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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118157
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】音声取得装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240823BHJP
   G10L 21/0208 20130101ALI20240823BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240823BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B60R11/02 M
G10L21/0208 100A
H04R3/00 320
H04R1/40 320B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024429
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島ノ江 修平
(72)【発明者】
【氏名】高沢 剛史
(72)【発明者】
【氏名】種村 友貴
(72)【発明者】
【氏名】川内 正明
【テーマコード(参考)】
3D020
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC04
3D020BD02
3D020BD03
3D020BD05
3D020BE04
5D018BB22
5D220BA06
5D220BC05
(57)【要約】
【課題】発話用マイクロホンに混入した拡散性雑音を低減する効果を高めるために、その拡散性雑音とコヒーレンスが高い車両の振動音を雑音用マイクロホンへ入力させることが可能な音声取得装置を提供する。
【解決手段】発話用マイクロホン12は、車両フレーム701に対し車室71側に配置され且つ車両フレーム701に対して固定されるOHC708に設置される。そして、雑音用マイクロホン20は、そのOHC708に覆われるようにして車両フレーム701に設置される。このように各マイクロホン12、20が設置されるので、雑音用マイクロホン20が車両70の振動音70bを取得しやすく且つ発話用マイクロホン12の近傍の位置に、雑音用マイクロホン20を設置することができる。そのため、発話用マイクロホン12に混入する拡散性雑音とコヒーレンスが高い車両70の振動音70bを雑音用マイクロホン20へ入力させることが可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声認識システム用の音声取得装置(10)であって、
車室(71)内の話者(72)の音声(73a)を取得する発話用マイクロホン(12)と、
車両(70)の振動音(70b)を取得するものであり、前記発話用マイクロホンと比較して前記話者の音声を取得しにくく且つ前記振動音を取得しやすいように配置される雑音用マイクロホン(20)とを備え、
前記発話用マイクロホンは、複数のフレーム構成材(702、702a)を有し複数の前記フレーム構成材が互いに結合されることによって構成され前記車室を囲む車両フレーム(701)に対し前記車室側に配置され、
前記雑音用マイクロホンは、複数の前記フレーム構成材のうち前記発話用マイクロホンに最も近接した前記フレーム構成材である最近接フレーム構成材(702a)、または該最近接フレーム構成材に対し前記車室側に固定される部品(38、40)に設置される、音声取得装置。
【請求項2】
前記発話用マイクロホンは、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対して固定される支持体(708)に、設置され、
前記雑音用マイクロホンは、前記支持体に覆われるようにして前記車両フレームに設置される、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項3】
前記雑音用マイクロホンは、防振材(36)を介して前記車両フレームに固定される、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項4】
前記車両フレームに対し前記車室側に配置される吸音材(24)を備え、
前記吸音材は、前記車両フレーム側が開口した内部空間(24a)を前記吸音材の内側に形成し、
前記雑音用マイクロホンは、前記内部空間に配置され、前記吸音材に囲まれる、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項5】
前記吸音材の内部空間に面し該内部空間を囲む内壁面(24b)は、前記内部空間を挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されている、請求項4に記載の音声取得装置。
【請求項6】
前記吸音材は、前記車両フレームのうち前記雑音用マイクロホンが設置される設置面(701c)の法線方向に沿う方向視では前記雑音用マイクロホンを囲むように形成され、
前記吸音材は、該吸音材の内部空間が前記車両フレーム側とは反対側へ開口した形状を成す、請求項4に記載の音声取得装置。
【請求項7】
前記発話用マイクロホンが実装され、前記最近接フレーム構成材に対し間隔をあけて前記車室側に配置され該最近接フレーム構成材に対し固定される電気基板(16)を備え、
前記電気基板は、前記最近接フレーム構成材の一部であるフレーム対向部(701b)に対して対向する一面(161)を有し、
前記雑音用マイクロホンは、前記電気基板の前記一面から離れて該一面と前記フレーム対向部との間に配置され、前記フレーム対向部に設置される、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項8】
前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとが実装された電気基板(16)を含み、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対し固定されるマイク支持部材(40)を備え、
前記マイク支持部材には音声用音孔(40a)と雑音用音孔(40e)とが形成され、
前記音声用音孔の一端(40b)は、前記発話用マイクロホンに向かって開口し、
前記音声用音孔の他端(40c)は、前記車両フレーム側とは反対側へ向かって開口し、
前記雑音用音孔の一端(40f)は、前記雑音用マイクロホンに向かって開口し、
前記雑音用音孔の他端(40g)は、前記車両フレーム側へ向かって開口する、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項9】
前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとが実装され前記車両フレーム側へ向いた一面(161)と該一面とは反対側の他面(162)とを有する電気基板(16)、該電気基板に対し該電気基板の前記他面側に積層された第1積層板(41)、および、前記電気基板に対し前記電気基板の前記他面側に前記第1積層板を挟んで積層された第2積層板(42)を含み、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対し固定されるマイク支持部材(40)を備え、
前記マイク支持部材には音声用音孔(40a)と雑音用音孔(40e)とが形成され、
前記音声用音孔は、前記一面の法線方向(Dsb)へ前記マイク支持部材を貫通した貫通孔として形成され、
前記音声用音孔の一端(40b)は、前記発話用マイクロホンに向かって開口し、
前記音声用音孔の他端(40c)は、前記車両フレーム側とは反対側へ向かって開口し、
前記雑音用音孔は、前記一面のうち前記雑音用マイクロホンと対向する位置で前記電気基板を貫通した第1基板貫通孔(40h)と、前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとから離れた位置で前記電気基板を貫通した第2基板貫通孔(40i)と、前記第1積層板を貫通し前記第1基板貫通孔と前記第2基板貫通孔とを連結する連結孔(40j)とから構成され、
前記連結孔のうち前記車両フレーム側とは反対側は、前記第2積層板によって塞がれる、請求項1に記載の音声取得装置。
【請求項10】
複数の第1雑音低減部(31)と、
第2雑音低減部(32)とを備え、
前記発話用マイクロホンは複数設けられ、前記話者の音声を含む一次音声(73)を取得し、
複数の前記第1雑音低減部は、複数の前記発話用マイクロホンのそれぞれに対応して設けられ、前記発話用マイクロホンから得られ前記一次音声を示す一次音声信号(S1v)と前記雑音用マイクロホンに取得され前記振動音を含んだ雑音を示す取得雑音信号(Sn)とに基づいて、拡散性雑音が前記一次音声に比して低減されることにより前記話者の音声が際立たされた二次音声を示す二次音声信号(S2v)を得るものであり、
前記第2雑音低減部は、複数の前記第1雑音低減部が得たそれぞれの前記二次音声信号に基づいて、前記拡散性雑音よりも方向性が高い方向性雑音が前記二次音声に比して低減されることにより前記話者の音声が際立たされた三次音声を示す三次音声信号(S3v)を得る、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の音声取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声認識システム用の音声取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の音声取得装置として、例えば特許文献1に記載された騒音低減回路が従来から知られている。この特許文献1に記載された騒音低減回路は、適応フィルタを用いて雑音除去を行っている。
【0003】
具体的に、特許文献1の騒音低減回路は、車室内で話者の音声を捕捉する音声捕捉用マイクロホンと、車室内に設置した騒音捕捉用マイクロホンと、車室外に設置した拡散性雑音の音源となる車両の振動を取得する振動センサとを備えている。
【0004】
その騒音低減回路は、騒音捕捉用マイクロホン(言い換えると、雑音用マイクロホン)で取得した信号と振動センサで取得した信号とに基づき、車室内の拡散性雑音を推定する。そして、騒音低減回路は、音声捕捉用マイクロホン(言い換えると、発話用マイクロホン)で取得した信号から、その推定した拡散性雑音を示す信号を差し引くことで雑音低減を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-83387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音声認識システムを車室内環境で利用する場合、車室内に存在する雑音は音声認識率を悪化させる。車室内における雑音としては、例えば、走行騒音、風切り音、エアコンの風音、他者が発した音声(すなわち、他者音声)などが想定される。これらの雑音は、話者(言い換えると、発話者)の音声と共に発話用マイクロホンへ入力され、音声認識システムの音声認識率を大きく低下させる要因となる。
【0007】
これに対し、車室内の雑音に起因した音声認識率の低下を防止する方法の1つとして、複数のマイクロホンを有するマイクロホンアレイを用いた音響信号処理が挙げられる。その音響信号処理を行うマイクロホンアレイシステムは、複数のマイクロホンから入力された音響信号に対して信号処理を行い、雑音のみを低減することで、話者の音声(すなわち、目的音声)を強調して出力するシステムである。
【0008】
詳細には、マイクロホンアレイシステムは、複数チャネルの音響信号の到来時間差等を利用して雑音低減を行う。そのため、エアコンの風音や他者音声など方向性が高い雑音(すなわち、方向性雑音)に関しては、マイクロホンアレイシステムによる雑音低減効果が期待できる。一方、車両全体が振動することによって発生する走行騒音や風切り音等の方向性が低い雑音(すなわち、拡散性雑音)に関しては、複数チャネルの音響信号の到来時間差など、目的音声と拡散性雑音とを分離するために必要な情報が不明確になる。そのため、拡散性雑音に関しては、方向性雑音の場合と比較して、マイクロホンアレイシステムによる雑音低減効果が低くなってしまう。
【0009】
そこで、特許文献1の騒音低減回路を用い、適応フィルタ処理による拡散性雑音の低減を図ることが考えられる。ここで、適応フィルタ処理による拡散性雑音の低減効果を高めるためには、目的音声を含まず、発話用マイクロホンに混入する拡散性雑音とコヒーレンスが高い信号を雑音用マイクロホンで取得し、適応フィルタの入力信号に用いる必要がある。そして、車室内には、多くの初期反射音や残響、多くの音の伝搬経路が存在するので、上記コヒーレンスを高くするためには発話用マイクロホンと雑音用マイクロホンとの距離を近くする必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1には、各マイクロホンの設置位置を指定する記載が無い。そのため、特許文献1の記載に従って発話用マイクロホンと雑音用マイクロホンとが設けられ、両マイクロホンの相互間の距離が大きくなった場合、上記コヒーレンスが低くなり、拡散性雑音の低減効果が小さくなる。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、発話用マイクロホンに混入した拡散性雑音を低減する効果を高めるために、その拡散性雑音に対しコヒーレンスが高い車両の振動音を雑音用マイクロホンへ入力させることが可能な音声取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の音声取得装置は、
音声認識システム用の音声取得装置(10)であって、
車室(71)内の話者(72)の音声(73a)を取得する発話用マイクロホン(12)と、
車両(70)の振動音(70b)を取得するものであり、発話用マイクロホンと比較して話者の音声を取得しにくく且つ振動音を取得しやすいように配置される雑音用マイクロホン(20)とを備え、
発話用マイクロホンは、複数のフレーム構成材(702、702a)を有し複数のフレーム構成材が互いに結合されることによって構成され車室を囲む車両フレーム(701)に対し車室側に配置され、
雑音用マイクロホンは、複数のフレーム構成材のうち発話用マイクロホンに最も近接したフレーム構成材である最近接フレーム構成材(702a)、またはその最近接フレーム構成材に対し車室側に固定される部品(38、40)に設置される。
【0013】
このようにすれば、雑音用マイクロホンが車両の振動音を取得しやすく且つ発話用マイクロホンの近傍の位置に雑音用マイクロホンを設置することができる。これにより、発話用マイクロホンに混入する拡散性雑音に対しコヒーレンスが高い車両の振動音を雑音用マイクロホンへ入力させることが可能である。
【0014】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態において、音声取得装置が搭載される車両のうちその音声取得装置が配置される箇所およびその周辺を抜粋して示した概略図である。
図2】第1実施形態において音声取得装置の概略構成を模式的に示した断面図である。
図3】第1実施形態において音声取得装置の電気系統を示したブロック図である。
図4図2のIV方向の矢視図であって、電気基板と発話用マイクロホンと雑音用マイクロホンとを抜粋して表示した模式図である。
図5】第1実施形態と比較される比較例において、図2から吸音材とその周辺部位とを抜粋した図に相当する図である。
図6】第2実施形態において、音声取得装置が備える吸音材とその周辺部位とを示した図であって、図5に相当する図である。
図7】第3実施形態において音声取得装置の概略構成を模式的に示した断面図であって、図2に相当する図である。
図8】第3実施形態の音声取得装置が有する吸音材を単体で模式的に表示した斜視図である。
図9】第4実施形態において音声取得装置の概略構成を模式的に示した断面図であって、図2に相当する図である。
図10】第5実施形態において音声取得装置の概略構成を模式的に示した断面図であって、図2に相当する図である。
図11】第5実施形態における図10のXI方向の矢視図であって、電気基板と発話用マイクロホンと雑音用マイクロホンとを抜粋して表示した模式図である。
図12図11のXII-XII断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0017】
(第1実施形態)
図1図3に示すように、本実施形態の音声取得装置10は、車両70に搭載される音声認識システム77に用いられる。音声認識システム77は、所定の話者72の音声73aを取得しその音声73aを認識するシステムである。その音声認識システム77は、音声取得装置10と音声認識エンジン78とを有している。音声取得装置10は、車室71内の所定位置に着座した例えば運転者である話者72の音声73aを取得し、その取得音から雑音を低減した音の信号を音声認識エンジン78へ出力する。従って、本実施形態の音声取得装置10は、話者72の音声73aと雑音とが混ざった取得音から雑音を低減する雑音低減装置と称されてもよい。
【0018】
音声認識エンジン78は一種の電子制御装置であり、図示しないCPU、RAM、ROM、不揮発性リライタブルメモリ等を備えた車載マイクロコンピュータとしての構成を有している。すなわち、音声認識エンジン78は、非遷移的実体的記録媒体であるROMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納されたコンピュータプログラムを読み出して実行する。このコンピュータプログラムが実行されることで、コンピュータプログラムに対応する方法が実行される。なお、後述の電気回路部30も、このような電子制御装置としての構成を備えている。
【0019】
音声認識エンジン78は、音声取得装置10から取得した音声信号に基づき、話者72の音声73aが示す音声情報を認識する。そして、音声認識エンジン78は、その認識した音声情報に対応した制御信号を、例えばナビゲーション装置や空調装置など外部の車載装置へ出力する。
【0020】
なお、図1および後述の図4の両端矢印はそれぞれ、音声取得装置10が搭載される車両70の向きを示す。すなわち、図1では、車両70の前後方向である車両前後方向D1と車両70の上下方向である車両上下方向D2とが両端矢印で示され、後述の図4では、車両70の左右方向である車両左右方向D3(別言すれば、車両幅方向D3)が両端矢印で示されている。これらの方向D1、D2、D3は互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。
【0021】
また、本実施形態の説明では、車両前後方向D1における前側は車両方向前側とも称され、車両前後方向D1における後側は車両方向後側とも称される。また、車両上下方向D2における上側は車両方向上側とも称され、車両上下方向D2における下側は車両方向下側とも称される。また、車両左右方向D3における左側は車両方向左側とも称され、車両左右方向D3における右側は車両方向右側とも称される。
【0022】
図1図2に示すように、本実施形態の車両70は例えば乗用自動車であり、車両フレーム701と外側パネル705と内装材707とオーバーヘッドコンソール708とを備えている。車両フレーム701は車両70の骨格を成すものであり、車室71を囲んでいる。車両フレーム701は、複数の構造材であるフレーム構成材702を有し、その複数のフレーム構成材702が互いに結合されることによって構成されている。例えば、そのフレーム構成材702は、溶接やボルト止め等によって互いに結合されている。なお、本実施形態の説明では、オーバーヘッドコンソール708は、OHC708と略される場合がある。
【0023】
外側パネル705は車両70の外殻を成し、例えば金属製または樹脂製の板材で構成されている。外側パネル705は、車両フレーム701に対し車室71側とは反対側(すなわち、反車室側)に配置されている。そのため、外側パネル705は、車外の空間である車外空間70aに面している。また、外側パネル705は、車両フレーム701との間に隙間をあけて配置され、車両フレーム701に対し部分的に連結されることで車両フレーム701に固定されている。車両フレーム701に対し外側パネル705を固定する方法としては、例えば、溶接、ボルト止め、接着等を挙げることができる。
【0024】
内装材707は、例えば樹脂製の板材で構成され、車両フレーム701に対し車室71側に配置されている。そのため、内装材707は車室71に面している。言い換えると、内装材707は、車両フレーム701と車室71との間を隔てるように配置されている。また、内装材707は、車両フレーム701との間に隙間をあけて配置され、車両フレーム701に対し部分的に連結されることで車両フレーム701に固定されている。車両フレーム701に対し内装材707を固定する方法としては、例えば、スナップフィット、接着、ネジ止め等を挙げることができる。
【0025】
OHC708は、運転席と助手席との間の天井部分に搭載される、主に室内照明の機能を担う内装製品である。OHC708が搭載される車種により、OHC708は、小物入れやサンルーフの開閉、緊急通報ボタン、ハンズフリー電話スイッチ等の機能も備えている。
OHC708は例えば樹脂で構成されている。OHC708は、車両フレーム701に対し車室側に配置され、その車両フレーム701に対しネジ止めやスナップフィット等によって固定されている。例えばOHC708は車室71に対し車両方向上側に位置し、内装材707に形成された孔707aに嵌め込まれている。また、OHC708のうち車室71側は、車室71に対し露出している。
【0026】
図2図4に示すように、音声取得装置10は、複数の発話用マイクロホン12と電気基板16と雑音用マイクロホン20と吸音材24と電気回路部30とを備えている。なお、図4では、OHC708および吸音材24の図示が省略されている。
【0027】
発話用マイクロホン12と雑音用マイクロホン20はそれぞれ、取得した音を電気信号に変換し、その電気信号を、電気基板16上に構成される電気回路部30へ出力する。例えば、発話用マイクロホン12と雑音用マイクロホン20は何れも、無指向性のマイクロホンである。
【0028】
なお、雑音用マイクロホン20は電気基板16から離れて配置されるので、雑音用マイクロホン20は、電線17を介して電気基板16へ電気的に連結されている。また、各マイクロホン12、20から出力されたアナログ信号である電気信号は、例えば、デジタル信号に変換された上で電気回路部30へ入力される。
【0029】
複数の発話用マイクロホン12はそれぞれ、車室71内の話者72の音声73a(言い換えると、話者音声73a)を取得するマイクロホンである。すなわち、発話用マイクロホン12の取得目的となる目的音は、その話者音声73aである。具体的に、発話用マイクロホン12には、話者音声73aのほかに、車室71内の雑音である室内雑音73bも入力されるので、発話用マイクロホン12は、話者音声73aと室内雑音73bとを含む一次音声73を取得すると言える。複数の発話用マイクロホン12は全体でマイクロホンアレイを構成する。
【0030】
なお、室内雑音73bは、拡散性雑音と、その拡散性雑音よりも方向性が高い方向性雑音とから構成される。拡散性雑音とは、車両70全体が振動することによって発生する走行騒音や風切り音等の方向性が低い雑音である。また、方向性雑音とは、話者72以外の他者の音声や空調装置の風音など方向性が高い雑音である。
【0031】
具体的に、車両フレーム701の振動701aから生じる車両70の振動音70bは、上記の拡散性雑音の主な音源になっている。別言すると、室内雑音73bに含まれる拡散性雑音の主たる成分は、車両70の振動音70bとなっている。その車両70の振動音70bは、例えば反車室側から内装材707を通過して車室71内へ侵入する。
【0032】
電気基板16は、樹脂製の板材を基材として構成された平板状のプリント基板であり、電気基板16には複数の回路パターンが形成されている。電気基板16は、OHC708に対しネジ止め等によって固定されている。すなわち、電気基板16は、車両フレーム701に対しOHC708を介して固定されている。そのため、電気基板16は、車両フレーム701に対し間隔をあけて車室71側に配置されている。そして、本実施形態のOHC708は、電気基板16およびその電気基板16の実装部品を支持する支持体として機能する。
【0033】
詳細には、電気基板16は、車両フレーム701が有する全てのフレーム構成材702のうち発話用マイクロホン12に最も近接したフレーム構成材である最近接フレーム構成材702aに対し、OHC708を介して固定されている。そして、電気基板16は、その最近接フレーム構成材702aに対し間隔をあけて車室71側に配置されている。
【0034】
電気基板16は、電気基板16の法線方向Dsb(すなわち、基板法線方向Dsb)の一方側に設けられ反車室側を向いた一面161と、基板法線方向Dsbの他方側に設けられ車室71側を向いた他面162とを有している。すなわち、電気基板16の一面161は車両フレーム701へ向いている。そして、電気基板16の一面161は、車両フレーム701に対し間隔をあけて対向している。すなわち、車両フレーム701は、電気基板16の一面161に対して基板法線方向Dsbに離れて対向するフレーム対向部701bを、車両フレーム701の一部分として有している。本実施形態では、そのフレーム対向部701bは最近接フレーム構成材702aの一部分である。
【0035】
なお、基板法線方向Dsbは、別言すれば、一面161の法線方向でもあり、他面162の法線方向でもある。また、基板法線方向Dsbの一方側は基板法線方向Dsbの反車室側と称されてもよく、基板法線方向Dsbの他方側は基板法線方向Dsbの車室71側と称されてもよい。
【0036】
電気基板16の一面161上には複数の発話用マイクロホン12が相互間隔をあけて並んで配置されている。そして、その複数の発話用マイクロホン12は電気基板16の一面161にそれぞれ実装されている。すなわち、複数の発話用マイクロホン12が上記のように電気基板16を介してOHC708に固定されているので、その複数の発話用マイクロホン12はそのOHC708に設置されていると言える。ここで言う「複数の発話用マイクロホン12はそのOHC708に設置されている」とは、言い換えれば、複数の発話用マイクロホン12がOHC708に近接して配置されると共にOHC708に対して固定されているということである。
【0037】
このように電気基板16に実装された複数の発話用マイクロホン12は、車両フレーム701に対し間隔をあけて車室71側に配置されている。
【0038】
また、電気基板16には、電気基板16を貫通した複数の音声用音孔16aが形成されている。この複数の音声用音孔16aはそれぞれ、一次音声73を車室71内から発話用マイクロホン12へ導くための孔である。そのため、複数の音声用音孔16aは、複数の発話用マイクロホン12のそれぞれに対し一対一で対応するように設けられている。例えば本実施形態では発話用マイクロホン12は8つ設けられているので、電気基板16には8つの音声用音孔16aが形成されている。
【0039】
複数の音声用音孔16aはそれぞれ、基板法線方向Dsbの一方側に設けられた一端16bと、基板法線方向Dsbの他方側に設けられた他端16cとを有している。そして、複数の音声用音孔16aはそれぞれ、発話用マイクロホン12に対して基板法線方向Dsbの他方側に重なるように配置されている。そのため、音声用音孔16aの一端16bは発話用マイクロホン12に向かって開口し、音声用音孔16aの他端16cは車両フレーム701側とは反対側へ向かって開口し車室71へ開放されている。このように音声用音孔16aが設けられているので、一次音声73は車室71内から音声用音孔16aを通って複数の発話用マイクロホン12へそれぞれ伝達される。
【0040】
雑音用マイクロホン20は、車両70の振動音70bを取得するマイクロホンである。なお、雑音用マイクロホン20が取得する音である取得雑音の殆どは車両70の振動音70bであるが、その雑音用マイクロホン20の取得雑音には、例えば話者音声73aなど、車両70の振動音70b以外の音も若干混ざる。
【0041】
雑音用マイクロホン20は、車両70の振動音70bを取得しやすいように、車両フレーム701に対し車室71側に配置され、例えば車両フレーム701に接触した状態で車両フレーム701に対しネジ止めや接着等によって固定されている。このように雑音用マイクロホン20が車両フレーム701に固定されているので、別言すれば、その雑音用マイクロホン20は車両フレーム701に設置されていると言える。ここで言う「雑音用マイクロホン20は車両フレーム701に設置されている」とは、言い換えれば、雑音用マイクロホン20が車両フレーム701に近接して配置されると共に車両フレーム701に対して固定されているということである。
【0042】
そして、OHC708との位置関係では、雑音用マイクロホン20はOHC708の内側に配置されている。言い換えると、雑音用マイクロホン20は、OHC708に覆われるようにして車両フレーム701に設置されている。
【0043】
また、雑音用マイクロホン20と車両フレーム701との距離は、それぞれの発話用マイクロホン12と車両フレーム701との距離の何れと比較しても短い。雑音用マイクロホン20と内装材707との位置関係では、雑音用マイクロホン20は内装材707に対し反車室側(言い換えると、車両フレーム701側)に設けられている。
【0044】
また、複数のフレーム構成材702に着目すると、雑音用マイクロホン20は、車両フレーム701が有する全てのフレーム構成材702のうち最近接フレーム構成材702aに設置されている。
【0045】
更に見方を変えると、雑音用マイクロホン20は、電気基板16の一面161から離れてその一面161と車両フレーム701のフレーム対向部701bとの間に配置され、そのフレーム対向部701bに設置されている。要するに、そのフレーム対向部701bに雑音用マイクロホン20は固定されている。
【0046】
吸音材24は、その吸音材24を通過する音を顕著に減衰させるものである。吸音材24は、例えばスポンジまたは発泡ウレタンなど、吸音性を備えた材料で構成されている。吸音材24は、車両フレーム701に対し車室71側に配置され、その車両フレーム701に対し接着等によって固定されている。
【0047】
また、吸音材24の内側には内部空間24aが形成され、その内部空間24aは、車両フレーム701側のみ開口し、その車両フレーム701側の開口以外の箇所については全て吸音材24で覆われている。そして、内部空間24aの車両フレーム701側の開口は車両フレーム701によって塞がれている。雑音用マイクロホン20は、その吸音材24の内部空間24aに配置され、吸音材24に覆われている。すなわち、雑音用マイクロホン20は、車両フレーム701と吸音材24とによって囲まれた空間である吸音材24の内部空間24aに配置されている。従って、雑音用マイクロホン20は、全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように配置されている。
【0048】
吸音材24は、その吸音材24の内部空間24aに面してその内部空間24aを囲む内壁面24bを有している。その吸音材24の内壁面24bは、内部空間24aを挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されている。具体的に、本実施形態の内壁面24bは、平面部分を含まず波形の凹凸構造を有し、これにより、上記の平行面を含まないように形成されている。その内壁面24bの凹凸によって定在波が発生することなく、音が多重反射され、音が吸音材24に吸収されることになる。
【0049】
図3に示す電気回路部30は、電気基板16に実装されたICや抵抗等である1つまたは複数の電気部品で構成されている。この電気回路部30は、一次音声73から室内雑音73bが低減された音声信号を得るための信号処理を行う。機能的に見ると、電気回路部30は、拡散性雑音が低減された音声信号を得るための複数の第1雑音低減部31と、方向性雑音が低減された音声信号を得るための第2雑音低減部32とを有している。
【0050】
複数の第1雑音低減部31は、複数の発話用マイクロホン12のそれぞれに対し一対一で対応するように設けられている。例えば本実施形態では発話用マイクロホン12は8つ設けられているので、電気回路部30は8つの第1雑音低減部31を有している。1つの発話用マイクロホン12と1つの第1雑音低減部31は1つのチャネルを構成するので、本実施形態では8つのチャネルが設けられている。
【0051】
具体的に、複数の第1雑音低減部31にはそれぞれ、その第1雑音低減部31に対応した発話用マイクロホン12から、一次音声73を示す一次音声信号S1vが入力される。また、複数の第1雑音低減部31にはそれぞれ、雑音用マイクロホン20に取得され車両70の振動音70bを含んだ取得雑音を示す取得雑音信号Snが、雑音用マイクロホン20から入力される。
【0052】
そして、複数の第1雑音低減部31はそれぞれ、一次音声信号S1vと取得雑音信号Snとに基づいて、拡散性雑音が一次音声73に比して低減された二次音声を示す二次音声信号S2vを得る。この二次音声信号S2vは、複数の第1雑音低減部31のそれぞれから第2雑音低減部32へ出力される。二次音声信号S2vが示す二次音声では、拡散性雑音が一次音声73に比して低減されるので、相対的に、その二次音声は、一次音声73に比して話者音声73aが際立たされた音声になる。すなわち、二次音声信号S2vが示す二次音声とは、拡散性雑音が一次音声73に比して低減されることにより話者音声73aがその一次音声73に比して際立たされた音である。
【0053】
複数の第1雑音低減部31はそれぞれ、二次音声信号S2vを得るために、可変FIRフィルタ311と加算器312と適応アルゴリズム実行部313とを有している。その「可変FIRフィルタ311」という記載の中の「FIR」とは、「Finite Impulse Response」の略である。
【0054】
可変FIRフィルタ311は、取得雑音信号Snにおける音圧および位相を調整し、その調整後の音信号を出力する。加算器312には、その可変FIRフィルタ311からの調整後の音信号と、発話用マイクロホン12からの一次音声信号S1vとが入力される。そして、加算器312は、可変FIRフィルタ311からの調整後の音信号を反転し、その反転した音信号と一次音声信号S1vとを加算する。この加算後の音信号が上記の二次音声信号S2vであり、二次音声信号S2vは、加算器312から適応アルゴリズム実行部313と第2雑音低減部32とへそれぞれ出力される。
【0055】
適応アルゴリズム実行部313は、加算器312から出力された二次音声信号S2vを所定の適応アルゴリズムにより処理し、可変FIRフィルタ311のフィルタ係数を自動的に更新する。このフィルタ係数の更新により、可変FIRフィルタ311は、雑音用マイクロホン20が取得した取得雑音から話者音声73aが効果的に除去された音信号を出力することができる。なお、適応アルゴリズム実行部313が実行する適応アルゴリズムとしては、例えば、LMSアルゴリズムやRLSアルゴリズムが採用される。その「LMS」とは「Least mean square」の略であり、「RLS」とは「Recursive least square」の略である。
【0056】
第2雑音低減部32には、複数の第1雑音低減部31が有するそれぞれの加算器312から二次音声信号S2vが入力される。そして、第2雑音低減部32は、その複数の二次音声信号S2vに基づいて、方向性雑音が上記二次音声に比して低減された三次音声を示す三次音声信号S3vを得る。この三次音声信号S3vは、第2雑音低減部32から音声認識エンジン78へ出力される。その三次音声信号S3vが示す三次音声は、方向性雑音と拡散性雑音との両方が一次音声73に比して低減された音声になるので、相対的に、上記二次音声に比して話者音声73aが更に際立たされた音声になる。すなわち、三次音声信号S3vが示す三次音声とは、方向性雑音が二次音声に比して低減されることにより話者音声73aがその二次音声に比して際立たされた音である。
【0057】
例えば、第2雑音低減部32は、複数チャネルの音響信号(具体的には、複数の二次音声信号S2v)の到来時間差等を利用して方向性雑音の低減を行うマイクロホンアレイ信号処理を実行し、それにより三次音声信号S3vを得る。そのマイクロホンアレイ信号処理としては、例えば、遅延和法やブラインド音源分離が採用される。
【0058】
このようにして、雑音が低減されることにより話者音声73aが際立たされた三次音声信号S3vが電気回路部30から音声認識エンジン78へ入力されるので、その音声認識エンジン78は、話者音声73aの音声認識率を高めることができる。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、図2に示すように、発話用マイクロホン12は、車両フレーム701に対し車室71側に配置され且つ車両フレーム701に対して固定されるOHC708に設置される。そして、雑音用マイクロホン20は、そのOHC708に覆われるようにして車両フレーム701に設置される。
【0060】
また、見方を変えると、発話用マイクロホン12は車両フレーム701に対し車室71側に配置される。そして、雑音用マイクロホン20は、車両フレーム701を構成する複数のフレーム構成材702のうち最近接フレーム構成材702aに設置される。
【0061】
更に、見方を変えると、電気基板16には発話用マイクロホン12が実装され、電気基板16は、最近接フレーム構成材702aの一部であるフレーム対向部701bに対して対向する一面161を有している。そして、雑音用マイクロホン20は、電気基板16の一面161から離れてその一面161とフレーム対向部701bとの間に配置され、そのフレーム対向部701bに設置される。
【0062】
このように各マイクロホン12、20が設置されるので、雑音用マイクロホン20が車両70の振動音70bを取得しやすく且つ発話用マイクロホン12の近傍の位置に、雑音用マイクロホン20を設置することができる。更に言うと、雑音用マイクロホン20が車両70の振動音70bを取得できることという制約の中で、雑音用マイクロホン20を発話用マイクロホン12の近傍の位置に設置することができる。
【0063】
そのため、発話用マイクロホン12に混入する拡散性雑音とコヒーレンスが高い車両70の振動音70bを雑音用マイクロホン20へ入力させることが可能である。そして、その雑音用マイクロホン20が取得した車両70の振動音70bを用いることにより、第1雑音低減部31での拡散性雑音の低減量を大きくできる。すなわち、発話用マイクロホン12に混入した拡散性雑音を低減する効果を高めることができる。
【0064】
(1)また、本実施形態によれば、吸音材24は車両フレーム701に対し車室71側に配置されている。吸音材24は、車両フレーム701側が開口した内部空間24aを、吸音材24の内側に形成している。そして、雑音用マイクロホン20は、吸音材24の内部空間24aに配置され、その吸音材24に囲まれている。
【0065】
従って、例えば吸音材24が設けられない場合と比較して、雑音用マイクロホン20が取得する取得雑音に話者音声73aが混入することを防止することが可能である。そして、第1雑音低減部31での拡散性雑音の低減量を大きくできる。その結果、第1雑音低減部31から出力される二次音声信号S2vが示す二次音声において話者音声73aを際立たせることができ、延いては、音声認識エンジン78での話者音声73aの音声認識率を高めることができる。
【0066】
ここで、上記した特許文献1の騒音低減回路では、騒音捕捉用マイクロホンに加えて振動センサが設けられている。これに対し、本実施形態では、雑音用マイクロホン20の取得雑音に話者音声73aが混入することが吸音材24によって抑えられるので、その特許文献1の振動センサに相当するセンサを不要にすることが可能である。これにより、例えば音声取得装置10のコスト低減を図ることが可能である。
【0067】
(2)また、本実施形態によれば、吸音材24は、その吸音材24の内部空間24aに面してその内部空間24aを囲む内壁面24bを有している。そして、その吸音材24の内壁面24bは、内部空間24aを挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されている。
【0068】
ここで、図5の比較例を想定してみる。その図5の比較例の吸音材25は第1実施形態の吸音材24に相当する。また、比較例の吸音材25の内部空間25aは第1実施形態の吸音材24の内部空間24aに相当し、比較例の吸音材25の内壁面25bは第1実施形態の吸音材24の内壁面24bに相当する。図5の比較例では吸音材25が第1実施形態と異なっており、吸音材25以外は第1実施形態と同様である。
【0069】
その図5の比較例では、吸音材25の内壁面25bは、内部空間25aを挟んで互いに平行になる平行面を含んでいる。例えば、その内壁面25bは、車両フレーム701のうち内部空間25aに面する壁面と平行になる平行面を含んでいる。そのため、その平行面で音の反射が矢印A1、A2のように繰り返し起こり、吸音材25で定在波が発生する。その結果、図5の比較例では、雑音用マイクロホン20の取得雑音の周波数特性が変化し、第1雑音低減部31(図3参照)による雑音低減効果が低下してしまう。
【0070】
これに対し、本実施形態の吸音材24の内壁面24bは、上記したように、内部空間24aを挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されているので、吸音材24により定在波が発生しにくい。従って、雑音用マイクロホン20の取得雑音の周波数特性が吸音材24内における定在波の発生により変化することが防止され、その吸音材24による定在波の発生に起因した雑音低減効果の低下を防止することが可能である。
【0071】
(3)また、本実施形態によれば、図2図3に示すように、複数の第1雑音低減部31はそれぞれ、一次音声信号S1vと取得雑音信号Snとに基づいて、拡散性雑音が一次音声73に比して低減された二次音声を示す二次音声信号S2vを得る。そして、第2雑音低減部32は、複数の第1雑音低減部31が得たそれぞれの二次音声信号S2vに基づいて、方向性雑音が上記二次音声に比して低減された三次音声を示す三次音声信号S3vを得る。
【0072】
従って、音声認識エンジン78へ入力される三次音声信号S3vは、方向性雑音と拡散性雑音との両方が一次音声73に比して低減されることにより話者音声73aが際立たされた信号になる。その結果、音声認識エンジン78での話者音声73aの音声認識率を高めることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、図2に示すように、雑音用マイクロホン20は車両フレーム701に対し車室71側に配置され、且つ、内装材707に対し反車室側(言い換えると、車両フレーム701側)に配置されている。従って、雑音用マイクロホン20へ向かう話者音声73aが内装材707によって吸音されるので、雑音用マイクロホン20が取得する取得雑音に話者音声73aに混入することを内装材707によって抑制することが可能である。その結果、第1雑音低減部31でのノイズ低減量が大きくなる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0075】
図6に示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、吸音材24の内壁面24bは、内部空間24aを挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されている。但し、本実施形態では、吸音材24の内壁面24bの形状が第1実施形態と異なっている。
【0076】
具体的に、吸音材24の内壁面24bに直交する断面(すなわち、図6の断面)において、その内壁面24bは、吸音材24の内部空間24aが三角形状になるように複数の平面部分が連結されて構成されている。
【0077】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0079】
図7図8に示すように、本実施形態では、吸音材24の形状が第1実施形態と異なっている。
【0080】
具体的に、吸音材24は、車両フレーム701のうち雑音用マイクロホン20が設置される設置面701cの法線方向に沿う方向視(例えば、矢印A3で示される方向視)では雑音用マイクロホン20を全周にわたって囲むように形成されている。この点では、本実施形態も第1実施形態と同様である。
【0081】
しかし、本実施形態では第1実施形態と異なり、吸音材24は、その吸音材24の内部空間24aが車両フレーム701側とは反対側(すなわち、車室71側)へ開口した形状を成している。従って、本実施形態の吸音材24を単体で見れば、吸音材24は筒形状を成すと共に、その筒形状の両端にて吸音材24の内部空間24aがそれぞれ開放されている。
【0082】
また、電気基板16は、吸音材24の内部空間24aが有する車室71側の開口24cから間隔をあけてその開口24cに被るように配置されている。そして、その吸音材24の開口24cは、内装材707よりも車両フレーム701側に位置している。
【0083】
そのため、話者音声73aが吸音材24の開口24cを通って雑音用マイクロホン20へ到達する経路は、電気基板16と内装材707とによって或る程度遮られる。従って、本実施形態でも第1実施形態と同様に、雑音用マイクロホン20は、全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように配置されている。なお、本実施形態では、吸音材24が車室71側にてOHC708に接しているので、吸音材24の車室71側の開口24cはOHC708によって塞がれている。
【0084】
(1)上述したように、本実施形態によれば、吸音材24は、車両フレーム701が有する設置面701cの法線方向に沿う方向視では雑音用マイクロホン20を囲むように形成されている。そして、吸音材24は、その吸音材24の内部空間24aが車両フレーム701側とは反対側(すなわち、車室71側)へ開口した形状を成している。
【0085】
従って、発話用マイクロホン12側へ向いた指向性が吸音材24によって雑音用マイクロホン20に生じる。そのため、内部空間24aの車室71側が吸音材24で塞がれている場合との比較で、発話用マイクロホン12が取得する拡散性雑音に対しよりコヒーレンスが高い音を雑音用マイクロホン20に取得させることができる。その結果、第1雑音低減部31でのノイズ低減量を大きくできる。
【0086】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0087】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0088】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0089】
図9に示すように、本実施形態の音声取得装置10は、防振材36と雑音用マイクロホンケース37と雑音用マイクロホン基板38とを備えている。これらの防振材36と雑音用マイクロホンケース37と雑音用マイクロホン基板38はOHC708の内側に配置され、そのOHC708に覆われている。なお、本実施形態の音声取得装置10は吸音材24(図2参照)を備えていない。
【0090】
防振材36は、振動を吸収しやすいゴムや発泡ウレタンなどの弾性体で構成されている。防振材36は、車両フレーム701に対し車室71側に配置され、車両フレーム701に接触した状態でその車両フレーム701に固定されている。防振材36は、例えば車両フレーム701のうち防振材36が接触する車両フレーム表面に沿って拡がる板状に形成されている。
【0091】
雑音用マイクロホンケース37は樹脂製または金属製の筐体であり、雑音用マイクロホン20と雑音用マイクロホン基板38とを収容している。雑音用マイクロホンケース37は、車両フレーム701に対し車室71側に配置されている。雑音用マイクロホンケース37は、車両フレーム701との間に防振材36を挟んだ状態で、車両フレーム701に対し例えばネジ止め等により固定されている。すなわち、雑音用マイクロホンケース37は車両フレーム701に対し直接には接触しておらず、防振材36を介して車両フレーム701に固定されている。
【0092】
また、雑音用マイクロホンケース37には、その雑音用マイクロホンケース37の内側と外側とを連通させるケース貫通孔37aが複数形成されている。
【0093】
雑音用マイクロホン基板38は、樹脂製の板材を基材として構成された平板状のプリント基板であり、雑音用マイクロホン基板38には複数の回路パターンが形成されている。また、図9では電線17(図2参照)は不図示であるが、雑音用マイクロホン基板38は、電線17によって電気基板16へ電気的に接続されている。
【0094】
雑音用マイクロホン基板38には雑音用マイクロホン20が実装され、雑音用マイクロホン基板38は雑音用マイクロホンケース37に固定されている。従って、雑音用マイクロホン20は、雑音用マイクロホン基板38と雑音用マイクロホンケース37と防振材36とを介して車両フレーム701に固定されていることになる。
【0095】
本実施形態でも雑音用マイクロホン20は、最近接フレーム構成材702aに近接して配置されると共に最近接フレーム構成材702aに対して固定されているので、雑音用マイクロホン20は最近接フレーム構成材702aに設置されていると言える。更に言うと、雑音用マイクロホン20は雑音用マイクロホン基板38に実装されているので、最近接フレーム構成材702aに対し車室71側に固定される部品である雑音用マイクロホン基板38に設置されているとも言える。
【0096】
また、雑音用マイクロホン基板38には、その雑音用マイクロホン基板38を貫通した基板貫通孔38aが形成されている。その基板貫通孔38aの一端は雑音用マイクロホン20に対向し、その基板貫通孔38aの他端は、雑音用マイクロホンケース37のうち複数のケース貫通孔37aが形成された内壁面に対して対向している。
【0097】
そのため、車両70の振動音70b(図2参照)は、矢印B1,B2のように車両フレーム701から複数のケース貫通孔37aと基板貫通孔38aとを通って雑音用マイクロホン20へ到達する。
【0098】
なお、本実施形態において、複数のケース貫通孔37aは雑音用マイクロホンケース37のうち車室71側に設けられているが、電気基板16は、複数のケース貫通孔37aに対し間隔をあけてそのケース貫通孔37aの全部に被るように配置されている。そして、その複数のケース貫通孔37aは、内装材707よりも車両フレーム701側に位置している。
【0099】
そのため、話者音声73aがケース貫通孔37aを通って雑音用マイクロホン20へ到達する経路は、電気基板16と内装材707とによって或る程度遮られる。従って、本実施形態でも第1実施形態と同様に、雑音用マイクロホン20は、全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように配置されている。
【0100】
(1)上述したように、本実施形態によれば、雑音用マイクロホン20は、防振材36を介して車両フレーム701に固定されている。従って、雑音用マイクロホン20を車両フレーム701に近接して配置できる。そして、雑音用マイクロホン20が例えば車両フレーム701に直接貼り付けられている場合と比較して、雑音用マイクロホン20が車両フレーム701の振動701a(図2参照)に伴って振動することを防振材36によって抑制することができる。そのため、雑音用マイクロホン20が取得する取得雑音の周波数特性が雑音用マイクロホン20の振動に起因して変化することを防ぐことが可能である。
【0101】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0102】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0103】
図10図12に示すように、電気基板16には複数の発話用マイクロホン12のほかに、雑音用マイクロホン20も実装されている。そして、音声取得装置10は、電気基板16を含むマイク支持部材40を備えている。これらの点で本実施形態は第1実施形態と異なっている。なお、本実施形態では、音声取得装置10は図2の吸音材24を備えていないが、雑音用マイクロホン20のケースの内壁に吸音材を備えていてもよい。
【0104】
具体的に、本実施形態の電気基板16の一面161には複数の発話用マイクロホン12が実装されている。それに加えて、その電気基板16の一面161には、雑音用マイクロホン20も実装されている。例えば、その雑音用マイクロホン20は、電気基板16の一面161上において複数の発話用マイクロホン12のそれぞれから離れて配置されている。なお、本実施形態では雑音用マイクロホン20が電気基板16に実装されるので、図2に示された電線17は不要である。
【0105】
マイク支持部材40は、電気基板16と第1積層板41と第2積層板42とを有している。その第1積層板41と第2積層板42は例えば樹脂製の板材であり、電気基板16の厚み方向と同じ向きに厚みを有する平板状に形成されている。電気基板16と第1積層板41と第2積層板42は一体構成となるように、例えば接着やネジ止め等によって互いに固定されている。
【0106】
そして、マイク支持部材40は、OHC708に対しネジ止め等によって固定されている。すなわち、マイク支持部材40は、車両フレーム701に対しOHC708を介して固定されている。そのため、マイク支持部材40は、車両フレーム701に対し間隔をあけて車室71側に配置されている。このマイク支持部材40は、各マイクロホン12、20を車両フレーム701に対して支持するためのマイクボードとして構成されている。
【0107】
本実施形態でも雑音用マイクロホン20は、最近接フレーム構成材702aに近接して配置されると共に最近接フレーム構成材702aに対して固定されているので、雑音用マイクロホン20は最近接フレーム構成材702aに設置されていると言える。更に言うと、雑音用マイクロホン20は電気基板16に実装されているので、最近接フレーム構成材702aに対し車室71側に固定される部品である電気基板16に設置されているとも言える。そして、上記したようにマイク支持部材40はその電気基板16を有するので、雑音用マイクロホン20は、最近接フレーム構成材702aに対し車室71側に固定される部品であるマイク支持部材40に設置されているとも言える。
【0108】
第1積層板41は、電気基板16に対しその電気基板16の他面162側に積層され、例えばその電気基板16の他面162に密着している。第2積層板42は、電気基板16に対しその電気基板16の他面162側に第1積層板41を挟んで積層され、例えば第1積層板41に密着している。
【0109】
また、マイク支持部材40には、複数の音声用音孔40aと雑音用音孔40eとがそれぞれ形成されている。これにより、マイク支持部材40は音響管としての構成を備える。すなわち、その音響管としてのマイク支持部材40は、車室71内からそれぞれの音声用音孔40aを通して話者音声73aを複数の発話用マイクロホン12へ導く。それと共に、そのマイク支持部材40は、車両フレーム701側から雑音用音孔40eを通して車両70の振動音70bを雑音用マイクロホン20へ導く。
【0110】
マイク支持部材40の複数の音声用音孔40aはそれぞれ、基板法線方向Dsbへマイク支持部材40を貫通した貫通孔として形成されている。すなわち、その音声用音孔40aは、電気基板16と第1積層板41と第2積層板42とを一直線に貫通している。そして、本実施形態の音声用音孔40aは、第1実施形態の音声用音孔16a(図2参照)を含んだものになっている。
【0111】
複数の音声用音孔40aはそれぞれ、一次音声73を車室71内から発話用マイクロホン12へ導くための孔である。そのため、複数の音声用音孔40aは、複数の発話用マイクロホン12のそれぞれに対し一対一で対応するように設けられている。例えば本実施形態では発話用マイクロホン12は8つ設けられているので、マイク支持部材40には8つの音声用音孔40aが形成されている。
【0112】
複数の音声用音孔40aはそれぞれ、基板法線方向Dsbの一方側に設けられた一端40bと、基板法線方向Dsbの他方側に設けられた他端40cとを有している。そして、複数の音声用音孔40aはそれぞれ、発話用マイクロホン12に対して基板法線方向Dsbの他方側に重なるように配置されている。そのため、音声用音孔40aの一端40bは発話用マイクロホン12に向かって開口し、音声用音孔40aの他端40cは車両フレーム701側とは反対側へ向かって開口し車室71へ開放されている。このように音声用音孔40aが設けられているので、一次音声73は車室71内から音声用音孔40aを通って複数の発話用マイクロホン12へそれぞれ伝達される。
【0113】
マイク支持部材40の雑音用音孔40eは、電気基板16に対する車両フレーム701側から車両70の振動音70bを雑音用マイクロホン20へ導くための孔である。この雑音用音孔40eは、マイク支持部材40の中で屈曲して形成されている。そして、雑音用音孔40eは、電気基板16の一面161にそれぞれ形成された一端40fと他端40gとを有している。この雑音用音孔40eの一端40fは雑音用マイクロホン20に向かって開口し、雑音用音孔40eの他端40gは車両フレーム701側へ向かって開口している。詳細に言うと、その雑音用音孔40eの他端40gは塞がれることなく、車両フレーム701側へ向かって開放されている。このように雑音用音孔40eが設けられているので、車両70の振動音70bは、例えば、車両フレーム701から雑音用音孔40eを通って雑音用マイクロホン20へ伝達される。
【0114】
具体的に、雑音用音孔40eは、雑音用音孔40eの一端40fを含む第1基板貫通孔40hと、雑音用音孔40eの他端40gを含む第2基板貫通孔40iと、連結孔40jとから構成されている。その第1基板貫通孔40hは、電気基板16の一面161のうち雑音用マイクロホン20と対向する位置で電気基板16を貫通している。第2基板貫通孔40iは、複数の発話用マイクロホン12と雑音用マイクロホン20との何れからも離れた位置で電気基板16を貫通している。そして、連結孔40jは第1積層板41を貫通し、第1基板貫通孔40hと第2基板貫通孔40iとを連結している。更に、その連結孔40jのうち車室71側(すなわち、車両フレーム701側とは反対側)は、第2積層板42によって塞がれている。
【0115】
このようなマイク支持部材40の構成により、本実施形態でも第1実施形態と同様に、雑音用マイクロホン20は、全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように配置されている。
【0116】
(1)上述したように、本実施形態によれば、マイク支持部材40は、発話用マイクロホン12と雑音用マイクロホン20とが実装された電気基板16を含む。そして、音声用音孔40aの一端40bは、発話用マイクロホン12に向かって開口し、音声用音孔40aの他端40cは、車両フレーム701側とは反対側へ向かって開口している。その一方で、雑音用音孔40eの一端40fは、雑音用マイクロホン20に向かって開口し、雑音用音孔40eの他端40gは、車両フレーム701側へ向かって開口している。
【0117】
従って、雑音用マイクロホン20が全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように、その雑音用マイクロホン20と発話用マイクロホン12とを1つの電気基板16上に配置できる。このように雑音用マイクロホン20と発話用マイクロホン12とが共通の電気基板16上にあることで、各マイクロホン12、20と電気基板16上に構成された電気回路部30との間の信号の伝達経路を短く形成できる。
【0118】
すなわち、雑音用マイクロホン20の出力信号がアナログ信号の場合には、その信号の品質低下を防ぐことができる。また、雑音用マイクロホン20の出力信号がデジタル信号の場合には、EMC性能の悪化を防ぐことができる。その「EMC」とは、「Electromagnetic Compatibility」の略である。
【0119】
また、全てのマイクロホン12、20を共通の電気基板16に実装することで、車両70に音声取得装置10を搭載する際に要する搭載工数を削減することが可能である。
【0120】
(2)また、本実施形態によれば、電気基板16の一面161には、複数の発話用マイクロホン12と共に雑音用マイクロホン20も実装されている。そして、マイク支持部材40の雑音用音孔40eは、第1基板貫通孔40hと第2基板貫通孔40iと連結孔40jとから構成されている。その第1基板貫通孔40hは、電気基板16の一面161のうち雑音用マイクロホン20と対向する位置で電気基板16を貫通し、第2基板貫通孔40iは、全てのマイクロホン12、20から離れた位置で電気基板16を貫通している。また、連結孔40jは第1積層板41を貫通し且つ第1基板貫通孔40hと第2基板貫通孔40iとを連結し、その連結孔40jのうち車両フレーム701側とは反対側は、第2積層板42によって塞がれている。
【0121】
このような構成から、雑音用マイクロホン20が全ての発話用マイクロホン12と比較して話者音声73aを取得しにくく且つ車両70の振動音70bを取得しやすいように、各マイクロホン12、20が配置される。そして、このような各マイクロホン12、20の配置を実現しつつ、全てのマイクロホン12、20を電気基板16の片面に実装することができる。これにより、例えば複数のマイクロホン12、20が電気基板16の一面161と他面162とに分かれて実装される場合に比較して、各マイクロホン12、20を電気基板16に実装する際の実装コストを削減することが可能である。
【0122】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0123】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第4実施形態と組み合わせることも可能である。その第4実施形態と本実施形態とを組み合わせた変形例では、例えば、防振材36(図9参照)がOHC708と車両フレーム701との間に挟まれた状態で、OHC708が車両フレーム701に対して固定される。
【0124】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、図2等に示す発話用マイクロホン12と雑音用マイクロホン20は何れも、無指向性のマイクロホンであるが、これは一例である。例えば、発話用マイクロホン12は、指向性を持ったマイクロホンであってもよいし、雑音用マイクロホン20も、指向性を持ったマイクロホンであってもよい。
【0125】
例えば第5実施形態において、図10図12に示す発話用マイクロホン12は、音声用音孔40aの一端40bへ向いて最も高感度になる指向性を有していてもよい。そして、その第5実施形態において、雑音用マイクロホン20は、雑音用音孔40eの一端40fへ向いて最も高感度になる指向性を有していてもよい。
【0126】
(2)上述の各実施形態では、図2図4に示すように、発話用マイクロホン12は8つ設けられているが、複数あればよく、その発話用マイクロホン12の個数の制限はない。更に言うと、方向性雑音を低減する必要が無ければ、発話用マイクロホン12は1つであっても差し支えない。
【0127】
(3)上述の各実施形態では、図3に示すように、音声取得装置10は電気回路部30を備えているが、これは一例である。例えば、音声取得装置10は電気回路部30を備えずに、その電気回路部30に相当する電子制御装置が音声取得装置10とは別に設けられていても差し支えない。
【0128】
(4)上述の各実施形態では、例えば図2に示すように、発話用マイクロホン12はOHC708に取り付けられているが、これは一例である。話者音声73aが発話用マイクロホン12に良好に入力されるのであれば、発話用マイクロホン12の取付け場所は、例えばインストルメントパネル、ヘッドライナー、センターコンソール、センタークラスター、ルーフパネルなど、OHC708以外の場所であっても差し支えない。
【0129】
(5)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0130】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0131】
(本発明の特徴)
[請求項1]
音声認識システム用の音声取得装置(10)であって、
車室(71)内の話者(72)の音声(73a)を取得する発話用マイクロホン(12)と、
車両(70)の振動音(70b)を取得するものであり、前記発話用マイクロホンと比較して前記話者の音声を取得しにくく且つ前記振動音を取得しやすいように配置される雑音用マイクロホン(20)とを備え、
前記発話用マイクロホンは、複数のフレーム構成材(702、702a)を有し複数の前記フレーム構成材が互いに結合されることによって構成され前記車室を囲む車両フレーム(701)に対し前記車室側に配置され、
前記雑音用マイクロホンは、複数の前記フレーム構成材のうち前記発話用マイクロホンに最も近接した前記フレーム構成材である最近接フレーム構成材(702a)、または該最近接フレーム構成材に対し前記車室側に固定される部品(38、40)に設置される、音声取得装置。
[請求項2]
前記発話用マイクロホンは、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対して固定される支持体(708)に、設置され、
前記雑音用マイクロホンは、前記支持体に覆われるようにして前記車両フレームに設置される、請求項1に記載の音声取得装置。
[請求項3]
前記雑音用マイクロホンは、防振材(36)を介して前記車両フレームに固定される、請求項1または2に記載の音声取得装置。
[請求項4]
前記車両フレームに対し前記車室側に配置される吸音材(24)を備え、
前記吸音材は、前記車両フレーム側が開口した内部空間(24a)を前記吸音材の内側に形成し、
前記雑音用マイクロホンは、前記内部空間に配置され、前記吸音材に囲まれる、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の音声取得装置。
[請求項5]
前記吸音材の内部空間に面し該内部空間を囲む内壁面(24b)は、前記内部空間を挟んで互いに平行になる平行面を含まないように形成されている、請求項4に記載の音声取得装置。
[請求項6]
前記吸音材は、前記車両フレームのうち前記雑音用マイクロホンが設置される設置面(701c)の法線方向に沿う方向視では前記雑音用マイクロホンを囲むように形成され、
前記吸音材は、該吸音材の内部空間が前記車両フレーム側とは反対側へ開口した形状を成す、請求項4に記載の音声取得装置。
[請求項7]
前記発話用マイクロホンが実装され、前記最近接フレーム構成材に対し間隔をあけて前記車室側に配置され該最近接フレーム構成材に対し固定される電気基板(16)を備え、
前記電気基板は、前記最近接フレーム構成材の一部であるフレーム対向部(701b)に対して対向する一面(161)を有し、
前記雑音用マイクロホンは、前記電気基板の前記一面から離れて該一面と前記フレーム対向部との間に配置され、前記フレーム対向部に設置される、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の音声取得装置。
[請求項8]
前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとが実装された電気基板(16)を含み、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対し固定されるマイク支持部材(40)を備え、
前記マイク支持部材には音声用音孔(40a)と雑音用音孔(40e)とが形成され、
前記音声用音孔の一端(40b)は、前記発話用マイクロホンに向かって開口し、
前記音声用音孔の他端(40c)は、前記車両フレーム側とは反対側へ向かって開口し、
前記雑音用音孔の一端(40f)は、前記雑音用マイクロホンに向かって開口し、
前記雑音用音孔の他端(40g)は、前記車両フレーム側へ向かって開口する、請求項1または2に記載の音声取得装置。
[請求項9]
前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとが実装され前記車両フレーム側へ向いた一面(161)と該一面とは反対側の他面(162)とを有する電気基板(16)、該電気基板に対し該電気基板の前記他面側に積層された第1積層板(41)、および、前記電気基板に対し前記電気基板の前記他面側に前記第1積層板を挟んで積層された第2積層板(42)を含み、前記車両フレームに対し前記車室側に配置され且つ該車両フレームに対し固定されるマイク支持部材(40)を備え、
前記マイク支持部材には音声用音孔(40a)と雑音用音孔(40e)とが形成され、
前記音声用音孔は、前記一面の法線方向(Dsb)へ前記マイク支持部材を貫通した貫通孔として形成され、
前記音声用音孔の一端(40b)は、前記発話用マイクロホンに向かって開口し、
前記音声用音孔の他端(40c)は、前記車両フレーム側とは反対側へ向かって開口し、
前記雑音用音孔は、前記一面のうち前記雑音用マイクロホンと対向する位置で前記電気基板を貫通した第1基板貫通孔(40h)と、前記発話用マイクロホンと前記雑音用マイクロホンとから離れた位置で前記電気基板を貫通した第2基板貫通孔(40i)と、前記第1積層板を貫通し前記第1基板貫通孔と前記第2基板貫通孔とを連結する連結孔(40j)とから構成され、
前記連結孔のうち前記車両フレーム側とは反対側は、前記第2積層板によって塞がれる、請求項1または2に記載の音声取得装置。
[請求項10]
複数の第1雑音低減部(31)と、
第2雑音低減部(32)とを備え、
前記発話用マイクロホンは複数設けられ、前記話者の音声を含む一次音声(73)を取得し、
複数の前記第1雑音低減部は、複数の前記発話用マイクロホンのそれぞれに対応して設けられ、前記発話用マイクロホンから得られ前記一次音声を示す一次音声信号(S1v)と前記雑音用マイクロホンに取得され前記振動音を含んだ雑音を示す取得雑音信号(Sn)とに基づいて、拡散性雑音が前記一次音声に比して低減されることにより前記話者の音声が際立たされた二次音声を示す二次音声信号(S2v)を得るものであり、
前記第2雑音低減部は、複数の前記第1雑音低減部が得たそれぞれの前記二次音声信号に基づいて、前記拡散性雑音よりも方向性が高い方向性雑音が前記二次音声に比して低減されることにより前記話者の音声が際立たされた三次音声を示す三次音声信号(S3v)を得る、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の音声取得装置。
【符号の説明】
【0132】
10 音声取得装置
12 発話用マイクロホン
20 雑音用マイクロホン
70 車両
70b 振動音
72 話者
71 車室
73a 話者音声(話者の音声)
701 車両フレーム
708 OHC(支持体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12