(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118162
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】格子状製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 47/00 20060101AFI20240823BHJP
B21D 39/06 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B21D47/00 H
B21D39/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024435
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】392035499
【氏名又は名称】石田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】石田 昭三
(57)【要約】
【課題】圧接機や大がかりな関連装置を不要とし、製造時の電力使用量のエネルギー消費を抑制し、主部材に直交する複数本のパイプ状連結部材を交差状に固定して格子状製品を製造するための、最適な確実かつ効率のよい製法を提供する。
【解決手段】一定厚み(t)の細板状の複数本の主部材を連結部材によって一定間隔(s)に並置した格子状製品を製造する方法であって、主部材の貫通孔形成、主部材の固定櫛部材及び可動櫛部材へ保持、主部材の整列、主部材の保持、連結部材の貫設、(A)可動櫛部材による連結部材の押潰による固定、(B)主部材群のテ―ブル面移動、前記(A)及び(B)を連結部材の本数(n)分を繰り返し、格子体の外枠部形成、溶融亜鉛メッキ、以上の工程よりなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定厚み(t)の細板状の複数本の主部材を連結部材によって一定間隔(s)に並置した格子状製品を製造する方法であって、
前記複数本の主部材の側面に貫通孔を形成する工程と、
前記主部材を載置するテーブル面に対して突出又は埋没し前記主部材の厚み(t)の保持溝が前記一定間隔(s)で櫛歯状に形成された固定櫛部材と可動櫛部材であって、前記可動櫛部材は前記固定櫛部材に並設されて該固定櫛部材側へ進退可能に構成されていて、前記主部材を前記テーブル面に突出状態の前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、
前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持された主部材の端面への当接部を有する端面整列部材によってテーブル面に載置された主部材群を整列する工程と、
前記テーブル面に載置された主部材群の上部を前記間隔(s)と同一間隔で形成された複数の保持溝を有する上部保持部材によって保持する工程と
前記整列保持された主部材群の各主部材の前記貫通孔にパイプ状の連結部材を貫設する工程と、
(A)前記整列保持された主部材群の一の連結部材に対して前記可動櫛部材を固定櫛部材側に移動し連結部材を圧縮押潰して前記各主部材の前記貫通孔の直径より大きい長径変形部を形成して該長径変形部を介して前記主部材の貫通孔に前記連結部材を固定する工程と、
(B)前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面から一旦埋没して主部材群を移動した後に再度前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面に突出して他の連結部材を前記可動櫛部材及び固定櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、
上記(A)及び(B)を連結部材の本数(n)分を繰り返す工程と、
繰り返し工程完了後、前記格子体の外周に外枠部を形成する工程と、
前記外枠を設けた格子体を溶融亜鉛メッキして格子状製品を得る工程
を有することを特徴とする格子状製品の製造方法。
【請求項2】
前記端面整列部材と上部保持部材とが主部材端面当接部と主部材上部保持溝部を有する単一の整列部材より構成された請求項1に記載の格子状製品の製造方法。
【請求項3】
前記主部材の貫通孔の直径が8~10mmであり、前記パイプ状連結部材の圧縮押潰された長径変形部が前記貫通孔の直径より1~4mm大きく形成された請求項1に記載の格子状製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定間隔で複数本並列された主部材と、前記主部材に直交する複数本のパイプ状連結部材によって交差状に固定して格子状製品を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場やプラントなどの足場や道路、歩道のグレーチングなどには、一定間隔で複数本並列された主部材の上面を固定部材(ツイストバー)によって格子状に固定してなる金属製の格子状製品(グレーチング)が多用される。
図15に示すように、この種のグレーチング100では、一定間隔に配設された複数本の主部材120に対し、ツイストバー130を直交方向に複数本配設して、プロジェクション溶接等の電気圧接により該ツイストバー130を主部材120上面から押し込んで溶接することにより製造されるのが最も一般的である(例えば、特許文献1
図3参照。)。なお、符号111は外枠部材である。
【0003】
しかるに、この電気圧接は、溶接部分に大電流を流すことによって溶接部に抵抗熱を発生させて加熱するとともに、圧力を加えて溶接を行うものであるために、装置が大型化し製造時の電力使用量が増大する傾向があった。また、固定部材をプロジェクション溶接によって溶接した場合、固定部材、特に、その溶接部がグレーチング上面に突出して固定することになるため、外観性が上がらない(すっきりしない)あるいは滑りやすいつまずくなどの問題が指摘されることもあり、さらに、主部材の下部側つまりグレーチング裏面側の強度が上がらないこともあった。また、何よりも溶接機及び関連装置が大がかりとなり、エネルギー消費や段取り替え、その他騒音や飛散物などによる工場環境などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであり、圧接機や大がかりな関連装置を不要とし、製造時の電力使用量のエネルギー消費や段取り替え、その他騒音や飛散物などによる工場環境などの問題を一挙に解決ないし抑制するとともに、製品の外観性を向上させることができる格子状製品を得る製造方法を提供するものである。とりわけこの発明は、主部材に直交する複数本のパイプ状連結部材を交差状に固定して格子状製品を製造するための、最適な確実かつ効率のよい製法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、一定厚みtの細板状の複数本の主部材を連結部材によって一定間隔sに並置した格子状製品を製造する方法であって、
前記複数本の主部材の側面に貫通孔を形成する工程と、
前記主部材を載置するテーブル面に対して突出又は埋没し前記主部材の厚みtの保持溝が前記一定間隔sで櫛歯状に形成された固定櫛部材と可動櫛部材であって、前記可動櫛部材は前記固定櫛部材に並設されて該固定櫛部材側へ進退可能に構成されていて、前記主部材を前記テーブル面に突出状態の前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、
前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持された主部材の端面への当接部を有する端面整列部材によってテーブル面に載置された主部材群を整列する工程と、
前記テーブル面に載置された主部材群の上部を前記間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝を有する上部保持部材によって保持する工程と
前記整列保持された主部材群の各主部材の前記貫通孔にパイプ状の連結部材を貫設する工程と、
(A)前記整列保持された主部材群の一の連結部材に対して前記可動櫛部材を固定櫛部材側に移動し連結部材を圧縮押潰して前記各主部材の前記貫通孔の直径より大きい長径変形部を形成して該長径変形部を介して前記主部材の貫通孔に前記連結部材を固定する工程と、
(B)前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面から一旦埋没して主部材群を移動した後に再度前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面に突出して他の連結部材を前記可動櫛部材及び固定櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、
上記(A)及び(B)を連結部材の本数n分を繰り返す工程と、
繰り返し工程完了後、前記格子体の外周に外枠部を形成する工程と、
前記外枠を設けた格子体を溶融亜鉛メッキして格子状製品を得る工程
を有することを特徴とする格子状製品の製造方法に係る。。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記端面整列部材と上部保持部材とが主部材端面当接部と主部材上部保持溝部を有する単一の整列部材より構成された格子状製品の製造方法に係る。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1において、前記主部材の貫通孔の直径が8~10mmであり、前記パイプ状連結部材の圧縮押潰された長径変形部が前記貫通孔の直径より1~4mm大きく形成された格子状製品の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るグレーチングの加工装置にあっては、上に述べたように、一定厚みtの細板状の複数本の主部材を連結部材によって一定間隔sに並置した格子状製品を製造する方法であって、前記複数本の主部材の側面に貫通孔を形成する工程と、前記主部材を載置するテーブル面に対して突出又は埋没し前記主部材の厚みtの保持溝が前記一定間隔sで櫛歯状に形成された固定櫛部材と可動櫛部材であって、前記可動櫛部材は前記固定櫛部材に並設されて該固定櫛部材側へ進退可能に構成されていて、前記主部材を前記テーブル面に突出状態の前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持された主部材の端面への当接部を有する端面整列部材によってテーブル面に載置された主部材群を整列する工程と、前記テーブル面に載置された主部材群の上部を前記間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝を有する上部保持部材によって保持する工程と、前記整列保持された主部材群の各主部材の前記貫通孔にパイプ状の連結部材を貫設する工程と、(A)前記整列保持された主部材群の一の連結部材に対して前記可動櫛部材を固定櫛部材側に移動し連結部材を圧縮押潰して前記各主部材の前記貫通孔の直径より大きい長径変形部を形成して該長径変形部を介して前記主部材の貫通孔に前記連結部材を固定する工程と、(B)前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面から一旦埋没して主部材群を移動した後に再度前記固定櫛部材と可動櫛部材をテ―ブル面に突出して他の連結部材を前記可動櫛部材及び固定櫛部材の両保持溝に直交状に保持する工程と、上記(A)及び(B)を連結部材の本数n分を繰り返す工程と、繰り返し工程完了後、前記格子体の外周に外枠部を形成する工程と、前記外枠を設けた格子体を溶融亜鉛メッキして格子状製品を得る工程
を有することを特徴とするものであるから、以下のような効果を有する。
(あ)まず、圧接機や大がかりな関連装置を不要とするので、製造時の電力使用量のエネルギー消費を大幅に低減し、段取り替え、その他騒音や飛散物などによる工場環境などの問題を一挙に解決ないし抑制することができる。
(い)とともに、主部材の貫通孔に直交する複数本のパイプ状連結部材を交差状に固定して格子状製品を製造するものであるから、製品の表面に連結部材が露出せず、製品の外観性を向上させ、通行時の滑りやつまずきなどを回避することができる。とりわけこの発明は、主部材に直交する複数本のパイプ状連結部材を交差状に固定して格子状製品を製造するための、最適な確実かつ効率のよい製法を提供するものである。
【0010】
(う)さらに、この発明によれば、主部材を載置するテーブル面に対して突出又は埋没し前記主部材の厚みtの保持溝が前記一定間隔sで櫛歯状に形成された固定櫛部材と可動櫛部材であって、前記可動櫛部材は前記固定櫛部材に並設されて該固定櫛部材側へ進退可能に構成されていて、前記主部材を前記テーブル面に突出状態の前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持し、前記固定櫛部材及び可動櫛部材の両保持溝に直交状に保持された主部材の端面への当接部を有する端面整列部材によってテーブル面に載置された主部材群を整列し、前記テーブル面に載置された主部材群の上部を前記間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝を有する上部保持部材によって保持する工程を有するものであるから、複数本の主部材を効率よく確実に所定の主部材群に整列配置することができる。
(え)そして、前記(う)によって整列保持された主部材群の各主部材の貫通孔に対して、確実かつ迅速にパイプ状の連結部材を貫設することができる。
(お)同時に、主部材群のパイプ状の連結部材を貫設された主部材間の部分を前記固定櫛部材を可動櫛部材側に移動することによって圧縮押潰する工程も確実かつ効率よく行うことができる。特に、可動櫛部材の移動による連結部材の圧縮押潰に伴う主部材の変動を上部整列部材の整列溝の保持によって抑制でき、正確な格子状製品を得ることが可能である。
(か)一の連結部材の圧縮押潰による固定後、固定櫛部材と可動櫛部材はテ―ブル面に一旦埋没され、別の連結部材の固定のためテーブル面の主部材群を移動して再度突出して圧縮押潰による固定がなされ、連結部材の本数n分を繰り返すので、必要な段取り替えが不要となり、作業効率が向上し、コスト的にも有利である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記端面整列部材と上部保持部材とが主部材端面当接部と主部材上部保持溝部を有する単一の整列部材より構成されたものであるから、作業効率がよく、コスト的にも有利である。
【0012】
請求項3の発明は、前記主部材の貫通孔の直径が8~10mmであり、前記パイプ状連結部材の圧縮押潰された長径変形部が前記貫通孔の直径より1~4mm大きく形成されたものであるから、この種格子状製品を確実にしかも効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例に係る製法の工程図である。
【
図2】格子状製品の一例を示すグレーチングの斜視図である。
【
図3】
図2のグレーチングの要部の縦断面図である。
【
図4】
図2のグレーチングの主部材に貫設された連結部材の対比説明図である。
【
図5】本発明に使用される加工装置の要部の斜視図である。
【
図6】本発明の整列部材による主部材の整列及び保持状態を表す部分斜視図である。
【
図7】本発明方法による加工装置に主部材と連結部材を載置した状態を表す概略上面図であ。
【
図8】同じく連結部材の押し潰し工程を表す概略上面図である。
【
図9】同じく連結部材の押し潰し工程の完了状態を表す概略上面図である。
【
図10】本発明の加工装置の突出状態の固定櫛部材及び可動櫛部材に主部材を載置した状態を表す概略説明図である。
【
図11】同じく突出状態の固定櫛部材及び可動櫛部材に連結部材を挿通した主部材の載置状態を表す概略説明図である。
【
図12】同じく突出状態の固定櫛部材及び可動櫛部材による連結部材の押し潰し工程を表す概略説明図である。
【
図13】同じく本発明の連結部材の押し潰し工程の完了状態を表す概略説明図である。
【
図14】同じく連結部材の押し潰し完了後の固定櫛部材及び可動櫛部材の没入状態を表す概略説明図である
【
図15】従来のグレーチングの連結部材近傍の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
図2ないし
図4に図示したように、一定厚みtの細板状の複数本の主部材60を連結部材70によって一定間隔sに並置した格子状製品、例えばグレーチング50を製造する方法であって、
図1に図示の工程よりなる。対応する工程の図面番号とともに、以下に示す。
(ア)主部材の貫通孔形成工程
(イ)主部材の固定櫛部材及び可動櫛部材へ保持工程(
図5、
図6、
図7、
図10、
図11)
(ウ)主部材の整列工程(
図6、
図7)
(エ)主部材の保持工程(
図8、
図12、
図13、
図14)
(オ)連結部材の貫設工程(
図7、
図10)
(カ)(A)可動櫛部材による連結部材の押潰による固定工程(
図8、
図12、
図13)
(キ)(B)主部材群のテ―ブル面移動工程(
図9、
図14)
(ク)上記(A)及び(B)を連結部材の本数n分を繰り返す工程
(ケ)格子体の外枠部形成工程
(コ)溶融亜鉛メッキ工程
(サ)以上(ア)~(コ)よりなる格子状製品の製法
【0015】
なお、
図2ないし
図4において、符号51はグレーチング50の外枠部、主部材60に関し、符号61は上下に膨大部62及び63を有する断面が英大文字「I」(アイ)字状の主部材、64は主部材の上面に形成された滑り止めの凹凸部、65は主部材の貫通孔である。また、連結部材70に関し、符号71は主部材貫通孔65の挿通部、72は前記挿通部以外の部分、73はパイプ中空部、75は圧縮変形部、76及び77は前記圧縮変形部75両端の楕円形長軸部分、80は主部材貫通孔65への固定部である。
【0016】
図5ないし
図14は本発明の一実施例に係る加工装置10に関し、以下、本発明の実施例を説明する。
(ア)主部材の貫通孔形成工程
本発明は、図示のように、一定厚みtの細板状の複数本の主部材60を連結部材、特に中空部73を有するパイプ状連結部材70によって一定間隔sに並置した鉄製のグレーチング50などの格子状製品を製造する方法に係り、複数本の主部材60の側面に貫通孔65が形成される。
【0017】
主部材60は、上下に膨大部62及び63を有する断面が英文字「I」(アイ)字状又はフラット形状の細板状の鉄材よりなり、その側面に公知の手法によりパイプ状連結部材70の外径より大きい貫通孔65が穿設される。主部材60の貫通孔65は、連結部材70が挿通可能に構成されたものであって、製造時の作業性の観点から、連結部材70の外径より1mm程度大きく形成される。連結部材70の外径より大きく形成される大きさが1mmより小さい場合、連結部材70が挿通しにくく作業性が悪化する。1mmより大きい場合、後述する連結部材70の変形量を大きくする必要があり固定しにくくなるとともに、外観性も悪化する恐れがある。
【0018】
主部材60は、図示したものは上下の膨大部62,63を有する断面I字状61であり、貫通孔65の一部が上部膨大部62にかかるように穿設されている。これにより、膨大部62,63において主部材60の厚みが増すため、強度が向上する。なお、穿設作業上、貫通孔65が膨大部62,63にかからないようにすることもある。
格子状製品における主部材60間の間隔sは、グレーチング50の機能や強度の観点から、適宜設計されるが、実施例では、8~10mmの細目タイプである。間隔sが8mmより小さい場合、主部材60の本数が増大して経済的に不利となり、間隔sが10mmより大きい場合、当該隙間sから石等が落下しやすくなったり、自転車やベビーカー等の車輪が落ち込むことがある。
【0019】
連結部材70は、
図3及び
図4の左右の対比説明図から理解されるように、貫通孔65に挿通した後に貫通孔挿通部71以外の部分72を径方向の両側から圧縮して変形させた圧縮変形部75によって主部材60の貫通孔65に固定するものである。符号80が固定部である。この連結部材70は、中空部73を有する筒形状からなるため、圧縮変形を容易に行うことができる。圧縮変形部75は、径方向の両側から圧縮されることによって断面略楕円形状に形成され、その長軸の両端部分76,77を主部材60の貫通孔65の内周に圧接させて固定する貫通孔固定部80を構成する。
【0020】
この連結部材70では、主部材60側面の貫通孔65に挿通されて固定するものであるため、従来のように主部材60の上部側に露出して固定することがなく、外観性が向上する。しかも、圧縮変形によって固定することが可能であるから、従来のようにプロジェクション溶接によって大電流を流す必要がなく、製造時の電力使用量を大幅に抑制することができる。また、貫通孔65の一部を上部膨大部62にかかるように穿設したものにあっては、貫通孔固定部80の上部が上部膨大部62にかかって固定されるため、主部材60と連結部材70との結合強度を高めることができる。なお、貫通孔挿通部71は、圧縮変形部75が形成されるに伴って、貫通孔65内でも変形することはいうまでもない。
【0021】
(イ)主部材の固定櫛部材及び可動櫛部材へ保持工程
貫通孔65が形成された主部材60は、
図5及び
図7に図示したように、加工装置10の固定櫛部材20及び可動櫛部材30に保持される。
加工装置10は、
図10ないし
図14の説明で詳述するが、一定間隔sで複数本並列され側面に貫通孔65を有する主部材60と、該主部材60に直交するように貫通孔65に挿通されて格子状に固定する連結部材70とからなるグレーチング50を加工するための装置であって、テーブル11と、固定櫛部材20と、可動櫛部材30と、移動手段40と、昇降手段45、及び整列部材46とを備える。
固定櫛部材20と可動櫛部材30は、前記主部材60の厚みtの保持溝21,31がそれぞれ前記一定間隔sで櫛歯状に形成されていて、
図10ないし
図14の説明図から理解されるように、主部材60を載置するテーブル面12に対して昇降手段45によって突出又は埋没するように構成されている。そして可動櫛部材30は固定櫛部材20に並設されていて移動手段40によって固定櫛部材側20へ進退可能に構成されている。主部材60は、
図5及び
図7に図示のように、加工装置10のテーブル面12に突出状態の固定櫛部材20及び可動櫛部材30の両保持溝21,31に直交状に保持される。
【0022】
加工装置10のテーブル11は、複数本の主部材60の載置面12を有する。このテーブル11では、載置面12に固定櫛部材20及び可動櫛部材30が昇降可能な溝空間Vが形成されている。溝空間Vの形状は特に限定されるものではなく、切欠状や穴状等適宜である。
【0023】
固定櫛部材20は、テーブル11の載置面12に対して突出又は埋没し、主部材60の間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝21を有する。保持溝21は、グレーチング50の製造時に主部材60を保持するものであり、少なくとも製造されるグレーチング50の主部材60の本数と同数が形成される。同様に、可動櫛部材30は、テーブル11の載置面12に対して突出又は埋没し、主部材60の間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝31を有し、固定櫛部材20に並設されるとともに固定櫛部材側20へ進退可能に構成される。保持溝31は、グレーチング50の製造時に、前記固定櫛部材20の保持溝21とともに主部材60を保持するものであり、少なくとも製造されるグレーチング50の主部材60の本数と同数が形成される。
【0024】
移動手段40は、
図8及び
図9の平面図及び
図10ないし
図14の説明図から理解されるように、可動櫛部材30を進退させるものであって、可動櫛部材30を固定櫛部材20側に移動させて、固定櫛部材20と可動櫛部材30の各保持溝21,31に整列された主部材60の貫通孔65に挿通され当該固定櫛部材20と可動櫛部材30との間に位置するように配置された連結部材70を径方向の両側から圧縮して変形させて連結部材70を主部材60の貫通孔65に固定する圧縮変形部75を形成する。移動手段40は、可動櫛部材30を進退させるとともに、連結部材30を所定圧力で圧縮変形可能な公知のシリンダ装置等の適宜の装置からなる。
【0025】
昇降手段45は、固定櫛部材20と可動櫛部材30とを一体に昇降させるものである。実施例の昇降手段45は、固定櫛部材20と可動櫛部材30とをテーブル11の上方に突出させて主部材60を保持可能な加工位置に上昇させるとともに、加工後(又は非加工時)には固定櫛部材20と可動櫛部材30とをテーブル11より下方に埋没させて主部材60の移動、保持保持作業が可能な位置に下降させる。昇降手段45は、固定櫛部材20と可動櫛部材30とが昇降可能な公知のシリンダ装置等の適宜の装置からなる。
【0026】
(ウ)主部材の整列工程、
上述のように、主部材60は、加工装置10のテーブル面12で、固定櫛部材20及び可動櫛部材30の両保持溝21,31に直交状に保持されるが、
図6に図示のように、この際に各主部材60の端面への当接部47を有する端面整列部材46(46B)によってテーブル面に載置された主部材群wが整列される。
【0027】
(エ)主部材の保持工程、
そして、端面整列部材46によってテーブル面上に載置された主部材群wは、その上部を前記間隔sと同一間隔で形成された複数の保持溝48を有する上部保持部材46(46A)によって保持される。なお、実施例では、図示したように、端面整列部材46Bの上部保持部材と上部保持部材46Aとが単一の整列部材46によって構成されている。作業効率がよく、コスト的にも有利である。
【0028】
(オ)連結部材の貫設工程、
前記整列保持された主部材群wの各主部材60の対応する各貫通孔65にパイプ状の連結部材70が貫設される。上のように、整列部材46によって、主部材群wの各主部材60は整然かつ正確に整列保持されているので、整列された各貫通孔65へのパイプ状の連結部材70の貫設を迅速かつ効率よく確実に行なうことができる。
【0029】
(カ)(A)可動櫛部材による連結部材の押潰による固定工程
次いで、(A)前記整列保持された主部材群wの一の連結部材70に対して、
図7ならびに
図11及び
図12のように、可動櫛部材30が固定櫛部材20側に移動し、連結部材70を圧縮押潰して前記主部材60の貫通孔65の直径より大きい長径変形部76,77(
図3参照)が形成される。
図4の対比説明から理解されるように、連結部材70の、主部材貫通孔65の挿通部71以外の部分72は圧縮押潰されて楕円形状に変形し、その該長径変形部76,77を介して主部材60の貫通孔65に連結部材70が固定される。
図3及び
図4の符号80は固定部である。
ここで、この押潰による固定工程において、
図8及び
図12に図示したように、可動櫛部材30近傍の主部材群wに整列部材46の整列溝48を配置すると、押潰し時の加圧力による主部材60の変動(ずれ、ぶれ)ないし変形を抑制でき、正確、美麗な格子体を制作することができる。
【0030】
(キ)(B)主部材群のテ―ブル面移動工程
前記加圧工程が終了し、主部材群wの一の連結部材70が固定された後、
図9及び
図13のように、可動櫛部材30が後退し、その後、
図13のように、固定櫛部材20と可動櫛部材30がテ―ブル面12から一旦埋没する。この状態で、主部材群wを移動し、他の連結部材70の加工のために、再度前記固定櫛部材20と可動櫛部材30がテ―ブル面12に突出する。そして先述と同様に、他の連結部材70が可動櫛部材30及び固定櫛部材20の両保持溝31,21に直交状に保持される。
【0031】
(ク)上記(A)及び(B)を連結部材の本数n分を繰り返す工程
その後、前記(A)及び(B)の工程が連結部材の本数n分を繰り返される。
【0032】
(ケ)格子体の外枠部形成工程
繰り返し工程が完了し、複数の連結部材70が固定された主部材群wからなる格子体が形成さた後、前記格子体の外周に必要な外枠部が形成される。
【0033】
(コ)溶融亜鉛メッキ工程、
前記外枠を設けた格子体を溶融亜鉛メッキして格子状製品であるグレーチングが得られる。亜鉛メッキ層は、公知の溶融亜鉛メッキ処理によって形成される。亜鉛メッキ層を形成することにより、グレーチング50の耐食性を向上させるとともに、貫通孔固定部80の主部材60(貫通孔65)と連結部材70(圧縮変形部75)とを接合してより強固に固定することができる。また、溶融亜鉛メッキ処理に際して、格子体50が加熱されることにより強化されて強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 加工装置
12 テーブル面
20 固定櫛部材
21 保持溝
30 可動櫛部材
31 保持溝
40 移動手段
45 昇降手段
46 整列部材
47 端面整列部
48 上部保持部
50 グレーチング
51 外枠部
60 主部材
65 貫通孔
70 パイプ状連結部材
71 貫通孔挿通部
75 圧縮変形部
80 貫通孔固定部
t 主部材の厚み
s (主部材間の)一定間隔
w 主部材群
v 溝空間