IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 大分大学の特許一覧 ▶ 日本分光株式会社の特許一覧

特開2024-118117蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置
<>
  • 特開-蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置 図1
  • 特開-蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置 図2
  • 特開-蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置 図3
  • 特開-蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118117
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240823BHJP
   G01N 21/19 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G01N21/64 A
G01N21/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024366
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(71)【出願人】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓典
(72)【発明者】
【氏名】早川 広志
(72)【発明者】
【氏名】三好 有一
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA06
2G043HA07
2G043JA01
2G043LA02
2G059AA02
2G059BB08
2G059BB12
2G059CC16
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE05
2G059EE07
2G059EE12
2G059GG04
2G059JJ19
2G059KK02
(57)【要約】
【課題】蛍光異方性のある試料に適した蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置の提供。
【解決手段】FDCD測定装置は、単一波長光の光照射部と、照射側の偏光変調部14と、偏光変調部14からの垂直に進行する変調偏光の光路上に試料24を設置する回転試料台18と、試料24からの蛍光を水平方向から検出する光検出器40とを備える。この検出方向は、水平で、直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向である。また、CPL測定装置は、単一波長光の光照射部と、無偏光子と、無偏光子からの垂直に進行する単一波長光の光路上に試料を設置する回転試料台と、試料からの蛍光を水平方向から捉える検出側の偏光変調部と、分光器と、光検出器とを備える。検出側の偏光変調部が蛍光を捉える方向は、水平で、試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最小になる方向である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の蛍光検出円二色性(FDCD)を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を変調する照射側の偏光変調部と、
前記偏光変調部からの変調偏光の進行方向は垂直であり、該変調偏光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記変調偏光の照射によって前記試料から生じる蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光変調部は、前記単一波長光に含まれる所定の直線偏光を選択し、該直線偏光を変調することで、該直線偏光を中心に左右の円偏光が交互に生じるように構成され、
前記光検出器の検出方向は、水平、かつ、前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向に設定されている、ことを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備えることを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【請求項3】
試料の円偏光蛍光(CPL)を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光部からの無偏光の単一波長光の進行方向は垂直であり、該単一波長光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、ことを特徴とする円偏光蛍光測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の測定装置において、水平かつ前記試料を通る垂直軸周りに少なくとも90°の範囲内で、前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向を調整する角度調整部を備えることを特徴とする円偏光蛍光測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置は、さらに前記試料の円偏光蛍光(CPL)を測定するための構成として、
前記光照射部からの前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光の単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出するCPL測定用の光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向とは異なる方向であり、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、ことを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の測定装置において、
前記FDCD測定用の光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記角度調整部によって、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向と一体で調整されることを特徴とする蛍光検出円二色性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置、および、円偏光蛍光(CPL)測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の円二色性スペクトルを測定することは、その物質の光学的特性及びその他の情報を調べる上で重要である。特に、蛋白質などの生体高分子に代表される自己組織化する試料において、分子レベルでの配列、配向を調べる上で重要な測定である。自己組織化する試料の一部はゲル状であり、例えば特許文献1には、ゲル状の試料を対象とする円二色性(CD)測定装置が開示されている。ゲル状の試料を「垂直」に設置し、光を「水平」に透過させると、重力の影響で試料に鉛直方向の密度勾配や厚さ勾配が生じてしまい、これらの勾配によって直線二色性や直線複屈折等の信号が生じ、測定誤差を招いていた。そこで、特許文献1では、ゲル状の試料を「水平」な試料台に設置し、光を「鉛直」に透過させる光学配置を採用することで、重力場の影響を大きく受ける試料に対しても、正確な測定を行うことを可能にしている。
【0003】
円二色性の物質が蛍光を発する場合、その発光過程での円二色性を解析する手法の1つに「蛍光検出円二色性(FDCD)測定法」がある。
【0004】
FDCD測定法は、CD測定法と同様に、光弾性変調器(PEM)による左右の円偏光を交互に試料に照射して、試料に左右の円偏光に対する不等吸収を生じさせる。CD測定法では、試料からの透過光の光路上に検出器を設置するのに対し、FDCD測定法では、透過光に直交する方向に検出器を設置する場合が多い(例えば特許文献2)。左右の円偏光に対する不等吸収に伴って発生する蛍光には強弱の波が生じるので、この蛍光を検出することで円二色性の励起スペクトルを得る。FDCD測定法は、CD測定法に比べて、好適な試料では数十倍の高感度測定が可能であるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-347412号公報
【特許文献2】特開平11-23466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のFDCD測定では、対象が試料溶液、つまり、試料を溶媒に溶解させて作成する溶液であり、蛍光異方性を示さない試料が前提になっている。蛍光異方性は、円二色性等のキラリティとは別の光学特性であり、蛍光異方性のある試料をFDCD測定する際は、検出する蛍光強度が蛍光異方性(光選択性とも呼ぶ。)の影響を受けないようにする必要がある。一般的に、蛍光検出における試料の蛍光異方性に起因するアーティファクトを除去するために、試料と検出器の間に偏光板やマスクを設置することがあるが、偏光板やマスクの使用は、検出器に到達できる蛍光の強度が減衰して検出感度の低下を伴うため、FDCD測定ではこれらを使用しない方が好ましい。
【0007】
蛍光試料は、遷移双極子モーメントに沿った方向の偏光をよく吸収し、遷移双極子モーメントの方向の偏光を放出することから、遷移双極子モーメントの向きが偏っていると、蛍光異方性が大きくなる。このため、FDCD測定法と同様に、蛍光試料の発光過程での円二色性を解析する手法である「円偏光蛍光(CPL)測定法」においても、蛍光異方性のある試料を測定する際に、検出する蛍光強度が蛍光異方性の影響を受けないようにする必要がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、蛍光異方性のある試料の測定に適した蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置および円偏光蛍光(CPL)測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、発明者らは、FDCD測定およびCPL測定の際、試料に対して照射光を鉛直方向から当てるとともに、試料からの蛍光の検出方向を水平方向にとって、その検出方向を水平方向のまま、試料に対して様々な角度方向に調整できるようにしたところ、試料の蛍光異方性の影響を最も受けずにFDCDおよびCPLを測定することが可能な光検出器の検出方向(マジック角とも呼ぶ)を見つけることができ、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置は、
試料の蛍光検出円二色性を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を変調する照射側の偏光変調部と、
前記偏光変調部からの変調偏光の進行方向は垂直であり、該変調偏光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記変調偏光の照射によって前記試料から生じる蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光変調部は、前記単一波長光に含まれる所定の直線偏光を選択し、該直線偏光を変調することで、該直線偏光を中心に左右の円偏光が交互に生じるように構成され、
前記光検出器の検出方向は、水平、かつ、前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向に設定されている、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成のように、FDCD測定装置では、励起光を試料に対して垂直に照射し、試料に対する光検出器の検出方向を、水平、かつ、直線偏光の偏光面に対して45°(マジック角とも呼ぶ。)を成す方向に設定したことで、試料の蛍光異方性(光選択性)の影響を受けずにFDCD測定を実行することができる。なお、水平、かつ、直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向は、試料を通る水平面内に4つ存在し、そのいずれかの方向である。
【0012】
ここで、前記光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備えることが好ましい。
上記の構成のように、光検出器の検出方向を所定の角度範囲内で調整する角度調整部を設けることで、試料の蛍光異方性の影響を受けずにFDCDを測定可能な検出方向を容易に調整することができる。
【0013】
また、本発明の円偏光蛍光(CPL)測定装置は、
試料の円偏光蛍光を測定する装置であって、
単一波長光を出射する光照射部と、
前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光部からの無偏光の単一波長光の進行方向は垂直であり、該単一波長光の光路上に試料を水平に設置するための水平試料台と、
前記単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出する光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、ことを特徴とする。
【0014】
上記の構成のように、CPL測定装置では、検出側の偏光変調部が蛍光を捉える方向を、水平、かつ、試料を通る垂直軸周りにおいて試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度(マジック角とも呼ぶ。)に設定したことで、試料の蛍光異方性の影響を受けずにCPL測定を実行することができる。
【0015】
ここで、水平かつ前記試料を通る垂直軸周りに少なくとも90°の範囲内で、前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向を調整する角度調整部を備えることが好ましい。
上記の構成のように、検出側の偏光変調部が蛍光を捉える方向を調整する角度調整部を設けて、その角度調整範囲を少なくとも90°にすることで、試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度を容易に調整することができる。
【0016】
上記の蛍光検出円二色性(FDCD)測定装置は、さらに前記試料の円偏光蛍光(CPL)を測定するための構成として、
前記光照射部からの前記単一波長光の偏光状態を無偏光にする無偏光部と、
前記無偏光の単一波長光の照射によって前記試料から生じる蛍光の偏光状態を変調する検出側の偏光変調部と、
前記検出側の偏光変調部からの前記蛍光を分光する検出側の分光器と、
分光された蛍光を検出するCPL測定用の光検出器と、を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向とは異なる方向であり、水平、かつ、前記試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定されている、
ことが好ましい。
【0017】
上記の構成では、光照射部から水平試料台までの光学系を共通の光学系として、つまり、同じ光学系で、試料の蛍光検出円二色性(FDCD)および円偏光蛍光(CPL)を測定することができる。
【0018】
ここで、前記FDCD測定用の光検出器の検出方向は、前記水平かつ前記直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度を基準に、前記試料を通る垂直軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定され、
前記45°を成す角度を中心とする前記±45°の範囲内で前記検出方向を調整する角度調整部を備え、
前記検出側の偏光変調部が前記蛍光を捉える方向は、前記角度調整部によって、前記FDCD測定用の光検出器の前記検出方向と一体で調整されることが好ましい。
【0019】
上記の構成のように、FDCD測定用の光検出器の検出方向と、CPL測定用の検出側の偏光変調部が蛍光を捉える方向と、を一体で所定の角度範囲内で調整可能な角度調整部を設けることで、FDCD測定およびCPL測定のそれぞれにおいて、試料の蛍光異方性の影響を受けずに測定可能な方向を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のFDCD測定装置によれば、試料に対して直線偏光を中心とする左右の円偏光を垂直方向に照射し、試料からの蛍光を検出する光検出器の検出方向を、水平、かつ、直線偏光の偏光面に対して45°を成す方向に設定することで、試料の蛍光異方性(光選択性)の影響を受けずにFDCDを測定することができる。
同様に、本発明のCPL測定装置によれば、試料に対して無偏光を垂直方向に照射し、検出側の偏光変調部が試料からの蛍光を捉える方向を、水平、かつ、試料を通る垂直軸周りにおいて該試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度に設定することで、試料の蛍光異方性(光選択性)の影響を受けずにCPLを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係るFDCD測定装置の概略構成図である。
図2】FDCD測定のマジック角を説明するための図である。
図3】本発明の第二実施形態に係るCPL測定装置の概略構成図である。
図4】本発明の第三実施形態に係るFDCD及びCPL測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述したように蛍光検出測定において一般的に問題となる蛍光異方性(光選択性)の影響は、偏光測定のキラリティ検出においても回避されるべきであった。蛍光を利用したキラリティ検出において、対象が蛍光異方性を示さない試料溶液などであればよいが、対象が蛍光異方性のあるゲル状試料などの場合、蛍光異方性に由来するアーティファクトが問題になる。偏光板を使用して、蛍光異方性に由来するアーティファクト(光選択性由来の見かけのシグナル)を除去する提案がなされているが、光強度の減衰(検出感度の低下)が生じるので好ましくない。本発明者らは、試料に照射する励起光に対するマジック角にキラリティの検出方向を設定し(マジック角については図2を使って後で説明する。)、これによって、蛍光異方性由来のアーティファクトを回避し、求める真のキラリティ信号を得ることができると考えた。また、特別な光学素子が不要であるため光強度の低下がなく、検出感度も向上するというメリットも生じ得る。加えて、試料を水平設置することで、FDCD測定やCPL測定において、自己組織化する試料に対する測定や、そのゲル内の分子レベルの配向や配列の観測等が可能になると考えた。このような考察から、本発明者らは、試料に対する検出器の検出方向を蛍光異方性の影響が最も小さい方向(マジック角)に設定することができる測定装置を開発し、その測定装置によって試料のキラリティを検出することで、真のキラリティ信号が得られることを確認した。以下では、試料を水平に保持する機構、及び、マジック角に設定された検出器を備えた本発明の測定装置の説明を行う。
【0023】
第一実施形態
図1は第一実施形態のFDCD測定装置の概略構成図である。図1の測定装置10は、試料のCDスペクトルとFDCDスペクトルを同一の光学系で測定する装置である。
<CD測定系>
測定装置10のCD測定系は、光照射部12と、照射側の偏光変調部14と、光路変更部である全反射プリズム16と、回転試料台18と、検光子20と、CD用の光検出器22とを備えている。ここで、光照射部12は、波長走査を行うため、光源26と照射側の分光器28とで構成されている。光源26から出射された光は多波長光であり、照射側の分光器28によって任意の単一波長光にされて、水平方向に照射される。全反射プリズム16は、水平方向からの単一波長光を鉛直下向きに反射するために設けられている。
【0024】
照射側の偏光変調部14は、本実施形態では偏光子30と光弾性変調子(PEM)32を用いた。偏光子30は、光照射部12からの光(単一波長光)から、PEM32の軸方位に対して45°方向に偏光した直線偏光を選択する。また、偏光子30を光軸周りに回転させることで、所望の角度の偏光面の直線偏光を選択することができる。偏光子30からの直線偏光をPEM32に通すことで、PEM32の軸方位によって分解される二つの偏光成分間(互いに垂直な偏光成分間)に位相差が与えられる。PEM32には所定の周波数の電圧が加えられ、この周波数に従って上記の位相差が変調される。直線偏光の偏光状態が変調周波数で変調することで、直線偏光を中心とする左右の円偏光が交互に生じて、PEM32から出射する。
【0025】
試料24を水平に設置するための回転試料台18の中央部には、厚さ方向に貫通する貫通孔38が設けられている。試料24からの透過光は、この貫通孔38を鉛直に通過して検光子20へと向かう。回転試料台18は、貫通孔38の中心軸を中心に水平面内で回転する。例えばステッピングモーター等の回転角度を制御可能なモータによって、任意の角度で回転し停止するように構成してもよい。この構成の結果、試料24を任意の配位角度で設置して測定を行うことができる。
【0026】
検光子20も回転可能な構成となっており、その配位軸方向を変更することができる。また、検光子20は光路上から離脱/挿入の切り換えが可能な切換機構に設置してもよい。つまり、試料からの透過光は、検光子20を通して検出することも通さずに検出することも可能であり、測定したい試料の直線複屈折(LB)、円複屈折(CB)に応じて選択できる。CD用の光検出器22としては、例えば光電子増倍管(PMT)を用いればよい。CD用の光検出器22によって、試料24からの透過光を検出する。
【0027】
図1では、分光器等のスペースの都合等を考慮して、照射側の分光器28から単一波長光が水平に照射され、全反射プリズム16で鉛直下向きに光路の向きが変更されるが、本発明では、光源26からCD用の光検出器22まですべて鉛直方向の光路になるようにしてもよいし、検光子20の出射側に全反射プリズムを設けて、試料の透過光の進行方向を水平方向に変更してもよい。また、光路変更部には、全反射プリズム16を例示したが、ミラーや光ファイバ等を用いて光路の向きを変更してもよい。
【0028】
<FDCD測定系>
次に、測定装置10のFDCD測定系について説明する。FDCD測定系も、光照射部12から回転試料台18までの構成を使用する。FDCD測定系には、FDCD用の光検出器40があり、変調偏光によって励起した試料24が発する蛍光を水平方向から捉えるように設置されている。光検出器40には、例えば光電子増倍管(PMT)を用いればよい。また、光検出器40には、蛍光を集光するためのレンズ又はミラー、励起光等の不要な光をカットするフィルターを設けることができる。
【0029】
本実施形態のFDCD用の光検出器40は、その検出方向の調整機構に特徴がある。図2に、試料室内の偏光子30、PEM32、試料24、回転試料台18およびFDCD用の光検出器40の位置関係を模式的に示す。図2において、Z軸は鉛直下向きであり、偏光子30からの直線偏光の偏光面はZ-X面と一致する。直線偏光を両矢印の付いた直線で略して示す。PEM32の軸方位は、直線偏光の偏光面(Z-X面)と所定の角度(45°)を成す。PEM32に直線偏光の偏光状態を変調させると、直線偏光を中心とする左右の円偏光が交互に生じる。図2には、左右の円偏光を、鉛直下向きに見て右周りの矢印の円と、左周りの矢印の円とを使って示す。
【0030】
FDCD用の光検出器40の検出方向を、水平(X-Y面)、かつ、直線偏光の偏光面(Z-X面)に対して45°を成す方向に設定することができる。つまり、図2の試料を原点とするX軸とY軸の2等分線の方向である。この条件を満たすFDCD用の光検出器40の検出方向は、図2において、4つの方向(それぞれマジック角の方向と呼ぶ。)が存在する。本実施形態では例えば図2に示す方向を採用している。
また、FDCD用の光検出器40の検出方向は、上記の水平かつ直線偏光の偏光面に対して45°を成す角度(マジック角)を基準に、試料を通るZ軸周りに±45°の範囲から選択される角度の方向に設定することもできる。
【0031】
試料24の回転角度は、回転試料台18によって調整することができる。これと同様に、FDCD用の光検出器40は、Z軸を中心に水平面内で回転する回転検出台42(角度調整部に相当する)に設置されている。回転試料台18と回転検出台42とは独立した回転機構である。回転検出台42についても、例えばステッピングモーター等の回転角度を制御可能なモータによって、任意の角度で回転し停止するように構成してもよい。特に、光検出器40の検出方向が、少なくとも上記の範囲の角度方向(つまり、X-Y面内であって、マジック角を中心とする±45°の範囲)に調整されるように、回転検出台42が構成されているとよい。
試料毎にマジック角が異なる場合があるので、図2のような回転検出台42は、マジック角を試料毎にフレキシブルに調整できるという効果を有する。マジック角の調整は、図2のマジック角を中心とする±45°の範囲内で、FDCDの測定値が試料の蛍光異方性の影響を最も受けないような角度方向を見つけ出すことによって行ってもよい。
その他、回転検出台42は、偏光子30の回転によって、直線偏光の偏光面が回転した場合に応じて、FDCDの検出方向を変更することができる。また、回転検出台42は、光学部品の配置誤差を補正するため、及び、従来のFDCD測定法でも測定できるようにするためにも利用される。
【0032】
次に測定装置10の作用を説明する。
<CD測定の方法>
光源26から出た光は、前述のように照射側の分光器28を通ることで単一波長光とされる。この単一波長光の進行方向は全反射プリズム16によって鉛直下向きになる。この鉛直下向きの光は偏光子30、PEM32によって偏光状態が変調された光となる。該偏光状態が変調された光は回転試料台18上の試料24に照射され、試料24からの透過光は回転試料台18の貫通孔38を通り、検光子20へ向かう。検光子20を通った光は、必要ならばミラー、光ファイバ等を経由して、CD用の光検出器22へ送られ、検出される。
【0033】
CD用の光検出器22からの検出信号は信号処理装置(図示せず)によって信号処理される。検出信号のうち、偏光の変調周波数と同一の周波数成分、その二倍の高周波成分等に基づき、試料の各種光学的情報(円二色性CD、直線二色性LD、直線複屈折LB、円複屈折CB)が求められる。また、照射側の分光器28からの単一波長光の波長を変更して測定を行うことで上記の光学的情報のスペクトルが得られる。これらの測定の具体的な手順は公知の方法と同様に行えばよい。
【0034】
<FDCD測定の方法>
FDCD測定においても、CD測定と同様に、照射側の偏光変調部14からの偏光状態が変調された光が回転試料台18上の試料24に照射される。FDCD測定においては、試料24が発する蛍光のうち、水平方向に進行する蛍光が、励起光に対してマジック角の方向に設置されたFDCD用の光検出器40に捉えられて検出される。
【0035】
FDCD用の光検出器40からの検出信号は信号処理装置(図示せず)によって信号処理される。検出信号のうち、偏光の変調周波数と同一の周波数成分に基づき、試料のFDCDが求められる。また照射側の分光器28からの単一波長光の波長を変更して測定を行うことでFDCDスペクトル(励起スペクトル)が得られる。
【0036】
<第一実施形態の効果>
上述したように、本実施形態では、FDCDの検出方向を試料の励起光に対してマジック角の方向に設置することで、試料の蛍光異方性に由来するアーティファクトを回避し、真のキラリティ信号(FDCD信号)を得ることができるようになった。
その際、FDCDの検出方向が、回転検出台42によって、所定の角度範囲(水平面内、かつ、図2のマジック角を中心とする±45°の範囲)内で調整されるようにしたので、試料毎のマジック角を容易に調整することもできる。
また、本実施形態では、蛍光異方性に由来するアーティファクトを回避するための特別な光学素子(偏光板など)が不要であるため、光強度の低下(光量の減少)がなく、高感度での検出が可能になった。
【0037】
また、本実施形態では、試料に対して光を鉛直下向きに照射する構成をとっているので、試料を水平に保持することが可能となり、重力場による影響を受けやすい試料、例えば、ゲル状の試料、β-アミロイドやBSA等の蛋白質等の自己組織化する試料に対して、それらの分子レベルの配向や配列のキラリティ(CDやFDCD)の観測が可能となった。しかも、試料のFDCDとCDを同一の光学系で測定可能になり、基底状態における幅広い濃度範囲の試料を測定できるようになった。
【0038】
第二実施形態
図3は第二実施形態のCPL測定装置の概略構成図である。図3の測定装置110は、試料のCPLスペクトルとCDスペクトルを同一の光学系で測定する装置である。図1と共通する構成には同一の符号を用いて、重複する内容の説明を省略する。
【0039】
<CPL測定系>
測定装置110のCPL測定系は、光照射部12と、光路変更部である全反射プリズム16と、無偏光子44と、照射側の偏光変調部14と、回転試料台18と、検出側の偏光変調部50と、検出側の分光器56と、CPL用の光検出器58とを備える。ここで、光照射部12は、波長走査を行うため、光源26と照射側の分光器28とで構成されている。光源26から出射された光は多波長光であり、照射側の分光器28によって任意の単一波長光にされて、水平方向に照射される。全反射プリズム16は、水平方向からの単一波長光を鉛直下向きに反射するために設けられている。
【0040】
無偏光子44は、照射側の分光器28からの単一波長光に含まれる偏光成分を解消し、偏光状態のない光(無偏光)にして出射する。
【0041】
照射側の偏光変調部14は、図1と同様にCD測定用であり、CPL測定では使用しない。CPL測定の際は、無偏光子44からの単一波長の無偏光が試料に照射される。なお、無偏光子44と照射側の偏光変調部14を同時に機能させることはない。そのため、照射側の偏光変調部14を光路上から抜挿可能な構造にしてもよく、CPL測定時は照射側の偏光変調部14を光路から退避させておけばよい。
もしくは、照射側の偏光変調部14を偏光子30およびPEM32で構成する場合に、偏光子30だけを光路上から抜挿可能な構造にしてもよい。CPL測定時は、偏光子30を光路から退避させるとともに、PEM32への電圧をゼロ(位相差もゼロ)にして、PEM32で偏光変調されずに入射光の偏光状態がそのままの状態で出射される。
【0042】
試料24を水平に設置するための回転試料台18の中央部には、厚さ方向に貫通する貫通孔38が設けられている。
【0043】
CPLの検出光学系は、検出側の偏光変調部50と、検出側の分光器56と、CPL用の光検出器58とからなり、無偏光の単一波長光によって励起した試料24が発する蛍光を水平方向から捉えるように設置されている。
この検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向も、図2と同様に回転検出台42によって、水平、かつ、Z軸周りにおいて試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度(マジック角)の方向に調整される。つまり、CPLの検出光学系(検出側の偏光変調部50、検出側の分光器56、CPL用の光検出器58)は、回転検出台42に載置されて、Z軸周りに回転するようになっている。
【0044】
ここで、回転検出台42は、水平かつZ軸周りに少なくとも90°の範囲内で、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向を調整できるように設けられているとよい。これによって、試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度になるように、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向を容易に調整することができる。
また、回転検出台42は、光学部品の配置誤差を補正するためにも利用可能である。
【0045】
回転試料台18は、Z軸を中心に水平面内で回転する。例えばステッピングモーター等の回転角度を制御可能なモータによって、任意の角度で回転し停止するように構成してもよい。この構成の結果、試料24を任意の配位角度で設置して測定を行うことができる。
【0046】
CPL測定では、無偏光子44からの単一波長の無偏光によって励起された試料24は、蛍光を発生する。試料24が発生した蛍光の一部は、検出側の偏光変調部50へと向かう。
検出側の偏光変調部50は、PEM52と検光子54を用いた。PEM52は、試料24からの水平方向への蛍光の偏光状態を変調させる。また、検光子54は、PEM52からの変調偏光から、PEM52の軸方位に対して45°方向に偏光した直線偏光を選択する。このように、試料24からの蛍光をPEM52に通すことで、PEM52の軸方位によって分解される二つの偏光成分間(互いに垂直な偏光成分間)に位相差が与えられて、蛍光に含まれる様々な偏光の偏光状態がそれぞれ変調することになる。そして、検光子54が所定の偏光面の直線偏光を選択することによって、試料からの蛍光が持つ円偏光蛍光に応じて強度が変化する直線偏光が得られる。
【0047】
PEM52と検光子54を蛍光の光軸中心に一体で回転させる構成にしてもよく、それによって選択する直線偏光の偏光面を変更することができる。
【0048】
検光子54が選択した直線偏光は、多波長の蛍光であるため、検出側の分光器56により任意の単一波長の蛍光になって、CPL用の光検出器58で検出される。CPL用の光検出器58としては、例えば光電子増倍管(PMT)を用いればよい。また、検出側の分光器56は波長走査を行って、CPLスペクトルが得られる。このようにして、試料24で発生する水平方向への蛍光が検出される。
【0049】
本実施形態のCD測定系の基本的な構成は、図1の測定装置と同じである。
【0050】
次に測定装置110の作用を説明する。
<CPL測定の方法>
CPL測定では、光源26から出た光が、前述のように照射側の分光器28を通ることで単一波長光とされる。この単一波長光の進行方向は全反射プリズム16によって鉛直下向きにされて、無偏光子44によって無偏光状態の光となる。
CPL測定では、照射側の偏光変調部14を使用しないため、偏光子30を光路から退避させ、PEM32への電圧をゼロにする。従って、無偏光子44からの無偏光が回転試料台18上の試料24に照射される。
【0051】
CPL測定においては、試料24が発する蛍光のうち、水平方向に進行する蛍光が、検出側の偏光変調部50へ向かう。蛍光は、PEM52によって偏光状態が変調され、検光子54によって所定の直線偏光が選択される。その直線偏光は、検出側の分光器56で波長選択され、CPL用の光検出器58で検出される。また検出側の分光器56による選択波長を変更して測定を行うことでCPLスペクトルが得られる。
【0052】
<CD測定の方法>
CD測定では、無偏光子44を使用せず、照射側の偏光変調部14を使用する。そのため、無偏光子44を光路上から抜挿可能な構造にしてもよく、CD測定時は光路から無偏光子44を退避させておけばよい。
その他の方法については、図1の測定装置でのCD測定と同じである。
【0053】
<第二実施形態の効果>
上述したように、本実施形態のCPL測定装置では、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向を、水平、かつ、Z軸周りにおいて試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度(マジック角とも呼ぶ。)に設定したことで、試料の蛍光異方性の影響を受けずにCPL測定を実行することができる。
また、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向を調整するための回転検出台42を設けて、その角度調整範囲を少なくとも90°にしたので、試料の蛍光異方性に由来する見かけの検出信号が最も小さくなる角度を容易に調整することができる。
このように、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向をマジック角の方向に設置することで、試料の蛍光異方性に由来するアーティファクトを回避し、真のキラリティ信号(CPL信号)を得ることができるようになった。
また、本実施形態では、蛍光異方性に由来するアーティファクトを回避するための特別な光学素子(偏光板など)が不要であるため、光強度の低下(光量の減少)がなく、高感度での検出が可能になった。
【0054】
また、本実施形態では、試料に対して光を鉛直下向きに照射する構成をとっているので、試料を水平に保持することが可能となり、重力場による影響を受けやすい試料、例えば、ゲル状の試料、β-アミロイドやBSA等の蛋白質等の自己組織化する試料に対して、それらの分子レベルの配向や配列のキラリティ(CPLおよびCD)の観測が可能となった。しかも、試料のCPL、及び、CDを同一の光学系で測定可能になり、基底・励起状態を含めた試料の偏光現象を対比よく観測できるようになった。
【0055】
第三実施形態
図4は第三実施形態のFDCD及びCPL測定装置の概略構成図である。図4の測定装置210は、試料のFDCDスペクトル、CPLスペクトル及びCDスペクトルを同一の光学系で測定することが可能な装置である。なお、図3と共通する構成には同一の符号を用いて、重複する内容の説明を省略する。
【0056】
測定装置210は、基本的な構成は図3の測定装置110と共通している。異なる点は、回転検出台42に、FDCD用の光検出器40と、CPLの検出光学系(検出側の偏光変調部50、検出側の分光器56、CPL用の光検出器58)との両方が載置されて、これらが一体としてZ軸周りに回転するようになっている点である。
FDCD測定の際、回転検出台42によって、FDCD用の光検出器40の検出方向を、図2に示すマジック角を基準に、Z軸周りに±45°の範囲内で調整することができる。
CPLの検出光学系については、Z軸を中心にFDCD用の光検出器40とは反対側の位置に配置されている。従って、CPL測定の際、回転検出台42によって、検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向を少なくとも90°の角度調整範囲内で調整することができる。
【0057】
このように、本実施形態では、FDCD測定用の光検出器40の検出方向と、CPL測定用の検出側の偏光変調部50が蛍光を捉える方向と、を一体で所定の角度範囲内で調整可能な回転検出台42を設けているので、FDCD測定およびCPL測定のそれぞれにおいて、試料の蛍光異方性の影響を受けずに測定可能な方向を容易に調整することができる。
【0058】
以上の各実施形態では、これまで測定が困難であった蛍光異方性を示す試料の真のFDCDおよびCPLを測定することができるようになり、蛍光偏光材料の物性評価や新機能材料の開発等に必要な多くの光学的情報を提供できるようになった。
【0059】
なお、マジック角が一定であるような測定条件の場合には、回転検出台を用いないで、マジック角を固定してもよい。この場合、マジック角は、図2の直線偏光の偏光面と45°を成す方向を中心とする±45°の範囲内で固定される。
また、上述した各実施形態において、照射側の偏光変調部14としてファラデーセルを用い、直線偏光の偏光面を周期的に変調させ、光学零位法によって試料の旋光度を測定するような構成も可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,110,210 測定装置
12 光照射部
14 照射側の偏光変調部
18 回転試料台(水平試料台)
20 検光子
22 CD用の光検出器
24 試料
26 光源
28 照射側の分光器
30 偏光子
32 PEM
40 FDCD用の光検出器
42 回転検出台(角度調整部)
50 検出側の偏光変調部
52 PEM
54 検光子
56 検出側の分光器
58 CPL用の光検出器
図1
図2
図3
図4