(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118224
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20240823BHJP
B65H 31/26 20060101ALI20240823BHJP
G07D 11/17 20190101ALI20240823BHJP
【FI】
G07D11/14
B65H31/26
G07D11/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024542
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】長岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒川 幸二郎
【テーマコード(参考)】
3E141
3F054
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA01
3E141FF01
3E141FF09
3F054AA03
3F054AC06
3F054BA04
3F054BB03
3F054BG08
3F054DA11
3F054DA16
(57)【要約】
【課題】トレイ移動時の紙幣の浮き上がりを防止する。
【解決手段】装置筐体と、前記装置筐体内部に収納された収納位置から第1の方向に移動して前記装置筐体外部に露出する、紙幣を集積するトレイと、前記トレイが前記第1の方向に移動する際に、前記トレイに集積されている紙幣の浮き上がりを防止する浮上防止部材とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置筐体と、
前記装置筐体内部に収納された収納位置から第1の方向に移動して前記装置筐体外部に露出する、紙幣を集積するトレイと、
前記トレイが前記第1の方向に移動する際に、前記トレイに集積されている紙幣の浮き上がりを防止する浮上防止部材と
を備える
ことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記トレイは、
前記トレイの底部を形成するトレイ底部と、
前記トレイ底部の前記第1の方向とは逆方向の端となる奥側の端から上方に立ち上がるトレイ奥壁部とを有し、
前記収納位置にあるときに前記トレイ奥壁部の上方に位置する紙幣放出口から前記第1の方向に放出された紙幣を前記トレイ底部の上面に集積するようになっていて、
前記浮上防止部材は、
当該トレイ奥壁部から前記第1の方向に延びる薄板状の部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記浮上防止部材は、
当該トレイ奥壁部から前記トレイ底部に向かって前記第1の方向ななめ下に延びている
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記浮上防止部材は、
前記第1の方向の端となる先端が、前記トレイ底部上に集積された紙幣の前記第1の方向とは逆方向の端に対して前記第1の方向にオーバーラップする
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記浮上防止部材は、
前記紙幣が前記トレイ奥壁部から最も離れた位置に集積された場合でも、当該紙幣に対してオーバーラップするように、前記先端までの長さが選定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記浮上防止部材は、
前記トレイ底部の上面と前記先端との距離が、前記トレイに集積可能な最大枚数分の紙幣の厚さよりも大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記装置筐体には、前記収納位置にある前記トレイのさらに奥側に、羽根を有する羽根車が設けられ、
前記羽根車は、
前記収納位置にある前記トレイに前記羽根が入り込むようになっていて、前記紙幣放出口から前記第1の方向に放出された紙幣を、前記羽根により前記トレイ底部側に押さえ付けるように回転し、
前記浮上防止部材は、
弾性素材で形成され、
前記紙幣が前記羽根により前記トレイ底部側に押さえ付けられる際に、当該紙幣と接触して前記トレイ底部側に押されると、前記トレイ奥壁部側に折れ曲がるように変形する
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記羽根車は、
前記トレイの前記第1の方向と直交する幅方向に間隔を空けて複数個設けられていて、前記収納位置にある前記トレイに複数個の前記羽根車の前記羽根が前記幅方向に間隔を空けて入り込むようになっていて、
前記浮上防止部材は、
前記トレイが前記収納位置にあるときに、前記トレイに入り込む前記羽根と前記羽根の間に位置する
ことを特徴とする請求項7に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
前記浮上防止部材は、
先端に向かって幅狭となる先細り形状である
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項10】
前記浮上防止部材は、
前記トレイの前記第1の方向と直交する幅方向に間隔を空けて複数個設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項11】
前記トレイは、
前記トレイの底部を形成するトレイ底部と、
前記トレイ底部の上方に位置する上側紙幣ガイドと
を有し、
前記浮上防止部材は、
前記トレイ底部の上方に設けられた前記第1の方向に延びる柔らかい部材であり、前記トレイが前記収納位置から前記第1の方向に移動することにともなって、前記第1の方向の端となる一端部分に、前記第1の方向とは逆方向の端となる他端部分が近づくようにして下方に撓んでいくことにより、前記浮上防止部材の下端が前記上側紙幣ガイドから前記トレイ底部へと近づいていく
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項12】
前記浮上防止部材は、
前記一端部分が、前記装置筐体に固定され、前記他端部分が、前記上側紙幣ガイドに固定され、前記トレイが前記収納位置から前記第1の方向に移動すると、下方に撓んでいくことにより、前記下端が前記上側紙幣ガイドから前記トレイ底部へと近づいていく
ことを特徴とする請求項11に記載の紙幣処理装置。
【請求項13】
前記浮上防止部材は、
前記トレイが前記装置筐体外部に露出したときに、前記下端が前記トレイ底部に最も近づき、このときの当該下端と前記トレイ底部との距離が、前記トレイに集積可能な最大枚数分の紙幣の厚さ以上である
ことを特徴とする請求項12に記載の紙幣処理装置。
【請求項14】
前記浮上防止部材は、
前記トレイが前記収納位置にあるときに下方に撓むように設けられていて、前記トレイが前記第1の方向に移動することにともなって下方への撓みが大きくなっていく
ことを特徴とする請求項11に記載の紙幣処理装置。
【請求項15】
前記浮上防止部材には、
撓み方向を下方とする為の折れ癖が設けられている
ことを特徴とする請求項11に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ガソリンスタンド等の小売店や、ディスカウントショップ等の大型量販店等の精算所等で使用されるレジ釣銭システムとして、POS(Point Of Sales)レジ等のレジスタに、紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭機が組み合わされたものが普及している。
【0003】
この釣銭機に組み込まれた紙幣処理装置としての紙幣入出金機は、例えば、使用者(レジ係員や顧客等)との間で紙幣の授受を行う入出金部と、紙幣を搬送する搬送部と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、再利用可能な紙幣を金種毎に収納する紙幣収納庫等を有している。
【0004】
またこの種の紙幣入出金機として、装置内に引き込まれた紙幣出金用トレイに紙幣を集積した後、当該紙幣出金用トレイを装置外に露出させることにより、当該紙幣出金用トレイに集積した紙幣を利用者に受け取らせるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙幣出金用トレイを装置内に引き込んだ位置から装置外に露出する位置まで移動させるようにすると、当該紙幣出金用トレイを移動させる際に、当該紙幣出金用トレイに集積されている紙幣が浮き上がって、装置内に取り残されてしまう場合があるという問題を有していた。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、トレイ移動時の紙幣の浮き上がりを防止し得る紙幣処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の紙幣処理装置においては、装置筐体と、前記装置筐体内部に収納された収納位置から第1の方向に移動して前記装置筐体外部に露出する、紙幣を集積するトレイと、前記トレイが前記第1の方向に移動する際に、前記トレイに集積されている紙幣の浮き上がりを防止する浮上防止部材とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トレイ移動時の紙幣の浮き上がりを防止し得る紙幣処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態における紙幣入出金機の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態における紙幣出金部の内部構成を示す側断面図である。
【
図3】第1の実施の形態における紙幣入出金機の紙幣出金口から集積トレイが押し出される様子を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態における集積トレイが排出される際の動作を示す側断面図である。
【
図5】第1の実施の形態における集積トレイの外観構成を示す斜視図である。
【
図6】集積トレイに集積された出金紙幣が浮き上がる様子を示す側断面図である。
【
図7】第1の実施の形態における浮上防止部材の取付角度等を示す側断面図である。
【
図8】第1の実施の形態における浮上防止部材が変形する様子を示す側断面図である。
【
図9】第1の実施の形態における浮上防止部材の先端の高さを示す側断面図である。
【
図10】第1の実施の形態における浮上防止部材の配置を示す斜視図である。
【
図11】第1の実施の形態における浮上防止部材の配置を示す上面図である。
【
図12】第2の実施の形態における紙幣出金部の内部構成を示す側断面図である。
【
図13】第2の実施の形態における集積トレイの外観構成を示す斜視図である。
【
図14】第2の実施の形態における集積トレイが排出される際の動作を示す側断面図である。
【
図15】第2の実施の形態における浮上防止部材の折れ癖を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0012】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.紙幣入出金機の構成]
図1に、第1の実施の形態による紙幣入出金機1の外観構成を示す。この紙幣入出金機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ガソリンスタンド等の小売店の精算所に設置された図示しない釣銭機に紙幣ユニットとして組み込まれたものである。この紙幣入出金機1は、図示しないPOSレジなどのレジスタと接続されており、当該レジスタの制御に基づき動作する。
【0013】
尚、この紙幣入出金機1においては、使用者(レジ係員や顧客等)が対峙する側を前側、その反対側を後側とし、さらに使用者から見て上下左右を、それぞれ上側、下側、左側、右側とする。
【0014】
紙幣入出金機1は、直方体形状の筐体2を有しており、この筐体2の前面上部に紙幣が投入される紙幣入金口3が設けられ、前面下部に紙幣が排出される紙幣出金口4が設けられている。この紙幣入出金機1は、使用者により紙幣入金口3に投入された紙幣を取り込んで筐体2内部に収納すると共に、内部に収納している紙幣を紙幣出金口4から釣銭として排出する。
【0015】
この紙幣入出金機1の筐体2内部には、前側下部(つまり紙幣出金口4の奥)に、出金紙幣を紙幣出金口4から排出する紙幣出金部10が設けられている。以下、この紙幣出金部10の構成及び動作について詳しく説明する。
【0016】
[1-2.紙幣出金部の構成及び動作]
図2に、紙幣出金部10を右側から見た場合の側断面図を示す。この
図2に示すように、紙幣出金部10は、出金紙幣BLを集積する集積トレイ11を中心に構成されていて、集積トレイ11の前方には、紙幣出金口4を覆う扉12(
図2に加えて
図1参照)が設けられている。
図3(A)、(B)及び
図4(A)~(C)に示すように、紙幣出金部10では、図示しないモータの駆動力を用いて、集積トレイ11を
図2及び
図4(A)の位置から前方にスライドさせることで、集積トレイ11が扉12を開きながら紙幣出金口4の前方に押し出される(排出される)ようになっている。このように、紙幣出金部10は、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLを、集積トレイ11ごと紙幣出金口4から排出するようになっている。そして使用者は、このようにして紙幣出金口4から排出された集積トレイ11から出金紙幣BLを抜き取るようになっている。尚、
図4(A)に示す集積トレイ11の位置を収納位置、
図4(C)に示す集積トレイ11の位置を排出位置と呼ぶ。
【0017】
この集積トレイ11は、
図2に加えて
図5の外観斜視図に示すように、トレイ底部11bと、トレイ底部11bの奥側の端(後端)から上方に立ち上がるトレイ後壁部11r(
図5では省略)と、トレイ底部11bの幅方向の両端(左右両端)から上方に立ち上がる左右のトレイ側壁部11s(
図2では省略)とを有し、トレイ底部11b上に出金紙幣BLを集積する(重ねて載置する)。ここで、集積トレイ11は、出金紙幣BLの短手方向を前後方向とする向きで、出金紙幣BLを集積するようになっている。尚、
図5は、排出位置にある集積トレイ11から出金紙幣BLを前方に抜き取る様子を示している。
【0018】
トレイ底部11bは、
図2に示すように、前端側よりも後端側の方が低くなるように傾斜していて、且つ
図5に示すように、前端側の左右方向(以下、幅方向とする)の中央部分が切り欠かれた形状となっている。別の言い方をすると、トレイ底部11bは、上から見て凹字形状となっている。トレイ底部11bの前端側の中央部分に形成された切り欠き11nは、集積トレイ11から出金紙幣BLを抜き取る際に、出金紙幣BLを掴み易くする為のものである。
【0019】
また
図2に示すように、紙幣出金部10は、集積トレイ11の後方から、集積トレイ11の後端上方(トレイ後壁部11rの上方)に向かって延びる紙幣搬送路13が設けられている。この紙幣搬送路13は、紙幣出金部10へと搬送されてきた紙幣が通る搬送路であり、下側搬送ガイド14Lと、上側搬送ガイド14Uとの間に設けられている。下側搬送ガイド14Lのガイド面となる上面14Lsと上側搬送ガイド14Uのガイド面となる下面14Usは、それぞれ集積トレイ11の後端上方に向かって下る傾斜面となっている。
【0020】
紙幣出金部10へと搬送されてきた出金紙幣BLは、この紙幣搬送路13を通って、当該紙幣搬送路13の集積トレイ11側の端部(つまり紙幣搬送路13の前端部であり、トレイ後壁部11rの上方)に位置する紙幣放出口13Hから集積トレイ11上に放出されるようになっている。また紙幣搬送路13の前端部(つまり紙幣放出口13Hの部分)には、集積ローラ15とプレッシャローラ16とが、集積ローラ15を下側、プレッシャローラ16を上側とする位置関係で上下方向に対向配置されている。これら集積ローラ15とプレッシャローラ16は、それぞれ矢印R1、R2で示す方向に回転することにより、紙幣出金部10へと搬送されてきた出金紙幣BL(つまり紙幣搬送路13を通る出金紙幣BL)を間に挟んで、紙幣放出口13Hから前方の集積トレイ11上へと放出する。
【0021】
さらに集積ローラ15の回転軸には、複数の羽根17tを有し、集積ローラ15とともに回転する羽根車17が設けられている。この羽根車17は、集積トレイ11のさらに奥側に設けられていて、集積ローラ15とプレッシャローラ16により集積トレイ11上へと放出された出金紙幣BLの後部を羽根17tで上から叩き、当該出金紙幣BLをトレイ底部11b側に押さえ付けるようにしてトレイ底部11b上に集積していく。尚、トレイ後壁部11rには、羽根車17と対向する箇所に溝が設けられていて、この溝から羽根車17の羽根17tが集積トレイ11の集積空間Spへと入り込むようになっている。
【0022】
さらに集積トレイ11の上方には、集積ローラ15とプレッシャローラ16により前方に放出された出金紙幣BLを集積トレイ11へとガイドするとともに、集積トレイ11とともに出金紙幣BLの集積空間Spを形成する上側紙幣ガイド18が設けられている。この上側紙幣ガイド18は、
図5に示すように、左右のトレイ側壁部11sの間に挟まれるようにして左右のトレイ側壁部11sの上端部分に固定されていて、トレイ底部11bの上方に対向配置されている。つまり、この上側紙幣ガイド18は、集積トレイ11の一部となっている。
【0023】
図2に示すように、この上側紙幣ガイド18は、集積トレイ11の後端側から前端近くまで延びていて、後端側よりも前端側の方が低くなるように傾斜している。つまり上側紙幣ガイド18のガイド面である下面18gと、トレイ底部11bの載置面である上面11gとの間隔は、集積トレイ11の後端側から前端側に向かうにつれて(つまり前方に向かうにつれて)狭くなっている。尚、トレイ後壁部11rの上端と上側紙幣ガイド18の下面18gは離れていて、上側紙幣ガイド18の下面18gは、上側紙幣ガイド18の後方に位置する上側搬送ガイド14Uの下面14Usの延長線上に位置するようになっている。つまり、紙幣放出口13Hから放出された出金紙幣BLは、上側紙幣ガイド18とトレイ後壁部11rの間を通って集積空間Spへと入り込み、トレイ底部11b上に集積されるようになっている。
【0024】
またこの上側紙幣ガイド18は、
図5に示すように、トレイ底部11bと同様、前端側の幅方向の中央部分が切り欠かれた形状(上から見て凹形状)となっている。つまりこの上側紙幣ガイド18も、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLを掴み易くする為に、前端側の中央部分に切り欠き18nが形成されている。
【0025】
さらに
図2及び
図5に示すように、上側紙幣ガイド18の幅方向(左右方向)の一端側(左端側)と他端側(右端側)のそれぞれの前端部には、紙幣飛出規制部19が設けられている。一端側(左端側)の紙幣飛出規制部19は、上側紙幣ガイド18の幅方向の一端側(左端側)の前端から、トレイ底部11bの前端に向かって前方に延びている。同様に、他端側(右端側)の紙幣飛出規制部19も、上側紙幣ガイド18の幅方向の他端側(右端側)の前端から、トレイ底部11bの前端に向かって前方に延びている。
【0026】
2つの紙幣飛出規制部19は、それぞれ上側紙幣ガイド18の幅方向(左右方向)に延びる回動軸19a(
図2参照)を介して、上側紙幣ガイド18の前端部に回動可能に取り付けられている。これにより2つの紙幣飛出規制部19は、それぞれの先端部(前端部)がトレイ底部11bの前端部に近づく方向及び離れる方向に回動することができる。これら2つの紙幣飛出規制部19は、例えば自重により、それぞれの先端部がトレイ底部11bの前端部に近づく方向に付勢されていて、それぞれの先端部がトレイ底部11bの前端部に当接するようになっている。
【0027】
この紙幣飛出規制部19は、トレイ底部11bの前端部に当接することで、集積空間Spの前端側を塞ぎ、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLが前方に飛び出すことを規制するようになっている。また
図5に示すように、この紙幣飛出規制部19は、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLの幅方向の中央部分を掴んで使用者が前方に抜き取ろうとする際に、当該出金紙幣BLによって押し上げられるようになっていて、これにより、集積空間Spの前端側が開放され、出金紙幣BLを容易に抜き取ることができるようになっている。
【0028】
さらに
図2に示すように、集積トレイ11は、トレイ後壁部11rに、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLの浮き上がりを防止する為の浮上防止部材30が設けられている。
【0029】
ここで、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLが浮き上がってしまう事象について簡単に説明する。
図6(A)~(C)に、浮上防止部材30を省略した構成の紙幣出金部10を示す。集積トレイ11に集積された出金紙幣BLや、集積トレイ11の各部には、互いに擦れるなどして静電気が発生する。この静電気によって、例えば、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLが、上側紙幣ガイド18へと引き寄せらせる場合がある。
【0030】
このとき、集積トレイ11が、
図6(A)に示す収納位置にあれば、羽根車17の羽根17tが、集積トレイ11の集積空間Spへと入り込んで、集積されている出金紙幣BLを上から押さえ付ける。よってこのとき、出金紙幣BLが上側紙幣ガイド18へと引き寄せられても浮き上がらない。
【0031】
一方で、集積トレイ11が、
図6(A)に示す収納位置から
図6(C)に示す排出位置まで移動すると、このとき羽根車17は移動しない為、
図6(B)に示すように、集積トレイ11の移動途中で、羽根17tが集積空間Spから外れることになる。
【0032】
羽根17tが集積空間Spから外れてしまうと、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLを押さえ付ける部材がなくなる為、
図6(C)に示すように、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLが上側紙幣ガイド18へと引き寄せられて浮き上がり、上側紙幣ガイド18の下面18gに張り付いてしまう場合がある。
【0033】
また集積トレイ11が移動する際に、上側紙幣ガイド18の下面18gに張り付いた出金紙幣BLが、上側紙幣ガイド18の下面18gとトレイ後壁部11rの間を通って集積空間Spの後方(つまり紙幣入出金機1の筐体2内部)へと引き込まれてしまう場合もあった。
【0034】
このように、集積トレイ11が移動する際に、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLが浮き上がってしまうと、当該出金紙幣BLが上側紙幣ガイド18に張り付いたり、筐体2内部へと引き込まれたりしてしまう場合があり、この場合、上側紙幣ガイド18に張り付いたり、筐体2内部へ引き込まれた出金紙幣BLについては、利用者に受け取らせることができなくなってしまう。
【0035】
そこで、本実施の形態の紙幣出金部10では、
図2に示したように、トレイ後壁部11rに、集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLの浮き上がりを防止する為の浮上防止部材30を設けるようにした。尚、ここで言う出金紙幣BLの浮き上がりを防止するとは、出金紙幣BLがほんのわずかでも浮き上がることを防止するという意味ではなく、上側紙幣ガイド18に張り付いてしまうほど浮き上がることを防止するという意味である。
【0036】
この浮上防止部材30は、トレイ後壁部11rの上部から前方(集積空間Sp側)に向かって延びる柔らかい薄板状の部材である。具体的には、浮上防止部材30は、トレイ後壁部11rの上部から、トレイ底部11bに向かって前方斜め下に延びている。
【0037】
またこの浮上防止部材30は、先端が、集積トレイ11のトレイ底部11bよりも上方に位置している。また浮上防止部材30は、先端が集積トレイ11に集積された出金紙幣BLの後端よりも前方に位置するように、集積された出金紙幣BLに対してオーバーラップするようになっている。ここで、
図7に示すように、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLの後端の位置は、短手方向の長さが最短となる金種の出金紙幣BLがトレイ底部11bの前端寄りに載置された場合に、最もトレイ後壁部11rから離れる。この為、浮上防止部材30は、先端が、このときの出金紙幣BLの後端よりも前方(具体的には長さD1だけ前方)に位置するように、トレイ後壁部11rから先端までの長さが選定されている。尚、このときの長さD1(つまりオーバーラップ量)は、例えば5mm程度となっている。
【0038】
これにより、浮上防止部材30は、出金紙幣BLがトレイ底部11bの前端寄りに載置されている場合でも、当該出金紙幣BLが浮き上がろうとした際に、当該出金紙幣BLの後端部に接触して当該出金紙幣BLを上から押さえ付けて浮き上がりを防止することができる。尚、上述したように、上側紙幣ガイド18の下面18gと、トレイ底部11bの上面11gとの間隔(つまり集積空間Spの高さ)は、集積トレイ11の後端側から前端側に向かうにつれて狭くなっている。この為、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLは、前端側よりも後端側の方が浮き上がり易くなっている。そこで、紙幣出金部10では、浮上防止部材30をトレイ後壁部11rに設け、浮上防止部材30が浮き上がり易い出金紙幣BLの後端部に接触して上から押さえ付けることで、出金紙幣BLの浮き上がりを防止するようになっている。
【0039】
またこの浮上防止部材30は、集積トレイ11に設けられている為、集積トレイ11の位置によらず(つまり集積トレイ11が移動しても)、常に集積トレイ11に集積されている出金紙幣BLを上から押さえ付けて浮き上がりを防止することができる。
【0040】
またこの浮上防止部材30は、先端が、下側搬送ガイド14Lの上面14Lsを集積空間Sp側に延ばした仮想面L1から上方に飛び出さないように設けられている。これにより浮上防止部材30は、出金紙幣BLが紙幣放出口13Hから集積空間Spへと放出される際に妨げとならない。
【0041】
また浮上防止部材30は、トレイ後壁部11rに対する取付角度θ1が、トレイ後壁部11rと仮想面L1(つまり出金紙幣BLの放出方向)とのなす角度θ2よりも小さくなっている。これにより、紙幣放出口13Hから集積空間Spへと放出された出金紙幣BLが、浮上防止部材30に引っ掛かったりすることなく、スムーズにトレイ底部11b上に集積されるようになっている。
【0042】
また浮上防止部材30は、フィルムなどの柔らかい弾性素材で形成されていて、
図8に示すように、集積空間Spへと放出された出金紙幣BLが、羽根車17の羽根17tによりトレイ底部11b側に押さえ付けられる際に、当該出金紙幣BLによりトレイ後壁部11r側に折れ曲がるように変形して退避するようになっている。これにより浮上防止部材30は、出金紙幣BLの集積を妨げない。
【0043】
また
図9に示すように、浮上防止部材30は、トレイ底部11bの上面11gから先端までの距離H1が、トレイ底部11bに集積可能な最大枚数(例えば10枚であり、最大集積可能枚数と呼ぶ)分の出金紙幣BLの厚さH2よりも大きくなるように設けられている。これにより、集積トレイ11に最大集積可能枚数の出金紙幣BLが集積されている場合でも、集積されている出金紙幣BLよりも上方に浮上防止部材30の先端が位置するようになっている。尚、距離H1は、浮上防止部材30がトレイ後壁部11r側に折れ曲がるように変形した際に最小となるが、最小のときの距離H1が、厚さH2よりも大きくなることが望ましい。このようにすれば、出金紙幣BLの集積完了後、浮上防止部材30が、集積されている出金紙幣BLを崩してしまうようなことなく、スムーズに元の形状に戻ることができる。
【0044】
また浮上防止部材30は、集積トレイ11(上側紙幣ガイド18は除く)を上方から見た斜視図である
図10に示すように、トレイ後壁部11rの幅方向(左右方向)の一端側(左端側)と他端側(右端側)にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0045】
さらにいうと、集積トレイ11の上面図である
図11に示すように、左右の浮上防止部材30は、長手方向の長さが最短となる金種の出金紙幣BLがトレイ底部11bの左端寄りに載置された場合(
図11の場合)、及び右端寄りに載置された場合(図示せず)のどちらでも、当該出金紙幣BLの後端の上方に位置するように配置されている。具体的には、長手方向の長さが最短となる金種の出金紙幣BLの長手方向の長さをD10、左右のトレイ側壁部11sの間隔(つまり集積空間Spの幅)をD11、これらの差分をD12とすると、右側の浮上防止部材30は、右側のトレイ側壁部11sからD12以上離れた位置に設けられ、左側の浮上防止部材30は、左側のトレイ側壁部11sからD12以上離れた位置に設けられている。
【0046】
これにより、浮上防止部材30は、出金紙幣BLがトレイ底部11bの右端又は左端に寄って載置されている場合でも、当該出金紙幣BLが浮き上がろうとした際に、当該出金紙幣BLの後端部に接触して当該出金紙幣BLを上から押さえ付けることになる。
【0047】
ここで、
図11に示すように、集積ローラ15の回転軸15rには、軸方向の中央部に間隔を空けて2つの集積ローラ15が設けられ、さらにこれら2つの集積ローラ15の内側(回転軸15rの軸方向の中央)に1つの羽根車17が設けられている。さらに回転軸15rには、2つの集積ローラ15の外側に、それぞれ2つずつ羽根車17が設けられている。別の言い方をすると、羽根車17は、集積トレイ11の幅方向の中央に1つ、さらにこの羽根車17から見て幅方向の一端側(左側)に2つ、他端側(右側)に2つの計5個が設けられている。
【0048】
左側の浮上防止部材30は、中央の羽根車17から見て左側に位置する2つの羽根車17の羽根17tの間(具体的には集積空間Spへと入り込んでいる羽根17tと羽根17tの間)に配置されている。また右側の浮上防止部材30は、中央の羽根車17から見て右側に位置する2つの羽根車17の羽根17tの間に配置されている。このように、左右の浮上防止部材30は、それぞれ2つの羽根車17の羽根17tの間に配置されている。
【0049】
このように、羽根17tと羽根17tの間に浮上防止部材30を配置することにより、浮上防止部材30の左右両側から羽根17tで出金紙幣BLを押さえ付けることになる為、浮上防止部材30に接触した出金紙幣BLが上方に折れ曲がってしまうようなことなく、浮上防止部材30をトレイ後壁部11r側に折り曲げながら出金紙幣BLを確実に集積することができる。
【0050】
また
図10及び
図11に示すように、浮上防止部材30は、先端に向かって幅(左右方向の長さ)が狭くなる先細り形状となっている。これにより、浮上防止部材30は、例えば一定の幅を有する帯状の場合と比較して変形し易くなっている。紙幣出金部10の構成は、以上のようになっている。
【0051】
つづけて紙幣出金部10の動作について説明する。尚、ここでは、出金紙幣BLを集積トレイ11に集積して集積トレイ11とともに排出するまでの浮上防止部材30の動作について簡単に説明する。
【0052】
図8に示すように、紙幣出金部10へと搬送されてきた出金紙幣BLは、紙幣搬送路13を通り、集積ローラ15とプレッシャローラ16とによって紙幣放出口13Hから集積トレイ11上(つまり集積空間Sp)に放出される。ここで、羽根車17は、集積トレイ11上へと放出された出金紙幣BLの後部を羽根17tで上から叩き、当該出金紙幣BLをトレイ底部11bに押さえ付けるようにしてトレイ底部11b上に集積していく。
【0053】
このとき、浮上防止部材30は、出金紙幣BLと接触してトレイ後壁部11r側に折れ曲がるように変形することで、出金紙幣BLの集積を妨げないようになっている。そして、出金紙幣BLの集積が完了すると、浮上防止部材30は、出金紙幣BLから離れることにより元の形状に戻る。このとき、
図4(A)に示すように、浮上防止部材30は、先端が集積トレイ11に集積されている1番上の出金紙幣BLよりも上方に位置することにより、集積されている出金紙幣BLの浮き上がりを、羽根車17の羽根17tとともに防止することができる。
【0054】
このようにして集積トレイ11への出金紙幣BLの集積が完了すると、
図4(B)及び
図4(C)に示すように、集積トレイ11が収納位置から排出位置まで前方に移動する。このとき、集積トレイ11は、紙幣放出口13H、集積ローラ15、プレッシャローラ16、及び羽根車17から離間する方向に移動する為、羽根車17の羽根17tが、集積トレイ11の集積空間Spの後方に外れる。
【0055】
一方で、浮上防止部材30は、集積トレイ11のトレイ後壁部11rに設けられている為、集積トレイ11が移動しても、常に、集積されている出金紙幣BLの後端部の上方に位置する。これにより、浮上防止部材30は、集積トレイ11の移動中であっても、集積されている出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。浮上防止部材30の動作は、以上のようになっている。
【0056】
[1-3.まとめと効果]
ここまで説明したように、第1の実施の形態では、紙幣処理装置としての紙幣入出金機1に、装置筐体としての筐体2内部に収納された収納位置から第1の方向としての前方に移動して筐体2外部に露出する、紙幣(出金紙幣BL)を集積するトレイとしての集積トレイ11と、集積トレイ11が前方に移動する際に、集積トレイ11に集積されている紙幣の浮き上がりを防止するフィルム状の浮上防止部材30とを設けた。
【0057】
すなわち、集積トレイ11は、集積トレイ11の底部を形成するトレイ底部11bと、トレイ底部11bの第1の方向とは逆方向(後方)の端となる奥側の端から上方に立ち上がるトレイ奥壁部としてのトレイ後壁部11rとを有し、収納位置にあるときにトレイ後壁部11rの上方に位置する紙幣放出口13Hから前方に放出された出金紙幣BLをトレイ底部11bの上面11gに集積するようになっていて、浮上防止部材30が、トレイ後壁部11rから前方(具体的には第1の方向ななめ下としての前方ななめ下)に延びるようにした。
【0058】
これにより、浮上防止部材30は、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLが浮き上がろうとした際に、当該出金紙幣BLの後端部に接触して当該出金紙幣BLを上から押さえ付けるようにして、当該出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0059】
また浮上防止部材30は、集積トレイ11に設けられていることにより、集積トレイ11が収納位置から排出位置へと移動する間も、当該出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0060】
かくして、第1の実施の形態の紙幣入出金機1によれば、集積トレイ11移動時の出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができるので、集積トレイ11に集積した出金紙幣BLを確実に利用者に受け取らせることができる。
【0061】
また浮上防止部材30は、出金紙幣BLがトレイ後壁部11rから最も離れた位置に集積されている場合でも、第1の方向(前方)の端となる先端が出金紙幣BLの第1の方向とは逆方向(後方)の端となる後端に対して前方にオーバーラップするようにした。これにより、浮上防止部材30は、出金紙幣BLのサイズや集積位置によらず、確実に出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0062】
また浮上防止部材30は、弾性素材で形成されていて、出金紙幣BLが、羽根車17の羽根17tによりトレイ底部11b側に押さえ付けられるようにして集積される際に、当該出金紙幣BLと接触してトレイ底部11b側に押されると、トレイ後壁部11r側に折れ曲がるように変形することで退避し、集積完了後に元の形状に戻るようにした。これにより、浮上防止部材30は、出金紙幣BLの集積を妨げることなく、当該出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0063】
[2.第2の実施の形態]
つぎに、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、紙幣出金部10の構成(具体的には浮上防止部材)が、第1の実施の形態とは異なる。よって、ここでは主に紙幣出金部10の構成について説明する。尚、第1の実施の形態と区別する為、第2の実施の形態の紙幣出金部10を紙幣出金部110とする。
【0064】
[2-1.紙幣出金部(浮上防止部材)の構成及び動作]
図12に、紙幣出金部110を右側から見た場合の側断面図を示す。尚、
図12に示す紙幣出金部110は、
図2に示す紙幣出金部10と同一部分には同一符号を付与している。この
図12に示すように、紙幣出金部110は、紙幣出金部10に設けられていた浮上防止部材30の代わりに、浮上防止部材130が設けられていて、それ以外の基本的な構成は紙幣出金部10と同一となっている。同一部分についての説明については適宜省略する。
【0065】
この浮上防止部材130は、帯状の柔らかいフィルムであり、長手方向の一端側を後側、他端側を前側とする向き(つまり前後方向に延びる向き)で、一端部分(つまり後端部分)が集積トレイ11の上側紙幣ガイド18に固定され、他端部分(つまり前端部分)が紙幣入出金機1の筐体2(
図1参照)の内部フレーム2Fに固定されている。
【0066】
具体的には、集積トレイ11を上方から見た斜視図である
図13に示すように、浮上防止部材130の後端部分は、上側紙幣ガイド18の幅方向の中央部分に固定されている。尚、上側紙幣ガイド18の幅方向の中央部分は前端側に切り欠き18nが形成されている為、浮上防止部材130の後端部分は、この切り欠き18nよりも後方となる部分(つまり上側紙幣ガイド18の幅方向の中央部分の後部)に固定されている。
【0067】
一方、
図12に示すように、浮上防止部材130の前端部分は、集積トレイ11が収納位置にあるときに上側紙幣ガイド18の前端側の幅方向の中央部分の上方(つまり切り欠き18nの上方)に位置する内部フレーム2Fに固定されている。つまり、浮上防止部材130は、トレイ底部11bの上方に前後方向に延びるように設けられていて、後端部分が上側紙幣ガイド18の後部に固定され、前端部分が上側紙幣ガイド18の前側の切り欠き18nの上方に位置する内部フレーム2Fに固定されている。
【0068】
図12及び
図13に示すように、この浮上防止部材130は、後端部分が、上側紙幣ガイド18の下面18gとは反対側の裏側に固定されていて、上側紙幣ガイド18の裏側から、上側紙幣ガイド18の幅方向の中央部分に設けられた開口部18hを通って下面18g側へと延び、そこからさらに下面18gに沿って前方へと延び、切り欠き18nを通って上方の内部フレーム2Fまで延びている。
【0069】
ここで、
図12に示すように、浮上防止部材130は、上側紙幣ガイド18に固定されている後端部分と、内部フレーム2Fに固定されている前端部分とを結ぶ仮想線L2よりも長く、且つ上側紙幣ガイド18の下面18gの下側を通る為、常に当該仮想線L2よりも下方に撓んでいる。
【0070】
尚、集積トレイ11が収納位置にあるとき、浮上防止部材130は、一部が、上側紙幣ガイド18の下面18gの下側に位置するが、このとき、下面18gから下方(つまり集積空間Sp内)に膨らみ過ぎると、集積空間Spへ出金紙幣BLを放出する際に邪魔となってしまう可能性がある。この為、浮上防止部材130は、集積トレイ11が収納位置にあるときに、上側紙幣ガイド18の下面18gから下方への膨らみが小さく下面18gに沿うように、その長さが選定されている。またこれに限らず、例えば、下面18gの幅方向の中央に前後方向に延びる凹部を設け、集積トレイ11が収納位置にあるときに、浮上防止部材130が、この凹部に収まることで下面18gから膨らまないようにしてもよい。またこれに限らず、浮上防止部材130の後端部分を上側紙幣ガイド18の裏側ではなく下面18gに固定するなどしてもよい。
【0071】
つづけて、出金紙幣BLを集積している集積トレイ11を排出位置まで移動させる際の浮上防止部材130の動作について簡単に説明する。
【0072】
図14に示すように、出金紙幣BLを集積している集積トレイ11を収納位置から排出位置へと前方に移動させると、浮上防止部材130は、集積トレイ11の移動にともなって、上側紙幣ガイド18に固定されている後端部分が、内部フレーム2Fに固定されている前端部分に近づいていくことにより前後方向に折り畳まれるように下方に撓んでいく(つまり下方への撓みが大きくなっていく)。このとき、浮上防止部材130は、折り畳まれるように下方に撓んでいくことにともなって、上側紙幣ガイド18の下面18gよりも下方に位置する下端がトレイ底部11bに近づいていく。
【0073】
そして集積トレイ11が排出位置まで移動したとき、浮上防止部材30は、後端部分と前端部分の前後方向の位置がほぼ等しくなり、下端がトレイ底部11bの上面11gに最も近づく。このとき浮上防止部材130は、下端が、トレイ底部11bの前端とトレイ後壁部11rの上端とを結ぶ仮想線L3よりも下方に位置するようになっている。
【0074】
このように、浮上防止部材130は、集積トレイ11の移動にともなって、上側紙幣ガイド18の下面18gよりも下方に位置する下端がトレイ底部11bに近づいていくようになっている。これにより、浮上防止部材130は、集積トレイ11の移動中に出金紙幣BLが浮き上がろうとすると、当該出金紙幣BLに接触して当該出金紙幣BLを上から押さえ付けるようにして、当該出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0075】
尚、集積トレイ11が排出位置まで移動した後、使用者により集積トレイ11から出金紙幣BLが抜き取られる。このとき、浮上防止部材130によって出金紙幣BLを上から押さえ付けすぎると、出金紙幣BLを抜き取り難くなってしまう。この為、浮上防止部材130は、集積トレイ11が排出位置まで移動したときのトレイ底部11bの上面11gから下端までの距離H3が、最大集積可能枚数の出金紙幣BLの厚さH2と同程度もしくは厚さH2よりも大きくなるように設けられていることが望ましい。
【0076】
また
図15に示すように、浮上防止部材130の所定箇所P1に、浮上防止部材130の撓み方向を下方に限定する為の折れ癖を付けたり、図示しないが浮上防止部材130の上面側に重りを付けたりすることで、集積トレイ11が移動する際に、浮上防止部材130を確実に下方に撓ませるようにしてもよい。
【0077】
[2-2.まとめと効果]
ここまで説明したように、第2の実施の形態では、集積トレイ11のトレイ底部11bの上方に、第1の方向としての前方に延びる柔らかい帯状の浮上防止部材130を設け、当該浮上防止部材130が、集積トレイ11が収納位置から前方に移動することにともなって、一端部分(前端部分)に他端部分(後端部分)が近づくようにして下方に撓んでいくことにより、下端がトレイ底部11bの上面11gに近づくようにした。
【0078】
すなわち、浮上防止部材130は、前端部分が筐体2の内部フレーム2Fに固定され、後端部分が集積トレイ11の上側紙幣ガイド18に固定されている。そして浮上防止部材130は、集積トレイ11が前方に移動することにともなって、後端部分が前端部分に近づいていくことにより折り畳まれるように下方に撓んでいき、このとき、下端が上側紙幣ガイド18からトレイ底部11bの上面11gへと近づいていく。
【0079】
これにより、浮上防止部材130は、集積トレイ11が収納位置から排出位置へと移動する際に、集積トレイ11に集積された出金紙幣BLが浮き上がろうとしても、下端が当該出金紙幣BLに接触して当該出金紙幣BLを上から押さえ付けるようにして、当該出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0080】
かくして、第2の実施の形態の紙幣入出金機1によれば、第1の実施の形態と同様、集積トレイ11移動時の出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができるので、集積トレイ11に集積した出金紙幣BLを確実に利用者に受け取らせることができる。
【0081】
また浮上防止部材130は、集積トレイ11が収納位置から排出位置へと移動するときに前端部分は固定されたまま後端部分が前方に移動することにより撓んでトレイ底部11bの上面11gへと近づく為、別途浮上防止部材130を撓ませる駆動部などを必要とせず、簡易な構成で出金紙幣BLの浮き上がりを防止することができる。
【0082】
[3.他の実施の形態]
[3-1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1の実施の形態では、先細り形状でトレイ後壁部11rから前方(つまり集積空間Sp側)に延びる浮上防止部材30を、トレイ後壁部11rの左端側と右端側に1つずつ設けたが、これに限らず、浮上防止部材30の形状、サイズ、取付位置、取付角度、及び個数などについては、出金紙幣BLの浮き上がりを防止できる範囲で、適宜変更してもよい。
【0083】
例えば、浮上防止部材30を先細り形状ではなく一定の幅を有する帯状としてもよい。また例えば、浮上防止部材30をトレイ後壁部11rの上端ではなく上端よりも下方に取り付けるようにしてもよい。また例えば、浮上防止部材30をトレイ後壁部11rの幅方向の中央に1個設けるようにしたり、左右と中央の計3個設けるようにしたりしてもよい。また浮上防止部材30を左右のトレイ側壁部11sに設けるようにしてもよい。トレイ側壁部11sに設ける浮上防止部材30については、例えばトレイ側壁部11sから集積トレイ11の幅方向に延びるようにすればよい。
【0084】
また浮上防止部材30を、羽根車17の羽根17tと羽根17tの間に配置するのではなく、例えば一番左側に位置する羽根17tと左側のトレイ側壁部11sとの間、及び一番右側に位置する羽根17tと右側のトレイ側壁部11sとの間に設けるようにしてもよい。
【0085】
[3-2.他の実施の形態2]
また上述した第1の実施の形態では、弾性素材で形成されたフィルム状の浮上防止部材30を集積トレイ11に設けたが、これに限らず、例えば、細長い棒状の弾性素材を複数まとめたブラシ状の浮上防止部材30を集積トレイ11に設けるようにしてもよい。またこれに限らず、例えば、薄板状で先端がトレイ後壁部11rに近づく方向に回転可能な浮上防止部材30をトレイ後壁部11rに設けるようにしてもよい。この浮上防止部材30は、例えば、
図7に示す取付角度θ1を維持するようにバネなどにより付勢されていて、集積トレイ11に出金紙幣BLを集積する際には、出金紙幣BLにより上から押さえ付けられることにより回転して退避する。
【0086】
[3-3.他の実施の形態3]
さらに上述した第2の実施の形態では、帯状の浮上防止部材130の後端部分を集積トレイ11の上側紙幣ガイド18の後部の幅方向の中央に固定し、前端部分を上側紙幣ガイド18の前部の幅方向の中央に形成された切り欠き18nの上方に位置する内部フレーム2Fに固定するようにした。これに限らず、浮上防止部材130の形状、サイズ、取付位置、及び本数などについては、出金紙幣BLの浮き上がりを防止できる範囲で、適宜変更してもよい。
【0087】
例えば、浮上防止部材130を集積トレイ11の幅方向の中央に1本ではなく、幅方向に間隔を空けて複数本設けてもよい。また例えば、浮上防止部材130の前端部分については、集積トレイ11が移動しても位置が固定されている部分であれば、内部フレーム2F以外の箇所に固定してもよい。また例えば、鎖状の浮上防止部材130や、紐状の浮上防止部材130を設けるようにしてもよい。
【0088】
[3-4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態では、出金紙幣BLが集積された集積トレイ11を筐体2外部に露出させることで使用者に出金紙幣BLを受け取らせる紙幣入出金機1に本発明を適用したが、これに限らず、紙幣が集積された集積トレイを外部に露出させることで使用者に紙幣を受け取らせる種々の紙幣処理装置に適用することができる。例えば、紙幣の出金のみに対応する紙幣出金機に適用することもできる。
【0089】
さらに上述した実施の形態では、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ガソリンスタンド等の小売店の精算所に設置された図示しない釣銭機に紙幣ユニットとして組み込まれた紙幣入出金機1に本発明を適用したが、これに限らず、釣銭機以外の装置に組み込まれた紙幣入出金機等に適用することもできる。
【0090】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、紙幣を排出する種々の紙幣処理装置で利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1……紙幣入出金機、2……筐体、2F……内部フレーム、4……紙幣出金口、10……紙幣出金部、11……集積トレイ、11b……トレイ底部、11r……トレイ後壁部、11s……トレイ側壁部、12……扉、13……紙幣搬送路、13H……紙幣放出口、14U……上側搬送ガイド、14L……下側搬送ガイド、15……集積ローラ、16……プレッシャローラ、17……羽根車、17t……羽根、18……上側紙幣ガイド、30、130……浮上防止部材、BL……出金紙幣、Sp……集積空間。