(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118095
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】マスコンクリート温度制御システム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024294
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】有賀 洋一郎
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA05
2E172EA13
(57)【要約】
【課題】マスコンクリートの温度制御において従来工法における問題を解消する。
【解決手段】マスコンクリートCの外縁側部分に位置する温度制御管11の温度は、マスコンクリートCの中心部分Cmに位置する複数の温度制御管11の温度よりも高くなるよう制御される。これにより、マスコンクリートCの外縁側部分においては温度制御管11による加熱効果が発揮されて温度が上昇する一方、マスコンクリートCの中心部分Cmにおいては温度制御管11による冷却効果が発揮されて温度が下降する。このようにしてマスコンクリートCの固化時における内外温度差が抑制され、温度勾配の均一化を図ることが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスコンクリートに鉛直方向に挿入される複数の中空の管部材と、
各々の前記管部材の中空にそれぞれ挿入される複数の温度制御管と、
前記マスコンクリートの外縁側部分に位置する前記温度制御管の温度を、前記マスコンクリートにおいて前記外縁側部分よりも中心側に相当する中心部分に位置する前記温度制御管の温度よりも高くなるように制御する制御装置と
を備えるマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項2】
前記温度制御管は軸方向で所定の長さに複数に区分された中空空間を備え、
前記制御装置は、
前記マスコンクリートの前記外縁側部分に位置する前記中空空間に対して、該中空空間内を流動する前記外縁側部分のマスコンクリートの温度よりも高い温度の液体を供給し、
前記マスコンクリートの前記中心部分に位置する前記中空空間に対して、該中空空間内を流動する前記中心部分のマスコンクリートの温度よりも低い温度の液体を供給する
請求項1記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項3】
前記温度制御管は、軸方向に所定の長さで複数に区分されて液体が充填されている中空空間と、当該中空空間内に設けられた発熱体とを有し、
前記制御装置は、前記発熱体の発熱温度を制御する
請求項1記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項4】
前記液体の温度は、温度応力解析の結果により決定される
請求項2又は3に記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記マスコンクリートを所定の立体形状である複数のメッシュに区分し、
前記液体の温度は、前記メッシュ単位の温度応力解析の結果により決定される
請求項4記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御と、前記中心部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御とを同時に行う
請求項2又は3に記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御と、前記中心部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御とをそれぞれ異なるタイミングと期間で行う
請求項2又は3に記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項8】
前記外縁側部分に位置する前記中空空間と前記中心部分に位置する前記中空空間との間に断熱材を備える
請求項2又は3のいずれか1項に記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項9】
前記温度制御管と前記管部材との間に熱伝導材を備え、さらに、前記断熱材は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間と前記中心部分に位置する前記中空空間の区分に合わせて前記温度制御管と前記管部材との間に設けられている
請求項8記載のマスコンクリートの温度制御システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の温度制御システムを用いて、マスコンクリートの温度を制御する温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設されたマスコンクリートの温度を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
打設されたマスコンクリートが硬化する過程において水とセメントが反応して水和熱が発生することで内外温度差が生じ、その温度差によりマスコンクリートにひび割れが発生することが知られている。そこで、打設されたマスコンクリート表面を保温材で覆って内外温度差が所定の温度差(例えば15~20℃)になるまで存置することでひび割れの発生リスクを低減する手法が一般に知られている。また、特許文献1には、打設されたコンクリートに挿入されたパイプ群に冷水を通水することでコンクリートの水和熱を抑制し、ひび割れを抑制するパイプ群クーリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法では、マスコンクリートに対する保温機能は保温材や型枠の熱伝導率に依存するため、保温機能の調整を積極的に行うことが難しいという問題がある。また、マスコンクリートから保温材を取り外す際の急激な温度勾配(サーマルショック)によってひび割れのリスクが増大するという問題もある。そこで、本発明は、マスコンクリートの水和反応による温度勾配を有効に調整するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のマスコンクリート温度制御システムは、マスコンクリートに鉛直方向に挿入される複数の中空の管部材と、各々の前記管部材の中空にそれぞれ挿入される複数の温度制御管と、前記マスコンクリートの外縁側部分に位置する前記温度制御管の温度を、前記マスコンクリートにおいて前記外縁側部分よりも中心側に相当する中心部分に位置する前記温度制御管の温度よりも高くなるように制御する制御装置とを備えるマスコンクリートの温度制御システムを提供する。
【0006】
前記温度制御管は軸方向で所定の長さに複数に区分された中空空間を備え、前記制御装置は、前記マスコンクリートの前記外縁側部分に位置する前記中空空間に対して、該中空空間内を流動する前記外縁側部分のマスコンクリートの温度よりも高い温度の液体を供給し、前記マスコンクリートの前記中心部分に位置する前記中空空間に対して、該中空空間内を流動する前記中心部分のマスコンクリートの温度よりも低い温度の液体を供給するようにしてもよい。
【0007】
前記温度制御管は、軸方向に所定の長さで複数に区分されて液体が充填されている中空空間と、前記外縁側部分に位置する当該中空空間内に設けられた発熱体とを有し、前記制御装置は、前記発熱体の発熱温度を制御するようにしてもよい。
【0008】
前記液体の温度は、温度応力解析の結果により決定されるようにしてもよい。
【0009】
前記制御装置は、前記マスコンクリートを所定の立体形状である複数のメッシュに区分し、前記液体の温度は、前記メッシュ単位の温度応力解析の結果により決定されるようにしてもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御と、前記中心部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御とを同時に行うようにしてもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御と、前記中心部分に位置する前記中空空間の液体の温度制御とをそれぞれ異なるタイミングと期間で行うようにしてもよい。
【0012】
前記外縁側部分に位置する前記中空空間と前記中心部分に位置する前記中空空間との間に断熱材を備えるようにしてもよい。
【0013】
前記温度制御管と前記管部材との間に熱伝導材を備え、さらに、前記断熱材は、前記外縁側部分に位置する前記中空空間と前記中心部分に位置する前記中空空間の区分に合わせて前記温度制御管と前記管部材との間に設けられているようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の温度制御方法は上記の温度制御システムを用いて、マスコンクリートの温度を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マスコンクリートの外縁側部分に位置する中空空間内の液体の温度を、マスコンクリートにおいて中心部分に位置する中空空間内の液体の温度よりも高くなるように温度制御することができ、一つの温度制御管においても外縁側部分と中心部分に応じて軸方向の異なる区分ごとに適切な温度制御を行うことができるので、マスコンクリートの温度制御において有効な温度制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスコンクリート温度制御システムの構成の一例を示す図。
【
図2】同実施形態に係るマスコンクリート温度制御システムが備えるシース管及び温度制御管の配置を例示する平面図。
【
図4】同実施形態に係るシース管及び温度制御管の構造を示す縦断面図。
【
図5】同実施形態に係る温度制御管による温度制御の仕組みを説明する縦断面図。
【
図6】変形例における温度制御管による温度制御の仕組みを説明する縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマスコンクリート温度制御システムの構成の一例を示す図である。マスコンクリート温度制御システムは、マスコンクリートCの表面側から鉛直方向下方に挿入される複数の中空の管部材であるシース管10と、各シース管10の中空にそれぞれ挿入された複数の温度制御管11と、各温度制御管11にパイプ群40を介して接続された液体供給装置20と、液体供給装置20と電気的に接続された制御装置であるコントローラ30とを備える。各シース管10及びそのシース管10に挿入された温度制御管11は、
図2に例示するように、マスコンクリートCの型枠内において互いに所定の間隔(間隔は事前の温度解析により決定するが、例えば50cm~100cm間隔)を空けて配置される。
【0018】
図2,3に記載するように、シース管10と温度制御管11は、マスコンクリートCの外縁側部分に鉛直方向に挿入されるものと、マスコンクリートCの平面視中央部分において外縁側部分から中心部分Cmを貫通して挿入されるシース管10-1と温度制御管11-1が配置される。
図2,3において、中心部分CmはマスコンクリートC内の斜線が施された部位であり、外縁側部分は中心部分Cm以外の部位である。マスコンクリートCにおいて、外縁側部分と中心部分Cmはその温度によって区分される。具体的には、外縁側部分は中心部分Cmの温度に対して20℃以上発熱温度が低い部位である。
【0019】
液体供給装置20は、温度制御体21及びポンプ22を内蔵しており、温度制御体21により任意の温度の液体(例えば冷水と温水)を温度制御管11内に供給する。温度制御管11、パイプ群40及び液体供給装置20は、これらの間で液体が循環するような構造及び配置となっている。つまり、液体供給装置20からパイプ群40経由で温度制御管11に供給された所定温度の液体は、温度制御管11からパイプ群40経由で液体供給装置20に戻ってきて再び所定温度に調整されてパイプ群40経由で温度制御管11に送り出される、というサイクルが繰り返される。コントローラ30は、液体供給装置20の動作、例えば温度制御体21の発熱強度及び/又は発熱時間や、冷却強度及び/又は冷却時間や、ポンプ22による温度制御管11への液体の供給速度等を制御する。
【0020】
打設されたマスコンクリートにおける外縁側部分は、中心部分Cmに比べて外気温や風等により発熱温度が低くなり、これにより、ひび割れの原因となる内外温度差が生じる。そこで、コントローラ30は、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する温度制御管11の温度を、マスコンクリートCにおいて外縁側部分よりも中心側に相当する中心部分Cmに位置する温度制御管11の温度よりも高くなるように制御することで、マスコンクリートCの内外温度差を低減する。
【0021】
図4は、温度制御管11の構造を示す縦断面図である。温度制御管11は、軸方向で所定の長さで複数に区分された中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nを有する。また、温度制御管11は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い素材で形成された中空管であることが望ましいが、熱伝達率が高い銅やクロム銅鋳物による中空管を用いてもよい。各中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nに対しては液体供給装置20からパイプ群40を介して任意の異なる温度の液体が供給される。このため、各中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nに供給される異なる温度の液体が混濁しないように、各中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nはパイプ群40を介して個別に液体供給装置20に接続されている。なお、
図4に示した矢印は液体の移動方向を例示している。
【0022】
温度制御管11-1における中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nは、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する中空空間(例えば中空空間12-1、12-n)と、中心部分Cmに位置する中空空間(例えば中空空間12-2…12-n-1)とに分けられる。コントローラ30は、液体供給装置20を制御して、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する中空空間(中空空間12-1、12-n)に対して、その中空空間内を流動する外縁側部分のマスコンクリートCの温度よりも高い温度の液体を供給する。また、コントローラ30は、液体供給装置20を制御して、マスコンクリートCの中心部分Cmに位置する温度制御管11-1の中空空間(中空空間12-2…12-n-1)に対して、その中空空間内を流動する中心部分CmのマスコンクリートCの温度よりも低い温度の液体を供給する。なお、中心部分Cmを貫通するシース管10-1内の温度制御管11-1,・・・に関しては、マスコンクリートCの表層に近い位置の中空空間(
図4においては、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する中空空間として中空空間12-1、12-n)と、中心部分に位置する中空空間(
図4における12-2…12-n-1)に区分したが、これはあくまで例示である。
【0023】
このように、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する温度制御管11の中空空間12-1~12-n及びマスコンクリートCの中心部分Cmを貫通する温度制御管11-1の外縁側部分に位置する中空空間12-1、12-nと、マスコンクリートCの中心部分Cmを貫通する温度制御管11-1のマスコンクリートCの中心部分Cmに位置する中空空間12-2、12-n-1とでは、液体供給装置20から供給される液体の温度が異なる。そこで、中心部分Cmを貫通する温度制御管11-1における外縁側部分に位置する中空空間12-1、12-nと中心部分Cmに位置する中空空間12-2…12-n-1との間、及び、温度制御管11-1の外周面とシース管10-1の内周面との間隙のうち中空空間12-1、12-nと中空空間12-2…12-n-1の区分に合わせた位置には、断熱材13(例えば発泡ウレタンなど)が設けられている。また、温度制御管11の外周面とシース管10の内周面との間隙には、蓄熱材の硫酸ナトリウムと水和溶液を混合した溶液が熱伝導材14として充填されている。シース管10-1及び温度制御管11-1において断熱材13を設けることにより、上記のような異なる温度の液体間での熱交換、及び、これら液体からの熱伝導で異なる温度となる熱伝導材14間での熱交換が行われないようになっている。
【0024】
温度制御管11に供給される液体の温度とその供給時間は、温度応力解析を用いて設定される。具体的には、所定のコンピュータによって、マスコンクリートCを所定の立体形状である複数のメッシュに区分して、コンクリートの熱特性値等の各種物性値や拘束条件等を設定してメッシュ単位で温度応力解析を行い、その解析結果がコントローラ30に記憶される。コントローラ30は、各温度制御管11内の各中空空間の位置に相当するメッシュ単位の温度応力解析の結果に基づいて、その中空空間に供給する液体の温度とその供給時間を決定する。なお、上記立体形状の鉛直方向の長さは、前述した中空空間12-1~12-nの軸方向の区分長に併せて設定する、若しくは前述した中空空間12-1~12-nの軸方向の区分長を上記立体形状の鉛直方向の長さに基づき設定することが望ましい。
【0025】
以上の構成により、
図5に示すように、マスコンクリートCの外縁側部分においては温度制御管11による加熱効果が発揮されて外気や風によるコンクリートの温度低下を阻害し、コンクリート温度の低下を緩やかにする一方、マスコンクリートCの中心部分Cmにおいては温度制御管11による冷却効果が発揮されてコンクリートの温度の上昇を阻害し、中心部コンクリートの最高温度を低下させる。このようにしてマスコンクリートCの固化時における内外温度差が抑制され、温度勾配の均一化を図ることが可能となる。
【0026】
本実施形態に係る方法の手順は次のとおりである。まず、作業者は、打設されたマスコンクリートC内の外縁側部分に所定の間隔をおいて複数のシース管10を所定の挿入長で挿入し、さらに各シース管10に温度制御管11を挿入する。温度制御管11が挿入されるシース管10と温度制御管11との間に間隙がある場合には、作業者は、その間隙に熱伝導材14を充填する。打設されたマスコンクリートCの中心部分Cmを貫通する位置においては、マスコンクリートCにシース管10を挿入してから温度制御管11をシース管10に挿入するのではなく、事前に必要な箇所に断熱材13が設けられ、かつ熱伝導材14が充填された温度制御管11-1及びシース管10-1を、マスコンクリートCの中心部分Cmに所定の間隔及び挿入長で挿入することが望ましい。
【0027】
次に、作業者は、コントローラ30を操作して、各温度制御管11の各中空空間に対して決定された複数の温度の液体を決定された供給時間に従って供給する。なお、各液体の温度は温度応力解析の結果により定めることが望ましい。このとき、コントローラ30は、外縁側部分に位置する温度制御管11の中空空間の液体の温度制御と、中心部分Cmに位置する温度制御管11の中空空間の液体の温度制御とを同時に行ってもよい。この場合は、マスコンクリートCの打設時から温度制御を行うことで、ひび割れの発生を防止しやすくなる。一方、コントローラ30は、外縁側部分に位置する温度制御管11の中空空間の液体の温度制御と、中心部分Cmに位置する温度制御管11の中空空間の液体の温度制御とをそれぞれ異なるタイミングと期間で行ってもよい。例えばマスコンクリートCの中心部分Cmに位置する温度制御管11-1の中空空間の液体の温度制御は打設後ただちに開始し、マスコンクリートCの外縁側部分に位置する温度制御管11の中空空間の液体の温度制御はマスコンクリートの打設後、一定の時間を置いてから開始するようにしてもよい。この場合は、マスコンクリートCの各部位の温度変化に即した温度制御が可能となる。
【0028】
上述した実施形態によれば、打設されたマスコンクリートにおける内外温度差が抑制され、温度変化の均一化を図ることが可能となる。また、マスコンクリートをその内部から温度コントロールするので、例えば型枠外から温度コントロールする場合に比べて、直接的にコンクリートに温度制御効果をもたらし内外温度差を解消することが可能となる。
【0029】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば上述した実施形態を以下のように変形してもよい。
【0030】
上記実施形態では、液体供給装置20内の温度制御体21の発熱強度及び/又は発熱時間の制御機能によって任意の温度とした(例えば高温とした)液体を温度制御管に供給していた。このような温度制御体21の発熱強度及び/又は発熱時間の制御機能に加えて、もしくは代えて、温度制御管の中空空間に充填された液体中に設けられた発熱体による発熱でその液体を加熱する機能を備えるようにしてもよい。具体的には、
図6に示すように、中心部分Cmを貫通するシース管10-1,・・・に挿入される温度制御管11-1,・・・は、シース管10の軸方向に所定の長さで区分されて液体が充填される中空空間12-1、12-2…12-n-1、12-nにおいて、外縁側部分に位置する中空空間12-1、12-nに設けられた発熱体15を有する。外縁側部分に位置するシース管10に挿入される温度制御管11の中空空間12-1~12-nにおいても同様に発熱体15を有する。各発熱体15はコントローラ30と電気的に接続されており、コントローラ30の制御によりその発熱温度が制御される。シース管10-1,・・・に挿入された温度制御管11-1,・・・の中心部分Cmに位置する中空空間12-2…12-n-1は上記実施形態と同様に液体供給装置20から、マスコンクリートCの中心部分Cmのコンクリート温度よりも低い温度の液体が供給される。シース管10-1,・・・に挿入された温度制御管11-1,・・・の外縁側部分に位置する中空空間12-1、12-n及び外縁側部分に位置するシース管10に挿入される温度制御管11の中空空間12-1~12-nは、液体供給装置20に接続されておらず、液体が充填されているだけであってもよい。液体供給装置20に接続されてないときには、中空空間12-1、12-nに充填されている液体の温度は、発熱体15の発熱により、マスコンクリートCの外縁側部分の中空空間内の液体温度よりも高くなる。これにより、マスコンクリートCの外縁側部分においては温度制御管11による加熱効果が発揮されて外気や風によるコンクリートの温度低下を阻害し、外縁部コンクリート温度の低下を緩やかにする一方、マスコンクリートCの中心部分Cmにおいては温度制御管11-1による冷却効果が発揮されてコンクリートの温度上昇を阻害し、中心部コンクリートの最高温度を低下させる。つまり、マスコンクリートCの固化時における内外温度差が抑制され、温度勾配の均一化を図ることが可能となる。
【0031】
また、シース管10-1,・・・に挿入された温度制御管11-1,・・・の外縁側部分に位置する中空空間12-1、12-n及び外縁側部分に位置するシース管10に挿入される温度制御管11の中空空間12-1~12nが液体供給装置20に接続されているときには、温度制御体21の発熱強度及び/又は発熱時間の制御機能により温度調整された液体が供給されるが、当該中空空間内の液体温度が液体供給装置20よりパイプ群40による供給時に外気等により所定の温度より低下することもある。
【0032】
そのようなケースへの対策として、例えば対象とする中空空間内に温度センサを設置しておき、当該中空空間(12-1、12-n、又は12-1~12-n)に充填されている液体の温度が所定の温度より一定の許容範囲以上低下していた時には、発熱体15により再度当該液体を加熱するようにしてもよい。
【0033】
また、対象とする中空空間内に温度センサを設けず、発熱体15を所定の液体温度と同じ温度で発熱させた状態としておくのであってもよい。
【0034】
上記の対応により、対象とする中空空間内の液体温度を一定の許容範囲内の温度で維持することができるので、マスコンクリートCの外縁側部分においては温度制御管11による加熱効果が担保されて外気や風によるコンクリートの温度低下を阻害し、外縁部コンクリート温度の低下を緩やかにすることができるので、マスコンクリートCの固化時における内外温度差が抑制され、温度勾配の均一化を図ることが可能となる。
【0035】
また、上述した実施形態では、温度制御管11の外周面とシース管10の内周面との間隙に熱伝導材14が設けられていたため、温度制御管11の外周面とシース管10の内周面との間隙のうち中空空間12-1、12-nと中空空間12-2…12-n-1の区分に合わせた位置に断熱材13が設けられていた。温度制御管11の外周面とシース管10の内周面との間隙に熱伝導材14が設けられていない場合には、温度制御管11の外周面とシース管10の内周面との間隙に断熱材13を設けることは必須ではない。
【0036】
なお、打設されたマスコンクリートへの温度制御管11の平面配置は中心方向に向かうほど多く配置し、外周部は少なく配置するようにしてもよい。
【0037】
また、本発明を、上記に説明した温度制御システムを用いてマスコンクリートの温度を制御する温度制御方法としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10,10-1:シース管、11,11-1:温度制御管、12-1~12-n:中空空間、13:断熱材、14:熱伝導材、15:発熱体、20:液体供給装置、21:温度制御体、22:ポンプ、30:コントローラ、40:パイプ群、C:マスコンクリート、Cm:マスコンクリートの中心部分。