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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118245
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】物体追跡装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/72 20060101AFI20240823BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240823BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240823BHJP
   G01S 17/58 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G01S13/72
G01S13/931
G01S17/931
G01S17/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024583
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 悠介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 卓也
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK22
5J070BB04
5J070BB06
5J070BB16
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AA13
5J084AB01
5J084AC02
5J084CA31
5J084EA04
5J084EA23
(57)【要約】
【課題】物標の位置の推定精度が低下することを抑制可能な物体追跡装置を提供する。
【解決手段】本開示の1つの局面の物体追跡装置は、センサ部と、輪郭算出部13と、予測値算出部15と、関連付け部17と、推定部19と、を備える。センサ部11は、複数の観測値を取得する。輪郭算出部は、予め決められた物体の形状モデルと、過去に算出された推定値と、に基づいて、予測輪郭を算出する。予測値算出部は、取得された複数の観測値から独立して、予測輪郭上及び/又は予測輪郭の内側の所定範囲に位置する複数の予測値を算出する。関連付け部は、複数の予測値の各々と、複数の観測値のうちの少なくとも一つとを関連付けて、複数の関連付けセットを生成する。推定部は、複数の関連付けセットに基づいて、現在の推定値を算出する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(50)に搭載されたセンサ部(11)であって、前記移動体の周辺にセンサ波を送受信し、互いに異なる反射位置に対応した複数の観測値を取得するように構成されたセンサ部と、
予め決められた物体の形状モデルと、前記物体の位置及び向きを含む物標の状態の推定値であって過去に算出された前記推定値と、に基づいて、現在の前記物標の輪郭の予測である予測輪郭を算出するように構成された輪郭算出部(13)と、
前記センサ部により取得された前記複数の観測値から独立して、前記予測輪郭上及び/又は前記予測輪郭の内側の所定範囲に位置する複数の予測値を算出するように構成された予測値算出部(15)と、
前記複数の予測値の各々と、前記複数の観測値のうちの少なくとも一つとを関連付けて、複数の関連付けセットを生成するように構成された関連付け部(17)と、
前記関連付け部により生成された前記複数の関連付けセットに基づいて、現在の前記推定値を算出するように構成された推定部(19)と、を備える、
物体追跡装置。
【請求項2】
前記関連付け部は、前記複数の予測値の各々と、前記複数の観測値のうちの二つ以上とを関連付けるように構成されており、
前記複数の関連付けセットの各々は、前記複数の予測値のうちの一つと、前記複数の観測値のうちの二つ以上と、を含む、
請求項1に記載の物体追跡装置。
【請求項3】
前記所定範囲は、予め決められている、
請求項1又は2に記載の物体追跡装置。
【請求項4】
前記予測値算出部は、前記物標の状態に応じて、前記所定範囲を設定するように構成されている、
請求項1又は2に記載の物体追跡装置。
【請求項5】
前記予測値算出部は、前記所定範囲において、予め決められた位置間隔で、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
請求項1又は2に記載の物体追跡装置。
【請求項6】
前記予測値算出部は、前記所定範囲において、等しい位置間隔で、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
請求項1又は2に記載の物体追跡装置。
【請求項7】
前記予測値算出部は、前記所定範囲の中心に近いほど、位置間隔が小さくなるように、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
請求項1又は2に記載の物体追跡装置。
【請求項8】
前記所定範囲は、前記予測輪郭の全周囲である、
請求項5に記載の物体追跡装置。
【請求項9】
前記所定範囲は、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な範囲である、
請求項5に記載の物体追跡装置。
【請求項10】
前記形状モデルは、円モデル又は楕円モデルであり、
前記所定範囲は、前記予測輪郭上の第1の点と第2の点との間の領域のうち前記センサ部に近い側の領域であり、
前記第1の点は、前記センサ部を通る前記予測輪郭の第1の接線と前記予測輪郭との接点であり、
前記第2の点は、前記センサ部を通る前記予測輪郭の第2の接線と前記予測輪郭との接点であり、前記第2の点は、前記第1の点と異なる、
請求項9に記載の物体追跡装置。
【請求項11】
前記形状モデルは、前記センサ部から最も離れている第1の頂点と、前記第1の頂点に隣接している第2の頂点及び第3の頂点と、前記第2の頂点と前記第3の頂点の間の第4の頂点と、を有する矩形モデルであり、
前記所定範囲は、前記第4の頂点を前記第2の頂点に接続する第1の辺と、前記第4の頂点を前記第3の頂点に接続する第2の辺と、を含む、
請求項9に記載の物体追跡装置。
【請求項12】
前記所定範囲は、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な第1範囲と、前記センサ部が前記センサ波を直接照射不可能な第2範囲と、を含み、
前記複数の予測値は、前記第1範囲内の第1の予測値と、前記第2範囲内の第2の予測値と、を含み、
前記推定部は、前記推定値の更新に対する前記第1の予測値の寄与度を、前記推定値に対する前記第2の予測値の寄与度よりも高くするように構成されている、
請求項8に記載の物体追跡装置。
【請求項13】
前記予測値算出部は、前記物標の距離に応じて、前記所定範囲を変更するように構成されている、
請求項1に記載の物体追跡装置。
【請求項14】
前記予測値算出部は、
前記物標の距離が所定距離以上である場合には、前記予測輪郭の全周囲を前記所定範囲に設定し、
前記物標の距離が所定距離未満である場合には、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な範囲を前記所定範囲に設定するように構成されている、
請求項13に記載の物体追跡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体が周囲の物体を追跡する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載の拡張物体追跡(以下、EOT)では、レーダ装置が受信する反射信号が物標の輪郭で生じるとの仮定の下で、物標の予測輪郭上の予測値が、観測値と関連付けられて、物標の運動状態が時系列的に推定される。具体的には、上述のEOTでは、予測輪郭の中心及び観測値を通る直線と予測輪郭との交点が、予測値として算出され、算出された予測値が、予測値と同じ直線上の観測値と関連付けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】時澤宗一郎、米陀佳祐、菅沼直樹、自動運転のための安定性とリアルタイム性とを良質した拡張物体追跡、自動車技術会論文集、Vol.52、No.5、September 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のEOTでは、予測値が観測値に基づいて算出される。したがって、一度予測値が誤った観測値と関連付けられると、物標の運動状態の推定が、誤った関連付けの影響を受け続ける。ひいては、物標の位置の推定精度が低下する。
【0005】
本開示の1つの局面は、物標の位置の推定精度が低下することを抑制可能な物体追跡装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面の物体追跡装置は、センサ部と、輪郭算出部(13)と、予測値算出部(15)と、関連付け部(17)と、推定部(19)と、を備える。センサ部は、移動体(50)に搭載されたセンサ部(11)であって、移動体の周辺にセンサ波を送受信し、互いに異なる反射位置に対応した複数の観測値を取得するように構成される。輪郭算出部は、予め決められた物体の形状モデルと、物体の位置及び向きを含む物標の状態の推定値であって過去に算出された推定値と、に基づいて、現在の物標の輪郭の予測である予測輪郭を算出するように構成される。予測値算出部は、センサ部により取得された複数の観測値から独立して、予測輪郭上及び/又は予測輪郭の内側の所定範囲に位置する複数の予測値を算出するように構成される。関連付け部は、複数の予測値の各々と、複数の観測値のうちの少なくとも一つとを関連付けて、複数の関連付けセットを生成するように構成される。推定部は、関連付け部により生成された複数の関連付けセットに基づいて、現在の推定値を算出するように構成される。
【0007】
本開示の1つの局面の物体追跡装置は、複数の観測値から独立して、複数の予測値が算出される。したがって、予測値と観測値との誤った関連付けが継続されることが抑制され、物標の位置の推定精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る物体追跡装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る物体追跡装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るセンサ部の車両における搭載位置及び検知範囲の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係るセンサ部の車両における搭載位置及び検知範囲の別の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る物体追跡装置が実行する追跡処理を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る物体追跡装置が実行する予測値算出処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る物体追跡装置が実行する推定処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る予測輪郭と、観測値と、予測値とを示す図である。
図9】第1実施形態に係る一つの予測値と、複数の観測値との関連付けを示す図である。
図10】第1実施形態に係る楕円の輪郭上における、直接反射領域で予測値が算出される状態を示す図である。
図11】第1実施形態に係る矩形の輪郭上における、直接反射領域で予測値が算出される状態を示す図である。
図12】第1実施形態において、物体の後方からセンサ波が照射される場合に、楕円の輪郭上における直接反射領域で予測値が算出される状態を示す図である。
図13】第1実施形態において、物体の側方からセンサが照射される場合に、楕円の輪郭上における直接反射領域で予測値が算出される状態を示す図である。
図14】第1実施形態に係る楕円の輪郭上において、所定範囲の中心に近いほど、予測値の位置間隔が狭い状態を示す図である。
図15】第1実施形態において、物体の後方からセンサ波が照射される場合に、楕円の輪郭上及び内部において、予測値が算出される状態を示す図である。
図16】第2実施形態に係る物体追跡装置が実行する予測値算出処理を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態に係る物体追跡装置が実行する推定処理を示すフローチャートである。
図18】第3実施形態に係る物体追跡装置が実行する予測値算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
<1.構成>
図1及び2を参照して、本実施形態に係る物体追跡装置10の構成について、説明する。物体追跡装置10は、センサ部11と、処理装置20と、を備え、自動車である車両50に搭載されている。センサ部11は、レーダ、ライダー、ソナーなどである。レーダは、センサ波としてミリ波などの電波を送信し、物体でレーダ波が反射して生じた反射波を受信する。ライダーは、センサ波として光を送信し、物体で光が反射して生じた反射波を受信する。ソナーは、センサ波として音波を送信し、物体で音波が反射して生じた反射波を受信する。
【0010】
図3に示すように、センサ部11は、車両50の前方中央(例えば、前方バンパの中央)に搭載され、車両50の前方中央の検知エリアA1を有していてもよい。あるいは、図4に示すように、センサ部11は、車両50の前方中央に加えて、車両50の左前方、右前方、左後方及び右後方(例えば、前方バンパの左端及び右端と、後方バンパの左端及び右端)に搭載されてもよい。すなわち、センサ部11は、検知エリアA1に加えて、車両50の左前方、右前方、左後方及び右後方の検知エリアA2を有していてもよい。センサ部11は、車両50の前方中央、左前方、右前方、左後方及び右後方のうちのすくなくとも一箇所に搭載されていればよい。
【0011】
処理装置20は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータを備える。処理装置20は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に記憶されているプログラムを実行することにより、輪郭算出部13、予測値算出部15、関連付け部17及び推定部19の機能を実現する。処理装置20は、上述の各種機能を備えることにより、物体の運動状態を時系列的に推定する追跡処理を実行する。上述の各種機能の詳細は後述する。本実施形態では、ROMが非遷移的実体的記録媒体に相当する。なお、処理装置20が実現する各種機能の一部又は全部を、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0012】
<2.処理>
<2-1.追跡処理>
図5のフローチャートを参照して、物体追跡装置10が実行する追跡処理について説明する。物体追跡装置10は、所定の処理周期で、本追跡処理を繰り返し実行する。
【0013】
S10では、図9に示すように、センサ部11が、車両50の周辺にセンサ波を送受信し、複数の観測値P3を取得する。センサ部11は、高分解能センサであり、一回のセンサ波の送信により、単一の物体の互いに異なる反射位置(すなわち、反射点)で反射した複数の反射波を取得し、各反射波に基づいた観測値P3を取得できる。したがって、複数の観測値P3の各々は、単一の物体の互いに異なる反射位置に対応する。複数の観測値P3の各々は、物理量として、反射位置(具体的には、センサ部11から反射点までの距離と、センサ部11に対する反射点の方位)を含む。複数の観測値P3の各々は、物理量として、反射位置に加えて、相対速度を含んでいてもよい。
【0014】
続いて、S20では、輪郭算出部13が、予測処理を実行し、物標の予測輪郭L1を算出する。予測輪郭L1は、モデル化された物標の形状の輪郭の予測値である。
上述したように、センサ部11は、単一の物体から複数の観測値P3を得られる。複数の観測値P3の分布から、物体の形状を推定できる。したがって、物体追跡装置10は、複数の観測値P3に基づいて、運動状態に加えて形状を有する物標を生成することができる。ここでの形状は、領域を有さない質点とは異なり、領域を有する。物体追跡装置10は、物体の形状モデルを用いて、拡張物体追跡(以下、EOT)を実行する。拡張物体追跡は、物標が形状を持つと仮定して物標をモデル化して、物標の運動状態を時系列的に推定する手法である。
【0015】
図9に示すように、輪郭算出部13は、予め決められた物体の形状モデルと、過去の処理サイクル(具体的には、前回の処理サイクル)において算出された推定値P2と、に基づいて、予測輪郭L1を算出する。本実施形態では、物体追跡装置10が追跡する物体は自動車(具体的には、四輪車両)である。したがって、輪郭算出部13は、物体の形状モデルとして、円モデル、図10に示す楕円モデル、図11に示す矩形モデルなどを用いる。あるいは、輪郭算出部13は、複数の観測値P3の分布から、物標の大きさ及び形状を推定し、予め用意されている複数のモデルの中から適したモデルを選択して用いてもよい。
【0016】
推定値P2は、物標の状態を推定した値である。物標の状態は、物標の位置と向きとを含む。推定値P2は、物標の基準点における少なくとも一つの物理量を有する。物体追跡装置10は、複数の観測値P3と、複数の予測値P4と、形状モデルと、所定のフィルタとに基づいて、基準点の運動状態を時系列的に推定して、推定値P2を算出する。所定のフィルタは、例えば、カルマンフィルタである。推定値P2は、例えば、基準点のx方向位置、y方向位置、速度、進行方向、角速度を有する。x方向は、車両50の長さ方向に相当し、y方向は、車両50の幅方向に相当する。
【0017】
本実施形態では、基準点は、自動車の後輪の軸中心である。輪郭算出部13は、過去の推定値P2と形状モデルとに基づいて、今回の処理サイクルにおける、物標の形状の予測輪郭L1を算出する。予測輪郭L1の内部は、今回の処理サイクルにおいて、予測される物標の存在領域に相当する。すなわち、輪郭算出部13は、過去の推定値P2と形状モデルとに基づいて、今回の処理サイクルにおいて、物標の存在領域を予測する。したがって、予測輪郭L1は、S10において取得された複数の観測値P3の近傍に算出される可能性が高い。
【0018】
続いて、S30では、予測値算出部15が、予測値算出処理を実行し、複数の観測値P3とは独立して、S20において算出された予測輪郭L1の上及び/又は内部に位置する複数の予測値P4を算出する。すなわち、予測値算出部15は、予測輪郭L1の上及び/又は内部に、複数の観測値P3に依存しない算出方法で(すなわち、複数の観測値P3とは無関係に)、複数の予測値P4を算出する。
【0019】
図8に示す参考例では、複数の予測値P4が、複数の観測値P3に依存して算出される。具体的には、参考例では、センサ波の反射が物標の輪郭で生じると仮定され、中心点P1と、複数の観測値P3の各々とを通る直線が引かれる。そして、各直線と予測輪郭L1との交点が、予測値P4として算出され、同じ直線上の予測値P4と観測値P3とが関連付けられる。中心点P1は、予測輪郭L1の中心である。
【0020】
図8に示すように、予測輪郭L1が、実際の物標の輪郭LLからずれている場合、予測値P4が、その予測値P4と対応していない観測値P3と関連付けられる。図8では、車両の左側の予測値P4が、車両の右側の観測値P3と関連付けられている。複数の観測値P3に基づいて複数の予測値P4を算出する場合、一度誤った関連付けが生じると、誤った関連付けが継続する可能性がある。ひいては、推定値P2の算出精度が低下する可能性がある。すなわち、物体の追跡精度が低下する可能性がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、予測値算出部15は、複数の観測値P3から独立して、予測輪郭L1の上及び/又は内部の所定範囲に位置する複数の予測値P4を算出する。なお、予測値算出処理の詳細は後述する。
【0022】
続いて、S40では、関連付け部17が、S30において算出された複数の予測値P4の各々を、S10で取得された複数の観測値P3のうちの一つ又は二つ以上と関連付ける。本実施形態では、関連付け部17は、複数の予測値P4の各々を、複数の観測値P3のうちの二つ以上と関連付け、複数の関連付けセットを生成する。詳しくは、関連付け部17は、一つの予測値P4と、その予測値P4から設定範囲内に位置する二つ以上の観測値P3とを関連付けて、一つの関連付けセットを生成する。したがって、関連付けセットの各々は、一つの予測値P4と、その予測値P4と関連付けられた二つ以上の観測値P3と、を含む。このように、一つの予測値P4に対して、二つ以上の関連付けが許容されることにより、二つ以上の関連付けの中に、正しい関連付けが含まれる可能性が高くなる。そのため、複数の関連付けが許容されることにより、物体の追跡中に、推定値P2が正しい関連付けの影響を受け、推定値P2が正しい値へ収束する。関連付け部17が、一つの予測値P4を一つの予測値P3と関連付ける場合、その関連付けが誤っていると、誤った関連付けが継続する可能性がある。
【0023】
続いて、S50では、推定部19が、推定処理を実行し、S40で算出された複数の関連付けセットにカルマンフィルタ等のフィルタを適用して、現在の推定値P2を算出する。推定処理の詳細は、後述する。
【0024】
<2-2.予測値算出処理>
次に、図6のフローチャートを参照して、予測値算出部15が実行する予測値算出処理の詳細について説明する。
【0025】
S100では、予測値算出部15は、物標の距離が閾値以上であるか否か判定する。ここでの距離は、前回の処理サイクルで算出された推定値P2が有する距離、又は推定値P2が有する位置に基づいて算出された距離である。あるいは、ここでの距離は、S10において取得された複数の観測値P3に基づいて算出された距離であってもよい。
【0026】
物標がセンサ部11の遠方に存在する場合、物体の反射点の位置のばらつきが大きく、物体の領域内全体に広く反射点が分布する。そのため、物標がセンサ部11の遠方に存在し、且つ、予測値算出部15が、予測輪郭L1の上及び/又は内部の所定範囲に位置する複数の予測値P4を算出する場合、所定範囲を狭くすると、一つの予測値P4と二つ以上の観測値P3との関連付けの精度が低下し、推定値P2の算出精度が低下する可能性がある。
【0027】
一方、物標がセンサ部11の近傍に存在する場合、物体の反射点の位置のばらつきが小さく、物体の特定の領域に集中的に反射点が分布する。そのため、物標がセンサ部11の近傍に存在し、且つ、予測値算出部15が、予測輪郭L1の上及び/又は内部の所定範囲に位置する複数の予測値P4を算出する場合、所定範囲を広くすると、一つの予測値P4と二つ以上の観測値P3との関連付けの精度が低下し、推定値P2の算出精度が低下する可能性がある。
【0028】
そこで、予測値算出部15は、物標の距離に応じて、所定範囲を変更する。予測値算出部15は、S100において、距離が閾値以上であると判定した場合は、S110の処理へ進み、距離が閾値未満であると判定した場合は、S120の処理へ進む。
【0029】
S110では、図8に示すように、所定範囲を、予測輪郭L1の全周囲に設定する。そして、予測値算出部15は、所定範囲において、決められた位置間隔で、複数の予測値P4を算出する。複数の予測値P4の各々は、予測輪郭L1上の座標値を有する。決められた位置間隔は、等しい位置間隔でもよい。あるいは、決められた位置間隔は、所定範囲の中心に近いほど、多くの予測値P4が推定値P2の更新に寄与するように、所定範囲の中心に近いほど、間隔が小さくなる位置間隔でもよい(図14参照)。
【0030】
S120では、予測値算出部15は、予測輪郭L1のうちの直接反射領域を算出する。直接反射領域は、センサ部11がセンサ波を直接照射可能な領域に相当する。
図10に示すように、形状モデルが楕円モデル又は円モデルである場合は、予測値算出部15は、第1の点Paと第2の点Pbとの間の2つの領域のうちセンサ部11に近い側の領域を、直接反射領域として算出する。第1の点Paは、予測輪郭L1上の点であり、センサ部11を通る第1の接線Laと形状モデルとの接点である。第2の点Pbは、予測輪郭L1上の第1の点Paと異なる点であり、センサ部11を通る第2の接線Lbと形状モデルとの接点である。図12は、センサ部11が、物体(具体的には車両)の後方からセンサ波を照射した場合における、直接反射領域を示す。図13は、センサ部11が、物体の側方からセンサ波を照射した場合における、直接反射領域を示す。
【0031】
また、図11に示すように、形状モデルが矩形モデルである場合は、予測値算出部15は、第4の頂点PP4を第2の頂点PP2に接続する第1の辺と、第4の頂点PP4を第3の頂点PP3に接続する第2の辺とを、直接反射領域として算出する。第2の頂点PP2及び第3の頂点PP3は、第1の頂点PP1に隣接する2つの頂点であり、第1の頂点PP1は、矩形モデルの4つの頂点のうちセンサ部11から最も離れている頂点である。第4の頂点PP4は、第2の頂点PP2と第3の頂点PP3との間の頂点であって、第1の頂点PP1と異なる頂点である。
【0032】
S130では、予測値算出部15は、直接反射領域を所定範囲に設定し、所定範囲において、決められた位置間隔で、複数の予測値P4を算出する。図10及び11に示すように、決められた位置間隔は、等しい位置間隔でもよい。あるいは、図14に示すように、決められた位置間隔は、所定範囲の中心に近い予測値P4ほど、推定値P2への寄与を大きくするため、所定範囲の中心に近いほど、間隔が小さくなる位置間隔でもよい。
【0033】
<2-3.推定処理>
次に、図7のフローチャートを参照して、推定部19が実行する推定処理の詳細について説明する。
【0034】
S200では、推定部19は、S20において算出されたすべての予測値P4に対して、以下に続くS210~S230の処理を実行したか否か判定する。推定部19は、すべての予測値P4に対して、S210~S230の処理を実行していないと判定した場合は、S210~S230の処理が実行されていないと判定した予測値P4の中から1つの予測値P4を選択して、S210の処理へ進む。推定部19は、すべての予測値P4に対して、S210~S230の処理を実行したと判定した場合は、S240の処理へ進む。
【0035】
S210では、推定部19は、S200において選択した予測値P4が、直接反射領域に位置するか否か判定する。所定範囲を予測輪郭L1の全周囲に設定した場合、所定範囲は、直接反射領域と、非直接反射領域と、を含む。非直接反射領域は、センサ部11がセンサ波を直接照射不可能な領域である。推定部19は、選択した予測値P4が、直接反射領域に位置すると判定した場合は、S220の処理へ進み、選択した予測値P4が、非直接反射領域に位置すると判定した場合は、S220の処理を飛ばして、S230の処理へ進む。
【0036】
S220では、推定部19は、推定値P2の更新に対する、選択した予測値P4の寄与度を基準値よりも大きくする。すなわち、推定部19は、寄与度の基準値に所定値を加算して、寄与度を大きくする。選択した予測値P4が非直接反射領域に位置する場合には、寄与度は基準値になる。直接反射領域に位置する予測値P4を含む関連付けセットは、非直接反射領域に位置する予測値P4を含む関連付けセットよりも、信頼度が高い。そこで、推定部19は、選択した予測値P4が直接反射領域に位置する場合には、推定値P2の更新に対する寄与度を上げる。
【0037】
S230では、推定部19は、選択した予測値P4について関連付けした観測値による推定値P2の更新量を算出する。具体的には、推定部19は、非線形フィルタである拡張カルマンフィルタなどを用いて、更新量を算出する。
【0038】
S240では、予測値P4ごとに算出された推定値P2の更新量を、寄与度により重みづけ平均し加算して、推定値P2を更新する。更新された推定値P2が、今回の処理サイクルにおける推定値P2になる。
【0039】
<3.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)物体追跡装置10は、複数の観測値P3から独立して、複数の予測値P4が算出される。したがって、予測値P4と少なくとも一つの観測値P3との誤った関連付けが継続されることが抑制され、物標の位置の推定精度の低下を抑制できる。
【0040】
(2)一つの予測値P4が複数の観測値P3と関連付けられる。一つの予測値P4に対して複数の関連付けが許容されることにより、複数の関連付けの中に正しい関連付けが含まれ、物標の推定位置を正しい観測位置へ収束させることができる。ひいては、物標の位置の推定精度を向上させることができる。
【0041】
(3)所定範囲において、予め決められた位置間隔で複数の予測値P4を算出する場合、複数の予測値P4の算出処理を容易化できる。
(4)所定範囲において、等しい位置間隔で複数の予測値P4を算出する場合、複数の予測値P4の算出処理を容易化できる。
【0042】
(5)所定範囲の中心に近いほど多くの観測値P3が得られる可能性が高いので、所定範囲の中心に近いほど予測値P4を密に算出することにより、物標の位置の推定精度を向上させることができる。
【0043】
(6)直接反射領域からは多くの観測値P3が得られる。したがって、所定範囲を、直接反射領域に設定することにより、物標の位置の推定精度を向上させることができる。
(7)形状モデルとして円モデル又は楕円モデルを用いる場合、第1の点Paと第2の点Pbとの間の領域を直接反射領域として算出することにより、直接反射領域を簡易に算出することができる。
【0044】
(8)形状モデルとして矩形モデルを用いる場合、第1の辺と第2の辺を直接反射領域として算出することにより、直接反射領域を簡易に算出することができる。
(9)所定範囲を全周囲に設定した場合、直接反射領域における予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度が、非直接反射領域における予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度よりも大きく算出される。これにより、物標の位置の推定精度を向上させることができる。
【0045】
(10)センサ部11の遠方では、所定範囲を予測輪郭L1の全周囲に設定し、センサ部11の近傍では、所定範囲を直接反射領域に設定することにより、センサ部11の近傍から遠方まで、物標の位置を精度よく推定することができる。
【0046】
(第2実施形態)
<1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0047】
前述した第1実施形態では、物標の距離に応じて所定範囲を変更した。これに対し、第2実施形態では、物標の距離によらず、所定範囲を設定している点で、第1実施形態と相違する。具体的には、第2実施形態では、予測値算出部15は、物標の距離によらず、直接反射領域を所定範囲に設定する。推定部19は、予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度を考慮せず、推定値P4を算出する。したがって、第2実施形態では、予測値算出部15は、図6のフローチャートの代わりに、図16のフローチャートを実行する。また、第2実施形態では、推定部19は、図7のフローチャートの代わりに、図17のフローチャートを実行する。
【0048】
<2.処理>
<2-1.予測値算出処理>
図16のフローチャートを参照して、予測値算出部15が実行する予測値算出処理について説明する。
S310では、予測値算出部15は、S120と同様に、予測輪郭L1のうちの直接反射領域を算出する。
【0049】
続いて、S320では、予測値算出部15は、S130と同様に、直接反射領域を所定範囲に設定し、所定範囲において、決められた位置間隔で、複数の予測値P4を算出する。すなわち、本実施形態では、予測値算出部15は、物標の距離によらず、直接反射領域において複数の予測値P4を算出する。
【0050】
<2-2.推定処理>
次に、図17のフローチャートを参照して、推定部19が実行する推定処理について説明する。
【0051】
S500では、S200と同様に、推定部19は、S20において算出されたすべての予測値P4に対して、以下に続くS510の処理を実行したか否か判定する。推定部19は、すべての予測値P4に対して、S510の処理を実行していないと判定した場合は、S510の処理が実行されていないと判定した予測値P4の中から1つの予測値P4を選択して、S510の処理へ進む。推定部19は、すべての予測値P4に対して、S510の処理を実行したと判定した場合は、S520の処理へ進む。
【0052】
S510では、推定部19は、S230と同様に、選択した予測値P4について関連付けした観測値による推定値P2の更新量を算出する。
S520では、推定部19は、予測値P4ごとに算出された推定値P4の更新量を平均して、推定値P2を更新する。すなわち、本実施形態では、推定部19は、すべての予測値P4の重みを均等にして、推定値P2を更新する。
【0053】
以上説明した第2実施形態によれば、上述の効果(1)~(8)と同様の効果を奏する。
【0054】
(第3実施形態)
<1.第2実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0055】
前述した第2実施形態では、物標の距離によらず、直接反射領域を所定範囲に設定した。これに対し、第3実施形態では、物標の距離によらず、予測輪郭L1の全周囲を所定範囲に固定する点で、第2実施形態と相違する。推定部19は、予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度を考慮せず、推定値P4を算出する。したがって、第3実施形態では、予測値算出部15は、図16のフローチャートの代わりに、図18のフローチャートを実行する。また、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、推定部19は、図17のフローチャートを実行する。
【0056】
<2.予測値算出処理>
図18のフローチャートを参照して、予測値算出部15が実行する予測値算出処理について説明する。
【0057】
S400では、予測値算出部15は、所定範囲を予測輪郭L1の全周囲に設定し、所定範囲において、決められた位置間隔で、複数の予測値P4を算出する。すなわち、本実施形態では、予測値算出部15は、物標の距離によらず、予測輪郭L1の全周囲において複数の予測値P4を算出する。
【0058】
以上説明した第3実施形態によれば、上述の効果(1)~(5)、(9)と同様の効果を奏するとともに、以下の効果(11)、(12)を奏する。
(11)所定範囲を固定化することにより、複数の予測値P4の算出処理を容易化できる。
(12)所定範囲を予測輪郭L1の全周囲に設定することにより、物標の推定位置が真の位置から大きく外れることを抑制できる。
【0059】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0060】
(a)予め決められた所定範囲を、予測輪郭L1の全周囲に設定する場合、直接反射領域における予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度を、非直接反射領域における予測値P4の推定値P2の更新に対する寄与度よりも大きくしてもよい。また、予め決められた所定範囲を、予測輪郭L1上の一つ又は二つ以上のタイヤに対応する範囲に設定してもよい。タイヤでは反射点が多くなる傾向があるため、タイヤに対応する範囲を所定範囲に設定することで、物標の位置を精度よく推定することができる。
【0061】
(b)上記実施形態では、予測値算出部15は、物標の距離に応じて、所定範囲を変更したが、物標の状態に応じて、所定範囲を変更してもよい。センサ部11が追跡中の車両の側方からセンサ波を照射する場合には、車両の内部の反射位置に対応する観測値P3はあまり取得されない。一方、センサ部11が追跡中の車両の後方にセンサ波を照射する場合には、車両の内部の反射位置に対応する観測値P3が比較的多く取得される。したがって、予測値算出部15は、追跡中の車両の向きに応じて、所定範囲を変更してもよい。例えば、図15に示すように、予測値算出部15は、センサ部11が追跡中の車両の後方からセンサ波を照射する場合には、予測輪郭L1の上及び内部を所定範囲に設定し、センサ部11が追跡中の車両の側方からセンサ波を照射する場合には、予測輪郭L1の上のみを所定範囲に設定してもよい。所定範囲を、物標の状態に応じて動的に設定することにより、物標の位置の推定精度を向上させることができる。
【0062】
(c)上記実施形態では、物体追跡装置10は、自動車に搭載されていたが、自動車以外の移動体に搭載されていてもよい。例えば、物体追跡装置10は、船舶、航空機、自動二輪車、ドローンなどの移動体に搭載されていてもよい。
【0063】
(d)本開示に記載の物体追跡装置10及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の物体追跡装置10及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の物体追跡装置10及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。物体追跡装置10に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0064】
(e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0065】
(f)上述した物体追跡装置10の他、当該物体追跡装置10を構成要素とするシステム、当該物体追跡装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、物体追跡方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0066】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
移動体(50)に搭載されたセンサ部(11)であって、前記移動体の周辺にセンサ波を送受信し、互いに異なる反射位置に対応した複数の観測値を取得するように構成されたセンサ部と、
予め決められた物体の形状モデルと、前記物体の位置及び向きを含む物標の状態の推定値であって過去に算出された前記推定値と、に基づいて、現在の前記物標の輪郭の予測である予測輪郭を算出するように構成された輪郭算出部(13)と、
前記センサ部により取得された前記複数の観測値から独立して、前記予測輪郭上及び/又は前記予測輪郭の内側の所定範囲に位置する複数の予測値を算出するように構成された予測値算出部(15)と、
前記複数の予測値の各々と、前記複数の観測値のうちの少なくとも一つとを関連付けて、複数の関連付けセットを生成するように構成された関連付け部(17)と、
前記関連付け部により生成された前記複数の関連付けセットに基づいて、現在の前記推定値を算出するように構成された推定部(19)と、を備える、
物体追跡装置。
[項目2]
前記関連付け部は、前記複数の予測値の各々と、前記複数の観測値のうちの二つ以上とを関連付けるように構成されており、
前記複数の関連付けセットの各々は、前記複数の予測値のうちの一つと、前記複数の観測値のうちの二つ以上と、を含む、
項目1に記載の物体追跡装置。
[項目3]
前記所定範囲は、予め決められている、
項目1又は2に記載の物体追跡装置。
[項目4]
前記予測値算出部は、前記物標の状態に応じて、前記所定範囲を設定するように構成されている、
項目1又は2に記載の物体追跡装置。
[項目5]
前記予測値算出部は、前記所定範囲において、予め決められた位置間隔で、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
項目1~4のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目6]
前記予測値算出部は、前記所定範囲において、等しい位置間隔で、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
項目1~5のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目7]
前記予測値算出部は、前記所定範囲の中心に近いほど、位置間隔が小さくなるように、前記複数の予測値を算出するように構成されている、
項目1~6のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目8]
前記所定範囲は、前記予測輪郭の全周囲である、
項目1~7のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目9]
前記所定範囲は、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な範囲である、
項目1、2、4~7のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目10]
前記形状モデルは、円モデル又は楕円モデルであり、
前記所定範囲は、前記予測輪郭上の第1の点と第2の点との間の領域のうち前記センサ部に近い側の領域であり、
前記第1の点は、前記センサ部を通る前記予測輪郭の第1の接線と前記予測輪郭との接点であり、
前記第2の点は、前記センサ部を通る前記予測輪郭の第2の接線と前記予測輪郭との接点であり、前記第2の点は、前記第1の点と異なる、
項目9に記載の物体追跡装置。
[項目11]
前記形状モデルは、前記センサ部から最も離れている第1の頂点と、前記第1の頂点に隣接している第2の頂点及び第3の頂点と、前記第2の頂点と前記第3の頂点の間の第4の頂点と、を有する矩形モデルであり、
前記所定範囲は、前記第4の頂点を前記第2の頂点に接続する第1の辺と、前記第4の頂点を前記第3の頂点に接続する第2の辺と、を含む、
項目9に記載の物体追跡装置。
[項目12]
前記所定範囲は、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な第1範囲と、前記センサ部が前記センサ波を直接照射不可能な第2範囲と、を含み、
前記複数の予測値は、前記第1範囲内の第1の予測値と、前記第2範囲内の第2の予測値と、を含み、
前記推定部は、前記推定値の更新に対する前記第1の予測値の寄与度を、前記推定値に対する前記第2の予測値の寄与度よりも高くするように構成されている、
項目8に記載の物体追跡装置。
[項目13]
前記予測値算出部は、前記物標の距離に応じて、前記所定範囲を変更するように構成されている、
項目1~12のいずれか1つに記載の物体追跡装置。
[項目14]
前記予測値算出部は、
前記物標の距離が所定距離以上である場合には、前記予測輪郭の全周囲を前記所定範囲に設定し、
前記物標の距離が所定距離未満である場合には、前記センサ部が前記センサ波を直接照射可能な範囲を前記所定範囲に設定するように構成されている、
項目13に記載の物体追跡装置。
【符号の説明】
【0067】
10…物体追跡装置、11…センサ部、13…輪郭算出部、15…予測値算出部、17…関連付け部、19…推定部、20…処理装置、50…車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18