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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118155
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】パーツ移送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B65G47/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024424
(22)【出願日】2023-02-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】593049017
【氏名又は名称】セキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 宏治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 誠司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩一
【テーマコード(参考)】
3F080
【Fターム(参考)】
3F080AA06
3F080AA10
3F080AA26
3F080BA02
3F080BC02
3F080BC07
3F080BC08
3F080CC03
3F080CC15
3F080CF02
3F080DA03
3F080DA13
3F080DA16
3F080DB03
3F080DB04
3F080DB09
(57)【要約】
【課題】パーツ移送装置に関して、パーツの移送が停止されることを抑制する。
【解決手段】ナット移送装置1は、面板20と、面板の後面22側に設けられ且つ磁界を形成することで面板の前面21側に位置する溶接ナットMを面板の前面に吸着する吸着手段40と、面板に交差する中心軸X回りの円周線Pに沿って吸着手段を回転移動することによって、吸着手段により面板の前面に吸着されたナットを面板の前面側における円周線の上端部Paに重なる所定位置Aまで回転移動する回転駆動手段50と、面板の前面側の下部21aに設けられ且つナットが溜められるとともに吸着手段によりナットが吸着されるナット溜り部60と、を備える。面板の前面側且つナットの移送方向Fにおける所定位置より下流側には、ナット通路90が設けられる。ナット通路における円周線に重ならない非重部分92には、面板の後面側に凹み且つ移送方向に延びる溝部93が設けられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面板と、
前記面板又は前記面板の後面側に設けられ且つ磁界を形成することによって前記面板の前面側に位置するパーツを前記面板の前面に吸着させる吸着手段と、
前記面板に交差する軸回りの円周線に沿って前記吸着手段を回転移動させることによって、前記吸着手段により前記面板の前面に吸着されたパーツを、前記面板の前面側における前記円周線の上端部に重なる所定位置まで回転移動させる回転駆動手段と、
前記面板の前面側の下部に設けられ且つ複数の前記パーツが溜められるとともに前記吸着手段によって前記パーツが吸着されるパーツ溜り部と、を備え、
前記面板の前面側且つ前記パーツの移送方向における前記所定位置よりも下流側には、前記パーツが通るパーツ通路が設けられており、
前記パーツ通路は、前記円周線に重ならない非重部分を含み、
前記非重部分には、前記面板の後面側に凹み且つ前記移送方向に延びる凹部が設けられている、パーツ移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーツ移送装置であって、
前記非重部分は、前記所定位置に対して下方に延びる下延部を含み、
前記下延部には、前記凹部が設けられている、パーツ移送装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパーツ移送装置であって、
前記面板の前面側を移送された前記パーツを受けて目的位置に供給するパーツ供給機構を備え、
前記面板と前記パーツ供給機構とは、前記パーツが通る接続管によって接続されており、
前記接続管の内壁部には、前記凹部と同方向に凹み且つ前記移送方向に延びる接続管側凹部が設けられている、パーツ移送装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパーツ移送装置であって、
前記接続管には、前記接続管を通る前記パーツの通路を開閉する開閉機構が設けられている、パーツ移送装置。
【請求項5】
請求項1に記載のパーツ移送装置であって、
前記パーツ通路よりも前記移送方向の上流側には、表裏選別手段が設けられており、
前記表裏選別手段は、
前記パーツの表面が前記面板の前面を向いた姿勢のとき前記パーツを通過させる一方、前記パーツの裏面が前記面板の前面を向いた姿勢のとき前記パーツをはねて通過を阻止する、パーツ移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーツ移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のパーツ移送装置は、面板と、面板の後面側に設けられ且つ磁界を形成することによって面板の前面側に位置するパーツを面板の前面に吸着させる複数の吸着手段と、面板に直交する中心軸を中心とする特定円周線に沿って吸着手段を回転移動させることによって、吸着手段により面板に吸着されたパーツを、面板の前面側の上部における所定位置まで回転移動させる回転駆動手段と、面板の前面側の下部に設けられ且つ複数のパーツが無整列状態で溜められるとともに吸着手段によってパーツが吸着されるパーツ溜り部と、を備える。
【0003】
複数の吸着手段は、互いに逆の磁極を面板の前方に向けた一対の永久磁石が相隣り合う第1吸着手段と、互いに同一の磁極を面板の前方に向けた一対の永久磁石が相隣り合う第2吸着手段と、を有する。
【0004】
かかる構成によれば、第1吸着手段と第2吸着手段とが互いに協働することによって、多数のパーツが無整列状態で溜められたパーツ溜り部から、パーツを、より確実に持ち上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6675670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
面板の前面側に位置するパーツは、吸着手段の磁界によって面板の前面に吸着されて、回転駆動手段によって面板の前面側を特定円周線に沿って回転移動して、面板の前面側の上部における所定位置に到達する。所定位置に到達したパーツは、所定位置を通過して、所定位置よりも下流側の通路に通される。
【0007】
所定位置よりも下流側の通路は、必ずしも特定円周線に重なる位置にあるわけではないので、所定位置よりも下流側の通路を通るパーツに対して、吸着手段の磁界が及ばないことがある。
【0008】
ここで、パーツに予め塗布されたオイルによって、パーツが面板の前面に付着してしまうことがある。パーツが所定位置よりも上流側にある場合、吸着手段及び回転駆動手段によって、パーツと面板との付着が断ち切られて、パーツは、特定円周線に沿って所定位置まで回転移動し得る。
【0009】
しかしながら、パーツが所定位置よりも下流側の通路における特定円周線に重らない位置にある場合、吸着手段の磁界がパーツに及ばないので、パーツと面板との付着が断ち切られずに、パーツが面板の前面で停止してしまうことがある。
【0010】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パーツ移送装置に関して、パーツの移送が停止されることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係るパーツ移送装置は、面板と、前記面板又は前記面板の後面側に設けられ且つ磁界を形成することによって前記面板の前面側に位置するパーツを前記面板の前面に吸着させる吸着手段と、前記面板に交差する軸回りの円周線に沿って前記吸着手段を回転移動させることによって、前記吸着手段により前記面板の前面に吸着されたパーツを、前記面板の前面側における前記円周線の上端部に重なる所定位置まで回転移動させる回転駆動手段と、前記面板の前面側の下部に設けられ且つ複数の前記パーツが溜められるとともに前記吸着手段によって前記パーツが吸着されるパーツ溜り部と、を備え、前記面板の前面側且つ前記パーツの移送方向における前記所定位置よりも下流側には、前記パーツが通るパーツ通路が設けられており、前記パーツ通路は、前記円周線に重ならない非重部分を含み、前記非重部分には、前記面板の後面側に凹み且つ前記移送方向に延びる凹部が設けられている。
【0012】
面板の前面側に位置するパーツは、吸着手段の磁界によって面板の前面に吸着されて、回転駆動手段によって面板の前面側を円周線に沿って回転移動して、面板の前面側における円周線の上端部に重なる所定位置に到達する。所定位置に到達したパーツは、所定位置を通過して、パーツの移送方向における所定位置よりも下流側に設けられたパーツ通路に通される。
【0013】
所定位置よりも下流側のパーツ通路は、円周線に重ならない非重部分を含む。このため、パーツ通路の非重部分を通るパーツに対して、吸着手段の磁界が及ばないことがある。
【0014】
ここで、パーツに予め塗布されたオイルによって、パーツが面板の前面に付着してしまうことがある。パーツが所定位置よりも上流側にある場合、吸着手段及び回転駆動手段によって、パーツと面板の前面との付着が断ち切られて、パーツは、円周線に沿って所定位置まで回転移動し得る。
【0015】
しかしながら、パーツが所定位置よりも下流側のパーツ通路の非重部分にある場合、吸着手段の磁界がパーツに及ばないので、パーツと面板の前面との付着が断ち切られずに、パーツが面板の前面で停止してしまうことがある。
【0016】
そこで、パーツ通路の非重部分には、面板の後面側に凹み且つ移送方向に延びる凹部が設けられている。このため、パーツ通路の非重部分において、パーツと面板の前面との接触面積が低減されるので、パーツと面板の前面との付着力が低減される。
【0017】
これにより、パーツ通路の非重部分を通るパーツに対して吸着手段の磁界が及ばない場合であっても、パーツ通路の非重部分を通るパーツが面板の前面に付着しにくくなり、パーツ通路の非重部分を通るパーツが面板の前面で停止することが抑制される。
【0018】
以上、パーツ移送装置に関して、パーツの移送が停止されることを抑制することができる。
【0019】
一実施形態では、前記非重部分は、前記所定位置に対して下方に延びる下延部を含み、前記下延部には、前記凹部が設けられている。
【0020】
かかる構成によれば、所定位置を通過してパーツ通路における非重部分の下延部を通るパーツは、凹部によって面板の前面との付着力が低減されるのみならず、重力によって下方に落下しようとするので、より一層、面板の前面に付着しにくくなって、面板の前面での停止が抑制される。
【0021】
一実施形態では、前記面板の前面側を移送された前記パーツを受けて目的位置に供給するパーツ供給機構を備え、前記面板と前記パーツ供給機構とは、前記パーツが通る接続管によって接続されており、前記接続管の内壁部には、前記凹部と同方向に凹み且つ前記移送方向に延びる接続管側凹部が設けられている。
【0022】
かかる構成によれば、面板とパーツ供給機構とを接続する接続管を通るパーツは、接続管側凹部によって、接続管の内壁部との付着力が低減される。このため、接続管を通るパーツが接続管の内壁部に付着しにくくなるので、接続管を通るパーツが接続管で停止することを抑制することができる。
【0023】
一実施形態では、前記接続管には、前記接続管を通る前記パーツの通路を開閉する開閉機構が設けられている。
【0024】
かかる構成によれば、接続管を通るパーツの通路を開閉機構で閉じることによって、パーツが接続管からパーツ供給機構へ過剰に送られるのを、抑制している。しかしながら、接続管におけるパーツの通路が開閉機構で閉じられると、パーツが接続管の内壁部に付着しやすくなるので、パーツが接続管で滞留しやすくなり、接続管におけるパーツの通路を開閉機構で後で開いたとしても、パーツがパーツ供給機構に適切に送られないことがある。
【0025】
接続管の内壁部に接続管側凹部が設けられているので、接続管におけるパーツの通路を開閉機構で閉じてパーツを接続管に一時停止させた後に、接続管におけるパーツの通路を開閉機構で開いた場合に、パーツを接続管に滞留させることなく、パーツを接続管からスムーズにパーツ供給機構に送ることができる。
【0026】
一実施形態では、前記パーツ通路よりも前記移送方向の上流側には、表裏選別手段が設けられており、前記表裏選別手段は、前記パーツの表面が前記面板の前面を向いた姿勢のときに前記パーツを通過させる一方、前記パーツの裏面が前記面板の前面を向いた姿勢のときに前記パーツをはねて通過を阻止する。
【0027】
かかる構成によれば、パーツの表裏を選別して、統一した姿勢に変換させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、パーツ移送装置に関して、パーツの移送が停止されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第1実施形態に係るナット移送装置を示す正面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るナット移送装置を示す斜視図である。
図3図3は、溶接ナットの斜視図である。
図4図4は、吸着手段の分解斜視図である。
図5図5は、図1のV-V線における断面図である。
図6図6は、図7のVI-VI線における断面図である。
図7図7は、図1のVII-VII線における断面図である。
図8図8は、ガイド板を後面側から見た図である。
図9図9は、溶接ナットの表面が面板の前面を向いた場合の図7のIX-IX線における断面図である。
図10図10は、溶接ナットの裏面が面板の前面を向いた場合の図9相当図である。
図11図11は、図7のXI-XI線における断面図である。
図12図12は、図7のXII-XII線における断面図である。
図13図13は、第2実施形態に係るナット移送装置の閉状態におけるキッカーを示す正面図である。
図14図14は、第2実施形態に係るナット移送装置の開状態におけるキッカーを示す正面図である。
図15図15は、その他の実施形態について、凹部の横断面のバリエーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。なお、本明細書において、「左右」は、前面側から見た場合を基準とする。
【0031】
<第1実施形態>
(ナット移送装置)
第1実施形態に係るパーツ移送装置としてのナット移送装置1について、説明する。図1は、ナット移送装置1を示す正面図である。図2は、ナット移送装置1を示す斜視図である。図3は、パーツとしての溶接ナットMの斜視図である。
【0032】
図1,2に示すように、ナット移送装置1は、投入シュート2と、パーツ選別機構としてのナット選別機構3と、パーツ供給機構としてのナット供給機構4と、基台5と、接続管100と、を備える。
【0033】
投入シュート2には、多数の溶接ナットMが無整列状態で投入されている。ナット選別機構3は、投入シュート2に投入された溶接ナットMの表裏を選別して統一した姿勢に変換させる。
【0034】
ナット供給機構4は、ナット選別機構3により姿勢変換された溶接ナットMを受けて、溶接ナットMを目的位置としての抵抗溶接機Qに対して供給する。ナット供給機構4は、例えばピストンシリンダ機構で構成されており、溶接ナットMを供給ロッドに引っ掛けて、溶接ナットMを抵抗溶接機Qに運ぶ。詳細は後述するが、ナット供給機構4は、接続管100によって、ナット選別機構3に接続されている。基台5は、投入シュート2、ナット選別機構3及びナット供給機構4を固定する。
【0035】
投入シュート2は、上下に開口するホッパー筒部2aと、上側に開口する横断面略半円形状であって前後方向に延びるシュート部2bと、を有する。ここで、基台5の上面は、傾斜面5aで構成される。傾斜面5aは、後方に向けて下り勾配である。投入シュート2は、傾斜面5aの高い位置(前側の位置)に、ブラケット5bにより固定されている。シュート部2bの前端部は、ホッパー筒部2aの下端開口に連通している。シュート部2bの後端部は、後斜め下方に延びている。
【0036】
(ナット選別機構)
ナット選別機構3は、傾斜面5aの低い位置(後側の位置)に固定されている。ナット移送装置1のナット選別機構3は、面板20と、ガイド板30と、複数の吸着手段40と、回転駆動手段50と、パーツ溜り部としてのナット溜り部60と、姿勢変換ガイド70と、表裏選別手段としての表裏選別ガイド80と、パーツ通路としてのナット通路90と、を備える。
【0037】
面板20は、四角板状である。面板20の幅方向は、シュート部2bの傾斜方向に対して直交に延びている。面板20の厚み方向は、シュート部2bの傾斜方向に対して平行に延びている。面板20の前面21は、投入シュート2の側(前側)を向き且つ斜め上向きに傾斜して配置されている。面板20の前面21側の下部21aには、シュート部2bの後端部が接続されている。
【0038】
ここで、溶接ナットMについて、図3を参照しながら説明する。溶接ナットMは、ナット本体m1と突起部m2とを一体形成したものである。ナット本体m1は、所定の厚みtを有し、互いに平行な表面m3及び裏面m4が平面視で略四角形状に形成されている。突起部m2は、ナット本体m1の四隅各々から、裏面m4側に突出する。溶接ナットMの全体厚みTは、ナット本体m1の厚みtに各突起部m2の突出寸法を加えたものである。なお、溶接ナットMの中心m0には、ねじ孔が貫通する。なお、m5は、溶接ナットMの側面である。sは、溶接ナットMの二面幅寸法である。eは、溶接ナットMの対角線寸法である。対角線寸法eは、二面幅寸法sよりも大きい。
【0039】
図1に戻って、複数の吸着手段40は、面板20の後面22側に設けられている。吸着手段40は、磁界を形成することによって、面板20の前面21側に位置する溶接ナットMを、面板20の前面21に吸着させる。
【0040】
図4は、吸着手段40の分解斜視図である。図4に示すように、吸着手段40は、回転ヘッド41を有する。回転ヘッド41は、棒状の軸体41aと、軸体41aの先端に設けられ且つ軸体41aよりも大径のヘッド部41bと、を含む。ヘッド部41bの先端面には、一対の凹穴42が開口している。一対の凹穴42には、一対の永久磁石43が嵌め込まれている。ヘッド部41bの外周面から凹穴42に向けて、固定ネジ44が貫通している。固定ネジ44は、永久磁石43をヘッド部41bに締め付け固定する。
【0041】
図5は、図1のV-V線における断面図である。図5に示すように、回転駆動手段50は、保持部51と、駆動部としてのモータ52(図1参照)と、を有する。保持部51は、面板20(図1参照)に交差する(具体的には直交する)中心軸Xを中心に2つの板材を十字状に組んで構成されており、中心軸Xを起点に半径方向に延びる4つのアーム53を有する。
【0042】
図6は、後述する図7のVI-VI線における断面図である。図6に示すように、面板20の後面22側には、支持板6が配置されている。支持板6は、面板20と同様の四角板状である。支持板6と面板20とは、互いに対面している。支持板6には、面板20が、ボルト及びナットによって固定されている(図1参照)。
【0043】
図6に示すように、モータ52の出力軸52aは、中心軸Xに沿って前方に延びており、面板20の後面22側に設けられた支持板6を貫通する。モータ52の出力軸52aには、アーム53の基端部53a(保持部51の中心)が回転一体に固定されている。吸着手段40は、保持部51におけるアーム53の先端部53bに保持されている。具体的には、アーム53の先端部53bには、取付孔54が設けられている。吸着手段40における回転ヘッド41の軸体41aは、前側から取付孔54に挿入されている。吸着手段40は、取付孔54に対して直交するビス(図示省略)によって、抜け止めされている。なお、図5に示すように、吸着手段40における一対の永久磁石43は、アーム53の延長方向(半径方向)に直列に並んで配置されている。
【0044】
モータ52は、保持部51を中心軸X回りに回転させる。これにより、吸着手段40は、中心軸X回りに回転移動する。このとき、吸着手段40における一対の永久磁石43,43の中点45は、中心軸X回りの円周線Pを通る回転軌跡を描く(図5参照)。すなわち、回転駆動手段50の保持部51は、吸着手段40を、円周線P上で保持する。回転駆動手段50のモータ52は、保持部51を中心軸X回りに回転させることによって、吸着手段40を円周線Pに沿って回転移動させる。一対の永久磁石43,43は、円周線P(中点45)を挟んで半径方向の両側に配置される。
【0045】
吸着手段40は、面板20の後面22側において、面板20と支持板6との間に挟まれている。なお、吸着手段40と面板20の後面22との間には、両者が互いに接触しない程度の間隔が設けられている。
【0046】
図7は、図1のVII-VII線における断面図である。図7に示すように、回転駆動手段50により吸着手段40を中心軸X回りの円周線Pに沿って回転移動させることによって、吸着手段40により面板20の前面21に吸着された溶接ナットMは、面板20の前面21側における円周線Pの上端部Paに重なる所定位置Aまで回転移動する。円周線Pの上端部Paは、円周線Pの12時の位置に相当する。吸着手段40の回転方向は、面板20の前面21側から見て反時計回りである。
【0047】
図2に戻って、面板20の前面21側の下部21aには、面板20と投入シュート2のシュート部2bとに囲まれたナット溜り部60が、設けられている。ナット溜り部60には、複数の溶接ナットMが無整列状態で溜められる。ナット溜り部60に溜められた溶接ナットMには、オイルが予め塗布されている。
【0048】
図7に示すように、面板20の前面21側の下部21aに設けられたナット溜り部60は、円周線Pにおける中心軸Xよりも下側部分に重なる。吸着手段40は、ナット溜り部60に対して面板20を挟んで後面22側を、通る。ナット溜り部60に溜められた溶接ナットMは、吸着手段40によって、面板20の前面21に吸着される。
【0049】
図1に戻って、面板20の前面21側には、ガイド板30が配置されている。ガイド板30は、面板20と同様の四角板状である。ガイド板30と面板20とは、互いに対面している。ガイド板30は、面板20と共に、ボルト及びナットによって、支持板6に固定されている。
【0050】
図7に示すように、吸着手段40は、回転駆動手段50によって、面板20の後面22側を円周線Pに沿って回転移動する。溶接ナットMは、吸着手段40の回転移動に伴い、面板20の前面21側を円周線Pに沿って回転移動する。ガイド板30は、溶接ナットMを、所定の経路に案内する。
【0051】
図8は、ガイド板30単体を後面32側から見た図である。ガイド板30は、溶接ナットMの全体厚みTよりも大きな板厚を有する。ガイド板30の後面32には、複数の凹部として、第1凹部36、第2凹部37、及び第3凹部38が形成されている。
【0052】
図7に示すように、吸着手段40の回転方向は、前面側から見て反時計回りである。各凹部36,37,38は、前面側から見て反時計回りに、第1凹部36、第2凹部37、第3凹部38の順に配置されている。溶接ナットMは、面板20の前面21側において、第1凹部36、第2凹部37及び第3凹部38に順次供給されて、所定の経路に案内される。以下、第1凹部36、第2凹部37及び第3凹部38を、第1ガイド部36、第2ガイド部37及び第3ガイド部38という。
【0053】
以下、各ガイド部36,37,38について、主に図7,8を参照しながら説明する。ガイド板30の中央付近には、厚み方向に貫通する開口部33が設けられる。開口部33の開口縁部33aの下部は、投入シュート2のシュート部2bの略半円形状に対応した円弧部33bである。円弧部33bは、中心軸Xを中心とした上側に開口する円弧状に構成されている。円弧部33bは、円周線Pよりも外周側に位置する。
【0054】
第1ガイド部36は、円周線Pに重なる位置にある。第1ガイド部36は、円周線Pの右端部Pbから、円周線Pの右端部Pbと上端部Paとの中間部Pcまで、に相当する部分を構成する。開口部33における円弧部33bの右端部33c(円周線Pの右端部Pbに相当する部分)から左斜め上方に延びる左上延部33dには、第1ガイド部36の入口36aが設けられる。第1ガイド部36は、外周壁36b、内周壁36c及び底壁36dを有する。第1ガイド部36における円周線Pの中間部Pcに相当する部分には、外周壁36bと内周壁36cとの幅寸法が他の部分に比べて小さな幅狭部36eが形成されている。幅狭部36eの幅寸法は、溶接ナットMの対角線寸法eよりも若干(例えば+1mm程度)大きい程度である。第1ガイド部36の幅狭部36eは、溶接ナットMの複数個通過を規制し、且つ、溶接ナットMを円周線P上に位置するように案内する。
【0055】
第2ガイド部37は、円周線Pに重なる位置にある。第2ガイド部37は、円周線Pにおける中間部Pcから上端部Paまでに相当する部分を構成する。第2ガイド部37は、外周壁37a及び底壁37bを有する一方、内周壁を有さない。第2ガイド部37は、内周側に開放されている。第2ガイド部37の外周壁37a及び底壁37bは、第1ガイド部36の外周壁36b及び底壁36dに、連続している。
【0056】
第3ガイド部38の上流部分(右側部分)は、円周線Pに重なる位置にある。第3ガイド部38は、円弧部38aと、下延部38bと、を有する。円弧部38aは、円周線Pの上端部Paよりもやや左側の左上部Pdに相当する部分から、円周線Pよりも左方向にずれて、左下方向に円弧状に延びている。下延部38bは、円弧部38aの下流端部(左下端部)から下方向に真直ぐに延びている。
【0057】
第3ガイド部38の入口38cは、第2ガイド部37の出口37cに対向している。第3ガイド部38は、外周壁38d、内周壁38e及び底壁38fを有する。第3ガイド部38の外周壁38dは、接続外周壁39を介して、第2ガイド部37の外周壁37aに接続されている。第3ガイド部38の底壁38fは、第2ガイド部37の底壁37bに接続されていない。第3ガイド部38における外周壁38dと内周壁38eとの幅寸法は、溶接ナットMの二面幅寸法sよりも大きく対角線寸法eよりも小さい。第3ガイド部38の出口38gは、面板20の前面21側(ガイド板30の後面32側)の下端部21bに設けられており、接続管100を介してナット供給機構4(図1参照)に接続されている。
【0058】
第3ガイド部38は、後述するナット通路90を構成する要素の1つである。
【0059】
各ガイド部36,37,38の溝深さ、すなわち、各底壁36d,37b,38fと面板20の前面21との間隔は、溶接ナットMの二面幅寸法sよりも小さく、全体厚みTよりも大きい。すなわち、溶接ナットMは、倒伏姿勢(溶接ナットMの表面m3又は裏面m4が面板20の前面21に対向する姿勢)のとき、第1ガイド部36の入口36aを通過することができる。一方、溶接ナットMは、起立姿勢(溶接ナットMの側面m5が面板20の前面21に対向する姿勢)のとき、第1ガイド部36の入口36aを通過することができない。
【0060】
図7に示すように、第1ガイド部36の入口36a付近には、姿勢変換ガイド70が設けられる。姿勢変換ガイド70は、ガイド板30の開口縁部33aの左上延部33dに設けられている。姿勢変換ガイド70は、ガイド板30の前面31側から後方(面板20の前面21側)に、延びている。起立姿勢の溶接ナットMは、第1ガイド部36の入口36aを通過しようとすると、姿勢変換ガイド70に接触して倒される。起立姿勢の溶接ナットMは、姿勢変換ガイド70によって倒伏姿勢に変換されて、第1ガイド部36の入口36aを通過可能となる。
【0061】
図7に示すように、面板20の前面21側における所定位置Aよりもやや左側(円周線Pの上端部Paよりもやや左側の左上部Pdに重なる位置)には、第2ガイド部37の出口37cと第3ガイド部38の入口38cとの間において、表裏選別ガイド80が設けられている。表裏選別ガイド80は、所定位置A(円周線Pの上端部Pa)よりも、溶接ナットMの移送方向Fの下流側に、設けられている。
【0062】
表裏選別ガイド80は、L字形状であり、取付部81と突出部82とが互いに直交してなる。第3ガイド部38の入口38c近傍には、取付部81が固定されている。取付部81は、ガイド板30の前面31に沿って延びている。突出部82は、取付部81の先端部に設けられている。突出部82は、ガイド板30の前面31側から後方向(面板20の前面21側)に、面板20の前面21に対して垂直に、延びている。
【0063】
図9は、溶接ナットMの表面m3が面板20の前面21を向いた場合の図7のIX-IX線における断面図である。図10は、溶接ナットMの裏面m4が面板20の前面21を向いた場合の図9相当図である。図9,10に示すように、表裏選別ガイド80の突出部82と面板20の前面21との隙間Lは、溶接ナットMの全体厚みTよりも小さく、且つ、ナット本体m1の厚みtよりも僅かに大きい。
【0064】
表裏選別ガイド80による溶接ナットMの表裏選別は、以下のように行われる。上述したように、溶接ナットMは、回転駆動手段50による吸着手段40の回転移動に伴い、面板20の前面21側を、回転移動する。表裏選別ガイド80は、面板20の前面21からの溶接ナットMの突出厚み(全体厚みT、厚みt)の差に基づいて、表裏を選別する。
【0065】
溶接ナットMは、図9に示すように、溶接ナットMの表面m3が面板20の前面21を向いた姿勢のとき、表裏選別ガイド80の突出部82に接触せず、表裏選別ガイド80を通過する。具体的には、溶接ナットMにおいて径方向に互いに隣り合う両突起部m2,m2の略中央位置(中心m0)は、表裏選別ガイド80を通過する。
【0066】
一方、溶接ナットMは、図10に示すように、溶接ナットMの裏面m4が面板20の前面21を向いた姿勢のとき、表裏選別ガイド80の突出部82にはねられて、表裏選別ガイド80の通過を阻止される。表裏選別ガイド80にはねられた溶接ナットMは、ナット溜り部60へと落下する。
【0067】
図7に示すように、第1ガイド部36の外周壁36b及び第2ガイド部37の外周壁37a並びに接続外周壁39は、円周線Pよりも外周側に位置する。図9,10に示すように、これらの外周壁36b,37a,39は、溶接ナットMの側面m5に当接して、溶接ナットMを内周側に押し付ける。溶接ナットMの中心m0は、円周線Pよりも内周側に位置付られる。溶接ナットMの側面m5は、これらの外周壁36b,37a,39に沿う。
【0068】
(ナット通路)
面板20の前面21側且つ溶接ナットMの移送方向Fにおける所定位置Aよりも下流側には、ナット通路90が設けられている。ナット通路90は、面板20の前面21とガイド板30の第3ガイド部38とで構成されている。ナット通路90は、表裏選別ガイド80よりも移送方向Fの下流側に、設けられている。換言すると、ナット通路90よりも移送方向Fの上流側には、表裏選別ガイド80が設けられている。ナット通路90には、所定位置A(円周線Pの上端部Pa)を通過して表裏選別ガイド80で表裏選別されて移送されてきた溶接ナットMが、通る。
【0069】
ナット通路90は、重部分91と、非重部分92と、を含む。重部分91は、第3ガイド部38における円弧部38aの上流部分に、対応する。重部分91は、円周線Pに重なる。非重部分92は、第3ガイド部38における円弧部38aの下流部分に対応する円弧部92aと、第3ガイド部38の下延部38bに対応する下延部92bと、を含む。非重部分92は、円周線Pに重ならない。下延部92bは、所定位置A及び円弧部92aに対して、下方に真直ぐに延びている。
【0070】
図11は、図7のXI-XI線における断面図である。図7,11に示すように、非重部分92における円弧部92a及び下延部92bには、凹部としての溝部93が設けられている。溝部93は、面板20の前面21に設けられている。溝部93は、面板20の前面21において、面板20の後面22側に凹んでいる。溝部93は、面板20の前面21において、溶接ナットMの移送方向Fに延びている。溝部93は、複数の窪み93aが移送方向Fに並ぶことによって、構成されている。溝部93の幅は、大きい方がよい。本例では、溝部93の横断面は、四角形状である。
【0071】
ナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMの表面m3(突起部m2の無い面)は、面板20の前面21に設けられた溝部93に、臨む。
【0072】
ナット通路90の出口94は、第3ガイド部38の出口38gに対応しており、面板20の前面21側の下端部21bに設けられている。ナット通路90の出口94は、接続管100を介して、ナット供給機構4に接続されている。ナット通路90を通過した溶接ナットMは、ナット通路90の出口94を介して接続管100に流入した後、接続管100を通過してナット供給機構4に送られる。
【0073】
(接続管)
接続管100は、剛性管101と、フレキシブル管102と、を含む。剛性管101は、面板20の前面21側の下端部21b(ナット通路90の出口94)に接続されている。剛性管101は、例えば、金属や樹脂で形成されている。フレキシブル管102は、剛性管101の下流端部とナット供給機構4とを接続する。フレキシブル管102は、例えば金属や樹脂やゴムで形成されている。
【0074】
面板20の前面21側の下端部21bとナット供給機構4とは、接続管100によって、接続されている。接続管100には、溶接ナットMが通る。
【0075】
ナット供給機構4は、面板20の前面21側のナット通路90を移送された溶接ナットMを、ナット通路90の出口94及び接続管100を介して、受ける。ナット供給機構4は、受けた溶接ナットMを、抵抗溶接機(目的位置)Qに供給する。
【0076】
図12は、図7のXII-XII線における断面図である。図12に示すように、接続管100の剛性管101の横断面は、四角形状である。接続管100の剛性管101の後内壁部101aには、接続管側凹部としての接続管側溝部103が設けられている。接続管側溝部103は、後内壁部101aにおいて、ナット通路90の溝部93と同方向(後方)に凹んでいる。接続管側溝部103は、後内壁部101aにおいて、溶接ナットMの移送方向Fに延びている。接続管側溝部103の幅は、大きい方がよい。本例では、接続管側溝部103の横断面は、四角形状である。
【0077】
接続管100の剛性管101を通る溶接ナットMの表面m3(突起部m2の無い面)は、後内壁部101aに設けられた接続管側溝部103に、臨む。
【0078】
(作用効果)
面板20の前面21側に位置する溶接ナットMは、吸着手段40の磁界によって面板20の前面21に吸着されて、回転駆動手段50によって面板20の前面21側を円周線Pに沿って回転移動して、面板20の前面21側における円周線Pの上端部Paに重なる所定位置Aに到達する。所定位置A(円周線Pの上端部Pa)に到達した溶接ナットMは、所定位置Aを通過して、溶接ナットMの移送方向Fにおける所定位置Aよりも下流側に設けられたナット通路90に通される。
【0079】
所定位置A(円周線Pの上端部Pa)よりも移送方向Fの下流側のナット通路90は、円周線Pに重ならない非重部分92を含む。このため、ナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMに対して、吸着手段40の磁界が及ばないことがある。
【0080】
ここで、溶接ナットMに予め塗布されたオイルによって、溶接ナットMが面板20の前面21に付着してしまうことがある。溶接ナットMが所定位置A(円周線Pの上端部Pa)よりも移送方向Fの上流側にある場合、吸着手段40及び回転駆動手段50によって、溶接ナットMと面板20の前面21との付着が断ち切られて、溶接ナットMは、円周線Pに沿って所定位置Aまで回転移動し得る。
【0081】
しかしながら、溶接ナットMが所定位置A(円周線Pの上端部Pa)よりも移送方向Fの下流側のナット通路90の非重部分92にある場合、吸着手段40の磁界が溶接ナットMに及ばないので、溶接ナットMと面板20の前面21との付着が断ち切られずに、溶接ナットMが面板20の前面21で停止してしまうことがある。
【0082】
そこで、ナット通路90の非重部分92には、面板20の後面22側に凹み且つ移送方向Fに延びる溝部93が、設けられている。このため、ナット通路90の非重部分92において、溶接ナットMと面板20の前面21との接触面積が低減されるので、溶接ナットMと面板20の前面21との付着力が低減される。
【0083】
これにより、ナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMに対して吸着手段40の磁界が及ばない場合であっても、ナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMが面板20の前面21に付着しにくくなり、ナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMが面板20の前面21で停止することが抑制される。
【0084】
以上、ナット移送装置1に関して、溶接ナットMの移送が停止されることを抑制することができる。
【0085】
従来、面板20の前面21に付着した溶接ナットMに対して空気を吹き付ける(エアブロー)によって、溶接ナットMを、面板20の前面21から落下させていた。本実施形態によれば、溶接ナットMが面板20の前面21に付着しにくくなるので、エアブローの使用を低減することができる。これにより、コストや環境保護の観点で有利になる。
【0086】
所定位置A(円周線Pの上端部Pa)を通過してナット通路90における非重部分92の下延部92bを通る溶接ナットMは、溝部93によって面板20の前面21との付着力が低減されるのみならず、重力によって下方に落下しようとするので、より一層、面板20の前面21に付着しにくくなって、面板20の前面21での停止が抑制される。
【0087】
面板20とナット供給機構4とを接続する接続管100を通る溶接ナットMは、接続管側溝部103によって、接続管100の後内壁部101aとの付着力が低減される。このため、接続管100を通る溶接ナットMが接続管100の後内壁部101aに付着しにくくなるので、接続管100を通る溶接ナットMが接続管100で停止することを抑制することができる。
【0088】
表裏選別ガイド80によって、溶接ナットMの表裏を選別して、統一した姿勢に変換させることができる。表裏選別ガイド80を通過してナット通路90の非重部分92を通る溶接ナットMは、接触面積の広い表面m3が面板20の前面21に臨むので、面板20の前面21に付着しやすい傾向にある。このため、ナット通路90の非重部分92に溝部93を設けることによって、溶接ナットMの表面m3と面板20の前面21との付着力を低減させることは、極めて有効である。
【0089】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るナット移送装置1について、図12~14を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。本実施形態において、ナット移送装置1は、キッカー(蹴出装置)110を備える。図13は、閉状態におけるキッカー110を示す正面図である。図14は、開状態におけるキッカー110を示す正面図である。
【0090】
接続管100は、剛性管101と、フレキシブル管102と、を含む。剛性管101は、面板20の前面21側の下端部21b(ナット通路90の出口94)に接続されている。
【0091】
面板20の前面21側の下端部21bとナット供給機構4とは、接続管100によって、接続されている(図7参照)。接続管100には、溶接ナットMが通る。
【0092】
ナット供給機構4は、面板20の前面21側のナット通路90を移送された溶接ナットMを、ナット通路90の出口94及び接続管100を介して、受ける(1,図7参照)。ナット供給機構4は、受けた溶接ナットMを、抵抗溶接機Q(目的位置、図1参照)に供給する。
【0093】
図12は、図13,14のXII-XII線における断面図でもある。接続管100の剛性管101の後内壁部101aには、接続管側凹部としての接続管側溝部103が設けられている。接続管側溝部103は、後内壁部101aにおいて、ナット通路90の溝部93と同方向(後方)に凹んでいる。接続管側溝部103は、後内壁部101aにおいて、溶接ナットMの移送方向Fに延びている。
【0094】
接続管100の剛性管101を通る溶接ナットMの表面m3(突起部m2の無い面)は、後内壁部101aに設けられた接続管側溝部103に、臨む。
【0095】
キッカー110は、開閉機構としての2つのシリンダ・ピストン機構111A,111Bを含む。シリンダ・ピストン機構111A,111Bは、接続管100の剛性管101の前面側の途中に設けられている。2つのシリンダ・ピストン機構111A,111Bは、前後方向に延び且つ上下に並んでいる。
【0096】
各シリンダ・ピストン機構111A,111Bは、シリンダ112と、ピストン113と、ロッド114と、を有する。シリンダ112は、接続管100の剛性管101の前面側の途中に、中空のブラケット115を介して固定されている。ピストン113は、シリンダ112内に配置されている。ロッド114は、シリンダ112内において、ピストン113の後面から後方に突出している。
【0097】
シリンダ112におけるピストン113よりも前側には、第1空気口112aが設けられている。シリンダ112におけるピストン113よりも後側には、第2空気口112bが設けられている。
【0098】
ロッド114は、中空のブラケット115の内部を介して、接続管100の剛性管101の内部に対して前側から、進入及び退出する。第1空気口112aに空気が導入されると、ロッド114は、接続管100の剛性管101の内部に進入する。一方、第2空気口112bに空気が導入されると、ロッド114は、接続管100の剛性管101の内部から退出する。
【0099】
図13に示すように、上側のシリンダ・ピストン機構111Aの第2空気口112bに空気が導入されるとき、下側のシリンダ・ピストン機構111Bの第1空気口112aに空気が導入される。上側のシリンダ・ピストン機構111Aのロッド114は、接続管100の剛性管101の内部から退出する。一方、下側のシリンダ・ピストン機構111Bのロッド114は、接続管100の剛性管101の内部に進入する。
【0100】
このため、接続管100の剛性管101を通る先頭の溶接ナットMaの通路は、閉じられる。先頭の溶接ナットMaは、接続管100の剛性管101において、上側のシリンダ・ピストン機構111Aを通過するが、下側のシリンダ・ピストン機構111Bのロッド114に引掛かかる。先頭の溶接ナットMaの下部は、接続管100の剛性管101において、下側のシリンダ・ピストン機構111Bのロッド114の上部に支持される。
【0101】
後続(直上流側)の溶接ナットMbは、接続管100の剛性管101において、上側のシリンダ・ピストン機構111Aを通過するとともに、先頭の溶接ナットMaの上流側に溜められる(ストックされる)。
【0102】
図14に示すように、上側のシリンダ・ピストン機構111Aの第1空気口112aに空気が導入されるとき、下側のシリンダ・ピストン機構111Bの第2空気口112bに空気が導入される。上側のシリンダ・ピストン機構111Aのロッド114は、接続管100の剛性管101の内部に進入する。一方、下側のシリンダ・ピストン機構111Bのロッド114は、接続管100の剛性管101の内部から退出する。
【0103】
このため、接続管100の剛性管101を通る先頭の溶接ナットMaの通路は、開かれる。先頭の溶接ナットMaは、下側のシリンダ・ピストン機構111Bのロッド114が接続管100の剛性管101の内部から退出することによって、接続管100の剛性管101を下流側に向かって通過する(進む)。
【0104】
後続の溶接ナットMbのねじ孔は、接続管100の剛性管101において、上側のシリンダ・ピストン機構111Aのロッド114によって、貫通される。これにより、後続の溶接ナットMbは、接続管100の剛性管101において、上側のシリンダ・ピストン機構111Aのロッド114に支持されて、停止する。
【0105】
ここで、接続管100の剛性管101における下側のシリンダ・ピストン機構111Bよりも移送方向Fの下流側には、エアブロー管120が接続されている。接続管100の剛性管101の前面側には、エアブロー管120の空気口120aが設けられている。エアブロー管120の空気口120aは、接続管100の剛性管101における内外を連通する。
【0106】
エアブロー管120の空気口120aに空気が導入されると、エアブロー管120は、接続管100の剛性管101の内部に向かって移送方向Fの下流側へ空気を吹き付ける。接続管100の剛性管101において下側のシリンダ・ピストン機構111Bを通過した先頭の溶接ナットMaは、エアブロー管120からの空気の吹き付けによって、さらに下流側に押し付けられて、フレキシブル管102及びナット供給機構4に向かって、下流側へさらに移動する。
【0107】
上側のシリンダ・ピストン機構111Aの第2空気口112bと、下側のシリンダ・ピストン機構111Bの第1空気口112aとは、互いに連通しており、同時に空気が導入される。同様に、上側のシリンダ・ピストン機構111Aの第1空気口112aと下側のシリンダ・ピストン機構111Bの第2空気口112bとエアブロー管120の空気口120aとは、互いに連通しており、同時に空気が導入される。
【0108】
接続管100の剛性管101における上側のシリンダ・ピストン機構111Aよりも移送方向Fの上流側には、ナット近接センサ130が設けられている。図13図14に示すように、接続管100の剛性管101において、先頭(1番目)の溶接ナットMa及び後続(2番目)の溶接ナットMbのさらに移送方向Fの上流側には、複数の溶接ナットMが順次溜められている。溶接ナットMがナット近接センサ130の位置まで溜められると(近接すると)、ナット選別機構3のモータ52が停止する。これにより、ナット選別機構3から接続管100への溶接ナットMの送りが停止される。
【0109】
キッカー110は、2つのシリンダ・ピストン機構111A,111B並びにエアブロー管120及びナット近接センサ130を用いて、ナット選別機構3から送られる溶接ナットMを、接続管100の剛性管101に一時的に滞留させる。そして、キッカー110は、接続管100の剛性管101に滞留した溶接ナットMの中から、先頭の溶接ナットMaのみを、1つずつナット供給機構4へ送る。
【0110】
このように、シリンダ・ピストン機構(開閉機構)111A,111Bは、ロッド114が接続管100の剛性管101の内部に対して進入及び退出することによって、接続管100の剛性管101を通る溶接ナットM(特に先頭の溶接ナットMa)の通路を、開閉する。
【0111】
接続管側溝部103は、シリンダ・ピストン機構111A,111Bよりも、移送方向Fの上流側に配置されている。
【0112】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0113】
本実施形態によれば、接続管100を通る溶接ナットM(特に先頭の溶接ナットMa)をシリンダ・ピストン機構111A,111Bで閉じることによって、溶接ナットMが接続管100からナット供給機構4へ過剰に送られるのを、抑制している。
【0114】
しかしながら、接続管100における溶接ナットMの通路がシリンダ・ピストン機構111A,111Bで閉じられると、溶接ナットMが接続管100の後内壁部101aに付着しやすくなるので、溶接ナットMが接続管100で滞留しやすくなり、接続管100における溶接ナットMの通路をシリンダ・ピストン機構111A,111Bで後で開いたとしても、溶接ナットMがナット供給機構4に適切に送られないことがある。
【0115】
接続管100の後内壁部101aに接続管側溝部103が設けられているので、接続管100における溶接ナットM(特に先頭の溶接ナットMa)の通路をシリンダ・ピストン機構111A,111Bで閉じて溶接ナットMを接続管100に一時停止させた後に、接続管100における溶接ナットMの通路をシリンダ・ピストン機構111A,111Bで開いた場合に、溶接ナットMを接続管100に滞留させることなく、溶接ナットMを接続管100からスムーズにナット供給機構4に送ることができる。
【0116】
溶接ナットMが接続管100の後内壁部101aに付着して接続管100に滞留したとき、シリンダ・ピストン機構111A,111Bよりも移送方向Fの下流側において接続管100に接続されたエアブロー管120を介して、溶接ナットM(特に先頭の溶接ナットMa)に対して上側から空気を吹き付けることによって、溶接ナットMを下方に押し込む。本実施形態では、このようなエアブロー管120の使用を低減できる(好適には不要にできる)ので、コストや環境保護の観点で有利になる。
【0117】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0118】
開閉機構は、シリンダ・ピストン機構111A,111Bに限定されず、例えば、レバー機構(シーソー機構)やホッパー機構でもよい。開閉機構は、無くてもよい。
【0119】
溝部93は、複数の窪み93aが移送方向Fに並ぶことにより構成されるのではなく、移送方向Fに延びる一本の長い溝で構成されてもよい。
【0120】
ナット通路90における非重部分92の下延部92bは、下方に真直ぐに延びる必要はなく、斜め下方に延びたり、カーブしながら下方に延びたりしてもよい。ナット通路90の非重部分92は、下延部92bを含まなくてもよい。ナット通路90の非重部分92は、所定位置A(円周線Pの上端部Pa)に対して横方(左右)に延びる横延部や、所定位置Aに対して上方に延びる上延部などを、含んでもよい。溝部93は、ナット通路90の重部分91にも、設けられてよい。接続管側溝部103は、無くてもよい。
【0121】
ナット通路90は、単に、溶接ナットMの通り道を、意味する。ナット通路90は、第3ガイド部38のようなガイド壁を、含まなくてもよい。ナット通路90の周囲は、開放されてもよい。
【0122】
ナット通路90よりも移送方向Fの上流側には、表裏選別ガイド80が設けられなくてもよい。ナット通路90よりも移送方向Fの上流側には、表裏選別ガイド80の代わりに、例えば、溶接ナットMの移動速度を測定するセンサ、所定サイズよりも小さな溶接ナットMを通過させる一方で所定サイズよりも大きな溶接ナットMの通過を阻止する排出孔、溶接ナットMを一列に整列させる整列ガイドなどが、設けられてもよい。ナット通路90よりも移送方向Fの上流側且つ所定位置(円周線Pの上端部Pa)よりも移送方向Fの下流側には、何も設けられなくてもよい。
【0123】
例えば、面板20に吸着手段40を設ける。面板20に対して、回転駆動手段としてのモータ52の出力軸52aを連結する。そして、モータ52を駆動して面板20自体を、中心軸X回りに回転させる。このようにして、吸着手段40を円周線Pに沿って回転移動させてもよい。
【0124】
面板20自体に吸着手段40を設ける構成としては、例えば、面板20の後面22に吸着手段40を接着材等で固定する、面板20の後面22に凹部を設けて当該凹部に吸着手段40を埋込む、面板20に貫通孔を設けて当該貫通孔に吸着手段40を埋込む等が考えられる。
【0125】
すなわち、吸着手段40は、面板20自体又は面板20の後面22側に設けられるのであれば、いかなる構成であってもよい。
【0126】
面板20は、四角形状に限定されず、例えば円盤状等であってもよく、その形状は限定されない。
【0127】
吸着手段40は、1つの永久磁石43のみを、含んでもよい。
【0128】
中心軸Xは、面板20に対して斜めに交差してもよい。
【0129】
ナット供給機構4が溶接ナットMを供給する目的位置Qは、抵抗溶接機に限定されない。目的位置Qは、単に溶接ナットMが供給される場所でもよい。
【0130】
上記実施形態では、略四角形状の溶接ナットMを移送対象のパーツとしたが、これに限定されない。例えば、移送対象のパーツは、六角形などのその他の多角形状又は丸形等の、溶接ナットMでもよい。また、移送対象のパーツは、表面m3及び裏面m4の両方に突起部m2が設けられた溶接ナットMでもよい。また、移送対象のパーツは、必ずしも溶接ナットMである必要はなく、カシメ機構を有するナットや、突起部m2を有さない通常のナットでもよい。
【0131】
さらに、移送対象のパーツは、必ずしもナットである必要はなく、例えば、頭付きボルトでもよい。この場合、表裏選別ガイド(表裏選別手段)は、頭付きボルトにおける頭部の表面が面板20の前面21を向いた姿勢のとき、頭付きボルトを通過させる一方、頭付きボルトの軸部における裏面が面板20の前面21を向いた姿勢のとき、頭付きボルトをはねて通過を阻止する。このような頭付きボルト用の表裏選別ガイド(表裏選別手段)は、公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0132】
表裏選別ガイド(表裏選別手段)を通過してパーツ通路90の非重部分92を通る頭付きボルトは、溝部93によって頭付きボルトの頭部の表面と面板20の前面21との付着力が低減されるので、面板20の前面21に付着しにくくなる。
【0133】
移送対象のパーツは、頭付きボルトではなく、例えば、頭部の無いスタッドボルトなどでもよい。その他、移送対象のパーツは、例えば、ザガネ等でもよい。移送対象のパーツは、吸着手段40によって面板20の前面21に吸着されるのであれば、いかなる構成でもよい。
【0134】
図15は、その他の実施形態について、凹部93の横断面のバリエーションを示す。図15の左上の例では、凹部93は、上記実施形態と同様に、溝部で構成されている。しかし、凹部93の横断面は、面板20の後面22側に凸の三角形状である。
【0135】
図15の中央上の例では、面板20の前面21には、(移送方向Fに直交する)幅方向Kに並んだ2つの突起23が設けられている。突起23は、面板20の前面21から前方に突出している。凹部93は、幅方向Kに並んだ2つの突起23の頂部23aから、2つの突起23の幅方向Kの間において、面板20の後面22側に凹んでいる。
【0136】
図15の右上の例では、面板20の前面21には、1つの突起23が設けられている。突起23は、面板20の前面21から前方に突出している。凹部93は、面板20の前面21に設けられた1つの突起23の頂部23aから、1つの突起23の幅方向Kの両外側において、面板20の後面22側に凹んでいる。
【0137】
図15の左下の例では、凹部93は、段差部で形成されている。面板20の前面21において、幅方向Kの一方側の第1面24aは、幅方向Kの他方側の第2面24bよりも、前方に位置する(高く位置する)。換言すると、第2面24bは、第1面24aよりも、後方に位置する(低く位置する)。凹部93は、面板20の前面21における幅方向Kの一方側の第1面24aから幅方向Kの他方側の第2面24b側に至る領域において、面板20の後面22側に凹んでいる。
【0138】
図15の右下の例では、面板20の前面21には、突出部25が設けられている。突出部25は、幅方向Kの両外側から中央側に至るに従って前方に突出するように(高くなるように)、山型に形成されている。凹部93は、面板20の前面21に設けられた突出部25の頂部25aから、突出部25の幅方向Kの両外側において、面板20の後面22側に凹んでいる。
【0139】
接続管側凹部103の横断面の形状を、図15に例示した形状にしてもよい。凹部93の横断面の形状及び接続管側凹部103の横断面の形状として、図15に例示した以外の形状も、種々適用され得る。凹部93の横断面の形状と接続管側凹部103の横断面の形状とは、互いに異なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示は、パーツ移送装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0141】
A 所定位置
Q 抵抗溶接機(目的位置)
X 中心軸
P 円周線
Pa 上端部
L 隙間
F 移送方向
M 溶接ナット(パーツ)
m1 ナット本体
m2 突起部
m3 表面
m4 裏面
m5 側面
t 厚み
T 全体厚み
1 ナット移送装置(パーツ移送装置)
2 投入シュート
3 ナット選別機構(パーツ選別機構)
4 ナット供給機構(パーツ供給機構)
5 基台
6 支持板
20 面板
21 前面
21a 下部
22 後面
30 ガイド板
40 吸着手段
43 永久磁石
50 回転駆動手段
51 保持部
52 モータ
60 ナット溜り部(パーツ溜り部)
70 姿勢変換ガイド
80 表裏選別ガイド(表裏選別手段)
90 ナット通路(パーツ通路)
91 重部分
92 非重部分
92a 円弧部
92b 下延部
93 溝部(凹部)
93a 窪み
94 出口
100 接続管
101 剛性管
101a 後内壁部(内壁部)
102 フレキシブル管
103 接続管側溝部(接続管側凹部)
110 キッカー
111A シリンダ・ピストン機構(開閉機構)
111B シリンダ・ピストン機構(開閉機構)
120 エアブロー管
130 ナット近接センサ
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