(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118233
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電池および電池製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20240823BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20240823BHJP
H01M 50/128 20210101ALI20240823BHJP
H01M 6/06 20060101ALI20240823BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240823BHJP
【FI】
H01M50/119
H01M4/06 T
H01M50/128
H01M6/06 Z
H01M50/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024564
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古根村 進斗
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
【テーマコード(参考)】
5H011
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK02
5H024AA14
5H024BB08
5H024CC02
5H024DD02
5H024EE01
5H024HH01
5H050AA13
5H050AA19
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】電池ケースから活物質に鉄が溶出することを抑制する。
【解決手段】電池1は、正極3と、亜鉛Znを含有する負極と、正極3と負極とが浸漬される電解液と、正極3と負極と電解液とが配置される内部空間が内部に形成される正極缶11とを備えている。正極缶11は、鉄Feを含有する金属から形成される基材31と、基材31のうちの正極3に対向する正極対向面33を被覆する被膜32とを備えている。被膜32は、酸化被膜34を形成する金属から形成される金属相と、金属相に分散する微粒子とを備えている。微粒子は、希土類元素の酸化物から形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
前記正極と前記負極と前記電解液とが配置される空間が内部に形成される電池ケースとを備え、
前記電池ケースは、
鉄を含有する金属から形成される基材と、
前記基材のうちの前記正極に対向する面を被覆する被膜とを有し、
前記被膜は、
酸化被膜を形成する金属から形成される金属相と、
前記金属相に分散する微粒子とを含み、
前記微粒子は、希土類元素の酸化物から形成される
電池。
【請求項2】
前記被膜の物質量に対する前記微粒子の物質量の比率は、0.1mol%以上であり、かつ、1.5mol%以下である
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記被膜の物質量に対する前記微粒子の物質量の比率は、0.1mol%以上であり、かつ、0.5mol%以下である
請求項1に記載の電池。
【請求項4】
正極と、
亜鉛を含有する負極と、
前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、
前記正極と前記負極と前記電解液とが配置される空間が内部に形成される電池ケース
とを備える電池
を製造する電池製造方法であり、
鉄を含有する金属から形成される板に被膜を被覆すること、
前記板に前記被膜が被覆された後に、前記板のうちの前記被膜に被覆された面が前記正極に対向するように、前記板を前記電池ケースに加工することとを備え、
前記被膜は、
酸化被膜を形成する金属から形成される金属相と、
前記金属相に分散する微粒子とを含み、
前記微粒子は、希土類元素の酸化物から形成される
電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、電池および電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活物質が格納される内部空間が形成される電池ケースのうちの活物質に対向する面がめっきされているアルカリ乾電池が知られている(特許文献1~7)。このようなアルカリ乾電池は、電池ケースから活物質に鉄Feが溶出することを防止することができ、内部空間に発生するガスの量を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-093095号公報
【特許文献2】特開2006-348362号公報
【特許文献3】特開2007-335205号公報
【特許文献4】特開2022-013058号公報
【特許文献5】特開平08-260191号公報
【特許文献6】国際公開第2000/065672号
【特許文献7】国際公開第2015/072058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルカリ乾電池は、電池ケースがめっきされているときでも、めっきにひび割れ等が形成されているときには、電池ケースから活物質に鉄Feが溶出することがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、電池ケースから活物質に鉄が溶出することを抑制する電池および電池製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電池は、正極と、亜鉛を含有する負極と、前記正極と前記負極とが浸漬される電解液と、前記正極と前記負極と前記電解液とが配置される空間が内部に形成される電池ケースとを備え、前記電池ケースは、鉄を含有する金属から形成される基材と、前記基材のうちの前記正極に対向する面を被覆する被膜とを有し、前記被膜は、酸化被膜を形成する金属から形成される金属相と、前記金属相に分散される微粒子とを含み、前記微粒子は、希土類元素の酸化物から形成される。
【発明の効果】
【0007】
開示の電池および電池製造方法は、電池ケースから活物質に鉄が溶出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の電池を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電池の正極缶の一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、正極缶から鉄が溶出することにより水素ガスが発生する経過を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる電池および電池製造方法について、図面を参照して記載する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態の電池1]
実施形態の電池1は、アルカリ乾電池であり、
図1に示されているように、電池ケース2と正極3と負極5と集電棒6とセパレータ7とを備えている。
図1は、実施形態の電池1を示す断面図である。電池ケース2は、正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とを備えている。正極缶11は、導体から形成されている。正極缶11は、有底円筒形に形成され、側面部分15と底面部分16とを備えている。
【0011】
側面部分15は、筒形に形成され、円柱の側面に沿って配置されている。底面部分16は、概ね円板状に形成され、円柱の一方の底面に沿って配置されている。底面部分16は、底面部分16の縁が側面部分15の一方の端に隣接するように、側面部分15に一体に形成されている。正極缶11には、開口部17が形成されている。開口部17は、側面部分15のうちの円柱の他方の底面に対応する部位に形成されている。正極缶11の内部は、開口部17を介して正極缶11の外部に繋がっている。
【0012】
底面部分16の中央には、正極端子部分18が形成されている。正極端子部分18は、正極缶11の内側から外側に向かって突出するように形成されている。
【0013】
正極缶11の側面部分15には、ビーディング部21とカール部22とが形成されている。ビーディング部21は、側面部分15のうちの開口部17が形成される側の開口側端23の近傍に形成されている。ビーディング部21は、側面部分15の内側の面から突出するように、すなわち、側面部分15のうちのビーディング部21が形成されている部分の内径が他の部分の内径より小さくなるように、形成されている。カール部22は、ビーディング部21と開口側端23との間に形成されている。カール部22は、開口側端23に近づくにつれて側面部分15の内径が小さくなるように、形成されている。
【0014】
負極端子板12は、金属に例示される導体から形成され、概ね円板状に形成されている。負極端子板12は、円柱の他方の底面に沿うように配置され、正極缶11の開口部17を塞いでいる。電池ケース2の内部には、負極端子板12が開口部17を塞ぐことにより、正極缶11と負極端子板12とに囲まれる内部空間25が形成されている。
【0015】
封口ガスケット14は、樹脂に例示される絶縁体から形成され、概ねリング状に形成されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁を取り囲み、正極缶11の開口部17に配置されている。封口ガスケット14は、負極端子板12の縁と正極缶11の側面部分15とに挟まれ、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間を塞いでいる。
【0016】
封口ガスケット14は、封口ガスケット14がビーディング部21に接触することにより、封口ガスケット14が正極缶11の底面部分16に向かって移動しないように、正極缶11に固定されている。封口ガスケット14は、さらに、封口ガスケット14がカール部22に接触することにより、封口ガスケット14が正極缶11の内部から抜け出ないように、正極缶11に固定されている。負極端子板12は、封口ガスケット14の一部が負極端子板12の縁と正極缶11の側面部分15とに挟まれることにより、封口ガスケット14に固定され、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。負極端子板12は、封口ガスケット14が負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれることにより、封口ガスケット14を介して正極缶11から電気的に絶縁されている。封口ガスケット14には、圧力開放弁27がさらに形成されている。圧力開放弁27は、封口ガスケット14のうちの厚さが薄い部分である。
【0017】
正極3は、電解二酸化マンガンMnO2と黒鉛Cと水酸化カリウム水溶液とバインダーとを含んでいる。バインダーは、たとえば、高分子化合物を含有し、電解二酸化マンガンMnO2と黒鉛Cとから形成される粉体を互いに接着させて固形物に形成する。正極3は、管状に形成され、正極3の外側の面が正極缶11の側面部分15の内側の面に対向するように、電池ケース2の内部空間25に配置されている。正極3は、電解二酸化マンガンMnO2と黒鉛Cとが正極缶11に電気的に接続されるように、正極缶11に密着している。
【0018】
負極5は、亜鉛合金粉と水酸化カリウム水溶液と増粘剤とゲル化剤とを含有し、ゲル状に形成されている。亜鉛合金粉は、亜鉛を含有する亜鉛合金から形成されている。増粘剤としては、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が例示される。ゲル化剤としては、ポリアクリル酸塩が例示される。ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムが例示される。負極5は、電池ケース2の内部空間25のうちの正極3の内側に配置されている。なお、負極作用物質に含まれる亜鉛合金粉は、金属亜鉛から形成される亜鉛粉に置換されることができる。
【0019】
集電棒6は、導体から形成され、棒状に形成されている。集電棒6の一端は、集電棒6が負極端子板12に固定されるように、かつ、集電棒6が負極端子板12に電気的に接続されるように、負極端子板12に接合されている。集電棒6は、さらに、封口ガスケット14を貫通し、封口ガスケット14に固定され、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。集電棒6は、側面部分15が沿う円柱の中心軸に沿うように内部空間25に配置されている。集電棒6は、さらに、負極5に埋め込まれ、負極5に電気的に接続されている。
【0020】
セパレータ7は、イオンを透過する絶縁体から形成されている。絶縁体としては、ビニロンやパルプ等に例示される。セパレータ7は、有底中空円筒形に形成されている。セパレータ7は、内部空間25のうちの正極3と負極5との間に配置され、内部空間25のうちの負極5と正極缶11の底面部分16との間に配置されている。セパレータ7は、正極3と負極5とを隔て、負極5と正極缶11とを隔てている。負極5は、セパレータ7が正極3と負極5とを隔てていることにより、正極3から電気的に絶縁され、セパレータ7が負極5と正極缶11とを隔てていることにより、正極缶11から電気的に絶縁されている。
【0021】
電池1は、電解液をさらに備えている。電解液は、水酸化カリウムKOHを含有する水溶液から形成されている。電解液は、正極3と負極5とが電解液に浸漬されるように、内部空間25に配置され、正極3と負極5とセパレータ7とに染み込んでいる。
【0022】
図2は、実施形態の電池1の正極缶11の一部を示す断面図である。正極缶11は、基材31と被膜32と酸化被膜34とを備えている。基材31は、鉄Feを含有する金属から形成されている。基材31を形成する金属としては、鋼鉄、ステンレス鋼が例示される。基材31は、正極缶11の形状と同じ形状に形成されている。
【0023】
被膜32は、膜状に形成され、基材31のうちの正極3に対向する正極対向面33を被覆している。被膜32は、分散系から形成され、金属から形成される金属相と、その金属相に分散している微粒子とを備えている。その金属は、酸素に接触することにより酸化被膜(不働態皮膜)が表面に自然発生する金属であり、たとえば、ニッケルNiとコバルトCoとを含有するNi-Co合金が例示される。微粒子は、希土類元素の酸化物から形成されている。希土類元素の酸化物は、スカンジウムScとイットリウムYとランタノイドとから選択される1つまたは複数の元素の酸化物を示している。ランタノイドは、スカンジウムScとイットリウムYとランタンLaとセリウムCeとプラセオジムPrとネオジムNdとプロメチウムPmとサマリウムSmとユウロピウムEuとガドリニウムGdとテルビウムTbとジスプロシウムDyとホルミウムHoとエルビウムErとツリウムTmとイッテルビウムYbとルテチウムLuとを含んでいる。
【0024】
酸化被膜34は、基材31と酸化被膜34との間に被膜32が配置されるように、被膜32の表面を被覆している。酸化被膜34は、被膜32の金属相を形成する金属の酸化物から形成されている。酸化被膜34は、電解液により溶解しない特性を有し、基材31と被膜32とが電解液に直接接触することを防止し、基材31と被膜32とが電解液に溶解されることを防止している。
【0025】
[電池製造方法]
電池1を製造する電池製造方法は、正極の作製と、負極の作製と、電池の組み立てとを備えている。
正極の作製では、電解二酸化マンガンと黒鉛とバインダーと水酸化カリウム水溶液とが準備される。電解二酸化マンガンと黒鉛とバインダーと水酸化カリウム水溶液は、混合された後に造粒され、その混合・造粒により顆粒状の正極合剤が生成される。顆粒状の正極合剤は、成形金型に流し込まれた後に、予め定められた成形圧が加えられて成形され、その成形により正極3が生成される。
【0026】
負極の作製では、亜鉛合金粉と増粘剤とゲル化剤と水酸化カリウム水溶液とが準備される。亜鉛合金粉と増粘剤とゲル化剤とは、混合され、その混合により負極用混合物が生成される。負極用混合物は、水酸化カリウム水溶液に混合され、その混合によりゲル状の負極5が生成される。
【0027】
電池の組み立てでは、鉄Feを含有する金属から形成されている平坦な鋼鈑が準備される。鋼鈑は、鋼鈑の一方の面が被膜32により被覆されるようにめっきされ、そのめっきにより、めっき済鋼鈑が生成される。めっき済鋼鈑は、プレス絞り加工され、そのプレス絞り加工により加工途中の正極缶が生成される。加工途中の正極缶は、正極缶11の形状に概ね等しい形状に形成され、ビーディング部21とカール部22とが形成されていない形状に形成されている。このとき、加工途中の正極缶は、被膜32により被覆されている面が、加工途中の正極缶の内側の面になるように、加工される。
【0028】
正極3は、正極3の外周面が加工途中の正極缶の内側の面に接触するように、開口部17を介して加工途中の正極缶の内部に挿入される。加工途中の正極缶は、正極3が加工途中の正極缶の内部に挿入された後に、ビーディング部21が形成されるように、加工される。ビーディング部21は、正極3が開口部17を介して加工途中の正極缶から抜け出ることを防止する。
【0029】
電池の組み立てでは、セパレータ7と電解液と負極5とがさらに準備される。セパレータ7は、正極3が加工途中の正極缶の内部に挿入された後に、開口部17を介して正極3の内側に挿入される。電解液は、セパレータ7が正極3の内側に挿入された後に、開口部17を介して正極3の内側に注入される。電解液が正極3の内側に注入されることにより、電解液は、セパレータ7に含浸し、正極3に含浸する。負極5は、電解液がセパレータ7と正極3とに含浸した後に、セパレータ7の内側に注入される。
【0030】
電池の組み立てでは、さらに、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが準備される。集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とは、集電棒6が負極端子板12に電気的に接触するように、かつ、負極端子板12の縁が封口ガスケット14に覆われるように、組み立てられて互いに固定され、その組み立てにより封口体が作製される。負極5が注入された後に、集電棒6が負極5に埋め込まれるように、かつ、封口ガスケット14の周縁がビーディング部21に接触するように、封口体が加工途中の正極缶に取り付けられる。封口体は、封口ガスケット14の周縁がビーディング部21に接触することにより、加工途中の正極缶に対して適切な位置に配置される。
【0031】
封口体が加工途中の正極缶に対して適切な位置に配置された後に、加工途中の正極缶は、かしめられ、カール部22が形成されることにより、正極缶11に加工される。カール部22が形成されることにより、封口体が正極缶11から外れないように、封口体は、正極缶11に固定される。カール部22が形成されることにより、さらに、負極端子板12と正極缶11との間に形成される隙間が封口ガスケット14により封止され、内部空間25が外部から密閉され、電池1が作製される。このような電池製造方法によれば、電池1は、正極缶11のうちの正極3に対向する面が被膜32で被覆されるように、適切に作製される。
【0032】
正極缶11のうちの被膜32で被覆されている側の表面には、被膜32が酸素に接触することにより、酸化被膜34が形成される。電池1は、酸化被膜34が電解液に溶解されないことにより、電解液が正極缶11の被膜32に接触することを防止することができ、電解液が正極缶11の基材31に接触することを防止することができる。電池1は、電解液が基材31に接触することが防止されることにより、基材31が電解液で溶解することを防止することができ、基材31に含まれる鉄Feが正極3に溶出することを防止することができる。
【0033】
酸化被膜34は、被膜32に異物が混入しているときに、適切に形成されずに、たとえば、被膜32にひび割れ等が形成されたときに、電解液を被膜32に通過させる孔が形成されることがある。電解液は、酸化被膜34に孔が形成されているときに、その孔を介して基材31に接触し、基材31を溶解することがある。基材31の溶解により生成された鉄イオンFe
2+は、
図3に示されているように、被膜32と酸化被膜34とを通過し、正極缶11から正極3に移動することがある。
図3は、正極缶11から鉄Feが溶出することにより水素ガスH
2が発生する経過を示す概念図である。電池1の負極5では、電池1が放電することにより、次化学反応式で示される電極反応が進行する。
Zn→Zn
2++2e
-
正極3に移動した鉄イオンFe
2+は、電池1が放電することにより、正極3から負極5にさらに移動することがある。
【0034】
負極5に鉄イオンFe2+が混入しているときには、電池1が放電していないときでも、次化学反応式で示される電池内ガス発生反応が進行し、内部空間25に水素ガスH2が発生することがある。
Zn+2H2O+2OH-→[Zn(OH)4]2-+H2↑
電池内ガス発生反応により負極5で発生する水素ガスH2の量は、負極5の鉄イオンFe2+の濃度に比例して増大する。
【0035】
酸化被膜34は、被膜32が希土類元素の酸化物を含有しているときに、酸化被膜34に孔が形成されないように、被膜32の表面に適切に形成される。すなわち、電池1は、被膜32が希土類元素の酸化物を含有していることにより、酸化被膜34に孔が形成されないように、酸化被膜34を適切に形成することができる。電池1は、酸化被膜34が適切に形成されていることにより、電解液が正極缶11の基材31に接触することを防止することができ、基材31が電解液により溶解することを防止することができる。電池1は、基材31が溶解することが防止されることにより、正極缶11の基材31に含有される鉄Feを由来とする鉄イオンFe2+が正極3および負極5に溶出する量を低減することができる。電池1は、鉄イオンFe2+が負極5に溶出する量が低減することにより、内部空間25で発生する水素ガスH2の量を低減することができる。
【0036】
電池1は、さらに、誤使用されたときにも、内部空間25にガスが発生する。内部空間25の圧力は、内部空間25でガスが発生することにより、上昇する。電池1は、予め定められた圧力より内部空間25の圧力が大きくなったときに、圧力開放弁27が破断し、内部空間25に配置されていた電解液またはガスが外部に漏えいする漏液が発生する。電池1は、内部空間25の圧力が上昇したときに漏液が発生することにより、封口体が正極缶11から外れる破裂が発生することを防止することができる。
【0037】
[電池1の評価試験]
実施形態の電池1の効果を確認するために、複数の電池試料が作製されている。表1は、複数の電池試料に対応する複数の作製条件を示している。
【表1】
複数の電池試料は、従来例の電池と実施例1の電池と実施例2の電池と実施例3の電池と実施例4の電池と比較例1の電池と実施例5の電池と実施例6の電池と実施例7の電池と実施例8の電池と比較例2の電池とを含んでいる。
【0038】
複数の電池試料は、作製条件が互いに異なるように、作製されている。作製条件は、イットリウム添加量とスカンジウム添加量とにより示される。
【0039】
ある電池試料のイットリウム添加量は、その電池試料の被膜32に添加される酸化イットリウムY2O3の量を示し、その電池試料の被膜32に含有されている酸化イットリウムY2O3の量を示している。たとえば、ある電池試料のイットリウム添加量が「添加なし」を示すときに、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていないことを示し、被膜32に希土類元素の酸化物の微粒子が含有されないように、その電池試料が作製されていることを示している。
【0040】
ある電池試料のイットリウム添加量が「Xmol%」「Ywt%」を示すときに、その電池試料の被膜32に希土類元素の酸化物のうちの酸化イットリウムY2O3と異なる酸化物が添加されていないことを示し、その電池試料の被膜32に酸化イットリウムY2O3が添加されていることを示している。ある電池試料のイットリウム添加量が「Xmol%」「Ywt%」を示すときに、さらに、その電池試料の被膜32にXmol%の酸化イットリウムY2O3が含有されることが、その電池試料の被膜32にYwt%の酸化イットリウムY2O3が含有されることと同じであることを示している。被膜32にXmol%の酸化イットリウムY2O3が含有されることは、被膜32に含有されている酸化イットリウムY2O3の物質量を、被膜32を形成する物質の物質量で除算した値に100を乗算した値がXに等しいことを示している。被膜32に対してYwt%の酸化イットリウムY2O3が含有されることは、被膜32に含有されている酸化イットリウムY2O3の重量を、被膜32を形成する物質の重量で除算した値に100を乗算した値がYに等しいことを示している。
【0041】
ある電池試料のスカンジウム添加量は、その電池試料の被膜32に添加される酸化スカンジウムSc2O3の量を示し、その電池試料の被膜32に含有されている酸化スカンジウムSc2O3の量を示している。たとえば、ある電池試料のスカンジウム添加量が「添加なし」を示すときに、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていないことを示し、被膜32に希土類元素の酸化物の微粒子が含有されないように、その電池試料が作製されていることを示している。
【0042】
ある電池試料のスカンジウム添加量が「Xmol%」「Ywt%」を示すときに、その電池試料の被膜32に希土類元素の酸化物のうちの酸化スカンジウムSc2O3と異なる酸化物が添加されていないことを示し、その電池試料の被膜32に酸化スカンジウムSc2O3が添加されていることを示している。ある電池試料のスカンジウム添加量が「Xmol%」「Ywt%」を示すときに、さらに、その電池試料の被膜32にXmol%の酸化スカンジウムSc2O3が含有されることが、その電池試料の被膜32にYwt%の酸化スカンジウムSc2O3が含有されることと同じであることを示している。被膜32にXmol%の酸化スカンジウムSc2O3が含有されることは、被膜32に含有されている酸化スカンジウムSc2O3の物質量を、被膜32を形成する物質の物質量で除算した値に100を乗算した値がXに等しいことを示している。被膜32に対してYwt%の酸化スカンジウムSc2O3が含有されることは、被膜32に含有されている酸化スカンジウムSc2O3の重量を、被膜32を形成する物質の重量で除算した値に100を乗算した値がYに等しいことを示している。
【0043】
複数の電池試料は、その作製条件が互いに異なること以外は、互いに同様に作製されている。たとえば、複数の電池試料は、電池サイズが単3電池の電池サイズLR6に等しくなるように、正極3と集電棒6とセパレータ7と正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とが作製されている。複数の電池試料は、さらに、ニッケルNiとコバルトCoとを含有するNi-Co合金で被膜32の金属相が形成され、被膜32の厚さを示すめっき厚が1.0μmに等しくなるように、作製されている。
【0044】
従来例の電池のイットリウム添加量は、「添加なし」を示している。従来例の電池のスカンジウム添加量は、「添加なし」を示している。すなわち、従来例の電池は、被膜32に希土類元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0045】
実施例1の電池のイットリウム添加量は、「0.1mol%」「0.4wt%」を示している。すなわち、実施例1の電池は、被膜32に0.1mol%の酸化イットリウムY2O3(すなわち、0.4wt%の酸化イットリウムY2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのイットリウムYと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0046】
実施例2の電池のイットリウム添加量は、「0.5mol%」「1.9wt%」を示している。すなわち、実施例1の電池は、被膜32に0.5mol%の酸化イットリウムY2O3(すなわち、1.9wt%の酸化イットリウムY2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのイットリウムYと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0047】
実施例3の電池のイットリウム添加量は、「1.0mol%」「3.7wt%」を示している。すなわち、実施例3の電池は、被膜32に1.0mol%の酸化イットリウムY2O3(すなわち、3.7wt%の酸化イットリウムY2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのイットリウムYと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0048】
実施例4の電池のイットリウム添加量は、「1.5mol%」「5.5wt%」を示している。すなわち、実施例3の電池は、被膜32に1.5mol%の酸化イットリウムY2O3(すなわち、5.5wt%の酸化イットリウムY2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのイットリウムYと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0049】
比較例1の電池のイットリウム添加量は、「1.6mol%」「5.9wt%」を示している。すなわち、実施例7の電池は、被膜32に1.6mol%の酸化イットリウムY2O3(すなわち、5.9wt%の酸化イットリウムY2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのイットリウムYと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0050】
実施例5の電池のスカンジウム添加量は、「0.1mol%」「0.2wt%」を示している。すなわち、実施例5の電池は、被膜32に0.1mol%の酸化スカンジウムSc2O3(すなわち、0.2wt%の酸化スカンジウムSc2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのスカンジウムScと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0051】
実施例6の電池のスカンジウム添加量は、「0.5mol%」「1.2wt%」を示している。すなわち、実施例5の電池は、被膜32に0.5mol%の酸化スカンジウムSc2O3(すなわち、1.2wt%の酸化スカンジウムSc2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのスカンジウムScと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0052】
実施例7の電池のスカンジウム添加量は、「1.0mol%」「2.3wt%」を示している。すなわち、実施例7の電池は、被膜32に1.0mol%の酸化スカンジウムSc2O3(すなわち、2.3wt%の酸化スカンジウムSc2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのスカンジウムScと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0053】
実施例8の電池のスカンジウム添加量は、「1.5mol%」「3.4wt%」を示している。すなわち、実施例7の電池は、被膜32に1.5mol%の酸化スカンジウムSc2O3(すなわち、3.4wt%の酸化スカンジウムSc2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのスカンジウムScと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0054】
比較例2の電池のスカンジウム添加量は、「1.6mol%」「3.7wt%」を示している。すなわち、実施例7の電池は、被膜32に1.6mol%の酸化スカンジウムSc2O3(すなわち、3.7wt%の酸化スカンジウムSc2O3)が含有されるように、かつ、被膜32に希土類元素のうちのスカンジウムScと異なる元素の酸化物が含有されないように、作製されている。
【0055】
表2は、複数の電池試料に対応する複数の評価結果を示している。
【表2】
複数の評価結果は、複数の鉄溶出量測定結果と複数の判定結果とを含んでいる。
【0056】
複数の鉄溶出量測定結果のうちのある電池資料に対応する鉄溶出量測定結果は、その電池試料に対して鉄溶出量測定試験が実行されることにより導出される。ある電池資料に対して実行される鉄溶出量測定試験では、その電池試料から前処理後電池が生成され、前処理後電池からろ液が生成され、誘導結合プラズマ発光分光分析が実行される。前処理後電池は、その電池試料が90℃の雰囲気に30日間保存されることにより生成される。ろ液は、前処理後電池から取り出された正極3が塩酸-過酸化水素水で分解されることにより生成された溶液がろ過されることにより生成される。誘導結合プラズマ発光分光分析では、ろ液がVarian社製ICP-OWS720-ESを用いて処理され、その電池試料の鉄溶出量が導出される。ある電池試料の鉄溶出量は、その電池試料の正極3の単位量当たりに含有される鉄Feの量を示している。
【0057】
複数の鉄溶出量測定結果のうちのある電池資料に対応する鉄溶出量測定結果は、その電池試料の鉄溶出量を、従来例の電池の鉄溶出量で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の鉄溶出量測定結果は、小さい値を示す鉄溶出量測定結果に対応する電池試料ほど、正極缶11から活物質に溶出する鉄Feの量が少ないことを示し、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することが抑制されていることを示している。
【0058】
複数の鉄溶出量測定結果のうちの従来例の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、100.0%を示し、実施例1の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、35.1%を示し、実施例2の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、40.4%を示し、実施例3の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、76.6%を示し、実施例4の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、92.6%を示し、比較例1の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、104.3%を示している。複数の鉄溶出量測定結果のうちの実施例5の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、34.0%を示し、実施例6の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、41.5%を示し、実施例7の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、72.3%を示し、実施例8の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、93.6%を示し、比較例2の電池に対応する鉄溶出量測定結果は、106.4%を示している。
【0059】
複数の鉄溶出量測定結果は、実施例1~8の電池の鉄溶出量測定結果が、従来例の電池の鉄溶出量測定結果より小さいことを示している。すなわち、複数の鉄溶出量測定結果は、被膜32に0.1mol%~1.5mol%の希土類元素の酸化物が添加された電池の鉄溶出量が、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていない電池の鉄溶出量より小さいことを示している。
【0060】
複数の鉄溶出量測定結果は、さらに、比較例1の電池の鉄溶出量測定結果が、従来例の電池の鉄溶出量測定結果より大きいことを示している。すなわち、複数の鉄溶出量測定結果は、被膜32に1.6mol%以上の酸化イットリウムY2O3が添加された電池の鉄溶出量が、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていない電池の鉄溶出量より大きいことを示している。
【0061】
複数の鉄溶出量測定結果は、さらに、比較例2の電池の鉄溶出量測定結果が、従来例の電池の鉄溶出量測定結果より大きいことを示している。すなわち、複数の鉄溶出量測定結果は、被膜32に1.6mol%以上の酸化スカンジウムSc2O3が添加された電池の鉄溶出量が、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていない電池の鉄溶出量より大きいことを示している。
【0062】
複数の鉄溶出量測定結果は、さらに、実施例1~2の電池の鉄溶出量測定結果が、実施例3~4の電池の鉄溶出量測定結果より小さいことを示している。すなわち、複数の鉄溶出量測定結果は、被膜32に0.1mol%~0.5mol%の酸化イットリウムY2O3が添加された電池の鉄溶出量が、被膜32に1.0mol%以上の酸化イットリウムY2O3が添加された電池の鉄溶出量より小さいことを示している。
【0063】
複数の鉄溶出量測定結果は、さらに、実施例5~6の電池の鉄溶出量測定結果が、実施例7~8の電池の鉄溶出量測定結果より小さいことを示している。すなわち、複数の鉄溶出量測定結果は、被膜32に0.1mol%~0.5mol%の酸化スカンジウムSc2O3が含有された電池の鉄溶出量が、被膜32に1.0mol%以上の酸化スカンジウムSc2O3が含有された電池の鉄溶出量より小さいことを示している。
【0064】
複数の判定結果の各々は、「×」または「〇」または「◎」を示している。複数の判定結果のうちのある電池試料の判定結果が「×」を示すときに、その電池試料の鉄溶出量測定結果が100%以上であることを示し、従来例の電池に比較して、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することをその電池試料が抑制することができないことを示している。複数の判定結果のうちのある電池試料の判定結果が「○」を示すときに、その電池試料の鉄溶出量測定結果が50%~100%の範囲に含まれていることを示し、従来例の電池に比較して、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することをその電池試料が抑制することができることを示している。複数の判定結果のうちのある電池試料の判定結果が「◎」を示すときに、その電池試料の鉄溶出量測定結果が50%未満であることを示し、従来例の電池に比較して、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することをその電池試料がより抑制することができることを示している。
【0065】
複数の判定結果のうちの実施例1の電池に対応する判定結果は、「◎」を示し、実施例2の電池に対応する判定結果は、「◎」を示し、実施例3の電池に対応する判定結果は、「○」を示し、実施例4の電池に対応する判定結果は、「○」を示し、比較例1の電池に対応する判定結果は、「×」を示している。複数の判定結果のうちの実施例5の電池に対応する判定結果は、「◎」を示し、実施例6の電池に対応する判定結果は、「◎」を示し、実施例7の電池に対応する判定結果は、「○」を示し、実施例8の電池に対応する判定結果は、「○」を示し、比較例2の電池に対応する判定結果は、「×」を示している。
【0066】
複数の判定結果は、被膜32に0.1mol%~1.5mol%の希土類元素の酸化物が含有される電池が、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていない電池に比較して、電池の正極缶11から活物質に鉄が溶出することを抑制することができることを示している。複数の判定結果は、さらに、被膜32に1.6mol%以上の希土類元素の酸化物が含有される電池が、被膜32に希土類元素の酸化物が添加されていない電池に比較して、電池の正極缶11から活物質に鉄が溶出することを抑制しないことを示している。複数の判定結果は、さらに、被膜32に0.1mol%~0.5mol%の希土類元素の酸化物が含有される電池が、被膜32に1.0mol%以上の希土類元素の酸化物が含有される電池に比較して、電池の正極缶11から活物質に鉄が溶出することを抑制することができることを示している。
【0067】
[実施形態の電池1の効果]
実施形態の電池1は、正極3と、亜鉛Znを含有する負極5と、正極3と負極5とが浸漬される電解液と、正極3と負極5と電解液とが配置される内部空間25が内部に形成される正極缶11とを備えている。正極缶11は、鉄Feを含有する金属から形成される基材31と、基材31のうちの正極3に対向する正極対向面33を被覆する被膜32とを備えている。被膜32は、酸化被膜34を形成する金属から形成される金属相と、金属相に分散する微粒子とを備えている。微粒子は、希土類元素の酸化物から形成されている。このとき、実施形態の電池1は、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することを抑制することができる。
【0068】
また、実施形態の電池1の被膜32の物質量に対する微粒子の物質量の比率は、0.1mol%以上であり、かつ、1.5mol%以下である。このとき、実施形態の電池1は、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することをより抑制することができる。また、実施形態の電池1の被膜32の物質量に対する微粒子の物質量の比率は、0.1mol%以上であり、かつ、0.5mol%以下である。このとき、実施形態の電池1は、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することをさらに抑制することができる。
【0069】
実施形態の電池製造方法は、電池1を製造することに利用され、鉄Feを含有する金属から形成される鋼板に被膜32を被覆することと、鋼板に被膜32が被覆された後に、鋼板のうちの被膜32で被覆された面が正極3に対向するように、鋼板を正極缶11に加工することとを備えている。このような電池製造方法は、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することが抑制されるように、電池1を適切に作製することができる。
【0070】
ところで、既述の電池製造方法は、鋼板が被膜32に被覆された後に、鋼板が正極缶11の形状に概ね等しい形状に加工されているが、鋼板が正極缶11の形状に概ね等しい形状に加工された後に鋼板が被膜32に被覆されてもよい。このような電池製造方法でも、既述の電池製造方法と同様に、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することが抑制されるように、電池1を適切に作製することができる。
【0071】
ところで、既述の電池1の正極缶11は、基材31のうちの正極3に対向する正極対向面33のみが被膜32で被覆されているが、基材31のうちの正極対向面33と異なる他の表面が被膜32で被覆されてもよい。このような電池も、既述の電池1と同様に、正極缶11から活物質に鉄Feが溶出することを抑制することができる。
【0072】
ところで、既述の電池1は、正極缶11のみが被膜32で被覆されているが、電池ケース2のうちの正極缶11と異なる負極端子板12が被膜32で被覆されてもよい。このような電池も、既述の電池1と同様に、電池ケース2から活物質に鉄Feが溶出することを抑制することができる。
【0073】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :電池
3 :正極
5 :負極
11:正極缶
12:負極端子板
25:内部空間
31:基材
32:被膜
33:正極対向面
34:酸化被膜