(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118132
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】動脈瘤処置具および動脈瘤処置具を操作するロボット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240823BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20240823BHJP
【FI】
A61B17/12
A61B34/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024393
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀和
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD62
4C160DD70
(57)【要約】
【課題】接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができる動脈瘤処置具と、該動脈瘤処置具を操作し、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することができるロボットを提供する。
【解決手段】ワイヤー部材10と、ワイヤー部材10よりも近位側に配置されている第1応力センサ21と、第1応力センサ21の近位端部に接続されておりポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材30と、接続部材30よりも近位側に配置されている第2応力センサ22と、接続部材30よりも近位側に配置されているプッシャー部材40と、を備え、第1応力センサ21によって検出される応力信号の波形の振幅と第2応力センサ22によって検出される応力信号の波形の振幅の差分を出力するように構成されている動脈瘤処置具1と、当該動脈瘤処置具1を操作するロボット100。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤー部材と、
前記ワイヤー部材よりも近位側に配置されている第1応力センサと、
前記第1応力センサの近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材と、
前記接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサと、
前記接続部材よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材と、
を備えており、
前記第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から前記第1応力センサによって前記第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第1の値と、前記第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から前記第2応力センサによって前記第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第2の値との差分を出力するように構成されている動脈瘤処置具。
【請求項2】
ワイヤー部材と、
前記ワイヤー部材よりも近位側に配置されている第1応力センサと、
前記第1応力センサの近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材と、
前記接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサと、
前記接続部材よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材と、
を備えており、
前記第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の極大値の平均から前記第1応力センサによって前記第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の極小値の平均を引いた第3の値と、前記第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の極大値の平均から前記第2応力センサによって前記第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の極小値の平均を引いた第4の値との差分を出力するように構成されている動脈瘤処置具。
【請求項3】
前記第2応力センサは前記プッシャー部材よりも遠位側に配置されている請求項1または2に記載の動脈瘤処置具。
【請求項4】
前記第2応力センサが前記プッシャー部材の近位部に設けられている請求項1または2に記載の動脈瘤処置具。
【請求項5】
前記第1の所定時間と前記第2の所定時間が同じである請求項1または2に記載の動脈瘤処置具。
【請求項6】
請求項1に記載の動脈瘤処置具を操作するロボットであって、
前記ロボットは、前記第1応力センサと前記第2応力センサに接続されている波形入力部と、前記第1の値と前記第2の値との差分が記憶されているメモリ部と、前記プッシャー部材を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部と、前記操作部に信号を送る制御部と、前記波形入力部に入力された波形から前記第1の値と前記第2の値を算出し、前記第1の値と前記第2の値との差分を算出する演算処理部と、を有しており、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される前記第1の値と前記第2の値との差分と、前記メモリ部に記憶されている前記第1の値と前記第2の値との差分とに基づいて、前記操作部を動作させるように構成されているロボット。
【請求項7】
請求項2に記載の動脈瘤処置具を操作するロボットであって、
前記ロボットは、前記第1応力センサと前記第2応力センサに接続されている波形入力部と、前記第3の値と前記第4の値との差分が記憶されているメモリ部と、前記プッシャー部材を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部と、前記操作部に信号を送る制御部と、前記波形入力部に入力された波形から前記第3の値と前記第4の値を算出し、前記第3の値と前記第4の値との差分を算出する演算処理部と、を有しており、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される前記第3の値と前記第4の値との差分と、前記メモリ部に記憶されている前記第3の値と前記第4の値との差分とに基づいて、前記操作部を動作させるように構成されているロボット。
【請求項8】
前記ロボットは、前記接続部材に接続されている電源部をさらに有し、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される差分と、前記メモリ部に記憶されている差分とを比較して、前記電源部によって前記接続部材に流される電流の強さを調節するように構成されている請求項6または7に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈瘤処置具および動脈瘤処置具を操作するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
頭頸部の動脈瘤、動静脈奇形、動静脈瘻、肺血管奇形、腎血管奇形、腎動脈、腹部動脈瘤等の血管病変の治療法の一つである血管内治療では、塞栓形成用の生体内留置具を目的の動脈瘤内に留置し、血栓化を促進することによって動脈瘤が破裂するのを防いでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、生体内留置部材配置用ワイヤーと、このワイヤーの先端に切断可能な第1の連結部材によって連結された生体内留置部材とからなり、前記生体内留置部材は、複数の生体内留置素子が1または2以上の切断可能な第2の連結部材を介して順次に連結されてなることを特徴とする生体内留置部材配置用ワイヤー装置について記載されている。また、第1の連結部材と第2の連結部材が熱溶断性材料であるポリビニルアルコールにより形成されることにより、切断したい連結部材部分を加熱することで切断できるものであることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている第1の連結部材と第2の連結部材について、加熱開始後、いつ切断が完了するかを予測することは困難であり、生体内留置部材配置用ワイヤー装置を体内から抜去するタイミングを判断することが困難であった。
【0006】
また、生体内留置部材配置用ワイヤー装置を体内から抜去するタイミングを判断することが困難であることから、ロボットがこのような生体内留置部材配置用ワイヤー装置を操作することによって、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することは困難であった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができ、抜去するタイミングを判断しやすい動脈瘤処置具を提供することにある。また、上記動脈瘤処置具を操作し、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することができるロボットも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の実施の態様に係る動脈瘤処置具は、以下の通りである。
[1] ワイヤー部材と、
前記ワイヤー部材よりも近位側に配置されている第1応力センサと、
前記第1応力センサの近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材と、
前記接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサと、
前記接続部材よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材と、
を備えており、
前記第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から前記第1応力センサによって前記第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第1の値と、前記第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から前記第2応力センサによって前記第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第2の値との差分を出力するように構成されている動脈瘤処置具。
【0009】
プッシャー部材を近位側から遠位側に移動させることにより、ワイヤー部材を動脈瘤内に詰めることができる。接続部材はポリビニルアルコールを含む材料で構成されているため、体液にさらされることによって膨潤する。膨潤した接続部材に電流が供給されることによって、接続部材の温度が上昇する。その結果、接続部材は溶融し、最終的には切り離される。このように、接続部材は電流が流されることで剛性が低くなるため、プッシャー部材から伝えられた力が進行方向以外の方向に逃げやすくなる。このため、電流が流されることにより、接続部材よりも遠位側に配置されている第1応力センサによって検出される応力信号の波形の振幅は、接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサによって検出される応力信号の波形の振幅よりも小さくなる。第1の値と第2の値との差分は、接続部材の剛性が低くなるほど小さくなるため、第1の値と第2の値との差分を出力するように構成されていることにより、その差分の変化から接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができる。これにより、動脈瘤処置具を抜去するタイミングを判断しやすくなる。
【0010】
本発明の第2の実施の態様に係る動脈瘤処置具は、以下の通りである。
[2] ワイヤー部材と、
前記ワイヤー部材よりも近位側に配置されている第1応力センサと、
前記第1応力センサの近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材と、
前記接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサと、
前記接続部材よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材と、
を備えており、
前記第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の極大値の平均から前記第1応力センサによって前記第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の極小値の平均を引いた第3の値と、前記第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の極大値の平均から前記第2応力センサによって前記第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の極小値の平均を引いた第4の値との差分を出力するように構成されている動脈瘤処置具。
【0011】
プッシャー部材を近位側から遠位側に移動させることにより、ワイヤー部材を動脈瘤内に詰めることができる。接続部材はポリビニルアルコールを含む材料で構成されているため、体液にさらされることによって膨潤する。膨潤した接続部材に電流が供給されることによって、接続部材の温度が上昇する。その結果、接続部材は溶融し、最終的には切り離される。このように、接続部材は電流が流されることで剛性が低くなるため、プッシャー部材から伝えられた力が進行方向以外の方向に逃げやすくなる。このため、電流が流されることにより、接続部材よりも遠位側に配置されている第1応力センサによって検出される応力信号の波形の振幅は、接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサによって検出される応力信号の波形の振幅よりも小さくなる。第3の値と第4の値との差分は、接続部材の剛性が低くなるほど小さくなるため、第3の値と第4の値との差分を出力するように構成されていることにより、その差分の変化から接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができる。これにより、動脈瘤処置具を抜去するタイミングを判断しやすくなる。
【0012】
本発明の動脈瘤処置具は、以下の[3]~[5]であることが好ましい。
[3] 前記第2応力センサは前記プッシャー部材よりも遠位側に配置されている[1]または[2]に記載の動脈瘤処置具。
[4] 前記第2応力センサが前記プッシャー部材の近位部に設けられている[1]または[2]に記載の動脈瘤処置具。
[5] 前記第1の所定時間と前記第2の所定時間が同じである[1]~[4]のいずれか一項に記載の動脈瘤処置具。
【0013】
本発明は、以下の[6]に記載のロボットを含む。
[6] [1]に記載の動脈瘤処置具を操作するロボットであって、
前記ロボットは、前記第1応力センサと前記第2応力センサに接続されている波形入力部と、前記第1の値と前記第2の値との差分が記憶されているメモリ部と、前記プッシャー部材を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部と、前記操作部に信号を送る制御部と、前記波形入力部に入力された波形から前記第1の値と前記第2の値を算出し、前記第1の値と前記第2の値との差分を算出する演算処理部と、を有しており、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される前記第1の値と前記第2の値との差分と、前記メモリ部に記憶されている前記第1の値と前記第2の値との差分とに基づいて、前記操作部を動作させるように構成されているロボット。
【0014】
本発明の動脈瘤処置具は、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができ、抜去するタイミングを判断しやすいものである。このため、ロボットは、演算処理部で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、操作部を動作させることにより、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを判断し、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することができる。
【0015】
本発明は、以下の[7]に記載のロボットを含む。
[7] [2]に記載の動脈瘤処置具を操作するロボットであって、
前記ロボットは、前記第1応力センサと前記第2応力センサに接続されている波形入力部と、前記第3の値と前記第4の値との差分が記憶されているメモリ部と、前記プッシャー部材を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部と、前記操作部に信号を送る制御部と、前記波形入力部に入力された波形から前記第3の値と前記第4の値を算出し、前記第3の値と前記第4の値との差分を算出する演算処理部と、を有しており、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される前記第3の値と前記第4の値との差分と、前記メモリ部に記憶されている前記第3の値と前記第4の値との差分とに基づいて、前記操作部を動作させるように構成されているロボット。
【0016】
本発明の動脈瘤処置具は、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができ、抜去するタイミングを判断しやすいものである。このため、ロボットは、演算処理部で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、操作部を動作させることにより、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを判断し、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することができる。
【0017】
本発明のロボットは、以下の[8]であることが好ましい。
[8] 前記ロボットは、前記接続部材に接続されている電源部をさらに有し、
前記制御部が、前記演算処理部で算出される差分と、前記メモリ部に記憶されている差分とを比較して、前記電源部によって前記接続部材に流される電流の強さを調節するように構成されている[6]または[7]に記載のロボット。
【発明の効果】
【0018】
本発明の動脈瘤処置具は、接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測することができるものである。これにより、動脈瘤処置具を抜去するタイミングを判断しやすくすることができる。また、本発明のロボットは、上記動脈瘤処置具を操作し、ワイヤー部材を動脈瘤に留置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図2】
図2は、
図1に示す第1応力センサによって第1の所定時間内に検出された応力信号の波形の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第2応力センサによって第2の所定時間内に検出された応力信号の波形の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の所定時間ごとに第1の値をプロットし、第2の所定時間ごとに第2の値をプロットしたグラフである。
【
図5】
図5は、第1の所定時間ごとに第3の値をプロットし、第2の所定時間ごとに第4の値をプロットしたグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットを示す模式図を表す。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットを遠隔操作する操作装置を示す模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具は、ワイヤー部材と、ワイヤー部材よりも近位側に配置されている第1応力センサと、第1応力センサの近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材と、接続部材よりも近位側に配置されている第2応力センサと、接続部材よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材と、を備えており、第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から第1応力センサによって第1の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第1の値と、第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最大値から第2応力センサによって第2の所定時間内に検出される応力信号の波形の最小値を引いた第2の値との差分を出力するように構成されている点に要旨を有する。
【0022】
図1~
図7を参照して本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具1の全体構成について説明する。
図1、
図6、
図7では、ワイヤー部材10と、第1応力センサ21と、接続部材30と、第2応力センサ22と、プッシャー部材40と、を備えている動脈瘤処置具1を示す。本図面においては、プッシャー部材40の延在方向をxで表している。
【0023】
本明細書内において、近位側とはプッシャー部材40の延在方向xに対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、各部材の遠位部とは各部材のうちの遠位側半分を指し、各部材の近位部とは各部材のうちの近位側半分を指す。各部材の遠位端とは各部材のうち最も遠位側に位置している端である。各部材の近位端とは各部材のうち最も近位側に位置している端である。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を示す側面図(一部断面図)を表す。
図2は、
図1に示す第1応力センサによって第1の所定時間内に検出された応力信号の波形の一例を示す図である。
図3は、
図1に示す第2応力センサによって第2の所定時間内に検出された応力信号の波形の一例を示す図である。
図4は、第1の所定時間ごとに第1の値をプロットし、第2の所定時間ごとに第2の値をプロットしたグラフである。
図5は、第1の所定時間ごとに第3の値をプロットし、第2の所定時間ごとに第4の値をプロットしたグラフである。
図6は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
図7は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具の変形例を示す側面図(一部断面図)を表す。
【0025】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、ワイヤー部材10を備えている。ワイヤー部材10は、少なくとも一または複数のワイヤー11を含む。ワイヤー部材10は、ワイヤー11以外の部品を含んでいてもよいが、ワイヤー11のみから構成されていることが好ましい。ワイヤー部材10は動脈瘤に留置される部材である。
【0026】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、ワイヤー部材10よりも近位側に配置されている第1応力センサ21を備えている。第1応力センサ21は、加えられた応力を検知して応力信号を出力するセンサである。
【0027】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、第1応力センサ21の近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材30を備えている。
【0028】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、接続部材30よりも近位側に配置されている第2応力センサ22を備えている。第2応力センサ22は、加えられた応力を検知して応力信号を出力するセンサである。
【0029】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、接続部材30よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材40を備えている。プッシャー部材40は、ワイヤー部材10を遠位側に向かって押すために用いられる部材である。
【0030】
図1~
図4に示すように、動脈瘤処置具1は、第1応力センサ21によって第1の所定時間T
1内に検出される応力信号の波形210の最大値から第1応力センサ21によって第1の所定時間T
1内に検出される応力信号の波形210の最小値を引いた第1の値と、第2応力センサ22によって第2の所定時間T
2内に検出される応力信号の波形220の最大値から第2応力センサ22によって第2の所定時間T
2内に検出される応力信号の波形220の最小値を引いた第2の値との差分を出力するように構成されている。
【0031】
第1の値は、第1応力センサ21によって第1の所定時間T1内に検出される応力信号の波形210のうち最も高い部分210tの値から、第1応力センサ21によって第1の所定時間T1内に検出される応力信号の波形210のうち最も低い部分210bの値を引いたものである。
【0032】
第2の値は、第2応力センサ22によって第2の所定時間T2内に検出される応力信号の波形220のうち最も高い部分220tの値から、第2応力センサ22によって第2の所定時間T2内に検出される応力信号の波形220のうち最も低い部分220bの値を引いたものである。
【0033】
動脈瘤処置具1は、上記第1の値と上記第2の値の差分を出力するように構成されている。
【0034】
例えば、上記第1の値と上記第2の値の差分は下記のようにして出力するように構成することができる。応力測定開始後第1の所定時間T
1ごとに第1の値を求め、上記応力測定開始後第2の所定時間T
2ごとに第2の値を求める。そして、応力測定開始後n番目の第1の値H
nと、応力測定開始後n番目の第2の値I
nの差分を出力する。本明細書内において、nは0よりも大きい整数を表すものとし、以降の説明でも同様である。応力測定開始後n番目の第1の値H
nと、応力測定開始後n番目の第2の値I
nを示しているのが
図4である。
図4の横軸は時間であり、第1の値は白丸、第2の値は黒丸でプロットしている。
図4の第1の所定時間T
1と第2の所定時間T
2は同じ時間である。なお、「0」は応力測定開始を表す。より具体的には、応力測定開始後1番目の第1の値H
1と応力測定開始後1番目の第2の値I
1の差分を出力し、その後も、応力測定開始後2番目の第1の値H
2と応力測定開始後2番目の第2の値I
2の差分を出力し、応力測定開始後3番目の第1の値H
3と応力測定開始後3番目の第2の値I
3の差分を出力する、というように、順にn番目の第1の値H
nとn番目の第2の値I
nとの差分を出力するということである。
【0035】
応力測定開始後n番目の第1のH
nと、応力測定開始後n番目の第2の値I
nの差分を出力する方法以外にも、
図4に示すように、白丸でプロットした第1の値の近似曲線と、黒丸でプロットした第2の値の近似曲線を引き、横軸が所定の時間Aであるときの第1の値の近似曲線の縦軸の値Bと、横軸が所定の時間Aであるときの第2の値の近似曲線の縦軸の値Cの差分を出力する構成としても構わない。所定の時間Aは、接続部材30の形状や大きさ、幅などに応じて設定することができる。所定の時間Aは1つのみ設定されてもよく、複数設定されていてもよい。
【0036】
プッシャー部材40を近位側から遠位側に移動させることにより、ワイヤー部材10を動脈瘤内に詰めることができる。接続部材30はポリビニルアルコールを含む材料で構成されているため、体液にさらされることによって膨潤する。膨潤した接続部材30に電流が供給されることによって、接続部材30の温度が上昇する。その結果、接続部材30は溶融し、最終的には切り離される。このように、接続部材30は電流が流されることで剛性が低くなるため、プッシャー部材40から伝えられた力が進行方向以外の方向に逃げやすくなる。このため、電流が流されることにより、接続部材30よりも遠位側に配置されている第1応力センサ21によって検出される応力信号の波形210の振幅は、接続部材30よりも近位側に配置されている第2応力センサ22によって検出される応力信号の波形220の振幅よりも小さくなる。第1の値と第2の値との差分は、接続部材30の剛性が低くなるほど小さくなるため、第1の値と第2の値との差分を出力するように構成されていることにより、その差分の変化から接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを予測することができる。これにより、動脈瘤処置具1を抜去するタイミングを判断しやすくなる。
【0037】
図1~
図3、
図5に示すように、本発明の第2の実施の態様に係る動脈瘤処置具は、ワイヤー部材10と、ワイヤー部材10よりも近位側に配置されている第1応力センサ21と、第1応力センサ21の近位端部に接続されており、ポリビニルアルコールを含む材料で構成されている接続部材30と、接続部材30よりも近位側に配置されている第2応力センサ22と、接続部材30よりも近位側に配置されており、遠位側から近位側に向かって延在しているプッシャー部材40と、を備えており、第1応力センサ21によって第1の所定時間T
1内に検出される応力信号の波形210の極大値の平均から第1応力センサ21によって第1の所定時間T
1内に検出される応力信号の波形210の極小値の平均を引いた第3の値と、第2応力センサ22によって第2の所定時間T
2内に検出される応力信号の波形220の極大値の平均から第2応力センサ22によって第2の所定時間T
2内に検出される応力信号の波形220の極小値の平均を引いた第4の値との差分を出力するように構成されている点に要旨を有する。なお、第1の実施の形態における説明と重複する内容については説明を省略している。
【0038】
第3の値は、第1応力センサ21によって第1の所定時間T1内に検出される応力信号の波形210の極大部210pの値の平均から、第1応力センサ21によって第1の所定時間T1内に検出される応力信号の波形210の極小部210vの値の平均を引いたものである。
【0039】
第4の値は、第2応力センサ22によって第2の所定時間T2内に検出される応力信号の波形220の極大部220pの値の平均から第2応力センサ22によって第2の所定時間T2内に検出される応力信号の波形220の極小部220vの値の平均を引いたものである。
【0040】
動脈瘤処置具1は、上記第3の値と上記第4の値の差分を出力するように構成されている。
【0041】
例えば、上記第3の値と上記第4の値の差分は下記のようにして出力するように構成することができる。応力測定開始後第1の所定時間T
1ごとに第3の値を求め、上記応力測定開始後第2の所定時間T
2ごとに第4の値を求める。そして、応力測定開始後n番目の第3の値J
nと、応力測定開始後n番目の第4の値K
nの差分を出力する。応力測定開始後n番目の第3の値J
nと、応力測定開始後n番目の第4の値K
nを示しているのが
図5である。
図5の横軸は時間であり、第3の値は白丸、第4の値は黒丸でプロットしている。
図5の第1の所定時間T
1と第2の所定時間T
2は同じ時間である。なお、「0」は応力測定開始を表す。より具体的には、応力測定開始後1番目の第3の値J
1と応力測定開始後1番目の第4の値K
1の差分を出力し、その後も、応力測定開始後2番目の第3の値J
2と応力測定開始後2番目の第4の値K
2の差分を出力し、応力測定開始後3番目の第3の値J
3と応力測定開始後3番目の第4の値K
3の差分を出力する、というように、順にn番目の第3の値J
nとn番目の第4の値K
nとの差分を出力するということである。
【0042】
応力測定開始後n番目の第3の値J
nと、応力測定開始後n番目の第4の値K
nの差分を出力する方法以外にも、
図5に示すように、白丸でプロットした第3の値の近似曲線と、黒丸でプロットした第4の値の近似曲線を引き、横軸が所定の時間Dであるときの第3の値の近似曲線の縦軸の値Eと、横軸が所定の時間Dであるときの第4の値の近似曲線の縦軸の値Fの差分を出力する構成としても構わない。所定の時間Dは、接続部材30の形状や大きさ、幅などに応じて設定することができる。所定の時間Dは1つのみ設定されてもよく、複数設定されていてもよい。
【0043】
プッシャー部材40を近位側から遠位側に移動させることにより、ワイヤー部材10を動脈瘤内に詰めることができる。接続部材30はポリビニルアルコールを含む材料で構成されているため、体液にさらされることによって膨潤する。膨潤した接続部材30に電流が供給されることによって、接続部材30の温度が上昇する。その結果、接続部材30は溶融し、最終的には切り離される。このように、接続部材30は電流が流されることで剛性が低くなるため、プッシャー部材40から伝えられた力が進行方向以外の方向に逃げやすくなる。このため、電流が流されることにより、接続部材30よりも遠位側に配置されている第1応力センサ21によって検出される応力信号の波形210の振幅は、接続部材30よりも近位側に配置されている第2応力センサ22によって検出される応力信号の波形220の振幅よりも小さくなる。第3の値と第4の値との差分は、接続部材30の剛性が低くなるほど小さくなるため、第3の値と第4の値との差分を出力するように構成されていることにより、その差分の変化から接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを予測することができる。これにより、動脈瘤処置具1を抜去するタイミングを判断しやすくなる。
【0044】
以下、第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具と第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具に共通する説明を記載する。
【0045】
図1に示すように、上述の動脈瘤処置具1は、シース2と共に使用されることが好ましい。シース2は、動脈瘤処置具1の搬送、輸送、保管のために用いられる部材である。
【0046】
シース2は、中空円柱状、中空多角柱状、筒状などの形状であることが好ましい。シース2は、プッシャー部材40の延在方向xに延在している内腔3を有しており、外側に面している外面4と、シース2の内腔3に面している内面5を有している。体腔内に配置されたシース2の内腔3に動脈瘤処置具1が挿入され、処置対象となる動脈瘤まで動脈瘤処置具1が搬送される。
【0047】
シース2は、体内に挿入されるため、好ましくは可撓性を有している。これにより体腔の形状に沿ってシース2を変形させることができる。また、形状保持のため、シース2は弾性を有していることが好ましい。
【0048】
シース2としては、例えば一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。シース2が樹脂チューブである場合、シース2は単層または複数層から構成することができる。シース2はシース2の長手方向または周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0049】
シース2は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
シース2は、一の部材のみから構成されていてもよいし、複数の部材がプッシャー部材40の延在方向xに連結することによって構成されていてもよい。
図1では、シース2が1つの筒状の部材から構成されている例を示している。
【0051】
シース2の外面4には、PTFEやPFA等が含まれている潤滑性コーティング層が形成されていることが好ましい。これによりシース2を体腔内に挿入しやすくすることができる。
【0052】
プッシャー部材40の延在方向xにおけるシース2の長さは、例えば100mm以上、150mm以上、200mm以上等にすることができる。また、プッシャー部材40の延在方向xにおけるシース2の長さは、例えば2400mm以下、2350mm以下、2300mm以下等にすることができる。
【0053】
シース2の外径は、例えば0.7mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、また、3.5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2.5mm以下がさらに好ましい。
【0054】
ワイヤー部材10を構成しているワイヤー11は、生体適合性および可撓性を有していることが好ましい。
【0055】
ワイヤー11は、例えば、白金、金、チタン、タングステン、タンタル、パラジウム、ロジウム、またはこれらの合金、ステンレス鋼等の金属材料から構成されていることが好ましく、中でも白金または白金-タングステン合金などにより構成されていることがより好ましい。上記材料は、X線不透過性を有しているため、X線撮像装置を用いることによってワイヤー11の位置を視認することが可能となる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
ワイヤー11の形状は、直線状や波形状、矩形状であってもよい。
図1に示すように、ワイヤー部材10は、ワイヤー11がらせん状に巻回されているコイルであってもよい。コイルは、単層コイルであってもよいし、複数の層を有している多層コイルであってもよい。
【0057】
プッシャー部材40の延在方向xに垂直な断面において、ワイヤー部材10を構成しているワイヤー11の断面形状は、円形、楕円形、多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0058】
ワイヤー11の外径は、特に限定されないが、例えば、25μm以上、30μm以上、35μm以上であってもよく、75μm以下、70μm以下であっても許容される。ワイヤー11は、一方端から他方端までが一の部材で形成されていてもよいが、複数の部材が連結することによって形成されていてもよい。
【0059】
接続部材30は、ポリビニルアルコールのみで構成されていることが好ましい。なお、接続部材30は、ポリビニルアルコールとそれ以外の材料で構成されていてもよい。ポリビニルアルコール以外の材料としては、例えばシース2に用いられる材料として挙げたものが挙げられる。
【0060】
接続部材30の形状は、棒状や柱状であることが好ましい。例えば、接続部材30は、円柱状、多角柱状、棒状などの形状にすることができる。
【0061】
プッシャー部材40の延在方向xにおける接続部材30の長さは、例えば、5mm以上、7mm以上、9mm以上等にすることができる。プッシャー部材40の延在方向xにおける接続部材30の長さは、例えば、15mm以下、13mm以下、11mm以下等にすることができる。プッシャー部材40の延在方向xにおける接続部材30の長さは、10mmであることが好ましい。
【0062】
第1応力センサ21と第2応力センサ22は、応力を検知し、電気信号に変えて出力することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に販売されている圧電素子による応力センサや歪みゲージ等を用いることができる。
【0063】
第1の値と第2の値との差分および第3の値と第4の値との差分は、オペアンプによって出力されてもよい。この場合は、例えば、第1応力センサ21と第2応力センサ22をオペアンプと接続すればよい。また、第1の値と第2の値との差分および第3の値と第4の値との差分は、コンピューターのCPU(Central Processing Unit)において計算されてもよい。例えば、応力信号がデジタル信号に変換され、そのデジタル信号の差分が算出されたものが出力される構成としてもよい。この場合は、例えば、第1応力センサ21と第2応力センサ22をCPUに接続すればよい。
【0064】
第1の所定時間T1は、接続部材30の形状や大きさ、幅などに応じて設定することができるが、例えば、0.5秒、1.0秒、1.5秒、2.0秒、5.0秒、10.0秒などにすることができる。
【0065】
第2の所定時間T2は、接続部材30の形状や大きさ、幅などに応じて設定することができるが、例えば、0.5秒、1.0秒、1.5秒、2.0秒、5.0秒、10.0秒などにすることができる。
【0066】
第1の所定時間T1と第2の所定時間T2は同じであってもよいし、異なっていてもよいが、差分の変化から接続部材が溶融して切り離されるタイミングを予測する精度を向上させやすくする観点から、第1の所定時間T1と第2の所定時間T2が同じであることが好ましい。
【0067】
プッシャー部材40は、棒状または線状の部材であってもよい。プッシャー部材40は、直線状の部材や、線状の部材がらせん状に巻回されているコイル状の部材であってもよいし、直線状の部材とコイル状の部材の組み合わせであってもよい。
【0068】
プッシャー部材40は、例えば、ステンレス鋼等の導電性材料から構成することができる。プッシャー部材40は、シース2を構成する材料として例示した合成樹脂から構成されていてもよい。体内での動脈瘤処置具1の位置を把握するために、プッシャー部材40にはX線不透過マーカーが設けられていてもよい。例えば、プッシャー部材40の遠位端部にX線不透過マーカーが設けられることが好ましい。
【0069】
X線不透過マーカーの形状は、筒状であることが好ましい。他の形状としては、中空円柱状、中空多角柱状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状、線材を巻回したコイル状の形状等が挙げられる。
【0070】
X線不透過マーカーを構成する材料としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等のX線不透過物質を用いることができる。
【0071】
プッシャー部材40の外面には保護層が設けられていてもよい。プッシャー部材40の遠位部の外面には、シース2などの他の部材との摺動性を高めるために、保護層として、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂から構成されている層が設けられていることが好ましい。なお、プッシャー部材40の近位部の外面には、保護層としてポリイミドから構成されている層が設けられていることが好ましい。これにより、プッシャー部材40を使用者が把持する際に滑りにくくすることができる。
【0072】
プッシャー部材40の延在方向xにおけるプッシャー部材40の長さは、例えば100mm以上、150mm以上、200mm以上、250mm以上等にすることができる。また、プッシャー部材40の延在方向xにおけるプッシャー部材40の長さは、例えば2450mm以下、2400mm以下、2350mm以下、2300mm以下等にすることができる。
【0073】
接続部材30は、第1応力センサ21の近位端部に接続されている。
図1に示すように、接続部材30の遠位端部が第1応力センサ21の近位端部に接続されていることが好ましい。
【0074】
図1に示すように、第2応力センサ22はプッシャー部材40よりも遠位側に配置されていてもよい。この場合、接続部材30の近位端部は第2応力センサ22に接続されていることが好ましい。さらに、第2応力センサ22の近位端部とプッシャー部材40の遠位端部が接続されていることがより好ましい。2つの応力センサがいずれもプッシャー部材40よりも遠位側であって比較的接続部材30の近くに配置されることにより、接続部材30の剛性の変化が捉えやすくなる。このため、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分の変化から、接続部材30が溶融して切れるタイミングを予測しやすくすることができる。
【0075】
図7に示すように、第2応力センサ22がプッシャー部材40の近位部に設けられていてもよい。この場合、第2応力センサ22の近位端部と遠位端部はいずれも、プッシャー部材40に接続されていることが好ましい。この場合、接続部材30の遠位端部は第1応力センサ21に接続されており、接続部材30の近位端部はプッシャー部材40に接続されていることが好ましい。体腔内に配置される動脈瘤処置具1は、蛇行している体腔内において蛇行する。動脈瘤処置具1が蛇行しているにより、プッシャー部材40に加えられる力は進行方向以外の方向に逃げることがある。このため、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分の変化から、動脈瘤処置具1が蛇行していることによって生じる逃げた力の大きさがわかる。このようにして得られた差分をロボットに応用することで、動脈瘤処置具1を用いたロボットによる動脈瘤塞栓術が行いやすくなる。
【0076】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、電源装置51と共に使用されることが好ましい。電源装置51は、接続部材30や第1応力センサ21、第2応力センサ22に電気を供給することができる装置である。
図1に示すように、電源装置51は、動脈瘤処置具1の外部に設けられており、導線50を介して接続部材30や第1応力センサ21、第2応力センサ22と接続される。
【0077】
図6に示すように、動脈瘤処置具1は、バッテリー52を有していてもよい。
図6に示すように、バッテリー52は、第1応力センサ21と第2応力センサ22の近傍であって動脈瘤処置具1の一部として設けられていることが好ましい。バッテリー52は、第1応力センサ21や第2応力センサ22の内部に設けられていてもよい。バッテリー52は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に電気を供給する。バッテリー52は、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式などの方法によってワイヤレス充電が可能なものであってもよい。
【0078】
図1に示すように、動脈瘤処置具1は、出力装置53と共に使用されることが好ましい。出力装置53は、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分を視覚情報として人間に認識できる形で外部に提示する装置を指す。
【0079】
出力装置53としては、モニターやディスプレイを用いることが好ましい。この場合、モニターやディスプレイに
図4や
図5に示すようなグラフを表示することにより、使用者は接続部材30が溶融して切れるタイミングを予測することができる。他にも、LEDや電球などを用い、接続部材30が溶融して切れるタイミングが近づくとLEDや電球が発光するように構成されていてもよい。例えば、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分が所定の値を下回った場合にLEDや電球が発光するように構成されていることにより実施することができる。また、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分を値としてモニターやディスプレイに表示してもよい。
【0080】
図1に示すように、出力装置53は動脈瘤処置具1の外部に設けられていてもよい。このとき、出力装置53は導線50を介して第1応力センサ21や第2応力センサ22と接続されてもよい。
【0081】
電源装置51や出力装置53が導線50を介して第1応力センサ21と接続されている場合には、第1応力センサ21と導線50が切り離し可能に接続されていることが好ましい。
【0082】
第1応力センサ21と導線50が切り離し可能な構成としては、例えば、第1応力センサ21には該第1応力センサ21の内部にネジが切られている雌ねじ部が形成されており、導線50には該導線50の遠位端部であってその外面にネジが切られている雄ねじ部が形成されている態様が挙げられる。上記構成とすることにより、導線50の雄ねじ部を第1応力センサ21の雌ねじ部に挿入することで導線50と第1応力センサ21を接続することができる。また、導線50の雄ねじ部を第1応力センサ21の雌ねじ部から取り外すことで第1応力センサ21と導線50を切り離すことができる。これにより、電源装置51から第1応力センサ21に電気を供給したり、第1応力センサ21によって検出された応力信号を出力装置53に送る必要があるときには導線50と第1応力センサ21を接続しておき、接続部材30が溶融して切り離されるときには第1応力センサ21と導線50を切り離すことができる。このように、電源装置51や出力装置53が導線50を介して第1応力センサ21と接続されている態様であっても、ワイヤー部材10を動脈瘤に留置することができる。
【0083】
図6に示すように、動脈瘤処置具1の外部に出力装置53が設けられている場合であっても、出力装置53は導線を介して第1応力センサ21や第2応力センサ22と接続されていなくてもよい。
【0084】
第1応力センサ21や第2応力センサ22が出力装置53と導線を介して接続されていない場合は、例えば、第1応力センサ21によって検出される応力信号と第2応力センサ22によって検出される応力信号を後述する受信部55にワイヤレス送信することが可能な送信部54が動脈瘤処置具1に設けられていることが好ましい。また、動脈瘤処置具1の送信部54からワイヤレス送信された応力信号を受信することが可能な受信部55が出力装置53に設けられていることが好ましい。これにより、第1応力センサ21や第2応力センサ22が出力装置53と導線を介して接続される必要がなくなる。
【0085】
次に、
図8を参照して本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットについて説明する。
図8は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットを示す模式図を表す。
【0086】
図8に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に接続されている波形入力部110と、第1の値と第2の値との差分が記憶されているメモリ部120と、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部130と、操作部130に信号を送る制御部140と、波形入力部110に入力された波形から第1の値と第2の値を算出し、第1の値と第2の値との差分を算出する演算処理部150と、を有しており、制御部140が、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させるように構成されている。
【0087】
ロボット100は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に接続されている波形入力部110を有している。第1応力センサ21と第2応力センサ22によって検出された応力信号が導線等を介して波形入力部110からロボット100に入力されるように構成されていることが好ましい。
【0088】
ロボット100は、第1の値と第2の値との差分が予め記憶されているメモリ部120を有している。メモリ部120としては、例えばランダムアクセスメモリ等の揮発性メモリや、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。
【0089】
ロボット100は操作部130を有している。操作部130は、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる機能を有する部分である。操作部130としては、例えば、アクチュエーターを用いることができる。より具体的には、例えば
図8に示すように、操作部130は、シース2の内腔におけるプッシャー部材40の延在方向xにおけるプッシャー部材40の位置を調節可能なローラー131を有していてもよい。
【0090】
ロボット100は、操作部130に信号を送る制御部140を有している。操作部130は、制御部140から送られてくる信号に基づいて、プッシャー部材40を遠位側から近位側に向かって移動させたり、プッシャー部材40を近位側から遠位側に向かって移動させたりする。
【0091】
ロボット100は演算処理部150を有している。演算処理部150は、波形入力部110に入力された波形から第1の値と第2の値を算出し、第1の値と第2の値との差分を算出する。演算処理部150としてはCPUを用いてもよいし、オペアンプを用いてもよい。
【0092】
制御部140は、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させるように構成されている。制御部140は、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、プッシャー部材40を遠位側から近位側に向かって移動させるための信号を操作部130に送ったり、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、プッシャー部材40を近位側から遠位側に向かって移動させるための信号を操作部130に送ったりすることが好ましい。
【0093】
本発明の動脈瘤処置具1は接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを予測することができ、抜去するタイミングを判断しやすいものである。このため、ロボット100は、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させることにより、接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを判断し、ワイヤー部材10を動脈瘤に留置することができる。
【0094】
予め記憶されている第1の値と第2の値との差分は同じメモリ部に記憶されていてもよいし、それぞれ別々のメモリ部に記憶されていてもよい。
【0095】
メモリ部120に記憶されているのは、例えば、使用者が動脈瘤処置具1を患者に対して使用したときに出力した第1の値と第2の値との差分であることが好ましい。これにより、ロボット100は使用者が動脈瘤処置具1を患者に対して使用したときの第1の値と第2の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させることができる。
【0096】
図8に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に接続されている波形入力部110と、第3の値と第4の値との差分が記憶されているメモリ部120と、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部130と、操作部130に信号を送る制御部140と、波形入力部110に入力された波形から第3の値と第4の値を算出し、第3の値と第4の値との差分を算出する演算処理部150と、を有しており、制御部140が、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させるように構成されている。なお、第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100の説明と重複する内容については説明を省略している。
【0097】
第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100のメモリ部120には、第3の値と第4の値との差分が予め記憶されている。
【0098】
第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100の演算処理部150は、波形入力部110に入力された波形から第3の値と第4の値を算出し、第3の値と第4の値との差分を算出する。
【0099】
第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボット100の制御部140は、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させるように構成されている。制御部140は、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、プッシャー部材40を遠位側から近位側に向かって移動させるための信号を操作部130に送ったり、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、プッシャー部材40を近位側から遠位側に向かって移動させるための信号を操作部130に送ったりすることが好ましい。
【0100】
本発明の動脈瘤処置具1は接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを予測することができ、抜去するタイミングを判断しやすいものである。このため、ロボット100は、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させることにより、接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを判断し、ワイヤー部材10を動脈瘤に留置することができる。
【0101】
予め記憶されている第3の値と第4の値との差分は同じメモリ部に記憶されていてもよいし、それぞれ別々のメモリ部に記憶されていてもよい。
【0102】
メモリ部120に記憶されているのは、例えば、使用者が動脈瘤処置具1を患者に対して使用したときに出力した第3の値と第4の値との差分であることが好ましい。これにより、ロボット100は使用者が動脈瘤処置具1を患者に対して使用したときの第3の値と第4の値との差分とに基づいて、操作部130を動作させることができる。
【0103】
本発明のロボット100は、接続部材30に接続されている電源部160をさらに有し、制御部140が、演算処理部150で算出される差分と、メモリ部120に記憶されている差分とを比較して、電源部160によって接続部材30に流される電流の強さを調節するように構成されていることが好ましい。即ち、第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具1を操作するロボット100は、制御部140が、演算処理部150で算出される第1の値と第2の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第1の値と第2の値との差分とを比較して、電源部160によって接続部材30に流される電気の強さを調節するように構成されていることが好ましい。第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具1を操作するロボット100は、制御部140が、演算処理部150で算出される第3の値と第4の値との差分と、メモリ部120に記憶されている第3の値と第4の値との差分とを比較して、電源部160によって接続部材30に流される電気の強さを調節するように構成されていることが好ましい。これにより、2つの差分を比較した結果、接続部材30の溶融が不十分であると判断される場合には流す電気を強くするよう制御し、接続部材30の溶融が十分であると判断される場合には流す電気の強さを維持または電気の供給を停止するよう制御することができる。
【0104】
ロボット100が備える少なくともいずれか1つの機能、例えば、波形入力部110、メモリ部120、操作部130、制御部140、演算処理制150、電源部160の機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェアとしては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に形成された論理回路を挙げることができる。
【0105】
ロボット100は、波形入力部110、メモリ部120、操作部130、制御部140、演算処理制150、電源部160の少なくともいずれか1つの機能を実現するためのソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えていてもよい。コンピュータは、プロセッサと、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えていることが好ましい。プロセッサがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されたプログラムを実行することによって、上記機能が実現される。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)を用いることができる。記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)等を用いることができる。また、記録媒体には、RAM(Random Access Memory)を含むこともできる。上記プログラムは、このプログラムを伝送可能な任意の伝送媒体を介して上記コンピュータに供給されてもよい。伝送媒体としては、通信ネットワークや通信回線等が挙げられる。
【0106】
本発明の動脈瘤処置具1を操作するロボット100は、遠隔操作されてもよい。
【0107】
図9を参照して本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットを遠隔操作する操作装置について説明する。
図9は、本発明の実施の形態に係る動脈瘤処置具を操作するロボットを遠隔操作する操作装置を示す模式図を表す。
【0108】
遠隔操作下では接続部材30が溶融して柔らかくなった感覚を手で感じることができないため、熟練した技術を有している使用者であっても、接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを判断することが困難であった。しかしながら、動脈瘤処置具1を操作するロボット100を操作装置300とともに使用することにより、遠隔操作下であっても接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを判断することができる。
【0109】
図9に示すように、ロボット100は、ロボット100を遠隔制御するための操作装置300と共に使用されることが好ましい。
【0110】
図9に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る動脈瘤処置具1を操作するロボット100は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に接続されている波形入力部110と、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部130と、操作部130に信号を送る制御部140と、波形入力部110に入力された波形から第1の値と第2の値を算出し、第1の値と第2の値との差分を算出する演算処理部150と、第1の値と第2の値との差分を送信する第1通信部170を有していてもよい。
【0111】
図9に示すように、操作装置300は、使用者が操作するコントローラ部310と、コントローラ部310に入力された信号を第1通信部170に送信する第2通信部370と、第1通信部170から送信されて第2通信部370が受信した第1の値と第2の値との差分を視覚情報として出力する出力部320と、を有していてもよい。
【0112】
第1通信部170は、第1の値と第2の値との差分を送信したり、第2通信部370から送信されたコントローラ部310に入力された信号を受信したりする機能を有する部分である。
【0113】
第2通信部370は、コントローラ部310に入力された信号を第1通信部170に送信したり、第1通信部170から送信された第1の値と第2の値との差分を受信したりする機能を有する部分である。
【0114】
コントローラ部310は、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって遠隔操作下で移動させるために使用者が操作する部分であり、使用者が操作部130を制御するための信号を入力する部分である。
【0115】
コントローラ部310には、操作部130を制御するための信号を入力するための機構として、ボタンやレバーを設けることができる。
【0116】
出力部320は、第2通信部370が受信した第1の値と第2の値との差分を視覚情報として出力する機能を有する部分である。
【0117】
図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る動脈瘤処置具1を操作するロボット100は、第1応力センサ21と第2応力センサ22に接続されている波形入力部110と、プッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる操作部130と、操作部130に信号を送る制御部140と、波形入力部110に入力された波形から第3の値と第4の値を算出し、第3の値と第4の値との差分を算出する演算処理部150と、第3の値と第4の値との差分を送信する第1通信部170を有していてもよい。
【0118】
図9に示すように、操作装置300は、使用者が操作するコントローラ部310と、コントローラ部310に入力された信号を第1通信部170に送信する第2通信部370と、第1通信部170から送信されて第2通信部370が受信した第3の値と第4の値との差分を視覚情報として出力する出力部320と、を有していてもよい。
【0119】
第1通信部170は、第3の値と第4の値との差分を送信したり、第2通信部370から送信されたコントローラ部310に入力された信号を受信したりする機能を有する部分である。
【0120】
第2通信部370は、コントローラ部310に入力された信号を第1通信部170に送信したり、第1通信部170から送信された第3の値と第4の値との差分を受信したりする機能を有する部分である。
【0121】
出力部320は、第2通信部370が受信した第3の値と第4の値との差分を視覚情報として出力する機能を有する部分である。
【0122】
出力部320としては、モニターやディスプレイを用いることが好ましい。この場合、モニターやディスプレイに
図4や
図5に示すようなグラフを表示することにより、使用者は接続部材30が溶融して切れるタイミングを予測することができる。他にも、LEDや電球などを用い、接続部材30が溶融して切れるタイミングが近づくとLEDや電球が発光するように構成されていてもよい。例えば、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分が所定の値を下回った場合にLEDや電球が発光するように構成されていることにより実施することができる。また、第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分を値としてモニターやディスプレイに表示してもよい。
【0123】
遠隔操作は、例えば下記のようにして行われる。まず、使用者は、コントローラ部310を操作する。コントローラ部310に入力された信号は、第2通信部370と第1通信部170を介して操作部130に伝えられ、操作部130はプッシャー部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる。上記の操作の間、第1応力センサ21と第2応力センサ22によって応力信号を取得する。その応力信号の波形は、波形入力部110と演算処理部150と第1通信部170と第2通信部370を介して出力部320に伝えられ、出力部320は第1の値と第2の値との差分または第3の値と第4の値との差分を視覚情報として出力する。使用者は、この視覚情報を確認することで、接続部材30が溶融して柔らかくなった感覚を手で感じることができない遠隔操作下であっても、接続部材30が溶融して切り離されるタイミングを判断することができる。
【0124】
プッシャー部材40をつかむ指の腹の触感をコントローラ部310において再現するために、コントローラ部310は、コントローラ部310を把持する使用者の触感受容器が繋がる神経を刺激可能な周波数の刺激をアウトプットする電気刺激機能を有していることが好ましい。電気刺激は、例えば、コントローラ部310に設けられた電極を介して行うことができる。さらに、上記第1応力センサ21および第2応力センサ22とは別の第3応力センサが、プッシャー部材40の近位端に設けられていることが好ましい。上記第3応力センサが、応力信号、プッシャー部材40の被覆素材の動摩擦係数、またはせん断応力などを出力し、これらからひずみエネルギー密度を割り出すことで、コントローラ部310を把持する使用者の触感受容器が繋がる神経を刺激する周波数を算出することができる。プッシャー部材40の被覆素材としては、上述した保護層が挙げられる。操作部130は実際の術式を再現するためにプッシャー部材40を把持するような軸方向に長い円筒状の構造であることが好ましい。円筒状の操作部130の内部には、上記第3応力センサが出力した電気信号の周波数を触感信号に変換する変換端子と、接触信号を変換端子から第1通信部170へ伝える導線と、が配置されていることが好ましい。第1通信部170から第2通信部370へ接触信号を送ることにより、該接触信号をコントローラ部310の電極へ伝えることができる。
【0125】
操作装置300によって遠隔操作されるロボット100は、接続部材30や第1応力センサ21、第2応力センサ22に接続されている電源部160をさらに有していてもよい。電源部160は、接続部材30や第1応力センサ21、第2応力センサ22に電気を供給する部分である。なお、説明が重複するため、詳細には説明しないが、第1応力センサ21と第2応力センサ22が電源部160に接続されている態様を採用せずに、動脈瘤処置具1にバッテリー52が設けられている態様を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0126】
1:動脈瘤処置具
2:シース
3:内腔
4:外面
5:内面
10:ワイヤー部材
11:ワイヤー
21:第1応力センサ
210:波形
210p:極大部
210t:最も高い部分
210v:極小部
210b:最も低い部分
22:第2応力センサ
220:波形
220p:極大部
220t:最も高い部分
220v:極小部
220b:最も低い部分
30:接続部材
40:プッシャー部材
50:導線
51:電源装置
52:バッテリー
53:出力装置
54:送信部
55:受信部
100:ロボット
110:波形入力部
120:メモリ部
130:操作部
131:ローラー
140:制御部
150:演算処理部
160:電源部
170:第1通信部
300:操作装置
310:コントローラ部
320:出力部
370:第2通信部
T1:第1の所定時間
T2:第2の所定時間