(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118087
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】保護膜付きワークの製造方法、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、及び、保護膜付きワークの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240823BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024280
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智則
(72)【発明者】
【氏名】加太 章生
(72)【発明者】
【氏名】田村 桜子
(72)【発明者】
【氏名】山下 茂之
【テーマコード(参考)】
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA13
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA04
4J004CA05
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4J004CB03
4J004CC02
4J004FA04
5F063AA04
5F063AA18
5F063BA20
5F063CC33
5F063DF12
5F063DF14
5F063DG34
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE27
5F063EE29
5F063EE43
(57)【要約】
【課題】回路面を有するワークと、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、エネルギー線硬化時に皺の発生が抑制される保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、並びに、保護膜付きワークの製造装置の提供。
【解決手段】ウエハ(9)等のワークの回路面とは反対側の面に、保護膜形成フィルム(13)を積層する積層工程と、保護膜形成フィルム(13)に対して冷却処理を施しながら、保護膜形成フィルム(13)に対して、エネルギー線照射(E)して保護膜を形成する硬化工程と、をこの順に備える、保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、並びに、保護膜付きワークの製造装置の提供。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路面を有するワークとエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、
前記ワークの回路面とは反対側の面に、前記保護膜形成フィルムを積層する積層工程と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程と、をこの順に備える、保護膜付きワークの製造方法。
【請求項2】
前記積層工程の後であって前記硬化工程の前に、又は、前記硬化工程の後に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付工程を備える、請求項1に記載の保護膜付きワークの製造方法。
【請求項3】
前記積層工程が、支持シートと前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムとを備える保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ワークの回路面とは反対側の面に積層する工程である、請求項1に記載の保護膜付きワークの製造方法。
【請求項4】
前記支持シートが基材を有し、前記基材の構成材料が、ポリエチレン、エチレン系共重合体、アイオノマー、及び、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種以上の樹脂である、請求項2又は3に記載の保護膜付きワークの製造方法。
【請求項5】
前記保護膜形成フィルムは、波長1300nmの近赤外線透過率が10%以下である、請求項2又は3に記載の保護膜付きワークの製造方法。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の保護膜付きワークの製造方法に、さらに、前記ワークをダイシングするダイシング工程を備える、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法。
【請求項7】
回路面を有するワークの回路面とは反対側の面に、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を備える保護膜付きワークの製造装置であって、
前記保護膜形成フィルム、及び、前記ワークをこの順に備える積層体を形成する積層手段と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記積層体の前記保護膜形成フィルムにエネルギー線照射して保護膜を形成する硬化手段と、を備える、保護膜付きワークの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜付きワークの製造方法、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、及び、保護膜付きワークの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや絶縁体ウエハ等のウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このようなウエハは、分割によりチップとされ、所謂フェースダウン方式により、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。
このようなウエハやチップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、ウエハの裏面に、保護膜を形成するための保護膜形成フィルムを貼付する。保護膜形成フィルムは、これを支持するための支持シート上に積層され、保護膜形成用複合シートの状態で使用されることもあるし、支持シート上に積層されずに使用されることもある。保護膜形成フィルムにレーザーマーキングしてから、保護膜形成層の保護性能を高めるために、必要に応じて熱又はエネルギー線による硬化を経て、ダイシングにより半導体ウエハをチップに分割し、ピックアップする。あるいは、保護膜形成フィルムを熱又はエネルギー線により硬化させて形成された保護膜にレーザーマーキングしてから、ダイシングにより半導体ウエハをチップに分割し、ピックアップする。次いで、ピックアップされた保護膜付き半導体チップは、マザーボードなどの回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続され、回路基板を加熱することにより保護膜付きチップ上の突状電極を融解させ(以下、リフロー工程という。)、突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続を強固にして、回路基板に実装される。
【0004】
保護膜形成フィルムには、硬化性を有さず、そのままの状態で保護膜として機能する非硬化性のものがある。非硬化性の保護膜形成フィルムを用いた場合には、硬化工程が不要であるため、簡略化された方法により、低コストで保護膜付きチップを製造できる。一方で、硬化性の保護膜形成フィルムを用いた場合には、その硬化物を保護膜とするため、ウエハの保護能が高いという利点を有する。そして、加熱により硬化する熱硬化性の保護膜形成フィルムは、その硬化時の加熱に比較的長時間を有するが、エネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムは、その硬化時のエネルギー線照射が短時間で済むという利点を有する。そこで、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムの開発が種々進められている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-031183号公報
【特許文献2】国際公開第2017/188197号
【特許文献3】国際公開第2019/082977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムにおいて、保護膜形成フィルムをエネルギー線硬化させたとき、エネルギー線硬化の際に保護膜形成フィルムが発熱し、ウエハ外周部の保護膜形成フィルムに皺が生じて、外観に問題が生じたり、その後の半導体装置の製造に支障が生じたりする場合があった。
【0007】
本発明は、回路面を有するワークとエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、エネルギー線硬化時に皺の発生が抑制される保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、並びに、保護膜付きワークの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 回路面を有するワークとエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、
前記ワークの回路面とは反対側の面に、前記保護膜形成フィルムを積層する積層工程と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程と、をこの順に備える、保護膜付きワークの製造方法。
[2] 前記積層工程の後であって前記硬化工程の前に、又は、前記硬化工程の後に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付工程を備える、[1]に記載の保護膜付きワークの製造方法。
[3] 前記積層工程が、支持シートと前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムとを備える保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ワークの回路面とは反対側の面に積層する工程である、[1]に記載の保護膜付きワークの製造方法。
[4] 前記支持シートが基材を有し、前記基材の構成材料が、ポリエチレン、エチレン系共重合体、アイオノマー、及び、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種以上の樹脂である、[2]又は[3]に記載の保護膜付きワークの製造方法。
[5] 前記保護膜形成フィルムは、波長1300nmの近赤外線透過率が10%以下である、[2]又は[3]に記載の保護膜付きワークの製造方法。
[6] [2]又は[3]に記載の保護膜付きワークの製造方法に、さらに、前記ワークをダイシングするダイシング工程を備える、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法。
[7] 回路面を有するワークの回路面とは反対側の面に、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を備える保護膜付きワークの製造装置であって、
前記保護膜形成フィルム、及び、前記ワークをこの順に備える積層体を形成する積層手段と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記積層体の前記保護膜形成フィルムにエネルギー線照射して保護膜を形成する硬化手段と、を備える、保護膜付きワークの製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路面を有するワークとエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、エネルギー線硬化時に皺の発生が抑制される保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法、並びに、保護膜付きワークの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図1B】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図1C】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図1D】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図1E】一実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図2A】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の他の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図2B】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の他の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図2C】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の他の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図2D】一実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の他の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図2E】一実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の他の一例における工程の一部を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図6】保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図7】保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<保護膜付きワークの製造方法>>
本発明の保護膜付きワークの製造方法は、回路面を有するワークとエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜とを備える保護膜付きワークの製造方法であって、前記ワークの回路面とは反対側の面に、前記保護膜形成フィルムを積層する積層工程と、前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程と、をこの順に備える。
【0012】
本発明では、保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射する際に、保護膜形成フィルムを冷却するため、エネルギー線照射による保護膜形成フィルムの発熱に起因した温度上昇を抑制することができる。そのため、エネルギー線硬化時に皺の発生が抑制される。
【0013】
例えば、従来のエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムでは、保護膜形成フィルムに対して剥離フィルム越しにエネルギー線照射することで、ウエハ外周部の保護膜形成フィルムに皺が発生して、ダイシングシートときれいに貼付できない問題が生じるおそれがあった。本発明の保護膜付きワークの製造方法においては、保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射する際に、保護膜形成フィルムを冷却するため、保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化時に、皺の発生を抑制できる。
【0014】
保護膜形成フィルムを冷却する方法としては、例えば、半導体ウエハ等のワークに冷却された熱伝導体を接触させる方法、ワークを風冷する方法、ワークに冷媒を接触させる方法、ワークを冷却された雰囲気に晒す方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、冷却する箇所及び冷却温度を制御し易いという観点から、熱伝導率が高い半導体ウエハ等のワークに冷却された熱伝導体を接触させる方法が好ましい。
【0015】
エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムに対する冷却処理は、保護膜形成フィルムに皺が発生しない様に、保護膜形成フィルムの温度を100℃以下に冷却処理することが好ましく、80℃以下に冷却処理することがより好ましく、70℃以下に冷却処理することがさらに好ましい。
【0016】
本明細書において、「ワーク」としては、例えば、回路面を有する半導体ウエハ等のウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。半導体装置パネルとは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1個又は2個以上の電子部品が封止樹脂によって封止された状態の半導体装置を用い、複数個のこれら半導体装置が、円形、矩形等の形状の領域内に、平面的に配置されて構成されたものが挙げられる。
本明細書において、「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
本明細書においては、ワークを個片化加工したものを「個片化ワーク加工物」と称し、個片化ワーク加工物もワークの概念に含まれる。例えば、ワークが半導体ウエハである場合、個片化ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
半導体ウエハ等のワークは、ダイシング等の手段により分割され、半導体チップ等の個片化ワーク加工物となる。本明細書においては、ワークの場合と同様に、回路が形成されている側の個片化ワーク加工物の面を「回路面」と称し、個片化ワーク加工物の回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面と個片化ワーク加工物の回路面には、いずれも電極が設けられている。電極としては、バンプ、ピラー等の突状電極が挙げられる。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、保護膜付き個片化ワーク加工物を用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きチップが、その回路面上に突状電極を有する場合において、突状電極が回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ウエハとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては半導体装置が挙げられる。
【0018】
保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性であって、さらに熱硬化性であってもよいし、熱硬化性でなくてもよい。保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性及び熱硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きいことが好ましい。
【0019】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、電子線等の放射線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
また、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0020】
以下、図面を参照しながら、ウエハの裏面に対して、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを貼付する場合の保護膜付きワークの製造方法(本明細書においては、「第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法」、又は「第2実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法」と称することがある)と、ウエハの裏面に対して、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付する場合の保護膜付きワークの製造方法(本明細書においては、「第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法」と称することがある)と、について、順次説明する。
【0021】
<第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法>
第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法は、本発明の保護膜付きワークの製造方法において、前記積層工程の後であって、前記硬化工程の前に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付工程を備える。
【0022】
第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の一例は、
図1A乃至
図1Dで示される。なお、以下で説明する実施形態において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
図1A乃至
図1Dは、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図3に示すエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13を用いた場合を例に挙げて、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法について説明する。
第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の前記積層工程においては、
図1Aに示すように、ウエハ9の裏面9bに、上述の保護膜形成フィルム13を積層することにより、保護膜形成フィルム13及びウエハ9が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている第1フィルム積層体601を作製する。第1フィルム積層体601において、ウエハ9の裏面9bには、保護膜形成フィルム13の第1面13aが貼付されている。保護膜形成フィルム13の第2面13bには、第2剥離フィルム152が設けられている。
ここでは、
図3に示す保護膜形成フィルム13から第1剥離フィルム151を取り除いて、保護膜形成フィルム13の第1面13aをウエハ9の裏面9bに貼付した場合について示しているが、
図3に示す保護膜形成フィルム13から第2剥離フィルム152を取り除いて、保護膜形成フィルム13の第2面13bをウエハ9の裏面9bに貼付してもよい。
【0023】
ウエハ9への保護膜形成フィルム13の積層は、公知の方法で行うことができる。例えば、保護膜形成フィルム13は、加熱しながらウエハ9へ積層してもよい。保護膜形成フィルム13を加熱する温度としては、50~90℃程度とすることができ、60~80℃の範囲にあることが好ましい。
【0024】
次いで、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法においては、第1フィルム積層体601中の保護膜形成フィルム13から第2剥離フィルム152を取り除く。そして、これにより新たに露出した、保護膜形成フィルム13の第2面13bに、
図1Bに示すように、ダイシングシート8の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)8aを貼付する。
ここに示すダイシングシート8は、基材81と、基材81の一方の面81a上に設けられた粘着剤層82と、を備えて構成されており、ダイシングシート8中の粘着剤層82が保護膜形成フィルム13に貼付される。粘着剤層82の保護膜形成フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)82aは、ダイシングシート8の第1面8aと同じである。
【0025】
ダイシングシート8は公知のものであってもよい。例えば、基材81は、後述の保護膜形成用複合シート中の基材と同様のものであってもよく、粘着剤層82は、後述の保護膜形成用複合シート中の粘着剤層と同様のものであってもよい。すなわち、ダイシングシート8は後述する支持シート10に相当する。これにより、支持シートに相当するダイシングシート8、保護膜形成フィルム13、及び、ワークに相当するウエハ9をこの順に備える積層体が形成される。
【0026】
ここでは、基材81と粘着剤層82を備えたダイシングシート8を用いた場合について示しているが、前記硬化工程においては、ダイシングシートとしてこれ以外のもの、例えば、基材のみからなるダイシングシート(すなわち、支持シート)を用いてもよい。
【0027】
次いで、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の前記硬化工程においては、
図1Cに示すように、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施しながら、第1フィルム積層体601中の保護膜形成フィルム13に対してエネルギー線照射して保護膜13’を形成する。これにより、
図1Dに示すように、保護膜形成フィルム13を硬化させて得られた保護膜13’及びウエハ9が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている第2フィルム積層体602を作製する。符号13a’は、保護膜13’のうち、保護膜形成フィルム13の第1面13aであった面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示している。符号13b’は、保護膜13’のうち、保護膜形成フィルム13の第2面13bであった面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0028】
前記硬化工程においては、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施しながら、第1フィルム積層体601の保護膜形成フィルム13側の外部から、保護膜形成フィルム13に対して、ダイシングシート8越しに(ダイシングシート8を透過させて)エネルギー線を照射することにより、保護膜13’を形成する。
【0029】
前記硬化工程においては、貫通孔31aを有する熱伝導体からなる冷却用治具31をウエハ9に接触させ、貫通孔31a内に冷媒を、充填、流通又は循環させることで、熱伝導体からなる冷却用治具31及びウエハ9を冷却し、保護膜形成フィルム13に対してウエハ9を介して冷却処理を施しながら、保護膜形成フィルム13にエネルギー線を照射して保護膜13’を形成する。半導体ウエハ等のワークは熱伝導率が良いので、熱伝導体からなる冷却用治具31をワークに接触させることで、ワークを介して保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施すことができる。
【0030】
冷却された熱伝導体は、直接又は間接にワークに接触させることができる。例えば、ワークの回路面にバックグラインドシートが貼付されている場合には、冷却された熱伝導体をバックグラインドシートに接触させて保護膜形成フィルムを冷却してもよい。熱伝導体からなる冷却用治具31の内部に充填又は循環させる冷媒は特に限定されないが、経済性の観点から、水が好ましい。
【0031】
前記硬化工程における、前記保護膜形成フィルムをエネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、60~320mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0032】
保護膜形成フィルムは、近赤外線遮蔽効果を優れるものとするために、波長1300nmの近赤外線透過率は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。
保護膜形成フィルムの波長1300nmの近赤外線透過率は0%以上であってもよく、0.001%以上であってもよい。
【0033】
しかしながら、波長1300nmの近赤外線透過率が10%以下の保護膜形成フィルムをエネルギー線硬化させると、保護膜形成フィルムが発熱しやすく、その後の半導体装置の製造に支障が生じやすい。本発明の保護膜付きワークの製造方法では、保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程を備えるので、保護膜形成フィルムの発熱による問題の発生を防止している。そのため、発熱しやすい、近赤外線遮蔽効果に優れる保護膜形成フィルムを用いることができる。保護膜の赤外線遮蔽能が厳密に要求される用途においては、保護膜形成フィルムの波長1300nmの近赤外線透過率は、0.1%以下がより好ましく、0.05%以下がさらに好ましく、0.03%以下が特に好ましい。本発明の保護膜付きワークの製造方法では、保護膜形成フィルムを冷却処理によって能動的に低温に保持するため、このような、エネルギー線照射によりきわめて発熱しやすい保護膜形成フィルムをも用いることができる。
【0034】
保護膜形成フィルムの波長1300nmの近赤外線透過率は、例えば、市販の紫外・可視・近赤外分光光度計を用いて測定することができる。
【0035】
前記保護膜形成フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)と、着色剤(g)を含有するものが挙げられる。
前記保護膜形成フィルムの含有成分については、後ほど詳細に説明する。
【0036】
保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0037】
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0038】
保護膜形成フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましい。保護膜形成フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、保護膜付き個片化ワーク加工物の厚さが過剰となることが避けられる。
ここで、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
本明細書における「厚さ」は、JIS K 7130:1999(ISO 4593:1993)で規定される手法により求めることができる。
【0039】
保護膜形成フィルム13のエネルギー線硬化の段階で、保護膜形成フィルム13にダイシングシート8が貼付されている場合には、保護膜形成フィルム13の発熱によりダイシングシート8がダメージを受け、収縮、拡張、湾曲等の変形が生じたり、厚みが変化したり、ダイシングシート8を構成する成分の分離が生じたりする懸念があった。また、保護膜形成フィルム13にエネルギー線照射することで、特にウエハ外周部のダイシングシート8に変形が発生して、ダイシング装置のポーラステーブルに真空チャックによりダイシングシート8を吸着させる際に、真空リークによる吸着エラーが発生するおそれがあった。
【0040】
第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法においては、保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施しながらエネルギー線を照射するので、エネルギー線硬化時に、ダイシングシート8のダメージや変形、厚みの変化を防ぎ、ダイシングシート8の成分の分離を防ぐことができる。また、ダイシングシート8の変形が抑制されることで、ダイシング装置のポーラステーブルに真空チャックによりダイシングシート8の第2面8bを吸着させる際の、真空のリークによる吸着エラーを防ぐことができる。
【0041】
図1Aに示す保護膜形成フィルム13に対して、第2剥離フィルム152越しに(第2剥離フィルム152を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよく、
図1Bに示す保護膜形成フィルム13に対して、ダイシングシート8越しに(ダイシングシート8を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよく、又は、
図1Dに示す保護膜13’に対して、ダイシングシート8越しに(ダイシングシート8を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよい。
【0042】
<第2実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法>
本発明の保護膜付きワークの製造方法は、前記積層工程の後であって前記硬化工程の後に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付工程を備えてもよい。
【0043】
前記硬化工程においても、保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施しながらエネルギー線を照射するので、エネルギー線硬化時に、保護膜形成フィルム13の皺の発生が抑制される。
【0044】
<第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法>
第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法は、本発明の保護膜付きワークの製造方法において、前記積層工程が、支持シートと前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムとを備える保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ワークの回路面とは反対側の面に積層する工程である。
【0045】
図2A乃至
図2Dは、第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図4に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合を例に挙げて、第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法について説明する。
第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の前記積層工程においては、初めに、
図2A及び
図2Bに示すように、ウエハ9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13を積層することにより、支持シート10、保護膜形成フィルム13及びウエハ9がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている第1複合シート積層体501を作製する。なお、
図4の保護膜形成用複合シート101は、保護膜形成フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えており、これらの詳細については後述する。この場合も、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の場合と同様に、ウエハ9の裏面9bには、保護膜形成フィルム13の第1面13aが貼付される。
【0046】
保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13のウエハ9への積層は、公知の方法で行うことができる。例えば、保護膜形成フィルム13は、加熱しながらウエハ9へ貼付してもよい。保護膜形成フィルム13を加熱する温度としては、50~100℃程度とすることができ、60~90℃の範囲にあることが好ましい。
【0047】
次いで、第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法の前記硬化工程においては、
図2Cに示すように、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13に対して冷却処理を施しながら、第1複合シート積層体501中の保護膜形成フィルム13に対してエネルギー線照射して保護膜13’を形成する。これにより、
図2Dに示すように、支持シート10、保護膜形成フィルム13を硬化させて得られた保護膜13’及びウエハ9がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている第2複合シート積層体502を作製する。
【0048】
前記硬化工程においては、第1複合シート積層体501の支持シート10側の外部から、保護膜形成フィルム13に対して、支持シート10越しに(支持シート10を透過させて)エネルギー線を照射することにより、保護膜13’を形成する。
【0049】
前記硬化工程は、第1フィルム積層体601に代えて第1複合シート積層体501を用いる点を除けば、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法における硬化工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0050】
第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法においても、第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法と同様、保護膜形成フィルム13に対してウエハ9を介して冷却処理を施しながら、保護膜形成フィルム13にエネルギー線を照射して保護膜13’を形成するので、支持シート10のダメージや変形、厚みの変化を防ぎ、支持シート10の成分の分離を防ぐことができる。また、支持シート10の変形が抑制されることで、ダイシング装置のポーラステーブルに真空チャックにより支持シート10の第2面10bを吸着させる際の、真空のリークによる吸着エラーを防ぐことができる。
【0051】
図2Bに示す保護膜形成フィルム13に対して、支持シート10越しに(支持シート10を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよく、又は、
図2Dに示す保護膜13’に対して、支持シート10越しに(支持シート10を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよい。
【0052】
前記硬化工程において、エネルギー線照射により保護膜形成フィルム13が発熱し、支持シート10が温められた場合、支持シート10のレーザーが照射される側の表面(支持シート10の保護膜形成フィルム13側とは反対側の表面)の形状が、レーザーの散乱が大きくなるように変化してしまい、レーザーマーキングによる刻印が不鮮明になる等の不具合が発生するおそれがある。本実施形態においては、保護膜形成フィルム13に冷却処理を施しながら硬化工程を実施することで、このようなレーザーマーキングの際の不具合を排除することができる。
【0053】
◇保護膜形成フィルム
保護膜形成フィルムは、回路面を有するワークの裏面に保護膜を設けて、ワークの裏面、又は、個片化ワーク加工物の裏面を保護するために用いるフィルムである。
【0054】
<保護膜形成用組成物>
保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(本明細書においては、単に「保護膜形成用組成物」と称することがある)を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に前記保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、18~28℃の温度等が挙げられる。
【0055】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0056】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性を有する保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0057】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)>
好ましい保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)と、前記着色剤(g)とを含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV)(本明細書においては、単に「組成物(IV)」と称することがある)等が挙げられる。
【0058】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)を含有することにより、良好な特性の保護膜を形成する。
保護膜形成フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0059】
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。本明細書において、「基」とは、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0060】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0061】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、ワークがウエハである場合に、ウエハやチップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0062】
・官能基を有するアクリル重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリルモノマーと、前記官能基を有しないアクリルモノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリルモノマー以外のモノマー(非アクリルモノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0063】
前記官能基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0064】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0065】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0066】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0067】
前記官能基を有するアクリルモノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0068】
前記アクリル重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
前記官能基を有しないアクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0070】
また、前記官能基を有しないアクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0071】
本明細書において、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
【0072】
前記アクリル重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
前記非アクリルモノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル重合体(a11)を構成する前記非アクリルモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0074】
前記アクリル重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリルモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との反応によって得られた前記アクリル樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に調節することが容易である量となる。
【0075】
前記アクリル樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル重合体(a11)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0076】
保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、アクリル樹脂(a1-1)の含有量の割合は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0077】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0078】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0079】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0080】
前記アクリル樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0081】
前記アクリル樹脂(a1-1)において、前記アクリル重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜形成フィルムの硬化物の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0082】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
【0083】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0084】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0086】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0087】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0088】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、1分子中に2個又は3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物が好ましい。
前記多官能アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(別名:トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート)、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート(1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート);
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート(1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート);
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー(1分子中に2個又は3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー)等が挙げられる。
【0089】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、組成物(IV)においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0090】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0091】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0092】
保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)として、前記化合物(a2)を含有することが好ましく、1分子中に2個又は3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物を含有することがより好ましく、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することがさらに好ましい。このようなエネルギー線硬化性成分(a)を含有する保護膜形成フィルムのエネルギー線照射による硬化物(保護膜)は、良好な保護能を有しつつ、柔軟性も有しており、特に優れた特性を有する。
【0093】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性成分(a)を含有する場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量は、後述するエネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)の含有量100質量部に対して、100~310質量部であることが好ましく、130~280質量部であることがより好ましく、130~200質量部であることがさらに好ましい。
【0094】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、エネルギー線硬化性成分(a)の含有割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、エネルギー線硬化性成分(a)含有量の割合)は、12~31質量%であることが好ましく、14~28質量%であることがより好ましく、16~25質量%であることがより好ましい。前記エネルギー線硬化性成分(a)の含有割合(すなわち、前記エネルギー線硬化性成分(a)含有量の割合)が、前記下限値以上であることにより、前記保護膜形成フィルムのエネルギー線硬化性がより良好になる。前記エネルギー線硬化性成分(a)の含有割合(すなわち、前記エネルギー線硬化性成分(a)含有量の割合)が、前記上限値以下であることにより、所望の保護膜形成フィルムを調製し易い。
【0095】
(着色剤(g))
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムは着色剤(g)として無機系顔料を含有することが好ましい。無機系顔料の含有量を調節することで、保護膜形成フィルムの近赤外線、特に波長1300nmの近赤外線の透過率を調節できる。
【0096】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられ、カーボンブラックが好ましい。
【0097】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムの無機系顔料の含有量は、波長1300nmの近赤外線の透過率が好適になるよう、適宜調節すればよい。例えば、組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(g)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、着色剤(g)の含有量の割合)は、0.05質量%以上13.0質量%以下であることが好ましく、2.0~10.0質量%であることがより好ましく、4.0~8.0質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(g)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(g)の過剰使用が抑制される。
【0098】
着色剤(g)としては、無機系顔料の他に、例えば、有機系顔料、有機系染料等、公知のものを含有してもよい。
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0099】
また、着色剤(g)の含有量を調節することにより、例えば、保護膜形成フィルム又は保護膜に対してレーザーマーキングを行った場合のレーザーマーク視認性を調節できる。また、保護膜の意匠性を向上させたり、ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。
【0100】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する着色剤(g)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
[エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)]
エネルギー線硬化性成分(a)が、エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)である場合には、前記保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)を含有することが好ましい。エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)は、保護膜形成フィルムに造膜性を付与する成分である。エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)としては、エネルギー線硬化性基を有しないアクリル樹脂(b1)(本明細書においては、単に「アクリル樹脂(b1)」と称することがある)が挙げられる。
【0102】
前記アクリル樹脂(b1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリルモノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリルモノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリルモノマーと、1種又は2種以上のアクリルモノマー以外のモノマー(非アクリルモノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0103】
アクリル樹脂(b1)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリンから誘導された構成単位を有することが好ましい。すなわち、アクリル樹脂(b1)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリンの重合体であることが好ましい。アクリル樹脂(b1)が、4-(メタ)アクリロイルモルホリンから誘導された構成単位を有することにより、ワークがウエハである場合に、ウエハ又はチップとの密着性に優れ、ウエハ又はチップからの保護膜の剥離の抑制効果が高くなる。
【0104】
前記アクリル樹脂(b1)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリンから誘導された構成単位と、それ以外の構成単位と、を有することが好ましい。すなわち、アクリル樹脂(b1)は、4-(メタ)アクリロイルモルホリンと、それ以外のモノマー又はオリゴマーと、の共重合体であることが好ましい。
【0105】
アクリル樹脂(b1)において、構成単位の全量に対する、4-(メタ)アクリロイルモルホリンから誘導された構成単位の量の割合は、10~30質量%であることが好ましく、13~30質量%であることがより好ましく、18~30質量%、及び23~30質量%のいずれかであってもよい。
【0106】
アクリル樹脂(b1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0107】
アクリル樹脂(b1)を構成する前記アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基を有さず、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;4-(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。ここで、「官能基」とは、グリシジル基、水酸基、置換アミノ基、カルボキシ基、アミノ基等の、他の基と反応可能な基(反応性官能基)を意味する。
【0108】
前記官能基と環状骨格を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0109】
前記官能基を有さず、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0110】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、前記官能基と環状骨格を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、前記官能基を有さず、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルと、のいずれか一方において、1個又は2個以上の水素原子が水酸基で置換された構造を有するものが挙げられる。好ましい前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0111】
アクリル樹脂(b1)を構成する前記非アクリルモノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0112】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたアクリル樹脂(b1)としては、例えば、アクリル樹脂(b1)中の官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記官能基としては、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、ワークがウエハである場合に、ウエハやチップの回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0113】
前記官能基を有するアクリル樹脂(b1)としては、例えば、少なくとも前記官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。
前記官能基を有するアクリル樹脂(b1)としては、より具体的には、例えば、前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルと、前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと、前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルと、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルと、前記アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルと、前記非アクリルモノマーにおいて1個又は2個以上の水素原子が前記官能基で置換された構造を有するモノマーと、からなる群より選択される1種又は2種以上のモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。
【0114】
前記アクリル樹脂(b1)において、これを構成する構成単位の全量に対する、官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、アクリル樹脂(b1)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0115】
アクリル樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)は、リフロー工程によるブリードアウトがより抑制される点から、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、40000以上であることがさらに好ましい。アクリル樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。
【0116】
組成物(IV)及び前記保護膜形成フィルムが含有する、アクリル樹脂(b1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合)は、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、例えば、12質量%以上、及び14質量%以上のいずれかであってもよい。
【0118】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合)の上限値は、特に限定されない。保護膜が、リフロー工程によるブリードアウトが抑制される特性と、それ以外の特性とが、バランスよく発揮される点で、前記上限値は、27質量%以下であってもよく、25質量%以下であることが好ましく、23質量%以下であることがより好ましく、21質量%以下であることがさらに好ましい。
【0119】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、アクリル樹脂(b1)の含有量の割合)は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
例えば、一実施形態において、前記割合は、8~27質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましく、12~23質量%、及び14~21質量%のいずれかであってもよい。
【0120】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性成分(a)及びアクリル樹脂(b1)を含有する場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量は、アクリル樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、70~310質量部であることが好ましく、80~280質量部であることがより好ましく、85~250質量部であることがより好ましい。
【0121】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、エネルギー線硬化性成分(a)及びアクリル樹脂(b1)の合計含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、エネルギー線硬化性成分(a)及びアクリル樹脂(b1)の合計含有量の割合)は、10~60質量%であることが好ましく、例えば、20~50質量%、及び30~45質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性成分(a)及びアクリル樹脂(b1)を用いたことによる効果がより高くなる。
【0122】
[他の成分]
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、エネルギー線硬化性成分(a)と、エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)と、着色剤(g)と、のいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分としては、例えば、光重合開始剤(c);無機充填材(d);カップリング剤(e);架橋剤(f);熱硬化性成分(h);汎用添加剤(z)等が挙げられる。
【0123】
(光重合開始剤(c))
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムは、光重合開始剤(c)を含有する場合、エネルギー線硬化性成分(a)の重合(硬化)反応を効率よく進められる。
【0124】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物;1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]1,2-オクタンジオン等のオキシムエステル化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0125】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する光重合開始剤(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等の、常温で液状の反応性が高い光重合開始剤は、単独で用いて保護膜形成フィルムを効率的に架橋させることが可能となり、ゲル分率を高めることができる。2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン等の反応性の低い光重合開始剤は、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等の反応性の高い光重合開始剤と併用することで、保護膜形成フィルムを効率的に架橋させることが可能となり、ゲル分率を高めることができる。
【0126】
光重合開始剤(c)を用いる場合、組成物(IV)において、光重合開始剤(c)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0127】
(無機充填材(d))
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが無機充填材(d)を含有する場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルム中の無機充填材(d)の量を調節することで、保護膜形成フィルムの硬化物(例えば、保護膜)の熱膨張係数を、より容易に調節できる。例えば、保護膜の熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、無機充填材(d)を含有する保護膜形成フィルムを用いることにより、保護膜形成フィルムの硬化物(例えば、保護膜)の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0128】
無機充填材(d)としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の無機材料の粉末;これら無機材料を球形化したビーズ;これら無機材料の表面改質品;これら無機材料の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材(d)は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0129】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する無機充填材(d)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0130】
組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、無機充填材(d)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、無機充填材(d)の含有量の割合)は、35~75質量%であることが好ましく、例えば、45~70質量%、及び50~65質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、保護膜形成フィルムの特性を損なうことなく、無機充填材(d)を用いたことによる効果がより高くなる。
【0131】
(カップリング剤(e))
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するカップリング剤(e)を含有する場合、保護膜形成フィルムの被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、保護膜形成フィルムの硬化物(例えば、保護膜)は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0132】
カップリング剤(e)は、エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)、エネルギー線硬化性成分(a)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0133】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有するカップリング剤(e)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0134】
カップリング剤(e)を用いる場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムにおいて、カップリング剤(e)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)の合計含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、無機充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0135】
(架橋剤(f))
エネルギー線硬化性基を有しない樹脂(b)がアクリル樹脂(b1)であり、アクリル樹脂(b1)として、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムは、架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)は、アクリル樹脂(b1)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、保護膜形成フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0136】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0137】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0138】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0139】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0140】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、アクリル樹脂(b1)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、アクリル樹脂(b1)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)とアクリル樹脂(b1)との反応によって、保護膜形成フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0141】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する架橋剤(f)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0142】
架橋剤(f)を用いる場合、組成物(IV)において、架橋剤(f)の含有量は、アクリル樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
【0143】
(熱硬化性成分(h))
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性成分(a)及び熱硬化性成分(h)を含有する場合、保護膜形成フィルムは、その加熱によって被着体に対する接着力が向上し、この保護膜形成フィルムの硬化物(例えば、保護膜)の強度も向上する。
【0144】
熱硬化性成分(h)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0145】
前記エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)からなる。
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0146】
・エポキシ樹脂(h1)
エポキシ樹脂(h1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0147】
エポキシ樹脂(h1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き個片化ワーク加工物を用いたデバイスの信頼性が向上する。
【0148】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。 不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0149】
エポキシ樹脂(h1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(h1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0150】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有するエポキシ樹脂(h1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0151】
・熱硬化剤(h2)
熱硬化剤(h2)は、エポキシ樹脂(h1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(h2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0152】
熱硬化剤(h2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0153】
熱硬化剤(h2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(h2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換された構造を有する化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した構造を有する化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)における前記不飽和炭化水素基として、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0154】
熱硬化剤(h2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(h2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0155】
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0156】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する熱硬化剤(h2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0157】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムにおいて、熱硬化剤(h2)の含有量は、エポキシ樹脂(h1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましい。熱硬化剤(h2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(h2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、保護膜形成フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜付き個片化ワーク加工物を用いて得られたデバイスの信頼性がより向上する。
【0158】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムにおいて、熱硬化性成分(h)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)の合計含有量)は、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、10~70質量部であることが好ましい。
【0159】
(汎用添加剤(z))
汎用添加剤(z)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。好ましい汎用添加剤(z)としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0160】
組成物(IV)及び保護膜形成フィルムが含有する汎用添加剤(z)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0161】
汎用添加剤(z)を用いる場合、組成物(IV)及び保護膜形成フィルムの汎用添加剤(z)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
例えば、汎用添加剤(z)が紫外線吸収剤である場合には、組成物(IV)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、汎用添加剤(z)(紫外線吸収剤)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、汎用添加剤(z)(紫外線吸収剤)の含有量の割合)は、0.1~5質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、汎用添加剤(z)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、汎用添加剤(z)の過剰使用が抑制される。
【0162】
[溶媒]
組成物(IV)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(IV)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(IV)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0163】
組成物(IV)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(IV)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0164】
組成物(IV)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0165】
<<保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(IV)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0166】
図3は、保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0167】
ここに示す保護膜形成フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成フィルム13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
【0168】
エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13は、上述の保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0169】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。 第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、保護膜形成フィルム13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0170】
図3に示すエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、ワーク(図示略)の裏面への貼付面となる。そして、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた露出面が、支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
【0171】
図3においては、剥離フィルムが保護膜形成フィルム13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、保護膜形成フィルム13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0172】
保護膜形成フィルムは、後述する支持シートと併用せずに、ワークの裏面に貼付できる。その場合には、保護膜形成フィルムのワークへの貼付面とは反対側の面には、剥離フィルムが設けられていてもよく、この剥離フィルムは、適切なタイミングで取り除けばよい。
【0173】
一方、保護膜形成フィルムは、後述する支持シートと併用することで、保護膜の形成とダイシングを共に行うことができる、保護膜形成用複合シートを構成可能である。以下、このような保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0174】
◇保護膜形成用複合シート
保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備える。
【0175】
本明細書においては、保護膜形成フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成フィルムの硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0176】
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0177】
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0178】
支持シートは、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する本実施形態においては、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0179】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成フィルムとの間に配置される。
【0180】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成フィルムとの間の、密着性及び剥離性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
【0181】
保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0182】
図4は、保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【0183】
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられたエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0184】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成フィルム13が積層され、保護膜形成フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
【0185】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、
図1に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0186】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートと、前記シートの両面に設けられた、接着剤成分を含有する層と、を備えた複数層構造を有していてもよい。
【0187】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成フィルム13の第1面13aにワークの裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0188】
図5は、保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、
図4に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0189】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(
図5における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成フィルム23が積層されていない領域に、保護膜形成フィルム23をその幅方向の外側から非接触で取り囲むように、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bには、支持シート10が設けられている。
【0190】
図6は、保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図5に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
【0191】
図7は、保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、
図4に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0192】
支持シート20は、基材11のみからなる。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及びエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の保護膜形成フィルム13側の面(第1面)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
基材11は、少なくともその第1面11aにおいて、粘着性を有する。
【0193】
保護膜形成用複合シートは、
図4~
図7に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図4~
図7に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0194】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0195】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0196】
前記基材の構成材料は、ポリエチレン、エチレン系共重合体、アイオノマー、及び、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。これらの構成材料は、柔軟性があり、ダイシング工程時のエキスパンド適性や保護膜付き個片化ワーク加工物のピックアップ性等の観点から支持シート用基材として適している。しかしながら、これらの樹脂は耐熱性に劣る。本発明の保護膜付きワークの製造方法では、保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射するので、保護膜形成フィルムの発熱に起因した基材の温度上昇が抑制されるため、耐熱性に劣るこれらの樹脂のダメージを低減することができ、好適に用いることができる。基材の構成材料がこれらの樹脂である場合には、保護膜形成フィルムの温度を80℃以下に冷却することが好ましい。
【0197】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0198】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0199】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、保護膜形成用複合シートの可撓性と、ワークへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0200】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0201】
基材は、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する本実施形態においては、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0202】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成フィルム、又は前記他の層)との接着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0203】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0204】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0205】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0206】
本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0207】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0208】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0209】
粘着剤層は、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する本実施形態においては、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0210】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよいが、粘着剤層が、非エネルギー線硬化性であると、後述する保護膜付き個片化ワーク加工物のピックアップの際に、この保護膜付き個片化ワーク加工物をピックアップできる性質が安定する。また、粘着剤層が、非エネルギー線硬化性である場合、光安定性が高く、貯蔵安定性に優れる。
【0211】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0212】
粘着剤組成物の塗工及び乾燥は、例えば、上述の保護膜形成用組成物の塗工及び乾燥の場合と同じ方法で行うことができる。
【0213】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。また、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0214】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0215】
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に粘着剤層以外の他の層を積層する場合にも適用できる。
【0216】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、保護膜形成フィルムに代表される第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、粘着剤層に代表される第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に保護膜形成フィルム以外の層(フィルム)を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。この方法は、第2層上に新たな層である第3層を積層する場合や、同様に第4層以降の第n層(nは2以上の整数)を第n-1層に積層する場合に用いることができ、第n層が保護膜形成用複合シートの最表層である場合には、保護膜形成用複合シートは、通常、剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。なお、
図7に示される保護膜形成用複合シート104のように、粘着剤層を有しない支持シート20を用いる場合、第1層が基材であってもよい。
【0217】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0218】
前記保護膜形成用複合シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であることが好ましい。
【0219】
<<保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法>>
本発明の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、上述の保護膜付きワークの製造方法に、さらに、前記ワークをダイシングするダイシング工程を備える。
【0220】
<第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法>
第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、上述の第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法で得られた保護膜付きワークをダイシングするダイシング工程をさらに備える。個片化ワーク加工物の製造方法においては、ワークとしてウエハの例を説明する。
【0221】
第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の一例は、
図1A乃至
図1Eで示される。
図1A乃至
図1Dについては上述の第1実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法で説明した通りである。
第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の前記ダイシング工程においては、
図1D及び
図1Eで示すように、第2フィルム積層体602の保護膜13’側にダイシングシート8が設けられている状態で、第2フィルム積層体602中のウエハ9を分割し、保護膜13’を切断する。ウエハ9は、分割により個片化され、複数個の個片化ワーク加工物90となる。
【0222】
ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断は、公知の方法で行えばよい。例えば、ブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断を、連続的に行うことができる。
保護膜13’は、その切断方法によらず、個片化ワーク加工物90の外周に沿って切断される。
【0223】
このように、ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断することにより、個片化ワーク加工物90と、個片化ワーク加工物90の裏面90bに設けられた切断後の保護膜(本明細書においては、単に「保護膜」と称することがある)130’と、を備えた、複数個の保護膜付き個片化ワーク加工物901が得られる。なお、ウエハ9を切断することにより得られる個片化ワーク加工物90は、チップである。符号130b’は、切断後の保護膜130’のうち、保護膜13’の第2面13b’であった面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0224】
第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の前記ダイシング工程においては、以上により、これら複数個の保護膜付き個片化ワーク加工物901がダイシングシート8上で固定されて構成されている第3フィルム積層体603を作製する。
【0225】
<第2実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法>
第2実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、前記ワークの回路面とは反対側の面に、前記保護膜形成フィルムを積層する積層工程と、前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程と、前記保護膜に支持シートを貼付する貼付工程と、さらに、前記ワークをダイシングするダイシング工程をこの順に備える。
第2実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法において、前記積層工程、前記硬化工程及び前記貼付工程は、上述の第2実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法と同じである。第2実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法において、前記ダイシング工程は、上述の第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法におけるダイシング工程と同じである。
【0226】
<第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法>
第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、上述の第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法で得られた保護膜付きワークをダイシングするダイシング工程をさらに備える。
【0227】
第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の一例は、
図2A乃至
図2Eで示される。
図2A乃至
図2Dについては上述の第3実施形態に係る保護膜付きワークの製造方法で説明した通りである。
第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の前記ダイシング工程においては、
図2D及び
図2Eで示すように、第2複合シート積層体502中のウエハ9を分割し、保護膜13’を切断する。ウエハ9は、分割により個片化され、複数個の個片化ワーク加工物90となる。
【0228】
前記ダイシング工程は、第2フィルム積層体602と、ダイシングシート8と、の積層物に代えて、第2複合シート積層体502を用いる点を除けば、第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法におけるダイシング工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0229】
このように、ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断することにより、個片化ワーク加工物90と、個片化ワーク加工物90の裏面90bに設けられた切断後の保護膜130’と、を備えた、複数個の保護膜付き個片化ワーク加工物901が得られる。
第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法で得られるこれらの保護膜付き個片化ワーク加工物901は、第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法で得られる保護膜付き個片化ワーク加工物901と同じである。
【0230】
第3実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法の前記ダイシング工程により、これら複数個の保護膜付き個片化ワーク加工物901が支持シート10上で固定されて構成されている第3複合シート積層体503を作製する。
第3複合シート積層体503は、第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法でのダイシング工程で得られた第3フィルム積層体603と同様の構成を有する。ダイシングシート8が支持シート10と同じである場合には、第3複合シート積層体503は、第3フィルム積層体603と同じである。
【0231】
上述の製造方法により保護膜付き個片化ワーク加工物を得た後は、通常、公知の方法で第3フィルム積層体603中の保護膜付き個片化ワーク加工物901をダイシングシート8から引き離すことによりピックアップする。保護膜付き個片化ワーク加工物901のピックアップに先立って、ダイシングシート8を伸ばし広げるエキスパンド工程を実施してもよい。エキスパンド工程の実施により、得られた保護膜付き個片化ワーク加工物901同士の間隔が広がり、保護膜付き個片化ワーク加工物901のピックアップを容易とすることができる。
【0232】
<第4実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法>
第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、保護膜付きワークをダイシングするダイシング工程を備えていたが、第1実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法に代えて、保護膜形成フィルム13が未硬化の状態の第1フィルム積層体601中のワークをダイシングするダイシング工程を実施し、その後に硬化工程を行うことでも、保護膜付き個片化ワーク加工物901を製造することができる。
第4実施形態に係る保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法は、前記ワークの回路面とは反対側の面に、前記保護膜形成フィルムを積層する積層工程と、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付工程と、前記ワークをダイシングするダイシング工程と、前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記保護膜形成フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する硬化工程と、をこの順に備える。
すなわち、本実施形態の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法におけるワークは、個片化ワーク加工物であり、本実施形態の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造方法においては、保護膜付きワークとして、保護膜付き個片化ワーク加工物が得られる。
【0233】
◇基板装置の製造方法
保護膜付き個片化ワーク加工物が回路面上に突状電極を有する保護膜付きチップである場合には、保護膜付きチップをダイシングシートからピックアップした後、フェースダウン方式の基板装置の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
【0234】
例えば、ハロゲンヒーターを搭載したリフロー炉を用いて、前記保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付き個片化ワーク加工物が搭載された回路基板を加熱することにより保護膜付き個片化ワーク加工物上の突状電極を融解させるリフロー工程を経て、突状電極と、回路基板上の接続パッドと、の電気的な接続を強固にする、基板装置の製造方法が挙げられる。
【0235】
<<保護膜付きワークの製造装置>>
本発明の保護膜付きワークの製造装置は、以下の側面を有する。
<101> 回路面を有するワークの回路面とは反対側の面に、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を備える保護膜付きワークの製造装置であって、
前記保護膜形成フィルム、及び、前記ワークをこの順に備える積層体を形成する積層手段と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記積層体の前記保護膜形成フィルムにエネルギー線照射して保護膜を形成する硬化手段と、を備える、保護膜付きワークの製造装置。
<102> 前記積層手段の後であって、前記硬化手段の前に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付手段を備える、<101>に記載の保護膜付きワークの製造装置。
<103> 前記積層手段が、支持シートと前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムとを備える保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ワークの回路面とは反対側の面に積層する手段である、<101>に記載の保護膜付きワークの製造装置。
【0236】
<<保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置>>
本発明の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置は、以下の側面を有する。
<201> 回路面を有するワークの回路面とは反対側の面に、エネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を備える保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置であって、
前記保護膜形成フィルム、及び、前記ワークをこの順に備える積層体を形成する積層手段と、
前記保護膜形成フィルムに対して冷却処理を施しながら、前記積層体の前記保護膜形成フィルムに対して、エネルギー線照射して保護膜を形成する硬化手段と、さらに、前記ワークをダイシングするダイシング手段を備える、保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置。
<202> 前記積層手段の後であって、前記硬化手段の前に、さらに、前記保護膜形成フィルムに支持シートを貼付する貼付手段を備える、<201>に記載の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置。
<203> 前記積層手段が、支持シートと前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムとを備える保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成フィルムを、前記ワークの回路面とは反対側の面に積層する手段である、<201>に記載の保護膜付き個片化ワーク加工物の製造装置。
【実施例0237】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0238】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
ACrMO:4-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸2-エチルへキシル
MMA:メタクリル酸メチル
【0239】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[エネルギー線硬化性成分(a)]
(a)-1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A-9300-1CL」、3官能紫外線硬化性化合物)
(a)-2:ウレタンアクリレートオリゴマー(KJケミカルズ社製「Quick cure 8100EA70」)
【0240】
[エネルギー線硬化性基を有しないアクリル樹脂(b1)]
(b)-1:BA(33質量部)、MA(27質量部)、ACrMO(25質量部)及びHEA(15質量部)の共重合体であるアクリル樹脂(重量平均分子量(700000)、ガラス転移温度2℃)
【0241】
[光重合開始剤(c)]
(c)-1:1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]1,2-オクタンジオン(商品名 IRGACURE(登録商標) OXE01、BASFジャパン製)
【0242】
[無機充填材(d)]
(d)-1:球状シリカ(平均粒子径500nm、商品名「SC2050-MA」株式会社アドマテックス製)
【0243】
[着色剤(g)]
(g)-1:無機系黒色顔料(三菱カーボンブラック株式会社製、♯20B、平均粒子径50nm)
【0244】
<保護膜形成用組成物(X)-1の製造>
エネルギー線硬化性成分(a)-1(12.2質量部)、エネルギー線硬化性成分(a)-2(10.0質量部)、エネルギー線硬化性基を有しないアクリル樹脂(b1)-1(14.4質量部)、光重合開始剤(c)-1(1.0質量部)、無機充填材(d)-1(57.4質量部)及び着色剤(g)-1(5.0質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が55質量%であるエネルギー線硬化性の保護膜形成用組成物(X)-1を得た。なお、ここに示す前記溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0245】
<保護膜形成フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(IV)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmのエネルギー線硬化性の保護膜形成フィルムを製造した。
【0246】
さらに、得られた保護膜形成フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを得た。
【0247】
<保護膜形成フィルムの透過率測定>
第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムを剥離して、保護膜形成フィルムの光透過率を、紫外・可視・近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3600)を用いて、下記の透過率測定条件で測定した。波長1300nmの透過率は0.02%であった。
【0248】
(透過率測定条件)
波長範囲:190~2000nm
スキャンスピード:高速
スリット幅:8.0mm
検出器ユニット:直接受光
【0249】
<剥離フィルム付き支持シートの製造>
重合体成分100質量部(固形分)及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート(登録商標)D110N」)40質量部(固形分)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させ、固形分濃度を25質量%に調節して、粘着剤組成物を得た。
なお、前記重合体成分は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)60質量部と、メタクリル酸メチルメチル(MMA)30質量部と、2-ヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)10質量部とを共重合させて得られた、重量平均分子量400000、ガラス転移温度-31℃のアクリル系共重合体である。
【0250】
剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)の剥離処理面に、前記粘着剤組成物をナイフコーターで塗工し、110℃で2分乾燥させて、粘着剤層(乾燥後厚さ5μm)を形成し、露出面(剥離フィルムを備えている側とは反対側の表面)に、別途、基材であるポリプロピレンフィルム(厚さ80μm、グンゼ社製、ツヤ面の表面粗さ0.1μm、マット面の表面粗さ0.3μm)のツヤ面を貼り合わせて、基材/粘着剤層/剥離フィルムの構成の剥離フィルム付き支持シートを得た。
【0251】
[製造例1]
<保護膜形成用複合シートの作製>
上記で得られた剥離フィルム付き支持シートから剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを作製した。
【0252】
[実施例1]
<保護膜付きワークの製造>
製造例1の保護膜形成用複合シートから第2剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用複合シートに、6インチウエハとリングフレームをマウントした。リングフレームは、環状の両面テープにより保護膜形成フィルムに貼り付けた。20分静置後に、
図2Cに示したものと同様の構成を有する冷媒循環用配管を内蔵したステンレス製の冷却用治具に、6インチウエハを接触させ、20℃の冷媒を配管内に循環させることにより、ウエハを介して保護膜形成フィルムを冷却した。
【0253】
次いで、この積層体に対して、支持シート側から、照度:220mW/cm2、光量:500mJ/cm2でUV照射し、保護膜付きワークを製造した。
【0254】
(皺発生の評価)
次に、ウエハから冷却用治具を外した後、ダイシング装置(ディスコ社製、DFD6362)のポーラステーブルに吸着させた。このとき、保護膜形成用複合シート(保護膜形成フィルム及び基材)に皺は発生せず、ダイシング装置のポーラステーブルに正常に吸着できた。
【0255】
[比較例1]
<保護膜付きワークの製造>
製造例1の保護膜形成用複合シートから第2剥離フィルムを取り除いた。粘着剤層が露出した保護膜形成用複合シートに、6インチウエハとリングフレームをマウントし、20分静置後に、この積層体に対して、支持シート側から、照度:220mW/cm2、光量:500mJ/cm2でUV照射し、保護膜付きワークを製造した。
【0256】
(皺発生の評価)
次に、ダイシング装置(ディスコ社製、DFD6362)のポーラステーブルに吸着させた。このとき、6インチウエハの周囲の保護膜形成用複合シート(保護膜形成フィルム及び基材)に皺が発生して、ダイシングソーのポーラステーブルに吸着できなかった。
【0257】
上記結果から明らかなように、実施例1の保護膜付きワークの製造では、硬化工程において、保護膜形成フィルムに冷却処理を施すことにより、保護膜形成用複合シートをダイシング装置のポーラステーブルに正常に吸着できた。また、近赤外線透過率が0.02%の近赤外線の遮蔽性がきわめて優れる保護膜形成フィルムを用いているにも拘わらず、紫外線照射によるエネルギー線硬化時の皺の発生を抑制することができた。
【0258】
比較例1の保護膜付きワークの製造では、紫外線を照射すると発熱により、6インチウエハの周囲の保護膜形成用複合シートに皺が発生して、ダイシングソーのポーラステーブルに吸着できなかった。