(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118147
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】調湿装置
(51)【国際特許分類】
F21S 45/60 20180101AFI20240823BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240823BHJP
【FI】
F21S45/60
F21W102:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024410
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、安定して除湿が行える調湿装置を提供する。
【解決手段】調湿装置9は、内部に調湿室30を形成するハウジング100と、ハウジング100に設けられ調湿室30と灯具の灯室8とを連通させる開口20を開閉する開閉機構10と、を有し、開閉機構10は、ハウジング100に直接的または間接的に回転可能に支持された回転軸部11aと、開口20を遮蔽可能な遮蔽部11cと、回転軸部11aから延びて遮蔽部11cを支持する支持部11bと、を有し、ハウジングは、回転軸部11aの回転軸線に対する周方向に延びる円弧部101を有し、開口20は、円弧部101に設けられており、開閉機構10は、遮蔽部11cを円弧部101に沿って周方向に移動させ、開口20を開放する第一位置と、開口20を閉塞する第二位置に位置させるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に調湿室を形成するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ前記調湿室と灯具の灯室とを連通させる開口を開閉する開閉機構と、を有し、
前記開閉機構は、
前記ハウジングに直接的または間接的に回転可能に支持された回転軸部と、
前記開口を遮蔽可能な遮蔽部と、
前記回転軸部から延びて前記遮蔽部を支持する支持部と、を有し、
前記ハウジングは、前記回転軸部の回転軸線に対する周方向に延びる円弧部を有し、
前記開口は、前記円弧部に設けられており、
前記開閉機構は、前記遮蔽部を前記円弧部に沿って周方向に移動させ、前記開口を開放する第一位置と、前記開口を閉塞する第二位置に位置させるように構成されている、調湿装置。
【請求項2】
前記調湿室は、第一空間と第二空間とに区分けされ、連通孔を介して両者が連通されており、
前記連通孔は補助遮蔽部により閉塞可能であり、
前記補助遮蔽部は前記回転軸部から延びる補助支持部により支持されている、
請求項1に記載の調湿装置。
【請求項3】
前記開閉機構は、前記回転軸部に回転力を作用させるばね部を有し、
前記ばね部は、前記遮蔽部が前記第二位置に位置するときに、前記遮蔽部を前記第一位置に移動させる回転力を前記回転軸部に働かせる、
請求項1又は2に記載の調湿装置。
【請求項4】
前記第二空間は外部に連通する放湿孔を有し、
前記第一空間には調湿機構が設けられており、
前記調湿機構は、調湿材と、前記調湿材を加熱する加熱部を有し、
前記加熱部への給電と前記開閉機構への給電が共通の給電部材で構成されている、請求項2に記載の調湿装置。
【請求項5】
前記給電部材はバスバーで構成されている、請求項4に記載の調湿装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記調湿材を収容する金属製のハウジングである、請求項4に記載の調湿装置。
【請求項7】
前記調湿材は、粒状のシリカゲルである、請求項6に記載の調湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドランプのハウジング調湿装置においては、シャッタの開閉に応じて加熱素子が作動し、ヘッドランプ内を除湿する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のヘッドランプのハウジング調湿装置においては、調湿装置の内部と外部における気圧差や振動により、意図しないシャッタの開閉が起こる可能性があった。
【0005】
そこで本開示は、簡易な構成により、安定して除湿が行える調湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る調湿装置は、
内部に調湿室を形成するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ前記調湿室と灯具の灯室とを連通させる開口を開閉する開閉機構と、を有し、
前記開閉機構は、
前記ハウジングに直接的または間接的に回転可能に支持された回転軸部と、
前記開口を遮蔽可能な遮蔽部と、
前記回転軸部から延びて前記遮蔽部を支持する支持部と、を有し、
前記ハウジングは、前記回転軸部の回転軸線に対する周方向に延びる円弧部を有し、
前記開口は、前記円弧部に設けられており、
前記開閉機構は、前記遮蔽部を前記円弧部に沿って周方向に移動させ、前記開口を開放する第一位置と、前記開口を閉塞する第二位置に位置させるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、簡易な構成により、安定して除湿が行える調湿装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る調湿装置を備えた車両用灯具の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る調湿装置のA-A断面矢視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る調湿装置の斜視分解図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る調湿装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る調湿装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0010】
図1は、本開示の実施形態に係る調湿装置を備えた車両用灯具の一例を示す断面図である。
【0011】
本実施形態においては、本実施形態においては、調湿装置9として、車両用灯具1に設けられる調湿装置について説明する。
図1に示したように、車両用灯具1は、アウタレンズ2と、灯具ハウジング3と、インナレンズ4と、光源ユニット5と、調湿装置9と、を有している。アウタレンズ2と灯具ハウジング3により灯室8が構成されている。灯室8の内部にインナレンズ4と光源ユニット5が設けられている。光源ユニット5は光源6と、基板7を有する。
【0012】
光源6から出射された光は、インナレンズ4およびアウタレンズ2を介して灯具の前方に出射される。灯室8の湿度が高まると、アウタレンズ2の内面等に結露が生じることがある。すると、光源6から出射された光を所望の強度で所望の場所に照射することが難しくなる。そこで本開示は、灯室8内の湿度を調節可能に構成されている。
【0013】
灯具ハウジング3は、灯室8と外部とを連絡させる放湿口50を有する。放湿口50は灯具ハウジング3に設けられた開口である。調湿装置9は、この放湿口50を塞ぐように灯具ハウジング3に設けられている。外部と灯室8とは、この放湿口50を介してのみ連通可能な状態となる。
【0014】
次に
図2及び
図3を用いて調湿装置9について説明する。
図2は、
図1に示す灯具ハウジング3に取り付けられた調湿装置9のA-A断面矢視図である。
図2に示すように調湿装置9は、ハウジング100と、開閉機構10と、調湿機構13と、給電部材14と、放湿口50と、を有する。
【0015】
ハウジング100は開口20と、円弧部101と、仕切り部102を有する。ハウジング100によって調湿室30が構成される。円弧部101はハウジング100の一部が円弧状に構成される部分である。開口20は円弧部101に設けられ、ハウジング100の内部と調湿装置9が設けられる灯室8とを連通させることができる孔である。仕切り部102はハウジング100で構成された調湿室30を第一空間31と第二空間32に簡易的に分割する。仕切り部102には連通口21が設けられ、連通口21は第一空間31と第二空間32を連通させる。
【0016】
開閉機構10は回転部11と動力部12を有する。回転部11は回転動作によって開口20及び連通口21を開放状態とすることができる部材である。動力部12は回転部11を回転させる動力を供給する部材である。回転部11はさらに回転軸部11aと、支持部11bと、遮蔽部11cと、補助遮蔽部11dと、補助支持部11eと、ばね部11fとを有する。
【0017】
回転軸部11aは少なくとも一部分に歯部11a1を有する間欠歯車形状の部材であり、ハウジング100に直接的または間接的に回転可能に支持される。回転軸部11aは、
図2における紙面の垂直方向に延びる回転軸線Axに沿って延びている。遮蔽部11cは開口20を遮蔽可能である。支持部11bは回転軸部11aから延びて遮蔽部11cを支持する。補助遮蔽部11dは連通口21を遮蔽可能であり、補助支持部11eは回転軸部11aから延び補助遮蔽部11dを支持する。ばね部11fは回転軸部11aに設けられ、回転軸部11aに周方向の力を与えることができる。なお、以降の説明においては、周方向とは回転軸部11aの回転軸線Axに対する周方向を言う。
【0018】
動力部12はモータ12aと、ギア12bと、ブラケット12cと、を有する。ギア12bはモータ12aの回転軸に設けられ、回転軸部11aの歯部11a1と噛み合っている。ブラケット12cはモータ12aとギア12bを収納する。
開閉機構10は、回転部11が動力部12によって動力を与えられることによって、遮蔽部11cをハウジング100の円弧部101に沿って周方向に移動させることができる。遮蔽部11cは周方向に移動することで、開口20を開放させる第一位置と開口20を閉塞させる第二位置とに位置することができる。
【0019】
また、上述した回転部11の回転運動に伴って、補助遮蔽部11dも同様に周方向へ移動する。遮蔽部11cが第一位置に位置する際、補助遮蔽部11dは連通口21を閉塞させる位置に位置するように構成される。また、遮蔽部11cが第二位置に位置する際、補助遮蔽部11dは連通口21を開放させる位置に位置するように構成される。
【0020】
調湿機構13は調湿材13aと加熱部13bを有する。調湿材13aは室温において空気中の水分を吸収し、加熱されることで吸収した水分を放出する。調湿材13aは例えばシリカゲル等で構成される。加熱部13bは、調湿材13aを加熱可能であり、図示した例においては、調湿材13aを収容する金属製のハウジングを兼ねている。
【0021】
給電部材14は動力部12のモータ12a及び調湿機構13の加熱部13bに電力を供給する部材である。本実施形態においては、給電部材14にはバスバーが用いられている。
【0022】
次に、
図4を用いて調湿装置9の動作について説明する。
図4は本開示の実施形態に係る調湿装置の動作を示す図である。
【0023】
図4の(A)において、遮蔽部11c及び補助遮蔽部11dは第一位置に位置している。このとき、遮蔽部11cは開口20を開放する位置に位置し、補助遮蔽部11dは連通口21を遮蔽する位置に位置している。このため、(A)においては、灯室8から第一空間31への空気の流れは許容されるが、第一空間31から第二空間32への空気の流れは許容されない。これにより、灯室8の内部の湿った空気を第一空間31に取り込み、調湿機構13によって湿度を吸収することができる。
【0024】
なお回転部11は、回転軸部11aに設けられたばね部11fによって、遮蔽部11c及び補助遮蔽部11dが第一位置に位置するように、周方向の力を受けている。これにより、動力部12に給電されていない状態においては、遮蔽部11c及び補助遮蔽部11dは第一位置に位置し続けることができる。給電部材14が動力部12に給電すると、動力部12は、ばね部11fが回転部11にもたらす力とは逆向きの周方向の力を回転部11に加える。
【0025】
調湿機構13が十分に水分を吸収した場合、もしくは一定時間が経過した場合、給電部材14によって調湿装置9に対して給電が行われる。調湿装置9に給電が行われた状況を
図4の(B)に示す。給電は動力部12及び加熱部13bに対して行われる。
【0026】
動力部12に対して給電が行われることによって、動力部12のモータ12aが回転し、ギア12bを通じて回転部11を回転させる。これにより、回転部11に設けられる遮蔽部11cと補助遮蔽部11dは回転し、第二位置に位置する。このとき、遮蔽部11cは開口20を遮蔽する位置に位置し、補助遮蔽部11dは連通口21を開放する位置に位置している。このため、(B)においては、灯室8から第一空間31への空気の流れは許容されず、第一空間31から第二空間32への空気の流れは許容される状態となる。
【0027】
動力部12に給電が行われると同時に加熱部13bに対しても給電が行われる。これにより、加熱部13bは発熱し、調湿材13aを加熱する。加熱された調湿材13aは水分を放出する。この時、補助遮蔽部11dは連通口21を開放し、第一空間31から第二空間32への空気の流れを許容しているため、調湿材13aから放出された水分を含んだ空気は第二空間32に設けられた放湿口50から外部へ放出される。
【0028】
調湿材13aが水分を放出しきった場合、もしくは一定時間が経過した場合、給電部材14による動力部12及び加熱部13bへの給電は終了する。動力部12は給電の終了により、回転部11への周方向の力の印加を終了する。これにより、遮蔽部11c及び補助遮蔽部11dは、ばね部11fによる弾性力により再び第一位置に移動する。
【0029】
調湿装置9は上述した動作を繰り返すことによって灯室8の内部の湿度を低減させることができる。
【0030】
本開示とは異なり、特許文献1に記載の灯具の調湿装置においては、開口部を閉塞した状態であっても、灯具内部と調湿室の気圧差が生じた際に閉塞状態が破られることがあった。
本開示の調湿装置9によれば、遮蔽部が開口を閉塞している状態において気圧差により外部から遮蔽部を押し込むような外力が遮蔽部に作用した場合、外力は支持部を介して回転軸部に作用する。回転軸部はハウジングに直接的または間接的に支持されているため、当該外力を強固に受け止めることができる。
このため、気圧差によって遮蔽部に外力が作用しても開口の閉塞状態を維持することができる。
【0031】
本開示に係る調湿装置9によれば、調湿室30は、第一空間31と第二空間32とに区分けされ、連通口21を介して両者が連通されており、連通口21は補助遮蔽部11dにより閉塞可能であり、補助遮蔽部11dは回転軸部から延びる補助支持部11eにより支持されている。
上述した構成によれば、単一の動力部12によって遮蔽部11cと補助遮蔽部11dとを同期させて動かすことができる。そのため、開口20の開口状態と、連通口21の開口状態とを同期させることができるので、より効率的に除湿を行うことができる。
【0032】
また、本開示に係る調湿装置によれば、開閉機構10は、回転軸部11aに回転力を作用させるばね部11fを有し、ばね部11fは、遮蔽部11cが第二位置に位置するときに、遮蔽部11cを第一位置に移動させる回転力を回転軸部11aに働かせる。
上記構成によれば開閉機構10は開閉機構10を作動させた際は開口20を閉塞するが、開閉機構10を作動させない場合は、開口20を開放する位置に遮蔽部11cを保持することができる。これにより、開閉機構10を作動させない限り、開口20は開放され、意図しない開口20の開放及び閉塞を防止することができる。このため、安定して除湿が行える調湿装置9を提供することができる。
【0033】
また、本開示に係る調湿装置9によれば、第二空間32は外部に連通する放湿口50を有し、第一空間31には調湿機構13が設けられており、調湿機構13は、調湿材13aと、調湿材13aを加熱する加熱部13bを有し、加熱部13bへの給電と開閉機構10への給電が共通の給電部材14によってなされている。
従来、給電を要する調湿機構及び開閉機構を有する調湿装置においては、それぞれの機構に給電部材を設けることが一般的であった。
出願人は、本開示に係る調湿装置9においては、調湿機構13へ給電する場面と、開閉機構10を開放状態とする場面は一致しているので、共通の給電部材14で構成できることに気が付いた。本開示の調湿装置9は調湿機構13と開閉機構10の部品を共通化することで部品点数を削減することができる。これにより簡易な構成の調湿装置を提供することができる。
【0034】
また、本開示に係る調湿装置9においては、給電部材14はバスバーで構成されていてもよい。バスバーはあらかじめ配線の形が決まっているため、組付けが容易である。これにより、調湿装置の組み立てコストを低減することができる。また、電線で給電する場合に比べて、断線の恐れが少ない。
【0035】
また、本開示の調湿装置9は、調湿材13aを加熱する加熱部13bを金属製のハウジングとしてもよい。これにより、調湿材13aの加熱と調湿材13aの収容は一つの部材によって行うことができる。これにより、部品点数を削減することができるので、簡易な構成の調湿装置を提供することができる。
また、この構成において調湿材13aは粒状のシリカゲルを用いてもよい。調湿材13aは金属製のハウジングを用いるため、一定の形状を持たない安価な粒状のシリカゲルを用いることができる。これにより、調湿装置9の製造コストを削減することができる。
【0036】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用灯具
2 アウタレンズ
3 灯具ハウジング
4 インナレンズ
5 光源ユニット
6 光源
7 基板
8 灯室
9 調湿装置
10 開閉機構
11 回転部
11a 回転軸部
11a1 歯部
11b 支持部
11c 遮蔽部
11d 補助遮蔽部
11e 補助支持部
11f ばね部
12 動力部
12a モータ
12b ギア
12c ブラケット
13 調湿機構
13a 調湿材
13b 加熱部
14 給電部材
20 開口
21 連通口
30 調湿室
31 第一空間
32 第二空間
50 放湿口
100 ハウジング
101 円弧部
102 仕切り部