(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118139
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240823BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240823BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240823BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/00 170
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024401
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 甜
(72)【発明者】
【氏名】楠 清志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 秀行
(72)【発明者】
【氏名】影山 隆久
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】 設備の出力および/または入力を系統の過渡的な周波数変動に応じて変化させ、系統の周波数変動を抑制することを可能にする。
【解決手段】 ある実施形態の電力制御装置は、交流の電気回路に接続されるとともに蓄電手段に接続される電力変換器を制御する電力制御装置であって、前記蓄電手段の蓄電量を測定または計算する蓄電量取得手段と、前記電気回路の周波数を測定する周波数測定手段と、前記測定した周波数に応じて前記電力変換器の有効電力指令値を演算する有効電力指令手段と、少なくとも前記蓄電量に応じて、前記有効電力指令手段に記憶される複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う指令手段とを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の電気回路に接続されるとともに蓄電手段に接続される電力変換器を制御する電力制御装置であって、
前記蓄電手段の蓄電量を測定または計算する蓄電量取得手段と、
前記電気回路の周波数を測定する周波数測定手段と、
前記測定した周波数に応じて前記電力変換器の有効電力指令値を演算する有効電力指令手段と、
少なくとも前記蓄電量に応じて、前記有効電力指令手段に記憶される複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う指令手段と、
を具備する電力制御装置。
【請求項2】
交流の電気回路に接続されるとともに蓄電手段に接続される電力変換器を制御する電力制御装置であって、
前記蓄電手段の蓄電量を測定または計算する蓄電量取得手段と、
前記電気回路の電気的諸量の位相を演算する位相演算手段と、
前記測定した位相に応じて前記電力変換器の慣性模擬制御信号を生成する慣性模擬制御信号生成手段と、
少なくとも前記蓄電量に応じて、前記慣性模擬制御信号生成手段に記憶される複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う指令手段と、
を具備する電力制御装置。
【請求項3】
前記蓄電手段の満充電時の蓄電容量と前記蓄電量とを用いて、前記蓄電手段の充電に必要な所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記蓄電手段の蓄電量目標値を設定する蓄電目標値設定手段と、
前記蓄電量目標値と前記蓄電量と用いて、前記蓄電手段の所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段と
を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記蓄電手段の充電終了時刻を設定する充電終了時刻設定手段と、
前記充電終了時刻と前記蓄電量と用いて、前記蓄電手段の所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段と
を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記蓄電手段の充電時間を設定する充電時間設定手段と、
前記充電時間と前記蓄電量と用いて、前記蓄電手段の所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段と
を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記蓄電手段の充電終了時刻を設定する充電終了時刻設定手段と、
前記蓄電手段の蓄電量目標値を設定する蓄電目標値設定手段と、
前記充電終了時刻と前記蓄電量目標値と前記蓄電量と用いて、前記蓄電手段の所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段と
を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記蓄電手段の充電時間を設定する充電時間設定手段と、
前記蓄電手段の蓄電量目標値を設定する蓄電目標値設定手段と、
前記充電時間と前記蓄電量目標値と前記蓄電量と用いて、前記蓄電手段の所要充電電力および電力調整幅の少なくとも一つを演算する充電電力演算手段と
を更に具備し、
前記指令手段は、前記所要充電電力および前記電力調整幅の少なくとも一つに応じて、前記複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記蓄電手段を備える移動手段の走行予定距離を設定する走行予定距離設定手段を更に具備し、
前記蓄電目標値設定手段は、前記走行予定距離から前記蓄電量目標値を計算する、
請求項4に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記複数の関数の各々は、前記電気回路の周波数調整および慣性応答模擬の少なくとも一つの効果が異なる、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項11】
前記指令手段は、
前記電気回路の周波数変化に対して、前記電力変換器の充電電力および放電電力の少なくとも一つが変化する割合を変更する手段を含む、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項12】
前記指令手段は、
前記電気回路の位相変化に対して、前記電力変換器の慣性応答模擬の量を変更する手段を含む、
請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項13】
請求項1または2に記載の電力制御装置と前記電力変換器とを備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置および電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電力系統の周波数調整は、主に火力発電所や水力発電所の出力制御により行われている。
【0003】
火力発電所や水力発電所の出力制御が働く前の過渡的な周波数変動は、同期発電機などの回転機の慣性応答により抑制されている。太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーを利用した設備は、自然環境の変化に伴い出力が変動する。周波数変動を抑制するため、蓄電池システムの充放電制御による周波数調整が実用化されつつある。
【0004】
周波数調整用の蓄電池システムに適用される電力変換装置(制御装置を含む)は、電気回路の周波数を測定し、周波数に応じて入出力の指令値を求め、指令値に従って電力変換装置の入出力を制御する。また、電力変換装置は、電気回路の電圧位相を測定し、制御用位相を求め、入出力を指令値どおりに制御する。電気回路の周波数変化等に伴い電圧位相が変化した場合、制御用の基準位相が電気回路の電圧位相に追従し、制御装置は、この追従した制御用位相に従って入出力を制御する。そのため、電力変換装置は、電気回路の周波数や電圧位相が変化しても入出力を指令値どおりに安定に制御することができる。
【0005】
電気自動車用の充電装置(電気自動車充電装置)などに適用される電力変換装置(制御装置を含む)は、蓄電量などに応じて電力変換装置の入出力を制御する。電気回路の周波数に応じて、電力変換装置の入出力を制御しない。また、電力変換装置は、電気回路の電圧位相を測定し、制御用位相を求め、入出力を指令値どおりに制御する。電気回路の周波数変化等に伴い電圧位相が変化した場合、制御用の基準位相が電気回路の電圧位相に追従して出力を制御する。そのため、電力変換装置は、電気回路の周波数や電圧位相が変化しても入出力を指令値どおりに安定に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6422682号公報
【特許文献2】特許第6440974号公報
【特許文献3】特許第4680102号公報
【特許文献4】特許第6831565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
火力発電や水力発電などの同期発電機を用いた発電設備や蓄電池などの充放電設備は、電力系統の周波数が変化した場合、ガバナフリー機能により原動機の出力を制御し、周波数変動を抑制する。原動機出力が変化する前の過渡的な周波数変動や電圧位相変動に対しては、同期発電機が持つ慣性により同期発電機の出力が変化し、過渡的な周波数変動を抑制する。すなわち、同期発電機を用いた発電設備や蓄電池などの充放電設備には、慣性応答により周波数変動を抑制する機能がある。
【0008】
一方、風力発電、太陽光発電は、風速、日射量の変動に伴い、出力指令値が変動し、出力が変動するため、電力系統の周波数変動の原因になる。また、風力発電、太陽光発電、燃料電池システム、蓄電池システムなどに適用される電力変換装置は、静止型機器であり、同期発電機が持つような慣性を有していない。また、これらの電力変換装置は、出力および/または入力を指令値どおりに制御するため、過渡的な周波数変動を抑制することはできない。
【0009】
風力発電、太陽光発電などの電力変換装置経由で電力系統に接続される充放電設備が増加し、火力発電や水力発電などの同期発電機を用いた発電設備や蓄電池などの充放電設備(慣性を有する充放電設備)の割合が減少すると、電力系統全体の慣性が減少し、電力系統の周波数変動が大きくなることが懸念される。そのため、同期発電機を用いた発電設備や蓄電池などの充放電設備と同等の過渡的な周波数変動を抑制する効果を奏する電力変換装置が求められている。
【0010】
このような電力変換装置を実現する方法として、仮想同期発電機制御が提案されている。この制御は、電力変換装置の制御装置に同期発電機の特性を模擬する演算部を備え、演算結果に基づいて電力変換装置の出力を制御し、同期発電機の出力を模擬するものである。
【0011】
仮想同期発電機制御は、複雑な演算が必要であり、演算の時間遅れが生ずるという課題がある。また、電力変換装置の出力は、演算に用いる関数、定数によって異なる挙動になるため、複数の電力変換装置が同一系統に接続される場合は、それぞれの電力変換装置の制御が干渉し、電力系統に悪影響を与えるおそれがある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、設備の出力および/または入力を系統の過渡的な周波数変動や電圧位相変動に応じて変化させ、系統の周波数変動を抑制することを可能にする、電力変換装置および電力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある実施形態の電力制御装置は、交流の電気回路に接続されるとともに蓄電手段に接続される電力変換器を制御する電力制御装置であって、前記蓄電手段の蓄電量を測定または計算する蓄電量取得手段と、前記電気回路の周波数を測定する周波数測定手段と、前記測定した周波数に応じて前記電力変換器の有効電力指令値を演算する有効電力指令手段と、少なくとも前記蓄電量に応じて、前記有効電力指令手段に記憶される複数の関数の切替えまたは前記関数の係数の変更を行う指令手段とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設備の出力および/または入力を系統の過渡的な周波数変動に応じて変化させ、系統の周波数変動を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が安定しているときの状況)を示す概念図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が低下したときの状況)を示す概念図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が上昇したときの状況)を示す概念図である。
【
図4】
図4は、従来技術に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が安定しているときの状況)を簡略化して示す概念図である。
【
図5】
図5は、従来技術に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が低下したときの状況)を簡略化して示す概念図である。
【
図6】
図6は、従来技術に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例(系統周波数が上昇したときの状況)を簡略化して示す概念図である。
【
図7】
図7は、有効電力指令部202の機能構成の一例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(調定率が線形(直線)の場合の例)を示すグラフ(その1)である。
【
図8B】
図8Bは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(調定率が線形(直線)の場合の例)を示すグラフ(その2)である。
【
図8C】
図8Cは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(調定率が線形(直線)の場合の例)を示すグラフ(その3)である。
【
図9A】
図9Aは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(調定率が非線形の場合の例)を示すグラフ(その1)である。
【
図9B】
図8Bは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(調定率が非線形の場合の例)を示すグラフ(その2)である。
【
図10A】
図10Aは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(充電および放電の双方向の運転が可能な電力変換装置に適用する場合の例)を示すグラフ(その1)である。
【
図10B】
図10Bは、
図7中の関数演算部に適用される関数の例(充電および放電の双方向の運転が可能な電力変換装置に適用する場合の例)を示すグラフ(その2)である。
【
図11】
図11は、位相調整部11の機能構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、位相調整部11の機能構成の別の例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、蓄電池Bを充電する際の充電電力の大きさによって電力変換装置3の運転状態が異なる(調定率と慣性模擬の度合いが異なる)ことを3つのケースを挙げて説明するための表(その1)である。
【
図13B】
図13Bは、蓄電池Bを充電する際の充電電力の大きさによって電力変換装置3の運転状態が異なる(調定率と慣性模擬の度合いが異なる)ことを3つのケースを挙げて説明するための表(その2)である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態による電力制御装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態による電力制御装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第3の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態による電力制御装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、第4の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【
図20】
図20は、第4の実施形態による電力制御装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1~
図3は、第1の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
図1は、第1の実施形態において系統周波数が安定しているときの状況を示し、
図2は、同実施形態において系統周波数が低下したときの状況を示し、
図3は、同実施形態において系統周波数が上昇したときの状況を示している。
図1~
図3の中には各部における信号の位相角を示すベクトルA0,A1,A2,A3,A10が、回転座標系上に模式的に記されている。回転座標系上のベクトルが右方向を向いているときの位相角は0°である。そのベクトルが時計回りに回転すると位相角はマイナスの値になり、ベクトルが反時計回りに回転すると位相角はプラスの値になる。
【0019】
図1~
図3に示される充電設備は、例えば電気自動車用充電設備である。
【0020】
なお、本実施形態では、「電気自動車用充電設備」の例を示すが、これを別の種類の設備、例えば風力発電、太陽光発電などと併設される蓄電池、系統用蓄電池、非常用蓄電池の充放電設備の他、キャパシタ、フライホイールなどの蓄電手段の充放電設備に代えて実施することも可能である。電気自動車用充電設備に限らないことについては、後述する他の実施形態においても同様に成り立つものとする。また、本実施形態では、電気自動車用充電設備が「電力系統」に接続される場合の例を示すが、電力系統の代わりに別の交流電気回路(例えば配電系統、電源回路など)に接続されてもよい。また、本実施形態では、充電設備に、遮断器、変圧器が備えられ、遮断器、変圧器を経由で電力系統に接続される場合の例を示すが、遮断器、変圧器は、備えられていなくても良いし、充電設備の外部(電力系統、交流電気回路など)に備えられても良い。また、遮断器の代わりに遮断器以外の開閉装置(開閉器など)、変圧器の代わりにリアクトルが備えられても良い。また、本実施形態では、電力変換装置の「電圧」を調整する場合の例を示すが、電圧に限らず、他の電気量(例えば電力、電流など)を調整するように構成してもよい。また、調整に使用する測定値は、電力系統の電圧の値に限らず、他の電気量(例えば電力、電流など)であってもよい。調整の演算に用いる値は、測定値から演算や関数(例えば、PLL演算、一次遅れ演算、三角関数)で求めた値や測定値の変化量(Δ測定値)であってもよい。
【0021】
図1~
図3に示される電気自動車用充電設備は、基本構成要素として、変圧器M、遮断器CB、静止型機器としての電力変換装置3を構成する電力変換器1および電力制御装置2を備える。
【0022】
電力変換器1は、遮断器CBおよび変圧器Mを介して電力系統Sと接続される。電力変換器1と電力系統Sとを繋ぐ電気回路のうち、電力系統Sと変圧器Mとを繋ぐ電気回路には計器用変成器VTが設置され、電力変換器1の出力側と遮断器CBとを繋ぐ電気回路には変流器CT1が設置される。計器用変成器VTは、電力系統Sの電圧(系統電圧)に応じた電圧信号を出力する。変流器CT1は、電力変換器1の出力電流に応じた電流信号を出力する。
【0023】
電力変換器1は、例えば電気自動車(移動手段)300に搭載される蓄電池(蓄電手段)Bの充電を行う充電手段として機能する。電力制御装置2と電気自動車300は、蓄電池Bの諸量(電圧、蓄電量など)と電力変換器1の諸量(出力電圧、出力電流など)の情報を電気自動車300から電力制御装置へ送信するための通信回路で接続される。なお、本実施形態では、蓄電池Bが電気自動車300に備えられる場合の例を示すが、電気自動車300に限らず、別の物に備えられるようにしてもよい。この場合、移動手段に限らない。本実施形態では、蓄電池Bと電力変換器1の諸量の情報を電気自動車から電力制御装置へ送信する場合の例を示すが、電力変換器1から蓄電池Bおよび/または電力変換器1の情報を電力制御装置へ送信しても良い。通信回路を設けず、無線で通信しても良い。また、本実施形態では、電力変換器1を介して電力系統Sから蓄電池Bへ充電中の動作、作用を説明するが、放電および充電を行えるものを採用してもよい。電力系統Sから蓄電池Bへの充電と、蓄電池Bから電力系統Sへの放電の両方を行えるものとする場合は、電力変換器1が充電方向および放電方向の運転を行うように構成される。
【0024】
電力変換器1は、電力制御装置2側から後述するU相信号生成部5A、V相信号生成部5B、W相信号生成部5Cを介して与えられる信号に従って、電力系統Sから蓄電池Bへ充電を行う。
【0025】
電力制御装置2は、後述する各種の信号を入力して、電力変換器1に対する指令値を生成し、当該指令値に応じた信号を生成して電力変換器1に対して出力する。
【0026】
この電気自動車用充電設備には、有効電力、無効電力演算部201、有効電力指令部202、および無効電力指令部203が設けられる。
【0027】
有効電力、無効電力演算部201は、電力系統Sの電圧(系統電圧)に応じた電圧信号を出力する計器用変成器VTから伝送されてくる電圧信号を入力するとともに、電力変換器1の出力電流に応じた電流信号を出力する変流器CTから伝送されてくる電流信号を入力し、有効電力測定値、無効電力測定値を演算して出力する。
【0028】
有効電力指令部202は、後述する充電電力演算部(充電電力演算手段)22、調定率指令部(指令手段)23および周波数測定部(周波数測定手段)2hからの信号を入力し、これらの信号から有効電力指令値を生成して出力する。例えば、充電電力演算部22の出力(充電電力指令値)に、調定率と周波数とから演算で求めた値(補償値)を加算し、有効電力指令値として出力する。
【0029】
無効電力指令部203は、無効電力指令値を出力する。なお、無効電力を出力する必要が無い場合、無効電力指令部203の設定値、出力は、0である。
【0030】
有効電力、無効電力演算部201、有効電力指令部202、および無効電力指令部203から出力された個々の信号は、電力制御装置2内の各種演算部へ伝送される。本実施形態では、有効電力、無効電力演算部201、有効電力指令部202、無効電力指令部203は、電力制御装置2に設けられる例を示すが、有効電力、無効電力演算部201および無効電力指令部203の両方または一方が電力制御装置2の外部に設置されても良い。
【0031】
電力制御装置2は、系統電圧測定部2aと、位相演算部(位相演算手段)2bと、電圧指令値演算部2cと、二相三相変換部2dを含むほか、位相調整部(位相調整手段)11を含む。更に、電力制御装置2は、電圧指令値演算部2cに与えるべきd、q軸指令値を生成するため、演算部3a、d軸電流指令値演算部3b、演算部3c、演算部3d、q軸電流指令値演算部3e、演算部3fを含むほか、電力変換器電流測定部2f、電力変換器電流dq変換部2gを含む。更に、電力制御装置2は、周波数測定部(周波数測定手段)2h、慣性模擬制御信号生成部(慣性模擬制御信号生成手段)2iを含む。
【0032】
電力変換器電流測定部2fは、変流器CT1から出力される電流信号を入力して、電力変換器1のインバータ電流の交流波形を測定し、その測定値(変換器電流測定値)を出力する。
【0033】
電力変換器電流dq変換部2gは、電力変換器電流測定部2fから出力された変換器電流測定値(3相)を入力してdq変換し(2相変換し)、d軸電流、q軸電流の測定値(d軸電流測定値、q軸電流測定値)を求めて出力する。
【0034】
演算部3aは、有効電力指令部202から出力された有効電力指令値を入力するとともに、有効電力、無効電力演算部201から出力された有効電力測定値を入力し、双方の差分(有効電力偏差)を出力する。
【0035】
d軸電流指令値演算部3bは、演算部3aから出力された信号を入力し、当該信号からd軸電流指令値を演算して出力する。
【0036】
演算部3cは、d軸電流指令値演算部3bから出力されたd軸電流指令値を入力するとともに、電力変換器電流dq変換部2gから出力されたd軸電流測定値を入力し、双方の差分(d軸電流偏差)を出力する。
【0037】
演算部3dは、無効電力指令部203から出力された無効電力指令値を入力するとともに、有効電力、無効電力演算部201から出力された無効電力を入力し、双方の差分(無効電力)を出力する。
【0038】
q軸電流指令値演算部3eは、演算部3dから出力された差分信号を入力し、当該差分信号からq軸電流指令値を演算して出力する。
【0039】
演算部3fは、q軸電流指令値演算部3eから出力されたq軸電流指令値を入力するとともに、電力変換器電流dq変換部2gから出力されたq軸電流測定値を入力し、双方の差分(q軸電流偏差)を出力する。
【0040】
系統電圧測定部2aは、計器用変成器VTから供給される電圧信号を入力し、この信号から系統の電圧の交流波形を測定するものである。この系統電圧測定部2aは、例えば、計器用変成器VTから供給される電圧信号から、三相電圧波形(正弦波)の数値を求めて出力する。
【0041】
周波数測定部2hは、系統電圧測定部2aの出力から周波数を求め、有効電力指令部202へ出力する。
【0042】
位相演算部2bは、系統電圧測定部2aにより測定された電圧の交流波形の位相を求めるものである。この位相演算部2bは、例えば、電圧の三相電圧波形を三相二相変換(例えば、αβ変換)し、電圧の位相の値を求めて出力する。なお、本例では、三相二相変換により位相を求める例を示すが、三相二相変換以外の方法で位相を求めてもよい。例えば、PLL(位相同期)演算により位相を求めてもよい。
【0043】
位相調整部11は、位相演算部2bにより求められた電圧の位相を必要に応じて調整するものである。この位相調整部11は、例えば、位相調整に角速度の一次遅れ演算を適用した値(例えば、位相演算部2bの出力(θ)から角速度の値(ω)と、角速度の一次遅れの値(ωlag)とを求め、これらの値の差(ωdif=ωlag-ω)に係数(K)と時間(Δt)を乗じ調整した位相の値(θlag))を求めて出力する。位相調整部11は、例えば、以下の演算を行い、調整した位相の値(θlag)を求める。
【0044】
ω=θ/Δt (Δt:サンプリング周期)
ωlag=ω/(1+T・s) (T:一次遅れ時定数、s:ラプラス演算子)
ωdif=ωlag-ω
θlag=K・ωdif・Δt
なお、係数および/またはΔtの乗算は、必ずしも必要ではない。角速度の代わりに位相の変化量(例えばΔθ)を用い調整した位相の値を求める場合、Δtの乗算は、不要である。また、各種数値にpu値などの無次元数を用いる場合、Δtの値が一定の場合、係数にΔtの値を含め乗算する場合などは、係数および/またはΔtの乗算を省略することができる。
【0045】
慣性模擬制御信号生成部(慣性模擬制御信号生成手段)2iは、同期機の慣性による有効電力を模擬するための慣性模擬制御信号を生成し、有効電力指令部202の出力(有効電力指令値)に加算するものである。慣性模擬制御信号生成部2iは、例えば、位相調整部11の出力(θlag)と位相演算部2bの出力(θ)の差の三角関数の値(例えば、sin(θlag-θ))を求め、必要に応じ、求めた値に係数を乗じた値(例えば、K・sin(θlag-θ))を出力する。
【0046】
電圧指令値演算部2cは、位相演算部2bにより求められた電圧の位相をもとに電力変換器1に対する電圧指令値(例えば、d軸電圧指令値、q軸電圧指令値)を求めるものである。この電圧指令値演算部2cは、例えば、位相演算部2bにより求められた電圧の位相と、演算部3c、3fにより演算されたd軸電流偏差、q軸電流偏差とから、電圧指令値を求めて出力する。
【0047】
二相三相変換部2dは、電圧指令値演算部2cにより求められた電圧指令値を二相三相変換することで当該電圧指令値の交流波形を生成するものである。この二相三相変換部2dは、例えば、電圧指令値演算部2cにより求められた電圧指令値を三相電圧波形の指令値に変換して出力する(例えば、α軸電圧指令値、β軸電圧指令値を三相交流に変換した値を求めて出力する)。二相三相変換部2dにより生成された三相電圧波形の指令値は、U相、V相、W相毎に、U相信号生成部5A、V相信号生成部5B、W相信号生成部5Cに送られる。
【0048】
U相信号生成部5A、V相信号生成部5B、W相信号生成部5Cは、それぞれ、二相三相変換部2dにより生成された三相交流電圧波形の指令値から、電力変換器1のU相、V相、W相の制御信号を生成し、生成した各信号を電力変換器1に与えて電力変換器1の電圧を制御する。
【0049】
なお、
図1~
図3の例では、慣性模擬制御信号生成部2iの出力信号(慣性模擬制御信号)が、有効電力指令部202とd軸電流指令値演算部3bとを繋ぐ経路に配置された演算部3aにおいて加算される例を示しているが、慣性模擬制御信号生成部2iの出力信号の加算場所はこの例に限られるものではない。例えば、d軸電流指令値演算部3bと電圧指令値演算部2cとを繋ぐ経路に配置された演算部3cにおいて加算してもよいし、あるいは有効電力指令部202と電圧指令値演算部2cとを繋ぐ経路の任意の場所に、演算部を配置して加算してもよいし、あるいは有効電力指令部202またはd軸電流指令値演算部3bにおいて加算してもよい。
【0050】
具体的には、特願2022-132657号(以降、「文献A」と称す。)に記載される技術(例えば文献Aの
図28乃至31および関連する説明に示される技術)を用いてもよい。すなわち、上記慣性模擬制御信号生成部2iの出力信号の加算場所を、文献Aに記載される慣性模擬制御信号生成部15の出力信号の加算場所において加算してもよい。
【0051】
そのほか、電力制御装置2の主要部における演算の具体例についても、文献Aに記載される技術(例えば文献Aの
図33乃至45Bおよび関連する説明に示される技術)を用いてもよい。
【0052】
本実施形態においては、上述した各種の機能により、系統の周波数調整および/または慣性模擬を行う。例えば、電力変換器1の定格出力と蓄電池Bの充電に使用する電力の差(以降「余裕電力」と称す場合がある。)に応じて、有効電力指令部202において使用される調定率の度合いを変更したり、位相調整部11において生成される位相の調整の度合いを変更したり、慣性模擬制御信号生成部2iで生成される慣性模擬制御信号の度合いを変更したりする。このような制御を実現するため、電力制御装置2は、充電終了時刻設定部(充電終了時刻設定手段)20A、蓄電量測定部(蓄電量取得手段)21、充電電力演算部(充電電力演算手段)22、調定率指令部(指令手段)23、位相調整指令部(指令手段)24、慣性調整指令部(指令手段)25をさらに含む。これらの要素の一部または全部は、電力制御装置2の外側に設けられてもよい。
【0053】
なお、調定率指令部23、位相調整指令部24および慣性模擬指令部25は、必ずしも必要とされるものではなく、いずれか(単数または複数)の指令部の設置を省略してもよい。また、充電終了時刻設定部20Aは、必ずしも必要とされるものではなく、代わりに後述する充電時間設定部(充電時間設定手段)20Bを設置してもよい。
【0054】
充電終了時刻設定部20Aは、蓄電池Bの充電終了時刻を設定するものである。充電終了時刻の設定は、例えば電力制御装置2の外側から通信によりデータを充電終了時刻設定部20Aに伝達することで実現してもよいし、充電終了時刻設定部20Aを直接操作(例えば、時刻データを入力)することで実現してもよい。
【0055】
蓄電量測定部21は、電気自動車300から伝送されてくる蓄電池Bの充電開始前の蓄電量の信号を入力するものである。
【0056】
充電電力演算部22は、少なくとも蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量を用いて、蓄電池Bの充電に必要な所要充電電力を演算するものである。
【0057】
具体的には、充電電力演算部22は、充電終了時刻設定部20Aにより設定された充電終了時刻(および充電開始時刻)から蓄電池Bの充電時間を演算する。また、充電電力演算部22は、演算した充電時間と、蓄電池Bの充電終了時の蓄電量(例えば満充電時の蓄電容量)と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)とから、所要充電電力(例えば、演算された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を演算する。また、充電電力演算部22は、当該所要充電電力から最小充電電力および/または最大充電電力までの電力の調整幅を演算する。なお、充電電力演算部22が演算に使用する各種の情報は、充電電力演算部22の外部から入力される各種の情報除き、所定の記憶領域に記憶されているものとする。
【0058】
調定率指令部23、位相調整指令部24および/または慣性調整指令部25は、充電電力演算部22により計算される充電電力に応じて、有効電力指令部202、位相調整部11および/または慣性模擬制御信号生成部2iの演算を選択的に切替える機能(例えば、演算に用いる関数および/または係数の値を切替える機能)を実現する。本実施形態では、蓄電量測定部21に加え、充電終了時刻設定部20Aおよび充電電力演算部22を設けることにより、充電電力演算部22から得られる充電電力に応じて、各種演算に用いる関数および/または係数を選択的に切替えることを実現する。
【0059】
調定率指令部23は、電力系統Sの周波数変化に対して、電力変換器1の充電電力および放電電力の少なくとも一つが変化する割合を変更する機能を有する。具体的には、調定率指令部23は、電力変換器1の最大充電電力と充電電力演算部22により演算された所要充電電力との差に応じて、調定率の切替えを指示するものであり、本例においては、有効電力指令部202に対し、有効電力指令値の生成に使用する調定率の切替えを指示する。例えば、有効電力指令部202は、それぞれが異なる調定率を係数として含む複数の関数(例えば、ガバナフリー制御関数)を所定の記憶領域に記憶しており、調定率指令部23は、これら複数の関数のうち、有効電力指令値の生成に使用すべき関数を指定し、当該関数が有効電力指令値の生成に使用されるように有効電力指令部202に調定率切替え指令(調定率を切替えることを指示する指令)を与える。
【0060】
位相調整指令部24は、電力系統Sの位相変化に対して、位相調整部11の出力(調整後の位相)が変化する量を切替える機能、すなわち、電力変換器1の慣性応答模擬の量を変更する機能を有する。具体的には、位相調整指令部24は、電力変換器1の最大充電電力と充電電力演算部22により演算された所要充電電力との差に応じて、位相を調整する関数、時定数、係数などの切替えを指示するものであり、本例においては、位相調整部11に対し、電圧の位相を調整する関数、時定数、係数の切替えを指示する。例えば、位相調整部11は、それぞれが異なる時定数(例えば、一次遅れ時定数)を含む複数の関数(例えば、一次遅れ関数)を有し、位相調整指令部24は、これら複数の関数のうち、位相の調整に使用すべき関数を指定し、当該関数が位相の調整に使用されるように位相調整部11に関数切替え指令(関数を切替えることを指示する指令)を与える。あるいは、位相調整部11は、時定数(例えば、一次遅れ時定数)および係数を含む1つの関数(例えば、一次遅れ関数、比例ゲイン)を有し、位相調整指令部24は、この関数に適用すべき時定数および/または係数の値を指定し、この時定数および/または係数の値が当該関数に適用されるように位相調整部11に対して時定数および/または係数の変更指令(時定数および/または係数の値を変更することを指示する指令)を与える。
【0061】
慣性調整指令部25は、電力系統Sの位相変化に対して慣性模擬制御信号生成部2iの出力(慣性模擬制御信号)の度合いを切替える機能を有する。具体的には、慣性調整指令部25は、電力変換器1の最大充電電力と充電電力演算部22により演算された所要充電電力との差に応じて、慣性模擬制御信号を生成する関数、係数などの切換えを指示するものであり、本例においては、慣性模擬制御信号生成部2iに対し、慣性模擬制御信号を演算する関数、係数の切替えを指示する。例えば、慣性模擬制御信号生成部2iは、それぞれが異なる関数(例えば、K1・sin(θlag)、K2・sin(θlag)など)を所定の記憶領域に記憶しており、慣性調整指令部25は、これらの関数のうち慣性模擬制御に使用すべき関数を指定し、当該関数が慣性模擬制御に使用されるように慣性模擬制御信号生成部2iに関数切替え指令(関数を切替えることを指示する指令)を与える。あるいは、慣性模擬制御信号生成部2iは、係数を含む1つの関数(例えば、K・sin(θlag))を有し、慣性調整指令部25は、この関数に適用すべき係数(K)の値を指定し、この係数の値が当該関数に適用されるように慣性模擬制御信号生成部2iに対して係数の変更指令(係数の値を変更することを指示する指令)を与える。
【0062】
このような電力制御装置2を構成する個々の機能は、ハードウェアとして実現してもよいし、その一部または全部をソフトウェア(コンピュータに実現させるためのプログラム)として実現してもよい。
【0063】
また、電力制御装置2を構成する個々の機能は、1つまたは複数の要素にまとめても良い。例えば、充電電力演算部22内に、充電終了時刻設定部(充電終了時刻設定手段)20A、蓄電量測定部(蓄電量取得手段)21、調定率指令部(指令手段)23、位相調整指令部(指令手段)24、慣性調整指令部(指令手段)25の機能が設けられても良い。
【0064】
また、周波数調整を行わない場合は、周波数調整に関する機能(例えば、周波数測定部22、調定率指令部23)を省略しても良い。慣性模擬制御を行わない場合は、慣性模擬制御に関する機能(例えば、慣性模擬制御信号生成部2i、位相調整部11、位相調整指令部24、慣性調整指令部25)を省略しても良い。
【0065】
また、周波数調整の度合いが一定の場合は、調定率指令部23を省略しても良い。慣性模擬制御の度合いが一定の場合は、位相調整指令部24、慣性調整指令部25の一方または両方を省略しても良い。
【0066】
次に、本実施形態の電力変換装置3と従来の電力変換装置3との違いについて説明する。
【0067】
図4~
図6は、従来技術に係る電力変換装置を有する充放電設備の構成の例を簡略化して示す概念図である。
図4は、従来技術において系統周波数が安定しているときの状況を示し、
図5は、従来技術において系統周波数が低下したときの状況を示し、
図6は、従来技術において系統周波数が上昇したときの状況を示している。
図4~
図6の中には各部における信号の位相角を示すベクトルA0,A1が、回転座標系上に模式的に記されている。回転座標系上のベクトルが右方向を向いているときの位相角は0°である。そのベクトルが時計回りに回転すると位相角はマイナスの値になり、ベクトルが反時計回りに回転すると位相角はプラスの値になる。なお、
図4~
図6では、
図1~
図3と共通する要素に同一の符号を付している。
【0068】
本実施形態では、
図1~
図3に示されるとおり位相調整部11、周波数測定部2h、慣性模擬制御信号生成部2i、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整部24、慣性調整指令部25が設置されているのに対し、従来技術では、
図4~
図6に示されるとおり位相調整部11、周波数測定部2h、慣性模擬制御信号生成部2i、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整部24、慣性調整指令部25が設置されていない。また、有効電力指令部202の代わりに充電電力指令部302(周波数に応じて充電電力を制御する機能が無い)が設置されている。そのため、本実施形態と従来技術とでは、以下に説明するように作用が異なる。なお、
図1~
図3に示されている有効電力、無効電力演算部201、有効電力指令部202、無効電力指令部203、電力変換器電流測定部2f、電力変換器電流dq変換部2g、d軸電流指令値演算部3b、q軸電流指令値演算部3e、演算部3a、3c、3d、3fは、従来技術において、必ずしも必要な機能ではなく、
図4~
図6では、図示していない。
【0069】
電力変換装置3が蓄電池Bを充電中のときの作用について、本実施形態と従来技術とを対比させながら、
図1~
図3と
図4~
図6とを参照して説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、蓄電池Bが充電中の有効電力の値をプラス(正)、放電中の有効電力の値をマイナス(負)として説明する。例えば、プラスの充電電力指令値(充電指令値)にプラスの補償値が加算されると有効電力指令値が大きくなり、充電電力が大きくなる。プラスの充電電力指令値(充電指令値)にマイナスの補償値が加算されると有効電力指令値が小さくなり、充電電力が小さくなる。マイナスの充電電力指令値(放電指令値)にマイナスの補償値が加算されると有効電力指令値が小さく(絶対値が大きく)なり、放電電力が大きくなる。マイナスの充電電力指令値(放電指令値)にプラスの補償値が加算されると有効電力指令値が大きく(絶対値が小さく)なり、放電電力が小さくなる。
【0070】
・系統周波数が安定している時
まず、本実施形態において系統周波数が基準周波数で安定しているときの有効電力指令部202内部の調定率の作用について説明する。系統周波数が基準周波数で安定しているとき、調定率によって演算され充電電力指令値に加算される補償値は、0puである。すなわち、有効電力指令部202から出力される有効電力指令値は、充電電力演算部22から出力される充電電力指令値と同じ値になる。なぜなら、系統周波数と基準周波数の差が0Hzなので、調定率によって演算され、充電電力指令値に加算される補償値が0puになるからである。
【0071】
次に、本実施形態において系統周波数が安定しているときの位相調整部11および慣性模擬制御信号生成部2iの作用について説明する。系統周波数が安定しているときは、
図1に示されるように、電力系統Sの電圧信号の位相角は、ベクトルA0に示されるように例えば0°である。このとき、位相調整部11の入力信号(位相演算部2bの出力信号)の位相角は、ベクトルA1に示されるように0°であり、位相調整部11の出力信号の位相角(位相の位相角)も、ベクトルA2に示されるように0°である。
【0072】
なぜなら、位相調整部11の出力信号は、位相調整部11の演算(例えば、入力信号の角速度の一次遅れ演算)の影響を受けないので、位相調整部11の入力信号と出力信号とは、位相角が同じ値になるからである。このとき慣性模擬制御信号生成部2iから出力される慣性模擬制御指令値(例えば、K・sin(0°))は、0puである。これに伴い、演算部3aにおいて有効電力指令部202の出力(有効電力指令値)に加算される慣性模擬制御信号生成部2iの出力(慣性模擬制御信号)の値も0puである。よって、電力変換器1の充電電力(蓄電池Bを充電する電力)は、有効電力指令値どおり、すなわち、充電電力指令値どおりに制御されることになる。
【0073】
・蓄電池Bが充電中に系統周波数が低下した時
本実施形態において蓄電池Bが充電中に系統周波数が低下した時の有効電力指令部202内部の調定率の作用について説明する。系統周波数が基準周波数よりも低い場合、調定率によって演算される補償値は、マイナスの値になり、有効電力指令部202から出力される有効電力指令値は、充電電力演算部22から出力される充電電力指令値よりも小さい値になる。例えば、基準周波数が50Hz、調定率が10%で、系統周波数が49.5Hzに低下した場合、調定率によって演算される補償値は、例えば、以下の式で計算され、有効電力指令値は、充電電力指令値よりも-0.1pu(-10%)小さい値になる。
【0074】
(49.5Hz-50Hz)/50Hz×(100%/10%)=-0.1pu
すなわち、蓄電池Bが充電中に周波数が低下した時、充電電力を減らし、周波数低下を抑制するように作用する。
【0075】
次に、本実施形態において蓄電池Bが充電中に系統周波数が低下したときの位相調整部11、慣性模擬制御信号生成部2iの作用について説明する。系統周波数の低下に伴い、系統の電圧位相が系統周波数低下前の位相に比べ遅れた場合、
図2に示されるように、電力系統Sの電圧信号の位相角が、ベクトルA0に示されるように例えば-30°になったとする。
【0076】
このとき位相調整部11の入力信号(位相演算部2bの出力信号)の位相角も、ベクトルA1に示されるように-30°になるが、位相調整部11の出力信号の位相角は、ベクトルA1と同じになるのではなく、ベクトルA2に示されるように例えば-15°になる(位相角の変化量がベクトルA1よりもベクトルA2の方が小さい)。
【0077】
なぜなら、位相調整部11の出力信号の変化量は、位相調整部11の入力信号の変化量に対して、調整された応答(例えば、入力信号の角速度の一次遅れを用いた関数(但し、位相調整指令部24により指定された関数)により遅れた応答)になるからである。位相調整部11の入力信号の変化量(例えば、角速度)の減少が続いている場合、位相調整部11の出力信号の変化量は、当該入力信号の変化量よりも小さいものになる。よって、位相調整部11から出力される位相角は、ベクトルA2に示されるように位相調整部11に入力される位相角(例えば-30°)よりも絶対値が小さい値(例えば-15°)になる。
【0078】
このとき慣性模擬制御信号生成部2iから出力される慣性模擬制御指令値の値は、ベクトルA1の位相角(例えば、-30°)とベクトルA2の位相角(例えば、-15°)との差(例えば、-15°(=-30°-(-15°))の関数(例えば、K・sin(-15°))の値になる。これに伴い、演算部3aにおいて有効電力指令値にマイナスの値が加算されるため、d軸電流指令値演算部3bに入力される値は、周波数が安定しているの時よりも小さい値になる。よって、電力変換器1の出力(蓄電池Bを充電する充電電力)が周波数安定時よりも小さくなる。
【0079】
有効電力指令部202内の調定率および慣性模擬制御信号生成部2iの作用により、電力変換器1の入力(蓄電池Bの充電電力)は、系統周波数が安定しているときよりも系統周波数が低下したときの方が小さくなる。すなわち、系統周波数の低下に伴い系統電圧の周波数および/または位相が変化した場合、電力変換器1は入力(充電)する電力を減らし、系統周波数の低下を抑制する。
【0080】
なお、系統周波数が基準周波数よりも低い状態で安定している時(例えば、49.5Hzで安定している時)、調定率の作用により充電電力が小さくなるが、慣性模擬制御は、作用しない。なぜなら、周波数が安定している時、位相角の変化量(例えば、角速度)の値が一定になるので、位相調整部11の入力信号と出力信号の値が同一になり、慣性模擬制御信号生成部2iの出力が0puになるからである。
【0081】
・蓄電池Bが充電中に系統周波数が上昇した時
本実施形態において蓄電池Bが充電中に系統周波数が上昇した時の有効電力指令部202内部の調定率の作用について説明する。系統周波数が基準周波数よりも高い場合、調定率によって演算される補償値は、プラスの値になり、有効電力指令部202の出力は、充電電力演算部22から出力される充電電力指令値よりも大きい値になる。例えば、基準周波数が50Hz、調定率が10%で、系統周波数が50.5Hzに上昇した場合、調定率によって演算される補償値は、例えば、以下の式で計算され、有効電力指令値は、充電電力指令値に対して+0.1pu(+10%)大きい値になる。
【0082】
(50.5Hz-50Hz)/50Hz×(100%/10%)=+0.1pu
すなわち、周波数が上昇した時、充電電力を増やし、周波数上昇を抑制するように作用する。
【0083】
次に、本実施形態において系統周波数が上昇したときの位相調整部11、慣性模擬制御信号生成部2iの作用について説明する。系統周波数の上昇に伴い、系統の電圧位相が系統周波数上昇前の位相に比べ進んだ場合、
図3に示されるように、電力系統Sの電圧信号の位相角が、ベクトルA0に示されるように例えば30°になったとする。
【0084】
このとき位相調整部11の入力信号(位相演算部2bの出力信号)の位相角も、ベクトルA1に示されるように30°になるが、位相調整部11の出力信号の位相角は、ベクトルA1と同じになるのではなく、ベクトルA2に示されるように例えば15°になる(位相角の変化量がベクトルA1よりもベクトルA2の方が小さい)。
【0085】
なぜなら、位相調整部11の出力信号の変化量は、位相調整部11の入力信号の変化量に対して、調整された応答(例えば、入力信号の角速度の一次遅れを用いた関数(但し、位相調整指令部24により指定された関数)により遅れた応答)になるからである。位相調整部11の入力信号の変化量(例えば、角速度)の増加が続いている場合、位相調整部11の出力信号の変化量は、当該入力信号の変化量よりも小さいものになる。よって、位相調整部11から出力される位相角は、ベクトルA2に示されるように位相調整部11に入力される位相角(例えば30°)よりも絶対値が小さい値(例えば15°)になる。
【0086】
このとき慣性模擬制御信号生成部2iから出力される慣性模擬制御指令値の値は、ベクトルA1の位相角(例えば、30°)とベクトルA2の位相角(例えば、15°)との差(例えば、15°(=30°-15°))になる。これに伴い、演算部3aにおいて有効電力指令値にプラスの値が加算されるため、d軸電流指令値演算部3bに入力される値は、周波数が安定している時の値よりも大きい値になる。よって、電力変換器1の入力(蓄電池Bの充電電力)が周波数安定時よりも大きくなる。
【0087】
有効電力指令部202内の調定率および慣性模擬制御信号生成部2iの作用により、電力変換器1の入力(蓄電池Bの充電電力)は、系統周波数が安定しているときよりも系統周波数が上昇したときの方が大きくなる。すなわち、系統周波数の上昇に伴い系統電圧の周波数および/または位相が変化した場合、電力変換器1は入力(充電)する電力を増やし、系統周波数の上昇を抑制する。
【0088】
なお、系統周波数が基準周波数よりもお高い状態で安定している時(例えば、50.5Hzで安定している時)、調定率の作用により充電電力が大きくなるが、慣性模擬制御は、作用しない。なぜなら、周波数が安定している時、位相角の変化量(例えば、角速度)の値が一定になるので、位相調整部11の入力信号と出力信号の値が同一になり、慣性模擬制御信号生成部2iの出力が0puになるからである。
【0089】
また、本実施形態においては、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整指令部24、慣性調整指令部25の作用により、蓄電池Bの充電を実施する際の余裕電力に応じて、有効電力指令部202において使用される調定率の度合い、および/または、位相調整部11において使用される位相の調整の度合いが適切に制御されるため、電力変換器1の入力(充電)の変化幅が適切に調整される。
【0090】
一方、従来技術において系統周波数が安定しているときは、
図4に示されるように、ベクトルA0,A1に示される位相角は、
図1で説明した実施形態において系統周波数が安定しているときと同じである。しかし、従来技術において系統周波数が低下したときは、
図5に示されるように、位相調整部11、周波数測定部2h、慣性模擬制御信号生成部2i、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整部24、慣性調整指令部25が無く、有効電力指令部202の代わりに充電電力指令部302が備えられていることから、電力制御装置11の制御動作が、
図2で説明した実施形態とは異なるものとなる。
【0091】
すなわち、従来技術においては、周波数測定部2hおよび調定率による制御機能がないので、系統周波数が低下しても、周波数低下に応じた充電電力制御を行わない。また、位相調整部11、慣性模擬制御信号生成部2iなどが無いので、系統電圧の位相が変化しても、位相変化に応じた充電電力制御(慣性模擬制御)を行わない。よって、電力変換器1の入力、蓄電池Bの充電電力は、系統周波数や位相が安定しているときと変わらず、系統周波数の低下を抑制することにはならない。
【0092】
次に、蓄電池Bが放電中のときの作用について、本実施形態と従来技術とを対比させながら説明する。ここでは図示を省略する。
【0093】
・蓄電池Bが放電中に系統周波数が低下した時
本実施形態において蓄電池Bが放電中に系統周波数が低下した時の有効電力指令部202内部の調定率の作用について説明する。系統周波数が基準周波数よりも低い場合、調定率によって演算される補償値は、マイナスの値になり、有効電力指令部202の出力は、充電電力演算部22から出力される充電電力指令値(放電時は、マイナスの値)よりも絶対値が大きい値になる。例えば、基準周波数が50Hz、調定率が10%で、系統周波数が49.5Hzに低下した場合、調定率によって演算される補償値は、例えば、以下の式で計算され、有効電力指令値は、充電電力指令値(放電時は、マイナスの値)よりも-0.1pu(-10%)小さい値(絶対値が0.1pu大きい値)になる。
【0094】
(49.5Hz-50Hz)/50Hz×(100%/10%)=-0.1pu
すなわち、蓄電池Bが放電中に周波数が低下した場合、放電電力を増やし、周波数低下を抑制するように作用する。放電時は、充電電力指令値がマイナスの値なので、絶対値が大きいほど、放電電力が大きくなる。
【0095】
次に、本実施形態において蓄電池Bが放電中に系統周波数が低下したときの位相調整部11、慣性模擬制御信号生成部2iの作用について説明する。系統周波数の低下に伴い、系統の電圧位相が系統周波数低下前の位相に比べ遅れた場合、
図2に示されるように、電力系統Sの電圧信号の位相角が、ベクトルA0に示されるように例えば-30°になったとする。
【0096】
このとき位相調整部11の入力信号(位相演算部2bの出力信号)の位相角も、ベクトルA1に示されるように-30°になるが、位相調整部11の出力信号の位相角は、ベクトルA1と同じになるのではなく、ベクトルA2に示されるように例えば-15°になる(位相角の変化量がベクトルA1よりもベクトルA2の方が小さい)。
【0097】
なぜなら、位相調整部11の出力信号の変化量は、位相調整部11の入力信号の変化量に対して、調整された応答(例えば、入力信号の角速度の一次遅れを用いた関数(但し、位相調整指令部24により指定された関数)により遅れた応答)になるからである。位相調整部11の入力信号の変化量(例えば、角速度)の減少が続いている場合、位相調整部11の出力信号の変化量は、当該入力信号の変化量よりも小さいものになる。よって、位相調整部11から出力される位相角は、ベクトルA2に示されるように位相調整部11に入力される位相角(例えば-30°)よりも絶対値が小さい値(例えば-15°)になる。
【0098】
このとき慣性模擬制御信号生成部2iから出力される慣性模擬制御指令値の値は、ベクトルA1の位相角(例えば、-30°)とベクトルA2の位相角(例えば、-15°)との差(例えば、-15°(=-30°-(-15°))の関数(例えば、K・sin(-15°))の値になる。これに伴い、演算部3aにおいて有効電力指令値(放電時は、マイナスの値)にマイナスの値が加算されるため、d軸電流指令値演算部3bに入力される値は、周波数が安定しているの時よりも絶対値が大きい値になる。よって、電力変換器1の出力(蓄電池Bの放電電力)が周波数安定時よりも大きくなる。
【0099】
有効電力指令部202内の調定率および慣性模擬制御信号生成部2iの作用により、電力変換器1の出力(蓄電池Bの放電電力)は、系統周波数が安定しているときよりも系統周波数が低下したときの方が大きくなる。すなわち、系統周波数の低下に伴い系統電圧の周波数および/または位相が変化した場合、電力変換器1は出力(放電)する電力を増やし、系統周波数の低下を抑制する。
【0100】
なお、系統周波数が基準周波数よりも低い状態で安定している時(例えば、49.5Hzで安定している時)、調定率の作用により放電電力が大きくなるが、慣性模擬制御は、作用しない。なぜなら、周波数が安定している時、位相角の変化量(例えば、角速度)の値が一定になるので、位相調整部11の入力信号と出力信号の値が同一になり、慣性模擬制御信号生成部2iの出力が0puになるからである。
【0101】
・蓄電池Bが放電中に系統周波数が上昇した時
本実施形態において蓄電池Bが放電中に系統周波数が上昇した時の有効電力指令部202内部の調定率の作用について説明する。系統周波数が基準周波数よりも高い場合、調定率によって演算される補償値は、プラスの値になり、有効電力指令部202の出力は、充電電力演算部22から出力される充電電力指令値(放電時は、マイナスの値)よりも大きい値になる。例えば、基準周波数が50Hz、調定率が10%で、系統周波数が50.5Hzに上昇した場合、調定率によって演算される補償値は、例えば、以下の式で計算され、有効電力指令値は、充電電力指令値(放電時は、マイナスの値)に対して+0.1pu(+10%)大きい値(絶対値が0.1pu小さい値)になる。
【0102】
(50.5Hz-50Hz)/50Hz×(100%/10%)=+0.1pu
すなわち、蓄電池Bが放電中に周波数が上昇した場合、放電電力を減らし、周波数上昇を抑制するように作用する。放電時は、充電電力指令値がマイナスの値なので、絶対値が小さいほど、放電電力が小さくなる。
【0103】
次に、本実施形態において蓄電池Bが放電中に系統周波数が上昇したときの位相調整部11、慣性模擬制御信号生成部2iの作用について説明する。系統周波数の上昇に伴い、系統の電圧位相が系統周波数上昇前の位相に比べ進んだ場合、
図3に示されるように、電力系統Sの電圧信号の位相角が、ベクトルA0に示されるように例えば30°になったとする。
【0104】
このとき位相調整部11の入力信号(位相演算部2bの出力信号)の位相角も、ベクトルA1に示されるように30°になるが、位相調整部11の出力信号の位相角は、ベクトルA1と同じになるのではなく、ベクトルA2に示されるように例えば15°になる(位相角の変化量がベクトルA1よりもベクトルA2の方が小さい)。
【0105】
なぜなら、位相調整部11の出力信号の変化量は、位相調整部11の入力信号の変化量に対して、調整された応答(例えば、入力信号の角速度の一次遅れを用いた関数(但し、位相調整指令部24により指定された関数)により遅れた応答)になるからである。位相調整部11の入力信号の変化量(例えば、角速度)の増加が続いている場合、位相調整部11の出力信号の変化量は、当該入力信号の変化量よりも小さいものになる。よって、位相調整部11から出力される位相角は、ベクトルA2に示されるように位相調整部11に入力される位相角(例えば、30°)よりも絶対値が小さい値(例えば、15°)になる。
【0106】
このとき慣性模擬制御信号生成部2iから出力される慣性模擬制御指令値の値は、ベクトルA1の位相角(例えば、30°)とベクトルA2の位相角(例えば、15°)との差(例えば、15°(=30°-15°)の関数(例えば、K・sin(15°))の値になる。これに伴い、演算部3aにおいて有効電力指令値(放電時は、マイナスの値)にプラスの値が加算されるため、d軸電流指令値演算部3bに入力される値は、周波数が安定している時よりも絶対値が小さい値になる。よって、電力変換器1の出力(蓄電池Bの放電電力)が周波数安定時よりも小さくなる。
【0107】
有効電力指令部202内の調定率および慣性模擬制御信号生成部2iの作用により、電力変換器1の出力(蓄電池Bの放電電力)は、系統周波数が安定しているときよりも系統周波数が上昇したときの方が小さくなる。すなわち、系統周波数の上昇に伴い系統電圧の周波数および/または位相が変化した場合、電力変換器1は出力(放電)する電力を減らし、系統周波数の上昇を抑制する。
【0108】
なお、系統周波数が基準周波数よりもお高い状態で安定している時(例えば、50.5Hzで安定している時)、調定率の作用により充電電力が大きくなるが、慣性模擬制御は、作用しない。なぜなら、周波数が安定している時、位相角の変化量(例えば、角速度)の値が一定になるので、位相調整部11の入力信号と出力信号の値が同一になり、慣性模擬制御信号生成部2iの出力が0puになるからである。
【0109】
また、本実施形態においては、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整指令部24、慣性調整指令部25の作用により、蓄電池Bの放電を実施する際の余裕電力に応じて、有効電力指令部202において使用される調定率の度合い、および/または、位相調整部11において使用される位相の調整の度合いが適切に制御されるため、電力変換器1の出力(放電)の変化幅が適切に調整される。
【0110】
一方、従来技術においては、
図5に示されるように、位相調整部11、周波数測定部2h、慣性模擬制御信号生成部2i、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整部24、慣性調整指令部25が無く、有効電力指令部202の代わりに充電電力指令部302が備えられていることから、蓄電池Bが放電中に系統周波数が低下し、系統電圧の位相が変わっても、電力変換器1から出力(放電)される電力は変わらないため、系統周波数の低下を抑制することにはならない。
【0111】
従来技術においては、
図5に示されるように、位相調整部11、周波数測定部2h、慣性模擬制御信号生成部2i、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整部24、慣性調整指令部25が無く、有効電力指令部202の代わりに充電電力指令部302が備えられていることから、蓄電池Bが放電中に系統周波数が上昇し、系統電圧の位相が変わっても、電力変換器1から出力(放電)される電力は変わらないため、系統周波数の上昇を抑制することにはならない。
【0112】
なお、上述の例では、電圧波形(正弦波)を三相二相変換して電圧位相を求め、位相調整に位相の角速度の一次遅れ演算を用いる場合の例を示したが、電圧以外の電気量(電力、電流など)の位相を用いてもよい。また、上述の例では、三相二相変換により位相を求める例を示したが、三相二相変換以外の方法で位相を求めてもよい。例えば、PLL(位相同期)演算により位相を求めてもよい。また、位相調整の演算には、一次遅れ演算以外の演算(関数)を用いてもよい。例えば、追従速度を調整したPLL(位相同期)演算や二次遅れ演算などを用いても良いし、一定時間、位相の値を固定し、一定時間経過後に系統の位相に追従する関数を用いても、一次遅れと同様の効果を得ることができる。位相の代わりに位相の三角関数(例えば、cosθ、sinθ)の値や変化量(Δθ)を求め、各種演算に用いても良い。
【0113】
次に調定率の切替えによる周波数変動抑制の度合いの切替えについて説明する。
図7は、有効電力指令部202の機能構成の一例を示す図である。
【0114】
図7に示されるように、有効電力指令部202は、複数の関数演算部R1、R2、R3、および切替え部SW1、SW2、SW3を有する。これらの各種要素を設けることにより、後述する複数の運転状態を選択的に切替えることが可能になる。
【0115】
関数演算部R1は、例えば5%の調定率を含む第1の関数(ガバナフリー制御関数)を有し、当該第1の関数を用いて、入力される周波数から対応する有効電力指令値を演算して出力する。この第1の関数に含まれる調定率は、後述する第2の関数に含まれる調定率よりも小さい。
【0116】
関数演算部R2は、例えば8%の調定率を含む第2の関数(ガバナフリー制御関数)を有し、当該第2の関数を用いて、入力される周波数から対応する有効電力指令値を演算して出力する。この第2の関数に含まれる調定率は、第1の関数に含まれる調定率よりも大きく、後述する第3の関数に含まれる調定率よりも小さい。
【0117】
関数演算部R3は、例えば20%の調定率を含む第3の関数(ガバナフリー制御関数)を有し、当該第3の関数を用いて、入力される周波数から対応する有効電力指令値を演算して出力する。この第3の関数に含まれる調定率は、第2の関数に含まれる調定率よりも大きい。
【0118】
切替え部SW1、SW2、SW3は、それぞれ、関数演算部R1と出力側とを繋ぐ経路、関数演算部R2と出力側とを繋ぐ経路、関数演算部R3と出力側とを繋ぐ経路に設けられ、開または閉の状態をとる。切替え部SW1、SW2、SW3のいずれか1つが、調定率指令部23から与えられる調定率指令によって選択的に閉の状態にされて信号が通過するようになっている。
【0119】
例えば、切替え部SW1を閉の状態にし、切替え部SW2およびSW3を開の状態にすると、調定率の大きい第1の関数が使用されることになる。第1の関数を使用した場合は、第2の関数を使用した場合よりも、周波数調整の効果は小さい。
【0120】
また、切替え部SW2を閉の状態にし、切替え部SW1およびSW3を開の状態にすると、調定率の大きさが中ぐらいの第2の関数が使用されることになる。第2の関数を使用した場合は、第1の関数を使用した場合よりも、周波数調整の効果は大きく、第3の関数を使用した場合よりも、周波数調整の効果は小さい。
【0121】
また、切替え部SW3を閉の状態にし、切替え部SW1およびSW2を開の状態にすると、調定率の小さい第3の関数が使用されることになる。第3の関数を使用した場合は、第2の関数を使用した場合よりも、周波数調整の効果は大きい。
【0122】
【0123】
図8A、
図8B、
図8Cのグラフは、調定率が線形(直線)で、充電電力指令値によって調定率を変化させる関数(第1、第2および第3の関数)の例を表している。
図8A、8B、8C共に、周波数が48Hzに低下した時に充電電力が0kWになる様に調定率を設定した例で、
図8Aの調定率は、20%、
図8Bの調定率は、8%、
図8Cの調定率は、5%である。
【0124】
図8Aのグラフは、調定率が20%の関数(第1の関数)を表している。例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力指令値が比較的小さい場合(例えば2kWの場合)、周波数低下抑制に使用できる電力の調整幅Rb(充電電力減方向)は狭くなる(例えば、Rb=2kW)。このような場合、
図8Aのグラフに示される第1の関数が適用される。例えば、周波数が50Hzから49Hzに低下すると、充電電力が2kWから1kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、周波数が50Hzから51Hzに上昇すると、充電電力が2kWから3kWに増加し、周波数上昇を抑制する。
【0125】
図8Bのグラフは、調定率が8%の関数(第2の関数)を表している。例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力指令値の大きさが中ぐらいの場合(例えば5kWの場合)、周波数上昇抑制に使用できる電力の調整幅Ra(充電電力増方向)は中ぐらいで(例えば、Ra=5kW)であり、周波数低下抑制に使用できる電力の調整幅Rb(充電電力減方向)も中ぐらい(例えば、Rb=5kW)である。このような場合、
図8Bのグラフに示される第2の関数が適用される。例えば、周波数が50Hzから49Hzに低下すると、充電電力が5kWから2.5kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、周波数が50Hzから51Hzに上昇すると、充電電力が5kWから7.5kWに増加し、周波数上昇を抑制する。
【0126】
図8Cのグラフは、調定率が5%の関数(第3の関数)を表している。例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力が比較的大きい場合(例えば8kWの場合)、周波数低下抑制に使用できる電力の調整幅Rb(充電電力減方向)は広くなる(例えば、Rb=8kW)。このような場合、
図8Cのグラフに示される第3の関数が適用される。例えば、周波数が50Hzから49Hzに低下すると、充電電力が8kWから4kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、周波数が50Hzから51Hzに上昇すると、充電電力が8kWから10kWに増加し、周波数上昇を抑制する。
【0127】
充電電力指令値に伴い調定率を切替えることは、必須ではないが、充電電力を所定の値以上に保ちつつ、周波数変動抑制を効果的に行うためには、充電電力指令値に伴い調定率を切替えることが好ましい。例えば、調定率が5%一定で充電電力指令値が2kWの場合、周波数が49.5Hz以下に低下すると、充電電力が0kWになり、充電を継続することができない。また、例えば、調定率が20%一定で充電電力指令値が8kWの場合、周波数が49Hzに低下したときの充電電力の変化は、1kWであり、調整幅Rb(8kW)を十分に活用することができない。従って、調定率は、充電電力指令値と予想される周波数変動幅に応じて切替えることが望ましい。
【0128】
上述の例では、充電電力指令値が8kW、5kWおよび2kWの例について説明したが、充電電力指令値は、8kW、5kWまたは2kW以外の値でも良い。また、上述の例では、周波数低下時の周波数の値(例えば、48Hz)と充電電力の値(例えば、0kW)の関係から調定率を設定した例について説明したが、周波数上昇時の周波数の値と充電電力の値の関係から調定率を設定しても良い。また、上述の例では、調定率が20%、8%および5%の例について説明したが、調定率は、20%、8%または5%以外の値でも良い。
【0129】
図9A、
図9Bのグラフは、調定率が折れ線で、周波数低下側と周波数上昇側の調定率が異なる関数の例を表している。
図9A、
図9B共に、周波数が48Hzに低下した時に充電電力が0kWになる様に調定率を設定した例である。
【0130】
例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力指令値が比較的小さい場合(例えば2kWの場合)、周波数上昇抑制に使用できる電力の調整幅Ra(充電電力増方向)は広く(例えば、Ra=8kW)、周波数低下抑制に使用できる電力の調整幅Rb(充電電力減方向)は狭い(例えば、Rb=2kW)。このような場合、
図9Aのグラフに示される関数が適用される。例えば、周波数が50Hzから49Hzに低下すると、充電電力が2kWから1kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、周波数が50Hzから51Hzに上昇すると、充電電力が2kWから6kWに増加し、周波数上昇を抑制する。
【0131】
例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力指令値が比較的大きい場合(例えば8kWの場合)、周波数上昇抑制に使用できる電力の調整幅Ra(充電電力増方向)が狭く(例えば、Ra=2kW)、周波数低下抑制に使用できる電力の調整幅Rb(充電電力減方向)が広い(例えば、Rb=8kW)。このような場合、
図9Bのグラフに示される関数が適用される。例えば、周波数が50Hzから49Hzに低下すると、充電電力が8kWから4kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、周波数が50Hzから51Hzに上昇すると、充電電力が8kWから9kWに増加し、周波数上昇を抑制する。
【0132】
折れ線の調定率を用いることは、必須ではないが、充電電力を所定の範囲内に保ちつつ、周波数変動抑制を効果的に行うためには、折れ線の調定率を用いることが好ましい。例えば、充電電力指令値が2kW、調定率が5%一定の場合、周波数が49.5Hz以下に低下すると、充電電力が0kW(充電電力の変化幅が2kWになり、充電を継続することができない。しかし、非線形の調定率であれば、周波数が49.5Hzに低下したときの充電電力は、1.5kW(充電電力の変化幅が5kW)であり、充電を継続することができる。また、例えば、充電電力指令値が8kW、調定率が20%一定の場合、周波数が49.5Hzに低下した時の充電電力は1.5kW(変化幅=0.5kW)であり、調整幅Rb(8kW)を十分に活用することができない。しかし、非線形の調定率(例えば、充電電力指令値未満で5%)であれば、周波数が49.5Hzに低下した時の充電電力は6kW(変化幅=2kW)であり、調定率が20%一定の場合の4倍の周波数変動抑制効果を得ることができる。
【0133】
上述の例では、充電電力指令値が2kWと8kWの例について説明したが、充電電力指令値は、2kW、8kW以外の値でも良い。また、上述の例では、周波数が48Hzに低下した時に充電電力が0kWになるように調定率を設定した例について説明したが、周波数が48Hzに低下した時の充電電力は、0kW以外の値でも良い。また、上述の例では、調定率が5%と20%の例について説明したが、調定率は、5%、20%以外の値でも良い。
【0134】
図10A、
図10Bのグラフは、充電および放電の双方向の運転が可能な電力変換装置に適用する関数の例で、
図10Aは、調定率が5%、
図10Bは、調定率が2.5%の関数の例を表している。Rcの範囲(0~10kW)は、電力変換装置が蓄電池を充電する範囲、Rdの範囲(-10~0kW)は、蓄電池が放電する範囲(電力変換装置が電力系統に電力を供給する範囲)である。例えば、調定率が5%、充電電力指令値が6kWの場合、周波数が49Hzに低下すると、充電電力が2kWに減少し、周波数低下を抑制する。例えば、調定率が2.5%、充電電力指令値が6kWの場合、周波数が49Hzに低下すると、放電電力が2kW(充電電力が-2kW)になり、周波数低下を抑制する。
【0135】
上述の例では、充電電力指令値が6kWの例について説明したが、充電電力指令値は、6kW以外の値でも良いし、マイナスの値(放電側の値)でも良い。また、上述の例では、調定率が5%と2.5%の例について説明したが、調定率の値は、5%、2.5%以外の値でも良い。また、上述の例では、調定率が線形(直線)の場合の例について説明したが、折れ線の調定率を用いても良い。
【0136】
上述の
図8A、
図8B、
図8C、
図9A、
図9B、
図10A、
図10Bの例では、調定率が線形(直線)または折曲点が単数の折れ線の場合の関数の例について説明したが、折曲点は、複数でも良いし曲線でも良い。また、不感帯を有する調定率(例えば、49.9Hzから50.1Hzの範囲の調定率が無限大(水平の直線)でも良い。また、上述の説明では、便宜上、関数をグラフで示したが、関数は、周波数から充電電力(または充放電電力)を求める数式、表、アルゴリズム、プログラムなどでも良い。
【0137】
次に、位相調整量の切替えによる慣性応答模擬制御の度合いの切替えについて説明する。
図11は、位相調整部11の機能構成の一例を示す図である。
【0138】
図11に示されるように、位相調整部11は、複数の関数演算部F1、F2、制限値演算部L1、制限値優先演算部P1、および切替え部SWa、SWb、SWc、SWdを有する。これらの各種要素を設けることにより、後述する複数の関数を選択的に切替えることが可能になる。具体的には、関数演算部F1、F2に、文献Aに記載される技術(例えば文献Aの
図35A乃至
図44Bおよび関連する説明に示される技術)を用いてもよい。
【0139】
関数演算部F1は、入力信号に対して第1の関数を用いて位相を遅らせた結果を出力するものである。この第1の関数には、例えば、角速度演算、角速度の一次遅れ演算が含まれる。この一次遅れ演算の時定数T1の値は、後述する一次遅れ演算の時定数T2の値よりも小さい(入力の位相に対する出力の位相の遅れが小さい)。
【0140】
関数演算部F2は、入力信号に対して第2の関数を用いて位相を遅らせた結果を出力するものである。この第2の関数には、例えば、角速度演算、一次遅れ演算が含まれる。この一次遅れ演算の時定数T2の値は、前述した一次遅れ演算の時定数T1の値よりも大きい(入力の位相に対する出力の位相の遅れが大きい)。
【0141】
制限値演算部L1は、入力信号に対して上限値および/または下限値により位相の値に制限をかけた結果を出力するものである。
【0142】
制限値優先演算部P1は、関数演算部F1または関数演算部F2の出力信号を入力するとともに、制限値演算部L1の出力信号を入力し、値が制限値内の信号(例えば、絶対値が小さい方の信号)を優先して出力するものである。
【0143】
切替え部SWa、SWb、SWcは、それぞれ、第1の関数演算部F1と制限値優先演算部P1とを繋ぐ経路、第2の関数演算部F2と制限値優先演算部P1とを繋ぐ経路、制限値演算部L1と制限値優先演算部P1とを繋ぐ経路に設けられ、開または閉の状態をとる。
【0144】
切替え部SWa、SWb、SWdのいずれか1つが、位相調整指令部24から与えられる関数切替え指令によって選択的に閉の状態にされるようになっている。切替え部SWcは、位相調整指令部24から与えられる切替え指令によって開または閉の状態にされるようになっている。切替え部SWcが開の場合、入力の位相変化幅が大きいと入力の位相と出力の位相の差が過大になる可能性があるが、SWcを閉にすれば、入力の位相と出力の位相の差を制限値内に制限することができる。
【0145】
切替え部SWdは、入力の位相を調整せずに出力するためのバイパス回路に設けられ、開または閉の状態をとる。位相調整を行わない場合、切替え部SWdを閉、切替え部SWa、SWb、SWcを開の状態にすれば、入力された信号と同じ信号が出力される。
【0146】
制限値優先演算部P1は、切替え部SWa、またはSWbが閉の状態のときに対応する関数演算部F1、またはF2の出力信号を入力し、制限値演算部L1の出力信号を入力し、関数演算部F1、またはF2の出力信号の値が制限範囲外の時は、制限値演算部L1の信号を優先して出力するものである。例えば、制限値演算部L1の出力が入力値±0.1puで、入力値が1puの場合、関数演算部F1、またはF2の出力信号の値が1.1puを超過すると、1puを出力する。例えば、制限値演算部L1の出力が入力値±0.1puで、入力値が-1puの場合、関数演算部F1、またはF2の出力信号の値が-1.1pu未満になると、-1puを出力する。
【0147】
例えば、切替え部SWaを閉の状態にし、切替え部SWbおよびSWdを開の状態にすると、一次遅れ時定数の小さい第1の関数が使用されることになる。第1の関数を使用した場合は、第2の関数を使用した場合よりも、慣性応答模擬(過渡周波数変化抑制)の効果は小さい。
【0148】
また、切替え部SWbを閉の状態にし、切替え部SWaおよびSWdを開の状態にすると、一次遅れ時定数の大きい第2の関数が使用されることになる。第2の関数を使用した場合は、第1の関数を使用した場合よりも、慣性応答模擬(過渡周波数変化抑制)の効果は大きい。同期機の慣性応答を模擬する場合、慣性応答模擬による充電電力増側と充電電力減側の調整幅は、均等であることが望ましい。便宜上、以下においては、充電電力増側と充電電力減側の調整幅を均等にする例について説明する。
【0149】
例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力が比較的大きい場合(例えば8kWの場合)、慣性応答模擬に使用できる電力の調整幅は狭い(例えば、±2kW)。このような場合、第1の関数演算部F1の関数(第1の関数)が適用される。
【0150】
また、蓄電池Bを充電する際の充電電力の大きさが中ぐらいの場合(例えば5kWの場合)、慣性応答模擬に使用できる電力の調整幅は前述の充電電力が比較的大きい場合(例えば、±2kW)に比べ広い(例えば、±5kW)。このような場合、第2の関数演算部F2の関数(第2の関数)が適用される。
【0151】
また、蓄電池Bを充電する際の充電電力が比較的小さい場合(例えば2kWの場合)、周波数調整に使用できる電力調整幅は狭い(例えば、±2kW)。このような場合、第1の関数演算部F1の関数(第1の関数)が適用される。
【0152】
上述の例では、便宜上、充電電力増側と充電電力減側の調整幅を均等(例えば、±2kWまたは±5kW)に設定する例について説明したが、充電電力増側と充電電力減側の調整幅は、不均等であっても良い。例えば、充電電力が8kWの場合に一次遅れ時定数の大きい関数を適用しても良い。この場合、例えば、充電電力増側の調整幅(例えば、+2kW)と充電電力減側の調整幅(例えば、-5kW)は、不均等になる。同期機の慣性応答を模擬することができないが、周波数低下抑制の効果は、調整幅が均一(例えば、±2Hz)の場合よりも大きくなる。
【0153】
図12は、位相調整部11の機能構成の別の例を示す図である。
【0154】
図12に示されるように、位相調整部11は、関数演算部F、制限値演算部L1、および制限値優先演算部P1を有する。
【0155】
関数演算部Fは、入力信号に対して関数を用いて位相を遅らせた結果を出力するものである。この関数には、例えば、一次遅れ演算が含まれる。一次遅れ演算の一次遅れ時定数Tは、関数の係数として値を変更することができるものである。
【0156】
制限値演算部L1は、入力信号に対して上限値および/または下限値により位相の値に制限をかけた結果を出力するものである。
【0157】
制限値優先演算部P1は、関数演算部Fの出力信号を入力するとともに、制限値演算部L1の出力信号を入力し、値が制限値内の信号(例えば、絶対値が小さい方の信号)を優先して出力するものである。
【0158】
関数演算部Fの関数に含まれる係数(一次遅れ時定数T)の値は、位相調整指令部24から与えられる係数変更指令によって変更されるようになっている。
【0159】
例えば、係数(一次遅れ時定数T)を大きい値にすると、慣性応答模擬(過渡周波数変化抑制)の効果が大きくなる。一方、係数(一次遅れ時定数T)を小さい値にすると、慣性応答模擬の効果が小さくなる。係数(一次遅れ時定数T)を0にした場合は、位相調整部11の出力波形は、位相調整部11の入力波形と同一となるため、慣性応答模擬は行われず、従来の電力変換装置3と同様の制御が行われる。
【0160】
また、前述した慣性模擬制御信号生成部2iにおける具体的な演算には、文献Aに記載される慣性模擬制御信号生成部15の技術(例えば文献Aの
図45A、
図45B、および関連する説明に示される技術)を用いてもよい。
【0161】
慣性模擬制御信号生成部2iは、位相演算部2bにより求められた位相(θ)と位相調整部11により調整された後の位相(θlag)との差を示す信号(慣性模擬制御信号θdif)を入力し、必要に応じ、関数(例えば、sinθ)を適用して値を変換したり、係数を乗じたり、pu値に変換したりした値を生成する。慣性模擬制御信号生成部2iは、例えば、以下の演算を行い、慣性模擬制御信号(Pvic)を生成する。
【0162】
θdif=θlag-θ
Pvic=sin(θdif) (θdifに関数を用い、慣性模擬制御信号に変換する例)
Pvic=K・θdif (θdifに係数を乗じ、慣性模擬制御信号に変換する例)
Pvic=K・θdif/(2・π) (θdifをpu値に変換し、更に係数を乗じ、慣性模擬制御信号を求める例)
Pvic=K・sin(θdif)
便宜上、以下においては、充電電力増側と充電電力減側の調整幅を均等にする例について説明する。例えば、蓄電池Bを充電する際の充電電力が比較的大きい場合(例えば8kWの場合)、慣性応答模擬に使用できる電力調整幅は狭い(例えば、±2kW)。このような場合、小さい値の係数(一次遅れ時定数T)が適用される。
【0163】
また、蓄電池Bを充電する際の充電電力の大きさが中ぐらいの場合(例えば5kWの場合)、慣性応答模擬に使用できる電力の調整幅は前述の充電電力が比較的大きい場合(例えば、±2kW)に比べ広い(例えば、±5kW)。このような場合、大きい値の係数(一次遅れ時定数T)が適用される。
【0164】
また、蓄電池Bを充電する際の充電電力が比較的小さい場合(例えば2kWの場合)、慣性応答模擬に使用できる電力の調整幅は狭い(例えば、±2kW)。このような場合、小さい値の係数(一次遅れ時定数T)が適用される。
【0165】
次に、
図13A、
図13Bを参照して、蓄電池Bを充電する際の充電電力の大きさによって電力変換装置3の運転状態が異なる(調定率と慣性模擬の度合いが異なる)ことを3つのケースを挙げて説明する。
【0166】
ケースNo.1の例として、充電開始時刻が0時、充電終了時刻が5時、満充電時の蓄電池容量が50kWh、充電開始時の蓄電量が10kWh、電力変換装置3の最大充電電力が10kWであると仮定する。充電終了時刻(5時)は、充電終了時刻設定部20Aにより設定される。必要充電量(40kWh)は、例えば、電気自動車(移動手段)300から蓄電量測定部21に送信される。平均充電電力は、必要充電量と充電電時間をもとに充電電力演算部22により計算される。なお、必要充電量は、電気自動車(移動手段)300から送信されるデータを用い、蓄電量測定部21により測定または計算されても良い。
【0167】
この場合、充電電力演算部22は、充電終了時刻(5時)と充電開始時刻(0時)との差から充電時間(5時間)を計算し、充電時間(5時間)、満充電時の蓄電池容量(50kWh)および充電開始時の蓄電量(10kWh)から平均充電電力(40kWh/5時間=8kW)を計算し、更に、この平均充電電力(8kW)から最小充電電力(0kW)までの充電電力の調整幅(8kW)を計算する。
【0168】
この計算結果から、調定率指令部23は、所定の周波数低下(例えば、50Hzから2Hz低下)に対する充電電力が所定の値(例えば、0kW)となる関数および/または調定率が適用されるように(例えば、小さい調定率5%(
図13A、ケースNo.1)による制御が行われるように)、有効電力指令部202に対し、調定率の切替えまたは調定率の値を指示する。また、位相調整指令部24は、慣性応答模擬において、変動する電力の変動幅が±2kW以下となる関数および/または時定数が適用されるように(例えば、小さい一次遅れ時定数T(
図13B、ケースNo.1)を有する第1の関数による位相調整が行われるように)、位相調整部11に対し、関数の切替えまたは係数(一次遅れ時定数T)の値を指示する。
【0169】
ケースNo.2の例として、充電開始時刻が0時、充電終了時刻が5時、満充電時の蓄電池容量が50kWh、充電開始時の蓄電量が25kWh、電力変換装置3の最大充電電力が10kWであると仮定する。充電終了時刻(5時)は、充電終了時刻設定部20Aにより設定される。必要充電量(25kWh)は、例えば、電気自動車(移動手段)300から蓄電量測定部21に送信される。平均充電電力は、必要充電量と充電時間をもとに充電電力演算部22により計算される。なお、必要充電量は、電気自動車(移動手段)300から送信されるデータを用い、蓄電量測定部21により測定または計算されても良い。
【0170】
この場合、充電電力演算部22は、充電終了時刻(5時)と充電開始時刻(0時)との差から充電時間(5時間)を計算し、充電時間(5時間)、満充電時の蓄電池容量(50kWh)および充電開始時の蓄電量(25kWh)から平均充電電力(25kWh/5時間=5kW)を計算し、更に、この平均充電電力(5kW)から最小充電電力(0kW)までの充電電力の調整幅(5kW)を計算する。
【0171】
この計算結果から、調定率指令部23は、所定の周波数低下(例えば,50Hzから2Hz低下)に対する充電電力が所定の値(例えば、0kW)となる関数および/または調定率が適用されるように(例えば、中ぐらいの大きさの調定率8%(
図13A、ケースNo.2)による制御が行われるように)、有効電力指令部202に対し、調定率の切替えまたは調定率の値を指示する。また、位相調整指令部24は、慣性応答模擬において、変動する電力の変動幅が±5kW以下となる関数および/または時定数が適用されるように(例えば、大きい一次遅れ時定数T(
図13B、ケースNo.2)を有する第2の関数による位相調整が行われるように)、位相調整部11に対し、関数の切替えまたは係数(一次遅れ時定数T)の値を指示する。
【0172】
ケースNo.3の例として、充電開始時刻が0時、充電終了時刻が10時、満充電時の蓄電池容量が50kWh、充電開始時の蓄電量が30kWh、電力変換装置3の最大充電電力が10kWであると仮定する。充電終了時刻(10時)は、充電終了時刻設定部20Aにより設定される。必要充電量(20kWh)は、例えば、電気自動車(移動手段)300から蓄電量測定部21に送信される。平均充電電力は、必要充電量と充電時間をもとに充電電力演算部22により計算される。なお、必要充電量は、電気自動車(移動手段)300から送信されるデータを用い、蓄電量測定部21により測定または計算されても良い。
【0173】
この場合、充電電力演算部22は、充電終了時刻(10時)と充電開始時刻(0時)との差から充電時間(10時間)を計算し、充電時間(10時間)、満充電時の蓄電池容量(50kWh)および充電開始時の蓄電量(30kWh)から平均充電電力(20kWh/10時間=2kW)を計算し、更に、この平均充電電力(2kW)から最小充電電力(0kW)までの充電電力の調整幅(2kW)を計算する。
【0174】
この計算結果から、調定率指令部23は、所定の周波数低下(例えば、50Hzから48Hzに低下)に対する充電電力が所定の値(例えば、0kW)となる関数および/または調定率が適用されるように(例えば、大きい調定率20%(
図13A、ケースNo.3)による制御が行われるように)、有効電力指令部202に対し、調定率の切替えまたは調定率の値を指示する。また、位相調整指令部24は、慣性応答模擬において、変動する電力の変動幅が±2kW以下となる関数および/または時定数が適用されるように(例えば、小さい一次遅れ時定数(
図13B、ケースNo.3)を有する第3の一次遅れ関数による位相遅れ制御が行われるように)、位相調整部11に対し、位相の切替えを指示する。
【0175】
次に、
図14のフローチャートを参照して、第1の実施形態による電力制御装置2の動作の一例を説明する。
【0176】
電力制御装置2においては、充電終了時刻設定部20A、蓄電量測定部21、充電電力演算部22、調定率指令部23、位相調整指令部24、慣性調整指令部25で行われる各種の処理(後述)により、有効電力指令部202、および、位相調整部11および/または慣性模擬制御信号生成部2iで適用されるべき関数、調定率、時定数および/または係数が求められる。
【0177】
蓄電量測定部21は、蓄電池側(例えば、電気自動車300)から伝送されてくる信号に基づき、蓄電池Bの充電開始前の蓄電量を測定または計算する(ステップS21)。一方で、充電終了時刻設定部20Aは、蓄電池Bの充電終了時刻を設定する(ステップS31)。
【0178】
次に、充電電力演算部22は、充電終了時刻設定部20Aにより設定された充電終了時刻(および充電開始時刻)から充電時間を求める(ステップS32)。また、充電電力演算部22は、蓄電池Bの充電終了時の蓄電量(例えば、満充電時の蓄電池容量)と充電開始前の蓄電量(例えば、蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量)との差(所要充電量)を求める(ステップS22)。次に、充電電力演算部22は、求められた充電時間と所要充電量とから所要充電電力(例えば、計算された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を求める(ステップS23)。次に、当該所要充電電力と最小充電電力(例えば、0kW)および/または最大充電電力(例えば、電力変換装置の定格出力)との差(充電電力調整幅)を求める(ステップS24)。
【0179】
次に、調定率指令部23は、所要充電電力および/または充電電力調整幅に応じて有効電力指令部202に適用する関数および/または調定率を求める(ステップS25)。また、位相調整指令部24は、所要充電電力および/または充電電力調整幅に応じて位相調整部11に適用する関数、時定数および/または係数を求める(ステップS11)。また、慣性調整指令部25は、所要充電電力および/または充電電力調整幅に応じて慣性模擬制御信号生成部2iに適用する関数および/または係数を求める(ステップS12)。
【0180】
例えば電力の調整幅が狭いい場合、調定率指令部23は、電力の変化幅が小さい関数および/または調定率が適用されるように(例えば、大きい調定率を有するガバナフリー制御関数による制御が行われるように)、有効電力指令部202に指令を与える。一方、電力の調整幅が広い場合、調定率指令部23は、電力の変化幅が大きい関数および/または調定率が適用されるように(例えば、小さい調定率を有するガバナフリー制御関数による制御が行われるように)、有効電力指令部202に指令を与える。
【0181】
有効電力指令部202は、充電電力演算部22から入力される充電電力指令値(例えば、平均充電電力)、調定率指令部23から入力される関数および/または調定率および周波数測定部2hから入力される周波数に従いガバナフリー制御を行って有効電力指令値を演算し、出力する。この有効電力指令部202から出力される有効電力指令値は、演算部3a、d軸電流指令値演算部3b、演算部3cを通じて、電圧指令値演算部2cに入力される信号に反映され、後述するステップS6で行われる電圧指令値演算部2cでの処理に影響を与える。
【0182】
例えば電力の調整幅が狭い場合、位相調整指令部24は、電力の変化幅が小さい関数および/または時定数が適用されるように(例えば、小さい時定数を有する一次遅れ関数が位相調整に適用されるように)、位相調整部11に時定数変更指令を与える。一方、電力の調整幅が広い場合、位相調整指令部24は、電力の変化幅が大きい関数および/または時定数が適用されるように(例えば、大きい時定数を有する一次遅れ関数による位相遅れ制御が行われるように)、位相調整部11に関数切替え指令もしくは時定数変更指令を与える。当該関数および/または時定数は、後述するステップS3で行われる位相調整部11での処理に影響を与える。
【0183】
また、例えば電力の調整幅が狭い場合、慣性調整指令部25は、電力の変化幅が小さくなる係数を慣性模擬制御信号生成部2iに与える。一方、電力の調整幅が広い場合、慣性調整指令部25は、電力の変化幅が大きくなる係数を慣性模擬制御信号生成部2iに与える。当該係数は、後述するステップS4で行われる慣性模擬制御信号生成部2iでの処理に影響を与える。
【0184】
また、電力制御装置2においては、系統電圧測定部2aが、計器用変成器VTから供給される電圧信号を入力し、この信号から系統電圧の交流波形を測定する(ステップS1)。この系統電圧測定部2aは、例えば、計器用変成器VTから供給される電圧信号から、三相電圧波形(正弦波)の数値を求めて出力する。
【0185】
次に、位相演算部2bが、系統電圧測定部2aにより測定された電圧の交流波形の位相を求める(ステップS2)。この位相演算部2bは、例えば、電圧の三相電圧波形を三相二相変換し位相の値を求めて出力する。一方で、周波数測定部2hが、系統電圧測定部2aの出力から周波数を求め(ステップS33)、有効電力指令部202へ出力する。さらに有効電力指令部202が、充電電力演算部22、調定率切換え指令部23および周波数測定部(周波数測定手段)2hからの信号を入力し、これらの信号から有効電力指令値を求め(ステップS26)、演算部3aへ出力する。
【0186】
次に、位相調整部11が、位相演算部2bにより求められた電圧の位相を調整する(ステップS3)。この位相調整部11は、例えば、位相の調整に角速度の一次遅れ演算を適用した値(例えば、位相演算部2bの出力の角速度の値と、角速度の一次遅れの値との差に必要に応じ係数を乗じた値を用い調整した位相)を求めて出力する。
【0187】
次に、慣性模擬制御信号生成部2iが、位相調整部11により調整された位相と、位相演算部2bの出力(調整される前の位相)と、慣性調整制御部25の出力を用い、慣性模擬制御信号を生成する(ステップS4)。以下に慣性模擬制御信号の例を記す。
【0188】
θ:位相演算部2bの出力
θlag:位相調整部11の出力
K:慣性調整部25の出力
慣性模擬制御信号=K・sin(θ-θlag)
上述の例では、θ-θlagの値が大きく(但し、90°以下)、Kの値が大きいほど、慣性模擬の度合いが大きくなる。すなわち、電力の調整幅が狭く、慣性模擬の度合いを小さくする場合は、位相調整部11の時定数および/またはKを小さく設定すれば良い。電力の調整幅が広く、慣性模擬の度合いを大きくする場合は、位相調整部11の時定数および/またはKを大きく設定すれば良い。
【0189】
次に、有効電力指令部202の出力と慣性模擬制御信号が例えば、演算部3aにおいて加算され(ステップS5)、d軸電流指令値演算部3bに入力される。
【0190】
次に、電圧指令値演算部2cが、演算部3c、3fにより演算されたd軸電流偏差、q軸電流偏差とから、電圧指令値を求めて出力する(ステップS6)。
【0191】
なお、電圧指令値演算部2cが使用するd軸電流偏差、q軸電流偏差は、有効電力、無効電力演算部201から送られてくる有効電力測定値および無効電力、有効電力指令部202から送られてくる有効電力指令値、および、無効電力指令部203から送られてくる無効電力指令値、変流器CT1から送られてくる電流信号に基づき、前述した電力変換器電流測定部2f、電力変換器電流dq変換部2g、演算部3a、d軸電流指令値演算部3b、演算部3c、演算部3d、q軸電流指令値演算部3e、および演算部3fにて演算処理等を行うことにより生成される。
【0192】
次に、二相三相変換部2dが、電圧指令値演算部2cにより求められた電圧指令値を二相三相変換することで当該電圧指令値の交流波形を生成する(ステップS7)。この二相三相変換部2dは、例えば、電圧指令値演算部2cにより求められた電圧指令値を三相電圧波形の指令値に変換して出力する(例えば、α軸電圧指令値、β軸電圧指令値を三相交流に変換した値を求めて出力する)。
【0193】
二相三相変換部2dにより生成された三相交流の指令値は、U相、V相、W相毎に、U相信号生成部5A、V相信号生成部5B、W相信号生成部5Cに送られ、U相、V相、W相の信号が生成され、これらの信号が電力変換器1に与えられて電力変換器1の入出力が制御される。
【0194】
その結果、例えば、電力変換装置3が充電中である場合に、系統周波数が低下したときは、電力変換器1は充電電力を減らし、系統周波数の低下を抑制し、一方、系統周波数が上昇したときは、電力変換器1は充電電力を増やし、系統周波数の上昇を抑制することになる。
【0195】
また、電力変換装置3が充電と放電の双方向の運転が可能な場合、放電中である場合に、系統周波数が低下したときは、電力変換器1は放電電力を増やし、系統周波数の低下を抑制し、一方、系統周波数が上昇したときは、電力変換器1は放電電力を減らし、系統周波数の上昇を抑制することになる。
【0196】
なお、
図14では、調定率による有効電力制御と、慣性模擬による有効電力制御との両方が行われる場合の例を示しているが、慣性模擬による有効電力制御または調定率による有効電力制御のいずれか一方のみが行われるようにしてもよい。
【0197】
第1の実施形態によれば、通常運転時に周波数調整に寄与しない設備を周波数調整に用いることができるので、電力系統Sなどの交流の電気回路の周波数変動を抑制することが可能になる。また、通常運転時に周波数安定化に寄与しない設備を慣性模擬制御に用いることができるので、電力系統Sなどの交流の電気回路の過渡的な周波数変動を抑制し、周波数の安定化に寄与することが可能になる。また、蓄電池Bの充電電力に応じて、電気回路の周波数調整の効果および/または慣性模擬の効果を加減するができるため、蓄電池Bの充電に支障をきたすことなく、電気回路の周波数変動抑制に貢献することができる。
【0198】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0199】
図15は、第2の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【0200】
前述した第1の実施形態では、電力制御装置2内に充電終了時刻設定部20Aが設けられる場合の例を示したが、この第2の実施形態では、代わりに充電時間設定部20Bが設けられる場合の例を示す。
【0201】
充電時間設定部20Bは、蓄電池Bの充電時間を設定するものである。充電時間の設定は、例えば電力制御装置2の外側(例えば、電気自動車300)から通信によりデータを充電時間設定部20Bに伝達することで実現してもよいし、充電時間設定部20Bにデータを直接入力することで実現してもよい。
【0202】
充電電力演算部22は、充電時間設定部20Bにより設定された蓄電池Bの充電時間と、蓄電池Bの充電終了時の蓄電量(例えば満充電時の蓄電容量)と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)とから、所要充電電力(例えば、設定された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を演算し、当該所要充電電力から最小充電電力および/または最大充電電力までの電力の調整幅を演算する。
【0203】
そのほかの各種構成要素の機能は、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0204】
次に、
図16のフローチャートを参照して、第2の実施形態よる電力制御装置2の動作の一例を説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0205】
蓄電量測定部21は、蓄電池側(例えば、電気自動車300)から伝送されてくる信号に基づき、蓄電池Bの充電開始前の蓄電量を測定または計算する(ステップS21)。一方で、充電時間設定部20Bは、蓄電池Bの充電時間を設定する(ステップS31-1)。
【0206】
次に、充電電力演算部22は、蓄電池Bの充電終了時の蓄電量(例えば満充電時の蓄電容量)と充電開始前の蓄電量(例えば、蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量)との差(所要充電量)を求める(ステップS22)。次に、充電電力演算部22は、充電時間設定部20Bにより設定された充電時間と求められた所要充電量とから所要充電電力(例えば、設定された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を求める(ステップS23-1)。次に、充電電力演算部22は、当該所要充電電力から最小充電電力(例えば、0kW)および/または最大充電電力(例えば、電力変換装置の定格出力)との差(充電電力調整幅)を求める(ステップS24)。
【0207】
ステップS31-1、S23-1以外のステップにおける具体的な処理の例については、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0208】
第2の実施形態によれば、電力制御装置2内に充電終了時刻設定部20Aを設ける代わりに充電時間設定部20Bを設けることにより、充電時間の演算を行う必要がなくなる。
【0209】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0210】
図17は、第3の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【0211】
この第3の実施形態では、電力制御装置2内に、更に、走行予定距離設定部(走行予定距離設定手段)31および蓄電目標値設定部(蓄電目標値設定手段)32が設けられる場合の例を示す。なお、走行予定距離設定部31は、必ずしも必要とされるものではなく、設置を省略してもよい。
【0212】
前述した第1及び第2の実施形態では、充電電力演算部22の演算において、蓄電池Bの「満充電時の蓄電容量」を用いる場合の例を示したが、この第3の実施形態では、蓄電池Bの「充電終了時の蓄電量目標値」を用いる場合の例を示す。
【0213】
走行予定距離設定部31は、蓄電池Bを備える電気自動車(移動手段)300の走行予定距離を設定するものである。走行予定距離の設定は、例えば電力制御装置2の外側(例えば、電気自動車300)から通信によりデータを走行予定距離設定部31に伝達することで実現してもよいし、走行予定距離設定部31にデータを直接入力することで実現してもよい。
【0214】
蓄電目標値設定部32は、走行予定距離設定部31により設定された走行予定距離から充電終了時の蓄電量目標値を計算して当該蓄電量目標値を充電電力演算部22へ出力する。
【0215】
走行予定距離設定部31を設置しない場合、蓄電量目標値の設定は、例えば電力制御装置2の外側(例えば、電気自動車300)から通信によりデータを蓄電目標値設定部32に伝達することで実現してもよいし、蓄電目標値設定部32にデータを直接入力することで実現してもよい。
【0216】
充電電力演算部22は、充電終了時刻設定部20Aにより設定された充電終了時刻(および充電開始時刻)から蓄電池Bの充電時間を演算し、演算した充電時間と、蓄電目標値設定部32により演算された蓄電量目標値(充電終了時の蓄電量)と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)とから、所要充電電力(例えば、求めた充電時間内に蓄電池Bに所要充電量を充電するために必要な平均充電電力)を演算し、当該所要充電電力から最小充電電力および/または最大充電電力までの電力の調整幅を演算する。なお、蓄電量目標値設定部32で蓄電量目標値(充電終了時の蓄電量)の代わりに、所要充電量を設定し、所要充電量の計算を省略しても良い。
【0217】
そのほかの各種構成要素の機能は、第1及び第2の実施形態で説明したとおりである。
【0218】
次に、
図18のフローチャートを参照して、第3の実施形態よる電力制御装置2の動作の一例を説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0219】
蓄電量測定部21は、蓄電池側(例えば、電気自動車300)から伝送されてくる信号に基づき、蓄電池Bの充電開始前の蓄電量を測定または計算する(ステップS21)。一方で、充電終了時刻設定部20Aは、蓄電池Bの充電終了時刻を設定する(ステップS31)。また、走行予定距離設定部31は、蓄電池Bを備える電気自動車(移動手段)300の走行予定距離を設定する(ステップS41)。
【0220】
次に、蓄電目標値設定部32は、走行予定距離設定部31により設定された走行予定距離から蓄電量目標値を計算して当該蓄電量目標値を充電電力演算部22へ出力する(ステップS42)。
【0221】
なお、上記ステップS41の処理は無くても構わない。その場合、蓄電目標値設定部32は、上記走行予定距離を用いて蓄電量目標値を求めずに、伝達または入力された蓄電量目標値を出力する。
【0222】
次に、充電電力演算部22は、充電終了時刻設定部20Aにより設定された充電終了時刻(および充電開始時刻)から充電時間を求める(ステップS32)。また、充電電力演算部22は、蓄電目標値設定部32により求められた蓄電量目標値と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)を求める(ステップS43)。次に、充電電力演算部22は、求められた充電時間と所要充電量とから所要充電電力(例えば、計算された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を求める(ステップS23)。次に、当該所要充電電力と最小充電電力および/または最大充電電力との差(充電電力調整幅)を求める(ステップS24)。
【0223】
ステップS41、S42、S43以外のステップにおける具体的な処理の例については、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0224】
第3の実施形態によれば、電力制御装置2内に、蓄電目標値設定部32を更に設けることにより、蓄電量目標値を用いて所要充電電力(例えば、求めた充電時間内に蓄電池Bに所要充電量を充電するために必要な平均充電電力)を求めることが可能になる。また、走行予定距離設定部31を更に設けることにより、走行予定距離から上記蓄電量目標値を求めることが可能になる。
【0225】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。以下では、第2の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0226】
図19は、第4の実施形態に係る電力変換装置を有する充電設備の構成の例を示す概念図である。
【0227】
この第4の実施形態では、電力制御装置2内に、更に、走行予定距離設定部31および蓄電目標値設定部32が設けられる場合の例を示す。なお、走行予定距離設定部31は、必ずしも必要とされるものではなく、設置を省略してもよい。
【0228】
走行予定距離設定部31は、蓄電池Bを備える電気自動車(移動手段)300の走行予定距離を設定するものである。走行予定距離の設定は、例えば電力制御装置2の外側(例えば、電気自動車300)から通信によりデータを走行予定距離設定部31に伝達することで実現してもよいし、走行予定距離設定部31にデータを直接入力することで実現してもよい。
【0229】
蓄電目標値設定部32は、走行予定距離設定部31により設定された走行予定距離から蓄電量目標値を計算して当該蓄電量目標値を設定する。
【0230】
走行予定距離設定部31を設置しない場合、蓄電目標値設定部32は、上記走行予定距離を用いずに蓄電量目標値を設定する。蓄電量目標値の設定は、例えば電力制御装置2の外側(例えば、電気自動車300)から通信によりデータを蓄電目標値設定部32に伝達することで実現してもよいし、蓄電目標値設定部32にデータを直接入力することで実現してもよい。
【0231】
充電電力演算部22は、充電時間設定部20Bにより設定された充電時間と、蓄電目標値設定部32により演算された蓄電量目標値(充電終了時の蓄電量)と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)とから、所要充電電力(例えば、求めた充電時間内に蓄電池Bに所要充電量を充電するために必要な平均充電電力)を演算し、当該所要充電電力から最小充電電力および/または最大充電電力までの電力の調整幅を演算する。なお、蓄電量目標値設定部32で蓄電量目標値(充電終了時の蓄電量)の代わりに、所要充電量を設定し、所要充電量の計算を省略しても良い。
【0232】
そのほかの各種構成要素の機能は、第1乃至第3の実施形態で説明したとおりである。
【0233】
次に、
図20のフローチャートを参照して、第4の実施形態よる電力制御装置2の動作の一例を説明する。
【0234】
蓄電量測定部21は、蓄電池側(例えば、電気自動車300)から伝送されてくる信号に基づき、蓄電池Bの充電開始前の蓄電量を測定または計算する(ステップS21)。一方で、充電時間設定部20Bは、蓄電池Bの充電時間する(ステップS31-1)。また、走行予定距離設定部31は、蓄電池Bを備える電気自動車(移動手段)300の走行予定距離を設定する(ステップS41)。
【0235】
次に、蓄電目標値設定部32は、走行予定距離設定部31により設定された走行予定距離から蓄電量目標値を計算して当該蓄電量目標値を充電電力演算部22へ出力する(ステップS42)。
【0236】
なお、上記ステップS41の処理は無くても構わない。その場合、蓄電目標値設定部32は、上記走行予定距離を用いて蓄電量目標値を求めずに、伝達または入力された蓄電量目標値を出力する。
【0237】
次に、充電電力演算部22は、蓄電目標値設定部32により求められた蓄電量目標値と蓄電量測定部21により測定または計算された蓄電量との差(所要充電量)を求める(ステップS43)。次に、充電電力演算部22は、充電時間設定部20Bにより設定された充電時間と求められた所要充電量とから所要充電電力(例えば、設定された充電時間内に蓄電池Bを満充電するために必要な平均充電電力)を求める(ステップ23-1)。次に、当該所要充電電力と最小充電電力および/または最大充電電力とのとの差(充電電力調整幅)を求める(ステップS24)。
【0238】
ステップS41、S42、S43、S23-1以外のステップにおける具体的な処理の例については、第2の実施形態で説明したとおりである。
【0239】
第4の実施形態によれば、電力制御装置2内に、蓄電目標値設定部32を更に設けることにより、蓄電量目標値を用いて所要充電電力(例えば、求めた充電時間内に蓄電池Bに所要充電量を充電するために必要な平均充電電力)を求めることが可能になる。また、走行予定距離設定部31を更に設けることにより、走行予定距離から上記蓄電量目標値を求めることが可能になる。
【0240】
以上詳述したように、各実施形態によれば、設備の出力および/または入力を系統の過渡的な周波数変動に応じて変化させ、系統の周波数変動を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0241】
1…電力変換器(充電手段)、2…電力制御装置、3…電力変換装置、2a…系統電圧測定部、2b…位相演算部(位相演算手段)、2c…電圧指令値演算部、2d…二相三相変換部、2f…電力変換器電流測定部、2g…電力変換器電流dq変換部、2h…周波数測定部(周波数測定手段)、2i…慣性模擬制御信号生成部(慣性模擬制御信号生成手段)、3a…演算部、3b…d軸電流指令値演算部、3c…演算部、3d…演算部、3e…q軸電流指令値演算部、3f…演算部、3g…電圧指令値演算部、5A…U相信号生成部、5B…V相信号生成部、5C…W相信号生成部、11…位相調整部(位相調整手段)、20A…充電終了時刻設定部(充電終了時刻設定手段)、20B…充電時間設定部(充電時間設定手段)、21…蓄電量測定部(蓄電量取得手段)、22…充電電力演算部(充電電力演算手段)、23…調定率指令部(指令手段)、24…位相調整指令部(指令手段)、25…慣性調整指令部(指令手段)、31…走行予定距離設定部(走行予定距離設定手段)、32…蓄電目標値設定部(蓄電目標値設定手段)、201…有効電力、無効電力演算部、202…有効電力指令部(有効電力指令手段)、203…無効電力指令部、300…電気自動車(移動手段)、302…充電電力指令部、B…蓄電池(蓄電手段)、CB…並列用遮断器、CT,CT1…変流器、R1,R2,R3,F1,F2,F…関数演算部、L1…制限値演算部、P1…制限値優先演算部、M…主要変圧器、S…電力系統、SW1,SW2,SW3,SWa,SWb,SWc,SWd…切替え部、VT…計器用変成器。