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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118191
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/516 20130101AFI20240823BHJP
   H04L 27/02 20060101ALI20240823BHJP
   H03M 13/41 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H04B10/516
H04L27/02 B
H03M13/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024480
(22)【出願日】2023-02-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年電子情報通信学会信学技法,vol.121,no.386,PN2021-86,pp.180-18,一般社団法人電子情報通信学会、発行日:令和4年2月22日 〔刊行物等〕 27th OptoElectronics and Communications Conference(OECC) and 2022 International Conference on Photonics in Switching and Computing(PSC)、発行日:令和4年7月3日
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】小堀 史哉
【テーマコード(参考)】
5J065
5K102
【Fターム(参考)】
5J065AB01
5J065AC02
5J065AD10
5J065AE06
5J065AG05
5J065AH23
5K102AA61
5K102AH24
5K102AH26
5K102AH27
5K102AH29
5K102RD26
(57)【要約】
【課題】TDHP方式において、FEC limit時のSNRの増大を抑制し、送受信距離を維持することができる光通信システムを提供する。
【解決手段】光通信システムは、光送信器11と、光受信器21と、を有する。光送信器11には、光送信器用信号処理装置12が含まれる。光送信器用信号処理装置12は、光送信器11に入力される信号を、異なる2種類の変調方式の割合および強度に基づいてパルス振幅変調信号を生成するマッピング部12aと、相関符号信号を生成する符号化部12bと、を備える。そしてマッピング部12aは、パルス振幅変調信号のあらかじめ定められた時間あたりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返すブロック配置とする。この構成により、FEC limit時のSNRの増大が抑制され、TDHP方式における送受信距離を維持することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を光に変換し、その光を送信する光送信器と、
該光送信器からの前記光を受信して、信号に変換する光受信器と、を有し、
前記光送信器には、
前記光送信器に入力される信号を相関符号信号に変換するための光送信器用信号処理装置が含まれ、
該光送信器用信号処理装置は、
前記光送信器に入力される信号を、異なる2種類のパルス振幅変調方式の割合および強度に基づいてパルス振幅変調信号を生成するマッピング部と、
前記パルス振幅変調信号に対して相関符号化を行い、相関符号信号を生成する符号化部と、を備え、
前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号のあらかじめ定められた時間当たりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返すブロック配置とする、
ことを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記マッピング部は、
前記ブロック配置において、一方の変調方式による信号の占める割合と、他方の変調方式による信号の占める割合とが同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号を生成する際に、前記異なる2種類のパルス振幅変調方式のうち、低次のパルス振幅変調方式で用いられている信号として、もう一方の高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号のうち、値または強度の低いものから選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記異なる2種類のパルス振幅変調方式が、PAM2およびPAM4である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号を生成する際に、前記PAM2の信号として、前記PAM4の0、1、2および3の信号のうち、0および1を選択する、
ことを特徴とする請求項4に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記光受信器には、前記光送信器から送信された前記相関符号信号を出力信号に変換するための光受信器用信号処理装置が含まれ、
該光受信器用信号処理装置は、前記相関符号信号に対して、トレリス遷移を基にしたビタビ復号の機能を有する復号部を有し、
前記ビタビ復号は、同一変調方式から符号化された領域と、2変調方式から符号化された領域で、それぞれ異なる前記トレリス遷移を用いた処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、変調方式にいわゆるTDHP方式が用いられている光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中における長距離大容量無線通信では、伝搬損失が小さい可視光帯の周波数領域を利用することが好ましい。そのため光無線通信システムを水中で利用するための研究が盛んにおこなわれている。非特許文献1の図6では、水中光無線通信システムの実験装置が模式的に示されている。この図では、左上に光送信器の構成が示されると共に、左下に光受信器の構成が示されている。また右側には水槽が示されており、左上部の光送信器から出射された可視光が、その水槽の中を通過し、右端にある鏡面を介して左下部の光受信器で受信される。
【0003】
非特許文献1では、大容量伝送を実現する方法として、IM/DD-OFDM-UOWCシステムが取り上げられている。ここで、IM/DDとは、強度変調/直接検出(Intensity Modulation-Direct Detection)方式を意味し、これは具体的には、光の点灯・消灯を切り替えることでデジタル情報を伝送させる方式である。またOFDM方式は、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency-Division multiplexing)方式を、UWOCは、水中無線通信(Underwater Wireless Optical Communication)を意味する。すなわちIM/DD-OFDM-UOWCシステムとは、水中で用いられるデジタル伝送方式を用いるシステムであって、OFDM方式を用いるものを意味する。
【0004】
OFDM方式は、上記の図6のシステムでは、光送信器と光受信器に内蔵されているFPGA(Field-Programable Gate Array)で実現されている。このOFDM方式は、0と1で表される信号の符号化(Encode)の一つであり、非特許文献1では、光送信器のFPGAにおいて符号化(Encode)が行われ、光受信器のFPGAにおいて復号化(Decoede)が行われている。
【0005】
しかしOFDM方式では、信号生成後のピークパワー対平均パワー比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が大きいため、実効的な平均送信パワーが低下し、伝送距離が制限されるという問題がある。これに対し、非特許文献2では、OFDM方式に代えてTDHP方式が提案されている。TDHP方式とは、時間領域ハイブリッドPAM(Time-domain Hybrid Pam)方式を意味し、具体的には2以上の異なる変調方式を用いて時間領域で多重化する方式である。この方式は、PAPRが低く、送信光源出力時点で高い平均パワーを確保でき、伝送可能距離を伸長させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】塙 雅典、中村 一彦、「水中光無線通信技術の研究開発動向」、通信ソサエティマガジン、電子情報通信学会、2022年15巻4号、No.60、p. 298―306
【非特許文献2】TAKAHIRO KODAMA, MUHAMAD AIZAT BIN AHMAD SANUSI1, FUMIYA KOBORI, TOMOTAKA KIMURA, YOSHIAKI INOUE, MASAHIKO JINNO, 「Comprehensive Analysis of Time-Domain Hybrid PAM for Data-Rate and Distance Adaptive UWOC System」,IEEE Access, date of publication April 6, 2021,VOLUME 9, p.57064-57074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、TDHP方式においては、アナログデバイスによる帯域狭窄がある場合、FEC limit(誤り訂正限界:Forward Error Correction limit)時のSNR(信号対雑音比:Signal to Noise Ratio)が増大するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、TDHP方式において、FEC limit時のSNRの増大を抑制し、送受信距離を維持することができる光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の光通信システムは、信号を光に変換し、その光を送信する光送信器と、該光送信器からの前記光を受信して、信号に変換する光受信器と、を有し、前記光送信器には、前記光送信器に入力される信号を相関符号信号に変換するための光送信器用信号処理装置が含まれ、該光送信器用信号処理装置は、前記光送信器に入力される信号を、異なる2種類のパルス振幅変調方式の割合および強度に基づいてパルス振幅変調信号を生成するマッピング部と、前記パルス振幅変調信号に対して相関符号化を行い、相関符号信号を生成する符号化部と、を備え、前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号のあらかじめ定められた時間当たりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返すブロック配置とすることを特徴とする。
第2発明の光通信システムは、第1発明において、前記マッピング部は、前記ブロック配置において、一方の変調方式による信号の占める割合と、他方の変調方式による信号の占める割合とが同一であることを特徴とする。
第3発明の光通信システムは、第1発明において、前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号を生成する際に、前記異なる2種類のパルス振幅変調方式のうち、低次のパルス振幅変調方式で用いられている信号として、もう一方の高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号のうち、値または強度の低いものから選択することを特徴とする。
第4発明の光通信システムは、前記異なる2種類のパルス振幅変調方式が、PAM2およびPAM4であることを特徴とする。
第5発明の光通信システムは、第4発明において、前記マッピング部は、前記パルス振幅変調信号を生成する際に、前記PAM2の信号として、前記PAM4の0、1、2および3の信号のうち、0および1を選択することを特徴とする。
第6発明の光通信システムは、第1発明において、前記光受信器には、前記光送信器から送信された前記相関符号信号を出力信号に変換するための光受信器用信号処理装置が含まれ、該光受信器用信号処理装置は、前記相関符号信号に対して、トレリス遷移を基にしたビタビ復号の機能を有する復号部を有し、前記ビタビ復号は、同一変調方式から符号化された領域と、2変調方式から符号化された領域で、それぞれ異なる前記トレリス遷移を用いた処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、異なる2種類の変調方式によるTDHP方式を実現する光送信器用信号処理装置のマッピング部において、パルス振幅変調信号の所定の時間当たりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返すブロック配置とすることにより、FEC limit時のSNRの増大が抑制され、帯域狭窄に対して高い信号品質を得ることができ、これによりTDHP方式における送受信距離を維持することができる。
第2発明によれば、ブロック配置において、一方の変調方式による信号の占める割合と、他方の変調方式による信号の占める割合とが同一であることにより、時間領域において多重化する際に低周波のクロックを使用することができるので、容易にTDHP信号を生成することができる。
第3発明によれば、マッピング部は、パルス振幅変調信号を生成する際に、低次のパルス振幅変調方式で用いられている信号として、高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号のうち、値または強度の低いものから選択することにより、光受信器用信号処理装置における復号の演算量を抑制することができ、これにより消費電力を低減することができる。
第4発明によれば、異なる2種類のパルス振幅変調方式が、PAM2とPAM4であることにより、より容易にTDHP方式を実現することができる。
第5発明によれば、マッピング部は、パルス振幅変調信号を生成する際に、PAM2の信号として、PAM4の信号のうち、0および1を使用することにより、パルス振幅変調信号の出力が0、1、2、3および4の5通りとなるため、計算に係る負荷を小さくできると共に、復号化の際の精度を向上させることができる。
第6発明によれば、光受信器用信号処理装置において、復号部がトレリス遷移を基にしたビダビ復号の機能を有し、ビダビ復号は、同一変調方式から符号化された領域と、2変調方式から符号化された領域で、それぞれ異なるトレリス遷移を用いた処理を行うことにより、遷移区間の状態を削減でき、回路規模を小さくすると共に、復号化の精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る光通信システムを構成するマッピング部で行われたブロック配置の説明図である。
図2】(A)本発明の実施形態に係る光通信システムを構成する光送信器の構成を示す模式図である。(B)本発明の実施形態に係る光通信システムを構成する光受信器の模式図である。
図3図2の光通信システムを構成する光送信器用信号処理装置であって、TDHP方式を行うものにより生成されるパルス振幅変調信号の説明図である。
図4図2の光通信システムを構成する光送信器用信号処理装置であって、TDHP方式を行うものにより生成されるパルス振幅変調信号の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための光通信システムを例示するものであって、本発明は光通信システムを以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0013】
図2には、本発明の実施形態に係る光通信システムを構成する光送信器11と光受信器21の模式図を示す。図2(A)が光送信器11の構成を示す模式図、図2(B)が光受信器21の構成を示す模式図である。
【0014】
(光送信器11)
図2(A)に示すように、本実施形態に係る光通信システムを構成する光送信器11は、光送信器用信号処理装置12、デジタル/アナログ変換器13、ドライバアンプ14、光変調部15と、を含んで構成されていることが好ましい。光送信器用信号処理装置12は、光送信器11に入力される信号を、相関符号信号に変換する。デジタル/アナログ変換器13は、デジタル信号である相関符号信号をアナログ信号に変換する。すなわち、デジタル/アナログ変換器13は、離散信号である相関符号信号を連続信号に変換する。ドライバアンプ14は、デジタル/アナログ変換器13により変換されたアナログ信号を増幅する。光変調部15は、例えばレーザダイオードであり、ドライバアンプ14によって増幅されたアナログ信号を光信号として出力する。
【0015】
また本実施形態に係る光通信システムの光送信器用信号処理装置12は、マッピング部12aと、符号化部12bと、フィルタ部12cと、を含んで構成されていることが好ましい。本実施形態の光送信器用信号処理装置12では、TDHP方式が実現されている。
【0016】
光送信器用信号処理装置12を構成するマッピング部12aは、バイナリデータなどの信号に対して、2種類の変調方式の割合と、各変調方式の強度を基にパルス振幅変調信号を電気的に生成する。このマッピング部12aは、以下の機能を有する。(1)2種類以上の変調方式の選択、(2)各変調方式の割合の選択、(3)各変調方式の信号強度比率の選択、(4)各変調方式のあらかじめ定められた時間当たりの配置の選択。
【0017】
本実施形態では、マッピング部12aは、PAM2(2値のパルス振幅変調:2-level Pulse Amplitude Modulation)およびPAM4(4値のパルス振幅変調:4-level Pulse Amplitude Modulation)の2種類の変調方式の割合および強度に基づいてパルス振幅変調信号を生成する。上記の符号化部12bでは、マッピング部12aで得られたパルス振幅変調信号に対して相関符号化を行い、相関符号信号を生成する。相関符号化は、例えばデュオバイナリ符号化、またはトムリンソン・原島符号化で行われるのが好ましい。フィルタ部12cは、符号化部12bで得られた相関符号信号に対して、不要な周波数成分を除去する。
【0018】
図3には、本実施形態の光送信器用信号処理装置12であって、TDHP方式を行うものにより生成されるパルス振幅変調信号を説明するための図である。本実施形態では、TDHP方式を行うために、異なる2種類の変調方式としてPAM2とPAM4の変調方式が選択されている。これらの変調方式は、異なる雑音耐性を有していることが好ましい。マッピング部12aでは、これらの強度変調信号の発生比(pパラメータ)とパワー比(qパラメータ)とが決定される。図3の上の図では、PAM2とPAM4との発生比がPAM2:PAM4=6:4=3:2であることが表されている。また下の図では、PAM2とPAM4のパワー比が、PAM2:PAM4=2:4=1:2であることが表されている。pパラメータでは、信号を横に並べて記載しているのは、この横軸を時間に対応させ、各シンボルを時間方向でどのように配置しているのかを示している。またqパラメータでは、信号を縦に並べて記載しているのは、縦軸を強度に対応させ、各変調方式の強度の割合をどのように設定しているかを示している。
【0019】
なお、異なる2種類の変調方式として本実施形態ではPAM2とPAM4の変調方式が選択されているが、これに限定されない。例えば、PAM4とPAM8(8値のパルス振幅変調:8-level Pulse Amplitude Modulation)の組合せとしたり、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)信号の組合せとしたりすることも可能である。
【0020】
PAM4とPAM8との組合せの場合、低次のパルス振幅変調方式であるPAM4における信号として、高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号である0、1、2、3、4、5、6、7のうち、0、1、2、3がマッピング部12aで選択される。4QAMと16QAMとの組合せの場合、低次のパルス振幅変調方式である4QAMにおける信号として、高次のパルス振幅変調方式で用いられる16点のうち、強度の低いものから選択された信号が選択される。
【0021】
図1には、本実施形態の光送信器用信号処理装置12を構成するマッピング部で行われたブロック配置の説明図を示す。「ブロック配置」とは、マッピング部で行われた2種類以上の変調方式の選択、各変調方式の割合の選択、各変調方式の信号強度比率の選択の後であって、各変調方式のあらかじめ定められた時間当たりの配置の選択において選択される配置であり、パルス振幅変調信号のあらかじめ定められた時間当たりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返す配置を言う。図1では、「あらかじめ定められた時間」は、1Blockの長さとして表され、この1Block中に、PAM2の信号が5回繰り返され、さらにPAM4の信号が5回繰り返されている状態が示されている。なお、「ブロック配置」は、図1に示した図に限定されることはない。例えば、繰り返しの回数が2回以上のものが含まれる。また、PAM2とPAM4の繰り返しの回数が異なっていても問題ない。
【0022】
図4には、本実施形態の光送信器用信号処理装置12であって、TDHP方式を行うものにより生成されるパルス振幅変調信号の一例を示す。図4は、図1のブロック配置の信号の具体例である。図4では、PAM2は、0、1、0、1、0の信号であり、PAM4は、2、0、1、3、2の信号であることを表している。
【0023】
異なる2種類の変調方式によるTDHP方式を実現する光送信器用信号処理装置12のマッピング部12aにおいて、パルス振幅変調信号の所定の時間当たりの配置を、同一の変調方式による信号を複数回繰り返すブロック配置とすることにより、FEC limit時のSNRの増大が抑制され、帯域狭窄に対して高い信号品質を得ることができ、これによりTDHP方式における送受信距離を維持することができる。
【0024】
ブロック配置において、一方の変調方式による信号の占める割合と、他方の変調方式による信号の占める割合とが同一であることにより、時間領域において多重化する際に低周波のクロックを使用することができるので、容易にTDHP信号を生成することができる。
【0025】
マッピング部12aは、パルス振幅変調信号を生成する際に、低次のパルス振幅変調方式で用いられている信号として、高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号のうち、値の低いものから選択することにより、光受信器用信号処理装置における復号の演算量を抑制することができ、これにより消費電力を低減することができる。
【0026】
異なる2種類のパルス振幅変調方式が、PAM2とPAM4であることにより、より容易にTDHP方式を実現することができる。
【0027】
マッピング部12aは、パルス振幅変調信号を生成する際に、PAM2の信号として、PAM4の信号のうち、0および1を選択することにより、パルス振幅変調信号の出力が0、1、2、3および4の5通りとなるため、計算に係る負荷を小さくできると共に、復号化の際の精度を向上させることができる。
【0028】
(光受信器21)
図2(B)に示すように、本実施形態に係る光通信システムを構成する光受信器21は、光検出部22、トランスインピーダンスアンプ23、アナログ/デジタル変換器24、光受信器用信号処理装置25と、を含んで構成されていることが好ましい。光検出部22は、具体的にはフォトダイオードであり、光信号を電気信号に変換する。トランスインピーダンスアンプ23は、光検出部22からの電気信号を増幅する。アナログ/デジタル変換器24は、トランスインピーダンスアンプ23からの、増幅されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。すなわちアナログ/デジタル変換器24は、連続信号から離散信号へ信号を変換する。光受信器用信号処理装置25では、アナログ/デジタル変換器24からの信号の復号化を行い、バイナリデータに変換する。
【0029】
また本実施形態に係る光通信システムの光受信器用信号処理装置25は、フィルタ部25aと、復号部25bと、デマッピング部25cと、を含んで構成されていることが好ましい。
【0030】
光受信器用信号処理装置25を構成するフィルタ部25aは、アナログデジタル変換器からの信号の、不要な周波数帯の雑音を除去する。復号部25bは、光送信器用信号処理装置12を構成する符号化部12bの符号化に対応した復号化処理によって、元のシンボル情報を復元する。デマッピング部25cでは、復号部25bで復号された信号を基に、元のバイナリデータを復元する。
【0031】
本実施形態に係る復号部25bは、光送信器11からの相関符号信号に対してトレリス遷移を基にしたビダビ復号の機能を有する。そして、復号部25bにおけるビダビ復号は、同一変調方式から符号化された領域と、2変調方式から符号化された領域で、それぞれ異なるトレリス遷移を用いた処理を行う。
【0032】
光受信器用信号処理装置25において、復号部25bがトレリス遷移を基にしたビダビ復号の機能を有し、ビダビ復号は、同一変調方式から符号化された領域と、2変調方式から符号化された領域で、それぞれ異なるトレリス遷移を用いた処理を行うことにより、遷移区間の状態を削減でき、回路規模を小さくすると共に、復号化の精度を上げることができる。「ビダビ復号」および「トレリス遷移」については、当業界で一般に用いられている用語と同一の意味である。
【0033】
なお、PAM2、PAM4の組合せがマッピング部12aで採用され、デュオバイナリ符号化が行われた場合、PAM2信号とPAM4信号の境界での出力パターンが少なくなるため、ビダビ復号の際に信号の遷移パターン中から最適な経路を選択する際に、遷移パターンの数を減らすことができ、特に良好に計算処理回数を低減できる。
【0034】
(その他)
本実施形態に係る光通信システムは、無線の通信システムで利用することが好ましい。ただし、これに限定されず、有線の通信システムで利用することも可能である。
【0035】
また、マッピング部12aでは、パルス振幅変調信号のあらかじめ定められた時間当たりの配置を、ブロック配置とすることを説明したが、これに限定されない。異なる2種類の信号を交互に配置する交互配置とすることも可能である。例えば交互配置を採用した際に、異なる2種類のパルス変調方式のうち、低次のパルス振幅変調方式で用いられている信号として、もう一方の高次のパルス振幅変調方式で用いられている信号のうち、値の低いものから選択することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
11 光送信器
12 光送信器用信号処理装置
12a マッピング部
12b 符号化部
21 光受信器
25 光受信器用信号処理装置
25b 復号部
図1
図2
図3
図4