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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118168
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】圧着端子と電線の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240823BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024446
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸也
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD04
5E085DD14
5E085DD16
5E085EE11
5E085FF01
5E085FF08
5E085HH06
5E085JJ06
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】適切な方向からの荷重印加による圧着が可能な圧着端子と電線の接続構造を提供する。
【解決手段】圧着端子と、圧着端子の筒状の導体圧着バレルの内部に挿入される導体端末部が断面多角形に形成された電線と、導体圧着バレルの内部に配置されて挿入される導体端末部の軸周りの回転位置を規制するガイド部材とを備え、ガイド部材を間に挟んだ状態で導体圧着バレルが電線の導体端末部に圧着されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の導体圧着バレルを有する圧着端子と、
前記導体圧着バレルの内部に前記導体圧着バレルの開放端から挿入される圧着対象の導体端末部が、挿入方向から視て断面多角形に形成された電線と、
前記導体圧着バレルの内部に配置され、前記導体端末部が挿入される挿入口を有し、前記挿入口から挿入された前記導体端末部の軸周りの回転位置を規制するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材を間に挟んだ状態で前記圧着端子の導体圧着バレルが、前記電線の導体端末部に圧着されている、
圧着端子と電線の接続構造。
【請求項2】
前記電線が、アルミニウム又はアルミニウム合金製の多芯の導体を有するものであり、
前記導体端末部が、超音波溶着による芯線の単線化処理により、長辺と短辺を有する断面長方形に形成され、且つ、前記長辺に垂直な方向に圧着した場合と前記短辺に垂直な方向に圧着した場合とで圧着性能に差を生じる、圧着方向に対する異方性を有しており、
前記ガイド部材の挿入口の形状及びサイズが、前記圧着性能を有利にする向きでのみ前記断面長方形の導体端末部の挿入を可能とし、且つ、前記向き以外の向きでの挿入を不可とするように設定されている、
請求項1に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【請求項3】
前記ガイド部材に、前記導体圧着バレルの内部に前記開放端から挿入されるバネ片が設けられており、
前記バネ片が前記導体圧着バレルの内壁に沿って挿入された状態で、前記ガイド部材の挿入口から前記電線の導体端末部が挿入された際に、前記バネ片が、前記導体圧着バレルの内壁と前記電線の導体端末部の外周とに弾性的に押圧接触して、前記導体端末部の軸周りの位置の規制を維持する、
請求項2に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【請求項4】
前記ガイド部材が、
前記挿入口を構成する開口を有し、かつ、前記圧着端子の導体圧着バレルの開放端に当接する環状のフランジと、
前記フランジから前記導体圧着バレルの内周に沿って延び、前記導体圧着バレルの内部に挿入された状態で、前記ガイド部材の挿入口から前記電線の導体端末部が挿入された際に、前記導体端末部を挟んで対向する一対の前記バネ片と、
を有する、
請求項3に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【請求項5】
前記各バネ片に、前記電線の導体端末部が前記圧着端子の導体圧着バレルに対して適正深さまで挿入されたときに、前記導体端末部の断面変化部に当接して挿入抵抗を増す係合部が設けられている、
請求項4に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【請求項6】
前記ガイド部材が、
互いに間隔をおいて平行に配され、前記導体圧着バレルに対する挿入方向の基端側で前記挿入口を形成すると共に、先端側の端部同士が連結部により連結されて一体化された一対の板バネ状の前記バネ片と、
前記各バネ片の基端部に外向きに拡がるように延設され、前記バネ片が前記導体圧着バレルの内部に挿入された状態で、前記挿入口から前記一対のバネ片間に前記電線の導体端末部が挿入された際に、その挿入動作と共に前記導体圧着バレルの内部に引き込まれ、引き込まれるに従って対向する部分同士の間隔が窄まることで、前記一対のバネ片の基端側を前記導体端末部に押圧接触させる一対の延長アームと、
前記各バネ片の先端側に設けられ、前記導体圧着バレルの内壁に弾性的に押圧接触する補助バネ片と、を備えた、
請求項3に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【請求項7】
前記延長アームの先端に、
前記電線の導体端末部が前記圧着端子の導体圧着バレルに対して適正深さまで挿入されたときに、前記導体圧着バレルの開放端に係合することで、前記挿入動作に伴う前記延長アームの前記導体圧着バレルの内部への引き込まれ動作を阻止する係合部が設けられている、
請求項6に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子と電線の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多芯のアルミ電線の端末に圧着端子を圧着する場合、予め超音波溶着により電線の芯線露出部(導体露出部)を単線化処理した上で圧着することが行われている。アルミ電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の導体を有する電線である。
【0003】
図15は、その一例を示している。
この図15に示すように、圧着接続対象の電線5の端末部は、絶縁被覆15が除去されて導体(多芯導体)10が露出している。この露出した導体部分を、ここでは「導体露出部10(導体10と同符号)」と呼ぶ。この導体露出部10の先端側の所定範囲に対して、超音波溶着による単線化処理が行われており、その結果、断面略円形の多芯の芯線(導体)の先端側が断面長方形に成形されている。図15において、符号11で示す部分が単線化処理により断面長方形に成形された部分、符号12で示す部分が断面略円形の単線化処理が行われていない芯線部分、符号13で示す部分が断面円形から長方形に移行する断面変化部分である。断面変化部分13は、意図的な超音波溶着はなされていない。
【0004】
このように超音波溶着により単線化処理した断面長方形の部分11を、以下においては、圧着対象部位である「導体端末部11」と呼ぶ。実際には、断面円形から長方形に移行する断面変化部分13の先端側の範囲も長方形に近い断面になり、この部分の一部または全体が圧着範囲に含まれることもある。
【0005】
このように成形された導体端末部11を、圧着端子1の筒状の導体圧着バレル2の内部に挿入して、導体圧着バレル2の外側から圧着荷重Fを加えることで、圧着端子1の導体圧着バレル2と電線5の導体端末部11とが圧着接続される。
【0006】
ところで、超音波溶着により単線化処理化したアルミ電線の導体端末部11は、圧着荷重の印加方向に対する異方性を持つ場合がある。そのため、圧着時の荷重印加方向によっては、芯線と芯線の間の接合(溶着)が破壊されて、圧着部の電気抵抗が増加する可能性がある。
【0007】
例えば、図16に示す導体端末部11は、断面長方形の長辺11Bに垂直な方向の圧着荷重F1を加えたときには問題がないが、短辺11Aに垂直な方向の圧着荷重F2を加えたときには圧着性能が落ちるという異方性を持っている。具体的には、短辺11Aに垂直な方向の圧着荷重F2を加えたときに、芯線と芯線の間の接合(溶着)が破壊されて、圧着部の電気抵抗が増加するという性能低下を引き起こす場合がある。そこで、このような導体端末部11に対しては、断面長方形の長辺11Bに垂直な方向の圧着荷重F1を加えて圧着することが求められる。
【0008】
しかし、圧着端子1の導体圧着バレル2に導体端末部11を単純に挿入するだけでは、圧着方向に対する導体端末部11の軸周りの回転位置を要求通りに決めることはできない。仮に圧着端子1に対する導体端末部11の軸周りの回転位置を位置決めしたとしても、専用の治具等で仮保持しておかない限り、圧着機にセットするまでに回転位置や挿入位置がずれてしまい、結果的に圧着性能の悪化を招くことになる。
【0009】
特に、クローズドバレル、即ち円筒状の導体圧着バレルに断面長方形の導体端末部11を挿入して圧着する場合には、円筒形状の導体圧着バレルと長方形断面の導体端末部11との隙間が大きくなる。このため、圧着機に端子と電線をセットするまでに互いの位置関係が不安定になりやすい。従って、位置ずれが容易に起こりやすく、結果的に、高く安定した圧着性能が得られなくなる懸念がある。
【0010】
一方、特許文献1には、圧着端子の導体圧着バレルと電線の導体端末部との間に中間部材を介在させる圧着接続構造が開示されている。この圧着接続構造は、圧着端子と、圧着端子のバレル内に配置されるセレーション部材(中間部材)と、セレーション部材内に挿入されて圧着されるアルミニウム又はアルミニウム合金製の導体を有する電線と、を備えている。
【0011】
しかし、この特許文献1に記載の技術において、導体圧着バレルと電線の導体端末部との間に介在されるセレーション部材(中間部材)は、導体端末部の位置決め機能を持つものではないので、上述した問題の解決は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2021-190289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来では、電線の導体端末部を圧着端子の導体圧着バレルに挿入した際の圧着端子に対する導体端末部の軸周りの回転位置を簡単に規制することは行われていなかった。そのため、電線の導体端末部が圧着方向に対する異方性を持つ場合に、適切な方向からの圧着が行われずに圧着性能を損なうおそれがあった。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、適切な方向からの荷重印加による圧着が可能な圧着端子と電線の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る圧着端子と電線の接続構造は、下記を特徴としている。
筒状の導体圧着バレルを有する圧着端子と、
前記導体圧着バレルの内部に前記導体圧着バレルの開放端から挿入される圧着対象の導体端末部が、挿入方向から視て断面多角形に形成された電線と、
前記導体圧着バレルの内部に配置され、前記導体端末部が挿入される挿入口を有し、前記挿入口から挿入された前記導体端末部の軸周りの回転位置を規制するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材を間に挟んだ状態で前記圧着端子の導体圧着バレルが、前記電線の導体端末部に圧着されている、
圧着端子と電線の接続構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、適切な方向からの荷重印加による圧着が可能な圧着端子と電線の接続構造を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1実施形態を説明するための説明図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入する前の状態を示す図(図4のC-C矢視断面図に相当)と、併せて導体端末部の挿入方向の位置による断面形状の違い(X1-X1断面とX2-X2断面)を示す図である。
図2図2は、第1実施形態を説明するための説明図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入した後の圧着前の状態を示す図である。
図3図3は、図1のA-A矢視断面図である。
図4図4は、図2のB-B矢視断面図である。
図5図5は、第1実施形態に使用するガイド部材の構成を示す斜視図である。
図6図6は、図5のY1矢視図である。
図7図7は、図5のY2矢視図である。
図8図8は、図5のY3矢視図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態を説明するための説明図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入する前の状態を示す図と、併せて導体端末部の挿入方向の位置による断面形状の違い(X1-X1断面とX2-X2断面)を示す図である。
図10図10は、第2実施形態を説明するための断面図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入した後の圧着前の状態を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に使用するガイド部材の構成を示す斜視図である。
図12図12は、図11のY11矢視図である。
図13図13は、図11のY12矢視図である。
図14図14は、図11のY13矢視図である。
図15図15は、従来例を示す図で、圧着端子の円筒状の導体圧着バレルの内部に電線の導体端末部を挿入しようとしている状態を示す斜視図である。
図16図16は、超音波溶着による多芯導体の単線化処理により断面長方形に形成された導体端末部が圧着方向に対する異方性を持つことを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態を説明するための説明図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入する前の状態を示す図(図4のC-C矢視断面図に相当)である。この図1には併せて、導体端末部の挿入方向の位置による断面形状の違い(X1-X1断面とX2-X2断面)を示している。また、図2は、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入した後の圧着前の状態を示す図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1実施形態の圧着端子と電線の接続構造は、圧着端子1と、電線5と、ガイド部材20と、を備えている。圧着端子1は、銅または銅合金よりなる母材に表面処理として、例えば銀メッキ等を施したものであり、円筒形状の導体圧着バレル2を有している。導体圧着バレル2は、後方(図1における右方)から電線5の端末部が挿入される。なお、図1及び図2において、圧着端子1及びガイド部材20は断面を示し、電線5は側面を示す。導体圧着バレル2は、例えば、断面U字形状(半円筒状)のオープンバレルでもよいが、本例では、円筒形状のクローズドバレルの場合について説明する。
【0021】
<導体端末部>
電線5は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の多芯導体を有するアルミ電線である。この電線5の端末部は、図1に示すように、絶縁被覆15が除去されて導体(多芯導体)10が露出している。この露出した導体部分を、ここでは「導体露出部10(導体10と同符号)」と呼ぶ。この導体露出部10の先端側の所定範囲に対して、超音波溶着による単線化処理が施されている。単線化処理は、溶着により多数の芯線を接合して1本の仮想的な導体に成形する処理である。単線化処理の結果、軸方向から視て、即ち圧着端子1への挿入方向から視て、断面略円形の多芯の芯線(導体)の先端側が断面長方形(多角形)に成形されている。
【0022】
図1において、符号11で示す部分が、単線化処理により断面長方形に成形された部分、符号12で示す部分が、断面略円形の単線化処理が行われていない芯線部分、符号13で示す部分が、断面円形から長方形に移行する断面変化部分である。断面変化部分13は、意図的な超音波溶着はなされていない。導体端末部11と断面変化部分13の境界(線)は、電線5の軸方向に対して略垂直に設定されている。
【0023】
導体端末部11は、図16に示したように、短辺11Aと長辺11Bとを有する断面長方形に形成されている。ただし、長辺11Bの長さ>短辺11Aの長さである。この超音波溶着により断面長方形に形成された導体端末部11は、長辺11Bに垂直な方向に圧着した場合と、短辺11Aに垂直な方向に圧着した場合とで、圧着性能に差を生じる、圧着方向に対する異方性を有している。
【0024】
ここでは、断面長方形の長辺11Bに垂直な方向の圧着荷重F1を加えたときには、特に不都合を生じないが、短辺11Aに垂直な方向の圧着荷重F2を加えたときには、圧着性能が落ちるという異方性を持っている例について述べる。具体的には、短辺11Aに垂直な方向の圧着荷重F2を加えたときに、芯線と芯線の間の接合(溶着)が破壊されて、圧着部の電気抵抗が増加するという、性能低下(不都合)を引き起こす異方性を持っている。そこで、この導体端末部11に対しては、圧着性能を安定的に確保する上で、断面長方形の長辺11Bに垂直な方向の圧着荷重F1を加えて圧着することが要求される。
【0025】
また、ガイド部材20は、銅または銅合金よりなる母材に表面処理として、銀メッキや錫メッキ等を施したものである。このガイド部材20は、図1に示すように、圧着端子1の導体圧着バレル2の内部2aに主要部分(後述するバネ片21、21)が配置されるものであり、電線5の導体端末部11が挿入される挿入口23を有している。このガイド部材20は、図2に示すように、挿入口23から挿入された導体端末部11の軸周りの回転位置(向き)を規制する機能(その手段については後述)を有している。このガイド部材20を間に挟んだ状態で、導体圧着バレル2と導体端末部11とに、導体圧着バレル2の外側から圧着荷重Fが印加されることで、圧着端子1と電線5が圧着接続されることになる。
【0026】
圧着荷重Fの印加方向は、例えば、円筒状の導体圧着バレル2を、その軸線方向が水平となるように圧着機にセットした状態で上下方向に設定されている。一般的には、下型のアンビルにワーク(圧着端子と電線)をセットし、上型のクリンパを下方に移動させることで、導体圧着バレル2を電線5の導体端末部11に圧着接続することになるので、圧着荷重の印加方向が上下方向となる。
【0027】
<ガイド部材>
次に本実施形態で使用されるガイド部材20について詳しく説明する。
図5は、ガイド部材20の構成を示す斜視図、図6は、図5のY1矢視図(側面図)、図7は、図5のY2矢視図(上面図)、図8は、図5のY3矢視図(正面図)である。
【0028】
図1図2、及び図5図8に示すように、ガイド部材20は、圧着端子1の導体圧着バレル2の開放端3に当接する環状のフランジ22と、このフランジ22から、導体圧着バレル2の内周に沿って延びる一対のバネ片21、21と、を有している。一対のバネ片21、21は、後述するように、互いの位置のずれ(左右方向のずれ)はあるものの、板面を上下に向かい合わせた帯板バネとして形成されており、帯板の両側端面(幅方向の両側面)が互いに平行をなしている。
【0029】
フランジ22には、挿入口23を構成する略四角形の開口が設けられている。挿入口23は、主としてフランジ22の開口によって規定されるが、対向して配置された一対のバネ片21、21の入口側、即ちフランジ22に近い側の間隔によっても規定される。
【0030】
つまり、フランジ22の開口がいくら大きくても、一対のバネ片21、21の入口側の間隔がそれよりも小さければ、挿入口23の大きさは、フランジ22の開口より奥に位置する一対のバネ片21、21によって規定される。従って、一対のバネ片21、21の入口側の部分が、挿入口23を実質的に構成していることになる。言い換えれば、電線5の導体端末部11を圧着端子1の導体圧着バレル2の内部2aに挿入する際に、挿入経路の断面サイズを規制する部分、即ちフランジ22の開口の周縁部やバネ片21の入口側の部分によって、挿入口23が規定されている。
【0031】
一対のバネ片21、21は、フランジ22を導体圧着バレル2の開放端3に当接させたときに、導体圧着バレル2の内部2aに導体圧着バレル2の開放端3から挿入される部分である。これらのバネ片21、21は、フランジ22を形成する板金の打ち抜き加工(プレス加工)によって形成されており、四角形の開口(挿入口23)の口縁部から折れ曲がって、導体圧着バレル2の内部2aに向かって延びている。
【0032】
対向する一対のバネ片21、21は、フランジ22の開口(挿入口23)の内側の領域の板金から打ち抜かれるものであることと所定の長さが必要なものである。このことから、一対のバネ片21、21は、互いに図8中の左右方向に位置をずらして、四角形の開口(挿入口23)の上側と下側の口縁部からそれぞれ延設されている。なお、符号26で示す部分は、帯板状のバネ片21を打ち抜く際に残った部分であり、必ずしも必要な部分ではないが、例えば、挿入口23のサイズを規定する部分として、本例のように機能させることができる。この打ち抜く際に残った部分26や開口(挿入口23)の口縁部やバネ片21、21の入口側の部分などによって、挿入口23の大きさが規定される。電線5の導体端末部11に対する挿入口23のサイズについては後述する。
【0033】
各バネ片21は、上述のようにフランジ22の開口(挿入口23)の口縁部から折れ曲がって導体圧着バレル2の内部2aに延びているが、延在方向の途中の2箇所で、板厚方向である内外方(図1中の上下方向)に向けてL屈曲している。即ち、フランジ22から出て最初の部分は、フランジ22に対して垂直よりやや内側に斜めに直線的に延びており、ある程度進んだ位置で、反対の外向きに屈曲した後に斜めに直線的に延びている。このフランジ22側(基端側)に位置する第1の屈曲点21bは、挿入口23の内側に向けて凸の接触点として構成されており、挿入口23から挿入された導体端末部11の外周の平坦面(長辺11Bに相当する部分)に弾性的に押圧接触する部分である。この第1の屈曲点21bは、帯板を折り曲げた部分であり、その折り曲げ線(稜線)はフランジ22の板面に対して平行になっている。
【0034】
この第1の屈曲点21b、即ち内側に向けて凸の接触点は、最終的には図2に示すように、電線5の導体端末部11と断面変化部分13との境界に押圧接触する。この境界の位置で導体10の断面は、導体端末部11と同じ長方形である。従って、バネ片21の第1の屈曲点21bは、後述する寸法条件により、導体端末部11と断面変化部分13との境界位置の断面長方形の長辺11B(図16参照)に押圧接触することになる。また、フランジ22から屈曲しやや内側に斜めに延びて第1の屈曲点21bに至る第1の直線部分21cは、電線5の導体10の断面変化部分13に位置的に対応する部分である。この第1の直線部分21cは、図2に示すように、第1の屈曲点21bが電線5の導体端末部11と断面変化部分13との境界に押圧接触しているときに、断面変化部分13の外周面に当接あるいは多少離間するように設定されている。
【0035】
また、第1の屈曲点21bから先端側は、外側に斜めに直線的に所定長さだけ延びた位置で、反対の内向きに屈曲している。このフランジ22から離れた位置にある第2の屈曲点21aは、外側に向けて凸の接触点として構成されており、圧着端子1の導体圧着バレル2の内部2aにバネ片21が挿入された状態で、導体圧着バレル2の内壁に弾性的に押圧接触する部分である。第1の屈曲点21bから第2の屈曲点21aまでの外側に斜めに直線的に延びた部分(第2の直線部分21dという)は、第2の屈曲点21aを導体圧着バレル2の内壁に押圧接触させる際のバネ力を主に発生する部分である。なお、第2の屈曲点21aより先の部分は、他の部材と干渉しない寸法の自由端となっている。
【0036】
ガイド部材20は、一対のバネ片21が導体圧着バレル2の内部2aに挿入された際に、図1に示すように、バネ片21、21の第2の屈曲点(外側に凸の接触点)21aが、導体圧着バレル2の内壁に弾性的に押圧接触する。これにより、ガイド部材20の一対のバネ片21、21は、導体圧着バレル2の内部2aにおいて径方向の定位置に保持される。この状態で、一対のバネ片21、21の上下の第1の屈曲点21b間の側方から見た距離dが、導体端末部11の短辺11A(図16参照)の長さaよりも小さくなるように、一対のバネ片21、21が形成されている。そして、一対のバネ片21、21の間の空間、即ち第1の屈曲点21b、21b間のスペースが、導体端末部11の挿入経路として確保されている。
【0037】
次にガイド部材20の挿入口23のサイズについて述べる。
図3は、図1のA-A矢視断面図である。
ガイド部材20の挿入口23のサイズは、圧着性能を有利にする向きでのみ断面長方形の導体端末部11の挿入を可能とし、且つ、それ以外の向きでの挿入を不可とするように設定されている。ここで、「圧着性能を有利にする向き」とは、図3に示すように、断面長方形の導体端末部11の長辺11Bに相当する外周平坦面に対し垂直な方向に圧着荷重を加える向きである。本例においては、上下方向が圧着荷重の印加方向であるから(図2参照)、長辺11Bが上下に位置し、短辺11Aが左右に位置する向きに、導体端末部11の軸周りの回転位置を設定する必要がある。
【0038】
そのために、略長方形状の挿入口23は、その高さ寸法cを、導体端末部11の断面長方形の短辺11Aの長さaよりも大きく、長辺11Bの長さbよりも小さく設定している。それにより、導体端末部11の挿入時の向き(軸周りの回転位置)を規制できるようにしている。また、ガイド部材20のフランジ22の上下外周縁に、圧着方向を明示するための切欠28、28を設け、これらの切欠28、28の位置が上下となるように、圧着機にワーク(圧着端子1と電線5)をセットする際の方向を明示している。従って、圧着機へのワークの装着方向を、ガイド部材20の向きで知ることができる。なお、切欠28の代わりに、単なる矢印マーク等の目印を付けてもよい。
【0039】
次に圧着する前の準備について説明する。
前述したように、ガイド部材20は、電線5の導体端末部11を挿入する前に、圧着端子1にセットしておく。即ち、図1に示すように、ガイド部材20の一対のバネ片21を、導体圧着バレル2の内部2aに挿入し、ガイド部材20のフランジ22を、導体圧着バレル2の開放端3に当接させておく。こうすることで、前述したように、ガイド部材20のバネ片21、21は、第2の屈曲点21aが導体圧着バレル2の内壁に押圧接触することで、自身のバネ力によって、導体圧着バレル2の内部2aの所定位置に保持される。この状態で、図2に示すように、ガイド部材20の上下一対のバネ片21、21間のスペースに電線5の導体端末部11を挿入する。
【0040】
挿入する際には、ガイド部材20の挿入口23が、挿入される導体端末部11の向き、即ち軸周りの回転位置を規制する。それにより、断面長方形の導体端末部11の長辺11Bに相当する外周平坦面が上下に位置するように向きが規制されて、導体端末部11が、上下のバネ片21、21の間に挿入される。従って、導体端末部11は、長辺11Bに相当する上下の外周平坦面が、上下一対のバネ片21、21の第1の屈曲点21bに摺接して、バネ片21、21を弾性変形させながら奥へと進入する。
【0041】
挿入深さが適正値に達する位置で、上下一対のバネ片21、21の第1の屈曲点21bに、電線5の導体端末部11と断面変化部分13の境界部分が係合する。この係合により、それ以上挿入しようとしても、挿入に従って断面寸法の拡大する断面変化部分13が第1の屈曲点21bに摺動することになるため、急激に挿入抵抗が増大し挿入不可となる。従って、挿入不可となる位置まで導体端末部11を挿入することによって、導体端末部11を適正深さまで挿入したことを検知することができる。このように、第1の屈曲点21bが電線5の導体10の断面変化部分13に係合することによって、導体端末部11の挿入深さの規制を実現するので、第1の屈曲点21bが挿入深さを知らせるための「係合部」の機能を果たす。
【0042】
圧着端子1の導体圧着バレル2への電線5の導体端末部11の挿入が完了した状態においては、上下のバネ片21、21の第2の屈曲点21aが、圧着端子1の導体圧着バレル2の内壁に弾性的に押圧接触する。また、この挿入完了状態において、上下のバネ片21、21の第1の屈曲点21bが、電線5の導体端末部11の長辺11Bに相当する平坦面、厳密には、導体端末部11と断面変化部分13の境界部分の長辺に相当する部分、に弾性的に押圧接触する。特にこの状態での弾性的な押圧接触力は、導体圧着バレル2の内壁と導体端末部11の外周との間の狭い隙間で弾性変形させられた一対のバネ片21、21の強い弾性反力によるものとなるので、大きな力となる。従って、この上下のバネ片21、21の大きなバネ力によって、導体端末部11が仮保持され、その状態が維持されることになる。
【0043】
図4は、図2のB-B矢視断面図である。
この図4に示すように、上下一対のバネ片21、21は、自身のバネ力により、上下から電線5の導体端末部11を挟持することになる。そのため、挿入時の向きを維持した状態で、導体端末部11が仮保持されることになる。従って、圧着機へそのままワーク(圧着端子1及び電線5の端末部)を装着するだけで、位置ずれを抑制することができ、治具等で位置合わせする手間や時間を減らすことができる。なお、圧着機にワークをセットする際の圧着すべき方向の確認は、ガイド部材20のフランジ22の切欠28の位置で行うことができる。
【0044】
図2に示す姿勢で圧着機にセットされたワークは、その後の上下方向からの圧着荷重の印加により、適正な向きを保った状態で圧着されて、本実施形態の圧着端子1と電線5の接続構造が完成する。
【0045】
このように、圧着端子1と電線5を適正な向き(軸周りの回転位置)に容易に位置決めした上で圧着を行うことができるため、導体端末部11が異方性を持つ場合にも、安定した圧着性能の向上が図れる。即ち、アルミ芯線同士の接合強度が高くなる方向での圧着が可能となり、この結果、電気抵抗の増加を抑制できるようになる。
【0046】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態を説明するための説明図で、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入する前の状態を示す図である。この図9には併せて、導体端末部の挿入方向の位置による断面形状の違い(X1-X1断面とX2-X2断面)を示してある。また、図10は、圧着端子の導体圧着バレルに電線の導体端末部を挿入した後の圧着前の状態を示す図である。
【0047】
図9及び図10に示すように、第2実施形態の圧着端子と電線の接続構造は、圧着端子1と、電線5と、ガイド部材70と、を備えている。圧着端子1と電線5の構成は第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、図9及び図10において、圧着端子1及びガイド部材70は断面を示し、電線5は側面を示す。
【0048】
ガイド部材70は、銅または銅合金よりなる母材に表面処理として、銀メッキや錫メッキ等を施したものである。このガイド部材70は、図1及び図2に示すように、圧着端子1の導体圧着バレル2の内部2aに主要部分(後述するバネ片71、71)が配置されるものであり、電線5の導体端末部11が挿入される挿入口76を有している。このガイド部材70は、図10に示すように、挿入口76から挿入された導体端末部11の軸周りの回転位置を規制する機能(その手段については後述)を有している。このガイド部材70を間に挟んだ状態で、圧着端子1の導体圧着バレル2と電線5の導体端末部11とが、導体圧着バレル2の外側から圧着荷重Fを印加することで、圧着接続されることになる。
【0049】
<ガイド部材>
次に本実施形態で使用されるガイド部材70について詳しく説明する。
図11は、ガイド部材70の構成を示す斜視図、図12は、図11のY11矢視図(側面図)、図13は、図11のY12矢視図(上面図)、図14は、図11のY13矢視図(正面図)である。
【0050】
図9図10、及び図11図14に示すように、このガイド部材70は、帯板状の一対のバネ片71、71を有している。一対のバネ片71、71は、互いに間隔をおいて平行に配され、導体圧着バレル2に対する挿入方向の基端側で挿入口76を形成している。また、一対のバネ片71、71は、先端側の端部同士が連結部72により連結されてU字状に一体化されている。なお、挿入口76は、電線5の導体端末部11を一対のバネ片71、71の間に挿入するための入口であり、一対のバネ片71、71の基端間のスペースによって規定されている。
【0051】
更に各バネ片71、71の基端部には、外向きに拡がるように延長アーム73、73が延設されている。また、各バネ片71、71の先端側には、導体圧着バレル2の内壁に弾性的に押圧接触する片持ちの補助バネ片75が設けられている。補助バネ片75は、バネ片71を構成する板金の一部を外方に向けて切り起こすことで形成されている。
【0052】
図9に示すように、ガイド部材70は、連結部72を先端側にして一対のバネ片71、71を導体圧着バレル2の内部に挿入し、その状態で、各バネ片71、71の補助バネ片75、75が導体圧着バレル2の内壁に弾性的に押圧接触することで、定位置に仮保持される。その際の押圧接触力は、補助バネ片75、75自身のバネ力と、連結部72でU字状に一体化された一対のバネ片71、71のバネ力とによる。このように一対のバネ片71、71が導体圧着バレル2の内部2aの定位置に保持された状態で、挿入口76を構成する一対のバネ片71、71の基端側の間隔c、つまり挿入口76の高さcは、以下のように設定されている。即ち、挿入口76の高さcは、電線5の導体端末部11の断面長方形の長辺11Bの長さbよりも小さく、短辺11Aの長さaよりも大きくなるように設定されている。
【0053】
即ち、「a<c<b」である。こうすることで、電線5の導体端末部11は、長辺11Bを上下に向け、短辺11Aを左右に向けた方向(軸周りの回転位置)でないと、上下一対のバネ片71、71の間に挿入できなくなる。このように、挿入口76のサイズにより、導体端末部11の挿入の向きを規制している。
【0054】
また、外に拡がった形状の一対の延長アーム73、73は、一対のバネ片71、71が導体圧着バレル2の内部2aに挿入されたときに、図9に示すように、導体圧着バレル2の開放端3から外に張り出す部分である。一対の延長アーム73、73は、挿入口76からバネ片71、71間に電線5の導体端末部11が挿入された際に、図10に示すように、その挿入動作と共に導体圧着バレル2の内部2aに引き込まれる部分である。
【0055】
即ち、挿入口76からバネ片71、71間に挿入された導体端末部11の先端が、一対のバネ片71、71を連結する先端側の連結部72に突き当たると、バネ片71、71が導体端末部11に押されて奥に移動する。その動きにより、一対の延長アーム73、73が導体圧着バレル2の開放端3に摺接しながら、導体圧着バレル2の内部2aに引き込まれる。そして、引き込まれるに従って、対向する延長アーム73、73の間隔が窄まることで、一対のバネ片71、71の基端側が導体端末部11に押圧接触することになる。
【0056】
また、延長アーム73、73の先端には、図10に示すように、係合部73a、73aが設けられている。係合部73a、73aは、電線5の導体端末部11が圧着端子1の導体圧着バレル2に対して適正深さまで挿入されたときに、導体圧着バレル2の開放端3に係合する。係合部73a、73aが導体圧着バレル2の開放端3に係合することで、挿入動作に伴う延長アーム73、73の導体圧着バレル2の内部2aへの引き込まれ動作を阻止する。
【0057】
次に圧着する前の準備について説明する。
前述したように、ガイド部材70は、電線5の導体端末部11を挿入する前に、圧着端子1にセットしておく。即ち、図9に示すように、連結部72を先端側に向けてガイド部材70の一対のバネ片71、71を、導体圧着バレル2の内部2aに挿入する。挿入するに従って、ガイド部材70の補助バネ片75が導体圧着バレル2の内壁に押圧接触することで、自身のバネ力によって、一対のバネ片71、71が導体圧着バレル2の内部2aの所定位置に保持される。この状態で、図10に示すように、挿入口76からガイド部材70の上下一対のバネ片71、71間のスペースに電線5の導体端末部11を挿入する。
【0058】
挿入する際には、ガイド部材70の挿入口76が、挿入される導体端末部11の向き、即ち軸周りの回転位置を規制する。それにより、断面長方形の導体端末部11の長辺11Bに相当する外周平坦面が上下に位置するように向きが規制されて、導体端末部11が、上下のバネ片71、71の間に挿入される。挿入された導体端末部11の先端が一対のバネ片71、71を連結する先端側の連結部72に突き当たると、更なる挿入に従いバネ片71、71が導体端末部11に押されて奥に移動する。その動きにより、一対の延長アーム73、73が導体圧着バレル2の開放端3に摺接しながら、導体圧着バレル2の内部2aに引き込まれてゆく。そして、引き込まれるに従って、対向する延長アーム73、73の間隔が窄まることで、一対のバネ片71、71の基端側が導体端末部11に押圧接触することになる。
【0059】
電線5の導体端末部11が圧着端子1の導体圧着バレル2に対して適正深さまで挿入されたときに、延長アーム73、73の先端の係合部73a、73aが導体圧着バレル2の開放端3に係合する。この係合により、挿入動作に伴う延長アーム73、73の引き込まれ動作が阻止される。従って、それ以上の挿入が不可となることで、導体端末部11を適正深さまで挿入したことを検知することができる。なお、外に張り出していた延長アーム73、73が徐々に導体圧着バレル2の内部2aに引き込まれていき、図10に示すように、係合部73a、73aが外から見えにくくなることで、挿入深さが適正値に達したと知ることもできる。
【0060】
圧着端子1の導体圧着バレル2への電線5の導体端末部11の挿入が完了した状態においては、上下のバネ片71、71が、圧着端子1の導体圧着バレル2の内壁と、電線5の導体端末部11の長辺11Bに相当する平坦面とに弾性的に押圧接触する。従って、この上下のバネ片71、71のバネ力によって、導体端末部11が仮保持され、その状態が維持されることになる。
【0061】
従って、圧着機へそのままワーク(圧着端子1及び電線5の端末部)を装着するだけで、位置ずれを抑制することができ、治具等で位置合わせする手間や時間を減らすことができる。なお、圧着機にワークをセットする際の圧着すべき方向の確認は、ガイド部材70の延長アーム73、73の位置で行うことができる。
【0062】
図10に示す姿勢で圧着機にセットされたワークは、その後の上下方向からの圧着荷重の印加により、適正な向きを保った状態で圧着されて、本実施形態の圧着端子1と電線5の接続構造が完成する。
【0063】
このように、圧着端子1と電線5を適正な向き(軸周りの回転位置)に容易に位置決めした上で圧着を行うことができるため、導体端末部11が異方性を持つ場合にも、安定した圧着性能の向上が図れる。即ち、アルミ芯線同士の接合強度が高くなる方向での圧着が可能となり、そうすることで電気抵抗の増加を抑制できるようになる。
【0064】
なお、上記第1、第2実施形態では、本発明をアルミニウム又はアルミニウム合金製の導体を有する電線(アルミ電線)に適用する場合について述べたが、本発明は、それ以外の金属材料の導体を用いた電線に適用してもよい。
【0065】
また、導体端末部11の断面が長方形の場合を説明したが、それ以外の多角形の場合にも本発明は適用可能である。
【0066】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る圧着端子と電線の接続構造の特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 筒状の導体圧着バレル(2)を有する圧着端子(1)と、
前記導体圧着バレルの内部に前記導体圧着バレルの開放端(3)から挿入される圧着対象の導体端末部(11)が、挿入方向から視て断面多角形に形成された電線(5)と、
前記導体圧着バレルの内部(2a)に配置され、前記導体端末部が挿入される挿入口(23、76)を有し、前記挿入口から挿入された前記導体端末部の軸周りの回転位置を規制するガイド部材(20、70)と、を備え、
前記ガイド部材を間に挟んだ状態で前記圧着端子の導体圧着バレルが、前記電線の導体端末部に圧着されている、
圧着端子と電線の接続構造。
【0067】
上記[1]の構成の圧着端子と電線の接続構造によれば、圧着端子(1)の導体圧着バレル(2)の内部(2a)に挿入したガイド部材(20、70)が、導体圧着バレルに挿入される断面多角形の電線(5)の導体端末部(11)の軸周りの回転位置(向き)を規制する。よって、上記[1]の構成によれば、適切な方向からの荷重印加による圧着が可能な圧着端子と電線の接続構造を提供できる。そのため、導体端末部が異方性を持つ場合にも、圧着性能上において有利な方向となるように、導体端末部に対する圧着方向を定めることができ、その結果、圧着性能の向上を図ることが可能になる。また、圧着端子に対する電線の軸周りの回転位置を適正位置に予め固定した状態で、圧着機に圧着対象のワークを装着できるようになるため、特別な治具も要らず、圧着端子と電線の位置決め時間の短縮が図れる。
【0068】
[2] 前記電線(5)が、アルミニウム又はアルミニウム合金製の多芯の導体(10)を有するものであり、
前記導体端末部(11)が、超音波溶着による芯線の単線化処理により、長辺(11B)と短辺(11A)を有する断面長方形に形成され、且つ、前記長辺に垂直な方向に圧着した場合と前記短辺に垂直な方向に圧着した場合とで圧着性能に差を生じる、圧着方向に対する異方性を有しており、
前記ガイド部材(20、70)の挿入口(23、76)の形状及びサイズが、前記圧着性能を有利にする向きでのみ前記断面長方形の導体端末部の挿入を可能とし、且つ、前記向き以外の向きでの挿入を不可とするように設定されている、
上記[1]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0069】
上記[2]の構成によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金製の多芯の導体(10)を超音波溶着により単線化処理した場合、単線化処理した導体部分が圧着方向に対して異方性を持つようになる。ここで、ガイド部材(20、70)の挿入口(23、76)が、予め圧着性能を有利にする向きでのみ電線の導体端末部(11)の挿入を可能とし、それ以外の向きでの挿入を不可とするように設定されている。よって、導体端末部を挿入口に挿入するだけで、導体端末部の向き(軸周り方向の回転位置)が圧着性能を有利にする向きに設定されることになる。
【0070】
例えば、導体端末部の長方形断面の長辺(11B)に垂直な方向に圧着した場合に短辺(11A)に垂直な方向に圧着した場合よりも圧着性能が有利になる例を想定する。この場合、長辺に垂直な方向が圧着方向となるように、圧着端子に対して電線の導体端末部を軸周りに位置決めするのがよい。そこで、ガイド部材(20、70)の挿入口(23、76)が、電線の導体端末部が挿入される際の軸周りの位置(方向)を規制して導体端末部の長辺に垂直な方向が圧着方向となる向きでのみ導体端末部の挿入を許すように設定しておく。このように設定することにより、導体端末部をガイド部材の挿入口から挿入するという操作を行うだけで、導体端末部の軸周りの回転位置(向き)が圧着性能を有利にする向きで、電線の導体端末部が圧着端子の導体圧着バレルに挿入位置決めされることになる。
【0071】
従って、圧着端子と電線を適正な向き(軸周りの回転位置)に容易に位置決めした上で圧着を行うことができるようになり、安定した圧着性能の向上が図れる。例えば、アルミ芯線同士の接合強度が高くなる方向での圧着が可能となり、そうすることで電気抵抗の増加を抑制できるようになる。
【0072】
[3] 前記ガイド部材(20、70)に、前記導体圧着バレル(2)の内部(2a)に前記開放端(3)から挿入されるバネ片(21、71)が設けられており、
前記バネ片が前記導体圧着バレルの内壁に沿って挿入された状態で、前記ガイド部材の挿入口(23、76)から前記電線の導体端末部(11)が挿入された際に、前記バネ片が、前記導体圧着バレルの内壁と前記電線の導体端末部の外周とに弾性的に押圧接触して、前記導体端末部の軸周りの位置の規制を維持する、
上記[1]又は[2]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0073】
上記[3]の構成によれば、ガイド部材(20、70)のバネ片(21、71)の弾性力によって、断面長方形に形成された導体端末部(11)の軸周り回転位置の規制を維持することができる。従って、圧着端子(1)と電線(5)を適正な向き(軸周りの回転位置)に位置決めした状態を維持しながら圧着を行うことができるようになり、安定した圧着性能の向上が図れる。また、バネ片の弾性力によって、圧着前において圧着端子と電線とを治具を使わずに互いに仮固定できるようになる。そのため、圧着機へワークを装着する際の位置ずれを容易に抑制することができ、製造時間の短縮が可能となる。
【0074】
[4] 前記ガイド部材(20)が、
前記挿入口(23)を構成する開口を有し、かつ、前記圧着端子の導体圧着バレル(2)の開放端(3)に当接する環状のフランジ(22)と、
前記フランジから前記導体圧着バレル(2)の内周に沿って延び、前記導体圧着バレルの内部(2a)に挿入された状態で、前記ガイド部材の挿入口から前記電線の導体端末部が挿入された際に、前記導体端末部(11)を挟んで対向する一対の前記バネ片(21)と、
を有する、
上記[3]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0075】
上記[4]の構成によれば、ガイド部材(20)は、一対のバネ片(21)が導体圧着バレル(2)の内壁に弾性接触することで、導体圧着バレル内の適正位置に保持される。その状態で、ガイド部材のフランジ(22)の挿入口(23)に電線(5)の導体端末部(11)を挿入すると、一対のバネ片が変形しながら、断面長方形の導体端末部の外周の平坦面(例えば、長辺に相当する平坦面)に押圧接触し、それにより、電線の導体端末部を軸周りの回転位置を規制しつつ仮保持する。従って、そのままの状態で圧着機へワークを装着することができ、スムーズな圧着が可能となる。また、ガイド部材のフランジに目印を付けておくことで、導体圧着バレル内に挿入した導体端末部の向きが外から見て分かるので、適正な方向から圧着を行うことができる。
【0076】
[5] 前記各バネ片(21)に、前記電線の導体端末部(11)が前記圧着端子の導体圧着バレル(2)に対して適正深さまで挿入されたときに、前記導体端末部の断面変化部(13)に当接して挿入抵抗を増す係合部(第1の屈曲点21b)が設けられている、
上記[3]又は[4]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0077】
上記[5]の構成によれば、圧着端子の導体圧着バレル(2)に導体端末部(11)を挿入する際の抵抗が急に増したこと(例えば、挿入抵抗が増してそれ以上挿入できないこと)で、導体圧着バレルに対する導体端末部の挿入が適正深さまで行われたと知ることができる。従って、端子と電線を適正な位置関係に仮保持した状態で圧着機にワークを装着できるため、圧着端子と電線の位置決め時間の短縮が図れる。
【0078】
[6] 前記ガイド部材(70)が、
互いに間隔をおいて平行に配され、前記導体圧着バレル(2)に対する挿入方向の基端側で前記挿入口(76)を形成すると共に、先端側の端部同士が連結部(72)により連結されて一体化された一対の板バネ状の前記バネ片(71)と、
前記各バネ片の基端部に外向きに拡がるように延設され、前記バネ片が前記導体圧着バレルの内部に挿入された状態で、前記挿入口から前記一対のバネ片間に前記電線の導体端末部が挿入された際に、その挿入動作と共に前記導体圧着バレルの内部に引き込まれ、引き込まれるに従って対向する部分同士の間隔が窄まることで、前記一対のバネ片の基端側を前記導体端末部に押圧接触させる一対の延長アーム(73)と、
前記各バネ片の先端側に設けられ、前記導体圧着バレルの内壁に弾性的に押圧接触する補助バネ片(75)と、を備えた、
上記[3]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0079】
上記[6]の構成によれば、ガイド部材(70)は、一対のバネ片(71)に設けた補助バネ片(75)が導体圧着バレル(2)の内壁に弾性接触することで、導体圧着バレル内の適正位置に保持される。その状態で、ガイド部材の一対のバネ片間の挿入口(76)に電線の導体端末部(11)を挿入すると、その挿入動作に伴って延長アーム(73)が導体圧着バレルの内部に引き込まれる。そして、引き込まれるに従って、対向する一対の延長アーム同士の間隔が窄まることで、一対のバネ片の基端側が導体端末部に押圧接触し、それにより、電線の導体端末部が軸周りの回転位置を規制されつつ圧着端子に仮保持される。そのため、そのままの状態で圧着機へワークを装着することができ、スムーズな圧着が可能となる。また、延長アームの位置を外から確認することで、導体圧着バレル内に挿入した導体端末部の向きが分かるので、適正な方向から圧着を行うことができる。
【0080】
[7] 前記延長アーム(73)の先端に、
前記電線の導体端末部(11)が前記圧着端子の導体圧着バレル(2)に対して適正深さまで挿入されたときに、前記導体圧着バレルの開放端(3)に係合することで、前記挿入動作に伴う前記延長アームの前記導体圧着バレルの内部への引き込まれ動作を阻止する係合部(73a)が設けられている、
上記[6]に記載の圧着端子と電線の接続構造。
【0081】
上記[7]の構成によれば、圧着端子の導体圧着バレル(2)に対し導体端末部(11)が適正深さまで挿入されると、延長アーム(73)の先端に設けた係合部(73a)が導体圧着バレルの開放端(3)に係合し、それ以上の挿入を規制する。従って、そのことによって、導体圧着バレルに対し導体端末部が適正深さまで挿入されたと知ることができる。従って、端子と電線を適正な位置関係に仮保持した状態で圧着機にワークを装着できるため、圧着端子と電線の位置決め時間の短縮が図れる。
【符号の説明】
【0082】
1 圧着端子
2 導体圧着バレル
2a 内部
3 開放端
5 電線
10 導体
11 導体端末部
11A 短辺
11B 長辺
13 断面変化部
20 ガイド部材
21 バネ片
21b 第1の屈曲点(係合部)
22 フランジ
23 挿入口
70 ガイド部材
71 バネ片
72 連結部
73 延長アーム
73a 係合部
75 補助バネ片
76 挿入口
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