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  • 特開-車線逸脱警報システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118098
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】車線逸脱警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240823BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240823BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20240823BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W50/14
B60W30/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024302
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241AA71
3D241BA12
3D241BA59
3D241BB27
3D241CC17
3D241CD11
3D241CE05
3D241DB07Z
3D241DB12Z
3D241DC35Z
3D241DC43Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC24
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】 直線路から曲線路に遷移するような局面でも適切な振動レベルで警報を行える車線逸脱警報システムを提供する。
【解決手段】 車両の前方を撮像するカメラ20の画像から走行車線を認識し、走行車線における車両の相対位置を取得する画像処理部11と、走行車線に対する車両の相対位置に基づいて、車両の走行車線からの逸脱可能性を判定する逸脱判定部12と、走行車線からの逸脱可能性ありと判定された場合に、車両のステアリングホイールに車線逸脱警報として振動を与える加振手段30と、車両の走行状態に基づいて前記振動を制御する振動警報制御部14と、前記画像から走行車線の曲率を取得する曲率取得部13を備え、車度に応じて振動強度を決定し、走行車線の曲率に基づいて振動強度をゲイン調整するように構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線逸脱警報システムであって、
車両の前方を撮像するカメラと、
前記カメラに取得される画像から走行車線を認識し、前記走行車線における前記車両の相対位置を取得する画像処理部と、
前記走行車線に対する前記車両の相対位置に基づいて、前記車両の前記走行車線からの逸脱可能性を判定する逸脱判定部と、
前記逸脱判定部により前記走行車線からの逸脱可能性ありと判定された場合に、前記車両のステアリングホイールに車線逸脱警報として振動を与える加振手段と、
前記車両の走行状態に基づいて前記振動を制御する振動警報制御部と、
を備えるものにおいて、
前記画像から前記走行車線の曲率を取得する曲率取得部をさらに備え、
前記振動警報制御部は、前記車両の速度に応じて振動強度を決定し、前記走行車線の前記曲率に基づいて前記振動強度をゲイン調整するように構成されている、車線逸脱警報システム。
【請求項2】
前記振動警報制御部は、前記走行車線の前記曲率に基づく曲率ゲインと、操舵トルクに基づく操舵トルクゲインとを相補的に併用して前記振動強度をゲイン調整するように構成されている、請求項1に記載の車線逸脱警報システム。
【請求項3】
前記操舵トルクゲインは、操舵トルクに応じて増加する特性で適用され、前記曲率ゲインは、前記曲率が小さい領域で大きく前記曲率の増加に応じて減少する特性で適用されるように構成されている、請求項2に記載の車線逸脱警報システム。
【請求項4】
前記曲率が所定未満の場合は第1の曲率ゲインが適用され、前記曲率が所定以上の場合は前記第1の曲率ゲインよりも大きい第2の曲率ゲインが適用されるように構成されている、請求項1に記載の車線逸脱警報システム。
【請求項5】
前記第2の曲率ゲインは、前記曲率の増加に応じて増加する特性で適用されように構成されている、請求項4に記載の車線逸脱警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング振動による車線逸脱警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行車線からの逸脱可能性が検知された場合に、ステアリングホイールを振動させて運転者に警報を行う装置が公知である。例えば、特許文献1には、車線逸脱と判定された際に、操舵トルクが大きい場合には車線逸脱警報のための振動トルクを大きくすることで、電動パワーステアリング装置のアシストトルクに対して警報用の振動トルクが相対的に小さくなる(警報として感じ難くなる)のを防止することが開示されている。
【0003】
しかしながら、直線路から曲線路に遷移する局面で車線逸脱可能性が判定された場合、運転者の操舵トルクに応答して警報用の振動トルクを増加させたのでは、制御の遅れにより効果的な警報とならない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6012832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、直線路から曲線路に遷移するような局面でも適切な振動レベルで警報を行える車線逸脱警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、
車線逸脱警報システムであって、
車両の前方を撮像するカメラと、
前記カメラに取得される画像から走行車線を認識し、前記走行車線における前記車両の相対位置を取得する画像処理部と、
前記走行車線に対する前記車両の相対位置に基づいて、前記車両の前記走行車線からの逸脱可能性を判定する逸脱判定部と、
前記逸脱判定部により前記走行車線からの逸脱可能性ありと判定された場合に、前記車両のステアリングホイールに車線逸脱警報として振動を与える加振手段と、
前記車両の走行状態に基づいて前記振動を制御する振動警報制御部と、
を備えるものにおいて、
前記画像から前記走行車線の曲率を取得する曲率取得部をさらに備え、
前記振動警報制御部は、前記車両の速度に応じて振動強度を決定し、前記走行車線の前記曲率に基づいて前記振動強度をゲイン調整するように構成されている、車線逸脱警報システムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車線逸脱警報システムでは、上記のように、カメラ画像から取得される走行車線の曲率に基づいて振動強度のゲイン調整を行う構成により、曲線路、特に、直線路から曲線路に遷移する局面で車線逸脱可能性が判定された場合に、運転者がカーブを認識して操舵操作を行うタイミングで旋回用にゲイン調整した振動警報を提供でき、操舵トルクに応答してゲイン調整する場合のような制御の遅れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明実施形態に係る車線逸脱警報システムを示すブロック図である。
図2】車速-振動トルク曲線である。
図3】操舵トルク-トルクゲイン曲線である。
図4】曲率-曲率ゲイン曲線である。
図5】他の実施形態における曲率-曲率ゲイン曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、車線逸脱警報システムは、車両前方を撮像するカメラ20、撮像された画像から走路(走行車線)および走路に対する車両の走行位置を取得する画像処理部11、車両の走行位置と運動状態に基づいて車線からの逸脱可能性を判定する車線逸脱判定部12、カメラ画像より得られた走路情報に基づき走路の曲率を取得する曲率取得部13、逸脱可能性ありと判定された場合に走路曲率を考慮して車両状態に適合するように振動警報を制御する振動警報制御部14、および、加振手段としてのEPSモータ30(電動パワーステアリングモータ)から構成される。電動パワーステアリング装置の構成は公知であるため、説明を省略する。
【0010】
カメラ20は、レンズ光学系、イメージセンサ(固体撮像素子)、バッファメモリなどを備えたデジタルカメラを用いることができ、好適には車両のフロントウインドウ上部に取付けられ、車体前端部と地表面を含む近景領域から消失点を含む遠景領域までを画角に収めるように配向されている。
【0011】
画像処理部11は、カメラ20に所定のフレームレートで撮像された入力画像から認識処理によって道路区画線(車道外側線または車線境界線)を検出し、車両が走行中の走路と、走路に対する車両の相対的な走行位置を取得する。例えば、二値化やエッジ検出により白線や黄色線等を検出して走路(走行車線)とその中央の軌跡から中心線を取得する。
【0012】
車線逸脱判定部12は、検出された中心線に対する車両中央(重心)のオフセット量に基づいて区画線と車両の相対的な位置関係を推定し、車両が区画線から逸脱する可能性があると判定される所定閾値を超えたか否かを判定し、所定閾値を超えた場合には車線逸脱フラグが立てられ、振動開始指令が出される。所定閾値を超えない場合は、次のフレームの処理に移行し処理を継続する。この際、ヨーレートセンサ23に検出されるヨーレートから走行中の進路の曲率半径を取得し、車両の進路を考慮して逸脱可能性を判定することもできる。
【0013】
曲率取得部13は、画像処理部11で検出された左右の区画線の曲率(1/曲率半径)を取得し、それらの平均として走路中央の曲率を連続的に取得する。走路が実質的に直線と見做せる所定値未満の場合は曲率ゼロとする。なお、車線逸脱判定は現在の車両位置ないしはその前方の近景領域で判定されるが、走路の曲率はそれらより前方を含めた領域の画像から取得される。
【0014】
なお、画像処理部11、車線逸脱判定部12、曲率取得部13、および、以下に述べる振動警報制御部14の各演算部は、それぞれの機能を実行するように動作可能なプログラムを格納するROM(フラッシュメモリ)、演算処理を行うCPU、前記プログラムが読み出され前記CPUの作業領域および演算結果の一時記憶領域となるRAM、および入出力インターフェースなどを備えたコンピュータであるコントロールユニット10(ECU)として実装される。
【0015】
振動警報制御部14は、振動警報の基礎となる周波数帯域の矩形波を生成するパルスジェネレータ、生成された連続的な矩形波をON/OFFさせて間欠的な矩形波に整形するON/OFF信号生成部、間欠的な矩形波の振動強度を車速に応じた振動強度に調整する車速感応ゲイン演算部、調整された間欠的な矩形波の振動強度を操舵トルクと走路曲率に基づいてさらにゲイン調整する旋回感応ゲイン演算部、および、各信号にゲインを重畳する乗算回路などから構成されている。
【0016】
図2は、車速感応ゲイン演算部で参照する車速-振動トルク曲線(LUT)を示している。車線逸脱警報は車速が所定値V0(例えば40~50Km/h)以上で出力され、所定値V1までは一定値T1であるが、V1以上の中高速域では、操舵輪からステアリング機構に入る外部振動が車速に応じて大きくなることを考慮してT2まで増大させ、外部振動の影響を排除できるようにしている。
【0017】
図3は、旋回感応ゲイン演算部で参照する操舵トルク-トルクゲイン曲線(LUT)を示しており、基本的に操舵トルクに応じてトルクゲインが大きくなり、上限値に漸近する特性となっている。しかし、操舵トルクは、運転者がカーブを認識して操舵操作を行うことで発生するため、操舵トルクベースのゲイン調整では制御に遅れが生じる。
【0018】
一方、上述したように、曲率取得部13に取得される道路曲率は、現在の車両位置より前方で取得されるため、道路曲率の変化を操舵トルクの検出より早いタイミングで検出できる。したがって、旋回感応ゲイン演算部で、図4に示す曲率-曲率ゲイン曲線(LUT)を同時に参照し、道路曲率ベースのゲイン補正を追加することで、操舵トルクベースのゲイン調整の遅れに対処できる。
【0019】
この場合、図4に示す曲率-曲率ゲイン曲線のように、曲率が所定値未満の第1の領域で曲率ゲインを一定値(最大値)とすることで、操舵トルクの立ち上がりの遅れが見込まれる第1の領域で曲率ゲインによって操舵トルクゲインが補完されるようにするとともに、曲率が所定値以上の第2の領域では曲率に応じて曲率ゲインが小さくなるようにして、操舵トルクベースのゲインの増加分と相殺されるようにすることで、曲率に伴い操舵トルクが大きくなる領域で振動警報が過大になるのを防止できる。
【0020】
上記図3図4に係る実施形態は、曲率ゲインと操舵トルクゲインとを相補的に併用して旋回感応ゲインが与えられるようにする場合について述べたが、曲率ゲインで旋回感応ゲインが与えられるように構成することもできる。
【0021】
その場合、曲率-曲率ゲイン曲線は、図3の曲線に図4の特性を合成した曲線、すなわち、図5に示されるように、曲率が所定値未満の第1の領域では曲率ゲインが一定値(最小値)であり、曲率が所定値以上の第2の領域では曲率に応じて曲率ゲインが大きくなるような曲線とする。
【0022】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0023】
10 コントローラ(ECU)
11 画像処理部
12 車線逸脱判定部
13 曲率取得部
14 振動警報制御部
20 カメラ
21 車速センサ
22 操舵トルクセンサ
23 ヨーレートセンサ
30 EPSモータ(加振手段)
図1
図2
図3
図4
図5