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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118134
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】マシニングセンタ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20240823BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240823BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23Q11/00 D
B23Q7/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024395
(22)【出願日】2023-02-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り JIMTOF 2022 第31回日本国際工作機械見本市 2022年11月8日~13日展示
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り IMTS(International Manufacturing Technology Show)2022、2022年9月12日~17日展示
(71)【出願人】
【識別番号】000104537
【氏名又は名称】キタムラ機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】北村 彰浩
【テーマコード(参考)】
3C011
3C033
【Fターム(参考)】
3C011AA14
3C011DD02
3C033AA30
(57)【要約】
【課題】ワーク収納区画のストック棚の加工済みワークの未加工ワークとの交換を従来より各段に短時間で完了でき、加工工程全体の効率向上を図れるマシニングセンタの提供。
【解決手段】マシニングセンタにおいて、ワーク収納区画を囲むカバーが、ストック棚の背面領域を露呈する開口部と、該開口部を塞ぐと共に開放可能に開閉駆動されるストック棚アクセスドアと、ストック棚アクセスドアのロック装置と、ロック装置に対してカバーの外側から操作可能に解除するロック解除機構と、ストック棚アクセスドアの開閉状態を検知するドア開閉検知装置とを備え、CNC装置の制御部が、自動パレット交換装置が駆動中は前記ロック解除機構を無効状態にするインターロック機能と、前記ドア開閉検知装からの検知信号に基づいてストック棚アクセスドアが開状態である間は自動パレット交換装置の駆動部に対して駆動を禁止する安全制御機能と、を備えているものとした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械と自動工具交換装置との数値制御を行うコンピュータ数値制御(CNC)装置を備え、前記工作機械の加工区画と該加工区画に隣接して設けられているワーク収納区画とがカバーによって一体的に囲まれており、
前記加工区画は、加工対象のワークがパレットを介して固定される加工テーブルと、前記加工テーブルに固定された前記ワークに対して切削加工を行う各種工具が前記自動工具交換装置によって交換可能に装着される回転主軸とが設置されており、
前記ワーク収納区画は、前記加工テーブルに対して前記ワークの搬入及び搬出を前記ワークが固定されたパレット単位で行う自動パレット交換装置と、前記自動パレット交換装置を挟んで前記加工区画と対向する領域に設置され、複数個の前記パレットがそれぞれ着脱可能に格納される複数段のストック棚と、前記複数段のストック棚の長手方向の一端部近傍に設置されて前記パレットに対する前記ワークの固定と取り外し及び外部からの前記ワークの出し入れが行われる段取り台と、を備え、
前記コンピュータ数値制御装置が、予め定められた加工指令に沿って、前記加工テーブル及び前記回転主軸の駆動部と前記自動工具交換装置とに対する駆動制御を行い、前記加工指令に含まれる各加工工程に対応して工具を前記回転主軸に交換装着させながら加工素材への切削加工を実行させると共に、前記自動パレット交換装置に対する駆動制御を行い、前記複数段のストック棚と前記加工テーブルとの間で加工済みワークが固定されたパレットの搬出と未加工ワークが固定されたパレットの搬入によるワーク交換を実行させる制御部を備えているマシニングセンタにおいて、
前記カバーは、
前記加工区画の近傍の外側面に、前記コンピュータ数値制御装置の操作盤が設置されており、
前記ワーク収納区画を囲む領域の内の前記複数段のストック棚の前記自動パレット交換装置に向かって背面側に配置された領域に、前記複数段のストック棚の背面領域を露呈する開口部と、該開口部を塞ぐと共に開放可能に開閉駆動されるストック棚アクセスドアと、前記ストック棚アクセスドアの開閉駆動を制止するロック装置と、前記ロック装置による制止状態を前記カバーの外側から操作可能に解除するロック解除機構と、前記ストック棚アクセスドアの開閉状態を検知して検知信号を出力するドア開閉検知装置と、を備え、
前記制御部は、
前記自動パレット交換装置が停止中は前記ロック解除機構を有効状態にすると共に、前記自動パレット交換装置が駆動中は前記ロック解除機構を無効状態にするインターロック機能と、
前記検知信号に基づいて、前記ストック棚アクセスドアが開状態であるか閉状態であるかを判断し、開状態である間は前記自動パレット交換装置の駆動部に対して駆動を禁止する安全制御機能と、を更に備えていることを特徴とするマシニングセンタ。
【請求項2】
前記複数段のストック棚は、それぞれ外形が同一の長方形状を有しており、
前記ワーク収納区画は、前記複数段のストック棚の長方形状の背面側の長手辺に沿った平坦な壁面を含む略筐体形状を備え、
前記開口部と前記ストック棚アクセスドアが備えられている前記カバーの領域は、前記平坦な壁面にあることを特徴とする請求項1に記載のマシニングセンタ。
【請求項3】
前記ワーク収納区画を囲むカバーは、各ストック棚が長手方向に横架される互いに平行に対面する一対の内壁面を備え、
前記一対の内壁面には、各ストック棚の対向する短手辺部をそれぞれ同一高さ位置での取り外し可能に取り付ける一対の棚取付け部が、垂直方向に選択変更可能な2種以上の等間隔位置で複数組み形成されていることを特徴とする請求項2に記載のマシニングセンタ。
【請求項4】
前記自動パレット交換装置は、前記パレットを取り外し可能に保持するアームと、該アームを垂直軸周りに回動させる旋回駆動機構と、垂直軸に沿った上下方向に移動させる昇降駆動機構と、前記複数段のストック棚の前面側の長手辺に沿った左右方向へ移動させる水平駆動機構と、前記長手辺と直交する前後方向へ移動させる伸縮駆動機構と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載のマシニングセンタ。
【請求項5】
前記パレットは、それぞれその底面から下方へ突出する嵌合突部を備え、
各ストック棚は、その長手方向に沿って選択変更可能な2種以上の等間隔位置で着脱可能に設置され、前記パレットが着座されるパレット格納治具を複数個備え、
前記パレット格納治具のそれぞれは、前記パレットの前記嵌合突部が挿脱可能に挿入されて前記パレットの底面を支持する嵌合凹部と、前記ストック棚に対して着脱可能に装着される係合部と、前記自動パレット交換装置のアームが挿脱可能に挿入されると共に上下方向に移動可能として前記パレットを持ち上げられるアーム通過部と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載のマシニングセンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象のワークが固定されたパレットを複数個格納するストック棚が複数段配置されたワーク収納区画を備え、自動パレット交換装置によってストック棚と工作機械の加工区画内の加工テーブルとの間でパレットが搬送・搬出されるマシニングセンタに関するものであり、より詳しくは、段取り台以外に、ストック棚へ直接アクセスできる構成を備えたマシニングセンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の工作機械は、各種工具が格納されたマガジンと加工区画内の回転主軸との間で工具を交換する自動工具交換機能とを備え、コンピュータ数値制御装置、所謂CNC(Computerized Numerical Control)装置を搭載し、マシニングセンタとして制御駆動されているものが多くなっている。このようなマシニングセンタでは、CNC装置による工作機械本体に対する制御によって、工具が自動的に交換されながら予め定められたNC加工プログラムに沿った切削加工工程が実行されるものである。よって、各種NC加工プログラムによって様々な形態の製品が工作機械の自動運転で形成されている。
【0003】
また、加工区画に隣接してワーク収納区画を設け、ワーク収納区画内に配置された複数段のストック棚にそれぞれ複数個格納されているワークを、順次自動パレット交換装置によって自動的に加工区画へ搬送し且つ加工区画から搬出する構成を備えたマシニングセンタもある。このようなマシニングセンタは、特に数多くのワークに対して連続的に切削加工を行う場合に対応可能であり、製造工程全体のさらなる自動化を図ったものである。
【0004】
一般的な自動パレット交換装置は、ワークの搬送を、各ワークがボルト止め等によって固定されたパレット単位で行っており、ストック棚には、パレットが取り外し可能に嵌合して着座され、パレット付きのワークを支持するパレット格納治具が複数設けられている。CNC装置は、自動工具交換装置及び加工テーブルの駆動制御と共に、自動パレット交換装置の駆動制御も行い、加工区画内での加工工程と、加工テーブルに対するワークの搬出及び搬入の工程とが連動して自動的に繰り返される。
【0005】
通常、自動パレット交換装置は、パレットを着脱可能に保持するアームを備え、該アームが、自動パレット交換装置の垂直軸周りに旋回すると共に、上下方向に移動し、水平方向に伸縮する構成を有している。この自動パレット交換装置の駆動制御によって、アームが工作機械本体の加工区画内へ入り、加工テーブルから加工済みのワークが固定されたパレットを取り外して加工領域外へ搬出し、ストック棚の空いたワーク格納治具に戻すと共に、ストック棚の別のパレット格納治具から未加工のワークが固定されたパレットを保持して取り出し、加工区画内へ搬入して加工テーブルにそのパレットを固定させる。この加工テーブルにパレットが固定されると、所定の加工プログラムに沿って該パレット上に固定されている未加工ワークに対する切削加工が実施される。
【0006】
以上のように、ワーク収納区画内のストック棚と加工区画内の加工テーブルとの間でワークのパレット単位での交換工程が繰り返され、順次、未加工ワークが加工区画に搬入され、加工済みワークが搬出されていくことにより、ストック棚全体が加工済みワークに置き換わっていく。
【0007】
ワーク収納区画と自動パレット交換装置の形態としては、自動パレット交換装置は垂直方向の支柱がその中心軸周りに回動可能であり、アームが該中心軸周りに旋回されるが、ストック棚は垂直上下方向に複数段配置され、各ストック棚は自動パレット交換装置の前記中心軸を中心とした円弧状に設けられているのが一般的である。よって、自動パレット交換装置は前記中心軸からストック棚の各パレット格納治具に対して同一距離を有し、前記中心軸周りの旋回によって、アームが各ストック棚の全パレット格納治具のそれぞれに対して効率よくアクセスできる構成となっている。このようなストック棚の円弧の延長線上の位置に、段取り台が設けられており、自動パレット交換装置は、アームが段取り台にも到達可能な旋回角度範囲となる設計となっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0008】
段取り台においては、パレットへのワークの固定(段取り)及び取り外しが行われる。即ち、CNC装置によってワーク収納区画のストック棚から呼び出された加工済みワークが、自動パレット交換装置のアームによって段取り台に搬送され、ここで、パレットから取り外されて外部へ回収される。また、代わりに未加工ワークが固定されたパレットが、ストック棚の空いた格納治具へ搬送される。従って、ワークは、段取り台からパレット単位で一つずつ回収あるいは供給される。
【0009】
一般的にマシニングセンタでは、少なくとも加工区画が、切削加工中に発生する切削屑や切削液等が外へ飛び散るのを防ぐためのいわゆるスプラッシュガードと呼ばれるカバーによって囲われている。上記のようなワーク収納区画が設けられている場合には、加工区画と隣接するワーク収納区画も一体的にカバーで囲われている。カバーの内部では、加工区画とのワーク収納区画との境界面には、自動パレット装置のアームが出入りできるワーク搬入・搬出用ドアが設けられている。
【0010】
CNC装置は、多数のワークを連続的に加工するためのNC加工プログラムに沿って、一つのワーク毎に、ワーク搬入・搬出用ドアの開閉と、自動パレット交換装置のアームによるワークが固定されたパレットの加工テーブルに対する搬入及び搬出のための動作とを連動させて駆動制御している。多くのマシニングセンタでは、CNC装置のディスプレイ及び入力部を備えた操作盤がカバーの外側面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010-280042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
自動パレット交換装置を含むワーク収納区画をマシニングセンタによるワークの加工工程として、ワーク収納区画のストック棚の全格納部を満たす以上の大量のワークに対して連続的に切削加工を行う場合がある。この場合、当初に格納されていたストック棚の全ワークが加工済みワークに置き換わった後、加工済みワークを回収して新たに未加工ワークをストック棚へ供給する必要がある。しかしながら、ストック棚に対する加工済みワークの取り出し及び未加工ワークの供給を、段取り台にて一つずつ呼び出して行うしかなかった従来のマシニングセンタでは、ストック棚全体にわたるワークの交換作業に長時間を要してしまう。従って、次の連続加工工程の開始までの待機期間も長くなるため、所定の大量のワークに対する全加工工程の効率化に悪影響となる。
【0013】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ワーク収納区画のストック棚を満たす以上の大量のワークに対して連続的に加工を行う場合であっても、当初のストック棚のワークが全て加工済みとなった後の未加工ワークへの交換を従来より各段に短時間に完了させることを可能とし、加工工程全体の効率向上を図れるマシニングセンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、工作機械と自動工具交換装置との数値制御を行うコンピュータ数値制御(CNC)装置を備え、前記工作機械の加工区画と該加工区画に隣接して設けられているワーク収納区画とがカバーによって一体的に囲まれており、
前記加工区画は、加工対象のワークがパレットを介して固定される加工テーブルと、前記加工テーブルに固定された前記ワークに対して切削加工を行う各種工具が前記自動工具交換装置によって交換可能に装着される回転主軸とが設置されており、
前記ワーク収納区画は、前記加工テーブルに対して前記ワークの搬入及び搬出を前記ワークが固定されたパレット単位で行う自動パレット交換装置と、前記自動パレット交換装置を挟んで前記加工区画と対向する領域に設置され、複数個の前記パレットがそれぞれ着脱可能に格納される複数段のストック棚と、前記複数段のストック棚の長手方向の一端部近傍に設置されて前記パレットに対する前記ワークの固定と取り外し及び外部からの前記ワークの出し入れが行われる段取り台と、を備え、
前記コンピュータ数値制御装置が、予め定められた加工指令に沿って、前記加工テーブル及び前記回転主軸の駆動部と前記自動工具交換装置とに対する駆動制御を行い、前記加工指令に含まれる各加工工程に対応して工具を前記回転主軸に交換装着させながら加工素材への切削加工を実行させると共に、前記自動パレット交換装置に対する駆動制御を行い、前記複数段のストック棚と前記加工テーブルとの間で加工済みワークが固定されたパレットの搬出と未加工ワークが固定されたパレットの搬入によるワーク交換を実行させる制御部を備えているマシニングセンタにおいて、
前記カバーは、
前記加工区画の近傍の外側面に、前記コンピュータ数値制御装置の操作盤が設置されており、
前記ワーク収納区画を囲む領域の内の前記複数段のストック棚の前記自動パレット交換装置に向かって背面側に配置された領域に、前記複数段のストック棚の背面領域を露呈する開口部と、該開口部を塞ぐと共に開放可能に開閉駆動されるストック棚アクセスドアと、前記ストック棚アクセスドアの開閉駆動を制止するロック装置と、前記ロック装置による制止状態を前記カバーの外側から操作可能に解除するロック解除機構と、前記ストック棚アクセスドアの開閉状態を検知して検知信号を出力するドア開閉検知装置と、を備え、
前記制御部は、
前記自動パレット交換装置が停止中は前記ロック解除機構を有効状態にすると共に、前記自動パレット交換装置が駆動中は前記ロック解除機構を無効状態にするインターロック機能と、
前記検知信号に基づいて、前記ストック棚アクセスドアが開状態であるか閉状態であるかを判断し、開状態である間は前記自動パレット交換装置の駆動部に対して駆動を禁止する安全制御機能と、を更に備えていることを特徴とするものである。
【0015】
以上の構成を備えた本発明のマシニングセンタによれば、自動パレット交換装置が停止している間であれば、作業者は観音開き式のストック棚アクセスドアを開けることができ、露呈された開口部からストック棚に対してワークを直接出し入れすることが可能となる。これにより、全ストック棚を満たすより大量のワークに対して連続的な加工を行う場合に、ストック棚に当初格納されたワークが全て加工済みワークに置き換えられた後の未加工ワークへの交換作業は、ストック棚の背面側から一気に行うことができるため、従来より各段に短時間で済む。特に、開口部をストック棚の背面領域の全面を露呈させる大面積とすることで、全ストック棚に格納された全てのワークを一度に入れ替えることも可能となる。
【0016】
従って、本発明においては、ワーク交換作業にかかる時間で決定される次の連続加工工程の開始までの待機時間が従来より各段に短縮化される。結果として大量のワーク全てに対する加工が完了するまでの全加工工程の効率は、段取り台でのみの一つずつワークを交換するしかなかった従来のマシニングセンタに比べて大幅に向上する。
【0017】
なお、本発明におけるストック棚アクセスドアは、制御部のインターロック機能によって、マシニングセンタの運転中はロック装置で常閉状態にロックされており、自動パレット交換装置が駆動中はロック解除機構が無効状態とされる。そして、自動パレット交換装置が停止していればロック解除機構が有効となりドアを開放できるため、当初の全ストック棚に格納されていたワークが全て加工済みのワークに置き換わり、自動パレット交換装置の駆動が停止したタイミングでロック解除機構によりロック装置のロック状態を解除すれば、ストック棚アクセスドアを開けて安全にストック棚のワークの交換作業が行える。
【0018】
また本発明においては、制御部の安全制御機能によって、ストック棚アクセスドアが開放中は自動パレット交換装置が駆動されることがないため、ワーク交換作業中に作業者が駆動する自動パレット交換装置と干渉する危険は回避され、安全性が確保される。
【0019】
本発明におけるロック装置としては、ストック棚アクセスドアの開閉回動を解除可能に阻止できるものであれば種々の方式が採用可能である。まず本発明のストック棚アクセルドアとしては、開口部の内周縁にドア枠を設け、ドア枠の左右両側の一方に、あるいは両方のそれぞれにヒンジを介して回動軸を中心に外方へ回動可能に一枚ドア部材あるいは一対のドア部材を取り付けることで簡便な回動ドアが構成できる。また、開口部の外周縁の上下に平行にレールを設け、これら上下のレールに嵌合する形状を上下端辺に形成して摺動可能とすれば、スライドドアが構成できる。このような開閉ドア構造におけるロック装置としては、電磁ロック(ソレノイドロック)式が好適なものとして挙げられる。
【0020】
電磁ロック式のロック装置は、ドア側に固定されてドアの開閉と共に変位するアクチュエータと、アクチュエータの変位によって挿脱される装置本体とで構成されるものである。装置本体内では、ソレノイドのコイル中心に往復動可能に設けられた可動鉄芯(ロック用ロッド)が、ソレノイドの通電励磁によって発生する磁界力で前進させられ、非通電非励磁状態におけるスプリングの付勢力で後退させられるものである。前進したロック用ロッドはカム部材の凹部に嵌合してカム部材の回動を阻止し、また後退されてカム部材の凹部との嵌合を解除されるとカム部材を回動可能状態とする。一方、アクチュエータは、装置本体に挿入されることによってカム部材を回動させ、カム部材をその凹部がロック用ロッドと嵌合できる角度に位置付けると共にカム部材の凸部と係合する。従って、ロック用ロッドがカム部材の凹部に嵌合してカム部材の回動が阻止されると、回動できないカム部材の凸部に係合状態にあるアクチュエータの変位も阻止される。この変位できないアクチュエータによってドアの駆動部が制止されるため、ドアは開くことができないロック状態となる。このようなロック装置によれば、ストック棚アクセスドアのドア部材の駆動部にアクチュエータを固定し、装置本体をアクチュエータに対応する位置でドア部材周辺に配置すれば、本発明において簡便にロック装置が構築できる。
【0021】
上記のような電磁ロック式のロック装置においては、そのロック状態の解除を、ソレノイドを構成するコイルに対する通電状態を非通電状態へ切換えることによって行なえる。このため、ロック解除機構は、例えばソレノイドへの電力供給回路に常閉(オン)の開閉スイッチを設けておけば、該開閉スイッチの開閉(オン・オフ)機構で簡便に構成できる。ロック解除操作は、ストック棚アクセスドアの近傍でカバーの外側から操作可能なボタンによって行う構成が簡便で好ましい。該ボタンをドアオープンボタンとして、ボタンの押圧操作によって前記開閉スイッチがオフに切換えられて、電力供給回路を切断して非通電状態にする構成とすればよい。
【0022】
この場合、制御部によるインターロック機能としては、ドアオープンボタンの操作によるロック解除を無効にできるものであれば良い。上記の電磁ロック式の場合、ソレノイドの通電状態から非通電状態への移行を阻止するものとする。例えば、前記電力供給回路の開閉スイッチを第1の開閉スイッチとし、迂回路に別の第2の開閉スイッチを常開(オフ)状態で備えておき、制御部によって第2の開閉スイッチを開閉(オン・オフ)制御する構成が簡便である。制御部は、ドアオープンボタンの押圧操作によって第1の開閉スイッチがオフにされても、自動パレット交換装置が駆動中であれば第2の開閉スイッチをオン(閉)にすることで、電力供給回路を迂回路により通電状態としてソレノイドの励磁状態を維持させることができる。これにより、ロック状態が維持され、即ちロック解除操作が無効にされる。また制御部は、自動パレット交換装置の駆動が停止すれば、第2の開閉スイッチをオフとして迂回路を遮断し、ドアオープンボタンによるロック解除を有効状態とする。
【0023】
また、ストック棚アクセスドアの開閉状態を検知するドア開閉検知装置として、ロック装置が上記の電磁ロック式であれば、そのロック装置に連動する安全スイッチを利用することが簡便である。このソレノイドロック対応型の安全スイッチは、リレーのノーマルクローズ接点(NC接点)を有する安全スイッチ回路を備え、NC接点が閉じた通電状態にて通電信号が制御部へ流れるものである。そして、ロック装置のアクチュエータが装置本体に挿入されてカム部材と係合状態にあるとき、そのカム部材のロック用ロッドとの嵌合凹部とは別の部位でスプリングの付勢により押し上げられて掛止される掛止ロッドを備えている。そしてこの掛止ロッドは、ロック解除状態でカム部材が回動可能となった後、アクチュエータが装置本体から抜き出される変位に伴ったカム部材の回動により、スプリングの付勢に抗して掛止ロッドが下方へ押し下げられる。この掛止ロッドの押し下げによってNC接点が開けられ、非通電状態となるため、通電信号が遮断される。制御部は、安全スイッチからの通電信号を検知している間はストック棚アクセスドアは閉じていると判断し、通電信号緒が検知できなくなると、ストック棚アクセスドアが開いたと判断できる。従って、制御部は、安全スイッチからの通電信号を検知信号として利用することによって、ストック棚アクセスドアの開放中は自動パレット交換装置の駆動を禁止するという安全制御機能を実行できる。
【0024】
本発明のマシニングセンタにおいては、大量のワークに対して効率的に連続した加工工程を行うことを想定して一度に直接ワークを交換できるストック棚アクセルドアを設けたものである。このため、ワーク収納区画及びストック棚の形態もより効率的にワークを格納できる形態が望ましい。そこで、本発明においては、複数段のストック棚は、それぞれ外形が同一の長方形状を有しており、ワーク収納区画は、ストック棚の長方形状の背面側の長手辺に沿った平坦な壁面を含む略筐体形状を備え、前記開口部と前記ストック棚アクセスドアが備えられているカバーの領域は、前記平坦な壁面にあることが好適である。
【0025】
上記のようにストック棚を、従来の一般的な形態である円弧状ではなく、細長い長方形状とすることにより、その長手方向に沿って同一形状の隣合うワーク同士の実質的な間隔を円弧状の場合より小さくでき、より効率的にワークを並置できる。そして、ワーク収納区画も、ストック棚の長方形状の背面側の長手辺に沿った平坦な壁面を含む略筐体形状という最も効率的な空間形状にできる。この場合、開口部とストック棚アクセスドアが設けられるカバー領域を前記平坦な壁面上とすることで、ストック棚アクセスドアの構成部材も平板形状で簡便な構成で済む。なお、ドアの構成部材は少なくとも部分的に透明又は半透明のものとすれば、ドアが閉じたままでも中を確認できる。ストック棚アクセスドアとしての具体的なドア構成は、開閉ドアとして一般的なものでよい。スライドドアや外方へ開放される回動ドアでも可能であるが、一対の回動ドアによる観音開き式のものが開放状態における移動空間が少なくて済み、最も簡便で好適である。
【0026】
このような略筐体形状のワーク収納区画内に長方形状のストック棚を複数段配置するための構成として、ワーク収納区画を囲むカバーに、ストック棚が長手方向に横架される互いに平行に対面する一対の内壁面を備えることができる。この一対の内壁面に、各ストック棚の対向する短手辺部がそれぞれ同一高さ位置で取り外し可能に取り付けられる一対の棚取付け部を形成すればよい。一対の棚取り付け部を、垂直方向に等間隔一で複数組み形成することで、複数段のストック棚が垂直方向に同じ間隔で平行に配置できる。なお、一対の棚取り付け部が形成される垂直方向の等間隔位置は、選択変更可能な2種以上とするのが好適である。この場合、ストック棚同士の上下の間隔幅を少なくとも比較的狭い間隔と比較的広い間隔との何れかに設定できる。このため、加工対象の未加工ワークの高さに応じて、予め適した間隔で複数段のストック棚を取り付けておくことができる。
【0027】
具体的な棚取付け部としては、ストック棚の横架状態を取り外し可能の保持できる機構であれば、様々な機構が採用可能である。例えば、一対の内壁面に互いに対向する垂直支柱を設け、各垂直支柱にそれぞれ同一高さ位置でストック棚の両側短手辺部が水平方向に挿入されて支持される溝を形成しておいたものが簡便な構成として挙げられる。またストック棚の短手辺部をネジ止めできるようにカバーの内壁面に穿設されネジ穴で構成することもできる。また、これらの一方だけでなく、両方を採用してストック棚をより確実に安定支持できる構成としてもよい。
【0028】
なお、自動パレット交換装置は、ワークが固定されたパレットをアームで着脱可能に保持することによってワークの搬送を行うものである。従って、ストック棚が長方形状である場合、パレットを効率的にストック棚から取り出すあるいは格納させるために、自動パレット交換装置は、アームをストック棚の長手方向に沿った左右水平方向にも移動できる構成とするのが適切である。即ち、自動パレット交換装置は、パレットを取り外し可能に保持するアームと、該アームを垂直軸周りに回動させる旋回駆動機構と、垂直軸に沿った上下方向に移動させる昇降駆動機構と、前記ストック棚の前面側の長手辺に沿った左右方向へ移動させる水平駆動機構と、前記長手辺と直交する前後方向へ移動させる伸縮駆動機構と、を備えている構成が好適である。
【0029】
また、各駆動機構としては、制御部によって互いに連動して駆動制御されるモータを用いたものが簡便である。この場合、各モータの回転運動をアーム支持部へ各目的の駆動方向に移動させるように伝達される構成とすればよい。制御部は、アームを目的の位置へ到達させるための各方向の移動量と移動方向および旋回角度と旋回方向でアームが駆動されるように、各モータの回転量と回転方向とを制御する。
【0030】
長方形状を有するストック棚は、長手方向に沿って等間隔位置で設置されるパレット格納治具を備えているものとする。そしてその設置位置は、着脱可能で選択変更可能な2種以上の等間隔とするのが望ましい。これによって、パレットに固定される加工対象のワークの横幅寸法に応じて、効率的にストック棚に格納できる間隔位置を選択できる。即ち、ワークの横幅寸法が比較的小さいものの場合は、その寸法に応じた比較的小さい等間隔位置でパレット格納治具をストック棚に設置し、比較的大きい横幅寸法のワークの場合は、その寸法に応じた比較的大きい等間隔位置でパレット格納治具をストック棚に設置する。
【0031】
パレットとパレット格納治具は、自動パレット交換装置のアームがパレットを着脱可能に保持できる構成であればよい。具体的には、前記パレットは、それぞれその底面から下方へ突出する嵌合突部を備え、前記ストック棚のそれぞれは、その長手方向に沿って選択変更可能な2種以上の等間隔位置で着脱可能に設置され、前記パレットが着座されるパレット格納治具を複数個備え、前記パレット格納治具のそれぞれは、前記パレットの前記嵌合突部が挿脱可能に挿入されて前記パレットの底面を支持する嵌合凹部と、前記ストック棚に対して着脱可能に装着される係合部と、前記自動パレット交換装置のアームが挿脱可能に挿入されると共に上下方向に移動可能として前記パレットを持ち上げられるアーム通過部と、を備えている構成が好適である。この構成により、パレットは、アームによって簡便に持ち上げられて離脱でき、且つ下ろして着座させて格納できる。
【0032】
また、ストック棚への各パレット格納治具の設置機構としては、取外し可能に固定できるものであれば特に限定されるものではないが、できるだけ簡便な構成で固定及び取外しが容易なものが望ましい。例えば、ストック棚に対して着脱可能に装着される係合部としてパレット格納治具の底面に突状の係合部を設け、該係合部が挿入される貫通孔をストック棚に設け、貫通孔に挿入された係合部をストック棚の裏面側からネジ止め固定する構成が挙げられる。この場合、ストック棚に複数の等間隔位置で貫通孔を設けておくだけで、パレット格納治具の間隔を容易に変更できる。
【0033】
なお、CNC装置には、通常、各種NC加工プログラムが収納される記憶部が備えられている。この記憶部には、工具収納部に収納されている複数の工具の識別番号及び各識別番号に紐付けされた工具の材質や形状を含む工具情報や、また各工具の収納位置情報(アドレス)等も保存される。また、自動パレット交換装置によってワークの自動交換を行いながら順次ワークに対する切削加工を進める場合には、加工工程に連動して自動パレット交換装置を駆動制御させるためのAPCプログラムも記憶部に備えられている。
【0034】
一方、上記のようにストック棚は上下間隔が異なる複数種の段数で変更可能であり、またストック棚毎に設置されるパレット格納治具は長手方向に沿った間隔が異なる複数種の並置個数で変更可能であるため、段数と並置個数との組合せが異なれば、同じワーク収納区画に収納されるワーク及びパレットの全個数と各格納位置も互いに異なる。従って、複数のワーク配置パターンが設定可能である。この場合、ワーク配置パターン毎に、各ワークの格納位置としてのアドレス配置が異なる。
【0035】
そこで、記憶部には、このようなワーク収納区画における異なる複数のワーク配置パターンを選択可能に記憶させておくことが好適である。この場合、自動パレット交換装置が、ワーク配置パターン毎に、その全アドレスへアームをそれぞれ効率的に到達させるための、アクセスルート情報を組み込んだAPCプログラムを用意して記憶部に収納しておくことが望ましい。アクセスルート情報としては、予め定められた基準点から各アドレスへの必要な左右水平方向の移動量と方向、垂直上下方向の移動量と方向、前後水平方向の移動量と方向、垂直中心軸周りの旋回角度と向き等の数値情報と、それぞれに対応するモータの回転量と回転方向が考えられる。
【0036】
従って制御部は、指定されたワーク配置パターンに対応するAPCプログラムを選択して実行させることができる。即ち、制御部は、所定のNC加工プログラムを実行させながら、先のワークに対する加工工程の終了時と次のワークに対する加工工程の開始時までの期間に、自動パレット交換装置に対して選択されたAPCプログラムに沿って適切なアクセスルート情報に基づいた駆動制御を行うことで、加工テーブルとストック棚との間での加工済みワークと未加工ワークとの交換搬送を、順次、高精度に実施できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は以上説明した通り、マシニングセンタのワーク収納区画を囲むカバーに、ストック棚の背面領域を露呈して直接ワークの出し入れができるストック棚アクセスドアを設けたものであるため、該ストック棚アクセスドアを開けて、直接加工済みワークを未加工ワークに短時間で一気に交換することが可能となる。従って、ストック棚の全格納部を満たす以上の大量のワークに対して連続的に加工工程を行う際に、ストック棚のワークが全て加工済のものに置き換わった後の未加工ワークへの交換作業も短時間で済むため、加工工程を停止する待機期間も短くて済み、従来の段取り台のみでのワーク交換作業に比べて各段に全加工工程の効率向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態によるマシニングセンタの概略構成を示す斜視図であり、(a)はストック棚アクセスドアが閉状態である場合、(b)はストック棚アクセスドアが開状態である場合をそれぞれ示す。
図2図1のマシニングセンタの自動パレット交換装置を省略した加工区画とワーク収納区画との内部を示す概略平面図である。
図3図2のワーク収納区画を自動パレット交換装置が配置された状態で上方から見た平面図である。
図4】本実施形態における自動パレット交換装置の概略構成を示す斜視図である。
図5図1のマシニングセンタの主要部の相関関係を示すブロック図である。
図6図1のマシニングセンタにおけるインターロック機能の動作を示すフローチャート図である。
図7図1のマシニングセンタのワーク収納区画内の異なるワーク配置パターンをストック棚アクセスドアを省いた状態で示す部分側面図であり、(a)は5列5段、(b)は5列6段、(c)は4列5段、(d)は4列6段の場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明によるマシニングセンタの一実施形態として、観音開き式のストック棚アクセスドアを備えた場合を図1の斜視図に示す。図1(a)はストック棚アクセスドアが閉状態である場合、(b)はストック棚アクセスドアが開状態である場合をそれぞれ示す。図2には、図1のマシニングセンタの自動パレット交換装置を省略した加工区画とワーク収納区画との内部を概略平面図で示す。また、図3は、図2のワーク収納区画を自動パレット交換装置が配置された状態で上方から見た平面図である。図4は、本実施形態における自動パレット交換装置の概略構成を示す斜視図である。図5図1のマシニングセンタの主要部の相関関係を示すブロック図である。
【0040】
本実施形態によるマシニングセンタ1は、工作機械MTに自動工具交換装置ATCと自動パレット交換装置APCとを備え、CNC装置2の制御部40によって数値制御されるものである。制御部40は、工具情報Tや各種NC加工プログラム42、また連携する自動パレット交換装置APCの自動運転のためのAPCプログラム43等を収納する記憶部41を備えている。そして、制御部40は、所定のNC加工プログラム42に沿って、工作機械MTに各種切削加工工程を自動運転で実行させるものである。
【0041】
本実施形態においては、ワークWに対して切削加工が行われる加工区画10と、加工区画10に隣接して設けられたワーク収納区画20とが、スプラッシュガードとして機能するカバー6によって一体的に囲われている。CNC装置2は、その操作盤3が加工区画10近傍のカバー6表面に配置されるように設置されている。操作盤3には、タッチパネル式ディスプレイ4と、キーボード及び各種ボタンやダイヤル等の入力部5が前面に設けられている。
【0042】
また加工区画10とワーク収納区画20との境界には、制御部40によって制御される開閉窓(不図示)が設けられており、加工工程中は閉鎖され、加工工程後から次の加工工程開始直前まで開けられる。この開閉窓が開いている間に、自動パレット交換装置APCによって加工テーブル11に対するワークWの搬出及び搬入の交換作業が行われる。本実施例においては、自動パレット交換装置APCによるワークWの搬送は、パレットPに固定された状態で行われ、自動パレット交換装置APCのアーム36がパレットPを保持することで成される。
【0043】
また、加工区画10内では、ワークWが固定された加工テーブル11が、制御部40によって工具が装着された回転主軸(不図示)に対して相対移動されながらワークWへの所定の切削加工が行われる。即ち、制御部40によって駆動制御される自動工具交換装置ATCを介して回転主軸に必要な工具が交換されながら、同時に制御部40が各5軸(X,Y,Z,C,A)用のテーブル駆動部(モータ)12を制御することによって、加工テーブル11の、X,Y,Zの各座標軸に沿った予め定められた距離での移動と共にC軸、A軸周りの予め定められた角度での傾転及び回動が実行され、ワークWに対する自動的な加工工程が実施される。
【0044】
一方、本実施形態において、ワーク収納区画20は略筐体形状を有しており、自動パレット交換装置APCを挟んで加工区画10と対向する平坦な壁面と、該壁面の両端側から直交方向に延びて互いに平行に対面する一対の内壁面21とを備えている。前記平坦な壁面に沿って、同一の長細い長方形状を有するストック棚22が複数段配置されている。各ストック棚22は、互いに同一の長細い長方形状であり、それぞれ両側短手辺部で前記一対の内壁面21の間に横架されるように着脱可能に取り付けられている。このとき、全ストック棚22は、加工区画10に近い側を正面としてその背面側の長手辺が前記平坦な壁面に沿うように、上下方向に等間隔をもって互いに平行な配置となっている。
【0045】
また、ワーク収納区画20の、前記ストック棚22の長手方向の一端側付近で略筐体形状の一角に連通する略円筒状の区画が段取り台28として設けられている。この段取り台28は、半円筒状の段取り台ドア29によって開閉可能に囲まれており、自動パレット交換装置APCの停止時において開かれる。外部からワーク収納区画20内へワークWを供給する際に、この段取り台28において、ワークWがパレットPにボルト止め等により固定される。パレットPへの固定が完了したワークWは、段取り台ドア29が閉じられた後、自動パレット交換装置APCの駆動によって、ストック棚22の所定の格納部へ載置される。また、加工済みのワークWを回収する際には、自動パレット交換装置APCの駆動によって加工済みワークWが段取り台28に搬送された後、段取り台ドア29を開けてパレットPから取り外された後、あるいはパレットPに固定されたままで加工済みのワークWを外部へ取り出すことができる。
【0046】
本実施形態においては、段取り台28の他に、外部から直接ストック棚22にアクセスしてワークWを出し入れできるストック棚アクセスドア24を更に備えたものである。このストック棚アクセスドア24は、ワーク収納区画20を囲むカバー6において、前述のストック棚22の背面側に沿った平坦な壁面に形成されている。即ち、該平坦な壁面に、ストック棚22の背面領域の全面を露呈する開口部7を形成し、この開口部7を開閉可能に塞ぐ観音開き式の一対のドア部材(24a,24b)を設置して構成されている。
【0047】
なお、ストック棚アクセスドア24は、略筐体形状のワーク収納区画20を囲むカバー6の平坦な壁面に形成されるものであるため、一対のドア部材(24a,24b)は、平板状の部材で簡便に構成できる。これら一対のドア部材(24a,24b)は、開口部7の左右側辺をドア枠としてヒンジ23を介して外方へ回動可能に取り付けられており、把持部Hを掴んで手動で左右外方へ開くことができる。これにより、ストック棚アクセスドア24が開放されれば、開口部7に面するストック棚22の全背面領域を露呈させることができる。
【0048】
また、一対のドア部材(24a,24b)には、ストック棚アクセスドア24の横のカバー外表面に設けられたドアオープンボタン26の押圧操作によってロック解除される電磁ロック式のロック装置27が搭載されている。このロック装置27は、ドア部材(24a,24b)の回動軸に固定されたアクチュエータと、該アクチュエータがドア部材(24a,24b)の閉動作に伴って挿入される装置本体とで構成される。ストック棚アクセスドア24が閉じられてアクチュエータが挿入された装置本体内では、カム部材がアクチュエータに回動されると共にカム部材の凸部がアクチュエータと係合状態になる。そこでソレノイドを通電励磁状態にすることによって、磁界力でロック用ロッドがスプリングの付勢に抗して押し出されて前進され、カム部材Lの凹部に嵌合してその回動を阻止する。回動が阻止されたカム部材Lは、その凸部で係合するアクチュエータの変位を阻止し、変位できないアクチュエータはドア部材(24a,24b)の回転軸の駆動を阻止する。これによってドア部材(24a,24b)は開放方向へ回動できなくなり、ストック棚アクセスドア24が開けられないロック状態となる。また、ソレノイドへの通電が遮断されて非励磁状態になれば、スプリングの付勢力によってロック用ロッドは後退されてカム部材Lの凹部から外れる。これによりカム部材Lの回動阻止は解除され、アクチュエータも変位可能となる。従って、アクチュエータと共にドア部材(24a,24b)は開放方向への回動が可能となり、ストック棚アクセスドア24はロック解除状態となって開けることができる。
【0049】
この電磁ロック式のロック装置27は、マシニングセンタ1の運転中は、ソレノイドへの電力供給回路に配置された第1の開閉スイッチが常閉のオン状態であり、ストック棚アクセスドア24は常閉状態となる。そして、ドアオープンボタン26の押圧操作によって、電力供給回路の第1の開閉スイッチが開けられてオフとなり、ソレノイドへの通電が遮断されて非励磁状態となり、上記のようにストック棚アクセスドア24が開放可能なロック解除状態となる
【0050】
ただし、制御部40は、インターロック機能を備えており、自動パレット交換装置APCが駆動中は、ドアオープンボタン26によるロック解除を無効とする。本実施形態では、制御部40は、ロック装置27のソレノイドへの通電遮断を回避させるものである。例えば、前記電力供給回路の迂回路に別の常開(オン)とした第2の開閉スイッチを設けておき該第2の開閉スイッチを閉じてオンにすることソレノイドへの通電励磁状態を維持しロック解除を無効にするものとする。また段取り台ドア29にも同様のロック装置を備え、制御部40は、この段取り台29用のロック装置に対するインターロック機能も備えていることが望ましい。
【0051】
さらに、制御部40は、ストック棚アクセスドア24が開いている状態では自動パレット交換装置APCの駆動を禁止する安全制御機能を備えている。本実施形態においては、電磁ロック式のロック装置27に連動する安全スイッチ25を利用するものである。具体的には、安全スイッチ25は、ドア部材(24a,24b)の閉動作に伴ってロック装置27の本体内へ挿入される前記アクチュエータがカム部材Lを回動させて係合状態になると、そのカム部材Lの別の部位に掛止される掛止ロッドを備えたものである。さらに通電状態で通電信号を発生するNC接点を有する電気回路と、掛止ロッドを押し上げてカム部材Lに掛止させるスプリングとを備えている。この掛止ロッドがカム部材に掛止されると同時にNC接点は閉じられオンとなり、通電信号が制御部40へ送られる。一方、ロック装置27のロック解除状態にて、一対のドア部材(24a,24b)の開動作に伴うアクチュエータの変位により、係合がはずれたカム部材Lが逆向きに回動されると、掛止ロッドは当接するカム部材Lによってスプリングに抗して押し下げられる。これによってNC接点が開けられてオフとなると、通電信号は消失する。
【0052】
従って、制御部40は、安全スイッチ25からの通電信号を検知している間は、ストック棚アクセスドア24が閉じられていると判断し、通電信号が検知されなくなれば、ストック棚アクセスドア24は開状態であると判断して、自動パレット交換装置APCの駆動を禁止する。これによって、ストック棚アクセスドア24が開いた状態でのワーク交換作業中、また他の作業中でも、自動パレット交換装置APCが駆動して作業者に干渉する危険は回避され、安全性が確保される。
【0053】
自動パレット交換装置APCは、ワーク収納区画20内のストック棚22と加工テーブル11との間でワークWの搬送・交換を行う位置に設置されている。そして、パレットPを取り外し可能に保持するアーム36を、旋回駆動機構によって垂直軸(本実施形態では後述する支柱の垂直中心軸)周りに回動させると共に、昇降駆動機構によって垂直軸に沿った上下方向に移動させ、伸縮駆動機構によってストック棚22長手辺と直交する前後方向へ移動させるものである。本実施形態においては、さらに、水平駆動機構によって、アーム36をストック棚22の前面側の長手辺に沿った左右方向へ移動させる構成となっている。
【0054】
具体的には、ワーク収納区画20の床面に自動パレット交換装置APCの基台31が設置されており、基台31上に垂直方向に延びる支柱33が支柱支持台32を介して立設されている。また、基台31上には、ストック棚22の長手辺に沿って平行に設けられた基台ガイドレール31Gが設けられており、この基台ガイドレール31Gに摺動可能に嵌合されている支柱支持台32に、水平駆動用モータM1の回転運動がボールネジ機構によって直線運動として伝達されることによって支柱33が支柱支持台32と共に基台ガイドレール31Gに沿って左右水平方向に移動可能となっている。
【0055】
なお、ワーク収納区画20の上方にもストック棚22の長手辺に沿って平行に設けられた上部ガイドレール34Gが設けられており、該上部ガイドレール34Gに摺動可能に嵌合されている上支持部34に支柱33の上端が支持されている。従って、支柱33は、上部ガイドレール34Gと基台ガイドレール31Gとの間で上下端部が支持された状態で安定した水平移動が成される。
【0056】
この支柱33には、垂直方向に延びる昇降ガイドレール33Gが形成されており、パレットPを保持するアーム36は、昇降ガイドレール33Gに摺動可能に嵌合されているアーム支持部35を介して支柱33に連結されている。そして、昇降駆動用モータM2の回転運動がボールネジ機構によって上下方向の直線運動として伝達されたアーム支持部35が昇降ガイドレール33Gに沿って上下方向に移動することによってアーム36が昇降される。
【0057】
アーム36は、アーム支持部35のスライドガイド35Sに沿って摺動可能に支持されている。伸縮用モータM3の回転運動がギアを介して直線運動として伝達されたアーム36は、アーム支持部35のスライドガイド35Sに沿って支柱33に対して直交する前後方向へ伸縮移動される。また、支柱33は、上支持部34と支柱支持台32とに対してその垂直中心軸周りに回動可能に軸支されており、旋回駆動用モータM4の回転運動が伝達されて回動される。これによって、支柱33に支持されているアーム支持部35及びアーム36が支柱33の垂直中心軸周りに旋回される。
【0058】
以上の構成を備えた自動パレット交換装置APCは、制御部40に各駆動モータが駆動制御されることによって、アーム36の昇降、左右水平移動、旋回、前後移動が所定のコースで目的のストック棚22のアドレスあるいは加工テーブル11へのアクセスと対象のワークWが固定されたパレットPに対する保持または開放が達成される。
【0059】
多数のワークWに対して、連続的に加工工程を実施する場合には、加工済みのワークWを加工テーブル11から搬出してストック棚22の所定のアドレスの格納部に戻し、ストック棚22の別の格納部に格納されている未加工のワークWを加工テーブル11へ搬入して加工テーブル11に固定させる、という一連の交換動作が、APCプログラム43に従った制御部40にて行われる。APCプログラム43は、この交換動作がNC加工プログラム42による加工工程に連動して効率的に完了するように予め設定されたものである。
【0060】
本実施形態では、全ストック棚22に格納されているワークWが全て加工済みのものに置き換わった時点で、実行されたAPCプログラム43は一度終了し、全ストック棚22に対して新たに未加工のワークWが供給された後に、再度同一のAPCプログラム43が実行され、同様に連続的な加工工程が実施されるものとする。従って、制御部40は、最初のAPCプログラムの終了後、ストック棚アクセスドア24が開けられ、直接的に加工済みのワークW全ての交換を一気に完了した後、ストック棚22アクセスドア24が閉じられたことを確認して次のAPCプログラム43の実施とNC加工プログラムの実施再開を行う。
【0061】
以下に、本実施形態のマシニングセンタ1の制御部40によるインターロック機能及び安全制御機能の動作の例を図6のフローチャート図に従って説明する。まず、マシニングセンタの運転開始(ステップ100)として、ストック棚アクセスドア24が閉じられてものとして主電源が入れられる。ストック棚アクセスドア24が閉じられていれば、ドア部材(24a,24b)に固定されているアクチュエータがロック装置27の装置本体内に挿入されてカム部材Lを回動させて係合状態となり、カム部材Lは凹部がロック用ロッドが嵌合できる角度に位置付けられていることになる。主電源を入れた後、ロック装置ON(ステップ101)の操作として、ロック装置27への通電が開始されるが、安全スイッチ25の通電回路へも通電が開始される。そこで、制御部40は、安全スイッチ25からの通電信号ONの確認(ステップ102)を行う。ストック棚アクセスドア24が閉じられていれば、ドア部材(24a,24b)に固定されているアクチュエータがロック装置27の装置本体内に挿入されてカム部材Lを回動させて係合状態となっており、このカム部材Lに対して安全スイッチ25の掛止ロッドが押し上げられて掛止されると共に通電回路はNC接点でオンとなり通電信号が流れる。制御部40は通信信号を検知してストック棚アクセスドア24が閉じていると判断する。
【0062】
しかし、ストック棚アクセスドア24が開いていると、アクチュエータはロック装置27の所定位置まで挿入されておらず、カム部材Lを所定角度まで回動させることができない。これによって、安全スイッチ25の掛止ロッドは押し下げられたままで通電回路のNC接点は開いてオフになっており、通電信号はOFFとなっている。このとき、ソレノイドの励磁により前進されるロック用ロッドは、カム部材Lの凹部が嵌合位置にないため、ロック装置27は、カム部材Lの回動阻止に基づくロック状態に達していない。従って、制御部40は安全スイッチ25からの通電信号が検出されないため、ストック棚アクセスドア24が開いていると判断し、表示ランプの点灯等によってストック棚アクセスドア24が開いていることを作業者に示す。作業者は、この点灯確認によってストック棚アクセスドア24を閉じる(ステップ200)。
【0063】
制御部40は、安全スイッチ25からの通電信号を検知すれば、ストック棚アクセスドア24が閉じていると判断する。このとき、ロック装置27はロック状態に達していると判断される。即ち、カム部材Lはアクチュエータの挿入によって所定の角度に位置付けられているため、ロック装置27は、ソレノイドの励磁により前進されたロック用ロッドをカム部材Lの凹部に嵌合させることができ、カム部材の回動を阻止し、アクチュエータの変位も阻止してドア部材(24a,24b)の回動も制止し、ストック棚アクセスドア24は開けられないロック状態である。
【0064】
制御部40は、工作機械MTに対して連続加工工程の開始(ステップ103)を指令し、所定のNC加工プログラムに従った自動工具交換装置ATCの駆動制御と所定のAPCプログラムに従った自動パレット交換装置APCの駆動制御を行い、全ストック棚22から順次、未加工のワークWを加工テーブル11へ搬送しつつ、所定の加工工程を連続的に進める。
【0065】
当初にストック棚22に格納された全てのワークWが加工済みに置き換わった時点で、制御部40は連続加工工程の停止(ステップ104)を指令する。このとき、一つのAPCプログラム43による自動パレット交換装置APCの搬送工程も終了し、駆動停止となる。作業者はロック解除のため、ドアオープンボタン26をON(ステップ201)とする操作を行う。この操作によって、ロック装置27のソレノイドへの電力供給回路の第1の開閉スイッチが開いてオフになり、ソレノイドへの通電が遮断されて非励磁状態へ移行する。このとき制御部40は、自動パレット交換装置APCの停止の確認(ステップ105)を行い、駆動中であれば、ロック解除無効(ステップ107)の制御として、前記電力供給回路の迂回路に常開状態で配置された第2の開閉スイッチを閉じてオンとし、ロック装置27におけるソレノイドの通電励磁状態を維持し、ロック状態を維持する。
【0066】
自動パレット交換装置APCが停止状態であれば、制御部40は第2の開閉スイッチを開いてオフ状態とし、電力供給回路の第1の開閉スイッチをオフにして通電を遮断するロック解除を有効状態にする。従って、電力供給回路はドアオープンボタン26のオン操作に連動して第1の開閉スイッチがオフとされて非通電状態となり、ロック装置27のソレノイドは非励磁状態へ移行される。これによって、スプリング付勢力によりロック用ロッドが後退されてカム部材Lの凹部への嵌合が外れ、カム部材Lは回動可能となりアクチュエータも変位可能となってロック装置OFF(ステップ106)が達成される。従って、アクチュエータと共にドア部材(24a,24b)は回動可能となり、作業者が把持部Hを掴んで手前へ引っ張れば、ストック棚アクセスドアの開放(ステップ202)が成される。このとき、カム部材Lに連動する安全スイッチ25は、通電が遮断されて通電信号OFF(ステップ108)となる。
【0067】
作業者は、ストック棚アクセスドア24が開いて、全ストック棚22の背面領域が露呈された開口部7から直接、パレットPに固定された加工済みのワークWを全て各パレット格納治具Jから取り出し、代わりに未加工のワークWを着座させて一気にワーク交換作業(ステップ203)を進める。ワーク交換作業が終了した後、ストック棚アクセスドア24を閉じる(ステップ204)ことによって、ロック装置27はロック可能状態となると共に、安全スイッチ25では通電信号が流れる。制御部40は、通電信号ONの確認(ステップ102)を行い、通電信号を検知することでストック棚アクセスドア24が閉じていると判断する。従って、次の連続加工工程の開始(ステップ103)を行う。以上のように、全ワークの交換を一気に完了できるため、次の連続加工工程の開始までの待機時間は非常に短くて済む。
【0068】
なお、本実施形態においては、各段のストック棚22が横架して配置される一対の内壁面21に、ストック棚22の両側短手辺部を着脱可能に取り付けるための一対の棚取り付け部として、各ストック棚の短手辺部がネジ固定されるネジ穴Nを一対の内壁面21の同一高さ位置に一組ずつ形成する構成とした。この一組のネジ穴は、上下方向に等間隔に設けることによって、複数段のストック棚22が上下方向に等間隔で配置される。この等間隔の配置は、2種以上を設置することによって、ストック棚22を異なる2種以上の上下間隔で配置できるため、対象のワークWの未加工における最大高さ寸法に応じて適した間隔を選択し、変更することもできる。実際には、ネジ穴Nを一対の内壁面21に複数の等間隔で形成しておけばよい。
【0069】
棚取り付け部としては、ネジ穴によるネジ止めに限定されるものではなく、ストック棚22の両側短手辺部を一対の内壁面21に着脱可能に取り付けられるのであれば、他の機構でも良い。ただし、構成及び着脱作業がより簡便であることが望まれる。例えば、一対の内壁面21に互いに対向する垂直支柱を設け、各垂直支柱にそれぞれ同一高さ位置でストック棚22の両側短手辺部が水平方向に挿入される溝を形成したものを棚取り付け部にできる。両側短手辺部を対応する溝にスライドさせて挿入するだけで、ストック棚22の支持固定状態が得られる。また、より安定した取り付けのために、この溝と上述のネジ穴Nとの両方を採用することもできる。
【0070】
また、ストック棚22にパレットPを介してワークWを格納するためにストック棚22に着脱可能に取り付けられるパレット格納治具Jは、パレットP底面の嵌合突部fが挿脱可能に挿入されて着座する嵌合凹部を有し、該嵌合凹部の周縁領域で前記パレットの底面を支持するものである。本実施形態においては、このようなパレット格納治具Jとして、円環状部材を主体としたものである。そして、自動パレット交換装置APCのアーム36が挿脱可能に挿入されると共にパレットPを持ち上げて離脱でき、且つ下ろして着座させられるように上下方向に移動可能なアーム通過部kとして、円環状部材の正面に切欠き部も設ける構成とした。
【0071】
なお、ストック棚22への各パレット格納治具Jの設置機構として、本実施形態においては、パレット格納治具Jの底面に突状の係合部(不図示)を設け、ストック棚22に該係合部が挿入される貫通孔(不図示)を設け、該貫通孔に挿入された係合部をストック棚22の裏面側からネジ止め固定する構成が挙げられる。この場合、ストック棚22に異なる複数の等間隔位置で貫通孔を設けておくだけで、ワークWの幅に応じてストック棚22の長手方向に沿ったパレット格納治具Jの間隔を変更して設置できる。
【0072】
本実施形態においては、ストック棚22同士の上下方向の間隔が変更可能であると共に、パレット格納治具J同士のストック棚22上の並置間隔が変更可能であるため、ワークWの大きさに応じて異なる複数のワーク配置パターンが設定できる。例えば、図7(a)に示すように、そのワークWの高さ寸法と横幅寸法に応じて、各ストック棚22に5列並置しストック棚22を5段配置した、5列×5段,25枚パレットとなる第1の配列パターンに対して、ワークWの横幅寸法が同一で高さ寸法が比較的大きい場合には、図7(b)に示すような5列×6段,30枚パレットとなる第2の配列パターンを設定することができる。また、ワークWの高さ寸法が第1の配列パターンと同一でその横幅寸法が比較的小さい場合には、図7(c)に示すような4列×5段,20枚パレットとなる第3の配列パターンが設定でき、更に、第1の配列パターンと比較してワークWの高さ寸法が比較的小さくて横幅寸法が比較的大きい場合には、図7(d)に示すような4列×6段,20枚パレットとなる第4の配列パターンが設定できる。
【0073】
従って、本実施形態においては、制御部40の記憶部41に、上記のような、またそれ以外でも、想定され得る複数のワーク配列パターンを選択可能に記憶させておき、各ワーク配列パターンでのアクセスルート情報を組み込んだAPCプログラム43も記憶部41に記憶させておく。これによって制御部40は、指定されたワーク配列パターンに対応するAPCプログラムを選択し、自動パレット交換装置APCに該APCプログラムに沿ったワークWの自動搬送を高精度に実施させることができる。
【0074】
このような複数の異なるワーク配置パターンは、パレットP及びワークWの数及び配置アドレスが互いに異なるため、ワーク配置パターン毎に全パレットPに対する自動パレット交換装置APCの駆動によるアーム36のアクセスルートのセットも異なるものとなる。従って、制御部40の記憶部41には、選択可能に予め設定された複数のワーク配置パターン44も記憶させておくと共に、APCプログラム43は、ワーク配置パターン毎のアクセスルート情報を組み込んだものとしておく。
【0075】
従って、制御部40は、加工工程の開始前に実際にワーク収納区画20の全ストック棚22に格納されたパレットP及びワークWの配置パターンを、記憶部41内のワーク配置パターン44の中から指定されることで、記憶部41内のAPCプログラム43から対応する適切なAPCプログラム43を選択して、実際の加工工程に適用できる。即ち、制御部40は、所定のNC加工プログラムを実行させながら、各加工工程の終了と開始までの期間に、選択されたAPCプログラムに沿って所定のアクセスルート情報に基づいた駆動制御を自動パレット交換装置APCの各モータ等の駆動機構に対して行うことで、加工テーブル11とストック棚22の各格納部との間での加工済みのワークWと未加工のワークWとの交換を、順次、高精度に実施させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:マシニングセンタ
2:CNC装置
3:操作盤
4:タッチパネル式ディスプレイ
5:入力部
6:カバー
7:開口部
10:加工区画
11:加工テーブル
12:テーブル駆動部
ATC:自動工具交換装置
20:ワーク収納区画
21:内壁面
N:ネジ穴
22:ストック棚
23:ヒンジ
24:ストック棚アクセスドア
24a,24b:ドア部材
H:把持部
25:安全スイッチ
26:ドアオープンボタン
27:ロック装置
28:段取り台
29:段取り台ドア
L:カム部材
APC:自動パレット交換装置
31:基台
31G:基台ガイドレール
32:支柱支持台
33:支柱
33G:昇降ガイドレール
34:上支持部
34G:上部ガイドレール
35:アーム支持部
35S:スライドガイド
36:アーム
M1,M2,M3,M4:モータ
40:制御部
41:記憶部
42:NC加工プログラム
T:工具情報
43:APCプログラム
44:ワーク配置パターン
MT:工作機械
W:ワーク
P:パレット
f:嵌合突部
k:アーム通過部
J:パレット格納治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7