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特開2024-118205設計支援システム、データ構造、設計支援方法、プログラム、及び計算処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118205
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】設計支援システム、データ構造、設計支援方法、プログラム、及び計算処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240823BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20240823BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F113:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024507
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】新子 忠
(72)【発明者】
【氏名】大籔 直孝
(72)【発明者】
【氏名】宮川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DA03
5B146DE03
5B146DG01
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】建築物モデルにおける配管または配線に対するオブジェクトの配置が効率よく行われるようにする。
【解決手段】ユーザの入力に基づき、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表す疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データを出力する処理部を備え、前記疑似設備オブジェクトは、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有するようにして設計支援システムを構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの入力に基づき、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表す疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データを出力する処理部を備え、
前記疑似設備オブジェクトは、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する、
設計支援システム。
【請求項2】
ユーザによる前記属性情報の入力に応じて、入力された属性情報を取得する属性情報取得部をさらに備える
請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記属性情報は、建築物モデルにおいて対応の疑似設備オブジェクトが配置される部位に対応して定められた、当該部位とオブジェクトとを接続するための接続情報を含む
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記疑似設備オブジェクトは、対応の設備の種別を識別可能な所定の態様が付与される
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記疑似設備オブジェクトは、建築物モデルにおいて対応の設備が配置された場合と同等の空間を占有するようにされたサイズを有する
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項6】
前記処理部は、建築物モデルにおいて設備が配置されるべき部位のうち、正規の設備オブジェクトが存在する部位に対しては当該正規の設備オブジェクトを配置し、正規の設備オブジェクトが存在しない部位に対して疑似設備オブジェクトを配置する
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項7】
前記処理部は、建築物モデルにおいて設備が配置されるべき部位に対して疑似設備オブジェクトを配置し、
前記疑似設備オブジェクトが配置された後の建築物モデルを対象として、配置した疑似設備オブジェクトを正規の設備オブジェクトに置換する
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項8】
建築物モデルにおいて形成される配管または配線の構造に対して配置する設備を表す設備オブジェクトとして、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトを、処理部により配置した設計図データ
を備えるデータ構造。
【請求項9】
ユーザの入力に基づき、建築モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表す疑似設備オブジェクトを配置する工程と、
前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトを含む建築モデルの図面情報データを出力する工程と、を備え、
前記疑似設備オブジェクトは、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する、
設計支援方法。
【請求項10】
設計支援システムにおけるコンピュータを、
ユーザの入力に基づき、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表し、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データを出力する処理部
として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表し、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトが配置され、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データから、前記属性情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された属性情報を用いて、前記配管または配線の構造に関連する所定の計算を実行する計算部と、
をさらに備える計算処理システム。
【請求項12】
読み込みが可能な所定の形式で設計支援システムから出力された図面情報データを読み込む読込部をさらに備え、
前記抽出部は、前記読込部が読み込んだ図面情報データから前記属性情報を抽出する
請求項11に記載の計算処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援システム、データ構造、設計支援方法、プログラム、及び計算処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における特定の設備が設置される空間を表すレイアウト画像において設備の設置位置に対応する位置にオブジェクトを配置可能な技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-7040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BIM(Building Information Modelling)などのように、3次元による建築物の形状を表すモデル(建築物モデル)を作成可能な技術を用いて建築物の設計等を行うにあたり、建築物における配管や配線などに接続される設備のオブジェクトを配置することが行われる。このようなオブジェクトの配置は効率よく行われるようにすることが求められる。
【0005】
本発明は、上記した課題を考慮して、建築物モデルにおける配管または配線に対するオブジェクトの配置が効率よく行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決する本発明の一態様は、ユーザの入力に基づき、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表す疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データを出力する処理部を備え、前記疑似設備オブジェクトは、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する、設計支援システムである。
【0007】
(2)本発明の一態様は、(1)に記載の設計支援システムであって、ユーザによる前記属性情報の入力に応じて、入力された属性情報を取得する属性情報取得部をさらに備えてよい。
【0008】
(3)本発明の一態様は、(1)または(2)に記載の設計支援システムであって、前記属性情報は、建築物モデルにおいて対応の疑似設備オブジェクトが配置される部位に対応して定められた、当該部位とオブジェクトとを接続するための接続情報を含んでよい。
【0009】
(4)本発明の一態様は、(1)から(3)のいずれか1つに記載の設計支援システムであって、前記疑似設備オブジェクトは、対応の設備の種別を識別可能な所定の態様が付与されてよい。
【0010】
(5)本発明の一態様は、(1)から(4)のいずれか1つに記載の設計支援システムであって、前記疑似設備オブジェクトは、建築物モデルにおいて対応の設備が配置された場合と同等の空間を占有するようにされたサイズを有してよい。
【0011】
(6)本発明の一態様は、(1)から(5)のいずれか1つに記載の設計支援システムであって、前記処理部は、建築物モデルにおいて設備が配置されるべき部位のうち、正規の設備オブジェクトが存在する部位に対しては当該正規の設備オブジェクトを配置し、正規の設備オブジェクトが存在しない部位に対して疑似設備オブジェクトを配置してよい。
【0012】
(7)本発明の一態様は、(1)から(6)のいずれか1つに記載の設計支援システムであって、前記処理部は、建築物モデルにおいて設備が配置されるべき部位に対して疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが配置された後の建築物モデルを対象として、配置した疑似設備オブジェクトを正規の設備オブジェクトに置換してよい。
【0013】
(8)本発明の一態様は、建築物モデルにおいて形成される配管または配線の構造に対して配置する設備を表す設備オブジェクトとして、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトを、処理部により配置した設計図データである。
【0014】
(9)本発明の一態様は、ユーザの入力に基づき、建築モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表す疑似設備オブジェクトを配置する工程と、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトを含む建築モデルの図面情報データを出力する工程と、を備え、前記疑似設備オブジェクトは、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する、設計支援方法である。
【0015】
(10)本発明の一態様は、設計支援システムにおけるコンピュータを、ユーザの入力に基づき、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表し、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトを配置し、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データを出力する処理部として機能させるためのプログラムである。
【0016】
(11)本発明の一態様は、建築物モデルにおける配管または配線の構造に対して設置される設備を表し、正規の設備オブジェクトよりも簡易化した形状を有する疑似設備オブジェクトが配置され、前記疑似設備オブジェクトが対応する設備に関する情報項目を含む属性情報と前記疑似設備オブジェクトとを含む建築物モデルの図面情報データから、前記属性情報を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された属性情報を用いて、前記配管または配線の構造に関連する所定の計算を実行する計算部と、を備える計算処理システムである。
【0017】
(12)本発明の一態様は、(11)に記載の計算処理システムであって、読み込みが可能な所定の形式で設計支援システムから出力された図面情報データを読み込む読込部をさらに備え、前記抽出部は、前記読込部が読み込んだ図面情報データから前記属性情報を抽出してよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建築物モデルにおける配管または配線に対するオブジェクトの配置が効率よく行われるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における設計支援システムの全体的な構成例を示す図である。
図2】第1実施形態における設計支援装置が作成する設計図において示される排水配管構造の一例を示す図である。
図3】第1実施形態において、設計図の排水配管構造における或る端部に対して、衛生器具の正規設備オブジェクトを配置した例を示す図である。
図4】第1実施形態において、配水配管構造における端部に疑似設備オブジェクトを配置した態様の一例を示す図である。
図5】第1実施形態における設計支援装置の機能構成例を示す図である。
図6】第1実施形態における設備配置情報の構造例を示す図である。
図7】第1実施形態における正規設備情報、準設備情報の構造例を示す図である。
図8】第1実施形態における設計支援装置が設備オブジェクトの配置に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態における計算処理装置の機能構成例を示す図である。
図10】第1実施形態における計算処理装置が技術計算に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態における設計支援装置が、設備オブジェクト一括置換処理に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図12】第1変形例における設備種別情報の付与の態様例を示す図である。
図13】第1変形例における設備種別情報の付与の態様例を示す図である。
図14】第2変形例における疑似設備オブジェクトの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
[設計支援装置の概要]
図1は、本実施形態の設計支援システムの全体的な構成例を示している。本実施形態の設計支援システムは、設計支援装置100を含む。同図は、設計支援装置100のアプリケーションソフトウェアに関する構成例を示している。本実施形態の設計支援装置100は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末等のコンピュータ装置であって、設計支援アプリケーションAPがインストールされる。
設計支援アプリケーションAPは、BIM(Building Information Modeling)の技術により施工対象の建築物を3次元モデル化した設計図(建築物モデルの一例)を作成可能なアプリケーションである。設計支援アプリケーションAPにより作成される設計図においては、排水用の配管構造も含まれる。
設計支援アプリケーションAPにより作成される設計図としての図面のデータ(設計図データ(図面情報データの一例))のファイル形式は、例えばIFC(Industry Foundation Classes)であってよい。IFCは、BIMに対応して3次元モデルの図面を作成する各種の設計支援アプリケーション間で共通なファイル形式である。
なお、本実施形態の設計支援アプリケーションAPにより作成される図面は、例えば2次元によるものであってもよいが、以下の説明では、3次元による図面である場合を例に挙げる。
【0021】
同図において、設計支援装置100は計算処理装置200と接続される。計算処理装置200は、設計支援装置100が出力した設計図データを読み込む。計算処理装置200は、読み込んだ設計図データを利用して技術計算を実行する。具体的に、計算処理装置200は、例えば設計図データを利用した技術計算として、設計図データが示す建築物内の排水配管構造の排水負荷計算を実行してよい。
計算処理装置200は、例えばネットワーク経由で設計支援装置100と通信可能に接続されるサーバとして構成されてよい。あるいは、計算処理装置200としての機能が、設計支援装置100にインストールされた設計支援アプリケーションAPのアドオンとして組み込まれるものであってもよい。以降においては、計算処理装置200がサーバとして構成される場合を例に説明する。
【0022】
[設備オブジェクト、設備情報について]
設計支援アプリケーションAPが動作する設計支援装置100は、ユーザの設計図作成に対応する操作に応じて設計図を作成する。設計支援装置100が作成する設計図においては、排水に応じた配管構造(配水配管構造)が含まれる。つまり、設計支援装置100は、配水配管構造を含めた建築物の設計図を作成することができる。
【0023】
図2は、設計支援装置100が作成する設計図において示される排水配管構造の一例を示している。
同図の排水配管構造は、それぞれが或る長さを有する配管部材PPを、エルボ、チーズ、ソケット、継手等の連結部材JTを用いて縦方向と横方向とで連結されることで形成される。同図のように形成される排水配管構造の端部EGには、建築物に設けられる設備の一種である衛生器具が接続される。
衛生器具は、何らかのものを水で洗浄して排水する機能を有する器具である。衛生器具の種別には、例えば便器、バスタブ、洗面器等が含まれる。
【0024】
設計図の作成にあたり、図2における端部EGには、接続される衛生器具に応じた3次元のオブジェクトが配置される。
このように設計図に配置される3次元による衛生器具等(設備の一例)のオブジェクト(設備オブジェクト)を再現するデータ(設備オブジェクトデータ)は、例えば対応の衛生器具を製造するメーカや設計支援アプリケーションのベンダー等の正規提供者から提供される。
正規提供者は、設備オブジェクトデータの提供にあたり、対応の設備に関する仕様等の情報を含む属性情報を設備オブジェクトデータに付加する。つまり、正規提供者は、設備オブジェクトデータと対応の属性情報とを含む設備情報を、設計支援装置100のユーザに提供する。このように正規提供者が提供する設備情報については正規なものとされることに基づき、正規設備情報と呼ぶ。また、正規設備情報に含まれる設備オブジェクトデータを利用して設計図に配置される設備オブジェクトについては、正規設備オブジェクトとも呼ぶ。
正規設備情報は、設計支援装置100に記憶され、当該設計支援装置100の設計支援アプリケーションAPが使用するアプリケーションデータとして取り込まれる。
【0025】
図3は、設計図の排水配管構造における或る1つの端部に対して、衛生器具の正規設備オブジェクトROJを配置した例を示している。同図では、対応の衛生器具が便器である場合の例を示している。
このように配置される正規設備オブジェクトROJは、例えば対応の衛生器具としての製品の実物を高い忠実度で模した態様を有し、設計図においては、実寸と設計図の縮尺とに基づいて、実際と同じように空間を占有する状態で表示される。
なお、正規設備情報のうちには、対応の設備の種別に応じて、当該種別の設備の一般的形状を具体的に表すような正規設備オブジェクトを再現するオブジェクトデータ(正規設備オブジェクトデータ)を含むものがあってよい。
【0026】
ただし、正規提供者により設計図に配置すべき全ての設備オブジェクトに対応する正規設備情報を提供できない場合がある。設計図の作成にあたり、ユーザは、正規提供者からオブジェクト関連情報が提供されなかった設備に関しては、例えば自分でオブジェクト関連情報を作成するか、形状や仕様等ができるだけ類似している設備の正規設備情報を用いて、対応のオブジェクトを設計図内に配置することができる。
【0027】
しかしながら、正規提供者から提供される正規設備情報と同程度の内容の設備情報をユーザが作成しようとした場合には、相当に高度なスキルと膨大な作業量が必要となる。このため、ユーザが正規設備連情報と同等の設備情報を作成することは非効率的であって現実的でない。
また、代わりに類似している設備の設備情報を利用する場合には、配置されるオブジェクトの形状サイズや属性情報により示される仕様等が本来の設備と一致するものではなく、項目によっては大きい誤差を生じる可能性もある。このため、例えば、技術計算(例えば、排水負荷計算など)、施工管理、補充管理、発注などで不具合を生じる可能性があり、好ましいとはいえない。
【0028】
そこで、本実施形態においては、正規提供者から正規設備情報が提供されていない設備であって、設計図に設備オブジェクトを配置すべき設備に対応して、擬似的な設備オブジェクト(疑似設備オブジェクト)を配置可能なようにされる。疑似設備オブジェクトは、正規設備オブジェクトよりも簡易な形状により対応の設備を表す設備オブジェクトである。
【0029】
この場合、ユーザは、疑似設備オブジェクトに対応する設備情報(準設備情報)を作成する。
準設備情報としては、例えば簡易化されたオブジェクトの形状を表す設備オブジェクトデータ(疑似設備オブジェクトデータ)と、例えば設備の種別等の必要最小限の情報項目を含む属性情報を含むようにすればよい。この場合、ユーザは、準設備情報の作成にあたり、簡易な形状の3次元オブジェクトの作成と、必要と判断した情報項目の入力との操作を行えばよい。
このような準設備情報の作成にあたっては、高度なスキルは不要であり、作業量も少ない。また、例えば準設備情報の作成支援機能を有するアプリケーションを使用すれば、ユーザは準設備情報を手軽に分かりやすく作成することもできる。
【0030】
ユーザは、作成した準設備情報を設計支援装置100(あるいは設計支援装置100に接続された記憶装置)に記憶させる。ユーザは、設計支援装置100を操作して準設備情報を作成し、作成した準設備情報を設計支援装置100に記憶させるようにしてよい。
あるいは、ユーザは、設計支援装置100とは異なるパーソナルコンピュータ等の装置により準設備情報を作成し、作成した準設備情報を、データインターフェースやネットワークによる通信等を経由して設計支援装置100に引き渡すことで、設計支援装置100にて準設備情報が記憶されるようにしてよい。
また、ユーザが作成する準設備情報の形式は、例えばCSV等をはじめとして特に限定されない。
設計支援装置100は、記憶された準設備情報を、設計支援アプリケーションAPが使用可能なアプリケーションデータとして取り込む。
【0031】
ユーザは、設計支援装置100が記憶する準設備情報を利用して、設計支援アプリケーションAPに対する操作を行って、設計図内に疑似設備オブジェクトを配置することができる。
【0032】
図4は、排水配管構造における或る端部EGに疑似設備オブジェクトDOJを配置した態様の一例を示している。
同図では、縦方向に配された配管部材PPの上端開口部が端部EGに相当する場合を示している。同図における疑似設備オブジェクトDOJは、端部EGに対応する配管部材PPの上端開口部を塞ぐ栓として表されている。
このような栓としての形状を有する疑似設備オブジェクトDOJは、例えば図3の正規設備オブジェクトROJと比較して分かるように、単純な形状を有している。このように疑似設備オブジェクトDOJの形状は、対応の設備の種別を識別することが不可あるいは困難な形状を有するものであってよい。また、このような栓としての形状を有する疑似設備オブジェクトDOJは、図3の正規設備オブジェクトROJと比較してサイズも小さい。このような疑似設備オブジェクトDOJに対応する疑似設備オブジェクトデータは、正規設備オブジェクトROJに対応する正規設備オブジェクトデータよりもデータサイズが小さく、表示のためのレンダリング等の処理負荷も軽減される。
【0033】
そのうえで、疑似設備情報においては、疑似設備オブジェクトデータに対して、ユーザが最小限必要であると判断した仕様等の情報項目を含む属性情報が付加される。このような属性情報が疑似設備オブジェクトデータに付加されていることで、疑似設備オブジェクトDOJ自体は正規設備オブジェクトより小さく簡易なものであっても、例えば設計支援装置100にて各種の技術計算などについて適正に実行することができる。
【0034】
このようにして、本実施形態においては、設計図の作成に際し、設備の配置される位置に対応して設備オブジェクトを配置するにあたり、正規設備情報が提供されている設備については、正規設備情報を用いて正規設備オブジェクトROJを配置することができる。一方で、正規設備情報が提供されていない設備については、ユーザは、準設備情報を作成し、作成した準設備情報を用いて疑似設備オブジェクトDOJを配置することで、設計図の作成を進めていくことができる。
【0035】
[設計支援装置の機能構成例]
図5は、設計支援装置100の機能構成例を示している。同図の設計支援装置100としての機能は、ハードウェアとしての設計支援装置100が備えるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等がプログラムを実行することにより実現される。
同図の設計支援装置100は、操作部101、表示部102、データインターフェース部103、制御部104、及び記憶部105を備える。
【0036】
操作部101は、設計支援装置100が備える操作子や設計支援装置100に接続された入力デバイス等を含み、これらの操作子や入力デバイスに対して行われた操作を受け付ける。
【0037】
表示部102は、ディスプレイデバイスを含み、制御部104の制御に応じて当該ディスプレイデバイスに画像を表示する。
【0038】
また、設計支援装置100は、表示面に対する操作が可能なタッチパネル等のデバイスを有してもよい。
【0039】
データインターフェース部103は、有線または無線により外部とのデータの授受を行う部位である。データインターフェース部103は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のデータインターフェース規格に対応する部位を含んでよい。また、データインターフェース部103は、インターネット、LAN、Wifi(登録商標)等のネットワーク経由の通信に対応する部位を含んでよい。
【0040】
制御部104は、設計支援装置100における各種の制御を実行する。制御部104は、設計支援部141を備える。設計支援部141としての機能は、設計支援装置100としてのコンピュータが、BIMに対応する設計支援アプリケーションAPとしてのプログラムを実行することにより実現される。
設計支援部141は、3次元による建築物の設計図の作成に関連する処理を実行する。設計支援部141は、オブジェクト配置処理部1411と属性情報取得部1412とを備える。
【0041】
オブジェクト配置処理部1411は、設備情報(正規設備情報、準設備情報)を利用して、作成対象の設計図の3次元空間に設備オブジェクト(正規設備オブジェクト、疑似設備オブジェクト)を配置する処理を実行する。
【0042】
属性情報取得部1412は、ユーザの操作により疑似設備オブジェクトデータに対応して作成された属性情報、または外部からデータインターフェース部103を経由して入力された、疑似設備オブジェクトデータに対応の属性情報を取得する。
【0043】
記憶部105は、設計支援装置100に関連する各種の情報を記憶する。設計支援装置100は、設計図データ記憶部151、正規設備情報記憶部152、及び準設備情報記憶部153を備える。
【0044】
設計図データ記憶部151は、設計支援部141により作成される設計図のデータ(設計図データ)を記憶する。設計図データにおいては、設計図の3次元空間に設備オブジェクトが配置されたことに応じて、配置された設備に関する情報(設備配置情報)が含まれる。
【0045】
図6は、設計図に配置された1つの設備に対応する設備配置情報の構造例を示している。同図に示されるように、1つの設備に対応する設備配置情報は、配置対象設備ID、設備オブジェクデータ、配置先部材ID、及び接続位置の領域を含む。
【0046】
配置対象設備IDの領域は、設計図内に配置された設備オブジェクトに対応する設備(配置対象設備)を設計図内で一意に示す設備IDを格納する。
【0047】
設備オブジェクトデータの領域は、配置対象設備に対応する設備オブジェクトデータのファイル名を格納する。
【0048】
接続先部材IDの領域は、配置対象設備が配置されるにあたり、配置対象設備の接続先となる部材を設計図内で一意に示す部材IDを格納する。具体的に配置対象設備が衛生器具である場合には、排水配管構造において当該衛生器具の接続先となる配管部材PPを示す部材IDが配置先部材IDの領域に格納される。
【0049】
接続位置の領域は、配置対象設備が接続先部材に対して接続される際に接続の基準となる接続位置を格納する。接続位置は、例えば設計図における接続先部材の位置に基づいて定められた設計図としての3次元空間における座標により表されてよい。
一具体例として、衛生器具(配置対象設備)を、排水配管構造における配管部材PP(接続先部材)に接続する際には、接続先部材である配管部材PPにおいて規定した接続点が位置する座標を接続位置としてよい。
【0050】
説明を図5に戻す。
正規設備情報記憶部152は、正規設備情報を記憶する。
図7は、1つの正規設備オブジェクトに対応する正規設備情報の構造例を示している。同図の正規設備情報は、設備ID、設備オブジェクトデータ、及び属性情報の領域を含む。設備IDの領域は、対応の設備を設計図内で一意に示す設備IDを格納する。
【0051】
設備オブジェクトデータの領域は、対応の設備の正規設備オブジェクトデータを格納する。
【0052】
属性情報の領域は、対応の設備の属性情報を格納する。属性情報は、例えばメーカ情報、製品情報、種別情報、仕様情報、基準位置等の情報を含む。
メーカ情報は、対応の設備を製造するメーカに関する情報(メーカ名等)を含む情報項目である。
製品情報は、対応の設備としての製品に関する情報(製品名、型番、製造年等)を含む情報項目である。
種別情報は、対応の設備の種別を示す情報である。一例として、設備が衛生器具の1種である洗面台である場合には、種別情報は、洗面台であることを示す。また、種別情報は、例えば衛生器具の種別の階層下において、洗面台、便器、浴槽といった分類を示すようにして、階層化された分類構造を有するようにされてよい。
仕様情報は、対応の設備としての製品について定められた各種の仕様を示す情報項目である。例えば設備が衛生器具である場合の仕様情報には、例えば寸法、構成部品、給水負荷、排水負荷等が含まれてよい。
基準位置は、対応の設備について規定された基準の位置(原点)を示す。
【0053】
準設備情報記憶部153は、準設備情報を記憶する。準設備情報は、図7と同様の構造であってよい。そのうえで、属性情報に含まれる情報項目については、ユーザが必要と判断した情報項目が含まれていればよく、省略される情報項目があってよい。また、図7では、設備オブジェクトデータは、拡張子により正規設備オブジェクトデータと疑似設備オブジェクトデータのいずれであるのかが識別可能とされている例を示している。
【0054】
[設計支援装置の処理手順例]
図8のフローチャートを参照して、設計支援装置100が設備オブジェクト(正規設備オブジェクト、疑似設備オブジェクト)の配置に関連して実行する処理手順例について説明する。
【0055】
ステップS100:ユーザは、3次元空間による設計図に設備オブジェクトを配置するにあたり、設計支援アプリケーションAPが動作する設計支援装置100に対して、設備オブジェクトを配置しようとする位置を指定する操作(位置指定操作)を行う。位置指定操作に応じて、オブジェクト配置処理部1411は、配置対象位置を設定する。
具体的に、或る衛生器具を配置しようとする場合、ユーザは、位置指定操作により、衛生器具を接続すべき配管部材PPの端部EGを指定する。この場合、オブジェクト配置処理部1411は、指定された配管部材PPの端部EGを配置対象位置として設定する。
例えば、オブジェクト配置処理部1411は、表示部102にて表示される設計図の3次元空間において、設定された配置対象位置に対応する箇所について色を変更したり、枠で囲うなどのように所定の態様を付加することで、配置対象位置として設定されている箇所であることが示されるようにしてよい。
【0056】
ステップS102:ユーザは、位置指定操作により配置対象位置を設定すると、配置すべき設備オブジェクトを指定するための操作を行う。ここでは、設備オブジェクトを指定するために、設備オブジェクトリストを表示させ、表示された設備オブジェクトリストから、配置すべき設備オブジェクトを指定する操作が行われるようにする場合を例に挙げる。
この場合、ユーザは、配置すべき設備オブジェクトを指定するための操作として、まず設備オブジェクトリストを表示させる操作を行う。設備オブジェクトリストを表示させる操作に応じて、オブジェクト配置処理部1411は、設計支援アプリケーションAPのアプリケーション画面にて設備オブジェクトリストを表示する。
設備オブジェクトリストにおけるリスト項目は、正規設備情報記憶部152が記憶する正規設備情報と準設備情報記憶部153が記憶する準設備情報とに基づくものとなる。この場合、当該ステップS102により表示された設備オブジェクトリストにおいては、正規設備オブジェクトのリスト項目と疑似設備オブジェクトのリスト項目とが混在してよい。
なお、オブジェクト配置処理部1411は、ステップS100により設定された配置対象位置に応じて候補となる設備を抽出し、抽出した設備に対応するリスト項目による設備オブジェクトリストを表示するようにしてよい。
【0057】
ステップS104:ユーザは、ステップS102により表示された設備オブジェクトリストから、配置対象とする設備に対応するリスト項目を選択する操作(リスト項目選択操作)を行う。オブジェクト配置処理部1411は、ユーザにより行われたリスト項目選択操作を受け付ける。
【0058】
ステップS106:オブジェクト配置処理部1411は、ステップS104により受け付けたリスト項目選択操作により選択されたリスト項目に対応する設備情報から設備オブジェクトデータを取得する。この際、オブジェクト配置処理部1411は、選択されたリスト項目が正規設備オブジェクトに対応するものであった場合には、正規設備情報記憶部152が記憶する正規設備情報のうち、選択されたリスト項目に対応する正規設備情報から正規設備オブジェクトデータを取得することとなる。
また、オブジェクト配置処理部1411は、選択されたリスト項目が疑似設備オブジェクトに対応するものであった場合には、準設備情報記憶部153が記憶する準設備情報のうち、選択されたリスト項目に対応する準設備情報から疑似設備オブジェクトデータを取得することとなる。
オブジェクト配置処理部1411は、取得した設備オブジェクトデータ(正規設備オブジェクトデータまたは疑似設備オブジェクトデータ)を利用して3次元による設備オブジェクトをレンダリングし、レンダリングにより得られた設備オブジェクトを設計図としての3次元空間において、ステップS100により設定された配置対象位置に配置する。この際、オブジェクト配置処理部1411は、例えば配置先の部材に対応して定めた接続位置に対して、設備オブジェクトに対応する所定の位置を接続するようにして配置を行ってよい。
オブジェクト配置処理部1411は、上記のようにして設備オブジェクトを配置したことに応じて設備配置情報(図6)を生成し、生成した設備配置情報を設計図データに含める。
【0059】
[計算処理装置の機能構成例]
図9は、計算処理装置200の機能構成例を示している。同図の計算処理装置200としての機能は、計算処理装置200としてのハードウェアが備えるCPUがプログラムを実行することにより実現される。同図の計算処理装置200は、通信部201、制御部202、及び記憶部203を備える。
【0060】
通信部201は、ネットワーク経由で設計支援装置100と通信可能に接続する。
【0061】
制御部202は、計算処理装置200における各種の制御を実行する。制御部202は、読込部221、抽出部222、及び計算部223を備える。
【0062】
読込部221は、設計支援装置100が技術計算の対象として送信(出力)し、通信部201が受信した設計図データを読み込む。読込部221が読み込んだ設計図データは、設計図データ記憶部231が記憶してよい。設計支援装置100が送信する設計図データには、配置された設備ごとの設備配置情報(図6)と設備情報(図7の正規設備情報、準設備情報)とが含められる。つまり、設計支援装置100が送信する設計図データには、配置された設備ごとの属性情報が含まれる。ただし、計算処理装置200が実行する技術計算が排水負荷計算である場合には、設計支援装置100が送信する設計図データには、配置された衛生器具としての設備の属性情報が含まれればよく、衛生器具ではない設備の属性情報は含まれなくともよい。つまり、設計支援装置100が送信する設計図データには、技術計算に対応して必要な設備の属性情報が含まれていればよい。
【0063】
抽出部222は、読込部221が読み込んだ設計図データに含まれる属性情報を抽出する。本実施形態において、このように抽出された属性情報は、正規設備オブジェクトの属性情報と疑似設備オブジェクトの属性情報とが混在してよい。
【0064】
計算部223は、抽出部222により抽出された設備ごとの属性情報を利用して技術計算を実行する。計算部223は、技術計算の結果を、通信部201を介して設計支援装置100に送信(出力)してよい。
【0065】
記憶部203は、計算処理装置200に関する各種の情報を記憶する。同図の記憶部203は、設計図データ記憶部231と計算結果記憶部232とを備える。
設計図データ記憶部231は、読込部221が読み込んだ設計図データを記憶する。
計算結果記憶部232は、計算部223による技術計算結果を記憶する。
【0066】
[技術計算に関する処理手順例]
図10のフローチャートを参照して、本実施形態の設計支援装置100と計算処理装置200とが、技術計算に関連して実行する処理手順例について説明する。同図の説明にあたっては、技術計算として排水負荷計算が行われる場合を例に挙げる。
【0067】
まず、設計支援装置100が実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:設計支援装置100において制御部104は、例えば設計図データ記憶部151が記憶する設計図データのうちから、ユーザの操作により技術計算(排水負荷計算)の対象として選択された設計図データを、計算処理装置200に送信する。このように送信される設計図データには、前述のように、設計図データが示す図面において配置された設備として排水負荷計算に必要な衛生器具の属性情報が含められる。
【0068】
ステップS202:計算処理装置200は、ステップS200により送信された設計図データを利用して排水負荷計算を実行し、排水負荷計算結果を設計支援装置100に送信する。
設計支援装置100において制御部104は、送信された排水負荷計算結果を、例えば表示、印刷等により出力する。
【0069】
次に、計算処理装置200が実行する処理手順例について説明する。
ステップS300:計算処理装置200において読込部221は、ステップS200により送信された設計図データを読み込む。読込部221は、読み込んだ設計図データを設計図データ記憶部231に記憶させてよい。
【0070】
ステップS302:抽出部222は、ステップS300により読み込まれた設計図データから、排水配管構造に対して配置された衛生器具としての設備ごとの属性情報を抽出する。
【0071】
ステップS304:計算部223は、排水負荷計算にあたり、ステップS302により抽出した属性情報を利用して設計図データが示す図面において配置される衛生器具の集計を行う。
【0072】
ステップS306:計算部223は、ステップS304による集計結果を利用して排水負荷計算を実行する。排水負荷計算によっては、例えば排水配管構造における負荷流量が算出され、算出された負荷流量に基づいて、排水配管に用いる配管部材の口径等が求められる。
【0073】
ステップS308:計算部223は、ステップS306による排水負荷計算の計算結果を、通信部201から設計支援装置100に送信させる。また、計算部223は、計算結果を、計算結果記憶部232に記憶させてよい。
【0074】
<第2実施形態>
上記第1実施形態においては、正規提供者から正規設備情報が提供されている設備については、提供された正規設備情報を用いて対応の設備オブジェクトを設計図内に配置したうえで、正規設備情報が提供されていない設備の設備オブジェクトを配置する場合に、ユーザが作成した準設備情報を利用するようにされていた。
準設備情報に含まれる疑似設備オブジェクトデータは正規設備オブジェクトデータよりも簡易な形状を表すものであるため、データサイズが小さく、レンダリングの処理負荷も軽い。このため、設計図に配置される設備オブジェクトのうちで疑似設備オブジェクトが多く配置されて、正規設備オブジェクトデータの配置数が少ないほど、設計図に関する処理負荷が軽減され、設計支援アプリケーションAPを軽快に動作させることができる。
【0075】
そこで、本実施形態において、ユーザは、正規設備情報が提供されている設備についても対応の準設備情報を作成し、設計支援装置100の準設備情報記憶部153に記憶させておくようにする。そのうえで、ユーザは、設計図に設備オブジェクトを配置するにあたり、対象の設備に対応して正規設備情報と準設備情報との両者が記憶されている場合、対応の準設備情報を利用して疑似設備オブジェクトを配置して設計図の作成を進めるようにされる。
【0076】
この場合、例えば設計支援アプリケーションAPにおいて、設備オブジェクトとして疑似設備オブジェクトの配置を優先させる疑似設備オブジェクト優先配置モードが設定可能とされてよい。疑似設備オブジェクト優先配置モードが設定されている場合、例えばオブジェクト配置処理部1411は、図8のステップS102の処理として、対応の正規設備情報と準設備情報とを有する準設備情報記憶部153にて記憶されている設備については、準設備情報に対応するリスト項目を優先して提示した設備オブジェクトリストを表示するようにされてよい。あるいは、疑似設備オブジェクト優先配置モードのもとでは、正規設備情報と準設備情報とで区別せずに単に設備を表すリスト項目を提示し、選択されたリスト項目が示す設備に対応して正規設備情報と疑似設備情報とが記憶されている場合には、疑似設備オブジェクトを優先して配置するようにしてよい。このような処理とすれば、正規設備情報のみが記憶されている設備については正規設備オブジェクトが配置され、準設備情報のみが記憶される設備あるいは準設備情報と正規設備情報とが記憶される設備については、疑似設備オブジェクトが配置されるようにすることができる。なお、準設備情報と正規設備情報とが記憶される設備であっても、必要に応じて、例えばユーザの操作により、正規設備オブジェクトを配置可能なようにされてよい。
このように設備オブジェクトが配置される場合、設計図において配置される設備オブジェクトの多くが疑似設備オブジェクトとなり、正規設備オブジェクトの数は少ないことから、設計支援アプリケーションAPが軽快に動作する状態のもとで設計図作成に関する操作を行うことができる。
【0077】
ユーザは、例えば設計図が完成した段階、あるいは設備オブジェクトの配置結果の確認などの所定の機会にて、設計図に配置される疑似設備オブジェクトのうち、対向の正規設備情報が記憶されている場合には、正規設備オブジェクトに置換する操作(オブジェクト置換操作)ことができる。オブジェクト置換操作として、ユーザは、図8に対応する操作手順で疑似設備オブジェクトを1つずつ正規設備オブジェクトに置換するようにされてようい。また、オブジェクト置換操作として、例えば設計支援アプリケーションAPのアプリケーション画面上に配置された一括置換指示ボタン等に対する操作(一括置換指示操作)を行うようにされてもよい。この場合、設計支援装置100は、一括置換指示操作が行われたことに応じて、設計図に配置された全ての疑似設備オブジェクトを正規設備オブジェクトに置換する処理(設備オブジェクト一括置換処理)を実行する。
【0078】
図11のフローチャートは、設計支援装置100が設備オブジェクト一括置換処理に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS400:設計支援装置100においてオブジェクト配置処理部1411は、ユーザにより行われた一括置換指示操作を受け付ける。
【0080】
ステップS402:一括置換指示操作を受け付けると、オブジェクト配置処理部1411は、現在において設計図に配置されている疑似設備オブジェクトのそれぞれについて、置換先となる同じ設備に対応する正規設備オブジェクトを特定する。
具体的に、例えばオブジェクト配置処理部1411は、設計図に配置されている疑似設備オブジェクトに対応する準設備情報に格納されているのと同じ設備IDを格納する正規設備情報を、正規設備情報記憶部152から検索する。オブジェクト配置処理部1411は、検索した正規設備情報が格納する正規設備オブジェクトデータを取得する。このようにして、当該ステップS402による正規設備オブジェクトが特定される。
【0081】
ステップS404:オブジェクト配置処理部1411は、設計図に配置されている疑似設備オブジェクトごとに、ステップS402により特定した正規設備オブジェクトで置換するように配置を行う。この際には、置換の対象とされた設備の設備配置情報(図6)においては、設備オブジェクトデータの領域に格納するファイル名を、疑似設備オブジェクトのファイル名から正規設備オブジェクトのファイル名に更新する。
【0082】
<変形例>
以下、上記各実施形態の変形例について説明する。
[第1変形例]
設計図において配置された疑似設備オブジェクトに対して、対応の設備の種別が何であるのかを示す所定の態様(意匠)による標示(設備種別標示)が付与されてよい。
図12は、設備種別標示の付与の一態様例として、設計図において配置された疑似設備オブジェクトDOJの近傍に設備種別ラベルLBを配置した態様である。
図13は、設備種別標示の付与の一態様例として、設計図において配置された疑似設備オブジェクトDOJに設備種別を示すアイコンICNを配置した態様である。
【0083】
また、図示は省略するが、設備種別標示の付与の一態様例として、対応の設備種別を示す図記号的な形状を疑似設備オブジェクトDOJ自体が有するようにされてもよい。
【0084】
[第2変形例]
上記各実施形態において疑似設備オブジェクトは対応の正規設備オブジェクトよりも小さいサイズとされていた。本変形例における疑似設備オブジェクトは、例えば形状の簡易性は維持しつつ、対応の正規設備オブジェクトと同等のサイズを有するようにされてよい。
【0085】
図14は本変形例の疑似設備オブジェクトDOJの一例を示している。同図の疑似設備オブジェクトDOJは、例えば図3の便器としての正規設備オブジェクトROJに対応する。同図の疑似設備オブジェクトDOJは、図3の正規設備オブジェクトROJと同等の寸法に基づくサイズを有し、略直方体とされて直線により形成された立体としての形状を有している。
【0086】
[第3変形例]
設計図において設備オブジェクトが配置される対象は、排水配管構造に限定されない。例えば、設備オブジェクトが配置される対象は給水配管構造、排気・吸気等の通気配管構造、電気系の配線構造等であってもよい。
また、設計図において設備オブジェクトが配置される部位は、配管や配線の構造における端部以外に限定されるものではなく、例えばフロアにおける所定位置に配備される机、テーブル等の什器等であってもよい。
【0087】
[第4変形例]
複数の装置のそれぞれに設計支援装置100における所定の機能を分散して有させるようにしたうえで、複数の装置が通信経由で連携することにより、設計支援装置100と同様の機能が実現されるように設計支援システムを構成してよい。
また、このような設計支援システムとして、例えばユーザが操作する設計支援装置とネットワーク上に設けられた設計支援サーバとが連携するようにされてよい。この場合において、例えば、ユーザが操作する設計支援装置はシンクライアント端末として構成され、設計支援アプリケーションAPに対応する機能を設計支援サーバが有するようにされてよい。このような構成では、設計支援装置は、例えばブラウザにより設計支援サーバにアクセスして設計図のアプリケーション画面を表示する。設計支援装置は、ユーザが行った設備オブジェクトの配置等をはじめとするアプリケーション画面に対する操作を示す操作情報を設計支援サーバに送信する。設計支援サーバは、受信した操作情報に応じた処理を実行し、処理結果が反映されたアプリケーション画面を生成して、設計支援装置に表示させる。
同様に、複数の装置のそれぞれに計算処理装置200としての所定の機能を分散して有させるようにしたうえで、複数の装置が通信経由で連携することにより、計算処理装置200と同様の機能が実現されるように計算処理装置システムを構成してもよい。
【0088】
なお、上述の設計支援装置100等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の設計支援装置100等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 設計支援装置、101 操作部、102 表示部、103 データインターフェース部、104 制御部、105 記憶部、141 設計支援部、151 設計図データ記憶部、152 正規設備情報記憶部、153 準設備情報記憶部、1411 オブジェクト配置処理部、1412 属性情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14