(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118185
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】画像形成装置、通紙制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
G03G21/00 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024469
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】小堀 一樹
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA09
2H270KA20
2H270KA28
2H270KA32
2H270LA26
2H270LA29
2H270LA40
2H270LA45
2H270LA71
2H270LA80
2H270LA94
2H270LA95
2H270LC06
2H270LD03
2H270MB03
2H270MF01
2H270MF08
2H270MH11
2H270PA07
2H270PB03
2H270QB03
2H270QB08
2H270RC02
2H270RC03
2H270RC05
2H270RC16
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】像担持体の表面の機能成膜の膜厚が部分的に閾値に達しても使用可能とすることにより、像担持体の交換時期を可及的に遅らせることができる画像形成装置、通紙制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】表面に機能性膜11aが形成された像担持体11と、像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割して各領域における膜厚を検知する膜厚検知手段18と、膜厚検知手段により検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値以下であるかを判定する判定手段100と、膜厚が閾値以下であると判定された場合、膜厚が閾値以下である領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御手段100を備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に機能性膜が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割して各領域における膜厚を検知する膜厚検知手段と、
前記膜厚検知手段により検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記膜厚検知手段は、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する推定手段、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する推定手段、の少なくとも何れかによって構成される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
機能性膜が形成された像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割し、各領域における前記機能性膜の膜厚を検知する膜厚検知ステップと、
前記膜厚検知ステップにより検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御ステップと、
を画像形成装置が実行することを特徴とする通紙制御方法。
【請求項5】
前記膜厚検知ステップでは、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する方法、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する方法、の少なくとも何れかによって膜厚を検知する請求項4に記載の通紙制御方法。
【請求項6】
前記制御ステップでは、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する請求項4または5に記載の通紙制御方法。
【請求項7】
機能性膜が形成された像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割し、各領域における前記機能性膜の膜厚を検知する膜厚検知ステップと、
前記膜厚検知ステップにより検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御ステップと、
を画像形成装置のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記膜厚検知ステップでは、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する方法、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する方法、の少なくとも何れかによって膜厚を検知する処理を前記コンピュータに実行させる請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記制御ステップでは、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する処理を前記コンピュータに実行させる請求項7または8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタあるいはMFP(Multifunction Peripheral)と称される多機能デジタル複合機等の画像形成装置、該画像形成装置で実行される通紙制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような画像形成装置では、一般に、像担持体としての感光体ドラムが使用されている。また、感光体ドラムの表面には機能性膜(感光層)が形成され、この感光層を介して帯電、露光、トナー付着等が行われ、画像形成が行われる。
【0003】
感光層は画像形成装置の使用に伴い、膜厚が減少していく。そして、膜厚がある閾値に達すると、感光体としての機能を維持できなくなり、画像不良が発生する。この時点で寿命と判断される。
【0004】
ここで、感光層は感光体ドラムの主走査方向(ドラムの長手方向)及び副走査方向(ドラムの周方向)に存在しているが、使用に伴って一様に削れて膜厚が均一に減少するわけではない。感光層に当接しているクリーニングブレードの圧力が長手方向でばらついていることや、画像の形成・非形成が周方向や長手方向で異なるためである。
【0005】
周方向、長手方向のどこかにおいて、感光層の膜厚が閾値に達すると、その部分で画像不良が発生することになるため、感光層の膜厚が閾値に達した箇所を検出することは重要である。
【0006】
そこで、従来より、感光体ドラムにおいて感光層の膜厚が閾値に達した箇所を検出する技術が提案されている。
【0007】
例えば特許文献1には、感光体ドラムの表面を周方向及び長手方向の複数の領域に分割し、それぞれの領域で形成されたトナー像の累積値を演算することにより、感光層の膜厚を推測する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来では、複数の領域の何れかで推測された膜厚が閾値に達していると、感光体ドラムの全体が寿命と判断され、閾値に達していない部分ではまだ画像形成が可能であるにも拘わらず、新品と交換されており、資源的及び経済的な無駄を生じていた。
【0010】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、像担持体の表面の機能成膜の膜厚が部分的に閾値に達しても使用可能とすることにより、像担持体の交換時期を可及的に遅らせることができる画像形成装置、通紙制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、以下の手段によって達成される。
(1)表面に機能性膜が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割して各領域における膜厚を検知する膜厚検知手段と、
前記膜厚検知手段により検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(2)前記膜厚検知手段は、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する推定手段、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する推定手段、の少なくとも何れかによって構成される前項1に記載の画像形成装置。
(3)前記制御手段は、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する前項1または2に記載の画像形成装置。
(4)機能性膜が形成された像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割し、各領域における前記機能性膜の膜厚を検知する膜厚検知ステップと、
前記膜厚検知ステップにより検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御ステップと、
を画像形成装置が実行することを特徴とする通紙制御方法。
(5)前記膜厚検知ステップでは、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する方法、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する方法、の少なくとも何れかによって膜厚を検知する前項4に記載の通紙制御方法。
(6)前記制御ステップでは、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する前項4または5に記載の通紙制御方法。
(7)機能性膜が形成された像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割し、各領域における前記機能性膜の膜厚を検知する膜厚検知ステップと、
前記膜厚検知ステップにより検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する制御ステップと、
を画像形成装置のコンピュータに実行させるためのプログラム。
(8)前記膜厚検知ステップでは、膜厚を直接検知するセンサ、像担持体の使用履歴及び/または環境情報から膜厚を推定する方法、像担持体に作用する部品の情報から膜厚を推定する方法、の少なくとも何れかによって膜厚を検知する処理を前記コンピュータに実行させる前項7に記載のプログラム。
(9)前記制御ステップでは、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ通紙を許可したときは、通紙可能な用紙が制限されていることを表示手段に表示する処理を前記コンピュータに実行させる前項7または8に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る画像形成装置及び通紙制御方法によれば、像担持体の表面に形成された機能性膜の膜厚に関し、像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割して各領域における膜厚が検知され、検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかが判定される。膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙が許可される。従って、従来のように、膜厚が閾値に達した領域が発生しても像担持体の全体を交換する必要はなくなり、像担持体の寿命を延ばすことができ資源的、経済的に無駄なく使用することができる。
【0013】
この発明に係るプログラムによれば、機能性膜が形成された像担持体の表面を主走査方向及び/又は副走査方向に少なくとも2分割以上の領域に分割して各領域における膜厚を検知し、検知された膜厚が、あらかじめ設定された閾値に達したかを判定し、膜厚が閾値に達したと判定された場合、膜厚が閾値に達した領域を除く領域に対して通紙が可能なサイズの用紙のみ、通紙を許可する処理を、画像形成装置のコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の画像形成部における感光体ドラム及びその周囲の概略構成図である。
【
図2】像担持体である感光体ドラムの一部の拡大断面図である。
【
図3】画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】感光体ドラムの表面を周方向、長手方向に複数の領域に分けた状態を説明するための図である。
【
図5】
図4に示した各領域毎の機能性膜(感光層)の膜厚の検知結果を示す図である。
【
図6】
図4に示した各領域毎の機能性膜(感光層)の膜厚の別の検知結果を示す図である。
【
図7】膜厚の検知結果に応じて、印刷(通紙)を許可するかどうかを決定する通紙制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1はこの発明の一実施形態に係る画像形成装置1の画像形成部における感光体ドラム及びその周囲の概略構成図である。なお、カラー画像形成装置の場合、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の感光体ドラムと周辺部品が備えられているが、
図1ではそのうちの1個の感光体ドラムと周辺部品を示している。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置1は像担持体としての円筒状の感光体ドラム11を備え、この感光体ドラム11は図示しない回転軸により回転可能に構成されている。この感光体ドラム11の外周面には、
図2に示すように、機能性膜である所定厚みの感光層11aが塗布等により形成されている。
【0018】
感光体ドラム11は、静電複写方式によりその感光層11aにトナー像を作像するもので、感光体ドラム11の周囲には、帯電ローラー12と帯電ローラー12を清掃する清掃ローラー13、現像ユニット14等が配置され、さらに感光層11aの残留トナーを除去するためのクリーニングブレード15が備えられている。
【0019】
感光体ドラム11、帯電ローラー12、清掃ローラー13及びクリーニングブレード15は、1つのドラムユニットとしてユニット化されており、感光体ドラム11の交換時にはドラムユニットとして帯電ローラー12等も交換される。
【0020】
感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像は1次転写ローラー16により中間転写ベルト17に1次転写され、さらに中間転写ベルト17から用紙に2次転写される。
【0021】
なお、上述した画像形成装置1の構成は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
この実施形態では、クリーニングブレード15と帯電ローラー12の間の位置における感光体ドラム11の表面の対向位置に、感光層11aの膜厚を検知するための複数の膜厚検知部18が設置されている。これらの膜厚検知部18は、感光体ドラム11の表面を主走査方向(感光体ドラム11の長手方向)及び副走査方向(感光体ドラム11の周方向)に少なくとも2個以上にわたって分割された各領域における膜厚を検知できるように、感光体ドラム11の長手方向に間隔を隔てて設置されている。
【0023】
図1において、符合100は制御部である。制御部100は画像形成装置1の全体を統括的に制御する。例えば、感光体ドラム11に対するトナー画像の形成及び転写等を制御するほか、この実施形態では膜厚検知部18の検知結果を基に、印刷を許可するかしないかを制御する。この点については後述する。
【0024】
膜厚検知部18の構成は公知であり、感光層11aの膜厚を直接的に検知するセンサのほか、画像カバレッジ等感光層11aに形成された画像データの履歴や環境情報から推定しても良い。負荷が多い領域ほど膜厚が減少する。また、感光体ドラム11の表面に接するクリーニングブレード15の圧力分布等、感光体ドラム11に作用するドラムユニットや周辺の部品の情報から、感光層11aの膜厚を推定しても良い。例えば感光体ドラム11の表面に接するクリーニングブレード18の圧力が大きい領域ほど、膜厚が小さいものとなっている。膜厚をこのように推定する場合は制御部100が膜厚検知部18の機能を構成する。
【0025】
図3は、画像形成装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置1は、前述した制御部100の他、記憶装置110、画像読取装置120、操作パネル部50、画像形成部10、給紙部60、上述した膜厚検知部18を備え、さらにプリンタコントローラ150及びネットワークインターフェイス(ネットワークI/F)160等を備え、互いにシステムバス175を介して接続されている。
【0026】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、S-RAM(Static Random Access Memory)103、NV-RAM(Non Volatile RAM)104及び時計IC105等を備えている。CPU101は、ROM102等に保存されている動作プログラムを実行することにより、画像形成装置1の全体を統括的に制御する。
【0027】
ROM102は、CPU101が実行するプログラムやその他のデータを格納する。
【0028】
S-RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に保存する。
【0029】
NV-RAM104は、バッテリでバックアップされた不揮発メモリであり、画像形成に係わる各種の設定や、表示部54の画素数や、表示部54に表示される各種画面のデータ等を記憶するものである。
【0030】
時計IC105は、時刻を計時すると共に、内部タイマーとして機能し処理時間の計測等を行う。
【0031】
記憶装置110は、ハードディスク等からなり、プログラムや各種データ等を保存する。特にこの実施形態では、感光体ドラム11の表面を長手方向及び周方向に複数に分割したときの各領域毎に、膜厚検知部18で検知された各領域の感光層11aの膜厚を、更新可能に記憶する。
【0032】
画像読取装置120は、スキャナ等を備え、プラテンガラス上にセットされた原稿を走査することによって読み取り、読み取った原稿を画像データに変換する。
【0033】
操作パネル部50は、ユーザーが画像形成装置1へジョブ等の指示や各種設定を行う際に用いられるものであり、リセットキー51、スタートキー52、ストップキー53、表示部54及びタッチパネル55等を備えている。
【0034】
リセットキー51は、設定をリセットする際に使用されるものであり、スタートキー52はスキャン等の開始操作に使用されるものであり、ストップキー53は動作を中断する場合等に押下されるものである。
【0035】
表示部54は、例えば液晶表示装置からなりメッセージや各種の操作画面等を表示するものであり、タッチパネル55は表示部54の画面上に形成され、ユーザーのタッチ操作を検出する。
【0036】
画像形成部10は、画像読取装置120で読み取られた原稿の画像データや、外部の端末装置3等から送信されたプリントデータから生成された複写画像を用紙上に印字するものであり、前述したように、感光体ドラム11、帯電ローラー12、現像ユニット14、クリーニングブレード15、一次転写ローラー16、中間転写ベルト17等を備えている。
【0037】
ネットワークI/F160は、ネットワーク4を介して、外部のサーバー、端末装置、他の画像形成装置等との間でデータの送受信を行う通信手段として機能する。
【0038】
次に、
図1~
図3に示した画像形成装置1の動作を説明する。
(1)まず、
図4に示すように、感光体ドラム11の表面を周方向、長手方向に複数の領域に分け、それぞれの領域での感光層11aの膜厚を膜厚検知部18により検知する。この実施形態では、感光体ドラム11の長手方向にM0~M5の6個、周方向にS0~S14の15個にそれぞれ領域分割している。
【0039】
なお、膜厚の検知動作は、ユーザーに余分な待ち時間を発生させることがないよう、印字終了後や印字を受け付けていない待機状態に行うことが好ましいが、特に実施時期を指定するものではない。
【0040】
また、毎ジョブ後など頻繁にこの動作を行うわけではなく、例えばプリント500枚に1回、1000枚に1回など、ある程度の間隔をあけて行うことが望ましい。その理由は、数枚枚印字する程度では、感光層11aの膜厚はほとんど変わらないためである。逆に、頻繁に膜厚検知動作を実施することで、感光体ドラム11の余計な回転が行われ、感光体ドラム11の寿命を消費することにつながってしまう。そのため、ある程度の間隔をあけて行うことが望ましい。
(2)制御部100は、検知した膜厚と予め設定されNV-RAM104等に記憶されている閾値を比較し、膜厚が閾値に達している領域は使用不能と判定する。例えば、検知した膜厚が
図5の表の状態であったとする。なお、前述したとおり、S0~S14は感光体ドラム11の周方向を分割した領域、M0~M5は長手方向を分割した領域である。M0~M5 は均等割り付けではなく、顧客の使用頻度の高い紙サイズ(通紙範囲)に合わせた領域としてある。一例としてM0~M5領域の長さは316mmで、最大サイズである A3ノビの通紙範囲、M1~M4 領域の長さは297mmで、A3SEF(Short Edge Feed)、A4LEF(Long Edge Feed)の通紙範囲、M2~M3領域の長さは210mmで、A4SEF の通紙範囲とした。
【0041】
また、
図5の表中の数字は各領域での感光層11aの膜厚を表しており、単位はμmである。膜厚が10μmに達すると画像不良が発生するため、使用不能である。つまり閾値は10μmに設定した。
【0042】
図5の例では、S1/M0、S1/M5、S7/M0、S7/M5の4つの領域において膜厚が閾値に達しており、画像不良が発生する使用不能領域である。
図5では、使用不能領域を灰色で塗りつぶしてある。
(3)制御部100は、使用不能領域と印字される用紙サイズとの比較を行い、使用不能領域が存在しない範囲での印字を許可する。
【0043】
図5の場合、M0、M5 の領域に相当する用紙端部で画像不良が発生する。そのため操作パネル部50に、例えば「画像不良が発生するため A3ノビの印字はできません。それ以外のサイズはOKです」という警告メッセージを表示して、コピー時にA3ノビを使うユーザーに報知しても良い。あるいは、画像形成装置1をプリンタとして使用するユーザーに対しては、パソコン等の端末装置のプリント設定画面に、警告メッセージを表示すればよい。
【0044】
A3ノビの印字要求があった場合、制御部100は印字を受け付けない(許可しない)。一方、M1~M4領域に相当する用紙サイズの印字要求については、問題なく受け付ける(許可する)。
【0045】
また、例えば長手方向の中央部に、膜厚が閾値以下である領域が存在した場合、葉書き等の副走査方向(周方向)のサイズが小さいものであれば、その領域を避けて画像形成を行える場合がある。従って、この場合も印刷を許可する。
【0046】
従来では、S0~S14、M0~M5 で分割した領域のどこか一部でも膜厚が閾値に達すると、その時点で感光体ドラム11の寿命と判断し、ドラムユニットは交換されていた。このため、資源的、経済的な無駄を生じていた。
【0047】
これに対し、本実施形態では上記のように、一部の領域の膜厚が閾値に達しても、膜厚が閾値に達していない領域を通紙可能な紙サイズであれば、印刷が許可され継続使用が可能となる。このため、感光体ドラム11の交換までの時間を延ばすことができ、資源的、経済的な無駄の発生を抑制できる。
【0048】
また、別の例として、各領域の膜厚が
図6の状態であった場合、印字可能範囲はM2~M3 の領域である。この時A4SEFは問題なく受け付けるが、A4LEFの印字要求に対しては、そのまま通紙してしまうと用紙両端部に画像不良が発生してしまうことになる。
【0049】
そこで、「A4SEFなら印字可能です」というメッセージを操作パネル部50や端末装置の印刷設定画面に表示して、ユーザーに用紙のセット方向の変更を促しても良い。あるいは、画像形成装置1側で機械的に用紙のセット方向を変更する機構を設け、A4LEFからA4SEFに自動的に用紙のセット方向を変更し、ユーザーに気づかせない形で印字させることも可能である。
【0050】
図7は、複数の領域についての感光層15aの膜厚の検知結果に応じて、印刷(通紙)を許可するかどうかを決定する通紙制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、制御部100のCPU101がROM102等の記録媒体に格納された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0051】
制御部100は、印字要求を受け付けると(♯1)、印字要求に係る用紙サイズが感光体ドラム11の使用可能範囲に収まるかどうかを、感光体ドラム11における感光層11aの膜厚が閾値に達した領域の存在位置と用紙サイズとの関係から判断する(♯2)。
【0052】
用紙サイズが使用可能範囲に収まる場合は(♯2でYES)、通紙を許可して印刷を実行する(♯4)。収まらなければ(♯2でNO)、用紙の通紙方向を変えることで、使用可能範囲に収まるかを判断する(♯3)。収まれば(♯3でYES)、通紙を許可して印刷を実行する(♯4)。通紙方向を変更しても収まらなければ(♯3でNO)、印字を実行することなく処理を終了する。この際、画像形成装置1の操作パネル部50や端末装置に、印字実行不可やその理由を表示しても良い。
【0053】
印字を実行した場合は、次に、前回の「感光体ドラム11の使用可能範囲の特定」動作、換言すれば感光層11aの膜厚検知から、500枚以上印刷されたかどうかを調べる(♯5)。500枚以上印刷されていなければ(♯5でNO)、処理を終了する。500枚以上印刷されていれば(♯5でYES)、感光体ドラム11の各領域について膜厚検知を実行したのち(♯6)、使用可能範囲を特定して記憶する(♯7)。
【0054】
その後、次のコピージョブの実行時に、操作パネル部50に使用可能な用紙サイズ、通紙方向を表示したり、あるいはプリントジョブの実行時にプリントジョブを作成するパソコン等の端末装置の画面に、用紙サイズ、通紙方向を表示する(♯8)。
【0055】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、膜厚を検知する領域を感光体ドラム11の主走査方向(長手方向)及び副走査方向(周方向)の何れにおいても分割形成したが、主走査方向あるいは副走査方向の一方のみに分割しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム(像担持体)
11a 感光層(機能性膜)
12 帯電ローラー
13 清掃ローラー
14 現像ユニット
15 クリーニングブレード
16 一次転写ローラー
17 中間転写ベルト