(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118252
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20240823BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20240823BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20240823BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240823BHJP
【FI】
H04B17/391
H04B17/309
H04W16/18
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024592
(22)【出願日】2023-02-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 慧司
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 和輝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD20
5K067DD43
5K067EE16
5K067LL08
(57)【要約】
【課題】端末装置がネットワークに接続するまでの時間を短縮すること。
【解決手段】 電磁波の伝搬特性を推定する情報処理装置は、電磁波を送信する送信点と、送信点から送信された電磁波を受信する受信点との位置および高さを含む送受信点情報を取得し、送信点および受信点の位置を含む所定の範囲における構造物の位置および高さを含む構造物情報を取得し、取得した送受信点情報および構造物情報から、送信点から送出された電磁波が1回反射する反射点となる構造物を示す反射点情報を生成し、反射点情報を使用して送受信点間の電磁波の伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の伝搬特性を推定する情報処理装置であって、
電磁波を送信する送信点と、前記送信点から送信された電磁波を受信する受信点との位置および高さを含む送受信点情報を取得する第1取得手段と、
前記送信点および前記受信点の位置を含む所定の範囲における構造物の位置および高さを含む構造物情報を取得する第2取得手段と、
取得した前記送受信点情報および前記構造物情報から、前記送信点から送出された電磁波が1回反射する反射点となる前記構造物を示す反射点情報を生成する生成手段と、
前記反射点情報を使用して送受信点間の電磁波の伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習を行う学習手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記送信点と前記受信点とを通る平面に対して、前記反射点を含む構造物の相対的な高さが関連付けられた前記反射点情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記送信点または前記受信点からみた所定の角度において、前記相対的な高さが正の値を有する構造物のうち、前記送信点または前記受信点から最も近い構造物を反射点として特定することを含むことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記送信点から前記反射点までの第1の距離と、前記反射点から前記受信点までの第2の距離とが関連付けられた前記反射点情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記構造物情報は、構造物の側面の角度を特定可能であり、
前記生成手段は、前記送信点から前記反射点への入射角と、前記反射点から前記受信点への反射角と、が関連付けられた前記反射点情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記入射角および前記反射角は前記構造物の前記側面の法線方向に対する角度であることを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、水平面において前記送信点または前記受信点を基準として前記送信点または前記受信点から所定の角度ステップごとに反射点を特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記学習手段は、前記送信点から送信した電磁波の前記受信点における測定結果にさらに基づいて前記機械学習モデルの学習を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
学習した前記機械学習モデルを使用して、所定の位置および高さの送受信点間の電磁波の伝搬特性を推定する推定手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
電磁波の伝搬特性を推定する情報処理方法であって、
電磁波を送信する送信点と、前記送信点から送信された電磁波を受信する受信点との位置および高さを含む送受信点情報を取得することと、
前記送信点および前記受信点の位置を含む所定の範囲における構造物の位置および高さを含む構造物情報を取得することと、
取得した前記送受信点情報および前記構造物情報から、前記送信点から送出された電磁波が1回反射する反射点となる前記構造物を示す反射点情報を生成することと、
前記反射点情報を使用して機械学習モデルの学習を行うことと、
を含む情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の伝搬特性を推定する情報処理装置、方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、機械学習モデルを使用して電磁波の伝搬特性を推定する技術が提案されている。引用文献1には、可視領域画像及び可視領域画像に紐づける情報を用いた機械学習モデルを使用して時空間伝搬特性を推定する手法が開示されている。引用文献1によれば、送受信点からの見通しの情報を用いることで、電磁波の伝搬特性に大きな影響を与える、反射・回折回数が1回の電波の伝搬経路上にある建物を考慮した伝搬特性の推定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Imai, K. Kitao and M. Inomata, “Radio Propagation Prediction Model Using Convolutional Neural Networks by Deep Learning,” 2019 13th European Conference on Antennas and Propagation (EuCAP), Krakow, Poland, 2019, pp. 1-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送受信点からの見通しの情報を可視領域画像として扱う場合、伝搬経路に関わらない領域に関する情報も多く含まれるこのため、機械学習モデルの学習に必要なデータが多くなる場合や、学習に必要な計算量が大きくなる場合があり、電磁波の伝搬特性を推定する機械学習モデルの学習における利便性が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、送受信点間の電波伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習の利便性を向上するための技術を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の一態様による情報処理装置は、
電磁波の伝搬特性を推定する情報処理装置であって、
電磁波を送信する送信点と、前記送信点から送信された電磁波を受信する受信点との位置および高さを含む送受信点情報を取得する第1取得手段と、
前記送信点および前記受信点の位置を含む所定の範囲における構造物の位置および高さを含む構造物情報を取得する第2取得手段と、
取得した前記送受信点情報および前記構造物情報から、前記送信点から送出された電磁波が1回反射する反射点となる前記構造物を示す反射点情報を生成する生成手段と、
前記反射点情報を使用して送受信点間の電磁波の伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習を行う学習手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、送受信点間の電波伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習の利便性を向上するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成図
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置のソフトウェア構成図
【
図3】(A)、(B)は本実施形態に係る情報処理装置が実行する処理例を示すシーケンス図
【
図4】(A)は送受信点の周囲の標高情報を示す図、(B)は相対高を示す図
【
図6】(A)、(B)は反射点における入射角および反射角の特定方法を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<ハードウェア構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成図である。情報処理装置1は、構成要素としてCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、およびHDD(Hard Disk Drive)104を含む。これらの構成要素は、バス105を介して通信可能に接続される。情報処理装置1は、一例ではサーバなどのコンピュータである。
【0012】
CPU101は、情報処理装置1の全体の動作を制御する1つ以上のプロセッサ、プログラマブルロジック回路、またはマイクロプロセッサである。また、CPU101は、ROM102に記憶された制御プログラムを読み出してRAM103などと協働し、後述する電磁波の伝搬特性の推定を行う。
【0013】
ROM102は、例えばフレキシブルディスク、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、DVD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、EEPROM、またはシリコンディスク等の、制御プログラムの記憶領域である。
【0014】
RAM103は、CPU101が各種プログラムを実行するためのワークエリア等として使用する揮発性のメモリである。HDD104は、画像データや各種プログラムを記憶する大容量記録媒体である。
【0015】
<ソフトウェア構成>
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能ブロックを示す。情報処理装置1は、CPU101がROM102やHDD104に記憶されたプログラムをRAM103に展開して実行することで、標高情報管理部201、送受信点情報取得部202、反射点情報生成部203、学習部204、伝搬特性推定部205として機能する。
【0016】
標高情報管理部201は、所定の位置における標高を特定可能な標高情報を管理する。例えば、標高情報管理部201は、緯度および経度と対応付けて、標高を記憶する。標高は、地形の標高を含んでもよいし、建物などの人工的な構造物の高さを含んでもよいし、樹木などの自然物の高さを含んでもよい。本実施形態では、標高情報は、構造物の標高および上から見た構造物の形状を示す構造物情報を含むものとして説明を行う。しかしながら、標高情報は構造物の三次元形状データを有してもよい。これによって、後述するように構造物の側面の角度を特定することができ、構造物の側面に対する入射角および反射角を特定することができる。しかしながら、地形の起伏のみで伝搬特性の推定を行う場合には、構造物の形状データは有していなくてもよい。
【0017】
送受信点情報取得部202は、電磁波の送信元(送信点)と受信先(受信点)の位置および高さを示す送受信点情報を取得する。一例では、送受信点情報は、送信点及び受信点のそれぞれの位置としての緯度および経度、並びに高さとして標高を含む。一例では、送受信点情報の標高には、送受信アンテナのアンテナ高が含まれてもよい。
【0018】
反射点情報生成部203は、標高情報管理部201で管理する標高情報と、送受信点情報取得部202で取得した送受信点情報とに基づいて、送受信間で反射点となる位置を特定する。反射点は、
図3を参照して後述するように、送信点から送出された電磁波が、1回反射することで受信点に到達する、すなわち送受信点間の電磁波の経路(パス)として機能する点を含む。また、反射点は、送信点から送出された電磁波が、反射することで受信点とは異なる方向に電磁波を反射する、すなわち送受信間で電磁波を遮蔽する点を含む。
【0019】
学習部204は、公知の機械学習モデルを有し、送受信点情報と反射点情報とに基づいて機械学習モデルの学習を行う。上述したように、伝搬特性の測定結果または他のシミュレーション方法でシミュレーションした伝搬特性に関する出力をトレーニングデータとして、所定の送受信点間の伝搬特性の推定結果の推定を行う。機械学習アルゴリズムとしては、ランダムフォレストやニューラルネットワークなど所定の機械学習モデルを適用することができる。学習部204の詳細については
図3(A)を参照して後述する。伝搬特性推定部205は、学習部204で学習した学習済みの機械学習モデルに、送受信点情報および送受信点情報に基づいて特定した反射点情報を入力することで、所定の送受信点間の伝搬特性を推定する。伝搬特性推定部205の詳細については
図3(B)を参照して後述する。
【0020】
従来、機械学習モデルを使用した電磁波の伝搬モデルの推定技術が提案されている。引用文献1の伝搬特性の推定では、送信点または受信点からの可視領域画像および可視領域画像に関連付けられた情報を入力として受け付ける機械学習モデルが使用されていた。しかしながら、このような機械学習モデルでは、入力パラメータの数が大きくなるため、学習に使用するトレーニングデータを大量に用意しなければ機械学習モデルの推定精度が向上せず、学習に係る時間が長くなるという課題があった。このため、本実施形態に係る機械学習モデルでは、送受信点の周囲に存在し、伝搬経路上の反射点になり得る構造物を特定し、当該構造物の形状に基づいて反射点の情報を生成して、機械学習モデルへの入力として使用する。これによって、機械学習モデルの入力パラメータの数を削減することができ、学習に係る時間を短縮できる。以下、反射点情報を生成して機械学習モデルの学習を行う方法について説明する。
【0021】
<機械学習モデルの学習処理例>
図3(A)を参照して、情報処理装置1が実行する処理例について説明する。本実施形態では、送信点から見て反射点になり得る構造物を特定し、機械学習モデルの学習を行う例について説明する。
図3(A)の処理は、ユーザから処理の実行の指示を受け付けた場合に実行される。
【0022】
情報処理装置1は、情報処理装置1は送受信点情報を取得する(S301)。S301では、ユーザから送受信点の位置および高さを含む送受信点情報を受け付ける。続いて、情報処理装置1は、送受信点の周囲の標高情報をHDD104から取得する(S302)。S302で標高情報を取得する位置の範囲は、伝搬特性の推定を行う電磁波の周波数や、送信点から送出することを想定している電磁波の出力強度などに基づいて変更することができる。なお、情報処理装置1が通信部(不図示)を有する場合は、外部の標高情報を管理する他の情報処理装置から標高情報を取得してもよい。続いて、情報処理装置1は、標高情報と送受信点情報に基づいて、送受信経路における相対高を計算する(S303)。
【0023】
ここで、
図4(A)、
図4(B)を参照して、標高情報に基づいて送受信点間の経路における相対高を計算する方法について説明する。
図4(A)は、送受信点とその周囲の標高を示す。例えば、構造物401は、高さが18mであることを示す。所定の構造物の送受信点に対する相対高H
Rは、例えば非特許文献1に記載のフレネル基準による相対的な高さの計算手法と同様の方法で計算することができる。本実施形態では、相対高H
Rは以下の数式1に従って計算される。
【0024】
HR=HA-HT-{(HR-HT)DT}/(DT+DR) (数式1)
ここで、HAは所定の構造物の高さであり、HTは送信点の高さであり、HRは受信点の高さであり、DTは送信点から所定の地点までの水平面上での距離、DRは所定の地点から受信点までの水平面上での距離である。これを構造物ごと、または所定の位置に対して計算することで、各地点ごとの相対高を計算することができる。このため、第1の高さの構造物Aと、第1の高さより高い高さの構造物Bとが存在する場合、送信点と受信点の高さによっては構造物Aの相対高の方が構造物Bの相対高より高くなる場合がある。言い換えると、相対高は、送受信点の見通し線と、見通し線に対して垂直に交差し、かつ水平面に対して平行な線と、を通る平面に対する相対的な高さであり得る。
【0025】
図4(B)に、数式1に従って各構造物の相対高を計算した結果の例を示す。なお、
図4(B)では地面の相対高の表示は省略している。
図4(B)に示す構造物411は、相対高が-5m、すなわち送受信点間を結んだ見通し線と、見通し線に対して垂直に交差し、かつ水平面に対して平行な線とを通る平面より低いことを意味する。このため、送信点から送出された電磁波の遮蔽や正規反射に近い強い反射は生じない。
【0026】
続いて、情報処理装置1は、相対高の計算結果から、送信点から所定の角度ごとに、反射点となる位置情報を特定する(S304)。本実施形態では、送信点からみた所定の角度ごとに、反射点となる位置の送信点からの距離を特定する。
【0027】
図5に、反射点となる位置の特定方法を示す。
図5の例では、送信点から受信点までの方向を0度として、45度ごとに反射点となる位置を特定する例について示しているが、所定の角度ごとに反射点を判定すればよく、
図5の例に限定されない。
【0028】
本実施形態では、角度ごとに、送信点から見て相対高が0以上となる構造物を反射点として特定する。このため、
図5で実線で示す構造物501~506が反射点として特定される。なお、送信点から見た角度135°方向のように、構造物が存在しない場合や、送信点から見た角度270°方向のように、存在する構造物の相対高が0未満である場合は、反射点がない、すなわち反射が生じないものとして判定することができる。なお、反射点の高さは、送受信点間を結んだ見通し線と、見通し線に対して垂直に交差し、かつ水平面に対して平行な線とを通る平面上の位置、すなわち数式1で相対高H
R=0となる位置である。このため、反射点の高さはH
A-H
Rとして求めることができる。
【0029】
続いて、角度ごとに判定した反射点における、入射角と反射角を判定する(S305)。なお、所定の角度において、相対高HRが0より大きい、すなわち反射点となる構造物が存在しない場合には、角度における反射点の入射角0、反射角0としてもよい。
【0030】
図6(A)に反射点における入射角と反射角との特定方法を示す。本実施形態に係る情報処理装置1は、標高情報として構造物の三次元情報を取得する。このため、
図6(A)に示すように、送信点の位置、送信点からの電磁波の送出方向と、構造物の位置と形状に基づいて、送信点から送出した電磁波が入射する構造物の側面601を特定することができる。
図6(A)の例では、構造物506の側面601で反射が生じると判定することができる。このため、構造物506の側面601に対して垂直方向の法線602を基準として、送信点から入射する角度を入射角とし、反射点から受信点への方向を反射角として特定することができる。このように、法線方向に対する入射角と反射角とを計算することで、入射角と反射角とが近い、すなわち反射点において正規反射に近い強い反射が生じるか、入射角と反射角との差が大きい、すなわち反射点において弱い反射が生じるかを判定することができる。なお、
図6(A)の例では、水平面上で入射角および反射角を示しているが、送受信点および反射点を含む平面上で入射角および反射角の判定を行ってもよい。
【0031】
S305に続いて、情報処理装置1は、反射点の位置、入射角および反射角が対応付けられたリストを反射点情報として作成する(S306)。
図7に反射点情報の一例を示す。反射点情報は、送信点から受信点までの方向を0度として、送信点からみた反射点の方向[°]、反射点が位置する構造体の相対高[m]、送信点からの距離[m]、受信点からの距離[m]、入射角[°]、反射角[°]を示す。
図7の例では、送信点から1°ごとに反射点のリストを反射点情報として作成するものとする。
【0032】
S306に続いて、情報処理装置1は、送受信点間の伝搬特性を示すトレーニングデータを取得し(S307)、反射点情報を入力として、出力とトレーニングデータとの誤差が小さくなるよう機械学習モデルの学習を行う(S308)。S308では、異なる複数の送受信点について、それぞれの送受信点の位置、その位置における反射点情報を機械学習モデルに入力し、出力される電磁波の伝搬特性の推定値と、トレーニングデータである測定結果や他のシミュレータの出力との誤差に基づいて、機械学習モデルの学習を行うことができる。調整方法については公知の技術を適用することができるため説明を省略する。伝搬特性は、送信点から電磁波を送出した場合に受信点で検出される電波強度、送受信点間の遅延スプレッド、および角度スプレッドの少なくとも何れかであってもよい。トレーニングデータは、機械学習モデルの出力の種類に応じて変更することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、特定の周波数における伝搬特性として受信強度を推定するものとして説明を行う。しかしながら、情報処理装置1が複数の周波数の伝搬特性を推定する場合には、機械学習モデルの入力には周波数帯を示す情報が入力されてもよい。すなわち、機械学習モデルの入力パラメータには周波数を示す情報が含まれてもよい。
【0034】
これによって、所定の送受信点の位置および高さの入力を受け付けた場合に、当該送受信点間の伝搬特性の推定を行う機械学習モデルの学習を行うことができる。また、送信点から見た角度ごとに反射点を特定して、反射点情報のみを機械学習モデルに入力することで、伝搬特性の推定精度を劣化させることなく、短い学習時間および計算負荷で機械学習モデルのトレーニングを行うことができる。
【0035】
なお、上述する処理によれば、
図6(B)に示すように、送信点から所定の反射点、または当該所定の反射点から受信点までの間に構造物が位置する場合がある。このような場合でも、構造物の側面の法線に対する入射角および反射角を計算することで、反射点において構造物に遮られることで送信点または受信点のいずれかが見通し線上にないことを反射点情報に含めることができる。すなわち、上述する処理によれば、遮蔽点となる構造物を特定することができる。
【0036】
<伝搬特性の推定処理>
図3(B)を参照して本実施形態に係る情報処理装置1が実行する伝搬特性の推定について説明する。
図3(B)の処理は、ユーザから処理の実行の指示を受け付けた場合に実行される。
【0037】
S351で、情報処理装置1はユーザから送受信点の位置および高さの入力を受け付けることで送受信点情報を取得する。一例では、ユーザからの処理の実行の指示は、送受信点の位置および高さを指定する情報を含んでもよく、この場合は情報処理装置1は処理の実行の指示から、送受信点の位置および高さの情報を取得する。
【0038】
S352~S356の処理は、S302~S306で上述したものと同様のため説明を省略する。続いて、情報処理装置1は、学習済みの機械学習モデルに、送受信点情報および反射点情報を入力し、伝搬特性の推定値を出力する(S357)。
【0039】
このように、本実施形態による機械学習モデルによれば、反射点情報を入力パラメータとして学習済みの機械学習モデルに入力して電磁波の伝搬特性を推定する。これによって、機械学習モデルの入力パラメータの数を減らすことができるため、伝搬特性の推定に係る計算負荷や計算時間を低減することができる。
【0040】
<その他の実施形態>
本実施形態では、送信点から送出された電磁波の反射点として反射点情報を生成する例を説明した。しかしながら、受信点を基準として、水平面上で所定の角度ごとに見通し方向に相対高が0以上となる構造物を特定して、
図4(A)~
図6(B)を参照して説明したように受信点にとっての反射点情報を生成してもよい。また、一例では、送信点から送出された電磁波の反射点と、受信点に入射する電磁波の経路としての反射点との両方が入力される機械学習モデルを適用することができる。すなわち、送信点および受信点の少なくともいずれかにとって反射点となる点を反射点情報として生成すればよい。
【0041】
また、本実施形態では、送受信点間の指向性は無指向性であるものとして説明を行った。しかしながら、機械学習モデルの入力パラメータとして、送受信アンテナの指向性を含めて学習を行うことで、伝搬特性の推定を高精度に行うことができる。この場合、送受信点情報は、送受信点の位置および高さに加え、それぞれの方向におけるアンテナ利得などのアンテナの指向性を含んでもよい。
【0042】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:情報処理装置、101:CPU、102:ROM、103:RAM,104:HDD、201:標高情報管理部、202:送受信点情報取得部、203:反射点情報生成部、204:学習部、205:伝搬特性推定部