(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118214
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】スライドドアの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024526
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 真之
(57)【要約】
【課題】スライドドアをアッパレールに沿ってスライドさせる際に異音が発生し難いスライドドアの取付構造を提供する。
【解決手段】車体の側面に設けられたドア開口部の上縁に沿って延びるアッパレールと、スライドドアから前記アッパレールの下方に向かって延びるアーム部材と、前記アーム部材の上部に回転自在に設けられたローラーと、前記ローラーを前記アッパレールに押し付けるように前記アーム部材を付勢する弾性部材と、を備え、前記ローラーは、前記アッパレールが延びる方向および前記ローラーが押し付けられる方向の双方に交差する方向に沿った回転軸を有する、スライドドアの取付構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に設けられたドア開口部の上縁に沿って延びるアッパレールと、
スライドドアから前記アッパレールの下方に向かって延びるアーム部材と、
前記アーム部材の上部に回転自在に設けられたローラーと、
前記ローラーを前記アッパレールに押し付けるように前記アーム部材を付勢する弾性部材と、を備え、
前記ローラーは、前記アッパレールが延びる方向および前記ローラーが押し付けられる方向の双方に交差する方向に沿った回転軸を有する、
スライドドアの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドドアをアッパレールで案内してスライドしつつ開閉するスライドドアの開閉構造が開示されている。このスライドドアの開閉構造は、アッパレールと揺動アームと弾性部材とローラーとを備える。アッパレールは、スライドドアのスライド方向に延びるように車体の上部に取付けられている。揺動アームの基端は、スライドドアに支持されている。弾性部材は、揺動アームの基端に設置されて上方に揺動アームを付勢する。ローラーは、揺動アームの先端に回転自在に支持されている。ローラーがアッパレール内に下方から嵌め込まれ、かつ揺動アームが常に上方に押し付けられることで、揺動アームの先端がアッパレールに係合されつつアッパレールに案内される。ローラーは、上方に押し付けられる方向に沿った回転軸を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術のように、揺動アームが上方に付勢されると、ローラーがアッパレール内の上面まで押し上げられる。ローラーの回転軸が上方に押し付けられる方向に沿っていると、ローラーの上端面がアッパレールの上面に押し付けられる。ローラーの上端面は、ローラーの回転軸に直交する面である。ローラーの上端面がアッパレールの上面に押し付けられた状態でローラーが回転すると、ローラーの上端面とアッパレールの上面とが滑り接触して擦れ合い、異音が発生し易い。
【0005】
本発明の目的の一つは、スライドドアをアッパレールに沿ってスライドさせる際に異音が発生し難いスライドドアの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスライドドアの取付構造は、車体の側面に設けられたドア開口部の上縁に沿って延びるアッパレールと、スライドドアから前記アッパレールの下方に向かって延びるアーム部材と、前記アーム部材の上部に回転自在に設けられたローラーと、前記ローラーを前記アッパレールに押し付けるように前記アーム部材を付勢する弾性部材と、を備え、前記ローラーは、前記アッパレールが延びる方向および前記ローラーが押し付けられる方向の双方に交差する方向に沿った回転軸を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスライドドアの取付構造では、スライドドアをアッパレールに沿ってスライドさせる際に異音が発生し難い。スライドドアのスライド時には、ローラーが下方からアッパレールに押し付けられつつアッパレールに沿ってスライドする。上記ローラーの回転軸は、アッパレールが延びる第一方向およびローラーが押し付けられる第二方向の双方に交差する方向に沿っている。ローラーの回転軸が第一方向に交差する方向に沿っていることで、スライドドアから延びるアーム部材に連動して、ローラーがアッパレールに沿ってスライドする。ローラーの回転軸が第二方向に交差する方向に沿っていることで、ローラーの周面がアッパレールに押し付けられる。ローラーの周面は、ローラーの回転軸の軸周りに沿った環状の面である。ローラーの周面がアッパレールに押し付けられることで、ローラーがアッパレールに転がり接触し、実質的に滑り接触しない。ローラーとアッパレールとが転がり接触するのであれば、ローラーとアッパレールとが擦れ難く、異音が発生難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のスライドドアの取付構造をスライドドア側から見た概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態のスライドドアの取付構造におけるアッパレールとローラーとの接触箇所およびその近傍を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のスライドドアの取付構造を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」とは、車両の正面を「前」とし、これを基準とする方向を意味する。また、左右方向の中央を「内側」、左右方向において中央から離れる側を「外側」とする。車両の前後方向が車長方向である。車両の左右方向が車幅方向である。車両の上下方向が車高方向である。
【0010】
スライドドアは、例えば車両の左右に配置された後部ドアである。各スライドドアは、特許文献1の
図1および
図2に示すように、アッパレール、センターレール、およびロアレールの3つのレールにより車両の前後方向にスライド自在に支持されている。本発明のスライドドアの取付構造は、左右のスライドドアの各々に設けられている。左右のスライドドアの各々に設けられたスライドドアの取付構造は、左右対称の構成である。以下の説明では、左側のスライドドアに設けられたスライドドアの取付構造について説明する。
【0011】
<概要>
実施形態のスライドドアの取付構造1は、
図1に示すように、アッパレール3、アーム部材4、ローラー5、および弾性部材9を備える。アッパレール3は、図示しない車体の側面に設けられたドア開口部の上縁に沿って延びている。アーム部材4は、スライドドア2からアッパレール3の下方に向かって延びている。ローラー5は、アーム部材4の上部に回転自在に設けられている。弾性部材9は、ローラー5をアッパレール3に押し付けるようにアーム部材4を付勢している。このスライドドアの取付構造1では、スライドドア2のスライド時には、ローラー5が下方からアッパレール3に押し付けられつつアッパレール3に沿ってスライドする。
【0012】
実施形態のスライドドアの取付構造1の特徴の一つは、
図1および
図2に示すように、ローラー5の回転軸50が第一方向D1および第二方向D2の双方に交差する第三方向D3に沿っている点にある。第一方向D1は、アッパレール3が延びる方向である。第一方向D1は、実質的に車両の前後方向に沿った方向とみなすことができる。第二方向D2は、ローラー5が弾性部材9によってアッパレール3に押し付けられる方向である。第二方向D2は、実質的に車両の上方向とみなすことができる。本例の第三方向D3は、実質的に車両の左右方向に沿った方向とみなすことができる。
図2では、説明の便宜上、アッパレール3のみを断面で示している。
【0013】
<アッパレール>
アッパレール3は、図示しないものの、車両のルーフと車室内空間の内壁を形成するルーフヘッドライニングとの間に配置されている。アッパレール3は、側面視において略直線状に延びている。アッパレール3の前部は、後方から前方に向かうにつれて外側から内側に向かってカーブするように延びた領域を含んでいてもよい。アッパレール3の前部は、後方から前方に向かうにつれて下方から上方に向かってカーブルするように延びた領域を含んでいてもよい。
【0014】
アッパレール3は、
図2に示すように、C字状の断面を有する。この断面は、アッパレール3が延びる方向と直交する方向にアッパレール3を切断した断面である。アッパレール3は、上部31と二つの側部32,33とを備え、下方に開口している。上部31と二つの側部32,33とで構成された内部空間には、後述するローラー5が配置されている。本例では、各側部32,33の下端には、互いに近づく方向に屈曲したフランジ部が設けられている。このフランジ部間に開口部が設けられている。この開口部から上記内部空間にローラー5が挿入されている。本例の上部31は、上方に凸となるように湾曲している。上部31が湾曲していると、この湾曲部分に後述するローラー5が配置され、ローラー5の左右方向のがたつきが抑制され易い。上部31は、平坦面で構成されていてもよい。平坦面で構成された上部31と外側の側部32との角部およびその近傍には、上記内部空間に向かって突出すると共に、アッパレール3の延びる方向に沿って設けられた突条を有していてもよい。
【0015】
<アーム部材>
アーム部材4は、
図1に示すように、第一端部41および第二端部42を有する。スライドドア2には、ブラケット7が取り付けられている。第一端部41は、ブラケット7に取り付けられている。つまり、第一端部41は、ブラケット7を介してスライドドア2に固定されている。第二端部42は、アッパレール3の下方に位置する。第二端部42は、自由端である。アーム部材4は、スライドドア2に片持ち支持されている。
【0016】
ブラケット7は、取付部70と固定部71とを備える。取付部70と固定部71とは一体成形品である。取付部70は、下部70bと二つの側部70sとを備える。下部70bは、第一方向D1に沿って延びている。つまり、下部70bは、スライドドア2のスライド方向に沿って延びている。二つの側部70sの各々は、取付部70の端部に設けられている。各側部70sは、上方に突出している。取付部70の形状は、スクエアブラケット状である。二つの側部70sには、シャフト8が架け渡されている。固定部71は、スライドドア2に向かい合うように各側部70sから突出している。固定部71には、ボルト孔71hが形成されている。このボルト孔71hに図示しないボルトを通して締め込むことで、ブラケット7がスライドドア2に固定されている。
【0017】
アーム部材4の第一端部41は下部70bを上方から覆うように配置されている。第一端部41における向かい合う側面の各々には、互いに向かい合うように下方に突出する突片45が設けられている。各突片45は、ブラケット7の各側部70sに向かい合うように配置されている。各突片45には、シャフト8が貫通している。各突片45は、シャフト8に対して上下方向に揺動自在に支持されている。
【0018】
<ローラー>
ローラー5は、アーム部材4の第二端部42の上部に回転自在に設けられている。本例では、第二端部42にブラケット6が回転自在に取り付けられている。本例のローラー5は、ブラケット6に回転自在に取り付けられている。一つのアーム部材4に一つのローラー5が設けられている。
【0019】
ブラケット6は、
図2に示すように、第一片61と第二片62とを備える。第一片61と第二片62とは一体成形品である。第一片61は、第二端部42の上面に沿って設けられている。第二片62は、第一片61から上方に突出している。第二片62の先端部は、アッパレール3の内部空間に位置する。本例の第二片62の先端部は、上記内部空間の内側寄りに位置している。第一片61と第二片62は、L字状に配置されている。第一片61には、回転軸65が取り付けられている。回転軸65は、後述する第二方向D2に沿っている。第一片61は、第二端部42の上面に沿った面内で回転する。回転軸65は、例えば第二端部42に固定されている。回転軸65が第二端部42に固定されている場合、第一片61は回転軸65に対して回転自在に取り付けられている。回転軸65は、第二端部42に回転自在に取り付けられていてもよい。回転軸65が第二端部42に回転自在である場合、第一片61は回転軸65に固定されている。ブラケット6がアーム部材4に回転自在に取り付けられていると、アッパレール3が湾曲した箇所を有していたとしても、ローラー5がアッパレール3に沿って適切にスライドされ易い。
【0020】
ローラー5は、周面51と側面52,53とを備える。側面52,53の中心部には、側面52,53を貫通する回転軸50が取り付けられている。ローラー5の回転軸50は、第一方向D1および第二方向D2の双方に交差する第三方向D3に沿っている。回転軸50が第一方向D1に交差する方向に沿っていることで、ローラー5がアッパレール3に沿ってスライド自在である。回転軸50は、第一方向D1に概ね直交する方向に沿っている。回転軸50が第二方向D2に交差する方向に沿っていることで、周面51がアッパレール3の上部31に向かい合い、側面52,53がアッパレール3の側部32,33に向かい合う。ローラー5の周面51は、両側面52,53同士をつなぐと共に、回転軸50の軸周りに沿った環状の面である。周面51は、後述する弾性部材9によって上部31に接触する。側面52,53は、側部32,33との間に間隔を有しており、側部32,33に接触し難い。本例の回転軸50は、第二方向D2と直交する方向に沿っている。ローラー5の周面51がアッパレール3の上部31に向かい合っていれば、回転軸50が第二方向D2と直交しない方向に沿っていてもよい。
【0021】
本例の回転軸50は、ブラケット6の第二片62の先端部に取り付けられている。本例の第二片62は、ローラー5の内側の側面53を支持している。回転軸50は、例えばローラー5に固定されている。回転軸50がローラー5に固定されている場合、回転軸50は第二片62に対して回転自在に取り付けられている。ローラー5は、回転軸50に回転自在に取り付けられていてもよい。ローラー5が回転軸50に回転自在である場合、回転軸50は第二片62に固定されている。第二片62は、ローラー5の外側の側面52を支持するように配置されていてもよい。第二片62は、ローラー5の内側の側面53および外側の側面52の双方を支持するように配置されていてもよい。
【0022】
ローラー5の周面51は、アッパレール3の上部31の形状に対応しているとよい。本例の周面51は、幅方向中央が凸となるように湾曲した形状を有する。上部31および周面51が共に湾曲状であれば、上部31と周面51との接触面積を確保することができ、ローラー5がスライドし易い。上部31の形状によっては、周面51は幅方向に平坦な面であってもよい。
【0023】
<弾性部材>
弾性部材9は、ローラー5をアッパレール3に押し付けるようにアーム部材4を付勢している。
図1および
図2では、ローラー5が弾性部材9によってアッパレール3に押し付けられる第二方向D2を黒塗り矢印でも示している。本例の弾性部材9は、
図1に示すように、ねじりばねである。弾性部材9を構成するねじりばねは、シャフト8に巻き付けられている。弾性部材9を構成するねじりばねでは、ねじりばねの第一端部がブラケット7の下部70bに係止されており、第二端部がアーム部材4に係止されている。弾性部材9は、アーム部材4の第二端部42を上方に付勢できれば、ねじりばね以外のいかなる構成であってもよい。第二端部42の上部にローラー5が配置されているため、ローラー5がアッパレール3の内部空間内で上部31に押し付けられている。ローラー5がアッパレール3に押し付けられることで、スライドドア2のスライド時にローラー5ががたつき難い。
【0024】
<作用効果>
実施形態のスライドドアの取付構造1では、弾性部材9によって、ローラー5がアッパレール3の内部空間内で常に上部31に押し付けられている。よって、上記スライドドアの取付構造1では、スライドドア2のスライド時には、ローラー5が上部31に押し付けられた状態でアッパレール3に沿ってスライドする。第三方向D3に沿った回転軸50では、ローラー5の周面51が上部31に押し付けられる。ローラー5の周面51は回転軸50の軸周りに沿った環状の面であるため、ローラー5はアッパレール3に転がり接触し、実質的に滑り接触しない。ローラー5とアッパレール3とが転がり接触するのであれば、ローラー5が上部31に押し付けられたところで、ローラー5と上部31とは擦れ難く、異音が発生し難い。ローラー5の側面52,53とアッパレール3の側部32,33との間には間隔があり、側面52,53と側部32,33とは擦れ難く、異音が発生し難い。以上により、上記スライドドアの取付構造1によれば、スライドドア2をアッパレール3に沿ってスライドさせる際に異音が発生し難い。
【0025】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0026】
1 スライドドアの取付構造
2 スライドドア
3 アッパレール
31 上部
32,33 側部
4 アーム部材
41 第一端部
42 第二端部
45 突片
5 ローラー
50 回転軸
51 周面
52,53 側面
6 ブラケット
61 第一片
62 第二片
65 回転軸
7 ブラケット
70 取付部
70b 下部
70s 側部
71 固定部
71h ボルト孔
8 シャフト
9 弾性部材
D1 第一方向
D2 第二方向
D3 第三方向