する。なお、整流回路111のダイオードは、半波整流回路を構成していてもよい。電源から供給される3相の交流電流は、整流回路111によって整流される。
【0033】
コンデンサ112は、整流回路111に対して電気的に並列に接続されている。コンデンサ112によって、整流回路111で整流された電流を平滑化することができる。
【0034】
チョッパ用スイッチング素子113は、コンデンサ112とインダクタ114との間に位置する。チョッパ用スイッチング素子113は、インダクタ114に供給する電流を制御する。すなわち、チョッパ用スイッチング素子113がオン状態では、コンデンサ112からインダクタ114に電流が流れる一方、チョッパ用スイッチング素子113がオフ状態では、コンデンサ112からインダクタ114に電流が流れない。
【0035】
チョッパ用スイッチング素子113は、IGBTであってもよいし、他の構成を有するパワー半導体デバイスであってもよいし、電流の流れを遮断可能な構成を有していれば他の構成のスイッチング素子であってもよい。
【0036】
インダクタ114は、チョッパ用スイッチング素子113と電流型インバータ116との間に位置する。インダクタ114は、電流型インバータ116に一定の電流を供給する。
【0037】
電流型インバータ116は、インダクタ114から供給される直流電流を、所定の周波数の交流電流に変換して、トランス3に出力する。電流型インバータ116は、4つのスイッチング素子SW1~SW4と、4つのダイオードD1~D4とを有する。各スイッチング素子と各ダイオードとは、電気的に直列に接続されている。スイッチング素子SW1,SW2は、電気的に直列に接続されている。スイッチング素子SW3,SW4は、電気的に直列に接続されている。電気的に直列に接続されたスイッチング素子SW1,SW2と、電気的に直列に接続されたスイッチング素子SW3,SW4とは、ブリッジ回路を構成している。すなわち、スイッチング素子SW1,SW2の中点は、トランス3の1次側の一方の端子に電気的に接続されている。スイッチング素子SW3,SW4の中点は、トランス3の1次側の他方の端子に電気的に接続されている。
【0038】
なお、ダイオードD1,D3は、スイッチング素子SW1,SW3に対して、電流型インバータ116の入力側に位置する。ダイオードD2,D4は、スイッチング素子SW2,SW4に対して、電流型インバータ116の出力側に位置する。
【0039】
スイッチング素子SW1~SW4は、IGBTであってもよいし、他の構成を有するパワー半導体デバイスであってもよい。
【0040】
以下の説明では、電源回路12において、整流回路を符号121で示し、コンデンサを符号122で示し、チョッパ用スイッチング素子を符号123で示し、インダクタを符号124で示し、インダクタを符号125で示し、電流型インバータを符号126で示す。
【0041】
駆動制御部130は、電流型インバータ116及びチョッパ用スイッチング素子113の駆動を制御する。詳しくは、駆動制御部130は、チョッパ駆動制御部130aと、インバータ駆動制御部130bとを有する。
【0042】
チョッパ駆動制御部130aは、電圧指令及び給電装置1の電流値に基づいて、チョッパ用スイッチング素子113,123の駆動を制御する。チョッパ駆動制御部130aによるチョッパ用スイッチング素子113の駆動の制御によって、インダクタ114への電力供給が制御される。これにより、複数の軌道回路2に対する電圧や電流の供給が制御される。同様に、チョッパ駆動制御部130aは、チョッパ用スイッチング素子123の駆動の制御によって、インダクタ124への電力供給が制御され、複数の軌道回路2に対する電圧や電流の供給が制御される。
【0043】
インバータ駆動制御部130bは、電流型インバータ116,126のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。インバータ駆動制御部130bは、電源回路11から所定の周波数の交流電流が出力されるように、電流型インバータ116のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。同様に、インバータ駆動制御部130bは、電源回路12から所定の周波数の交流電流が出力されるように、電流型インバータ126のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。
【0044】
図2は、チョッパ駆動制御部130aの構成を機能ブロックで示す図である。
図2に示すように、チョッパ駆動制御部130aは、第1指令生成部131と、第2指令生成部132と、電圧補正部133とを有する。
【0045】
第1指令生成部131は、電源回路11に流れる電流と電圧補正部133によって得られる補正値とに基づいて、チョッパ用スイッチング素子113に対する電圧指令Aを生成する。第2指令生成部132は、電源回路12に流れる電流と電圧補正部133によって得られる補正値とに基づいて、チョッパ用スイッチング素子123に対する電圧指令Bを生成する。電圧補正部133は、駆動制御部130に入力される電圧指令と、トランス3の1次側の電圧との差を、前記補正値として求める。
【0046】
第1指令生成部131及び第2指令生成部132は、それぞれ、駆動制御部130に入力される電圧指令に応じて、生成する電圧指令を変更可能である。第1指令生成部131及び第2指令生成部132は、トランス3の1次側の電圧を駆動制御部130に入力される電圧指令と合わせるように、異なる電圧指令A及び電圧指令Bを生成する。なお、第1指令生成部131及び第2指令生成部132は、トランス3の1次側の電圧を駆動制御部130に入力される電圧指令に合わせるように、同じ電圧指令を生成してもよい。
【0047】
第1指令生成部131は、電流補正部134と、電圧指令補正部135と、電圧指令生成部136とを有する。第1指令生成部131は、電流補正部134で、電源回路11の電流出力が給電装置1の電流値に対して所望の比率になるように前記電流出力をゲインにより調整して電源回路11における電流の偏差を算出し、その値に電圧補正部133によって得られる補正値を考慮して、電圧指令生成部136によって電源回路11に対する電圧指令Aを生成する。
【0048】
電流補正部134は、電流加算部134aと、基準電流演算部134bと、電流偏差演算部134cと、PI制御部134dと、電流補正調整部134eとを有する。
【0049】
電流加算部134aは、電源回路11,12に流れる電流(電流FB_A、電流FB_B)を加算して、給電装置1からトランス3の1次側に流れる電流(電流I)を求める。基準電流演算部134bは、電源回路11に流れる電流の基準値(電流A)を求める。電流偏差演算部134cは、電源回路11に流れる電流の基準値(電流A)と、電源回路11に実際に流れる電流(電流FB_A)との差を、電流Aの偏差として求める。
【0050】
PI制御部134dは、電流Aの偏差を、ゲインによって調整して電流Aの目標値(補正値)に信号変換する。電流補正調整部134eは、電流Aの目標値を、電流Aの目標値相当である電圧指令に変換する。
【0051】
電圧指令補正部135は、電圧補正部133によって得られる電圧の補正値と、電流Aの目標値に相当する電圧指令との差を、電圧制御量として求める。
【0052】
電圧指令生成部136は、電圧指令補正部135によって得られた前記電圧制御量を用いて、制限値を超えないように、電源回路11のチョッパ用スイッチング素子113に対する電圧指令Aを生成する。具体的には、電圧指令生成部136は、電圧指令加算部136aと、電流制限部136bと、電流リミッタ部136cと、積分器136dとを有する。
【0053】
電圧指令加算部136aは、電圧指令補正部135によって得られた前記電圧制御量に、積分器136dによって積分補償された前の電圧指令を加算して、電圧指令Aを出力する。電流制限部136bは、想定以上の電流が流れないように、電圧指令Aを所定値によって制限する。前記所定値は、電源回路11に流れる電流(電流FB_A)と電流の制限値(例えば、第1指令生成部131の演算誤差や電力供給システムP1の安全率など考慮した割合)によって決まる。電流リミッタ部136cは、電圧指令Aによってチョッパ用スイッチング素子113を駆動させて電源回路11に電流を流した際に、電源回路11に想定以上の電流が流れた場合に、電流型インバータ116の駆動を停止するように、電圧指令Aに上限を設定する。積分器136dは、電流リミッタ部136cから出力された電圧指令Aを積分補償する。
【0054】
電流リミッタ部136cから出力された電圧指令Aは、電源回路11のチョッパ用スイッチング素子113に入力される。
【0055】
第2指令生成部132は、電流補正部137と、電圧指令補正部138と、電圧指令生成部139とを有する。第2指令生成部132は、電流補正部137で、電源回路12の電流出力が給電装置1の電流値に対して所望の比率になるように前記電流出力をゲインにより調整して電源回路12に流れる電流の基準値(電流B)や電流Bの偏差を求め、電圧指令補正部138で電流Bの目標値(補正値)に相当する電圧指令を用いて、電圧指令生成部139で電源回路12に対する電圧指令Bを生成する点以外、第1指令生成部131の構成と同様である。よって、第2指令生成部132の構成についての詳しい説明を省略する。
【0056】
なお、電流補正部137は、電流加算部137aと、基準電流演算部137bと、電流偏差演算部137cと、PI制御部137dと、電流補正調整部137eとを有する。電圧指令生成部139は、電圧指令加算部139aと、電流制限部139bと、電流リミッタ部139cと、積分器139dとを有する。
【0057】
電圧補正部133は、駆動制御部130に入力される電圧指令と、トランス3の1次側の電圧との差を、電圧の偏差として求めて、前記電圧の偏差を、PI制御によって目標値に信号変換する。電圧補正部133は、電圧偏差演算部133aと、PI制御部133bとを有する。
【0058】
電圧偏差演算部133aは、駆動制御部130に入力される電圧指令と、トランス3の1次側の電圧(電圧FB)との差を、電圧の偏差として求める。PI制御部133bは、前記電圧の偏差を、ゲインによって調整して電圧の目標値に信号変換する。信号変換された電圧の目標値は、第1指令生成部131の電圧指令補正部135及び第2指令生成部132の電圧指令補正部138に入力される。
【0059】
駆動制御部130が上述の構成を有することにより、2つの電源回路11,12から出力される電流を調整して、トランス3を介して軌道回路2に所定の電力を供給することができる。
図3は、電源回路11,12の出力電流とトランス3の1次側の電圧との関係を示す図である。
図3に示すように、上述の構成を有する駆動制御部130によって、トランス3の1次側の電圧が所望の電圧になるように、電源回路11,12から異なる電流を出力させることができる。
【0060】
このように、給電装置1は、2つの電源回路11,12から軌道回路2に電力を供給可能な構成を有するため、2つの電源回路11,12のうち一方の電源回路のスイッチング素子が故障した場合でも、他方の電源回路から軌道回路2に電力を供給することができる。したがって、軌道回路2に電力を継続して供給することが可能な給電装置1を実現できる。
【0061】
本実施形態では、給電装置1は、軌道回路2に電力を供給する。給電装置1は、複数のスイッチング素子SW1~SW4を有し、電源及び軌道回路2に対して電気的に接続されるとともに、互いに電気的に並列に接続された複数の電源回路11,12と、複数のスイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御することにより、複数の電源回路11,12による軌道回路2への電力の供給を制御する駆動制御部130と、を有する。
【0062】
これにより、互いに電気的に並列に接続された複数の電源回路11,12における複数のスイッチング素子SW1~SW4を駆動することにより、複数の電源回路11,12から軌道回路2に電力を供給できる。よって、複数の電源回路11,12のうち一部の電源回路においてスイッチング素子が故障した場合でも、駆動制御部130によって他の電源回路における複数のスイッチング素子SW1~SW4を駆動することにより、前記他の電源回路から軌道回路2に電力を供給することができる。
【0063】
したがって、複数の電源回路11,12のうち一部の電力変換部においてスイッチング素子SW1~SW4が故障した場合でも、給電装置1から軌道回路2に電力を継続して供給することができる。
【0064】
駆動制御部130は、複数の電源回路11,12から出力される電流が、電源回路ごとに異なるように、複数の電源回路11,12においてチョッパ用スイッチング素子113,123の駆動をそれぞれ制御してもよい。すなわち、駆動制御部130は、複数の電源回路11,12から出力される電流が電源回路ごとに異なるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して複数の電源回路11,12に出力してもよい。
【0065】
これにより、複数の電源回路11,12から出力する電流を異ならせることができる。よって、それぞれの電源回路におけるチョッパ用スイッチング素子113,123や複数のスイッチング素子SW1~SW4の劣化の度合いを異ならせることができる。したがって、複数の電源回路11,12において各スイッチング素子の故障の発生タイミングを変えることができる。
【0066】
よって、各電源回路のチョッパ用スイッチング素子113,123やスイッチング素子SW1~SW4が同時に故障するのを防止できる。したがって、複数の電源回路11,12のうち一部の電源回路におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置1から軌道回路2に電力を継続して供給することができる。
【0067】
例えば、駆動制御部130は、正常時には、2つの電源回路11,12の一方の電流出力が100%で且つ他方の電流出力が0%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。そして、前記一方の電源回路においてスイッチング素子が故障した場合には、駆動制御部130は、前記一方の電源回路の電流出力が0%で且つ前記他方の電源回路の電流出力が100%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。
【0068】
また、例えば、駆動制御部130は、正常時には、2つの電源回路11,12の電流出力が50%ずつになるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。そして、前記一方の電源回路においてスイッチング素子が故障した場合には、駆動制御部130は、前記一方の電源回路の電流出力が0%で且つ前記他方の電源回路の電流出力が100%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。
【0069】
このように、駆動制御部130は、複数の電源回路11,12のうち一部の電源回路におけるスイッチング素子が故障した場合に、故障していない電源回路から出力される電流を制御するように、前記故障していない電源回路における複数のスイッチング素子の駆動を制御してもよい。
【0070】
これにより、複数の電源回路11,12のうち一部の電源回路におけるスイッチング素子が故障した場合に、故障していない電源回路の複数のスイッチング素子を駆動させることにより、前記故障していない電源回路から負荷に電力を供給することができる。
【0071】
したがって、前記複数の電源回路のうち一部の電源回路におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置1から軌道回路2に電力を継続して供給することができる。
【0072】
また、例えば、駆動制御部130は、2つの電源回路11,12の電流出力の比率が変更されるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。
【0073】
例えば、駆動制御部130は、2つの電源回路11,12の一方の電流出力が30%で且つ他方の電流出力が70%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力して、所定期間が経過したら、2つの電源回路11,12の一方の電流出力が70%で且つ他方の電流出力が30%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力するなど、電流出力の比率を定期的に変更してもよい。
【0074】
これにより、複数の電源回路11,12から出力する電流出力の比率を固定にする場合に比べて、電流の平均値や実効値を全体的に抑えることができる。よって、それぞれの電源回路における複数のスイッチング素子SW1~SW4の劣化の度合いを遅らせることができる。したがって、複数の電源回路11,12においてチョッパ用スイッチング素子113,123や各スイッチング素子SW1~SW4の故障の発生タイミングを遅らせることができる。
【0075】
また、例えば、駆動制御部130は、2つの電源回路11,12におけるチョッパ用スイッチング素子113,123やスイッチング素子SW1~SW4の温度を検出し、その検出結果に応じて2つの電源回路11,12の電流出力の比率が変更されるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。すなわち、例えば、電源回路11のチョッパ用スイッチング素子113やスイッチング素子SW1~SW4の温度が閾値を超えた場合に、駆動制御部130は、電源回路11の電流出力を低下させるように、電圧指令Aを生成して電源回路11に出力してもよい。この場合には、駆動制御部130は、電源回路12の電流出力を増大させるように、電圧指令Bを生成して電源回路12に出力する。また、電源回路11のチョッパ用スイッチング素子113やスイッチング素子SW1~SW4の温度によっては、電源回路11の電流出力が0%で且つ電源回路12の電流出力が100%になるように、電圧指令A及び電圧指令Bを生成して2つの電源回路11,12に出力してもよい。
【0076】
なお、駆動制御部130は、上述のように2つの電源回路11,12の電流出力を異ならせたり変更させたりするように電圧指令A及び電圧指令Bを生成する場合、基準電流演算部134b,137bにおいて2つの電源回路11,12の電流出力が所望の比率になるように、ゲインを調整する。
【0077】
以上のように駆動制御部130によって、2つの電源回路11,12の電流出力の比率を変更することにより、電源回路11,12のチョッパ用スイッチング素子113,123やスイッチング素子SW1~SW4の劣化を遅らせることができる。よって、電源回路11,12のチョッパ用スイッチング素子113,123やスイッチング素子SW1~SW4の故障のタイミングを調整できる。したがって、給電装置1から軌道回路2に電力をより確実に継続して供給することができる。
【0078】
(変形例)
以上の構成を有する給電装置1において、チョッパ駆動制御部130aは、2つの電源回路11,12のチョッパ用スイッチング素子113,123を駆動する指令信号に対して、両者のパルス周期におけるオン状態の期間が重複しないように指令信号を生成してもよい。例えば、
図4に示すように、両者のパルス周期のオン状態の期間またはオフ状態の期間が、チョッパ駆動制御部130aの制御周期の半分の期間を超える場合、チョッパ用スイッチング素子113,123を駆動する指令信号のオン状態の期間とオフ状態の期間とが逆になるように、指令信号を生成すればよい。また、
図5に示すように、両者のパルス周期のオン状態の期間またはオフ状態の期間が、制御周期の半分の期間を超えない場合、オン状態の期間が長いチョッパ用スイッチング素子がオフ状態の期間内に、オン状態の期間が短いチョッパ用スイッチング素子のオン状態の期間が含まれるように、指令信号を生成すればよい。
【0079】
これにより、電源回路11のインダクタ114に電流が供給されるタイミングと、電源回路12のインダクタ124に電流が供給されるタイミングとをずらすことができる。よって、電源回路11,12から出力される電流に含まれるリプル成分を小さくすることができる。
【0080】
<実施形態2>
図6は、実施形態2に係る給電装置100を含む電力供給システムP2の概略構成を示す図である。本実施形態の給電装置100では、電源回路101,102が、電流型インバータ116,126よりも電源側で且つコンデンサ112,122よりも電源側に、電流遮断用スイッチング素子141,142を有する点で、実施形態1の給電装置1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0081】
電流遮断用スイッチング素子141,142(電流遮断部)は、電流型インバータ116,126よりも電源側で且つコンデンサ112,122よりも電源側に位置する。詳しくは、電流遮断用スイッチング素子141,142は、整流回路111,121とコンデンサ112,122との間で且つ低電圧側に位置する。
【0082】
電流遮断用スイッチング素子141,142は、IGBTであってもよいし、他の構成を有するパワー半導体デバイスであってもよいし、電流の流れを遮断可能な構成を有していれば他の構成のスイッチング素子であってもよい。
【0083】
電流遮断用スイッチング素子141,142は、駆動制御部130によって駆動制御されてもよいし、専用の制御部によって駆動制御されてもよい。電流遮断用スイッチング素子141,142は、2つの電源回路101,102のうち一方の電源回路のスイッチング素子が故障した場合に、駆動制御されてもよいし、電流遮断用スイッチング素子141,142に流れる電流が閾値以上の場合に、駆動制御されてもよい。
【0084】
例えば、2つの電源回路101,102のうち一方の電源回路のスイッチング素子が故障した場合、他方の電源回路から前記一方の電源回路の電流型インバータに電流が流れる可能性がある。前記一方の電源回路の電流型インバータに流れ込んだ電流は、前記一方の電源回路内の低電圧側を電源に向かって流れる可能性がある。上述のように電源回路に電流遮断用スイッチング素子141,142を設けることにより、上述のようなリターン電流を止めることができる。
【0085】
しかも、給電装置100の始動時に、電流遮断用スイッチング素子141,142をオフ状態にすることにより、コンデンサ112,122に突入電流が流れるのを防止できる。
【0086】
以上より、本実施形態では、電源回路101,102は、複数のスイッチング素子SW1~SW4によって構成される電流型インバータ116,126(スイッチング回路)と、電流型インバータ116,126よりも電源側に、前記電源に対して電気的に並列に接続されたコンデンサ112,122と、コンデンサ112,122よりも前記電源側に、複数の電源回路101,102のうち一部の電源回路におけるスイッチング素子が故障した場合に、前記一部の電源回路内を電流型インバータ側から前記電源側に流れるリターン電流を遮断可能な電流遮断用スイッチング素子141,142と、を有する。
【0087】
これにより、複数の電源回路101,102のうち一部の電源回路のスイッチング素子が故障して電流型インバータが短絡状態になった場合でも、残りの電源回路から、前記一部の電源回路の電流型インバータを介して電源側に流れるリターン電流を、電流遮断用スイッチング素子141,142によって遮断することができる。よって、電気的に並列に接続された複数の電源回路101,102の一部におけるスイッチング素子が故障した場合でも、給電装置100の電源側が損傷を受けるのを防止できる。
【0088】
しかも、電流遮断用スイッチング素子141,142は、電流型インバータ116,126に対して電源側に位置しているコンデンサ112,122よりも前記電源側に位置しているため、給電装置100の始動時に、電流遮断用スイッチング素子141,142によって電流を遮断することができ、コンデンサ112,122に突入電流が流れるのを防止できる。
【0089】
<実施形態3>
図7は、実施形態3に係る給電装置200を含む電力供給システムP3の概略構成を示す図である。本実施形態の給電装置200では、駆動制御部230が電源回路11,12の電流型インバータ116,126の故障検出を行う故障検出部231を有する点で、実施形態1の給電装置1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0090】
図7に示すように、駆動制御部230は、電源回路11,12の電流型インバータ116,126の故障検出を行う故障検出部231を有する。
【0091】
故障検出部231は、チョッパ用スイッチング素子113,123や電流型インバータ116,126のスイッチング素子SW1~SW4において、ゲート信号などの駆動信号と、各スイッチング素子の出力信号(後述する比較部等に入力可能にした信号)とに基づいて、故障の有無を検出する。
【0092】
図8は、故障検出部231の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図8に示すように、故障検出部231は、信号生成部232と、故障判定部233とを有する。信号生成部232は、前記駆動信号及び前記出力信号を用いて、スイッチング素子の故障を判定するための判定信号を生成する。
【0093】
信号生成部232は、比較部241a,241bと、信号変換部242a,242bと、論理回路243a,243bとを有する。本実施形態では、信号生成部232は、比較部、信号変換部及び論理回路を、それぞれ2つ有する。
【0094】
比較部241a,241bは、スイッチング素子の出力信号及び基準信号を用いて、比較信号を生成する。前記出力信号は、例えば
図9に示す信号である。
図9に示すような駆動信号がスイッチング素子に入力されると、スイッチング素子が正常である時(正常時)には、駆動信号に対してHighとLowとが反転した状態の出力信号が得られる。一方、スイッチング素子が開放状態の時(開放時)には、スイッチング素子からはHigh信号(H)が出力される。また、スイッチング素子が短絡状態の時(短絡時)には、スイッチング素子からLow信号(L)が出力される。前記基準信号は、例えば、スイッチング素子の出力信号において、High信号とLow信号との間の値を有する一定の信号である。
【0095】
信号変換部242a,242bは、比較部241a,241bからそれぞれ出力される比較信号を信号変換して、
図10のIII及び
図11のIVで示すような信号を生成する。本実施形態では、信号変換部242aは、
図10のIIIで示す信号を出力する。信号変換部242bは、
図11のIVで示す信号を出力する。なお、
図10のIIIで示す信号は、スイッチング素子の出力信号と同じ波形の信号である。
図11のIVで示す信号は、前記出力信号に対してHighとLowとが反転した状態の信号である。
【0096】
論理回路243a,243bは、信号変換部242a,242bから出力された信号と駆動信号とに基づいて、判定信号V,VIを生成する。詳しくは、論理回路243aは、信号変換部242aから出力された信号(
図10のIIIで示す信号)と、駆動信号(
図10のIで示す信号)とを用いて、ANDの論理演算を行う。論理回路243aに対して
図10のI及びIIIで示す信号が入力される場合、スイッチング素子の正常時には、論理回路243aからLow信号が出力され、スイッチング素子の開放時には、駆動信号と同様の波形の信号が出力され、スイッチング素子の短絡時には、Low信号が出力される。
【0097】
論理回路243bは、信号変換部242bから出力された信号(
図11のIVで示す信号)と、駆動信号に対して論理回路244(NOT回路)等によりHighとLowとが反転した状態の信号(
図11のIIで示す信号)とを用いて、ANDの論理演算を行う。論理回路243bに対して
図11のII及びIVで示す信号が入力される場合、スイッチング素子の正常時には、論理回路243aからLow信号が出力され、スイッチング素子の開放時には、Low信号が出力され、スイッチング素子の短絡時には、IIで示す信号と同様の波形の信号が出力される。
【0098】
このように得られた判定信号V,VIは、故障判定部233に入力される。故障判定部233は、判定信号V,VIに基づいて、スイッチング素子の故障を判定する。具体的には、故障判定部233は、Low信号以外の波形の信号が入力された場合に、スイッチング素子が故障していると判定する。故障判定部233は、Low信号以外の波形の判定信号Vが入力された場合に、スイッチング素子が開放状態であると判定する。また、故障判定部233は、Low信号以外の波形の判定信号VIが入力された場合、スイッチング素子が短絡状態であると判定する。すなわち、故障判定部233は、スイッチング素子における正常状態、開放状態、短絡状態の各状態を判定することができる。
【0099】
なお、特に図示しないが、本実施形態の駆動制御部230も実施形態1の駆動制御部130と同様、電流型インバータ216,226のスイッチング素子SW1~SW4を駆動制御するインバータ駆動制御部と、チョッパ用スイッチング素子113,123を駆動制御するチョッパ駆動制御部とを有する。
【0100】
本実施形態の構成により、チョッパ用スイッチング素子113,123や電源回路11,12の電流型インバータ116,126のスイッチング素子SW1~SW4の故障を検出することができる。しかも、チョッパ用スイッチング素子113,123やスイッチング素子SW1~SW4の開放及び短絡の故障も検出することができる。
【0101】
スイッチング素子の開放状態及び短絡状態を別の検出装置によって検出する場合には、検出タイミングに差が生じる。そうすると、故障時の対応が遅れる可能性がある。これに対し、本実施形態の構成により、スイッチング素子の状態(正常、開放、短絡)を同時に判定できるため、スイッチング素子の故障を迅速に検出できる。
【0102】
なお、本実施形態では、故障検出部231は、駆動制御部230の機能の一部である。しかしながら、故障検出部は、駆動制御部230とは別の制御部によって構成されていてもよい。また、故障検出部231は、スイッチング素子の状態(正常、開放、短絡)を同時に検出可能な構成であれば、本実施形態以外の構成を有していてもよい。
【0103】
<実施形態4>
図12は、実施形態4に係る給電装置300を含む電力供給システムP4の概略構成を示す図である。本実施形態の給電装置300は、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれブレーカ313,314,315,316を有する点で、実施形態1の給電装置1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0104】
図12に示すように、給電装置300は、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれブレーカ313,314,315,316を有する。ブレーカ313,314,315,316は、スイッチ操作によって機械的に回路を切断する。ブレーカ313,314は、遮断器13,14よりも電源側に位置する。ブレーカ315,316は、遮断器15,16よりもトランス3側に位置する。
【0105】
これにより、電源回路11,12の電流型インバータ116,126の一方のスイッチング素子が故障した場合に、故障した電源回路を、電源及びトランス3に対してより確実に切り離すことができる。
【0106】
<実施形態5>
図13は、実施形態5に係る給電装置400を含む電力供給システムP5の概略構成を示す図である。本実施形態の給電装置400は、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれコネクタ413,414,415,416を有する点で、実施形態1の給電装置1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0107】
図13に示すように、給電装置400は、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれコネクタ413,414,415,416を有する。コネクタ413,414,415,416は、図示しない接続端子を有し、電力線同士を容易に接続または離脱させることができる。コネクタ413,414は、遮断器13,14と電源回路11,12との間に位置する。コネクタ415,416は、遮断器15,16と電源回路11,12との間に位置する。
【0108】
これにより、電源回路11を、コネクタ413,415によって、電源及びトランス3に対して容易に着脱することができる。同様に、電源回路12を、コネクタ414,416によって、電源及びトランス3に対して容易に着脱することができる。すなわち、電源回路11,12をユニット化することができる。
【0109】
よって、電源回路11,12のうち故障した電源回路を、容易に取り外して、交換することができる。また、電源回路11,12の一方のみを電源及びトランス3に電気的に接続して、一方の電源回路によって軌道回路2に電力を供給する構成に容易に変更することもできる。
【0110】
<実施形態6>
図14は、実施形態6に係る給電装置500を含む電力供給システムP6の概略構成を示す図である。本実施形態の給電装置500は、電源回路11,12において故障しているスイッチング素子を検出する故障箇所検出部541,542を有する点で、実施形態1の給電装置1とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0111】
図14に示すように、給電装置500は、電源回路11,12に、故障箇所検出部541,542を有する。故障箇所検出部541,542は、電源回路11,12の低電圧側に設けられていて、故障しているスイッチング素子を検出する際には電源回路11,12の一部を構成する。
【0112】
具体的には、
図14に示すように、電源回路12においてスイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行う場合には、故障箇所検出部542は、電源回路12の低圧側の一部を構成する。なお、
図14に示すように、電源回路12においてスイッチング素子の故障検出を行う場合には、遮断器16が開放した状態である。
【0113】
一方、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行わない場合には、
図14に示す電源回路11のように、故障箇所検出部541は、電源回路11の一部を構成せずに電源回路11から電気的に分離されている。
【0114】
なお、
図14では、電源回路11において、故障箇所検出部541は、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行っておらず、電源回路12において、故障箇所検出部542は、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行っている。しかしながら、電源回路12において、故障箇所検出部542は、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行っておらず、電源回路11において、故障箇所検出部541は、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行ってもよい。また、電源回路11,12において、故障箇所検出部541,542が、それぞれ、スイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行ってもよい。
【0115】
故障箇所検出部542は、電源回路12のスイッチング素子SW1~SW4の故障検出を行う場合には、スイッチング素子SW1~SW4に対して駆動信号を出力する。故障箇所検出部542は、スイッチング素子SW1~SW4の駆動によって電源回路12内に流れる電流を検出する。故障箇所検出部542は、スイッチング素子SW1~SW4の駆動状態と電源回路12内に流れる電流との関係が正しければ、故障はないと判断し、前記関係が正しい関係でなければ、そのときに駆動しているスイッチング素子が故障していると判断する。
【0116】
以上より、本実施形態では、複数の電源回路11,12は、それぞれ、複数のスイッチング素子のうち故障したスイッチング素子を検出可能な故障箇所検出部541,542を有する。
【0117】
これにより、複数の電源回路11,12のうち一部の電源回路のスイッチング素子が故障した場合、前記一部の電源回路においてどのスイッチング素子が故障したのかを容易に検出することができる。よって、故障したスイッチング素子を容易に交換することができる。したがって、電源回路のスイッチング素子が故障した場合でも、前記電源回路を迅速に復帰させることができる。
【0118】
なお、故障箇所検出部541,542は、チョッパ用スイッチング素子113,123の故障を検出してもよい。故障箇所検出部は、複数の電源回路のうち一部のみに設けられていてもよい。また、電源回路において故障箇所検出部が設けられる位置は、電源回路の低電圧側に限らず、スイッチング素子の故障を検出可能な位置であれば、どの位置であってもよい。
【0119】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0120】
前記各実施形態では、給電装置1は、2つの電源回路11,12を有する。しかしながら、給電装置は、3つ以上の電源回路を有していてもよい。この場合、電源回路の数に応じて、チョッパ駆動制御部に指令生成部(第1指令生成部131や第2指令生成部132に相当)を追加して、電源回路に流れる電流と電圧補正部によって得られる補正値とに基づいて、チョッパ用スイッチング素子に対する電圧指令を生成すればよい。
【0121】
前記各実施形態では、給電装置1は、軌道回路2に電力を供給する。しかしながら、給電装置1は、軌道回路以外の回路に電力を供給してもよい。すなわち、電力供給システムP1の構成は、給電装置1から負荷に電力を供給する構成であれば、他の構成であってもよい。
【0122】
前記各実施形態では、電源回路11に対する電圧指令Aは、第1指令生成部131によって生成される。電源回路12に対する電圧指令Bは、第2指令生成部132によって生成される。しかしながら、電圧指令A及び電圧指令Bを生成する構成は、本実施形態の構成に限定されない。複数の電源回路に対してそれぞれ出力される電圧指令は、負荷に電力を供給可能なように前記複数の電源回路を駆動させることができれば、どのように生成されてもよい。
【0123】
前記各実施形態では、電源回路11,12は、電力変換部として電流型インバータ116,126を有する。しかしながら、電源回路が有する電力変換部は、電圧形インバータなどの他の構成を有していてもよい。すなわち、前記電力変換部は、複数のスイッチング素子を有し且つ電力変換が可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0124】
前記実施形態1では、
図2に示すように、チョッパ駆動制御部130aは、第1指令生成部131と、第2指令生成部132と、電圧補正部133とを有する。第1指令生成部131及び第2指令生成部132は、電圧補正部133によって得られる電圧の補正値を用いて、電圧指令A及び電圧指令Bを生成する。
【0125】
しかしながら、インバータ駆動制御部は、電源回路11,12を50%ずつの電流出力で駆動させる場合、電圧補正部によって得られる電圧の補正値を用いずに電圧指令A及び電圧指令Bを生成してもよい。すなわち、
図15に示すように、チョッパ駆動制御部1130aは、第1指令生成部1131と、第2指令生成部1132とを有する一方、電圧補正部を有していなくてもよい。
【0126】
第1指令生成部1131は、電圧補正部1134と、電圧指令補正部1135と、電圧指令生成部136とを有する。
【0127】
電圧補正部1134は、電圧偏差演算部1134aと、PI制御部1134bとを有する。電圧偏差演算部1134aは、電圧指令からトランス3の1次側の電圧を減算して、電圧の偏差を求める。PI制御部1134bは、求めた電圧の偏差を、ゲインによって調整して電圧の目標値に信号変換する。
【0128】
電圧指令補正部1135は、電圧補正部1134によって求められた電圧の目標値に対して、後述する電流補正調整部1137cで算出された電圧指令を減算して、その差を電圧制御量として求める。
【0129】
その後、前記電圧制御量を用いて、電圧指令生成部136によって、電圧指令Aが生成される。なお、電圧指令生成部136は、実施形態1の電圧指令生成部136と同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0130】
第2指令生成部1132は、電流補正部1137と、電圧指令補正部1138と、電圧指令生成部139とを有する。
【0131】
電流補正部1137は、電流偏差演算部1137aと、PI制御部1137bと、電流補正調整部1137cとを有する。
【0132】
電流偏差演算部1137aは、電源回路11に流れる電流と電源回路12に流れる電流との偏差を算出する。PI制御部1137bは、求めた電流の偏差を、ゲインによって調整して電流の目標値に信号変換する。電流補正調整部1137cは、電流の目標値を、電流の目標値に相当する電圧指令に変換する。求めた電圧指令は、第1指令生成部1131の電圧指令補正部1135に入力される。
【0133】
電圧指令補正部1138は、電流補正調整部1137cで求めた電圧指令に、第1指令生成部1131のPI制御部1134bによって得られる電圧の目標値を加算することにより、その和を電圧制御量として求める。
【0134】
その後、前記電圧制御量を用いて、電圧指令生成部139によって、電圧指令Bが生成される。なお、電圧指令生成部139は、実施形態1の電圧指令生成部139と同じ構成を有するため、説明を省略する。
【0135】
前記実施形態2では、2つの電源回路101,102に、それぞれ、リターン電流を止める電流遮断用スイッチング素子141,142が設けられている。しかしながら、2つの電源回路の一方のみに、電流遮断用スイッチング素子を設けてもよい。また、電源回路に、電流遮断用スイッチング素子の代わりに、抵抗を設けてもよい。
【0136】
前記実施形態3では、信号生成部232が、2つの比較部241a,241bを有する。しかしながら、信号生成部は、1つの比較部のみを有していてもよい。
【0137】
図16は、信号生成部1232が1つの比較部1241を有する故障検出部1231の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図16に示すように、故障検出部1231は、信号生成部1232と、故障判定部233とを有する。信号生成部1232は、駆動信号及びスイッチング素子の出力信号を用いて、スイッチング素子の故障を判定するための判定信号を生成する。比較部1241は、スイッチング素子の出力信号及び基準信号を用いて、比較信号を生成して、この比較信号を信号変換部1242a,242bの両方に出力する。信号変換部1242aは、論理回路(NOT回路)等が組み込まれていて、前記比較信号を反転させることができる。これにより、信号生成部232の回路構成を簡素化できる。
【0138】
前記実施形態4では、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれブレーカ313,314,315,316が設けられている。しかしながら、電源回路の電源側またはトランス側のみに、ブレーカが設けられていてもよい。また、複数の電源回路のうち一部の電源回路のみに、ブレーカが設けられていてもよい。電源回路の電源側及びトランス側の少なくとも一方に、ブレーカの代わりに、ナイフスイッチが設けられていてよい。
【0139】
前記実施形態5では、電源回路11,12の電源側及びトランス3側に、それぞれコネクタ413,414,415,416が設けられている。しかしながら、コネクタは、複数の電源回路のうち一部の電源回路のみに設けられていてもよい。すなわち、複数の電源回路のうち一部の電源回路のみがユニット化されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、負荷に電力を供給する給電装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0141】
P1、P2、P3、P4、P5、P6 電力供給システム
1、100、200、300、400、500 給電装置
2 軌道回路(負荷)
3 トランス
4 コンデンサ
11、12、101、102 電源回路(電力変換部)
111、121 整流回路
112、122 コンデンサ
113、123 チョッパ用スイッチング素子
114、115、124、125 インダクタ
116、126 電流型インバータ(スイッチング回路)
13、14、15、16 遮断器
130、230 駆動制御部
130a、1130a チョッパ駆動制御部
130b インバータ駆動制御部
131、1131 第1指令生成部
132、1132 第2指令生成部
133 電圧補正部
133a、1134a 電圧偏差演算部
133b、1134b、1137b PI制御部
134、137、1137 電流補正部
1134 電圧補正部
134a、137a 電流加算部
134b、137b 基準電流演算部
134c、137c、1137a 電流偏差演算部
134d、137d、1134b、1137b PI制御部
134e、137e、1137c 電流補正調整部
135、138、1135、1138 電圧指令補正部
136、139 電圧指令生成部
136a、139a 電圧指令加算部
136b、139b 電流制限部
136c、139c 電流リミッタ部
136d、139d 積分器
141、142 電流遮断用スイッチング素子(電流遮断部)
21 インダクタンス
231、1231 故障検出部
232、1232 信号生成部
233 故障判定部
241a、241b、1241 比較部
242a、242b、1242a 信号変換部
243a、243b 論理回路
313、314、315、316 ブレーカ
413、414、415、416 コネクタ
541、542 故障箇所検出部
SW1、SW2、SW3、SW4 スイッチング素子
D1、D2、D3、D4 ダイオード