(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118103
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】路面状態取得システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240823BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G08G1/00 J
E01C23/01
G08G1/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024307
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
2D053
5H181
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053FA02
5H181AA02
5H181AA03
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC15
5H181CC27
5H181EE13
5H181FF04
5H181FF06
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF17
5H181FF27
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体が走行する走行領域の路面状態を効率よく取得することである。
【解決手段】本路面状態取得システムにおいては、移動体の目標経路が路面状態の取得要求に基づいて決定される。例えば、目標経路が、路面状態の取得要求がある部分を含んで決定されるようにすることができ、移動体は、決定された目標経路に沿って走行しつつ、路面状態を取得することができる。その結果、取得要求がある部分の路面状態を良好に取得することができ、走行領域の路面状態を効率よく取得することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が走行する走行領域の路面の状態である路面状態を取得する路面状態取得システムであって、
当該路面状態取得システムが、前記走行領域の路面の状態である路面状態の取得要求に基づいて、前記移動体の目標経路を決定する目標経路決定部を含み、
前記移動体が、前記目標経路決定部によって決定された前記目標経路に沿って走行する場合に、前記路面状態を取得する移動体路面状態取得部を含む路面状態取得システム。
【請求項2】
移動体が走行する走行領域の路面の状態である路面状態を取得する路面状態取得システムであって、
当該路面状態取得システムが、前記走行領域の前記路面状態の変化を推定する路面状態変化推定部を備え、前記路面状態変化推定部によって推定された前記路面状態の変化に基づいて、前記移動体の目標経路を決定する目標経路決定部を含み、
前記移動体が、前記目標経路決定部によって決定された前記目標経路に沿って走行する場合に、前記路面状態を取得する移動体路面状態取得部を含む路面状態取得システム。
【請求項3】
前記目標経路決定部が、前記路面状態変化推定部によって前記路面状態が設定状態以上変化したと推定された部分を含んで、前記目標経路を決定するものである請求項2に記載の路面状態取得システム。
【請求項4】
移動体が走行する走行領域の路面の状態である路面状態を取得する路面状態取得システムであって、
当該路面状態取得システムが、前記走行領域の前記路面の特性と前記路面を走行する移動体の状態との少なくとも一方に基づいて、前記目標経路を決定する目標経路決定部と、
前記移動体が、前記目標経路決定部によって決定された前記目標経路に沿って走行する場合に、前記目標経路に沿った前記路面状態を取得する移動体路面状態取得部を含む路面状態取得システム。
【請求項5】
複数の移動体が走行する走行領域内の路面の状態である路面状態を取得する路面状態取得システムであって、
前記移動体が、前記走行領域を走行する場合に、前記路面状態を取得可能な移動体路面状態取得部を含み、
当該路面状態取得システムが、前記移動体である第1移動体の前記移動体路面状態取得部によって取得された前記路面状態に基づいて、前記複数の移動体のうち前記第1移動体を除く移動体である第2移動体の目標経路を決定する目標経路決定部を含み、
前記第2移動体が、前記目標経路決定部によって決定された前記目標経路に沿って走行した場合に、前記移動体路面状態取得部によって前記目標経路に沿った前記路面状態を取得するものである路面状態取得システム。
【請求項6】
前記目標経路決定部が、前記路面状態を取得する際の優先度に基づいて前記目標経路を決定するものであり、前記路面の前記移動体としての大型移動体の走行台数が多い部分についての前記優先度を、前記大型移動体の走行台数が少ない部分についての優先度より高い値に決定するものである請求項1ないし5のいずれか1つに記載の路面状態取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が走行する走行領域の路面の状態である路面状態を取得する路面状態取得システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の移動体が走行する走行領域の基準経路の路面の状態が、移動体が走行した基準経路の路面の凹凸状態と、移動体が基準経路を迂回した場合のその迂回経路の路面の凹凸状態とに基づいて推定される。その結果、移動体が基準経路の一部を走行しないで迂回した場合であっても、基準経路の路面の状態を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、移動体が走行する走行領域の路面状態を効率よく取得することである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明に係る路面状態取得システムにおいては、移動体の目標経路が路面状態の取得要求に基づいて決定される。例えば、目標経路が、路面状態の取得要求がある部分を含んで決定されるようにすることができ、移動体は、決定された目標経路に沿って走行しつつ、路面状態を取得することができる。その結果、取得要求がある部分の路面状態を良好に取得することができ、走行領域の路面状態を効率よく取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る路面状態取得システム全体を概念的に示す図である。
【
図2】上記路面状態取得システムの管制装置の構造と移動体の構造とを概念的に示す図である。
【
図3】上記管制装置の管制ECUにおいて決定された目標経路の一例を示す図である。
【
図4】上記管制ECUにおいて実行される目標経路等決定プログラムの一部を概念的に表すフローチャートである。
【
図5】上記移動体の移動体ECUにおいて実行される走行制御プログラムを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る路面状態取得システムを図面に基づいて説明する。本路面状態取得システムは、運行管理システムでもある。また、路面状態取得システム、運行管理システムは目標経路決定システムと称することができる。
【実施例0008】
本実施例1に係る路面状態取得システムは、
図1に示すように、例えば、鉱山等で作業を行う複数の移動体Vと通信可能な管理装置としての管制装置S、1つ以上のアンテナA等を含む。これら複数の移動体Vと管制装置Sとは、直接またはアンテナAを介して無線の通信を行う。
【0009】
複数の移動体Vは、少なくとも1台以上の大型移動体HVと、1台以上の小型移動体LVとを含む。本実施例において、これら大型移動体HV、小型移動体LV等を総称して、または、個別に単に移動体Vと称する場合がある。
【0010】
1台以上の大型移動体HVの各々は、重機としたり、大型ダンプとしたりすること等ができる。大型移動体HVは、本実施例においては、鉱山で作業を行う移動体である。また、大型移動体HVは、管制装置Sからの指令に基づいて自動で作動(移動を含む)させられるものであり、自動走行移動体である。
1台以上の小型移動体LVの各々は、大型移動体HVに比較して移動体自身の重量が軽い移動体である。小型移動体LVは、作業員を乗せたり、作業に要する荷物を載せたりして、走行することが多い。本実施例において、小型移動体LVは、運転者による運転操作が行われなくても走行可能な自動運転移動体(自動走行移動体)であるが、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体であってもよい。
【0011】
複数の移動体Vの各々は、それぞれ、
図2に示すように、移動体Vを駆動する駆動装置D、移動体Vを制動する制動装置B、移動体Vの操舵輪を転舵する転舵装置T、GPS(Global Positioning System)受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14、移動体ECU20等を含む。
【0012】
駆動装置Dは、例えば、複数の車輪28のうちの複数の駆動輪に連結された駆動源としての電動機を含むものとすることができる。また、電動機に対応して駆動回路(例えば、インバータ)が設けられるが、駆動回路の制御により、複数の駆動輪に加えられる駆動力が制御され、移動体Vに加えられる駆動力が自動で制御される。
【0013】
なお、駆動装置Dは、電動機に加えて、または、電動機に代えてエンジン等を含むものとすることもできる。
【0014】
制動装置Bは、例えば、複数の車輪28の各々に対応して設けられ、摩擦係合部材を車輪28と一体的に回転可能なブレーキ回転体に押し付けることにより車輪28の回転を抑制する摩擦ブレーキと、複数の摩擦ブレーキの各々の押付力を制御可能な押付力制御アクチュエータとを含むものとすることができる。押付力制御アクチュエータの制御により、複数の車輪28の各々に設けられた摩擦ブレーキの押付力が制御され、複数の車輪28の各々に加えられる制動力が制御され、移動体Vに加えられる制動力が自動で制御される。なお、車輪28には、駆動装置Dに含まれる電動機の制動による回生制動が加えられる場合もある。
【0015】
転舵装置Tは、複数の車輪28のうちの操舵輪を転舵するものである。転舵装置Tは、例えば、左右に位置する操舵輪の各々に連結された一対のタイロッドおよび一対のタイロッドを連結する転舵ロッド、転舵ロッドに設けられた転舵アクチュエータ等を含む。転舵アクチュエータにより転舵ロッドが車両の軸方向に移動させられることにより、左右の操舵輪が自動で転舵される。
【0016】
GPS受信機10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPSからの信号(例えば、GPS信号)を受信するものであり、GPS信号に基づいて、移動体V自身である自移動体Vの位置が取得される。GPS信号に基づいて、自移動体Vの緯度、経度、高度の3次元の位置が取得されるようにしても、緯度、経度の2次元の位置が取得されるようにしてもよい。
【0017】
周辺情報取得装置12は、複数のカメラ、ライダ等を含み、移動体Vである自移動体Vの周辺の物体を認識するとともに、その物体と自移動体Vとの相対位置関係等を取得する。
また、周辺情報取得装置12においては、複数のカメラ、ライダ等により、移動体Vの前方の路面の状態である路面状態(主として、路面の凹凸の状態)が取得される。
【0018】
周辺情報取得装置12は、さらに、車輪28のタイヤに設けられた路面センサ、移動体Vに作用する上下方向の加速度を検出する上下加速度センサ等を含むものとすることができる。路面センサによれば、車輪28が通る路面の状態(例えば、路面に含まれる水分量、路面の摩擦係数等)を検出することができる。上下加速度センサによって検出された上下方向の加速度を積分等することにより、車体の上下方向の振動の振幅を取得することができ、路面の凹凸の状態を取得することができる。
【0019】
このように、周辺情報取得装置12において、自移動体Vの周辺の情報としての路面の状態が取得される。この意味において、移動体路面状態取得部は周辺情報取得装置12に含まれるものであると考えることができる。
【0020】
移動体通信装置14は、移動体ECU20において作成された移動体情報を無線で送信したり、管制装置Sから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0021】
移動体ECU20は、コンピュータを主体とするものである。移動体ECU20には、これら駆動装置Dの駆動回路、制動装置Bの押付力制御アクチュエータ、転舵装置Tの転舵アクチュエータ、GPS受信機10、周辺情報取得装置12、移動体通信装置14等が接続される。また、移動体ECU20は、走行計画作成部22、走行制御部24、移動体情報作成部30等を含む。
【0022】
走行計画作成部22は、管制情報に含まれる目標経路に基づいて移動体Vである自移動体Vの走行計画を作成するものである。走行計画には、駆動装置D,制動装置B,転舵装置T等の制御指令等が含まれる。
走行制御部24は、走行計画作成部22において作成された走行計画に基づいて、駆動装置D,制動装置B,転舵装置T等を制御するものである。走行制御部24による駆動装置D,制動装置B,転舵装置T等の制御により、自移動体Vが目標経路に沿って走行する。
【0023】
移動体情報作成部30は、GPS信号に基づいて取得された自移動体Vの位置を表す移動体位置情報、周辺情報取得装置12によって取得された路面の状態を表す情報である移動体路面状態情報、自移動体Vの識別情報等を含む移動体情報を作成する。作成された移動体情報は、移動体通信装置14に出力される。移動体通信装置14は移動体情報を送信する。
【0024】
管制装置Sは、コンピュータを主体とする管制ECU40と管制ECU40に接続された管制通信装置42とを含む。管制ECU40は、目標経路決定部50、管制情報作成部52、管制路面状態取得部54、移動体状態記憶部56等を含む。目標経路決定部50は、重みづけ部58等を含む。
【0025】
管制通信装置42は、管制情報作成部52によって作成された管制情報を無線で送信したり、移動体Vから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0026】
管制情報作成部52は、決定された対象移動体Vの目標経路を表す情報である目標経路情報、対象移動体Vを表す識別情報等を含む管制情報を作成するものである。
【0027】
移動体状態記憶部56は、移動体Vの各々の状態に関する情報を記憶するものである。移動体Vの状態には、移動体Vの走行状態、移動体Vの重量等が含まれる。具体的には、移動体Vの各々の過去の走行履歴、現在の位置、移動体Vの各々について予め定められた作業計画に含まれる情報{例えば、目標経路、移動体Vの各々の重量、総重量(移動体自身の重量および積載重量)}等が含まれる。移動体状態記憶部56は、複数の移動体Vの各々についての作業計画を記憶するものであると考えることもできる。
【0028】
目標経路決定部50は、複数の移動体Vの各々についての、移動体Vが走行する目標経路を作成して決定するものである。目標経路決定部50は、目標経路として移動体Vが走行する経路を決定するものとしたり、経路およびその経路の路面上の位置(部分)を決定するものとしたりすること等ができる。
通常、作業が行われる走行領域には、舗装されていないダート路が設けられる。ダート路においては、移動体Vの走行に伴って凹凸が大きくなる。例えば、移動体Vの走行に起因して轍ができ、移動体Vの走行台数の増加に伴って轍が大きくなり、凹凸が大きくなるのである。また、凹凸が大きくなると、小型移動体LVの走行が困難になる場合がある。
そのため、作業中に、走行領域の巡回が行われて路面の状態が監視され、例えば、路面の凹凸が大きい部分については、グレーダ等の路面補修専用移動体により路面の補修が行われるようにされている。
【0029】
それに対して、本実施例においては、目標経路決定部50によって、移動体Vについての目標経路が、走行領域内の路面状態の取得要求に基づいて決定される。目標経路決定部50によって決定された目標経路は、移動体Vについて予め設定された作業計画の運行計画に含まれる経路とは異なるのが普通である。また、目標経路決定部50によって決定された目標経路と、予め定められた作業計画に含まれる目標経路とにおいて、出発地から目的地までの走行距離の差が設定値以下となるように、目標経路が決定される。例えば、作業計画に含まれる目標経路は出発地から目的地に至るまで最短距離になるように設定されることが多く、目標経路決定部50によっても目標経路が最短距離となるように決定されることが多い。
【0030】
また、目標経路決定部50は、路面状態の取得要求の程度である優先度に基づいて目標経路を決定するようにすることができる。路面状態の取得要求は、路面の凹凸が大きくなったと推定される場合、路面の凹凸が大きくなり易いと推定される場合には、そうでない場合より、強くなる。そのため、路面の凹凸が大きくなったと推定される部分、路面の凹凸が大きくなり易いと推定される部分は、そうでないと推定される部分より優先度が高くなる。
【0031】
本実施例においては、
図3に示すように、走行領域Rは、グリッド線により複数の部分pに分割され(仕切られ)、複数の部分pの各々について、路面状態の取得要求の程度に応じた重みづけが行われ、点数が付与され、点数が高い部分pは優先度が高いとされる。そして、目標経路は、優先度が高い部分pを含んで決定される。優先度は、路面の特性、路面を走行する移動体Vの状態(移動体Vの走行台数、走行する移動体Vが大型移動体であるか否か等が含まれる)等に基づいて決定される。
【0032】
重みづけ部58は、複数の部分pの各々についての重みづけを行い、点数を付与するものである。複数の部分pの各々の重み(点数)は、例えば、部分pの路面状態である凹凸状態を取得(監視)する必要性が高い場合は低い場合より(凹凸状態の取得要求が強い場合は弱い場合より)高い値にされるようにすることができる。換言すると、路面状態(凹凸状態)の変化が大きいと推定される部分、変化が大きくなり易いと推定される部分については変化が小さいと推定される部分、変化が大きくなり難いと推定される部分より、点数が高い値とされるのである。
【0033】
重みづけ部58は、路面の特性と、路面を走行する移動体の状態等とに基づいて点数を決定する。
例えば、路面が、土、砂を多く含み、水分を含み易い特性を有する部分においては、岩を多く含み、水分を含み難い特性を有する部分より、移動体が走行した場合の路面の凹凸の変化が大きくなり易い。
また、路面が、柔らかい部分においては硬い部分におけるより、移動体が走行した場合の路面の凹凸の変化が大きくなる。路面の柔らかさは、路面の特性、地形(高低差)、気象情報、散水の有無等に基づいて決まる。例えば、土、砂を多く含む特性を有し、かつ、含有水分量が多い場合には路面は湿った状態になる。そのため、路面が、土、砂を多く含む特性を有する部分については、岩が多く、水分を含み難い特性を有する部分より、路面が柔らかいと考えることができる。
【0034】
さらに、路面の含有水分量は、気象情報、散水の有無、地形等に基づいて決まる。例えば、降雨や降雪があった場合、散水が行われた場合には、含有水分量は多くなる。また、高低差により、水はけがよい部分については、降雨、散水等があっても、含有水分量は少なくなる場合がある。
なお、路面の特性、地形(高低差)等は、管制装置Sに予め入力されて、記憶されている。また、気象情報は図示しない外部情報発信装置から供給されて受信される。
【0035】
また、例えば、部分(路面)を走行する移動体Vが大型移動体である場合(移動体の重量または総重量が大きい場合)には小型移動体である場合(移動体の重量または総重量が小さい場合)より、路面の凹凸の変化が大きくなったと推定される。
また、路面の部分を走行する移動体Vの台数が多い場合は少ない場合より、路面の凹凸は大きくなったと推定される。
【0036】
以上の事情から、路面の凹凸の変化が大きくなり易い特性を有する部分については凹凸の変化が大きくなり難い特性を有する部分より、点数を高くし、路面が柔らかい部分については硬い部分より、点数を高くすることができる。
また、大型移動体HVが走行する部分pは小型移動体LVが走行する部分pより、点数を高く、走行する移動体Vの台数が多い場合は少ない場合より、点数を高くすることができる。この場合に、大型移動体HVの走行履歴、作業計画で決まる大型移動体HVの走行予定等を考慮して点数を決定することができる。
【0037】
重みづけ部58は、さらに、例えば、移動体Vによる路面状態の取得履歴に基づいて点数を決めることができる。例えば、移動体Vによって過去に路面状態が取得されてから設定時間以上が経過した部分pについては、設定時間が経過していない部分pより点数を高くすることができる。
逆に、路面状態の取得頻度が高い部分は低い部分より点数を高くすることもできる。路面状態の取得頻度が高い部分は、路面状態の取得要求が高く、路面状態が大きく変化し易い部分であるからである。
【0038】
また、例えば、移動体Vによって過去に取得された路面状態に基づいて、点数を決めることができる。例えば、過去に取得された路面状態が路面の凹凸が大きい状態にある部分pについては凹凸が小さい部分pより、点数を高い値に決定することができる。路面の凹凸が大きい場合には小さい場合より、路面状態の変化が大きいと推定することができるからである。
【0039】
以上のように、複数の部分pの各々について、それぞれ、重みづけを行い、点数に基づいて優先度を決める。例えば、点数(または点数の合計)が第1設定点数以上である部分pについては優先度が高いと決定され、点数が第1設定点数より小さい第2設定点数以下である部分pについては優先度が低いと決定され、点数が第2設定点数より高く、第1設定点数より低い部分pについては優先度が中程度であると決定されるようにすることができる。
【0040】
例えば、
図3に示す場合において、走行領域Rにおいて、主経路A,B,Cとこれら主経路A,B,Cと交差する経路D,E,Fとがある。そして、走行領域Rが複数のグリッド線によって複数の部分pに分割される。
主経路Aにおいては、大型移動体HVの走行履歴がある、または、大型移動体HVの走行頻度が高い。そのため、主経路Aの路面については変化が大きいと推定され、路面状態の取得要求は強い。
また、主経路Aにおいて、大型移動体HVの走行に伴って、大型移動体HVの車輪28が通る位置である主経路Aの両側端部に轍が生じ易い。そのため、主経路Aの両側端部に含まれる部分pasについての点数が高くなり、中央部に含まれる部分patについての点数が低くなる。
【0041】
主経路Bにおいて、主経路Bと経路Dとが交差する交差点Bd付近において、路面が、土、砂が多く、水分を含み易い特性を有する。また、交差点Bdは、水はけが悪い地形に位置する。また、交差点Bdにおいて、移動体Vは直進したり、左折したり、右折したりするため、交差点Bdの中央部において、周辺部におけるより移動体Vの走行頻度が高くなる。そのため、交差点Bdの中央部に含まれる部分pbdgについての点数が高くなり、周辺部に含まれる部分pbdrについての点数が部分pbdgより低くなる。
【0042】
また、主経路Bと経路Eとの交差点Be付近、主経路Bと経路Fとの交差点Bf付近においては、路面が硬い場合、または、路面が土、砂が多く、水分を含み易い特性を有するが水はけがよい。そのため、移動体Vが交差点Be,Bfを走行した場合に、交差点Bdを走行した場合より大きな凹凸ができ難いと推定される。一方で、交差点Beにおいては交差点Bfにおける場合より、移動体Vの走行台数が多い。そのため、交差点Beの中央部に含まれる部分pbegについての点数は周辺部に含まれる部分pber、交差点Bfに含まれる部分pbfより高くなる。
【0043】
主経路Cは、大型移動体HVが走行しない、または、大型移動体HVの走行台数が少ない経路である。例えば、大型移動体HVの走行履歴がない場合、大型移動体HVの走行予定が少ない場合等が該当する。しかし、主経路Cの路面は、土、砂を多く含み、水分を含み易い特性を有する。そのため、主経路Cに含まれる部分pcについての点数は中程度となる。
【0044】
以上のように、複数の部分pの各々について重みづけを行い、点数に応じて優先度が取得される。本実施例においては、主経路Aの両側端部に含まれる部分pas、主経路Bの交差点Bdの中央部に含まれる部分pbdgの優先度が高く、主経路Aの中央部に含まれる部分pat、交差点Bdの周辺部に含まれる部分pbdr、主経路Cに含まれる部分pcの優先度が中程度に設定され、交差点Beの周辺部に含まれる部分pber、交差点Bfに含まれる部分pbfの優先度は低いとされる。そして、優先度が高い部分を含んで目標経路Xが
図3に示すように決定されるようにすることができる。
【0045】
図3に示すように、部分pの各々についての重みづけ、決定された目標経路Xは、あくまで一例であり、重みづけの点数、優先度の設定方法等は、適宜、状況に応じて決定すること等ができる。
【0046】
そして、移動体Vは目標経路Xに沿って走行しつつ目標経路Xに沿った路面状態を取得する。そして、路面状態を表す路面状態情報を含む移動体情報を送信する。
【0047】
管制路面状態取得部54は、移動体情報に含まれる路面状態情報に基づいて目標経路Xに沿った路面状態を取得し、走行領域Rの路面状態を取得するものである。路面状態には、路面の凹凸の状態が含まれるが、路面の湿り具合(路面に含まれる水分量)等を含めることができる。そして、走行領域Rの路面状態に基づいて、グレーダ等の路面補修専用車の出動の時期等が決定される。例えば、路面の凹凸の程度が設定程度より高くなった場合に、グレーダが出動されるようにすることができる。
【0048】
以上のように構成された走行制御システムを含む路面状態取得システムにおいて、管制装置Sの目標経路決定部50において、
図4のフローチャートで表される目標経路等設定プログラムが設定時間毎に実行される。
ステップ(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)1において、移動体Vの各々の状態が取得され、S2において、移動体情報に含まれる移動体路面情報に基づいて、走行領域Rの複数の部分pの一部における路面状態が取得され、複数の部分pの各々についての路面の特性、地形が取得され、外部情報発信装置からの気象情報等が取得される。S3において、これらに基づいて、走行領域R内の複数の部分pの各々についての路面状態の変化が推定され、S4において、複数の部分pの各々について重みづけが行われ、点数が付与される。そして、S5において、点数に基づいて優先度が設定され、目標経路が決定される。決定された目標経路に関する情報は管制情報に含めて、送信される。
【0049】
移動体Vの移動体ECU20においては、
図5のフローチャートで表される移動体走行制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S21において、管制情報を受信したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S22において、識別情報が一致するか否かが判定される。判定がYESである場合には、S23において、管制情報から目標経路に関する情報が取得され、S24において、目標経路に沿って移動体Vが走行するように走行計画が作成され、S25において、走行計画に従って、転舵装置T、駆動装置D、制動装置B等が制御される。それにより、移動体Vが目標経路に沿って走行する。移動体Vは目標経路に沿って走行しつつ、路面状態を取得し、路面状態情報を含む移動体情報を送信する。
【0050】
このように、本実施例においては、移動体が目標経路に沿って走行しつつ、路面状態を取得する場合において、目標経路が路面状態の取得要求に基づいて決定される。その結果、作業中における移動体Vの走行により、取得要求のある路面状態を良好に取得することができる。また、それにより、走行領域の路面状態を効率よく取得することができる。
さらに、作業中の移動体により路面状態が取得されるため、移動体Vの巡回のための走行回数を減らすことが可能となる。
また、決定された目標経路は、出発地から目的地まで遠回りをするのではなく、最短距離となるように決定されることが多い。そのため、移動体Vの路面状態の取得に起因する作業効率の低下を良好に抑制することができる。
さらに、実際に路面の凹凸が大きい部分を特定できるため、グレーダの作動部分を特定することが可能となり、グレーダを効率よく作動させることができる。
【0051】
なお、路面状態は小型移動体LVによって取得されるようにすることができるが、大型移動体HVによっても取得されるようにすることができる。小型移動体LVと大型移動体HVとによって路面状態が取得される場合には、これら小型移動体LVと大型移動体HVとでは、カメラと路面との相対位置関係が異なるため、それらの調整することが望ましい。
また、小型移動体LVは、大型移動体HVより小回りが可能となり、例えば、経路の側端部を走行することもできる。そのため、小型移動体LVによって路面状態が取得される方が、路面の凹凸状態をきめ細かく取得することができる。
【0052】
以上、本実施例においては、目標経路決定部が、管制装置S等によって構成されると考えたり、管制装置S、移動体路面状態取得部等によって構成されると考えたり、管制ECU40の目標経路決定部50等によって構成されると考えたりすること等ができる。また、管制ECU40の目標経路決定プログラムのS3を記憶する部分、実行する部分等により路面状態変化推定部が構成される。
【0053】
その他、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
10:GPS受信機 14:移動体通信装置 12:周辺情報取得装置 20:移動体ECU 24:走行制御部 30:移動体情報作成部 40:管制ECU 42:管制通信装置 50:目標経路決定部 54:管制路面状態取得部 58:重みづけ部 S:管制装置 V:移動体
路面状態は、路面の凹凸の状態であり、例えば、路面の凹凸の程度で表すことができる。路面状態変化推定部によって、路面状態の変化が大きいか否か、路面状態が変化し易いか否かが推定される。また、路面状態の変化が大きいと推定される場合には変化が小さいと推定される場合より、路面状態の取得要求が強くなり、路面状態が変化し易い場合には変化し難い場合より、路面状態の取得要求が強くなるのが普通である。
(4) 前記目標経路決定部が、前記路面状態変化推定部によって前記路面状態が設定状態以上変化したと推定された部分を含んで、前記目標経路を決定するものである(3)項に記載の路面状態取得システム。
(5) 前記路面状態変化推定部が、前記移動体の走行台数が多い場合は少ない場合より、前記路面状態の変化が大きいと推定する(3)項または(4)項に記載の路面状態取得システム。
(6) 前記路面状態変化推定部が、前記移動体である第1移動体が走行する前記路面より、前記第1移動体より重量が大きい第2移動体が走行する前記路面の方が、前記路面状態の変化が大きいと推定する(3)項ないし(5)項のいずれか1つ記載の路面状態取得システム。
(7) 前記目標経路決定部が、前記路面状態を取得する場合の優先度に基づいて前記目標経路を決定するものであり、前記優先度を、前記路面状態変化推定部によって、前記路面状態の変化が大きいと推定される部分については、前記路面状態の変化が小さいと推定される部分より高い値に決定するものである(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の路面状態取得システム。
(10) 前記目標経路決定部が、前記路面状態を取得する際の優先度に基づいて前記目標経路を決定するものであり、前記路面の前記移動体としての大型移動体の走行台数が多い部分についての前記優先度を、前記大型移動体の走行台数が少ない部分についての優先度より高い値に決定するものである(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の路面状態取得システム。
(11) 前記目標経路決定部が、前記走行領域が複数に分割された各々の部分について重みづけに応じた点数を付与し、前記点数が設定点数以上である部分を含んで、前記目標経路を決定するものである(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の路面状態取得システム。
(12) 前記目標経路決定部が、前記決定した前記目標経路の路面上の前記移動体が走行する部分を決定するものである(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の路面状態取得システム。
(14) 当該路面状態取得システムが、前記管理路面状態取得部によって取得された前記目標経路に沿った前記路面状態に基づいて前記走行領域の路面を補修する時期を決定する(13)項に記載の路面状態取得システム。