(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118130
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240823BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240823BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20240823BHJP
【FI】
G01S7/40 134
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024391
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AB21
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD08
5J070AF03
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】軸ずれ角度の推定精度を向上させる。
【解決手段】制御装置6は、レーダ装置2が検出した複数の第1変調観測点の中から、自車両が走行する走行路の側方において走行路より高い位置で走行路が延びる方向に沿って配置された路側物で反射した第1変調観測点を路側物点として抽出する。制御装置6は、予め設定された対応付け条件に基づいて、レーダ装置2が検出した複数の第2変調観測点の中から、路側物点に対応する第2変調観測点である対応観測点を抽出する。制御装置6は、抽出された複数の対応観測点の位置の分布に基づいて、路側物が延びる方向を示す傾きを算出することによって、レーダ装置2の中心軸が自車両の前後方向に対して傾いている垂直軸ずれ角度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(VH0)に搭載されたレーダ装置(2)の軸ずれ角度(θm)を推定する軸ずれ推定装置(6)であって、
前記レーダ装置は、第1変調方法で変調された第1レーダ波を送受信することにより、前記第1レーダ波を反射した地点である第1観測点を検出し、前記レーダ装置と前記第1観測点との間の距離である第1観測点距離と、前記第1観測点が存在する方位角である第1観測点方位角とを含む第1観測点情報を繰り返し出力するように構成され、
前記レーダ装置は、前記第1変調方法と異なる第2変調方法で変調された第2レーダ波を送受信することにより、前記第2レーダ波を反射した地点である第2観測点を検出し、前記レーダ装置と前記第2観測点との間の距離である第2観測点距離と、前記第2観測点が存在する方位角である第2観測点方位角とを含む第2観測点情報を繰り返し出力するように構成され、
当該軸ずれ推定装置は、
前記レーダ装置が検出した複数の前記第1観測点の中から、前記移動体が走行する走行路の側方において前記走行路より高い位置で前記走行路が延びる方向に沿って配置された路側物で反射した前記第1観測点を第1路側物観測点として抽出するように構成された第1路側物抽出部(S10,S20)と、
前記第1路側物観測点の位置と前記第2観測点の位置とが近いことを示す予め設定された対応付け条件に基づいて、前記レーダ装置が検出した複数の前記第2観測点の中から、前記第1路側物観測点に対応する前記第2観測点である第2路側物観測点を抽出するように構成された第2路側物抽出部(S30)と、
前記第2路側物抽出部により抽出された複数の前記第2路側物観測点の位置の分布に基づいて、前記路側物が延びる方向を示す方向情報(β)を算出することによって、前記レーダ装置により前記第1レーダ波および前記第2レーダ波が送受信される方向を示す中心軸(CA)が前記移動体の前後方向に対して傾いている角度を前記軸ずれ角度として算出するように構成された軸ずれ角度算出部(S40)と
を備える軸ずれ推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1変調方法により検出可能な前記第1観測点距離の最大値である第1最大検出距離は、前記第2変調方法により検出可能な前記第2観測点距離の最大値である第2最大検出距離より長く、
垂直方向における前記第2観測点方位角を前記第2変調方法により検出するときの精度である第2垂直測角精度は、垂直方向における前記第1観測点方位角を前記第1変調方法により検出するときの精度である第1垂直測角精度より高い軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1変調方法により検出可能な前記第1観測点距離の最大値である第1最大検出距離は、前記第2変調方法により検出可能な前記第2観測点距離の最大値である第2最大検出距離より長く、
前記レーダ装置は、垂直方向における前記第1観測点方位角を前記第1変調方法により検出する機能を備えないように構成され、
前記レーダ装置は、垂直方向における前記第2観測点方位角を前記第2変調方法により検出する機能を備えるように構成される軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、前記第2路側物抽出部により抽出された複数の前記第2路側物観測点と、前記第1路側物抽出部により抽出された複数の前記第1路側物観測点のうち前記第2路側物観測点に対応付けられていない前記第1路側物観測点との両方を用いて、前記方向情報を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置は、予め設定された変調周期毎に、複数の前記第1観測点情報と複数の前記第2観測点情報とを出力するように構成され、
前記軸ずれ角度算出部は、複数の前記変調周期で得られた複数の前記第2路側物観測点の位置の分布に基づいて前記方向情報を算出することによって前記軸ずれ角度を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、前記第1路側物観測点と前記第2観測点との間の距離である観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、複数の前記第2観測点のうち、前記第1路側物観測点と前記第2観測点との間の距離である観測点間距離差が最小であり、且つ、前記観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【請求項8】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、前記第1路側物観測点の前記第1観測点距離と前記第2観測点の前記第2観測点距離との差である半径距離差が予め設定された半径距離閾値未満となり、且つ、前記第1路側物観測点の前記第1観測点方位角と前記第2観測点の前記第2観測点方位角との差である方位角差が予め設定された方位角閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【請求項9】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、前記路側物が、前記走行路が延びる方向に沿って高さが一定であることを利用して、前記軸ずれ角度を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【請求項10】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、複数の前記第2路側物観測点の位置の分布を直線で近似することによって前記方向情報を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体が走行する走行路の側方において走行路の延びる方向に沿って配置された路側物に向けてレーダ波を送信することによって得られた複数の路側物情報をレーダ装置から取得し、複数の路側物情報に基づいてレーダ装置の軸ずれ角度を推定する軸ずれ推定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の詳細な検討の結果、レーダ装置の物体検出精度を向上させるためには、レーダ装置の軸ずれ角度の推定精度を更に向上させる必要があるという課題が見出された。
本開示は、軸ずれ角度の推定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、移動体(VH0)に搭載されたレーダ装置(2)の軸ずれ角度(θm)を推定する軸ずれ推定装置(6)であって、第1路側物抽出部(S10,S20)と、第2路側物抽出部(S30)と、軸ずれ角度算出部(S40)とを備える。
【0006】
レーダ装置は、第1変調方法で変調された第1レーダ波を送受信することにより、第1レーダ波を反射した地点である第1観測点を検出し、レーダ装置と第1観測点との間の距離である第1観測点距離と、第1観測点が存在する方位角である第1観測点方位角とを含む第1観測点情報を繰り返し出力するように構成される。
【0007】
レーダ装置は、第1変調方法と異なる第2変調方法で変調された第2レーダ波を送受信することにより、第2レーダ波を反射した地点である第2観測点を検出し、レーダ装置と第2観測点との間の距離である第2観測点距離と、第2観測点が存在する方位角である第2観測点方位角とを含む第2観測点情報を繰り返し出力するように構成される。
【0008】
第1路側物抽出部は、レーダ装置が検出した複数の第1観測点の中から、移動体が走行する走行路の側方において走行路より高い位置で走行路が延びる方向に沿って配置された路側物で反射した第1観測点を第1路側物観測点として抽出するように構成される。
【0009】
第2路側物抽出部は、第1路側物観測点の位置と第2観測点の位置とが近いことを示す予め設定された対応付け条件に基づいて、レーダ装置が検出した複数の第2観測点の中から、第1路側物観測点に対応する第2観測点である第2路側物観測点を抽出するように構成される。
【0010】
軸ずれ角度算出部は、第2路側物抽出部により抽出された複数の第2路側物観測点の位置の分布に基づいて、路側物が延びる方向を示す方向情報(β)を算出することによって、レーダ装置により第1レーダ波および第2レーダ波が送受信される方向を示す中心軸(CA)が移動体の前後方向に対して傾いている角度を軸ずれ角度として算出するように構成される。
【0011】
このように構成された本開示の軸ずれ推定装置は、走行路が延びる方向に沿って配置された路側物を検出するのに適した変調方法を第1変調方法に適用し、観測点の位置の検出精度が高い変調方法を第2変調方法に適用することにより、路側物が延びる方向を示す方向情報を精度良く算出することができるため、軸ずれ角度の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】軸ずれ検出システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1,2変調の最大検出距離を示す図である。
【
図4】第1,2アレーアンテナの構成を示す図である。
【
図5】軸ずれ調整処理を示すフローチャートである。
【
図6】路側物候補点抽出処理を示すフローチャートである。
【
図7】路側物点群抽出処理を示すフローチャートである。
【
図8】路側物点群を抽出する方法を説明する図である。
【
図9】路側物点群対応付け処理を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態の軸ずれ角度度推定処理を示すフローチャートである。
【
図11】近似直線および垂直軸ずれ角度を示す図である。
【
図12】第1変調と第2変調とで観測点の位置のばらつきを比較する図である。
【
図13】第2実施形態の軸ずれ角度推定処理を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態において近似直線を算出する方法を説明する図である。
【
図15】第3実施形態の軸ずれ角度推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1に示すように、本実施形態の軸ずれ検出システム1は、レーダ装置2と、レーダ搭載角調整装置3と、カメラ4と、車載センサ群5と、制御装置6とを備える。
【0014】
レーダ装置2は、複数のアンテナを用いて同時に電波を送受信するMIMOレーダである。MIMOは、Multi Input Multi Outputの略である。
レーダ装置2は、軸ずれ検出システム1を搭載した車両(以下、自車両)の前部左側面に設置される。レーダ装置2は、自車両の前部右側面に設置されてもよいし、自車両の後部左側面に設置されてもよいし、車両の後部右側面に設置されてもよいし、自車両の前方に設置されてもよいし、自車両の後方に設置されてもよい。
【0015】
レーダ装置2は、その検出範囲内に、自車両の直進方向に沿った前方向と、直進方向に直交する横方向とが含まれるように配置される。
レーダ搭載角調整装置3は、モータと、レーダ装置2に取り付けられた歯車とを備える。レーダ搭載角調整装置3は、制御装置6から出力される駆動信号に従ってモータを回転させることにより、この回転力が歯車に伝達され、自車両の車幅方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させる。
【0016】
カメラ4は、自車両の前側に取り付けられており、自車両の前方の状況を連続して撮影する。
車載センサ群5は、自車両の状態を検出するために自車両に搭載された複数のセンサである。車載センサ群5は、自車両の走行速度を検出する車速センサを含む。車載センサ群5は、自車両の加速度を検出する加速度センサを含む。車載センサ群5は、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサを含む。
【0017】
制御装置6は、CPU11、ROM12およびRAM13等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU11が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM12が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU11が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御装置6を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0018】
図2に示すように、レーダ装置2は、周波数が直線的に増加する複数の第1チャープ信号で構成された第1高周波信号を生成する第1変調期間と、周波数が直線的に増加する複数の第2チャープ信号で構成された第2高周波信号を生成する第2変調期間とを予め設定された変調周期Tm内で切り替える。そしてレーダ装置2は、生成された第1,2高周波信号をそれぞれ第1,2レーダ波として送信し、反射した第1,2レーダ波を受信する本実施形態では、第1チャープ信号の周波数幅は、第2チャープ信号の周波数幅より小さい。
【0019】
図3に示すように、レーダ装置2は、第1変調期間における変調(以下、第1変調)の最大検出距離(以下、第1最大検出距離)が、第2変調期間における変調(以下、第2変調)の最大検出距離(以下、第2最大検出距離)よりも長くなるように構成される。またレーダ装置2は、第2変調の測距精度が第1変調の測距精度よりも高くなるように構成される。
【0020】
図4に示すように、レーダ装置2は、第1アレーアンテナ21と、第2アレーアンテナ22とを備える。
第1アレーアンテナ21は、同じ特性を有するアンテナが、水平方向(すなわち、車幅方向)に沿って等間隔で12個並び、且つ、垂直方向(すなわち、車高方向)に沿って等間隔で2個並ぶように配列されて構成されている。
【0021】
第2アレーアンテナ22は、同じ特性を有するアンテナが、水平方向(すなわち、車幅方向)に沿って等間隔で8個並び、且つ、垂直方向(すなわち、車高方向)に沿って等間隔で4個並ぶように配列されて構成されている。レーダ装置2は、第1変調期間において、第1アレーアンテナ21を用いて第1レーダ波を送受信し、第2変調期間において、第2アレーアンテナ22を用いて第2レーダ波を送受信する。
【0022】
したがって、第2変調の垂直測角精度(以下、第2垂直測角精度)は第1変調の垂直測角精度(以下、第1垂直測角精度)より高い。また、第1変調の水平測角精度は第2変調の水平測角精度より高い。
【0023】
レーダ装置2は、第1変調期間毎および第2変調期間毎に、受信したレーダ波の受信電力Wと、レーダ波を反射した地点(以下、観測点)までの距離Rと、観測点との相対速度Vと、観測点の水平方位角θと、観測点の垂直方位角φとを検出する。そしてレーダ装置2は、検出した受信電力W、距離R、相対速度V、水平方位角θおよび垂直方位角φを示す観測点情報を制御装置6へ出力する。以下、第1レーダ波を反射した地点を第1変調観測点、第2レーダ波を反射した地点を第2変調観測点という。第1変調で得られた観測点情報を第1変調観測点情報、第2変調で得られた観測点情報を第2変調観測点情報という。
【0024】
次に、制御装置6が実行する軸ずれ調整処理の手順を説明する。軸ずれ調整処理は、制御装置6の動作中において変調周期Tmが経過する毎に繰り返し実行される処理である。
軸ずれ調整処理が実行されると、制御装置6のCPU11は、
図5に示すように、S10にて、後述する路側物候補点抽出処理を実行する。路側物候補点抽出処理は、レーダ装置2から取得した多数の第1変調観測点情報の中から、路側物の候補となる路側物候補点を抽出する処理である。
【0025】
CPU11は、S20にて、後述する路側物点群抽出処理を実行する。路側物点群抽出処理は、S10で抽出した複数の路側物候補点の中から、路側物を構成する点群(以下、路側物点群)を抽出する処理である。
【0026】
CPU11は、S30にて、後述する路側物点群対応付け処理を実行する。路側物点群対応付け処理は、S30で抽出した路側物点群を第2変調観測点に対応付ける処理である。
【0027】
CPU11は、S40にて、後述する軸ずれ角度推定処理を実行する。軸ずれ角度推定処理は、S40で対応付けられた第2変調観測点に基づいて、レーダ装置2の垂直軸ずれ角度θmを算出する処理である。
【0028】
CPU11は、S50にて、レーダ搭載角調整装置3による軸ずれ調整が可能であるか否かを判断する。具体的には、S40で算出された垂直軸ずれ角度θmが、予め設定された調整可能角以下であるか否かを判断し、垂直軸ずれ角度θmが調整可能角以下である場合に、軸ずれ調整が可能であると判断する。
【0029】
ここで、軸ずれ調整が可能である場合には、CPU11は、S60にて、レーダ搭載角調整装置3によって軸ずれ角度θmだけ自車両の車幅方向に沿った軸を中心にレーダ装置2を回転させて、レーダ装置2の中心軸CAが自車両の前後方向と一致するようにレーダ搭載角を調整して、軸ずれ調整処理を終了する。
【0030】
一方、軸ずれ調整が可能でない場合には、CPU11は、S70にて、レーダ装置2の中心軸CAがずれていることを示すダイアグ情報を制御装置6の外部へ出力して、軸ずれ調整処理を終了する。
【0031】
次に、S10で実行される路側物候補点抽出処理の手順を説明する。
路側物候補点抽出処理が実行されると、CPU11は、
図6に示すように、S110にて、前回の路側物候補点抽出処理から今回の路側物候補点抽出処理までの間に新たに取得した第1変調観測点情報の中から、今回の路側物候補点抽出処理において選択されていない1つの第1変調観測点情報を選択する。
【0032】
CPU11は、S120にて、S110で選択された第1変調観測点情報(以下、選択観測点情報)について、予め設定された距離抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の距離抽出条件は、選択観測点情報の距離Rが、予め設定された第1距離閾値以上であり且つ予め設定された第2距離閾値未満であることである。本実施形態では、第1距離閾値は例えば2m、第2距離閾値は例えば100mである。
【0033】
ここで、距離抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、距離抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S130にて、選択観測点情報について、予め設定された水平方位抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の水平方位抽出条件は、選択観測点情報の水平方位角θが、予め設定された第1水平方位角閾値以上であり且つ予め設定された第2水平方位角閾値未満であることである。
【0034】
ここで、水平方位抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、水平方位抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S140にて、選択観測点情報について、予め設定された電力抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の電力抽出条件は、選択観測点情報の受信電力Wが、予め設定された第1電力閾値以上であり且つ予め設定された第2電力閾値未満であることである。
【0035】
ここで、電力抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、電力抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S150にて、選択観測点情報について、予め設定された相対速度抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の相対速度抽出条件は、選択観測点情報の相対速度Vの絶対値と、車載センサ群5に含まれる車速センサにより検出された走行速度の絶対値との差が、予め設定された相対速度閾値未満であることである。なお、相対速度閾値は、相対速度Vの絶対値と、車速センサにより検出された走行速度の絶対値との差が小さいことを示すように設定される。
【0036】
ここで、相対速度抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、相対速度抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S160にて、選択観測点情報について、予め設定された自車両状態抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の自車両状態抽出条件は、予め設定された加速度抽出条件と、予め設定されたヨーレート抽出条件との両方が成立することである。本実施形態の加速度抽出条件は、車載センサ群5に含まれる加速度センサにより検出された加速度が予め設定された加速度閾値未満であることである。本実施形態のヨーレート抽出条件は、車載センサ群5に含まれるヨーレートセンサにより検出されたヨーレートが予め設定されたヨーレート閾値未満であることである。すなわち、自車両状態抽出条件は、自車両が一定速度で直線走行していることである。
【0037】
ここで、自車両状態抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、自車両状態抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S170にて、選択観測点情報について、予め設定されたカメラ抽出条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態のカメラ抽出条件は、カメラ4で撮影した画像内において、選択観測点情報に対応する位置に路側物が存在していることである。CPU11は、カメラ4で撮影した画像について周知の画像処理を実行することによって、カメラ4で撮影した画像内に存在している路側物を特定する。
【0038】
ここで、カメラ抽出条件が成立していない場合には、CPU11は、S190に移行する。一方、カメラ抽出条件が成立している場合には、CPU11は、S180にて、選択観測点情報を、「路側物候補点」に分類し、S200に移行する。
【0039】
S190に移行すると、CPU11は、選択観測点情報を、「非路側物」に分類し、S200に移行する。
S200に移行すると、CPU11は、新たに取得した全ての第1変調観測点情報をS110で選択したか否かを判断する。ここで、全ての第1変調観測点情報を選択していない場合には、CPU11は、S110に移行する。一方、全ての第1変調観測点情報を選択した場合には、CPU11は、路側物候補点抽出処理を終了する。
【0040】
次に、S20で実行される路側物点群抽出処理の手順を説明する。
路側物点群抽出処理が実行されると、CPU11は、
図7に示すように、S310にて、複数の路側物候補点をグループ分けする候補点クラスタリング処理を行う。具体的には、CPU11は、例えば周知のk-means法によって、路側物候補点の位置に基づき、複数の路側物候補点を複数(例えば、6個)のクラスタに分割する。
【0041】
CPU11は、S320にて、S310で生成された複数のクラスタのそれぞれについて、予め設定された縦距離抽出条件が成立しているか否かを判断し、縦距離抽出条件が成立していないクラスタを除外する。本実施形態の縦距離抽出条件は、クラスタが、自車両の進行方向に沿って予め設定された縦距離閾値以上の長さを有することである。本実施形態では、縦距離閾値は例えば40mである。具体的には、CPU11は、クラスタを構成する複数の路側物候補点の中から、自車両から進行方向に沿って最も遠い路側物候補点の観測点情報の距離Rと、自車両から進行方向に沿って最も近い路側物候補点の観測点情報の距離Rとの差が縦距離閾値以上である場合に、縦距離抽出条件が成立していると判断する。
【0042】
CPU11は、S330にて、S320で除外されなかったクラスタについて、予め設定された横距離抽出条件が成立しているか否かを判断し、横距離抽出条件が成立していないクラスタを除外する。本実施形態の横距離抽出条件は、クラスタが、自車両の車幅方向に沿って予め設定された横距離閾値未満の長さを有することである。本実施形態では、横距離閾値は例えば1mである。具体的には、CPU11は、クラスタを構成する複数の路側物候補点の中から、自車両から車幅方向に沿って最も遠い路側物候補点の観測点情報の距離Rと、自車両から車幅方向に沿って最も近い路側物候補点の観測点情報の距離Rとの差が横距離閾値未満である場合に、横距離抽出条件が成立していると判断する。
【0043】
CPU11は、S340にて、S320およびS330で除外されなかったクラスタについて、予め設定された横位置抽出条件が成立している否かを判断し、横位置抽出条件が成立しているクラスタを、「路側物点群」に設定し、路側物点群抽出処理を終了する。本実施形態の横位置抽出条件は、自車両の左側において最も内側に位置していることである。
【0044】
図8に示すように、自車両VH0が片側2車線の追い越しレーンLN1を走行し、自車両VH0の前方左側で3台の車両VH1,VH2,VH3が進行方向に沿って直線状に並んで走行レーンLN2を走行しているとする。また、走行レーンLN2の左側にガードレールGRが設置されているとする。
【0045】
自車両VH0に搭載されているレーダ装置2が、第1変調のレーダ波(すなわち、上記の第1レーダ波)を送受信することにより、レーダ装置2から近い順に観測点OP1,OP2,OP3,OP4,OP5,OP6,OP7,OP8,OP9,OP10,OP11,OP12,OP13,OP14,OP15を検出したとする。
【0046】
観測点OP1は、車両VH1の後方右側で第1レーダ波が反射した地点である。観測点OP2は、車両VH1の前方右側で第1レーダ波が反射した地点である。
観測点OP3は、車両VH2の後方右側で第1レーダ波が反射した地点である。観測点OP4は、車両VH2の前方右側で第1レーダ波が反射した地点である。
【0047】
観測点OP5は、車両VH3の後方右側で第1レーダ波が反射した地点である。観測点OP6は、車両VH3の前方右側で第1レーダ波が反射した地点である。
観測点OP7~OP15は、ガードレールGRで第1レーダ波が反射した地点である。
【0048】
上記の候補点クラスタリング処理によって、観測点OP1~OP6を含むクラスタCL1と、観測点OP7~OP15を含むクラスタCL2とが生成される。
クラスタCL1は、自車両の進行方向に沿った長さが短いため、縦距離抽出条件が成立せず、路側物点群抽出処理におけるS320の処理で除外される。クラスタCL2は、自車両の進行方向に沿った長さが長いため、縦距離抽出条件が成立し、路側物点群抽出処理におけるS320の処理で除外されない。そして、クラスタCL2が「路側物点群」に設定される。
図8では、クラスタが「路側物点群」に設定されていることを、実線の矩形で表し、クラスタが「路側物点群」に設定されていないことを、破線の矩形で表している。
【0049】
また、自車両VH0に搭載されているレーダ装置2が、第2変調のレーダ波(すなわち、上記の第2レーダ波)を送受信することにより、レーダ装置2から近い順に観測点OP21,OP22,OP23,OP24,OP25,OP26,OP27,OP28,OP29,OP30を検出したとする。第2変調の最大検出距離は第1変調の最大検出距離より短く、レーダ装置2は、第2変調では、観測点OP30より遠い観測点を検出することができない。
【0050】
観測点OP21は、車両VH1の後方右側で第2レーダ波が反射した地点である。観測点OP22は、車両VH1の前方右側で第2レーダ波が反射した地点である。
観測点OP23は、車両VH2の後方右側で第2レーダ波が反射した地点である。観測点OP24は、車両VH2の前方右側で第2レーダ波が反射した地点である。
【0051】
観測点OP25は、車両VH3の後方右側で第2レーダ波が反射した地点である。観測点OP26は、車両VH3の前方右側で第2レーダ波が反射した地点である。
観測点OP27~OP30は、ガードレールGRで第2レーダ波が反射した地点である。
【0052】
上記の候補点クラスタリング処理によって、観測点OP21~OP26を含むクラスタCL21と、観測点OP27~OP30を含むクラスタCL12とが生成される。
クラスタCL11は、自車両の進行方向に沿った長さが短いため、縦距離抽出条件が成立せず、路側物点群抽出処理におけるS320の処理で除外される。また、クラスタCL12は、自車両の進行方向に沿った長さが短いため、ガードレールGRで反射した観測点であるにも関わらず縦距離抽出条件が成立せず、路側物点群抽出処理におけるS320の処理で除外される。
【0053】
このため、クラスタCL12が「路側物点群」に設定されるように、縦距離抽出条件における縦距離閾値を小さくすると、車両VH1,VH2,VH3で反射した観測点で構成されるクラスタCL11も「路側物点群」に設定されてしまう。
図8において、実線の矩形で示すクラスタCL11,CL12は、「路側物点群」に設定されていることを表している。
【0054】
このため、ガードレールで反射した観測点で構成されるクラスタを「路側物点群」に設定するためには、第2変調ではなく、第1変調を用いる必要がある。
次に、S30で実行される路側物点群対応付け処理の手順を説明する。
【0055】
路側物点群対応付け処理が実行されると、CPU11は、
図9に示すように、S410にて、S340で「路側物点群」に設定されたクラスタ(以下、設定クラスタ)に含まれる観測点の中から、今回の路側物点群対応付け処理において選択されていない1つの観測点を選択する。
【0056】
CPU11は、S420にて、S410で選択された第1変調観測点(以下、選択観測点)と、同一の変調周期Tm内における第2変調期間で検出された全ての第2変調観測点のそれぞれとの間の距離(以下、観測点間距離差)を算出する。
【0057】
例えば、
図8に示す観測点OP7が選択観測点である場合には、CPU11は、観測点OP7と、第2変調で検出された観測点OP21~OP30のそれぞれとの間の距離を観測点間距離差として算出する。
【0058】
CPU11は、S430にて、S420で算出された観測点間距離差のそれぞれについて、予め設定された対応付け条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態の対応付け条件は、観測点間距離差が最小であり、且つ、観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満であることである。
【0059】
ここで、対応付け条件が成立している観測点間距離差が存在しない場合には、CPU11は、S450に移行する。一方、対応付け条件が成立している観測点間距離差が存在している場合には、CPU11は、S440にて、対応付け条件が成立している観測点間距離差に対応する第2変調観測点を選択観測点(すなわち、第1変調の観測点)に対応付け、選択観測点に対応付けられた第2変調観測点の第2変調観測点情報をRAM13に記憶し、S450に移行する。例えば、
図8に示す観測点OP7,OP8,OP9,OP10はそれぞれ、観測点OP27,OP28,OP29,OP30に対応付けられる。
【0060】
S450に移行すると、CPU11は、設定クラスタに含まれる全ての第1変調観測点がS410で選択されたか否かを判断する。ここで、全ての第1変調観測点が選択されていない場合には、CPU11は、S410に移行する。一方、全ての第1変調観測点が選択された場合には、CPU11は、路側物点群対応付け処理を終了する。
【0061】
次に、S40で実行される軸ずれ角度推定処理の手順を説明する。
軸ずれ角度推定処理が実行されると、CPU11は、
図10に示すように、S510にて、S450において第1変調観測点に対応付けられた第2変調観測点(以下、対応観測点)のそれぞれについて、対応観測点の第2変調観測点情報に含まれる距離R、水平方位角θおよび垂直方位角φに基づいて、対応観測点の位置(x,y,z)を算出する。位置(x,y,z)は、レーダ装置2を原点とした3次元直交座標系での位置である。
図11に示すように、3次元直交座標系のX軸は、レーダ装置2におけるレーダ波送受信の中心軸CAと一致している。3次元直交座標系のY軸は、自車両VH0の車幅方向に沿ってX軸と直交するように設定される。3次元直交座標系のZ軸は、X軸およびY軸と直交するように設定される。
【0062】
図10に示すように、CPU11は、S520にて、全ての対応観測点の位置のばらつきが小さいことを示す予め設定されたばらつき判定条件が成立しているか否かを判断する。ばらつき条件は、上記の3次元直交座標系のZ-X平面において、複数の対応観測点が、次のS530の処理において後述する近似直線ASを算出することが困難な程度にばらついているか否かを判断する条件である。このばらつき条件として、例えば、Z-Y平面における複数の対応観測点の相関係数等を採用することができる。
【0063】
ここで、ばらつき判定条件が成立していない場合には、CPU11は、軸ずれ角度推定処理を終了する。一方、ばらつき判定条件が成立している場合には、CPU11は、S530にて、全ての対応観測点の位置(x,y,z)を用いて、最小二乗法によって近似直線ASを算出する。
【0064】
図11に示すように、近似直線ASは、上記の3次元直交座標系のZ-X平面上を通る直線であり、下式(1)で表される。式(1)におけるβは傾き、Cは切片である。
図11は、ガードレールGRで反射した対応観測点OP41,OP42,OP43,OP44,OP45,OP46の位置(x,y,z)を用いて算出された近似直線ASを示している。
【0065】
Z = β・X + C ・・・(1)
図10に示すように、CPU11は、S540にて、近似直線ASの傾きβに対応した角度を算出し、この角度の正負を逆にすることにより、垂直軸ずれ角度θmを算出し、軸ずれ角度推定処理を終了する。
【0066】
図12に示すように、自車両VH0に搭載されているレーダ装置2が、第1変調のレーダ波(すなわち、上記の第1レーダ波)を送受信することにより、レーダ装置2から近い順に、ガードレールGRで反射した観測点OP51,OP52,OP53,OP54,OP55,OP56,OP57,OP58,OP59を検出したとする。
【0067】
またレーダ装置2が、第2変調のレーダ波(すなわち、上記の第2レーダ波)を送受信することにより、レーダ装置2から近い順に、ガードレールGRで反射した観測点OP61,OP62,OP63,OP64,OP65,OP66を検出したとする。
【0068】
上述のように、第2変調の垂直測角精度は第1変調の垂直測角精度より高い。したがって、第2変調の観測点OP61~OP66の位置のばらつきは、第1変調の観測点OP61~OP59の位置のばらつきより小さくなる。
【0069】
このため、第1変調の観測点OP61~OP59を用いて近似直線ASを算出することによって得られる垂直軸ずれ角度θmよりも、第2変調の観測点OP61~OP66を用いて近似直線ASを算出することによって得られる垂直軸ずれ角度θmの方が、推定精度が高い。
【0070】
このように構成された制御装置6は、自車両VH0に搭載されたレーダ装置2の垂直軸ずれ角度θmを推定する。
レーダ装置2は、第1変調方法で変調された第1レーダ波を送受信することにより、第1レーダ波を反射した地点である第1変調観測点を検出し、レーダ装置2と第1変調観測点との間の距離R(以下、第1観測点距離)と、第1変調観測点が存在する水平方位角θおよび垂直方位角φ(以下、第1観測点方位角)とを含む第1変調観測点情報を繰り返し出力するように構成される。
【0071】
レーダ装置2は、第2変調方法で変調された第2レーダ波を送受信することにより、第2レーダ波を反射した地点である第2変調観測点を検出し、レーダ装置2と第2変調観測点との間の距離R(以下、第2観測点距離)と、第2変調観測点が存在する水平方位角θおよび垂直方位角φ(以下、第2観測点方位角)とを含む第2変調観測点情報を繰り返し出力するように構成される。
【0072】
制御装置6は、レーダ装置2が検出した複数の第1変調観測点の中から、自車両VH0が走行する走行路の側方において走行路より高い位置で走行路が延びる方向に沿って配置された路側物で反射した第1変調観測点を路側物点として抽出するように構成される。
【0073】
制御装置6は、路側物点の位置と第2変調観測点の位置とが近いことを示す予め設定された対応付け条件に基づいて、レーダ装置2が検出した複数の第2変調観測点の中から、路側物点に対応する第2変調観測点である対応観測点を抽出するように構成される。
【0074】
制御装置6は、抽出された複数の対応観測点の位置の分布に基づいて、路側物が延びる方向を示す傾きβを算出することによって、レーダ装置2により第1レーダ波および第2レーダ波が送受信される方向を示す中心軸CAが自車両VH0の前後方向に対して傾いている垂直軸ずれ角度θmを算出するように構成される。
【0075】
このような制御装置6は、走行路が延びる方向に沿って配置された路側物を検出するのに適した変調方法を第1変調方法に適用し、観測点の位置の検出精度が高い変調方法を第2変調方法に適用することにより、路側物が延びる方向を示す傾きβを精度良く算出することができるため、垂直軸ずれ角度θmの推定精度を向上させることができる。
【0076】
また、第1変調方法により検出可能な第1観測点距離の最大値である第1最大検出距離は、第2変調方法により検出可能な第2観測点距離の最大値である第2最大検出距離より長い。そして、垂直方向における第2観測点方位角を第2変調方法により検出するときの精度である第2垂直測角精度は、垂直方向における第1観測点方位角を第1変調方法により検出するときの精度である第1垂直測角精度より高い。これにより、制御装置6は、走行路が延びる方向に沿って配置された路側物を検出するために第1変調方法を利用し、傾きβを精度良く算出するために第2変調方法を利用することができる。
【0077】
また制御装置6は、路側物が、走行路が延びる方向に沿って高さが一定であることを利用して、垂直軸ずれ角度θmを算出するように構成される。これにより、制御装置6は、傾きβを簡便に算出することができる。
【0078】
また制御装置6は、複数の対応観測点の位置の分布を直線で近似することによって傾きβを算出するように構成される。これにより、制御装置6は、傾きβを簡便に算出することができる。
【0079】
以上説明した実施形態において、制御装置6は軸ずれ推定装置に相当し、自車両VH0は移動体に相当し、垂直軸ずれ角度θmは軸ずれ角度に相当し、第1変調観測点は第1観測点に相当し、第2変調観測点は第2観測点に相当する。
【0080】
また、S10,S20は第1路側物抽出部としての処理に相当し、ガードレールGRは路側物に相当し、路側物点は第1路側物観測点に相当し、S30は第2路側物抽出部としての処理に相当し、対応観測点は第2路側物観測点に相当する。
【0081】
また、S40は軸ずれ角度算出部としての処理に相当し、傾きβは方向情報に相当する。
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0082】
第2実施形態の軸ずれ検出システム1は、軸ずれ角度推定処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の軸ずれ角度推定処理は、S530の代わりにS532の処理を実行する点が第1実施形態と異なる。
【0083】
図13に示すように、S520にてばらつき判定条件が成立している場合に、CPU11は、S532にて、全ての対応観測点(すなわち、第2変調の観測点)の位置と、S340で「路側物点群」に設定されたクラスタ(すなわち、設定クラスタ)に含まれる観測点のうち対応観測点に対応付けられなかった全ての観測点(すなわち、第1変調の観測点)の位置とを用いて、最小二乗法によって近似直線ASを算出し、S540に移行する。
【0084】
例えば
図8に示すように、レーダ装置2が、第1変調のレーダ波(すなわち、上記の第1レーダ波)を送受信することにより、ガードレールGRで反射した観測点OP7,OP8,OP9,OP10,OP11,OP12,OP13,OP14,OP15を検出したとする。またレーダ装置2が、第2変調のレーダ波(すなわち、上記の第2レーダ波)を送受信することにより、ガードレールGRで反射した観測点OP27,OP28,OP29,OP30を検出したとする。
【0085】
この場合には、CPU11は、
図14に示すように、観測点OP27,OP28,OP29,OP30の位置と、観測点OP11,OP12,OP13,OP14,OP15の位置とを用いて、最小二乗法によって近似直線ASを算出する。観測点OP27~OP30は対応観測点である。観測点OP11~OP15は、対応観測点に対応付けられなかった観測点である。
【0086】
このように構成された制御装置6は、抽出された複数の対応観測点と、抽出された複数の路側物点のうち対応観測点に対応付けられていない路側物点との両方を用いて、傾きβを算出するように構成される。これにより、制御装置6は、傾きβを算出するために用いる観測点の数を増やすことができるため、垂直軸ずれ角度θmの推定精度を更に向上させることができる。
【0087】
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0088】
第3実施形態の軸ずれ検出システム1は、軸ずれ角度推定処理が変更された点が第1実施形態と異なる。
第3実施形態の軸ずれ角度推定処理は、S510,S520,S530の代わりにS514,S524,S534の処理を実行する点が第1実施形態と異なる。
【0089】
図15に示すように、第3実施形態の軸ずれ角度推定処理が実行されると、CPU11は、S514にて、直近の複数回(例えば、5回)の路側物点群対応付け処理で得られた全ての対応観測点のそれぞれについて、対応観測点の観測点情報に含まれる距離R、水平方位角θおよび垂直方位角φに基づいて、対応観測点の位置(x,y,z)を算出する。
【0090】
CPU11は、S524にて、S514で位置が算出された全ての対応観測点の位置のばらつきが小さいことを示す予め設定されたばらつき判定条件が成立しているか否かを判断する。
【0091】
ここで、ばらつき判定条件が成立していない場合には、CPU11は、軸ずれ角度推定処理を終了する。一方、ばらつき判定条件が成立している場合には、CPU11は、S534にて、直近の複数回の路側物点群対応付け処理で得られた全ての対応観測点の位置(x,y,z)を用いて、最小二乗法によって近似直線ASを算出し、S540に移行する。
【0092】
このように構成された制御装置6は、複数の変調周期Tmで得られた複数の対応観測点の位置の分布に基づいて傾きβを算出することによって垂直軸ずれ角度θmを算出するように構成される。これにより、制御装置6は、傾きβを算出するために用いる観測点の数を増やすことができるため、垂直軸ずれ角度θmの推定精度を更に向上させることができる。
【0093】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
上記実施形態では、FCM方式で変調されたレーダ波を送受信する形態を示したがレーダ装置2の物体検出方式は、物体の位置を検出することができる方式であればよい。FCMは、Fast-Chirp Modulationの略である。例えば、FMCW方式または二周波CW方式であってもよい。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。また、パルス信号を送受信する方式であってもよい。
【0094】
[変形例2]
上記実施形態では、垂直軸ずれ角度θmを推定する形態を示したが、水平方向における軸ずれ角度(すなわち、水平軸ずれ角度)を推定するようにしてもよい。
【0095】
[変形例3]
上記実施形態では、S430の対応付け条件が、観測点間距離差が最小であり、且つ、観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満であることである形態を示した。しかし、対応付け条件は、路側物点の位置と第2変調観測点の位置とが近いことを示す条件であればよい。このため、S430の対応付け条件は、観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満であることであってもよい。また、S430の対応付け条件は、路側物点の距離Rと第2変調観測点の距離Rとの差が予め設定された半径距離閾値未満となり、且つ、路側物点の水平方位角θと第2変調観測点の水平方位角θとの差が予め設定された方位角閾値未満であることであってもよい。路側物点の距離Rと第2変調観測点の距離Rとの差は半径距離差に相当し、路側物点の水平方位角θと第2変調観測点の水平方位角θとの差は方位角差に相当する。
【0096】
[変形例4]
上記実施形態では、第1最大検出距離が第2最大検出距離より長く、且つ、第2垂直測角精度が第1垂直測角精度より高い形態を示した。しかし、第1最大検出距離が第2最大検出距離より長く、レーダ装置2は、垂直方向における第1観測点方位角を第1変調方法により検出する機能を備えないように構成され、垂直方向における第2観測点方位角を第2変調方法により検出する機能を備えるように構成されてもよい。すなわち、制御装置6は、第1変調方法による垂直測角機能を備えていない場合であっても、垂直軸ずれ角度θmを推定することができる。
【0097】
[変形例5]
上記実施形態では、制御装置6が軸ずれ調整処理を実行する形態を示したが、レーダ装置2が軸ずれ調整処理を実行するようにしてもよい。
【0098】
本開示に記載の制御装置6およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置6およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置6およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御装置6に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0099】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0100】
上述した制御装置6の他、当該制御装置6を構成要素とするシステム、当該制御装置6としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
移動体(VH0)に搭載されたレーダ装置(2)の軸ずれ角度(θm)を推定する軸ずれ推定装置(6)であって、
前記レーダ装置は、第1変調方法で変調された第1レーダ波を送受信することにより、前記第1レーダ波を反射した地点である第1観測点を検出し、前記レーダ装置と前記第1観測点との間の距離である第1観測点距離と、前記第1観測点が存在する方位角である第1観測点方位角とを含む第1観測点情報を繰り返し出力するように構成され、
前記レーダ装置は、前記第1変調方法と異なる第2変調方法で変調された第2レーダ波を送受信することにより、前記第2レーダ波を反射した地点である第2観測点を検出し、前記レーダ装置と前記第2観測点との間の距離である第2観測点距離と、前記第2観測点が存在する方位角である第2観測点方位角とを含む第2観測点情報を繰り返し出力するように構成され、
当該軸ずれ推定装置は、
前記レーダ装置が検出した複数の前記第1観測点の中から、前記移動体が走行する走行路の側方において前記走行路より高い位置で前記走行路が延びる方向に沿って配置された路側物で反射した前記第1観測点を第1路側物観測点として抽出するように構成された第1路側物抽出部(S10,S20)と、
前記第1路側物観測点の位置と前記第2観測点の位置とが近いことを示す予め設定された対応付け条件に基づいて、前記レーダ装置が検出した複数の前記第2観測点の中から、前記第1路側物観測点に対応する前記第2観測点である第2路側物観測点を抽出するように構成された第2路側物抽出部(S30)と、
前記第2路側物抽出部により抽出された複数の前記第2路側物観測点の位置の分布に基づいて、前記路側物が延びる方向を示す方向情報(β)を算出することによって、前記レーダ装置により前記第1レーダ波および前記第2レーダ波が送受信される方向を示す中心軸(CA)が前記移動体の前後方向に対して傾いている角度を前記軸ずれ角度として算出するように構成された軸ずれ角度算出部(S40)と
を備える軸ずれ推定装置。
【0101】
[項目2]
項目1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1変調方法により検出可能な前記第1観測点距離の最大値である第1最大検出距離は、前記第2変調方法により検出可能な前記第2観測点距離の最大値である第2最大検出距離より長く、
垂直方向における前記第2観測点方位角を前記第2変調方法により検出するときの精度である第2垂直測角精度は、垂直方向における前記第1観測点方位角を前記第1変調方法により検出するときの精度である第1垂直測角精度より高い軸ずれ推定装置。
【0102】
[項目3]
項目1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記第1変調方法により検出可能な前記第1観測点距離の最大値である第1最大検出距離は、前記第2変調方法により検出可能な前記第2観測点距離の最大値である第2最大検出距離より長く、
前記レーダ装置は、垂直方向における前記第1観測点方位角を前記第1変調方法により検出する機能を備えないように構成され、
前記レーダ装置は、垂直方向における前記第2観測点方位角を前記第2変調方法により検出する機能を備えるように構成される軸ずれ推定装置。
【0103】
[項目4]
項目1~項目3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、前記第2路側物抽出部により抽出された複数の前記第2路側物観測点と、前記第1路側物抽出部により抽出された複数の前記第1路側物観測点のうち前記第2路側物観測点に対応付けられていない前記第1路側物観測点との両方を用いて、前記方向情報を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【0104】
[項目5]
項目1~項目3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記レーダ装置は、予め設定された変調周期毎に、複数の前記第1観測点情報と複数の前記第2観測点情報とを出力するように構成され、
前記軸ずれ角度算出部は、複数の前記変調周期で得られた複数の前記第2路側物観測点の位置の分布に基づいて前記方向情報を算出することによって前記軸ずれ角度を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【0105】
[項目6]
項目1~項目5の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、前記第1路側物観測点と前記第2観測点との間の距離である観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【0106】
[項目7]
項目1~項目5の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、複数の前記第2観測点のうち、前記第1路側物観測点と前記第2観測点との間の距離である観測点間距離差が最小であり、且つ、前記観測点間距離差が予め設定された対応付け閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【0107】
[項目8]
項目1~項目5の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記対応付け条件は、前記第1路側物観測点の前記第1観測点距離と前記第2観測点の前記第2観測点距離との差である半径距離差が予め設定された半径距離閾値未満となり、且つ、前記第1路側物観測点の前記第1観測点方位角と前記第2観測点の前記第2観測点方位角との差である方位角差が予め設定された方位角閾値未満となる前記第2観測点であることである軸ずれ推定装置。
【0108】
[項目9]
項目1~項目8の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、前記路側物が、前記走行路が延びる方向に沿って高さが一定であることを利用して、前記軸ずれ角度を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【0109】
[項目10]
項目1~項目9の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記軸ずれ角度算出部は、複数の前記第2路側物観測点の位置の分布を直線で近似することによって前記方向情報を算出するように構成される軸ずれ推定装置。
【符号の説明】
【0110】
2…レーダ装置、6…制御装置