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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118209
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/26 20060101AFI20240823BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20240823BHJP
   H01Q 9/44 20060101ALI20240823BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01Q21/26
H01Q9/16
H01Q9/44
H01Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024517
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109668
【氏名又は名称】DXアンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城阪 敏明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 良佑
(72)【発明者】
【氏名】岡本 清立
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC09
5J020DA01
5J020DA02
5J020DA03
5J020DA04
5J020DA07
5J021AB03
5J021GA01
5J021GA08
5J021HA07
5J021JA02
5J021JA06
(57)【要約】
【課題】アンテナ装置の指向性を広角にしつつ帯域幅を広げる。
【解決手段】アンテナ装置は、グランド板と、互いに交差して配置される一対のダイポールアンテナを含むクロスダイポールアンテナと、を備え、一対のダイポールアンテナは、それぞれ、グランド板に対して平行な方向で、かつ、一対のダイポールアンテナの交差位置から互いに反対方向に延びる一対の第1放射素子と、一対の第1放射素子のそれぞれの交差位置側とは反対側の端部からグランド板に向かって延びる一対の第2放射素子と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド板と、
互いに交差して配置される一対のダイポールアンテナを含むクロスダイポールアンテナと、を備え、
前記一対のダイポールアンテナは、それぞれ、
前記グランド板に対して平行な方向で、かつ、前記一対のダイポールアンテナの交差位置から互いに反対方向に延びる一対の第1放射素子と、
前記一対の第1放射素子のそれぞれの前記交差位置側とは反対側の端部から前記グランド板に向かって延びる一対の第2放射素子と、を有する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1放射素子は、前記グランド板に対して平行な方向に広がる板状である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1放射素子は、前記交差位置側からその反対側に向かって末広がりとなる扇状である、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2放射素子は、前記交差位置側からその反対側に向かう方向を板厚方向とする板状である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1放射素子は、前記グランド板と平行な方向に広がる板状であり、かつ、前記交差位置側からその反対側に向かって末広がりとなる扇状であり、
前記第2放射素子は、前記第1放射素子の前記交差位置側とは反対側の端部の全域から前記グランド板に向かって板状に延びる、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1放射素子および前記第2放射素子の少なくとも一方は、クランク状に形成される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記グランド板から立ち上がった4本の給電線路を備え、
前記4本の給電線路は、それぞれ、2組の前記一対のダイポールアンテナの各給電点に接続される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッチアンテナなど種々の円偏波アンテナが知られている。たとえば、パッチアンテナの一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-32121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPSアンテナなどでは、円偏波を必要とし、また、広角指向性を必要とするため、パッチアンテナが用いられる。しかし、パッチアンテナは原理上、他のアンテナよりも帯域幅が狭い。一方で、クロスダイポールアンテナは円偏波アンテナとして動作し、パッチアンテナよりも広帯域性を有するが、広角指向性を有するとは言い難い。
【0005】
本発明は、アンテナ装置の指向性を広角にしつつ帯域幅を広げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によるアンテナ装置は、グランド板と、互いに交差して配置される一対のダイポールアンテナを含むクロスダイポールアンテナと、を備える。一対のダイポールアンテナは、それぞれ、グランド板に対して平行な方向で、かつ、一対のダイポールアンテナの交差位置から互いに反対方向に延びる一対の第1放射素子と、一対の第1放射素子のそれぞれの交差位置側とは反対側の端部からグランド板に向かって延びる一対の第2放射素子と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、アンテナ装置の指向性を広角にしつつ帯域幅を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
図2】実施形態に係るアンテナ装置の平面図である。
図3】実施形態に係るアンテナ装置の部分断面図である。
図4図1からダイポールアンテナを省略した図である。
図5】実施形態に係るアンテナ装置の給電回路部の構成図である。
図6】従来の給電回路部の構成図である。
図7】実施形態に係るアンテナ装置の指向性を示す図である。
図8】実施形態に係るアンテナ装置の指向性を示す図である。
図9】実施形態に係るアンテナ装置の指向性を示す図である。
図10】実施形態に係るアンテナ装置の受信周波数帯域を示す図である。
図11】実施形態に係るアンテナ装置の交差偏波特性を示す図である。
図12】従来の誘電体付きパッチアンテナの交差偏波特性を示す図である。
図13】第1変形例に係るアンテナ装置の斜視図である。
図14】第2変形例に係るアンテナ装置の第1放射素子の形状を示す図である。
図15】第3変形例に係るアンテナ装置の第2放射素子の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図9を参照し、本実施形態のアンテナ装置100について説明する。アンテナ装置100は、広角指向性を必要とする円偏波アンテナである。たとえば、アンテナ装置100は、GNSSを利用するGPSアンテナなどの測位アンテナである。なお、以下の説明では、「平行」は略平行を含み、「垂直」は略垂直を含む。「直交」は略直交を含む。
【0010】
また、以下の説明で参照する図面では、XYZ座標系を示す。以下の説明において、第1方向はX軸方向であり、第1方向と直交する第2方向はY軸方向であり、第1方向および第2方向と直交する第3方向はZ軸方向である。ここでは、X方向を垂直真上方向(天頂方向)とし、Y方向およびZ方向を水平方向とする。
【0011】
図1図4に示すように、アンテナ装置100は、グランド板1と、クロスダイポールアンテナ2と、を備える。グランド板1は、平板状である。グランド板1は、第1方向からの平面視において、円形状である。なお、グランド板1は、第1方向からの平面視において、略円形状でもよいし、概ね同等面積の方形形状でもよい。グランド板1は、クロスダイポールアンテナ2を構成する放射素子の後方に配置される。グランド板1は、その一方面1aがクロスダイポールアンテナ2と第1方向に対向するよう配置される。クロスダイポールアンテナ2は、第1方向からの平面視において、グランド板1の外縁よりも内側に位置する。グランド板1は、クロスダイポールアンテナ2の反射板として機能する。
【0012】
クロスダイポールアンテナ2は、互いに直交する一対の半波長ダイポールアンテナで構成される。具体的には、クロスダイポールアンテナ2は、一対のダイポールアンテナ20を含む。一対のダイポールアンテナ20は、第1方向からの平面視において、互いに直交するよう配置される。すなわち、一対のダイポールアンテナ20は、第1方向からの平面視において、互いに交差する。第1方向からの平面視において、一方のダイポールアンテナ20は第2方向に延びるように配置され、他方のダイポールアンテナ20は第3方向に延びるように配置される。以下の説明において、一方および他方の各ダイポールアンテナ20を区別する必要がある場合、一方のダイポールアンテナ20に符号21を付して第1ダイポールアンテナ21と称し、他方のダイポールアンテナ20に符号22を付して第2ダイポールアンテナ22と称する。
【0013】
クロスダイポールアンテナ2は、一対のダイポールアンテナ20の交差位置CPに給電点を有する。一対のダイポールアンテナ20は、第1方向からの平面視において、グランド板1の中心位置で互いに交差する。言い換えると、一対のダイポールアンテナ20は、所定位置で互いに交差する。そして、その交差位置CP(すなわち、所定位置)にグランド板1の中心位置が合わせられる。
【0014】
以下、一対のダイポールアンテナ20の各構成について詳細に説明する。なお、第1ダイポールアンテナ21および第2ダイポールアンテナ22の各構成は互いに同じである。したがって、以下の説明では、第1ダイポールアンテナ21および第2ダイポールアンテナ22の各構成要素に同じ符号を付す。
【0015】
一対のダイポールアンテナ20は、それぞれ、一対の第1放射素子201を有する。ここで、一般的なダイポールアンテナは、一対の第1放射素子201に相当する部分のみで構成され、後述する一対の第2放射素子202に相当する部分は有しない。
【0016】
一対の第1放射素子201は、グランド板1に対して平行な方向に延びる。なお、第1方向と直交する方向(当該方向は第2方向または第3方向である)がグランド板1に対して平行な方向である。すなわち、一対の第1放射素子201は、第1方向と直交する方向に延びる。また、一対の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPから互いに反対方向に延びる。
【0017】
第1ダイポールアンテナ21のうち、一方の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPから第2方向の一方側(すなわち、交差位置CP側とは反対側であり外側)に延び、他方の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPから第2方向の他方側(すなわち、交差位置CP側とは反対側であり外側)に延びる。第2ダイポールアンテナ22のうち、一方の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPから第3方向の一方側(すなわち、交差位置CP側とは反対側であり外側)に延び、他方の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPから第3方向の他方側(すなわち、交差位置CP側とは反対側であり外側)に延びる。
【0018】
一対の第1放射素子201は、それぞれ、グランド板1(その一方面1a)に対して平行な方向に広がる板状であり、棒状ではない。すなわち、一対の第1放射素子201は、それぞれ、第1方向と直交する方向に広がる。なお、一般的には、ダイポールアンテナは棒状である。一対の第1放射素子201は、それぞれ、金属板である。
【0019】
一対の第1放射素子201は、それぞれ、第1方向からの平面視において、交差位置CP側からその反対側に向かって末広がりとなる扇状である。一対の第1放射素子201(すなわち、第1方向からの平面視において扇状の部分)は、それぞれ、第1方向からの平面視において、その中心角が約60°となるよう形成される。以下の説明では、一対の第1放射素子201のうち、第1方向からの平面視において、交差位置CP側とは反対側に位置する端部に符号2011を付す。一対の第1放射素子201の各端部2011は、第1方向からの平面視において、略円弧状である。なお、一対の第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CPに対して点対称となる形状を有する。
【0020】
ここで、一対のダイポールアンテナ20は、それぞれ、一対の第1放射素子201のそれぞれの端部2011からグランド板1に向かって延びる一対の第2放射素子202を有する(図3参照)。すなわち、第1ダイポールアンテナ21のうち、第2方向の一方および他方の各端部2011には、それぞれ、第2放射素子202が接続される。同様に、第2ダイポールアンテナ22のうち、第3方向の一方および他方の各端部2011には、それぞれ、第2放射素子202が接続される。
【0021】
一対の第2放射素子202は、それぞれ、接続先の第1放射素子201に一体的に設けられる。すなわち、一対の第2放射素子202は、それぞれ、接続先の第1放射素子201と同一部材である。ダイポールアンテナ20の素材を垂直に折り曲げることにより、第2放射素子202を一体的に有する第1放射素子201を形成できる。ダイポールアンテナ20の素材は金属板である。すなわち、一対の第2放射素子202は、それぞれ、金属板である。一対の第2放射素子202は、それぞれ、接続先の第1放射素子201に対して垂直に延びる(図3参照)。なお、第1放射素子201をプリント基板上の銅箔とし、第2放射素子202を金属板とすることもできる。
【0022】
具体的には、一対の第2放射素子202は、それぞれ、接続先の第1放射素子201の端部2011の全域からグランド板1に向かって板状に延びる。一対の第2放射素子202は、交差位置CP側からその反対側に向かう方向を板厚方向とする板状である、一対の第2放射素子202は、それぞれ、第1方向からの平面視において、略円弧状に湾曲する。すなわち、一対の第2放射素子202は、それぞれ、第1方向からの平面視において、接続先の第1放射素子201の端部2011の形状を反映した形状を有する。
【0023】
また、アンテナ装置100は、グランド板1から第1方向に立ち上がった4本の給電線路3を備える(図4参照)。たとえば、4本の給電線路3は、それぞれ、直径が1mm以上、数mm(たとえば、1.5mm)以下の棒状であり、銅などの導体で形成される。
【0024】
4本の給電線路3は、それぞれ、第1方向からの平面視において、グランド板1の交差位置CP(交差位置CPの近傍を含む)に配置され、交差位置CPから第1方向に立ち上がる。4本の給電線路3は、それぞれ、2組の一対のダイポールアンテナ20の各給電点に接続される。
【0025】
2組の一対の第1放射素子201は、それぞれ、第1方向からの平面視において、交差位置CP側に給電点2012を有する。4本の給電線路3は、それぞれ、互いに異なる給電点2012に接続される。以下の説明では、第1ダイポールアンテナ21の各給電点2012のそれぞれの符号末尾に「A」および「C」を付し、第2ダイポールアンテナ22の各給電点2012のそれぞれの符号末尾に「B」および「D」を付して区別する場合がある。
【0026】
4本の給電線路3は、給電回路部4に接続される。すなわち、アンテナ装置100は、給電回路部4を備える。給電回路部4は、4本の給電線路3を介して、クロスダイポールアンテナ2に接続される。給電回路部4の構成を図5に示す。
【0027】
図5において、符号41で示される部品は、QHC(Quadrature Hybrid Coupler)と呼ばれる移相回路である。符号42で示される部品は、インピーダン変換器であり、たとえば、プリント基板上のマイクロストリップ線路で実現できる。符号43で示される部品は、90°位相器であり、たとえば、プリント基板上のマイクロストリップ線路で実現できる。符号44で示される部品は、吸収抵抗器(たとえば、50Ω)である。吸収抵抗器は、アンテナからの不要な反射電力成分を吸収する。符号45で示される部品は、アンテナ入出力端子(GNSSではアンテナ出力端子)である。図5に示す給電回路部4を用いることにより、給電点2012Aに出力される信号(0°)を基準にして見ると、その信号から位相が90°ずれた信号、位相が180°ずれた信号および位相が270°ずれた信号をそれぞれ、給電点2012B、2012Cおよび2012Dに出力できる。
【0028】
従来では、たとえば、図6に示す構成を有する給電回路部がクロスダイポールアンテナに接続される。従来では、平衡と不平衡とを変換するバラントランス46(平衡/不平衡変換器)が給電回路部に用いられる。しかし、バラントランス46は磁性体コアを必要とする場合が多く、高い周波数帯域では大きな損失となる。また、Uバランは損失が少ないが、広帯域性に劣る。また、複数使用時(2個)には構成が複雑となり、実現性がない。
【0029】
一方で、本実施形態では、図5に示す構成が取られる。これにより、容易に、一対のダイポールアンテナ20を円偏波アンテナとして動作させることができる。また、損失も少なくなる。
【0030】
本実施形態では、上記のように、第1放射素子201と第2放射素子202とを有するダイポールアンテナ20でクロスダイポールアンテナ2を構成することにより、一般的なクロスダイポールアンテナよりも指向性を広角にすることができる。
【0031】
具体的には、一般的なクロスダイポールアンテナでは、放射素子に流れる電流が水平方向(グランド板と平行な方向)の電流しか存在しない。ここで、水平方向の円偏波特性を向上させるには、垂直方向の電流も必要となる。
【0032】
そこで、本実施形態では、第1放射素子201の端部2011に第2放射素子202が設けられ、第2放射素子202がグランド板1に向かって垂直に延ばされる。第2放射素子202は第1放射素子201に対して垂直である。この構成では、垂直方向の電流が発生する。一対の第2放射素子202に垂直に流れる電流は互いに逆位相(すなわち、180°差)となる。そして、片方の第2放射素子202から放射された電波が半波長離れた第2放射素子202に到達したときに同位相となり、水平方向の電波と同位相となり強め合って水平方向の円偏波特性も良好となる。
【0033】
本実施形態では、シミュレーションの結果、図7図9に示すような特性を得られることが確認できた。図7図9では、最大利得を0dBに正規化して示す。図7のシミュレーションでは周波数が1.4GHzであり、図8のシミュレーションでは周波数が1.15GHzであり、図9のシミュレーションでは周波数が1.65GHzである。また、図7図9において、水平方向は90°および270°であり、天頂方向は0°である。
【0034】
ここで、GPSアンテナなどにおいては、水平方向から天頂方向まで可能な限り利得が均一になるような広角指向性を必要とする。また、地上から衛星を見た方向が様々な角度となることから円偏波を必要とする。
【0035】
たとえば、GPSアンテナとして、誘電体付きパッチアンテナが広く用いられる。パッチアンテナを用いる理由としては、単に小型化だけではない。小型化することによって広角指向性を得るためである。
【0036】
しかし、パッチアンテナは原理上、他のアンテナよりも帯域幅が狭い(たとえば、1GHz帯域の周波数で数十MHz程度である)。特に、誘電体付きパッチアンテナはより帯域幅が狭い。誘電体の誘電率が高いほどアンテナを小型化できるが、帯域幅が狭くなる。また、誘電率が高いほど誘電体損失が大きくなり、アンテナの利得を低下させる要因となる。誘電体損失は誘電正接(tanδ)と呼ばれる性能で変わり、誘電正接が小さいほど損失が少ないが、誘電正接が小さい材料は高価である。なお、誘電体を用いず金属のみで構成されるパッチアンテナは、構造が簡単で、誘電体付きに比べてやや広帯域化し、利得も高いが、指向性が鋭い。このため、GPSアンテナなど広角指向性を必要とするアンテナには不向きである。
【0037】
また、様々な周波数バンドを同時に受信するため、誘電体付きパッチアンテナを複数段重ねる場合がある。たとえば、2バンド(たとえば、1.1GHz帯域と1.6GHz帯域)を受信する場合には、パッチアンテナを2段重ねにした構成が用いられる。しかし、この構成では、誘電体が複数必要となり、また、給電回路も複数必要となるので、高価になる。
【0038】
一方で、本実施形態では、パッチアンテナではない。一般的には、ダイポールアンテナはパッチアンテナよりも広帯域の性質が生じる。さらに、第1放射素子201を扇状にすることにより、より広帯域化できる。これにより、本実施形態では、パッチアンテナよりも広帯域化を図ることができる。本実施形態では、図10に示すように、天頂方向において広帯域で利得が高い。なお、本実施形態では、第1放射素子201と第2放射素子202とでダイポールアンテナ20を構成することにより、第1放射素子201に相当する部材のみで構成される一般的なクロスダイポールアンテナよりも指向性が広角になる。
【0039】
ここで、GNSSを利用するGPSアンテナなどは、ビルなどによる反射波を受けることがある。GPS信号は右旋円偏波(RHCP)であり、ビルなどによる水平方向の反射波は左旋円偏波(LHCP)となってアンテナに到達する。この反射波をアンテナが受信すると、位置測定に誤差が生じることが多い。特に精度を必要とする場合には、この影響は少なくない。そこで、この反射波(LHCP)を取り除く特性(交差偏波特性)が重要になる。
【0040】
本実施形態では、図11に示すように、水平方向(±90°)の左旋円偏波(LHCP)の受信レベルが天頂方向(0°)の右旋円偏波(RHCP)の受信レベルに比べて27dB程度低下する(レベル差が27dB程度となる)ので、反射波の影響を減衰させることができる。一方で、従来の誘電体付きパッチアンテナでは、図12に示すように、前述のレベル差が9dB程度であるので、反射波の影響を受け易い。その理由としては、パッチアンテナの構造上、グランド板と平行な電流(水平方向の電流)しか存在しないため、交差偏波特性が良好にならないと考えられる。
【0041】
他方、小電力データ通信(たとえば、WiFi)では、親機および子機の両方でホイップアンテナが用いられることが多い。しかし、ホイップアンテナの軸方向には電波が飛ばないため、たとえば、1階と2階との上下間通信では通信レベルが低下する。また、子機が移動などするとホイップアンテナの軸方向が定まらず、偏波損失が増加する。このことから、本実施形態のアンテナ装置100を小電力データ通信に適用してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、第1放射素子201は、グランド板1に対して平行な方向に広がる板状であり、交差位置CP側からその反対側に向かって末広がりとなる扇状である。さらに、第2放射素子202は、第1放射素子201の端部2011の全域からグランド板に向かって板状に延びる。すなわち、第2放射素子202も板状であり、第1放射素子201と第2放射素子202とは同一部材である。
【0043】
第1放射素子201および第2放射素子202を有するダイポールアンテナ20を板状にすることにより、薄い金属板およびプリント基板などでダイポールアンテナ20を形成できる。その結果、生産性が向上し、低コスト化に繋がる。ダイポールアンテナ20の形成では、ダイポールアンテナ20の素材を垂直に折り曲げるだけで良い。また、第1放射素子201を扇状にすることにより、VSWR特性がより広帯域となり、アンテナの動作利得も改善される。一般的に、放射素子が給電点側からその反対側に広がる形状は広帯域になる性質がある。
【0044】
第1変形例として、図13に示すように、第1放射素子201および第2放射素子202の両方が板状ではなく棒状であってもよい。また、図示しないが、第1放射素子201のみが板状であってもよいし、第2放射素子202のみが板状であってもよい。第1変形例の構成であっても、第1放射素子201と第2放射素子202とでダイポールアンテナ20が構成されることにより、アンテナ装置100の指向性を広角にしつつ、パッチアンテナなどと比べて帯域幅を広くできる。
【0045】
また、第2変形例として、図14に示すように、第1放射素子201をクランク状に形成してもよい。具体的には、第2変形例では、第1放射素子201は、第1方向から見た形状がクランク状である。言い換えると、第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、クランク状に折れ曲がる。さらに言い換えると、第1放射素子201は、第1方向からの平面視において、交差位置CP側からその反対側に向かってクランク状に延びる。第2変形例のアンテナ装置100は、広帯域性を必要としないが広角指向性を要求される小電力データ通信(段落0041で説明したような小電力データ通信)などに適用される。第2変形例では、アンテナ装置100の小型化を図ることができる。
【0046】
なお、第3変形例として、図15に示すように、第2放射素子202がクランク状に形成されてもよい。具体的には、第3変形例では、第2放射素子202は、第1方向と直交する方向(第2方向または第3方向)ら見た形状がクランク状である。言い換えると、第2放射素子202は、第1方向と直交する方向からの平面視において、クランク状に折れ曲がる。さらに言い換えると、第2放射素子202は、第1方向と直交する方向からの平面視において、第1放射素子201の端部2011からグランド板に向かってクランク状に延びる。図15では、第1ダイポールアンテナ21の第2放射素子202のみを図示するが、第2ダイポールアンテナ22の第2放射素子202もクランク状に形成される。また、図示しないが、第1放射素子201および第2放射素子202の両方がクランク状に形成されてもよい。これらにより、広帯域性を必要としない場合(段落0045で説明したような)、更なる小型化を図ることができる。
【0047】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 グランド板
2 クロスダイポールアンテナ
3 給電線路
20 ダイポールアンテナ
21 第1ダイポールアンテナ
22 第2ダイポールアンテナ
100 アンテナ装置
201 第1放射素子
202 第2放射素子
2011 端部
2012 給電点
CP 交差位置
図1
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