(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118198
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】排水部材、雨樋システム、雨樋システムの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
E04D13/068 503A
E04D13/068 504J
E04D13/068 504B
E04D13/068 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024491
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】平林 真介
(57)【要約】
【課題】施工性を高める。
【解決手段】雨樋10の底壁14を貫通する孔10bに配置される排水部材2であって、孔10bに配置され内部が落し口部となる筒22Aと、筒22Aの上方に配置される蓋21と、蓋21から上方に突出し、筒22Aの軸方向から見た平面視において筒22Aの周方向に延びる環状の第1リブ31と、を備え、第1リブ31の上端の外径または内径は、孔10bの外径と同等である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨樋の底壁を貫通する孔に配置される排水部材であって、
前記孔に配置され内部が落し口部となる筒と、
前記筒の上方に配置される蓋と、
前記蓋から上方に突出し、前記筒の軸方向から見た平面視において前記筒の周方向に延びる環状の第1リブと、を備え、
前記第1リブの上端の外径または内径は、前記孔の外径と同等である、排水部材。
【請求項2】
前記蓋から上方に突出し、前記平面視において前記第1リブと交差する方向に延びる第2リブを更に備えている、請求項1に記載の排水部材。
【請求項3】
前記第1リブの上端の外径および内径のうちの外径が、前記孔の外径と同等であり、
前記第2リブは、前記平面視において前記第1リブの内側に配置されている、請求項2に記載の排水部材。
【請求項4】
前記第2リブの高さは、前記第1リブの高さ以下である、請求項2に記載の排水部材。
【請求項5】
前記第1リブには、前記第1リブを前記筒の径方向に貫通する開口が設けられている、請求項1に記載の排水部材。
【請求項6】
前記開口は、上方に開口している、請求項5に記載の排水部材。
【請求項7】
前記筒の上端に設けられ、前記筒の径方向の外側に延び前記孔より大径の鍔を更に備え、
前記鍔の下面のうち、外周部は、前記底壁上に配置され、前記外周部よりも前記径方向の内側に位置する中央部は、前記外周部よりも下方に突出し前記孔内に配置され、
前記第1リブの上端の外径または内径は、前記中央部の外径と同等である、請求項1に記載の排水部材。
【請求項8】
筒と、
前記筒の上端に設けられ、前記筒の径方向の外側に延びる鍔と、
前記筒の上方に配置される蓋と、
前記蓋から上方に突出し、前記筒の軸方向から見た平面視において前記筒の周方向に延びる環状の第1リブと、を備え、
前記鍔の下面のうち、外周部よりも前記径方向の内側に位置する中央部は、前記外周部よりも下方に突出し、
前記第1リブの上端の外径または内径は、前記中央部の外径と同等である、排水部材。
【請求項9】
雨樋と、
請求項1から8のいずれか1項に記載の排水部材と、を備え、
前記排水部材は、雨樋の底壁を貫通する孔に配置され、
前記第1リブの外径または内径は、前記孔の外径と同等である、雨樋システム。
【請求項10】
請求項9に記載の雨樋システムを施工する方法であって、
前記底壁に前記第1リブの上端の形状を転写する工程と、
前記底壁に転写された前記第1リブの上端の形状に基づいて前記孔を形成する工程と、を含む、雨樋システムの施工方法。
【請求項11】
前記転写する工程は、前記第1リブの上端を前記底壁に接触させる工程を含む、請求項10に記載の雨樋システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水部材、雨樋システム、雨樋システムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、屋根から雨樋(例えば、軒樋や谷樋)に落下した排水を、雨樋に接続した竪樋から地上に運搬する構造が用いられることがある。
特許文献1において、軒樋と竪樋との接続部に設けられ、竪樋の内部でサイフォン現象を誘発させるための排水部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水部材を雨樋に配置する際、雨樋に貫通孔が設けられる。貫通孔は、雨樋及び竪樋の施工現場において開けられる。貫通孔を設ける際、例えば、雨樋の表面に目印であるケガキ線を設けるケガキ作業が行われることがある。この場合、一般的な排水部材では、排水部材の下端部を目安としてケガキ線を設けることが考えられる。
しかしながら、例えば、サイフォン現象を誘発させる排水部材では、排水部材における雨樋と接する部位に、ベルマウス形状が設けられることがある。すなわち、前記部位に、排水部材の下方から上方に向けて徐々に拡径する形状が設けられることがある。これにより、排水部材の下端部の外径と、雨樋に設けるべき貫通孔の内径とに差が生じる。結果として、施工現場において、雨樋に設ける貫通孔の目安として、排水部材の下端部を用いることが困難となる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、施工性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る排水部材は、雨樋の底壁を貫通する孔に配置される排水部材であって、前記孔に配置され内部が落し口部となる筒と、前記筒の上方に配置される蓋と、前記蓋から上方に突出し、前記筒の軸方向から見た平面視において前記筒の周方向に延びる環状の第1リブと、を備え、前記第1リブの上端の外径または内径は、前記孔の外径と同等である。
【0007】
第1リブの外径または内径が、孔の外径と同等である。したがって、雨樋の底壁に第1リブの上端の形状を転写し、その後、底壁に転写された第1リブの上端の形状に基づいて孔を形成することで、孔を形成することができる。
【0008】
<2>上記<1>に係る排水部材では、前記蓋から上方に突出し、前記平面視において前記第1リブと交差する方向に延びる第2リブを更に備えている構成を採用してもよい。
【0009】
第2リブが、平面視において第1リブと交差する方向に延びている。よって、施工者が施工時において第2リブを用いて排水部材を容易に掴むことができる。
【0010】
<3>上記<2>に係る排水部材では、前記第1リブの上端の外径および内径のうちの外径が、前記孔の外径と同等であり、前記第2リブは、前記平面視において前記第1リブの内側に配置されている構成を採用してもよい。
【0011】
第2リブが、平面視において第1リブの内側に配置されている。よって、雨樋の底壁に第1リブの上端の形状(外形状)を転写するときに、第2リブが作業の邪魔をするのを抑制することができる。
【0012】
<4>上記<2>または<3>に係る排水部材では、前記第2リブの高さは、前記第1リブの高さ以下である構成を採用してもよい。
【0013】
第2リブの高さが、第1リブの高さ以下である。よって、雨樋の底壁に第1リブの上端の形状を転写するときに、第2リブが作業の邪魔をするのを抑制することができる。
【0014】
<5>上記<1>から<4>のいずれか1態様に係る排水部材では、前記第1リブには、前記第1リブを前記筒の径方向に貫通する開口が設けられている構成を採用してもよい。
【0015】
第1リブに、第1リブを径方向に貫通する開口が設けられている。よって、例えば、第1リブの径方向の内側に降った雨水が、開口を通して第1リブの径方向の外側に排出される。
【0016】
<6>上記<5>に係る排水部材では、前記開口は、上方に開口している構成を採用してもよい。
【0017】
開口が、上方に開口している。よって、施工者は、施工用の治具を開口に対して上方から差し込むことができる。その結果、例えば、施工時に蓋を回転させる必要があるときに、その回転を実施し易くすることができる。
【0018】
<7>上記<1>から<6>のいずれか1態様に係る排水部材では、前記筒の上端に設けられ、前記筒の径方向の外側に延び前記孔より大径の鍔を更に備え、前記鍔の下面のうち、外周部は、前記底壁上に配置され、前記外周部よりも前記径方向の内側に位置する中央部は、前記外周部よりも下方に突出し前記孔内に配置され、前記第1リブの上端の外径または内径は、前記中央部の外径と同等である構成を採用してもよい。
<8>本発明の一態様に係る排水部材は、筒と、前記筒の上端に設けられ、前記筒の径方向の外側に延びる鍔と、前記筒の上方に配置される蓋と、前記蓋から上方に突出し、前記筒の軸方向から見た平面視において前記筒の周方向に延びる環状の第1リブと、を備え、前記鍔の下面のうち、外周部よりも前記径方向の内側に位置する中央部は、前記外周部よりも下方に突出し、前記第1リブの上端の外径または内径は、前記中央部の外径と同等である。
【0019】
第1リブの外径または内径が、鍔の中央部の外径と同等である。したがって、雨樋の底壁に第1リブの上端の形状を転写し、その後、底壁に転写された第1リブの上端の形状に基づいて孔を形成することで、鍔の中央部と同径の孔を形成することができる。
【0020】
<9>本発明の一態様に係る雨樋システムでは、雨樋と、上記<1>から<8>のいずれか1態様に係る排水部材と、を備え、前記排水部材は、雨樋の底壁を貫通する孔に配置され、前記第1リブの外径または内径は、前記孔の外径と同等である。
【0021】
<10>本発明の一態様に係る雨樋システムの施工方法は、上記<9>に係る雨樋システムを施工する方法であって、前記底壁に前記第1リブの上端の形状を転写する工程と、前記底壁に転写された前記第1リブの上端の形状に基づいて前記孔を形成する工程と、を含む。
<11>上記<10>に係る雨樋システムの施工方法では、前記転写する工程は、前記第1リブの上端を前記底壁に接触させる工程を含む構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る雨樋システムの斜視図である。
【
図2】
図1に示す雨樋システムに含まれる排水部材の断面斜視図である。
【
図4】
図3に示す雨樋システムの分解側面図である。
【
図5】
図1に示す雨樋システムの排水部材の蓋部上のリブを上方から見た平面図である。
【
図6】
図1に示す雨樋システムの排水部材の蓋部を側方から見た側面図である。
【
図7】
図6に示す排水部材の側面視形状の変形例を示す図である。
【
図8】
図6に示す排水部材の側面視形状の他の変形例を示す図である。
【
図9】
図1に示す雨樋システムの施工方法を説明する斜視図であって、第1リブの外形状を転写する工程を説明する図である。
【
図10】
図1に示す雨樋システムの施工方法を説明する斜視図であって、孔を形成する工程を説明する図である。
【
図11】
図5に示す排水部材の平面視形状の第1変形例を示す図である。
【
図12】
図5に示す排水部材の平面視形状の第2変形例を示す図である。
【
図13】
図5に示す排水部材の平面視形状の第3変形例を示す図である。
【
図14】
図5に示す排水部材の平面視形状の第4変形例を示す図である。
【
図15】
図5に示す排水部材の平面視形状の第5変形例を示す図である。
【
図16】
図5に示す排水部材の平面視形状の第6変形例を示す図である。
【
図17】
図5に示す排水部材の平面視形状の第7変形例を示す図である。
【
図18】
図5に示す排水部材の平面視形状の第8変形例を示す図である。
【
図19】
図5に示す排水部材の平面視形状の第9変形例を示す図である。
【
図20】
図5に示す排水部材の平面視形状の第10変形例を示す図である。
【
図21】
図5に示す排水部材の平面視形状の第11変形例を示す図である。
【
図22】
図5に示す排水部材の平面視形状の第12変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による実施の形態の排水部材について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(基本構成)
図1から
図4に示すように、本実施の形態による排水部材2は、高排水機能を有するものであり、例えば工場やショッピングセンター等の大型施設の建物に取り付けられている雨樋システム1のうち軒先に配置される大型の雨樋10の内側に設けられている。
【0026】
雨樋システム1は、雨樋10と、排水部材2を、を備えている。排水部材2は、雨樋10の底面10aに形成される円形の孔10bに配置される。孔10bは、雨樋10の底壁14を貫通する。排水部材2には、例えば、図示しない呼び樋を介して、図示しない竪樋が接続される。
ここで、
図1において、紙面右側が建物側である。そして、雨樋システム1において、建物側を後方、後側といい、建物から離れる側を前方、前側という。
【0027】
雨樋10は、硬質塩化ビニル樹脂やABS、AES等の合成樹脂の押出成形品であり、本体部が平坦な底壁14の前端から前壁15が立設され、かつ底壁14の後端から後壁16が立設された溝形断面に形成されている。そして、雨樋10は、例えば、不図示の鼻隠し板に取り付けられた雨樋吊具(図示省略)により吊設されて、屋根の軒先から流下した雨水を受けるようになっている。本実施形態では、雨樋10はいわゆる軒樋であるが、例えば、雨樋10がいわゆる谷樋であってもよい。
なお、熱による伸縮防止のため、雨樋10は線膨張係数が2.0×10-5/℃以下であることが好ましく、雨樋10の厚さ方向の中心に延伸したPET樹脂製シートや鉄製のシートなど低伸縮性シートを内挿したり、雨樋10を構成する合成樹脂自体にワラストナイトや炭素繊維などの低伸縮性の添加物を配合することで線膨張係数を小さくしたりすることができる。なお、合成樹脂に限るものではなく、金属の押出成形品であっても良い。
雨樋10は、例えば、底面幅が100mm以上200mm以下、高さが90mm以上150mm以下とされ、例えば流量4リットル/sec以上20リットル/sec以下の雨水を流すことができる大口径の竪樋に適用可能とされていてもよい。
【0028】
排水部材2は、大雨時に雨樋10内に流入した雨水W(
図2参照)の排水能力を向上させるための高排水機能を有する排水部材である。
図2乃至
図4に示すように、排水部材2は、板状に形成された蓋21と、落し口部20を有して竪樋(正確には竪樋上の呼び樋)に固定される装着筒22と、蓋21と装着筒22とを接続し、上面視で落し口部20に重ならない位置で周方向に間隔をあけて配置された複数の縦リブ23と、を備えている。
本実施の形態において、排水部材2は硬質塩化ビニル樹脂やポリカーボネート、ABS、AES等の合成樹脂の射出成型品である。なお、合成樹脂に限るものではなく、鋳型を用いた鋳鉄製であっても良い。
【0029】
ここで本実施の形態では、蓋21は円盤状に形成され、装着筒22は筒状に形成されていて、これらの各中心軸は共通軸上に配置され、鉛直方向に一致している。以下、この共通軸をドレン軸Oといい、ドレン軸O方向に沿う排水部材2の装着筒22側を下側といい、蓋21側を上側という。そして、排水部材2をドレン軸O方向から見た平面視において、ドレン軸Oに直交する方向を径方向といい、ドレン軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0030】
装着筒22は、落し口部20を形成する筒22Aと、筒22Aの上端から径方向の外側に延びる板状の鍔22Bと、を有している。筒22Aは、孔10bに配置される。筒22Aの内部は落し口部20となる。ここで、落し口部20の開口外径R1は筒22Aの内径に相当し、落し口部20の開口面積A1は筒22Aの内径(落し口部20の開口外径R1)を直径とした面積に相当する。本実施の形態においては、開口面積A1は20cm2以上300cm2以下が好ましく、30cm2以上190cm2以下がより好ましく、40cm2以上100cm2以下がより一層好ましい。
なお、本実施の形態では、排水部材2の中心軸に相当するドレン軸Oが鉛直方向に一致しているので、蓋21の蓋面積A2と落し口部20の開口面積A1は、それぞれ鉛直方向に直交する面に対する蓋21の投影面積、及び落し口部20の開口の投影面積に相当している。
【0031】
装着筒22において、落し口部20に相当する筒22Aと、鍔22Bとが連設される内面側の接続部分22aは、テーパー面、或いは曲面に形成されたベルマウス形状をなしている。この内面側の接続部分22aが曲面である場合、ドレン軸Oと平行な方向の断面の曲率半径は5mm~20mmであることが好ましい。ただし、接続部分22aがベルマウス形状でなくてもよい。
筒22Aは、雨樋10の孔10b(
図4参照)に上方から貫通され、竪樋継手13の内側に挿入された状態で配置される。竪樋継手13は、底板14の下面に固定される。竪樋継手13は、筒状である。竪樋継手13は、呼び樋または竪樋に接続される。竪樋継手13は、差口であっても受口であってもよい。
なお、筒22Aの外周面には、図示しない雄ねじが形成されていてもよい。この場合には、装着筒22を回転させることで竪樋継手13の内面に形成される雌ねじ(図示省略)に筒22Aの雄ねじを螺合させて締め込むことで装着することができる。
【0032】
鍔22Bは、外周側の下面に全周にわたって薄肉に切り欠かれた段差部22bが形成されており、この段差部22bが雨樋10の底壁14(底面10a)上に係止される。このような本願発明では、鍔22Bの下面のうち、外周部22eは、底壁14(底面10b)上に配置される。鍔22Bの下面のうち、外周部22eよりも径方向の内側に位置する中央部22fは、外周部22eよりも下方に突出する。中央部22fは、孔10b内に配置される。
本実施の形態では、鍔22Bと蓋21の外径寸法が略同径となっている。そして、蓋21の外周縁21aと鍔22Bの外周縁22cとの間に形成される部分が、雨樋10に溜まった雨水Wが落し口部20の開口に流入する流入開口2Aとなる。
なお、流入開口2Aは、水平面に対して直交する方向について、蓋21の外周縁21aと雨樋10の底面10aとの間、または装着筒22の鍔22Bとの間のことをいう。例えば、蓋21の外周縁21aが装着筒22の鍔22Bの外周縁22cより大きい場合、流入開口2Aは蓋21の外周縁21aと雨樋10の底面10aとの間に形成される部分となり、蓋21の外周縁21aが装着筒22の鍔22Bの外周縁22cより小さい場合、流入開口2Aは蓋21の外周縁21aと装着筒22の鍔22Bの上面22dとの間に形成される部分となる。
この流入開口2Aの面積は、上述した落し口部20の開口面積A1よりも大きい面積となるよう、後述する蓋21の大きさや高さ、形状が調整されていてもよい。本実施の形態では、流入開口2Aの面積は、円形の蓋21の円周、即ち外周縁21aの長さに、後述する蓋21の高さHとの積により求めることができる。
【0033】
複数の縦リブ23は、
図2に示すように、装着筒22の鍔22Bの上面22dと、蓋21の下面21cの外周部とを連結している。すなわち、蓋21は、複数の縦リブ23によって下方から支持され、雨樋10の底面10aから所定高さHを確保した位置で保持されている。これら縦リブ23は、流入開口2Aに設けられ、平面視で径方向に対して交差し、かつ湾曲して形成されている。つまり縦リブ23は、流入開口2Aから落し口部20に流入される雨水Wを整流する機能を有している。なお縦リブ23がなくてもよく、例えば、蓋21と装着筒22とを連結する他の部材があってもよい。
【0034】
蓋21は、上述したように複数の縦リブ23に下方から支持された状態で装着筒22に支持されている。蓋21は、上述したように雨樋10の内側に配置され、落し口部20から上方に離間した位置に設置されるとともに、蓋21の下側となる雨樋10の底面10aに落し口部20へ雨水Wを流入させる流入開口2Aを形成している。
【0035】
蓋21は、鉛直方向の上方から見て落し口部20の開口を塞ぐように配置されるとともに、蓋面積A2が落し口部20の開口面積A1(
図2参照)より大きく設定されていることが好ましい。
なお、本実施の形態では蓋21の中心と落し口部20の開口の中心が鉛直方向に一致しているが、雨樋10自体が傾いて蓋21と落し口部20が共に斜めになっている場合には、蓋面積A2が落し口部20の開口面積A1と同じ面積とすると、鉛直方向から見て落し口部20の開口を塞ぐことができず、蓋21と落し口部20の間に空気が入る隙間(渦流による空気芯)が生じることになる。そのため、蓋21は、鉛直方向に直交する面に対する蓋21の投影面積が落し口部20の開口の投影面積より大きく設定されていることが好ましい。
【0036】
蓋21は、雨樋10の底面10aから上方に向けた高さHで10~50mmの位置に設定されていることが好ましい。そして、蓋21は、蓋直径R2が落し口部20の開口外径R1より大きく、かつこの開口外径R1の245%以下に設定されていることが好ましい。これは、開口外径R1が75mmのときに、蓋直径R2が185mm以下(すなわち185mm/75mm≒245%)であれば雨樋10内に良好な水位を保ち易いからである。なお、蓋21の蓋直径R2が落し口部20の開口外径R1の245%を超えると、流入開口に流入しようとする雨水の多くが蓋に衝突して水位が上がってしまう現象が生じてしまうおそれがある。
例えば、蓋21の蓋直径R2としては、例えば落し口部20の開口外径R1が75mmの場合に、75mmを超え185mm以下のものを採用することができる。
なお、蓋21が傾いているなどして高さが一定でなくても、高さHが10~50mmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
さらに、蓋21の高さHが雨樋10の底面10aから上方に30~40mmの位置に設定されていることが好ましく、かつ蓋直径R2が落し口部20の開口外径R1の150~200%に設定されていることがより好ましい。
蓋直径R2が落し口部20の開口外径R1の150%よりも小さい場合には、雨樋10内の水位が蓋21よりも低くなり、蓋21が流入する水に接しない虞がある。また、200%を超えると、流入開口から流入する水流が蓋21に衝突する割合が大きくなり、雨樋10内の水位が蓋21よりも高くなり過ぎてしまい、サイフォン性能を低下させる可能性がある。
そして、150%以上とすることで、雨樋10全体が前方や後方に傾いている場合であっても、確実に落し口部20の開口を塞ぐことができる。200%以下とすることで収まりが小さくなり、継手や支持具の大型化を防ぐことができる。
【0038】
なお、サイフォン作用発生のためには流入開口2Aより雨樋10内の水位が高くなることが好ましいため、蓋21の高さHは雨樋10内の最大水位よりも低いことが好ましい。安定的なサイフォン作用発生のため、蓋21の高さHは、雨樋10内の最大水位の0.1~0.5倍の高さであることが好ましく、0.2~0.45倍の高さであることがより好ましい。
なお、雨樋10内の最大水位は、軒樋の前壁15または後壁16のうち、底面14からの高さが低い方の高さのことをいう。また、蓋21が傾いているなどして高さが一定でない場合、蓋21の高さHのうち最大の高さが雨樋10内の最大水位の0.1~0.5倍の高さとされていることが好ましい。
【0039】
また、上記のような位置に設定される蓋21を設けるための好適な落し口部20の開口外径R1は、50mm以上170mm以下が好ましい。すなわち、落し口部20の開口外径R1を下限の50mm以上とすることで、サイフォン発生部(排水部材2)で発生する大流量の排水をスムーズに排水することができる。そして、上限の170mm以下とすることで収まりが小さくなり、継手や支持具の大型化を防ぐことができる。
【0040】
また、蓋21には、
図2に示すように、上面21bから上方に突出し、周方向に間隔をあけて配置されるリブ24が設けられている。このリブ24を掴むことで、排水部材2を締め込む際の回転操作を容易に行うことができる。リブ24は、円周方向に延びるリブ本体24Aと、リブ本体24Aの両端から外周側に向けて突出する延出部24Bと、を備えている。周方向に隣り合うリブ24同士の間には、例えば排水部材2を竪樋継手13に装着するときに例えば棒状部材を係合させて、その棒状部材を回転させることで、締め込むことができる。また、リブ24同士の間に隙間が形成されているので、雨樋10内の落ち葉などのゴミが通過し易くなり、絡まってしまうことを防ぐことができる。
【0041】
また、蓋21には、
図2乃至
図4に示すように、下面21cの平面視中央部においてドレン軸O(蓋中心)に向かうに従い漸次下方に延びる曲線を有する複数の誘導ガイド25がドレン軸Oから径方向に向けて放射状に延びて設けられている。誘導ガイド25は、雨樋10内の雨水Wを流入開口2Aから落し口(落し口部20の開口)へ誘導するためのものである。なお、誘導ガイド25はなくてもよい。
【0042】
前記雨樋システム1においては、屋根に降った雨が雨樋10に設けられた排水部材2に流入開口2Aから流入し、落し口部20を通って呼び樋を流れて竪樋に流下する。そして、呼び樋から竪樋に流れ込んだ雨水Wは、地中に埋設されている不図示の排水管に流下する。このとき、竪樋(排水部材2の下流側)が満水状態で水封される場合、雨水Wは竪樋の中を満水状態にして流下することになり、落し口部20と呼び樋及び竪樋内でサイフォン現象をおこして、竪樋から排水管側に勢いよく排水されることになる。
【0043】
(蓋上面のリブ)
ここで
図1から
図6に示すように、複数のリブ24は、以下に示す第1リブ31、第2リブ32を構成していると言える。
第1リブ31および第2リブ32は、蓋21から上方に突出する。第1リブ31は、筒22の軸方向から見た平面視において、筒22の周方向に延びる環状である。本実施形態では、排水部材2は、1つの第1リブ31を備えている。第1リブ31は、複数のリブ本体24Aによって構成されている。言い換えると、複数のリブ本体24Aが、1つの第1リブ31を構成している。複数のリブ本体24Aは、ドレン軸Oと中心とした同心円上に配置されている。第1リブ31は、平面視において真円形状である。
【0044】
このような第1リブ31には、開口31aが設けられている。開口31aは、第1リブ31を、筒22の径方向に貫通する。開口31aは、周方向に隣り合うリブ24同士の間の隙間である。図示の例では、開口31aは、上方に開口している。
ただし、
図7、
図8に示す変形例に係る排水部材2A、2Bのように、開口31aが上方に開口していなくてもよい。排水部材2A、2Bでは、第1リブ31の上端では、第1リブ31が周方向に連続して延びている。第1リブ31の下端では、第1リブ31が周方向に間欠的に設けられている。言い換えると、第1リブ31の下端では、第1リブ31と開口31aとが周方向に交互に配置されている。
図7に示す排水部材2Aのように、第1リブ31の下端において、開口31aの周方向の大きさが、第1リブ31の周方向の大きさよりも小さくてもよい。
図8に示す排水部材2Bのように、第1リブ31の下端において、開口31aの周方向の大きさが、第1リブ31の周方向の大きさよりも大きくてもよい。
【0045】
図1から
図5に示すように、第2リブ32は、平面視において第1リブ31と交差する方向に延びる。本実施形態では、排水部材2は、複数の第2リブ32を備えている。各第2リブ32は、各延出部24Bによって構成されている。言い換えると、1つの延出部24Bが、1つの第2リブ32を構成している。複数の第2リブ32は、ドレン軸Oを中心として放射状に延びている。複数の第2リブ32は、第1リブ31から径方向の外側に延びている。各第2リブ32は、第1リブ31のうち、開口31aに対して周方向に隣り合う部分に配置されている。図示の例では、第1リブ31のうち、開口31aに対して周方向に隣り合う部分の全てに、第2リブ32が配置されている。
【0046】
第2リブ32の高さは、第1リブ31の高さ以下である。図示の例では、第1リブ31の高さは、全域にわたって同等である。全ての第2リブ32の高さは、互いに同等である。そして、第1リブ31の高さおよび第2リブ32の高さは、互いに同等である。ただし、第2リブ32の高さが、第1リブ31の高さに比べて低くてもよい。
ここで、第1リブ31の高さおよび第2リブ32の高さはそれぞれ、例えば、蓋21からの高さを意味する。第1リブ31の高さおよび第2リブ32の高さが同等であることは、完全に一致している場合に限られず、例えば、第1リブ31の高さおよび第2リブ32の高さが公差の範囲内で異なる場合も含まれる。
【0047】
そして本実施形態では。第1リブ31の上端の外径または内径は、孔10bの外径と同等である。さらに本実施形態では、第1リブ31の上端の外径または内径は、鍔22Bの中央部22fの外径と同等である。なお図示の例では、第1リブ31の上端の外径が、孔10bの外径や中央部22fの外径と同等であるが、第1リブ31の上端の内径が、孔10bの外径や中央部22fの外径と同等であってもよい。
ここで、第1リブ31の外径が、孔10bの外径(または中央部22fの外径)と同等であることは、両者が完全に一致している場合に限られず、例えば、両者が公差の範囲内で異なる場合や、両者のうちの大きい方の外径を基準としたうえで、小さい方の外径が基準に対して-5%以内である場合なども含まれる。
【0048】
(施工方法)
次に、上述した排水部材2を有する雨樋システム1(雨樋10及び排水部材2)を組み立てる手順について、具体的に説明する。
先ず、
図4に示すように、雨樋10の底壁14の排水部材2を取り付ける位置に孔10bを開ける。続いて、排水部材2を雨樋10内に進入させ、雨樋10の孔10bから装着筒22の筒22Aを挿入して下方に突出させ、装着筒22の鍔22Bの段差部22bを雨樋10の底面10aの孔10bの周縁に係止させて固定する。このとき、段差部22bと孔10bの周縁との間にパッキン等を介在させてもよいが、させなくてもよい。これにより、
図3に示すように、排水部材2が雨樋10内の所定位置に配置され、蓋21も落し口部20に対して所定の高さHの位置で保持された状態で固定される。
【0049】
(孔の形成方法)
ここで孔10bを形成する方法を詳しく説明する。
まず
図9に示すように、雨樋10の底壁14に第1リブ31の上端の形状を転写する。このとき、第1リブ31の上端を底壁14に接触させる。具体的には、雨樋10を上下反転させ、底壁14が上方に位置するように雨樋10を配置する。また、排水部材2も上下反転させ、第1リブ31の上端が下端を向くように排水部材2を配置する。そして、第1リブ31の上端を底壁14に接触させる。
【0050】
転写は、例えば、治具Jを用いて実施される。治具Jとしては、例えば、ペンや刃など、雨樋10に標識Mを付けることが可能な道具を採用することができる。この場合、底壁14に接触する第1リブ31の上端に沿って治具Jを移動させることで、底壁14に第1リブ31の上端の形状が、標識Mとして転写される。また、治具Jを用いることに代えて、第1リブ31の上端に、他の部材に転写される塗料(例えばペンキなど)を塗布してもよい。この場合、第1リブ31の上端が底壁14に接触したときに、塗料が底壁14に標識Mとして転写される。また、第1リブ31を底板14に押し付け、底板14を少し凹ませることで、その凹みを標識Mとしてもよい。さらに、第1リブ31を底板14に宛がった状態で、上から粉をはたくことで、底板14のうち、粉の付着がない部分を標識Mとしてもよい。粉を利用する場合、第1リブ31を底板14に宛がう前に底板14に粉をふっておき、第1リブ31を底板14に宛がうことで粉を第1リブ31に転写させ、底板14のうち、粉の付着がない部分を形成してもよい。
【0051】
その後、
図10に示すように、標識M(底壁14に転写された第1リブ31の上端の形状)に基づいて孔10bを形成する。このとき、例えば、施工者は工具Tを用いて底壁14を標識Mに沿って切ることで、孔10bを形成することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る排水部材2によれば、第1リブ31の外径または内径が、孔10bの外径と同等である。したがって、雨樋10の底壁14に第1リブ31の上端の形状を転写し、その後、底壁14に転写された第1リブ31の上端の形状に基づいて孔10bを形成することで、孔10bを形成することができる。
【0053】
第2リブ32が、平面視において第1リブ31と交差する方向に延びている。よって、施工者が施工時において第2リブ32を用いて排水部材2を容易に掴むことができる。
第2リブ32の高さが、第1リブ31の高さ以下である。よって、雨樋10の底壁14に第1リブ31の上端の形状を転写するときに、第2リブ32が作業の邪魔をするのを抑制することができる。
【0054】
第1リブ31に、第1リブ31を径方向に貫通する開口31aが設けられている。よって、例えば、第1リブ31の径方向の内側に降った雨水が、開口31aを通して第1リブ31の径方向の外側に排出される。
開口31aが、上方に開口している。よって、施工者は、施工用の治具を開口31aに対して上方から差し込むことができる。その結果、例えば、施工時に蓋を回転させる必要があるときに、その回転を実施し易くすることができる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、
図11から
図21に示す各変形例に係る排水部材2C~2Lのように、第2リブ32が、平面視において第1リブ31の内側に配置されていてもよい。これらの場合、雨樋10の底壁14に第1リブ31の上端の形状(外形状)を転写するときに、第2リブ32が作業の邪魔をするのを抑制することができる。
ここで、
図11に示す排水部材2Cのように、第2リブ32が第1リブ31と連続していてもよい。
図12から
図21に示す排水部材2D~2Mのように、第2リブ32が第1リブ31と不連続であってもよい。
図12から
図15に示す排水部材2D~2Gのように、第2リブ32の平面視形状が十字状であってもよい。言い換えると、第2リブ32が、ドレン軸Oを中心として、4方向に放射状に延びていてもよい。これらの場合において、
図12、
図13に示す排水部材2D、2Eのように、十字状が連続していてもよく、
図14、
図15に示す排水部材2F、2Gのように、十字状が中央部において不連続であってもよい。
図16から
図18に示す排水部材2H~2Jのように、第2リブ32の平面視形状が三ツ矢状であってもよい。言い換えると、第2リブ32が、ドレン軸Oを中心として、3方向に放射状に延びていてもよい。これらの場合において、
図16に示す排水部材2Hのように、三ツ矢状が連続していてもよく、
図17、
図18に示す排水部材2I、2Jのように、三ツ矢状が中央部において不連続であってもよい。さらに、
図17に示す排水部材2Iのように、第2リブ32が第1リブ31と不連続であってもよく、
図18に示す排水部材2Jのように、第2リブ32が第1リブ31と連続していてもよい。
図19から
図21に示す排水部材2K~2Mのように、第2リブ32の平面視形状が直線状であってもよい。これらの場合において、
図19に示す排水部材2Kのように、直線状が連続していてもよく、
図20、
図21に示す排水部材2L、2Mのように、直線状が不連続であってもよい。さらに、
図20に示す排水部材2Lのように、第2リブ32が長手方向に不連続であってもよく、
図21に示す排水部材2Mのように、第2リブ32が幅方向に不連続であってもよい。
【0057】
さらに
図22に示す変形例に係る排水部材2Nのように、第2リブ32がなくてもよい。
【0058】
鍔22Bの下面に段差部22bがなくてもよい。中央部22fが外周部22eに対して下方に突出していなくてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 雨樋システム
2、2A~2N 排水部材
10 雨樋
10b 孔
14 底壁
20 落し口部
21 蓋
22A 筒
22B 鍔
22e 外周部
22f 中央部
31 第1リブ
31a 開口
32 第2リブ