(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118213
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】樹脂ペレット製造装置
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20240823BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20240823BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20240823BHJP
B29C 48/355 20190101ALI20240823BHJP
【FI】
B29B9/06
B29B7/38
B29C48/345
B29C48/355
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024521
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 真伸
(72)【発明者】
【氏名】安倍 賢次
(72)【発明者】
【氏名】岡本 暢彦
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201BA02
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BL09
4F201BL11
4F201BL23
4F201BQ10
4F201BQ21
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KL64
4F207KL83
(57)【要約】
【課題】樹脂材料の製造において熱劣化を抑制しつつ生産性を確保する。
【解決手段】樹脂ペレット製造装置100は、投入される材料を混練及び溶融させ吐出口28を通じて吐出する押出機10と、押出機10の吐出口28から吐出される材料を切断する切断機構50と、切断機構50によって切断された材料を冷却しつつ搬送する冷却搬送機構60と、を備え、冷却搬送機構60は、切断機構50によって切断されて吐出口28から落下した材料を受けて、材料を冷却する液体を導いて液体の水流によって材料を搬送するガイド部61を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入される材料を混練及び溶融させ吐出口を通じて吐出するスクリュ機械と、
前記スクリュ機械の前記吐出口から吐出される前記材料を切断する切断機構と、
前記切断機構によって切断された前記材料を冷却しつつ搬送する冷却搬送機構と、を備え、
前記冷却搬送機構は、前記切断機構によって切断されて前記吐出口から落下した前記材料を受けて、前記材料を冷却する液体を導いて前記液体の水流によって前記材料を搬送するガイド部を有する、
樹脂ペレット製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂ペレット製造装置であって、
前記スクリュ機械は、
駆動源によって軸線周りに回転駆動されるスクリュと、
前記スクリュが挿入され前記吐出口に連通するシリンダが形成されるバレルと、を有し、
前記シリンダは、
前記スクリュが内側に収容される本体部と、
前記本体部と前記吐出口とを連通し前記本体部内の前記材料を前記吐出口へ導く連通部と、を有し、
前記連通部は、前記スクリュの軸線方向に垂直な断面積が前記本体部の断面積以上に形成される、
樹脂ペレット製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂ペレット製造装置であって、
前記吐出口は、複数の通孔によって構成されており、
複数の前記通孔は、互い違いの格子状に配置される、
樹脂ペレット製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の樹脂ペレット製造装置であって、
前記吐出口は、複数の通孔によって構成されており、
前記複数の通孔は、前記シリンダの開口を塞ぐ前記バレルの端部において前記シリンダの前記開口に対向する対向領域に前記スクリュの軸線に沿って形成され、
前記スクリュの軸線を含む前記対向領域の一部である中央領域内の前記通孔の長さは、前記中央領域以外の前記対向領域における前記通孔の長さよりも大きい、
樹脂ペレット製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレット製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する技術が開示されている。また、特許文献1には、樹脂ペレットの製造方法として、押出機では、各原料が混練、加熱溶融され、押出機先端のノズルからストランド状に押出され、樹脂ストランドは、搬送コンベア又は冷却水槽を介してペレタイザーによって裁断され、ペレットが製造されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の製造方法では、押出機から吐出された樹脂材が冷却されるまでは、ある程度の時間を要する。このため、押出機から吐出された樹脂は、自身の蓄熱によって熱劣化するおそれがある。
【0005】
このような熱劣化を防ぐためには、例えば押出機のノズルを水中に設けて冷却し、樹脂の蓄熱を抑制する方法が考えられる。しかしながら、比較的流動性が低い樹脂の場合には、ノズルを冷却すると、流動性がさらに低下するため、押出機からの吐出性能が低下して生産性の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、熱劣化を抑制しつつ生産性を確保する樹脂ペレット製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、樹脂ペレット製造装置であって、投入される材料を混練及び溶融させ吐出口を通じて吐出するスクリュ機械と、スクリュ機械の吐出口から吐出される材料を切断する切断機構と、切断機構によって切断された材料を冷却しつつ搬送する冷却搬送機構と、を備え、冷却搬送機構は、切断機構によって切断されて吐出口から落下した材料を受けて、材料を冷却する液体を導いて液体の流れによって材料を搬送するガイド部を有する。
【発明の効果】
【0008】
この態様によれば、材料は、スクリュ機械から吐出されるとすぐに切断され、その後スクリュ機械から落下してガイド部の水流によって搬送される。このように、スクリュ機械では冷却せず、スクリュ機械から吐出された直後に切断されてガイド部の液体により冷却されるため、スクリュ機械における材料の流動性の低下と蓄熱による熱劣化との両方を抑制することができる。したがって、樹脂材料の製造において、熱劣化を抑制しつつ生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る樹脂ペレット製造装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る押出機を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る押出機のバレルの断面を示す図であり、(a)はIIIA-IIIA線切断端面図、(b)はIIIB-IIIB線切断端面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る押出機の吐出口を示す図であり、
図2におけるIV矢視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る押出機の吐出口の断面を示す図であり、
図4におけるV-V線断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る押出機のスクリュ先端の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る樹脂ペレット製造装置100及び樹脂ペレット製造方法について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0011】
まず、
図1から
図5を参照して、樹脂ペレット製造装置100(以下、単に「製造装置100」と称する。)について説明する。
【0012】
本実施形態では、材料は、セルロースと樹脂材(例えば、ポリプロピレン)とを混合した複合材料(混合材料)である。以下、単に「材料」と称する。
【0013】
製造装置100は、
図1に示すように、投入される材料を混練及び溶融させ吐出口(ノズル )28を通じて吐出するスクリュ機械としての押出機10と、押出機10の吐出口28から吐出される材料を切断する切断機構50と、切断機構50によって切断された材料を冷却しつつ搬送する冷却搬送機構60と、液体と共に搬送された材料を脱水する脱水装置70と、を備える。
【0014】
押出機10は、バレル20のシリンダ25内に供給される粒状または粉体状の材料をスクリュ11a,11bによって搬送しながら混練し、混練された材料をバレル20の吐出口28から押し出して成形するものである。
【0015】
押出機10は、
図2及び
図3に示すように、一対のスクリュ11a,11bと、一対のスクリュ11a,11bが挿入されるシリンダ25を有するバレル20と、一対のスクリュ11a,11bをシリンダ25内で回転させる駆動源としての第一モータ30と、を備える。このように、押出機10は、一対のスクリュ11a,11bを備える、いわゆる二軸混練押出機である。なお、押出機10は、二軸混練押出機に限定されず、例えば、一軸(単軸)又は三軸以上の多軸の押出機でもよい。
【0016】
バレル20は、
図2に示すように、一方向に延びるように形成され、その長手方向に沿ってシリンダ25が形成される筒状部材である。本実施形態では、バレル20(言い換えるとスクリュ11a,11b)は、鉛直方向に対して傾斜して、より具体的には水平方向に沿って延びるように設けられている。なお、鉛直方向に対して傾斜するとは、鉛直方向に対して平行ではない状態を意味する。
図1及び
図2における上下方向が、鉛直方向に相当する。
【0017】
バレル20の長手方向の一端には、シリンダ25内に材料を供給するための供給口20aがシリンダ25に開口して形成される。本実施形態では、セルロースと樹脂材とが予め混ぜ合わされた状態の材料が、供給口20aを通じて供給される。図示は省略するが、材料を供給するフィーダからホッパを通じて供給口20aに材料が供給される。
【0018】
バレル20の長手方向の他端には、溶融及び混練された材料により生成された混練物を吐出するための吐出口28がシリンダ25に開口して形成される。以下では、シリンダ25において供給口20a側(
図2中右側)をシリンダ25の「上流」、吐出口28側(
図2中左側)をシリンダ25の「下流」とも称する。供給口20aを通じてシリンダ25内に供給された材料は、スクリュ11a,11bによって下流に向けて搬送され、吐出口28を通じてバレル20外に吐出される。吐出口28は、複数の通孔28aによって構成される。バレル20に設けられるシリンダ25及び吐出口28の構成については、後に詳細に説明する。
【0019】
また、図示は省略するが、バレル20には、バレル20を加熱する加熱装置、バレル20を冷却する冷却装置、バレル20の温度を検出する温度センサなどが設けられる。
【0020】
加熱装置は、後述するバレル20の筒部21及びノズル部22の両方を加熱可能に構成される。冷却装置は、バレル20の筒部21を冷却可能である一方、ノズル部22を冷却しないように構成される。例えば、冷却装置は、ノズル部22を避けるようにしてバレル20の筒部21の回りに設けられた流路を循環する冷却水(冷却媒体)の流れを流路に設けられたバルブ等によって制御することで、ノズル部22を冷却せずに筒部21だけを冷却する。加熱装置及び冷却装置の作動が図示しないコントローラによってそれぞれ制御されることで、バレル20が加熱又は冷却されて、バレル20内の材料が所望の温度となるように制御される。
【0021】
一対のスクリュ11a,11bは、
図2及び
図3(a)に示すように、互いに同様の形状を有して平行に延びて設けられており、互いに噛み合った状態でバレル20のシリンダ25内に挿入される。一対のスクリュ11a,11bは、減速部35を介して第一モータ30(
図2参照)によって、それぞれの中心軸(軸線)回りに同一方向に回転される。つまり、一対のスクリュ11a,11bは、互いに同期して回転される。以下では、一対のスクリュ11a,11bを総称して単に「スクリュ11」とし、具体的構成について説明する。
【0022】
スクリュ11は、
図2に示すように、第一モータ30に連結される基端から先端に向けて、バレル20の長手方向に沿って設けられる軸部材である。スクリュ11の基端が、シリンダ25の上流に位置し、先端がシリンダ25の下流に位置する。
【0023】
スクリュ11は、外周に螺旋状のフライト13(スクリュ羽根)が設けられ材料を下流へ向け移送する移送部12aと、長手方向(スクリュ11の軸方向)に並ぶ複数のディスク(ニーディングディスク)によって構成され材料を混練・溶融する混練部12bと、を有して構成される。
【0024】
第一モータ30は、電動モータであり、図示しないコントローラによって作動が制御される。第一モータ30のモータ軸31は、減速部35に連結され、モータ軸31の回転は、減速部35を介して一対のスクリュ11a,11bに伝達される。これにより、一対のスクリュ11a,11bが第一モータ30によって回転駆動される。
【0025】
減速部35は、複数の歯車によって構成される歯車機構(図示省略)によって第一モータ30のモータ軸31の回転を減速して一対のスクリュ11a,11bに伝達する。減速部35には、スクリュ11の端部15が連結される。減速部35の歯車機構の構成は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0026】
切断機構50は、
図1に示すように、押出機10の吐出口28から吐出される材料をペレット状に切断するカッタ部51と、カッタ部51を回転駆動する電動モータとしての第二モータ54と、を有する。第二モータ54は、コントローラによって作動が制御される。
【0027】
カッタ部51は、第二モータ54によって回転駆動される回転板52と、回転中心Oに対して対称に回転板52に取り付けられる一対の切断刃53と、を有する。回転板52は、図示しない第二モータ54の回転軸に連結され、第二モータ54の回転に伴って自身の回転中心O回りに回転する。一対の切断刃53は、回転中心Oの回りに180°だけ互いに離間して設けられる。一対の切断刃53は、回転板52の回転に伴って回転板52の回転中心O回りに回転移動して、押出機10の吐出口28に対して吐出方向の前方付近を通過するように(言い換えると、各通孔28aの中心軸を垂直に横切るように)移動する。これにより、吐出口28から吐出された材料は、切断刃53によって切断される。切断刃53は、材料との離型性のために、表面にコーティング等が施されてもよい。
【0028】
冷却搬送機構60は、切断機構50によって切断された材料を、冷却しつつ脱水装置70まで搬送するものである。冷却搬送機構60は、少なくとも一部が押出機10の吐出口28の鉛直方向下方に設けられ切断機構50によって切断され吐出口28から落下する材料を受けるガイド部61を有する。
【0029】
ガイド部61は、内部に水等の液体の流路を構成する中空の管状部材である。ガイド部61において押出機10の吐出口28の鉛直方向の下方となる位置には、切断されて吐出口28から落下する材料をガイド部61の内部に導く開口部62が形成される。
【0030】
ガイド部61の一端には、例えばポンプなどの液体供給源Pからの液体を内部に導く液体供給口(図示省略)が設けられる。ガイド部61の他端は、脱水装置70に接続される。ガイド部61は、一端側から他端側へ向けて、鉛直方向の下方へ向けて傾斜している。つまり、ガイド部61は、押出機10側から脱水装置70側へ向けて鉛直方向上方へ向けて上らずに下るような流路を形成するように構成される。ガイド部61の内部の液体の水流によって、開口部62を通じて受容した材料が冷却されつつ脱水装置70へと搬送される。
【0031】
脱水装置70は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示は省略するが、例えば、内部の回転羽根を回転させて、水流によって搬送されるペレット状の材料と液体とを遠心力によって分離する遠心脱水機である。
【0032】
次に、押出機10のバレル20及び吐出口28の構成について、具体的に説明する。
【0033】
図2に示すように、バレル20は、シリンダ25が形成される筒部21と、筒部21の端部を閉塞するノズル部22と、を有する。
【0034】
ノズル部22は、筒部21の開口端に取り付けられ、シリンダ25の開口を閉塞する。ノズル部22が、バレル20の端部を構成する。吐出口28は、ノズル部22に形成される。本実施形態では、ノズル部22は、筒部21とは別体に形成され筒部21に取り付けられるものである。これに対し、ノズル部22は、筒部21と一体に形成されるものでもよい。
【0035】
シリンダ25は、内側にスクリュ11を収容する本体部26と、本体部26と吐出口28とを連通し本体部26内の材料を吐出口28へ導く連通部27と、を有する。なお、
図2における二点鎖線は、本体部26と連通部27との境界を仮想的に示す線である。
【0036】
本体部26は、
図3(a)に示すように、スクリュ11の軸線に垂直な断面が、一対のスクリュ11の形状に対応する一対の円形穴を一部重複させるように互いに接続した形状(いわゆる8の字状)に形成される。
【0037】
連通部27は、
図3(b)に示すように、スクリュ11の軸線に垂直な断面が、長円形状に形成される。スクリュ11の軸線な垂直断面において直交する2方向の寸法をそれぞれ「幅」、「厚さ」とすると、連通部27の断面形状である長円の幅W2及び厚さT2は、本体部26の断面形状の幅W1及び厚さT1と同一である(W1=W2、T1=T2)。つまり、本体部26の断面形状は、長円形の連通部27の断面形状の一部がくびれたような形状である。よって、スクリュ11の軸線に垂直な連通部27の断面積は、くびれ形状の分だけ、本体部26の断面積よりも大きい。
【0038】
図2、
図4、及び
図5に示すように、吐出口28を構成する複数の通孔28aは、シリンダ25の連通部27をバレル20の外部に連通するように、ノズル部22をスクリュ11の軸線方向に貫通して形成される円形の孔である。複数の通孔28aは、ノズル部22のうち、スクリュ11の軸線方向においてシリンダ25の連通部27に対向する部分(対向領域)に形成される。
図4において、破線で示す領域が、連通部27に対向する対向領域を示している。
【0039】
図4に示すように、複数の通孔28aは、スクリュ11の軸線に垂直な平面において、互い違いの格子状に配置される(いわゆる千鳥配置)。つまり、一部の通孔28aは、水平方向及び鉛直方向のそれぞれにおいて略等間隔に並んで格子状に配置され、残りの通孔28aは、互いに水平方向及び鉛直方向に並んで一部の通孔28aが配置される格子状とはずれた格子状に配置される。また、本実施形態では、水平方向に延びる通孔28aの列が、鉛直方向に3列以上並んで設けられる。別の観点からいうと、複数の通孔28aは、スクリュ11の軸線方向に垂直であって互いに直交する2方向(
図4中左右方向、上下方向)において、他の通孔28aと重なるように設けられる。
【0040】
また、
図2及び
図5に示すように、ノズル部22において、スクリュ11の軸線を含む連通部27の長円形状の中心側にある中央部分(中央領域)は、中心部分からスクリュ11の径方向の外側にある対向領域内の他の部分と比較して、スクリュ11の軸線方向に沿った寸法(長さ)が大きく形成される。これにより、中央部分に設けられる通孔28aは、他の部分の通孔28aと比較して寸法が長く形成され、吐出する材料に付与する流路抵抗が大きくなる。よって、中央部分に設けられる通孔28a一つあたりの吐出量は、他の部分における通孔28a一つあたりの吐出量よりも小さくなる。なお、中央領域とは、スクリュ11の軸線に垂直な平面でみて、少なくともスクリュ11の軸線を含む、対向領域内の一部領域に相当する。
【0041】
次に、樹脂ペレット製造装置100による樹脂ペレット製造方法及び作用について説明する。樹脂ペレット製造装置100が駆動されると、第一モータ30が回転して押出機10が駆動し、第二モータ54が回転して切断機構50が駆動し、液体供給源Pが駆動されガイド部61に液体が供給される。
【0042】
樹脂ペレット製造方法では、まず、セルロースと樹脂材とを押出機10によって混練及び溶融し、押出機10から混合された材料を吐出する。具体的には、セルロースと樹脂材とを混合した材料を押出機10の供給口20aを通じてシリンダ25内に供給する。シリンダ25内に供給される材料は、スクリュ11の移送部12aによって下流に向けて長手方向に移送され、混練部12bによって混練されることで加熱され溶融される。溶融されたシリンダ25の本体部26内の材料は、シリンダ25の連通部27を通じて吐出口28に向けて搬送され、吐出口28を通じてシリンダ25の外部に吐出される。
【0043】
次に、押出機10のシリンダ25から吐出された材料が、切断機構50のカッタ部51によってペレット状に切断される。
【0044】
次に、切断機構50によって切断された材料は、吐出口28から落下してガイド部61の開口部62からガイド部61の内部に導かれ、ガイド部61の内部を流れる水流に投下される。これにより、切断されたペレット状の材料が、ガイド部61に導かれる液体によって冷却されると共に、液体の水流によって脱水装置70まで搬送される。
【0045】
脱水装置70に搬送された材料は、脱水装置70により脱水され、その後、例えば、ペレット選別機(図示省略)に導かれて形状等による選別が行われる。脱水装置70の脱水により、材料をさらに冷却することも可能である。
【0046】
ここで、樹脂材料の製造では、自身の蓄熱によって熱劣化が生じるおそれがある。熱劣化を抑制するためにノズル(吐出口)を冷却すると、流動性が低下し、押出機からの吐出性能が低下して生産性の低下を招くおそれがある。特に、セルロースと樹脂材との複合材料は、水分量が低いとセルロースの凝集が生じるおそれがあることから、比較的水分量が多く、流動性が低い(粘度が高い)。また、セルロースを含むことから、熱劣化も生じやすい。本実施形態に係る押出機で使用される材料としては、例えば、セルロースの配合比率が50~70%、材料の水分率が3~7%のものが想定される。このような場合には、特に流動性が低くなり、生産性の低下を招きやすい。
【0047】
これに対し、本実施形態では、押出機10から吐出される材料は、吐出口28から吐出された直後に切断される。切断された材料は、吐出口28から落下してガイド部61内の液体に投入され、冷却される。つまり、本実施形態の樹脂ペレット製造方法は、押出機10から吐出された材料が、吐出された直後であって冷却される前に切断される、いわゆるホットカット方式を採用している。
【0048】
これにより、本実施形態では、吐出口28の冷却による流動性の低下を生じさせず、押出機10から吐出された材料を切断して速やかに冷却することができるため、材料の熱劣化を抑制しつつ生産性の低下を抑制することができる。また、セルロースを含む材料は、比較的もろく崩れやすいため、ホットカット方式は、セルロースを含む複合材料の製造に対して特に有用である。
【0049】
また、押出機10のシリンダ25では、スクリュ11が内側に挿入される本体部26から吐出口28へと材料を導く連通部27の断面積が、本体部26の断面積以上に形成されている。つまり、シリンダ25は、本体部26から吐出口28へ向かう材料の流れに対して抵抗(圧力損失)を与えないように、言い換えると、材料の流れを絞らないように構成されている。これにより、特に材料の流動性が比較的低い場合であっても、押出機10からの吐出量を充分に確保することができる。
【0050】
また、本実施形態では、シリンダ25の連通部27がスクリュ11を収容する本体部26以上の断面積で形成されるため、吐出口28を構成する通孔28aを互い違いの格子状に配置して通孔28aの数を多くすることができる。通孔28aの数を大きくすることで、カッタ部51の回転速度を低減でき、比較的もろい材料であっても所望のペレット形状となるように崩れずきれいに切断することができる。
【0051】
また、スクリュが水平に延びる(鉛直方向に対して傾斜する)押出機では、吐出口から材料をストランド状に押出し、冷却した後にペレット状に切断する、いわゆるコールドカット方式が採用されることもある。このような場合、吐出口から材料がストランド状に押し出されるため、吐出口の通孔は、材料同士が接着しないよう鉛直上下方向に重ならないように配置されることが一般的である。仮に、通孔を鉛直上下方向に重ねて配置しようとしても、材料の接着を防ぐために通孔の間隔を比較的大きく設定しなければならず、密に配置することはできない。
【0052】
これに対し、本実施形態では、材料が吐出口28から吐出された直後に切断されるホットカット式であると共に、製造する対象がセルロースを含んで粘度も高いことから接着しにくい材料である。このため、吐出口28を構成する複数の通孔28aを鉛直上下方向に重なるように、具体的には、上述のように互い違いの格子状に配置することができる。つまり、シリンダ25の連通部27の断面面積が本体部26の断面積以上に形成されることに加えて、複数の通孔28aを鉛直上下方向に重なるように配置することができる。よって、本実施形態では、通孔同士が鉛直上下方向に重ならないような一般的な場合と比較して、通孔28aをより密に配置することができ、通孔28aの数をより増加させることができる。したがって、上述のように比較的もろい材料であっても所望のペレット形状に切断できると共に、押出機10の吐出量をより一層向上させることができる。
【0053】
また、押出機10では、スクリュ11の先端中心部付近の材料は、回転するスクリュ11の先端中心部に触れやすい一方、バレル20との間にある程度の間隔があってバレル20を冷却することによる冷却効果を受けにくいため、他の材料と比べて加熱されやすい。よって、一般的には、スクリュ11の軸線上付近の吐出口28の通孔28aでは、他の通孔28aと比べて材料が吐出されやすい。これに対し、本実施形態では、スクリュ11の軸線を含む連通部27の長円形状に対する中央部分は、他の部分よりもスクリュ11の軸線方向に沿った寸法が大きく形成されている。よって、スクリュ11の軸線上付近である長円形の中央部分の通孔28aは、他の通孔28aよりも寸法が長く、流路抵抗が大きくなるため、材料が他の通孔28aよりも吐出されにくくなる。これにより、複数の通孔28aからの材料の吐出量を全体として均一化することができる。
【0054】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0055】
製造装置100は、投入される材料を混練及び溶融させ吐出口28を通じて吐出する押出機10と、押出機10の吐出口28から吐出される材料を切断する切断機構50と、切断機構50によって切断された材料を冷却しつつ搬送する冷却搬送機構60と、を備え、冷却搬送機構60は、切断機構50によって切断されて吐出口28から落下した材料を受けて、材料を冷却する液体を導いて液体の水流によって材料を搬送するガイド部61を有する。
【0056】
また、セルロースと樹脂材とが混合された材料を製造する樹脂ペレット製造方法は、セルロースと樹脂材とを押出機10によって混練及び溶融し、押出機10から混合材料を吐出する工程と、押出機10から吐出された混合材料を切断する工程と、液体を導く流路を構成するガイド部61に対して液体を供給し、押出機10の吐出口28から落下する混合材料をガイド部61によって受けて、ガイド部61によって導かれる液体の水流により混合材料を冷却すると共に搬送する工程と、を含む。
【0057】
これらの構成によれば、材料は、押出機10から吐出されるとすぐに切断され、その後押出機10から落下してガイド部61の水流によって搬送される。このように、押出機10では冷却せず、押出機10から吐出された直後に切断されてガイド部61の液体により冷却されるため、押出機10における材料の流動性の低下と蓄熱による熱劣化との両方を抑制することができる。したがって、樹脂材料の製造において、熱劣化を抑制しつつ生産性を確保することができる。
【0058】
また、樹脂ペレット製造装置100では、押出機10は、駆動源によって軸線周りに回転駆動されるスクリュ11と、スクリュ11が挿入され吐出口28に連通するシリンダ25が形成されるバレル20と、を有し、シリンダ25は、スクリュ11が内側に収容される本体部26と、本体部26と吐出口28とを連通し本体部26内の材料を吐出口28へ導く連通部27と、を有し、連通部27は、スクリュ11の軸線方向に垂直な断面積が本体部26の断面積以上に形成される。
【0059】
この構成では、シリンダ25の連通部27は、材料の流れを絞らないように形成されるため、シリンダ25の本体部26から吐出口28へ向けて材料をスムーズに導くことができる。これにより、押出機10による吐出量を確保することができる。
【0060】
また、樹脂ペレット製造装置100では、吐出口28は、複数の通孔28aによって構成されており、複数の前記通孔28aは、互い違いの格子状に配置される。
【0061】
この構成では、通孔28aの数を多くすることができるため、押出機10の吐出量を確保することができる。
【0062】
また、樹脂ペレット製造装置100では、吐出口28は、複数の通孔28aによって構成されており、複数の通孔28aは、シリンダ25の連通部27の開口を塞ぐバレル20のノズル部22においてシリンダ25の連通部27の開口に対向する対向領域にスクリュ11の軸線に沿って形成され、スクリュ11の軸線を含む対向領域の一部である中央領域内の通孔28aの長さは、中央領域以外の対向領域における通孔28aの長さよりも大きい。
【0063】
この構成では、相対的に材料が加熱されやすいスクリュ11の軸線上の中央領域にある通孔28aは、他の通孔28aよりも流路抵抗が大きくなるため、材料を吐出しにくくなる。これにより、複数の通孔28aからの材料の吐出量を全体として均一化することができる。
【0064】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、各変形例において、上記実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0065】
上記実施形態では、押出機10は、材料に含まれる水分量が多いセルロースと樹脂材の複合材料の混練・溶融に用いられる。押出機10が利用できる材料は、これに限定されるものではなく、種々の材料に対して適用が可能であるが、上述のように、比較的流動性が低いものや、もろく崩れやすいものに対して特に有用である。
【0066】
また、上記実施形態では、材料は、セルロースと樹脂材とが混合された状態で一つのフィーダから供給口20aを通じてバレル20のシリンダ25内に供給される。これに対し、セルロースを供給口20aのホッパに供給するフィーダと樹脂材を供給口20aのホッパに供給するフィーダとをそれぞれ設けて、供給口20aのホッパ内又はシリンダ25内でセルロースと樹脂材とを混合するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、シリンダ25の連通部27の断面積は、本体部26の断面積よりも大きい。これに対し、連通部27の断面積は、少なくとも本体部26の断面積と同じであれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、連通部27の断面積は、本体部26の断面積以上であれば、押出機10の吐出量の減少を抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、切断機構50は、一対の切断刃53を有する。これに対し、切断刃53の数は、一つでもよいし、三以上でもよい。切断刃53が三以上設けられる場合には、上記実施形態と同様、切断刃53は、回転中心Oに対して等角度間隔で配置される。また、切断機構50は、カッタ部51を回転駆動することで材料を切断する構成に限られず、例えば、切断刃53が並行移動する構成でもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、スクリュ11の軸線方向におけるスクリュ11の軸線上付近(連通部27の長円形の中央部分。中央領域。)のノズル部22の寸法は、他部よりも大きく形成される。これによって、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aが、他の通孔28aよりも材料を吐出しにくくなり、その結果複数の通孔28aの吐出量が均一化される。これに対し、ノズル部22の寸法(言い換えると通孔28aの寸法)を変更する構成に限らず、他の構成によってスクリュ11の軸線上付近の通孔28aの吐出量を抑制し、全体として吐出量を均一化させてもよい。つまり、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aが他の部分の通孔28aよりも材料を吐出しにくくなる構成であれば、任意の構成とすることができる。例えば、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aを、他の部分の通孔28aよりも小径に形成してもよい。また、スクリュ11の軸線上付近の通孔28a同士の間隔を、他の部分における通孔28a同士の間隔よりも大きくする、言い換えると、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aの密度を他の分よりも小さくしてもよい。また、スクリュ11の軸線上付近の複数の通孔28aのうちの一部を閉塞してもよい。これらの方法によっても、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aが相対的に材料を吐出しにくくなる(材料の流れに対する抵抗が大きくなる)ため、上記実施形態と同様の効果を奏する。なお、上記実施形態では、一対のスクリュ11a,11bの両方の軸線を含む一つの中央領域が設定される。これに対し、一対のスクリュ11a,11bのそれぞれに対応する中央領域を2つ設定し、これらの中央領域内の通孔28aを他部の通孔28aよりも材料を吐出しにくくなるように構成してもよい。このようなスクリュ11の軸線上付近の通孔28aの吐出量を抑制する構成は、必須のものではない。例えば、上記実施形態において、ノズル部22の対向領域の寸法(言い換えると通孔28aの寸法)が均一であってもよい。
【0070】
また、スクリュ11の軸線上付近の通孔28aを他の部分の通孔28aよりも材料を吐出しにくくする構成に代えて、又は、加えて、例えば
図6(a)、(b)に示すように、先端がスクリュ11の軸線から径方向に偏心したスクリュ11を用いてもよい。
図6(a)は、頂点(先端)がスクリュ11の軸線(中心軸)Cから径方向にずれた円錐形状が先端部に設けられたカット形状、
図6(b)は先端部がカギ形状に形成された変形例を示す。これらの場合、スクリュ11の先端も軸線C回りに回転することになるため、スクリュ11の先端に接触する材料と他の材料との加熱の程度の差が小さくなり、複数の通孔28aからの吐出量が均一化される。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0072】
100 樹脂ペレット製造装置
10 押出機(スクリュ機械)
11 スクリュ
20 バレル
25 シリンダ
26 本体部
27 連通部
28 吐出口
28a 通孔
50 切断機構
60 冷却搬送機構
61 ガイド部