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特開2024-118176プリント配線基板の不良発生要因の分類方法および分類システム
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  • 特開-プリント配線基板の不良発生要因の分類方法および分類システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118176
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】プリント配線基板の不良発生要因の分類方法および分類システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240823BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024458
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓司
(72)【発明者】
【氏名】伊野 英恵
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 政弘
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】AIの技術を用いて画像情報と他の種類の情報とを統合的に処理することでプリント配線基板の不良発生要因を適切に分類する。
【解決手段】プリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にして複数組収集したデータベースを作成することと、データベース内の複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を分類器に入力し、複数組の各々における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力することを分類器に教師あり学習で学習させることと、学習させた分類器に、分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を入力し、その組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類させてその分類結果を出力させることと、を含むプリント配線基板の不良発生要因の分類方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にして複数組収集したデータベースを作成することと、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を分類器に入力し、前記複数組の各々の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力することを前記分類器に教師あり学習で学習させることと、
前記学習させた分類器に、分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を入力し、前記入力した画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類させてその分類結果を出力させることと、
を含む、プリント配線基板の不良発生要因の分類方法。
【請求項2】
前記分類器は前記不良が回路不良の場合に、その回路不良を、
先ず、複数種類の不良モードに分類することと、
次いで、前記複数種類の不良モードの各々に固有の不良発生要因に分類することと、
を含む、請求項1記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法。
【請求項3】
前記分類器は不良発生要因の予測確率が所定値未満の場合を「分からない」に分類すること、
を含む、請求項1記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法。
【請求項4】
前記データベースが収集する複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組は、前記分類器に入力した前記分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組にその入力に対して前記分類器が出力した不良発生要因の分類結果のテキスト情報を加えたものを含む、
請求項1記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法。
【請求項5】
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を複数の前記分類器にそれぞれ入力し、それらの分類器に別個に前記学習をさせることと、
前記分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を、前記別個に学習させた複数の分類器にそれぞれ入力し、それら複数の分類器にそれぞれ出力させた不良発生要因の分類結果から総合処理器に不良発生要因を総合的に分類させてその分類結果を出力させることと、
を含む、請求項1記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法。
【請求項6】
プリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にして複数組収集したデータベースと、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を入力され、前記複数組の各々の不良個所の画像情報およびテキスト情報における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力することを教師あり学習で学習しており、分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を入力されると、その入力した画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力する分類器と、
を備えてなる、プリント配線基板の不良発生要因の分類システム。
【請求項7】
前記分類器は前記不良が回路不良の場合に、その回路不良を、
先ず、複数種類の不良モードに分類し、
次いで、前記複数種類の不良モードの各々に固有の不良発生要因に分類する、
請求項6記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類システム。
【請求項8】
前記分類器は不良発生要因の予測確率が所定値未満の場合を「分からない」に分類する、請求項6記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類システム。
【請求項9】
前記データベースが収集する複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組は、前記分類器に入力した前記分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組にその入力に対して前記分類器が出力した不良発生要因の分類結果のテキスト情報を加えたものを含む、
請求項6記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類システム。
【請求項10】
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組をそれぞれ入力し、別個に前記学習をしている複数の前記分類器と、
前記分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組をそれぞれ入力された前記複数の分類器がそれぞれ出力した不良発生要因の分類結果から不良発生要因を総合的に分類してその分類結果を出力する総合処理器と、
を備えてなる、請求項6記載のプリント配線基板の不良発生要因の分類システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の不良発生要因を分類する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の不良発生要因を分類する際には従来、例えば特許文献1記載の画像分類による不良検出方法が用いられている。この方法では、プリント配線基板を撮像装置で撮像する。次いで、コンピュータが実行するソフトウェアで構築した、各々所定の一つの属性に特化した学習済みの複数の分類器でニューラルネットワーク等を用いて、その撮像したプリント配線基板の画像の色彩、種類、存在領域等の属性を分類する。そしてその分類した属性のうち、良品の画像中に不良品が紛れ込みやすい特定の属性の画像をさらに解析して、不良品の検出漏れを防止する。
【0003】
この不良検出方法では、各分類器の学習の際に、あらかじめ準備した多数の画像の各々にユーザがそれぞれ一つの属性を対応付けて教示情報として入力し、その画像と教示情報とに参照画像、差分画像、マスク画像を加えて教師データセットとする。そして各分類器に、その特化した属性について教師データセットから特徴量を取得させる。また、撮像した画像の属性を分類する際に、撮像した画像について同様にして作成した分類対象データセットから、各分類器にその特化した属性についての特徴量を取得させ、その特徴量から不良品の画像を分類する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-148678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこの従来の方法は、複数の分類器の各々が、画像情報に関連する一つの属性に特化しているため、画像情報と他の種類の情報とを統合的に処理して不良発生要因を適切に分類することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、不良発生要因の分類にAI(人工知能)の技術を用いて複数種類の情報を統合的に処理することで、上記従来の方法の課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法は、
プリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にして複数組収集したデータベースを作成することと、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を分類器に入力し、前記複数組の各々の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力することを前記分類器に教師あり学習で学習させることと、
前記学習させた分類器に、分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を入力し、前記入力した画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類させてその分類結果を出力させることと、
を含んでいる。
【0008】
なお、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法においては、前記分類器は前記不良が回路不良の場合に、その回路不良を、先ず、例えばAモードとBモードとCモードとの3種類等の複数種類の不良モードに分類し、次いで、前記複数種類の不良モードの各々に固有の不良発生要因に分類してもよい。
【0009】
また、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法においては、前記分類器は不良発生要因の予測確率が所定値未満の場合を「分からない」に分類してもよい。
【0010】
さらに、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法においては、前記データベースが収集する複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組は、前記分類器に入力した前記分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組にその入力に対して前記分類器が出力した不良発生要因の分類結果のテキスト情報を加えたものを含んでもよい。
【0011】
さらに、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法においては、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を複数の前記分類器にそれぞれ入力し、それらの分類器に別個に前記学習をさせることと、
前記分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を、前記別個に学習させた複数の分類器にそれぞれ入力し、それら複数の分類器にそれぞれ出力させた不良発生要因の分類結果から総合処理器に不良発生要因を総合的に分類させてその分類結果を出力させることと、
を含んでもよい。
【0012】
一方、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムは、
プリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にして複数組収集したデータベースと、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組を入力され、前記複数組の各々の不良個所の画像情報およびテキスト情報における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力することを教師あり学習で学習しており、分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を入力されると、その入力した画像情報およびテキスト情報の組における特徴量の組み合わせに基づき不良発生要因を分類してその分類結果を出力する分類器と、
を備えている。
【0013】
なお、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおいては、前記分類器は前記不良が回路不良の場合に、その回路不良を、先ず、例えばAモードとBモードとCモードとの3種類等の複数種類の不良モードに分類し、次いで、前記複数種類の不良モードの各々に固有の不良発生要因に分類してもよい。
【0014】
また、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおいては、前記分類器は不良発生要因の予測確率が所定値未満の場合を「分からない」に分類してもよい。
【0015】
さらに、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおいては、前記データベースが収集する複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組は、前記分類器に入力した前記分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組にその入力に対して前記分類器が出力した不良発生要因の分類結果のテキスト情報を加えたものを含んでもよい。
【0016】
さらに、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおいては、
前記データベース内の前記複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報の組をそれぞれ入力し、別個に前記学習をしている複数の前記分類器と、
前記分類対象のプリント配線基板を撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組をそれぞれ入力された前記複数の分類器がそれぞれ出力した不良発生要因の分類結果から不良発生要因を総合的に分類してその分類結果を出力する総合処理器と、
を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の一実施形態を実施するための、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムの一実施形態を示す構成図である。
図2】上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおける分類器の構成を模式的に示す説明図である。
図3】上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおける分類器に入力する画像情報を例示する写真であり、(a)はプリント配線基板の不良個所の拡大平面写真、(b)は(a)の箇所の拡大断面写真、(c)はプリント配線基板の他の不良個所の拡大平面写真、(d)は(c)の箇所の拡大断面写真、(e)は他のプリント配線基板の不良個所の拡大平面写真、(f)は(e)の箇所の拡大断面写真である。
図4】本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の他の一実施形態を実施するための、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムの他の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の実施形態を実施するための、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムの実施形態が図面に基づいて説明される。図1は、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の一実施形態を実施するための、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムの一実施形態を示す構成図である。また図2は、上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおける分類器の構成を模式的に示す説明図である。
【0019】
プリント配線基板の製造過程では通常、製造したプリント配線基板の導体回路の複数個所に、チェッカーヘッドから突出する複数本のピンを同時に接触させて絶縁不良(回路ショート)や接触不良(導通不良)等の不良の有無を検査する。そして不良があったプリント配線基板は製造過程の改善のために、光学式検査装置が備える撮像装置で撮像してその画像を解析者が解析する。本実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムは、プリント配線基板を撮像装置で撮像した画像を解析者が解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報からその不良個所の不良発生要因を分類するものである。
【0020】
この不良発生要因の分類のため本実施形態の分類システムは、図1に示されるように、プリント配線基板を撮像装置で撮像した画像を解析して得た不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にした不良解析結果1をデータベース2内に複数組、好ましくは多数組収集する。この複数組の不良解析結果1は、プリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組を解析した解析者が入力し、または後述する分類器3が出力した、その不良箇所の不良発生要因の分類結果のテキスト情報を含んでいる。
【0021】
ここでの画像情報は、プリント配線基板の不良個所の拡大平面画像および拡大断面画像を含み、テキスト情報は、不良発生ロケーション、不良発生層番号、不良発生シート番号、不良発生平面座標等を含む。なお、テキスト情報は、光学式検査装置が画像情報に対応させて出力した数字等や、解析者が画像情報に対応させてキー入力した文字等を含んでもよい。また、テキスト情報は、解析者が画像情報に対応させて入力した音声を、例えば再帰的ニューラルネットワークを構成するAI(人工知能)モデルを有する既知の音声-テキスト変換器によって変換した文字や数字等のテキストを含んでもよい。プリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組に対して解析者が入力し、または後述の分類器3が出力した、その不良箇所の不良発生要因の分類結果のテキスト情報は、分類器3のニューラルネットワークを構成するAI(人工知能)モデルの学習の際の教師データとして用いられる。
【0022】
次いで本実施形態の分類システムは、それら収集した複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報をデータベース2内から読み出して分類器3に入力する。分類器3は、CPU(中央処理ユニット)および好ましくは並列処理に特化したGPU(グラフィック処理ユニット)と、内部および/または外部の記憶装置とを備えるコンピュータが所定のソフトウェアを実行することで構築されたAI(人工知能)モデルを有する。このAIモデルは、ニューラルネットワークを構成し、データベース2から読み出した複数組の不良個所の画像情報およびテキスト情報を用い、テキスト情報中の不良発生要因の分類結果を教師データとして、あらかじめそのニューラルネットワークの「教師あり学習」を行う。
【0023】
そして分類器3は、データベース2内から新たな分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報を組にした不良解析結果1を読み出すと上記学習済みのAIモデルで不良箇所の不良発生要因を分類して、その分類結果を含む報告資料4を出力するとともに、その不良発生要因の分類結果のテキスト情報を、上記読み出した不良個所の画像情報およびテキスト情報の組におけるテキスト情報に含めてデータベース2内に戻す。
【0024】
本実施形態の分類システムにおける分類器3は、機能的には図2に示されるように、データベース2内の画像情報2aおよびテキスト情報2bを入力されてそれらの情報をそれぞれ特徴量に変換する複数のノード(図中〇で示す)を持つ入力層3aを有する。また、分類器3は、入力層3aの各ノードから送られる特徴量を重み付け処理する複数層の中間層3bを有する。さらに分類器3は、中間層3bの各ノードから送られる特徴量を不良発生要因の分類ごとに纏め、分類ごとの正解率と不正解率と「分からない」率との値を報告資料4の不良発生要因として出力する複数のノードを持つ出力層3cを有する。そして分類器3はこれら入力層3aと中間層3bと出力層3cとにより、プリント配線基板の例えばAモードとBモードとCモードとの3種類の主要な不良モードについて、以下の表1に示されるように、それぞれ複数種類の不良発生要因と「分からない」とに分類する。
【0025】
【表1】
分類器3は具体的には多層パーセプトロン(MLP)を有する構成とされており、その多層パーセプトロンは、画像情報に対しては例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により画像の特徴量を抽出する。またテキスト情報に対しては例えば再帰的ニューラルネットワークにより特徴量の抽出を行う。そして、画像とテキストからそれぞれ抽出された特徴量のベクトルを結合(Concatenate)層で結合し、抽出された特徴量を集約して判定装置(全結合層)の活性化関数に接続する。この活性化関数により活性値として良品・不良品の確率を算出し、識別を行うことを可能とする。
【0026】
図3は、上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムにおける分類器3に入力する画像情報を例示する写真であり、図3(a)はプリント配線基板の不良個所の拡大平面写真、また図3(b)は図3(a)の不良箇所の拡大断面写真である。さらに、図3(c)はプリント配線基板の他の不良個所の拡大平面写真、また図3(d)は図3(c)の不良箇所の拡大断面写真である。そして、図3(e)は他のプリント配線基板の不良個所の拡大平面写真、また図3(f)は図3(e)の箇所の拡大断面写真である。何れの写真も、破線の矩形枠で示す部分が不良個所であり、不良発生要因の判定結果が少ない段階では解析者が画像情報を解析して従来の知識に基づき不良個所と推定される箇所を指定してもよい。そして、不良発生要因の判定結果が多数得られた段階では当該システムのコンピュータまたはそれ以外のコンピュータが、例えばパターンマッチング等の画像処理により画像情報を解析して不良個所と推定される箇所を指定してもよい。
【0027】
図3(a)および図3(b)の写真の画像情報には、下部絶縁層上のベタ導体と配線導体との間に導体が薄くメッキされて生じた回路不良が示されている。また、対応するテキスト情報には、不良個所のロケーション番号とピン番号と発生座標、不良モードとしてのAモード、不良発生要因としてのA-1が記載されている。
【0028】
図3(c)および図3(d)の写真の画像情報には、上部絶縁層下の配線導体間に導体が薄くメッキされて生じた回路不良が示されている。また、対応するテキスト情報には、不良個所のロケーション番号とピン番号と発生座標、不良モードとしてのBモード、不良発生要因としてのB-1が記載されている。
【0029】
図3(e)および図3(f)の写真の画像情報には、上部絶縁層上のパッド導体間に導体が薄くメッキされて生じた回路不良が示されている。また、対応するテキスト情報には、不良個所のロケーション番号とピン番号と発生座標、不良モードとしてのCモード、不良発生要因としてのC-1が記載されている。
【0030】
分類器3は、データベース2が収集する、これらの画像情報およびテキスト情報の組を含む不良個所の複数組の情報を入力し、上述の如くして不良発生要因を分類してその分類結果を出力する。
【0031】
従って、本実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法および分類システムによれば、不良発生要因の分類にAI(人工知能)の技術を用いて画像情報と他の種類の情報とを統合的に処理することで、不良発生要因を適切に分類することができる。
【実施例0032】
以下に上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムを用いた上記実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の一実施例について説明する。本実施例の不良発生要因の分類方法では、データベース2から不良モードがAモードの画像情報とそれに対応するテキスト情報の組を4148組抽出し、それらの組を訓練(学習)データとテストデータとに7:3でランダムに分割した。これにより、不良発生要因がA-1の訓練データが1915組、同テストデータが844組、不良発生要因がA-2の訓練データが987組、同テストデータが402組となり、訓練データの合計が2902組、テストデータの合計が1246組となった。
【0033】
そして、先ず訓練データを分類器3に入力して学習済みAIモデルを構築し、次いで分類結果のテキスト情報を除いたテストデータを分類器3に入力してその学習済みAIモデルにより不良発生要因の分類判定を行い、その判定結果をテストデータ中の分類結果のテキスト情報と比較する評価を実施した。通常通り「正解率」と「不正解率」を求めた場合の判定結果は、A-1について正解率93%、同不正解率7%、A-2について正解率88%、不正解率12%となり、目標正解率60%は大きく上回った。
【0034】
また、予測確率80%未満を「分からない」として加えた場合について求めた判定結果は、A-1について正解率90%、同不正解率3%、分からない率7%、A-2について正解率83%、不正解率7%、分からない率10%となり、正解率が目標正解率60%を大きく上回るとともに、不正解率が4~5%減少した。従って、不良発生要因に「分からない」を加えたこの実施例の分類方法によれば、他の不良モードについても不正解率が減少することが推定される。なお、ここでの「予測確率」とは、構築した学習済みAIモデルが判定する不良発生要因のうち、どの不良発生要因をどのくらいの確率で特定するか、すなわち特定した不良発生要因が正解である確率が何%であるかを表す評価指標を意味する。また、ここでの「正解率」とは、構築した学習済みAIモデルが不良発生要因を正しく予測できた割合(テストデータ全体の何%が正解だったのか)を表す評価指標を意味する。これら「予測確率」および「正解率」は何れも、AI関連技術で使用される数学用語である。
【0035】
図4は、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法の他の一実施形態を実施するための、本発明のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムの他の一実施形態を示す構成図である。本実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類システムは、複数の分類器としての、図では3つ示されている複数のAIモデル3dと、1つの総合処理器3eを備えている。
【0036】
ここで、上記複数のAIモデル3dは、データベース2内の複数組の不良個所の画像情報2aおよびテキスト情報2bの組をそれぞれ入力されて、互いに別個に上述の学習を行う。また、上記複数のAIモデル3dは、データベース2内から新たな分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報2aおよびテキスト情報2bの組をそれぞれ入力されてそれらの不良個所の不良発生要因の分類結果を出力する。
【0037】
また、上記総合処理器3eは、新たな分類対象のプリント配線基板の不良個所の画像情報およびそれに対応するテキスト情報の組をそれぞれ入力された複数のAIモデル3dがそれぞれ出力した不良発生要因の分類結果から不良発生要因を総合的に分類してその分類結果を出力する。
【0038】
そして、本実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法は、この実施形態の分類システムを用い、複数のAIモデル3dがそれぞれ出力した不良発生要因の分類結果から総合処理器3eで不良発生要因を総合的に分類してその分類結果を出力する。例えばこの実施形態の分類方法では、複数のAIモデル3dの分類結果が不一致の場合に「分からない」とすることに加え、予測確率の閾値を95%として、予測確率がその閾値未満の場合は「分からない」とする。これら2つの条件を統合して判断することで、この実施形態の分類方法は予測精度を向上させることに成功している。
【0039】
従って、本実施形態のプリント配線基板の不良発生要因の分類方法および分類システムによれば、不良発生要因の分類にAI(人工知能)の技術を用いて画像情報と他の種類の情報とを統合的に処理するとともに、複数のAIモデルの出力データを統合的に処理することで、不良発生要因を適切に分類することができる。なお、統合的に処理する方法としては、上記以外に例えば、複数のAIモデルの結論の多数決を採ってもよく、あるいはそれらの結論の平均値を求めてもよく、もしくは複数のAIモデルを直列に繋げてスタック型としてもよい。
【0040】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでない。例えば上記実施形態の分類方法および分類システムでは回路不良を、先ずAモードとBモードとCモードとの3種類の不良モードに分類しているが、本発明は回路不良を、先ず2種類または4種類以上の主要な不良モードに分類してもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態の分類方法および分類システムはプリント配線基板の不良としてのメッキでの導通による回路不良の発生要因の分類に適用したが、本発明はこれ以外の、例えば導体同士の接続不足等による回路不良の発生要因の分類についても、上述の実施形態と同様にして適用でき、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 不良解析結果
2 データベース
2a 画像情報
2b テキスト情報
3 分類器
3a 入力層
3b 中間層
3c 出力層
3d AIモデル
3e 総合処理器
4 報告資料
FP1~FP3 不良個所
図1
図2
図3
図4