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特開2024-118159電池モジュール及びスペーサ内蔵扁平電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118159
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電池モジュール及びスペーサ内蔵扁平電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20240823BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20240823BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240823BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240823BHJP
   H01M 50/209 20210101ALN20240823BHJP
   H01M 50/249 20210101ALN20240823BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/262 E
H01M50/477
H01M50/489
H01M50/474
H01M50/209
H01M50/249
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024431
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 太久哉
【テーマコード(参考)】
5H021
5H040
【Fターム(参考)】
5H021AA02
5H021EE29
5H040AA06
5H040AS04
(57)【要約】
【課題】充放電の繰り返しによって、電池モジュールに含まれる扁平電池の扁平電極体の電極体厚みが増加しても、定寸拘束した電池モジュールの各扁平電池に掛かる圧力の増加を抑制した電池モジュール、及び、これに用いるスペーサ内蔵扁平電池を提供する。
【解決手段】電池モジュール100は、拡がり方向SHに扁平な複数の扁平電池10を電池厚み方向BHに積み重ねた電池積層体120と、この電池積層体120を電池厚み方向BHに圧縮すると共に定寸拘束する拘束具110とを備え、扁平電池10は、前記拡がり方向SHに扁平で充放電の繰り返しと共に電極体厚みTHeが増加する扁平電極体30と電池ケース20とを有しており、電池積層体120は、電池厚み方向BHに降伏面圧FPY未満の面圧FP1が掛かった場合には、電池厚み方向BHに弾性圧縮され、降伏面圧FPYの面圧FP1が掛かると、塑性変形後厚みTqになるまでは電池厚み方向BHに塑性圧縮されるスペーサ80を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池厚み方向に直交する拡がり方向に扁平な複数の扁平電池を前記電池厚み方向に積み重ねた電池積層体と、
前記電池積層体を前記電池厚み方向に圧縮すると共に定寸拘束する拘束具と、を備える
電池モジュールであって、
前記扁平電池は、
前記拡がり方向に扁平で、充放電の繰り返しと共に前記電池厚み方向の電極体厚みが増加する扁平電極体と、
前記扁平電極体を収容した電池ケースと、を有しており、
前記電池積層体は、
前記電池厚み方向に降伏面圧未満の面圧が掛かった場合には、前記電池厚み方向に弾性圧縮され、前記降伏面圧の面圧が掛かると、塑性変形後厚みになるまでは、塑性変形により前記電池厚み方向に塑性圧縮されるスペーサを含む
電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記複数の扁平電池の少なくともいずれかは、
前記扁平電極体と、
前記スペーサであり、前記扁平電極体の前記電池厚み方向に重なる平板状の電池内スペーサと、を有する
スペーサ内蔵扁平電池である
電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電池モジュールであって、
前記電池積層体は、
前記電池積層体をなす複数の前記扁平電池同士の間、すべての前記扁平電池よりも前記電池厚み方向一方側、及び、すべての前記扁平電池よりも前記電池厚み方向他方側の少なくともいずれかに、前記スペーサである電池外スペーサを有する
電池モジュール。
【請求項4】
電池厚み方向に直交する拡がり方向に扁平な扁平電池であって、
充放電の繰り返しと共に前記電池厚み方向の電極体厚みが増加する扁平電極体と、
前記扁平電極体を収容した電池ケースと、を有しており、
電池ケース内で、前記扁平電極体の前記電池厚み方向に重なる平板状であり、
前記電池厚み方向に降伏面圧未満の面圧が掛かった場合には、前記電池厚み方向に弾性圧縮され、前記降伏面圧の面圧が掛かると、塑性変形後厚みになるまでは、塑性変形により前記電池厚み方向に塑性圧縮される
電池内スペーサをさらに有する
スペーサ内蔵扁平電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、及び、スペーサ内蔵扁平電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載され、長期間にわたり使用される電池モジュール(組電池)として、電池厚み方向に直交する拡がり方向に扁平な複数の扁平電池を、電池厚み方向に積層して電池積層体を構成し、この電池積層体を拘束具で圧縮すると共に剛に拘束して定寸拘束とした電池モジュールが知られている。各扁平電池のサイクル特性を向上させるなどの理由から、積層された複数の扁平電池をそれぞれ電池厚み方向に圧縮するためである。
【0003】
このような電池モジュールに用いる電池及びこれを用いた電池モジュール(組電池)として、例えば、特許文献1には、電極体とこれを収容する電池ケースを備える電池及び複数の電池を積層し定寸拘束した組電池が記載されている。この特許文献1の電池は、充放電の繰り返しによる電極体の膨張収縮によって電解液の濃度分布が生じるのを抑制するべく、電極体と電池ケースの間に弾性スペーサを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-216086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池モジュールに用いられる扁平電池の扁平電極体には、充放電の繰り返しと共に、徐々に電極体厚みが増加する扁平電極体がある。例えば、扁平電極体の負極板の負極活物質層に使用する負極活物質として、黒鉛などの炭素系負極活物質やシリコン、酸化シリコンなどのシリコン系負極活物質からなる負極活物質粒子を用いている場合などである。この場合、充放電に伴うLiイオンなどの挿入と脱離を繰り返すことで、活物質粒子が膨張したり亀裂を生じたりして膨化すると考えられる。なお、特にシリコン系の負極活物質粒子を用いた負極活物質層を有する負極板を含む扁平電極体において、充放電の繰り返し使用と共に電極体厚みが増加し易い。
【0006】
このように、扁平電極体の電極体厚みが徐々に増加して扁平電池の電池厚み方向の電池厚みが増加すると、これに伴って定寸拘束した電池モジュールの各扁平電池に掛かる圧力が徐々に増加し、ついには非常に大きな圧力が掛かった状態となる場合がある。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、充放電の繰り返しによって、電池モジュールに含まれる扁平電池の扁平電極体の電極体厚みが増加しても、定寸拘束した電池モジュールの各扁平電池に掛かる圧力の増加を抑制した電池モジュール、及び、これに用いるスペーサ内蔵扁平電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、電池厚み方向に直交する拡がり方向に扁平な複数の扁平電池を前記電池厚み方向に積み重ねた電池積層体と、前記電池積層体を前記電池厚み方向に圧縮すると共に定寸拘束する拘束具と、を備える電池モジュールであって、前記扁平電池は、前記拡がり方向に扁平で、充放電の繰り返しと共に前記電池厚み方向の電極体厚みが増加する扁平電極体と、前記扁平電極体を収容した電池ケースと、を有しており、前記電池積層体は、前記電池厚み方向に降伏面圧未満の面圧が掛かった場合には、前記電池厚み方向に弾性圧縮され、前記降伏面圧の面圧が掛かると、塑性変形後厚みになるまでは、塑性変形により前記電池厚み方向に塑性圧縮されるスペーサを含む電池モジュールである。
【0009】
前述したように、複数の扁平電池を電池厚み方向に積み重ねた電池積層体を、拘束具で電池厚み方向に圧縮すると共に定寸拘束した電池モジュールでは、充放電の繰り返しと共に、各扁平電池の扁平電極体の電極体厚みが増加した場合、電極体に掛かる面圧は徐々に増加する。このため、充放電を繰り返すと、各扁平電池に掛かる面圧が極端に大きくなってしまう場合がある。
なお、このように極端に面圧が高い状態になると、拘束具が破損する虞がある。また、拘束具の破損を防止するべく、高い面圧に耐え得る高強度や大型の拘束具を用いる必要が生じるため好ましくない。
【0010】
これに対し上述の電池モジュールでも、電池積層体は、拘束具で電池厚み方向に圧縮すると共に定寸拘束されている。しかしこれに加えて、この電池積層体は、降伏面圧の面圧が掛かると塑性変形するスペーサを含んでいる。このため、充放電の繰り返し使用と共に、電池積層体をなす扁平電池の扁平電極体の電極体厚みが増加した場合、スペーサに掛かる面圧は徐々に増加し、スペーサの厚みは弾性的に減少する。しかし、さらに扁平電極体の電極体厚みが増加し、スペーサに掛かる面圧が降伏面圧に達すると、スペーサの塑性変形により電池厚み方向に塑性圧縮されるので、スペーサに塑性変形が生じている間、スペーサの厚みは徐々に減少する一方、スペーサに掛かる面圧は概ね降伏面圧に保たれる。なおその後、さらなる扁平電極体の電極体厚みに増加により、スペーサの厚みが塑性圧縮の圧縮限界厚さに達すると、再び、スペーサは弾性的に圧縮され、スペーサに掛かる面圧も再び上昇する。このように、上述の電池モジュールでは、スペーサが上述の挙動を示すので、塑性変形を生じるスペーサを有さない電池モジュールに比して、面圧が降伏面圧に達した以降、扁平電池に掛かる面圧を低減することができる。
【0011】
電池積層体に用いる扁平電池としては、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池等の二次電池が挙げられる。また、扁平電池の扁平電極体としては、拡がり方向に扁平な電極体であれば良く、枚葉状の正極板、負極板及びセパレータを積層した積層型の電極体であっても、帯状の正極板、負極板及びセパレータを捲回し押し潰した扁平捲回型の電極体であっても良い。この扁平電極体は、充放電の繰り返し使用と共に電極体厚みが増加する特性を有している。例えば、負極板の負極活物質層に含まれる負極活物質粒子として、黒鉛等の炭素系活物質や、シリコン、酸化シリコンなどのシリコン系負極活物質からなる負極活物質粒子を含むものが挙げられる。また、電池ケース内に単数の扁平電極体を有する扁平電池のほか、電池ケース内に複数の扁平電極体を電池厚み方向に重ねて収容した扁平電池も用い得る。
【0012】
また、電池積層体を定寸拘束する拘束具は、扁平電極体の電極体厚みが増加して扁平電池の電池厚みが増加して、各扁平電池に掛かる面圧が増加しても、電池積層体全体の電池厚み方向の寸法が変化せず、電池積層体を剛に拘束する拘束体である。
【0013】
塑性変形を生じるスペーサとしては、圧縮されて面圧が増加し、降伏面圧に達すると、弾性変形から塑性変形に移行するが、その後、塑性変形の圧縮限界に達し塑性変形後厚みとなると、再び弾性変形に移行する板材であれば良い。例えば、シリカエアロゲル、アルミナエアロゲルなど金属酸化物の多孔質体、厚み方向に延びるハニカム構造を有する金属体、発泡ニッケルなどの発泡金属体、発泡スチロールなどの発泡樹脂体、シリカエアロゲルなどの金属酸化物の多孔質体と繊維との複合体(例えば、パナソニック社製のNASBIS(登録商標)など)を用いることができる。
【0014】
上述のスペーサは、扁平電池のケース内で、電池厚み方向に扁平電極体と重ねて配置した、電池内スペーサであっても良い。また、扁平電池の外部において、電池厚み方向に扁平電池を重ねて配置して電池積層体を構成した、電池外スペーサであっても良い。
【0015】
(2)上述の(1)に記載の電池モジュールであって、前記複数の扁平電池の少なくともいずれかは、前記扁平電極体と、前記スペーサであり、前記扁平電極体の前記電池厚み方向に重なる平板状の電池内スペーサと、を有するスペーサ内蔵扁平電池である電池モジュールとすると良い。
【0016】
上述の電池モジュールでは、複数の扁平電池の少なくともいずれかは、スペーサ内蔵扁平電池である。このため、この電池モジュールでは、塑性変形可能なスペーサを含まない電池と同様に扱い得るスペーサ内蔵扁平電池を用いて、各電池に掛かる面圧を低減した電池モジュールとすることができる。
【0017】
なお、電池モジュールでは、電池積層体をなす複数の扁平電池のうち、少なくともいずれかの扁平電池をスペーサ内蔵扁平電池とすれば良いが、すべての扁平電池をスペーサ内蔵扁平電池とするのが好ましい。
また、電池積層体には、電池積層体をなし電池厚み方向に積層された複数の扁平電池同士の間や扁平電池と拘束具のエンドプレートとの間などに、扁平電池同士間を絶縁したり、冷却エアを流通させるなどを目的とした電池間介在部材を配置しても良い。
【0018】
(3)さらに(1)又は(2)に記載の電池モジュールであって、前記電池積層体は、前記電池積層体をなす複数の前記扁平電池同士の間、すべての前記扁平電池よりも前記電池厚み方向一方側、及び、すべての前記扁平電池よりも前記電池厚み方向他方側の少なくともいずれかに、前記スペーサである電池外スペーサを有する電池モジュールとすると良い。
【0019】
上述の電池モジュールでは、電池積層体は、複数の扁平電池同士の間、すべての扁平電池よりも電池厚み方向一方側、或いは電池厚み方向他方側の少なくともいずれかに、即ち、扁平電池の外に電池外スペーサを有している。このため、上述の電池モジュールでは、塑性変形可能なスペーサを含まない従前の扁平電池を用いながらも、面圧が降伏面圧に達した以降、電池外スペーサの使用により、扁平電池に掛かる面圧を低減した電池モジュールとすることができる。
【0020】
(4)他の解決手段は、電池厚み方向に直交する拡がり方向に扁平な扁平電池であって、充放電の繰り返しと共に前記電池厚み方向の電極体厚みが増加する扁平電極体と、前記扁平電極体を収容した電池ケースと、を有しており、電池ケース内で、前記扁平電極体の前記電池厚み方向に重なる平板状であり、前記電池厚み方向に降伏面圧未満の面圧が掛かった場合には、前記電池厚み方向に弾性圧縮され、前記降伏面圧の面圧が掛かると、塑性変形後厚みになるまでは、塑性変形により前記電池厚み方向に塑性圧縮される電池内スペーサをさらに有するスペーサ内蔵扁平電池である。
【0021】
上述のスペーサ内蔵扁平電池では、電池ケース内に電池内スペーサを有しているので、別途、電池外スペーサを用意しなくとも、このスペーサ内蔵扁平電池を用いて電池モジュールを形成した場合、面圧が降伏面圧に達した以降、扁平電池に掛かる面圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る電池の斜視図である。
図2】実施形態に係る電池を電池幅方向CH及び電池高さ方向DHに沿う平面で切断した断面図である。
図3】実施形態に係る電池を電池厚み方向BH及び電池高さ方向DHに沿う平面で切断した断面図である。
図4】実施形態に係る電池を電池厚み方向BH及び電池幅方向CHに沿う平面で切断した断面図である。
図5】実施形態に係り、電極体の斜視図である。
図6】実施形態に係り、正極板と負極板とをセパレータを介して互いに重ねた状態を示す、電極体の展開図である。
図7】塑性スペーサに掛かる面圧FPとスペーサ厚みTとの関係を示す説明図である。
図8】実施形態に係る電池モジュールの側面図である。
図9】拘束試験具を用いた、供試電池の厚みが増加した場合に塑性スペーサに掛かる面圧の変化を調査の様子を示す説明図である。
図10】供試電池の充放電サイクル数と塑性スペーサに掛かる面圧との調査例である。
図11】変形形態に係る電池を電池厚み方向BH及び電池高さ方向DHに沿う平面で切断した断面図である。
図12】変形形態に係る電池モジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る電池10(扁平電池、スペーサ内蔵扁平電池の一例)、及び、これを用いた電池モジュール100を、図1図10を参照しつつ説明する。なお、以下では、電池10の電池厚み方向BH、電池幅方向CH及び電池高さ方向DHを、図1に示す方向と定めて説明する。なお、電池厚み方向BHに直交する方向、即ち、電池幅方向CH及び電池高さ方向DHを含む方向を拡がり方向SHとする。また、電極体30の軸線方向EH、電極体厚み方向FH及び電極体幅方向GHを、図5に示す方向と定めて説明する。
【0024】
この電池10は、拡がり方向SHに扁平な角型で密閉型のリチウムイオン二次電池であり、電池モジュール100および電池10は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両や各種の機器に搭載される。
【0025】
電池10は、後述するように、複数の電池10と電池間介在部材130とを交互に電池厚み方向BHに積層して電池積層体120とし、この電池積層体120を拘束具110で拘束した電池モジュール100として利用される(図8参照)。なお、図8では、電池10の正極端子部60及び負極端子部70の記載を省略してある。
【0026】
この電池10は、拡がり方向SHに扁平な直方体状の電池ケース20と、この電池ケース20内に収容された扁平状捲回型の電極体30(扁平電極体の一例)と、電池ケース20に支持された正極端子部60及び負極端子部70等から構成されている。電池ケース20内には、非水系の電解液27が保持されている。また、この電池10では、電池ケース20と電極体30との間に、板状で一対の塑性スペーサ80(スペーサ、電池内スペーサの一例)が配置されている。
【0027】
このうち電池ケース20は、金属(具体的にはアルミニウム)により形成されている。この電池ケース20は、上側のみに矩形状の開口部21hを有する有底角筒状のケース本体21と、このケース本体21の開口部21hを封口する矩形板状の蓋体23とから構成されている(図1図4参照)。蓋体23のうち、その長手方向(電池幅方向CH、図2において左右方向)の中央付近には、非復帰型の安全弁23vが設けられている。
【0028】
また、蓋体23のうち、その長手方向の両端近傍には、電池ケース20の内部から外部に延出する形態に正極端子部60及び負極端子部70がそれぞれ固設されている(図1図2参照)。具体的には、アルミニウム製の正極端子部材61及び銅製の負極端子部材71は、それぞれ、電池ケース20内で電極体30に接続する一方、蓋体23を貫通して電池ケース20の外部に延出している。正極端子部材61及び負極端子部材71は、これらを絶縁する樹脂製の絶縁部材65,75を介して、蓋体23に固定されている。
【0029】
次に、電極体30について説明する(図2図6参照)。この電極体30は、その軸線方向EHが電池幅方向CHと一致し、電極体厚み方向FHが電池厚み方向BHと一致し、電極体幅方向GHが電池高さ方向DHと一致する形態で、電池ケース20内に収容されている(図2参照)。電極体30は、帯状の正極板31と帯状の負極板41とを、帯状で多孔質樹脂からなる一対のセパレータ51を介して互いに積層し(図6参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に押し潰してなり、拡がり方向SHに扁平な扁平捲回型の電極体である(図5参照)。この電極体30は、後述するように、電池10の充放電の繰り返し使用と共に電池厚み方向BHの電極体厚みTHeが増加する特性を有している。
【0030】
帯状の正極板31は、アルミニウムからなる帯状の正極電極箔32と、この正極電極箔32の表裏面のうち幅方向(図6中、上下方向)の一方側(図6中、上方)には、それぞれ長手方向(図6中、左右方向)に帯状に延びる、正極活物質層33が形成されている。この正極活物質層33は、正極活物質粒子34と導電材と結着剤から形成されている。本実施形態では、正極活物質としてリチウム・コバルト・ニッケル・マンガン複合酸化物を、導電材としてアセチレンブラック(AB)を、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いている。
【0031】
一方、帯状の負極板41は、銅からなる帯状の負極電極箔42と、この負極電極箔42の表裏面のうち幅方向(図6中、上下方向)の他方側(図6中、下方)には、それぞれ長手方向(図6中、左右方向)に帯状に延びる、負極活物質層43が形成されている。この負極活物質層43は、負極活物質粒子と結着剤と増粘剤から形成されている。本実施形態では、負極活物質粒子44として酸化珪素(SiOx)粒子と黒鉛粒子とを、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いている。なお、本実施形態では、負極活物質粒子44における酸化珪素(SiOx)粒子と黒鉛粒子の重量比を、2:8とした。
【0032】
この負極活物質粒子44は、充電過程で膨張し放電過程で収縮する。これに加え、電池10について充放電を繰り返すことで、負極活物質粒子44中でも酸化珪素粒子は、徐々に膨張する。このため、負極板41の厚みも徐々に増加する。
【0033】
電極体30において、正極板31の一部は、セパレータ51から軸線方向EHの一方側EH1(図6中、上方、図2中、左方)に向けて扁平渦巻き状をなして突出し、電極体30の正極集電部30Pをなしている。この正極集電部30Pには、正極端子部材61が溶接されている。また、負極板41の一部は、セパレータ51から軸線方向EHの他方側EH2D(図6中、下方、図2中、右方)に向けて扁平渦巻き状をなして突出し、電極体30の負極集電部30Nをなしている。この負極集電部30Nには、負極端子部材71が溶接されている。
【0034】
電極体30の正極集電部30P及び負極集電部30Nよりも軸線方向EHの内側(中央)に位置し、平坦にされた多数の正極板31及び負極板41がセパレータ51を介して互いに電極体厚み方向FH(電池厚み方向BH)に重なる部位を、平板状積層部30Lとする(図5参照)。
【0035】
次に、塑性スペーサ80について説明する(図2図4参照)。この塑性スペーサ80は、電池ケース20内のうち、電極体30の電極体厚み方向FHの両側にそれぞれ配置されている。これら2枚の塑性スペーサ80は、電極体30の平板状積層部30Lよりも若干面積の広い(軸線方向EH及び電極体幅方向GHの寸法がそれぞれ大きい)矩形板状であり、平板状積層部30Lに重なって平板状積層部30L外に配置されている。この塑性スペーサ80は、例えば、繊維とシリカエアロゲルとの複合材(NASBIS(商標名)、パナソニック社製)からなる。
【0036】
この塑性スペーサ80は、概ね、図7に示す特性を有している。塑性スペーサ80のスペーサ厚みTが、自由状態では初期厚みTsであったとする。この塑性スペーサ80を徐々に圧縮すると、当初は弾性圧縮となり、面圧FP1が徐々に増加すると共に、スペーサ厚みTは徐々に減少する。即ち、面圧FP1の増加と共に、スペーサ厚みTは、概ね直線的に低下する。しかし、面圧FP1が降伏面圧FPYに達する(このときのスペーサ厚みTを塑性変形前厚みTpとする)と、面圧FP1は殆ど増加すること無く圧縮が進行し、スペーサ厚みTが急激に減少する。塑性スペーサ80が塑性圧縮(塑性変形)されたためである。そして、スペーサ厚みTが塑性変形後厚みTqに達すると、再び面圧FP1の増加と共にスペーサ厚みTが弾性的に徐々に減少する。
【0037】
電解液27としは、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0038】
また、図3に示すように、電池10のうち、電極体30の電極体厚み方向FH(電池厚み方向BH)の寸法を電極体厚みTHeとし、電池10の電池厚み方向BHの寸法を電池厚みTHbとする。電極体30の電極体厚みTHeは、前述した電池10について充放電を繰り返すことによる負極活物質粒子44の膨張により、徐々に増加する。
【0039】
この電池10は、電池モジュール100として利用される(図8参照)。この電池モジュール100は、電池積層体120と拘束具110とを備える。このうち、電池積層体120は、複数の電池10と複数の電池間介在部材130とを電池厚み方向BH(電極体厚み方向FH)に交互に積層してなる。隣り合う電池10同士は、図示しないバスバにより電気的に直列に接続されている。また、電池間介在部材130は、矩形板状をなし、隣り合う電池10同士の間にそれぞれ配置され、電池10との間に冷却空気が流通する冷却路(図示しない)を形成している。
【0040】
一方、拘束具110は、電池積層体120、即ち、電池10及び電池間介在部材130を電池厚み方向BHに圧縮しつつ剛に定寸拘束する。この拘束具110は、一対のエンドプレート111と、4本の締結ボルト113と、8つのナット115とを有する。エンドプレート111は、矩形板状をなし、電池積層体120(積層された電池10及び電池間介在部材130)の両側にそれぞれ配置されている。締結ボルト113は、両方の端部113tにネジが形成された両ネジの円柱状をなし、一対のエンドプレート111の間に配置されて、エンドプレート111同士の間を接続している。ナット115は、エンドプレート111に設けられた貫通孔(図示しない)に挿通された締結ボルトの端部113tをエンドプレート111に締結している。
【0041】
この電池モジュール100を構成した状態では、各電池10の電極体30の平板状積層部30L及び塑性スペーサ80は、電池ケース20を介して電極体厚み方向FHに圧縮され、かつ、電池10を充放電して負極活物質粒子44が膨張収縮しても、電池10の電池厚みTHb(電池厚み方向BHの寸法)が定寸に保たれた、圧縮定寸状態となる。
【0042】
ここでもし、電池10内に塑性スペーサ80を有していない場合において、電池10について充放電を繰り返すことで、電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加したときには、電池積層体120及び各電池10の電池厚みTHbが定寸に保たれているので、前述したように、徐々に電池10に掛かる面圧FP1が増加し、ついには、極端に面圧が大きくなる場合がある。
【0043】
しかるに、本実施形態の電池モジュール100では、電池10の電池ケース20内に塑性スペーサ80を備えているので、電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加した場合でも、各電池10に掛かる面圧FP1の増加を抑制することができる。そこで、この塑性スペーサ80を用いた場合と用いない場合の面圧の変化について、図9に示す拘束試験具CBを用いて、下記の面圧試験により確認した。
【0044】
<面圧試験>
先ず、拘束試験具CBについて説明する。拘束試験具CBは、いずれも矩形状の底板BB、中間板MB、及び上板UBのほか、底板BBの四隅にそれぞれ立設された支柱ボルトBT、この支柱ボルトBTと上板UBとを締結するナットNT、底板BBと中間板MBとの間に配置するロードセルLC、及び、ロードセルLCを駆動しロードセルLCに掛かる応力を検知する応力測定装置LAからなる。なお、中間板MBには、四隅に貫通孔(図示しない)が穿孔されており、支柱ボルトBTが挿通されている。
【0045】
また、供試電池CEは、以下のようにして形成した。先ず、前述の帯状の正極板31から正極活物質層を設けた部分を29mm×39mmの矩形状に切り出して、矩形状の2枚の正極板を用意する。また、前述の帯状の負極板41から負極活物質層を設けた部分を30mm×40mmの矩形状に切り出して、矩形状の3枚の負極板を用意する。さらに前述の帯状のセパレータ51から、32mm×42mmの矩形状のセパレータを6枚切り出しておく。そして、正極板と負極板とをセパレータを介して交互に積層し、電極端子を取り付けて5層構造の積層型電極体を形成する。この積層型電極体を電極端子の一部が外部に突出する形態でアルミニウムラミネートフィルム製のケースに挿入し、電解液27を注液し、封止して供試電池CEを完成する。
【0046】
この供試電池CE及び拘束試験具CBを用いて、前述の塑性スペーサ80から32mm×42mmの矩形状に切り出した塑性スペーサPSの挙動について調査した。まず、拘束試験具CBのうち、中間板MBと上板UBとの間に、供試電池CEと塑性スペーサPSとを重ねて配置し、ナットNTを締めて、供試電池CEと塑性スペーサPSとを密着させる僅かに面圧FPを掛けた状態とする。これにより、中間板MBAと上板UBとの間で、供試電池CEと塑性スペーサPSとを圧縮すると共に定寸拘束する。
【0047】
次いで、供試電池CEを、電源(図示しない)に接続し、SOC0%-100%の範囲を、充電電流1/3CのCCCV充電と放電電流1/3CのCC放電を繰り返す充放電サイクルで充放電する。これと共に、充放電サイクルの回数とロードセルLCによって得られた、塑性スペーサPSに掛かる面圧FPを測定した。
【0048】
図10に、拘束試験具CBを用いて行った面圧試験で得られた、供試電池CEの充放電のサイクル数と供試電池CE及び塑性スペーサPSに掛かる面圧FPとの関係を、破線のグラフ(スペーサあり)で示す。併せて、塑性スペーサPSを無くして、中間板MBと上板UBとの間に供試電池CEのみ配置して定寸拘束した場合の、供試電池CEの充放電のサイクル数と供試電池CEに掛かる面圧FPとの関係についても、実線のグラフ(スペーサ無し)で示す。
【0049】
図10のうち、実線で示す「スペーサ無し」のグラフによれば、供試電池CEに施した充放電のサイクル数の増加と共に、塑性スペーサPSに掛かる面圧FPが徐々に且つ単調に増加している。前述したように、充放電により、負極活物質粒子44が膨張し、負極板41の厚み、ひいては供試電池CE内の積層型電極体の電極体厚みが徐々に増加する一方、供試電池CEは、中間板MBと上板UBとの間で定寸拘束されている。このため、供試電池CEは弾性圧縮され、供試電池CEに掛かる面圧FPが徐々に上昇したと考えられる。
【0050】
一方、図10のうち、破線で示す「スペーサあり」のグラフでは、サイクル回数が少ない段階(具体的には、サイクル回数が19回以下の場合)では、「スペーサ無し」のグラフと同じく、供試電池CEに施した充放電のサイクル数の増加と共に、供試電池CE及び塑性スペーサPSに掛かる面圧FPが徐々に増加している。前述した「スペーサ無し」の場合と同様に、充放電により、負極活物質粒子44が膨張し、負極板41の厚み、ひいては供試電池CE内の積層型電極体の電極体厚みが徐々に増加する一方、供試電池CEと塑性スペーサPSは、中間板MBと上板UBとの間で定寸拘束されている。このため、供試電池CE及び塑性スペーサPSは弾性圧縮され、供試電池CE及び塑性スペーサPSに掛かる面圧FPが上昇したと考えられる。
【0051】
但し、破線で示す「スペーサあり」のグラフでは、面圧が或る程度増加した段階(具体的には、面圧FPが1.4MPaに達した段階)以降は、実線で示す単調増加する「スペーサ無し」のグラフとは異なる挙動となった。
まず、塑性スペーサPSに掛かる面圧FPが或る程度増加した段階から、しばらくの間(塑性変型期間、具体的には、面圧FPが1.4MPaに達したサイクル回数が19回から28回までの9サイクル分の期間)は、面圧FPが増加せず一定の大きさ(本例では1.4MPa)に保持されていた。この一定の面圧FP(本例では1.4MPa)が、図7における降伏面圧FPYに相当すると考えられる。つまり、サイクル回数が19回から28回までの9サイクル分の塑性変型期間には、供試電池CE内の積層型電極体の電極体厚みが徐々に増加しても、塑性スペーサPSが塑性圧縮され、スペーサ厚みTが塑性変形前厚みTpから急激に減少したため、面圧FPが増加しなかったと考えられる。
なお、塑性圧縮の段階を超えると、即ち、スペーサ厚みTが塑性変形後厚みTqに達すると、具体的には、サイクル回数が29回以降は、再びサイクル数の増加と共に、塑性スペーサPSに掛かる面圧FPが徐々に増加している。
【0052】
塑性スペーサPSにこのような挙動が生じるため、図10における実線と破線のグラフを比較すれば容易に理解できるように、サイクル回数19回以降は、塑性スペーサPSにおける塑性圧縮(塑性変型)の発生により、実線で示す「スペーサ無し」の場合に比して、破線で示す「スペーサあり」の場合には、供試電池CEに掛かる面圧FPが小さくなっている。さらには、サイクル回数29回以降は、実線で示す「スペーサ無し」の場合に比して、破線で示す「スペーサあり」の場合には、供試電池CEに掛かる面圧FPが常に約0.5MPa程度小さくなることが判る。
【0053】
本実施形態の電池モジュール100でも、互いに直列に接続した各電池10を充放電すると、負極活物質粒子44の膨張により、各電池10の電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加する(図3参照)。その一方、電池モジュール100では、各電池10の電池ケース20内に、前述の塑性スペーサPSと同様の塑性スペーサ80を有している。このため、本実施形態の電池モジュール100でも、充放電サイクルの回数と、電極体30及び塑性スペーサ80に掛かる面圧FP1とには、上述の面圧試験の結果(図10における「スペーサあり」のグラフ参照)と同様の挙動が生じる。
【0054】
即ち、サイクル回数が少ない段階では、各電池10に施した充放電のサイクル数の増加と共に、電極体30及び塑性スペーサ80に掛かる面圧FP1が徐々に増加する。充放電により、負極活物質粒子44が膨張し、負極板41の厚み、ひいては電池10内の電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加する一方、各電池10を含む電池積層体120は、拘束具110の一対のエンドプレート111との間で定寸拘束されている。このため、各電池10の塑性スペーサ80は弾性圧縮され、各塑性スペーサ80に掛かる面圧FP1が上昇したと考えられる。
【0055】
しかし、塑性スペーサ80に掛かる面圧FP1が増加して、塑性スペーサ80の降伏面圧FPYに達した段階(スペーサ厚みTが塑性変形前厚みTpに達した段階。図7参照)からしばらくの期間(塑性変型期間)は、充放電のサイクル数が増加しても面圧FP1が増加せず降伏面圧FPYに保持される。この塑性変型期間は、各電池10内の電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加しても、各電池10内の塑性スペーサ80が塑性圧縮され、スペーサ厚みTが塑性変形前厚みTpから減少したため、面圧FP1が増加しなかったと考えられる。
【0056】
その後、塑性圧縮期間を超えると、即ち、各電池10内の塑性スペーサ80のスペーサ厚みTが塑性変形後厚みTqに達すると、再び充放電のサイクル数の増加と共に、電極体30及び塑性スペーサ80に掛かる面圧FP1が徐々に増加する。
【0057】
かくして、図10において破線で示す「スペーサあり」のグラフと同様、塑性スペーサ80の塑性圧縮(塑性変型)の発生により、塑性圧縮期間の開始以降は、実線で示す「スペーサ無し」の場合に相当する、塑性スペーサ80を有さない電池を用いた電池モジュールに比して、塑性スペーサ80に、さらには各電池10に掛かる面圧FP1が小さくなる。またさらに、塑性圧縮期間以降は、塑性スペーサ80を有さない電池を用いた電池モジュールに比して、電池10に掛かる面圧FP1を常に小さくできる。
【0058】
(変型形態)
次いで変型形態に係る電池モジュール300について、図11及び図12を参照して説明する。上記実施形態の電池モジュール100では、電池ケース20内に電極体30のほかに塑性スペーサ80を配置した電池10と電池間介在部材130とを交互に積層した電池積層体120を、拘束具110で拘束した(図8参照)。
【0059】
これに対し、変形形態に掛かる電池モジュール300では、電池ケース220内に電極体30は配置するが、塑性スペーサを有しない点で電池10と異なる電池210を用いる(図11参照)。その代わりに、電池外の塑性スペーサ330(実施形態の塑性スペーサ80と同じ)用いる。即ち、電池210と電池外の塑性スペーサ330とを交互に積層した電池積層体320を、実施形態と同様の拘束具110で拘束している(図12参照)。実施形態と同じく、隣り合う電池210同士は、図示しないバスバにより電気的に直列に接続されている。なお、電池210は、有底角筒状のケース本体221内に電極体30及び電解液27を収容し、矩形状の開口部221hを蓋体223で封口してなる。
【0060】
この変型形態の電池モジュール300でも、互いに直列に接続した各電池210を充放電すると、負極活物質粒子44の膨張により、各電池210の電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加する(図11参照)。またこれにより電池厚みTHbも徐々に増加する。一方、電池モジュール300では、各電池210同士の間に、前述の塑性スペーサPSと同様の塑性スペーサ330を有している。このため、本変型形態の電池モジュール300でも、充放電サイクルの回数と、電極体30、電池210及び塑性スペーサ330に掛かる面圧FP2とには、上述の面圧試験の結果(図10における「スペーサあり」のグラフ参照)と同様の挙動が生じる。
【0061】
即ち、サイクル回数が少ない段階では、各電池210に施した充放電のサイクル数の増加と共に、電極体30及び塑性スペーサ330に掛かる面圧FP2が徐々に増加する。充放電により、負極活物質粒子44が膨張し、負極板41の厚み、ひいては電池210内の電極体30の電極体厚みTHe及び電池210の電池厚みTHbが徐々に増加する一方、各電池210を含む電池積層体320は、拘束具110の一対のエンドプレート111との間で定寸拘束されている。このため、各電池210及び塑性スペーサ330は弾性圧縮され、各電池210及び塑性スペーサ330に掛かる面圧FP2が上昇したと考えられる。
【0062】
しかし、電池外の各塑性スペーサ330に掛かる面圧FP2が増加して、塑性スペーサ330の降伏面圧FPYに達した以降(スペーサ厚みTが塑性変形前厚みTpに達した以降。図7参照)、しばらくの期間(塑性変型期間)は、充放電のサイクル数が増加しても面圧FP2が増加せず降伏面圧FPYに保持される。この塑性変型期間は、各電池210内の電極体30の電極体厚みTHeが徐々に増加しても、電池外の塑性スペーサ330が塑性圧縮され、スペーサ厚みTが塑性変形前厚みTpから減少したため、面圧FP2が増加しなかったと考えられる。
【0063】
その後、塑性圧縮期間を超えると、即ち、塑性スペーサ330のスペーサ厚みTが塑性変形後厚みTqに達すると、再び充放電のサイクル数の増加と共に、電極体30及び塑性スペーサ330に掛かる面圧FP2が徐々に増加する。
【0064】
かくして、図10における破線のグラフと同様、塑性スペーサ330の塑性圧縮(塑性変型)の発生により、塑性圧縮期間の開始以降は、実線で示す「スペーサ無し」の場合に相当する、塑性スペーサ330を有さない電池積層体を用いた電池モジュールに比して、塑性スペーサ330に、さらには各電池210に掛かる面圧FP2が小さくなる。またさらに、塑性圧縮期間以降は、塑性スペーサ330を有さない電池を用いた電池モジュールに比して、電池210に掛かる面圧FP2を常に小さくできる。
【0065】
なお、本変型形態の電池モジュール300は、塑性変形可能なスペーサを含まない従前の電池210を用いながらも、塑性スペーサ330の使用により、面圧FP2が降伏面圧FPYに達した以降、各電池210に掛かる面圧FP2を低減することができる。
【0066】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、電池ケース20内に電極体30のほか、電極体30の電極体厚み方向FHの両側に一対の塑性スペーサ80を配置した電池10を用いた例を示した(図3参照)。しかし、電極体30の電極体厚み方向FHの片側に塑性スペーサ80を配置した電池を用いても良い。
【0067】
また実施形態では、電池モジュール100に用いる全ての電池を、塑性スペーサ80を内蔵した電池10とした(図8参照)。しかし、一部の電池のみ塑性スペーサ80を内蔵した電池10としても良い。
また同様に、変型形態では、電池モジュール300の電池積層体320において、複数の電池210と複数の塑性スペーサ330とを交互に積層した(図12参照)。しかし、複数の塑性スペーサ330の一部を実施形態で用いた電池間介在部材130に代えて、電池積層体320に用いる塑性スペーサ330の数を減しても良い。逆に、エンドプレート111と電池210との間にも塑性スペーサ330を配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0068】
10(扁平電池、スペーサ内蔵扁平電池)
210 電池(扁平電池)
20,220 電池ケース
30 電極体(扁平電極体)
THe 電極体厚み
30L 平板状積層部
80 塑性スペーサ(電池内スペーサ,スペーサ)
100,300 電池モジュール
110 拘束具
120,320 電池積層体
330 塑性スペーサ(電池外スペーサ)
BH 電池厚み方向
BH1 電池厚み方向一方側
BH2 電池厚み方向他方側
SH 拡がり方向
EH 軸線方向
EH1 軸線方向一方側
EH2 軸線方向他方側
FH 電極体厚み方向(積層方向)
GH 電極体幅方向
FP,FP1,FP2 面圧
FPY 降伏面圧
T スペーサ厚み
Ts 初期厚み
Tp 塑性変形前厚み
Tq 塑性変形後厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12