(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118276
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】パージシステムの異常判定方法、パージシステムの異常判定システム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024626
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健一
(72)【発明者】
【氏名】北島 魁人
(72)【発明者】
【氏名】若林 瞭
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA22
3G144DA02
3G144DA04
3G144DA07
3G144EA03
3G144EA06
3G144EA32
3G144EA45
3G144EA65
3G144FA02
3G144FA36
3G144FA38
3G144HA02
3G144HA09
3G144HA22
(57)【要約】
【課題】電力消費の増加を低減するパージシステムの異常判定方法、及びパージシステムの異常判定システムを提供する。
【解決手段】ベーパ通路又はパージ通路の異常を判定するパージシステムの異常判定方法であって、パージポンプが駆動した状態で外気遮断弁を閉止することで推定した第1の診断パラメータによりベーパ通路又はパージ通路に異常の虞があると判定した場合に、パージポンプの出力を高出力に設定した状態で外気遮断弁を閉止し、その際に第2閾値を境界としてベーパ通路及びパージ通路に異常がないと判定される第3領域とベーパ通路又はパージ通路に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定し、第2の診断パラメータが第4領域に含まれる場合に、ベーパ通路又はパージ通路に異常があると判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタと、前記キャニスタに吸着した気化燃料を内燃機関に供給するためのパージポンプを備えるパージ通路と、前記キャニスタを外気に連通させるとともに外気遮断弁が取り付けられた外気導入通路と、を含むパージシステムにおける前記ベーパ通路又は前記パージ通路の異常を判定するパージシステムの異常判定方法であって、
前記パージポンプが駆動した状態で前記外気遮断弁を閉止することで推定可能な物理量であって、第1閾値を境界として前記ベーパ通路及び前記パージ通路に異常がないと判定される第1領域と前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常の虞があると判定される第2領域に分類可能な第1の診断パラメータを推定し、
前記第1の診断パラメータが前記第2領域に含まれる場合において、前記外気遮断弁を一旦解放するとともに前記パージポンプの出力を前記第1の診断パラメータの推定時の出力よりも高い高出力に設定するとともに前記外気遮断弁を閉止し、
前記パージポンプの出力を前記高出力に設定した状態で前記外気遮断弁を閉止することで推定可能な前記物理量であって、第2閾値を境界として前記ベーパ通路及び前記パージ通路に異常がないと判定される第3領域と前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定し、
前記第2の診断パラメータが前記第4領域に含まれる場合に、前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常があると判定するパージシステムの異常判定方法。
【請求項2】
前記物理量は、前記パージポンプを駆動した状態で前記外気遮断弁を閉止してから所定時間を経過するまでの前記パージポンプの流量と、前記外気遮断弁を閉じる前の前記パージ通路の前記パージポンプよりも前記キャニスタ側となる部分の圧力と前記外気遮断弁を閉じてから前記所定時間を経過後の前記圧力との差分と、に基づいて推定される空間容積であり、
前記第1の診断パラメータが前記第1閾値よりも小さい場合に前記第2領域に含まれると判定し、
前記第2の診断パラメータが前記第2閾値よりも小さい場合に前記第4領域に含まれると判定する請求項1に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項3】
前記空間容積は、前記差分に対する前記流量の割合に基づいて算出する請求項2に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項4】
前記物理量は、前記パージポンプが駆動した状態で前記外気遮断弁を閉止してから所定時間を経過後の前記パージ通路の前記パージポンプよりも前記キャニスタ側となる部分の圧力であり、
前記第1の診断パラメータが前記第1閾値よりも小さい場合に前記第2領域に含まれると判定し、
前記第2の診断パラメータが前記第2閾値よりも小さい場合に前記第4領域に含まれると判定する請求項1に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項5】
前記物理量は、前記パージポンプを駆動した状態で前記外気遮断弁を閉止した後の前記パージ通路の前記パージポンプよりも前記キャニスタ側となる部分の圧力の減少速度であり、
前記第1の診断パラメータが前記第1閾値よりも大きい場合に前記第2領域に含まれると判定し、
前記第2の診断パラメータが前記第2閾値よりも大きい場合に前記第4領域に含まれると判定する請求項1に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項6】
前記内燃機関が車両に搭載されている場合において、
前記内燃機関が駆動し且つ前記車両が停止しているとき、又は前記内燃機関が駆動し且つ前記車両が走行しているときに前記外気遮断弁を閉止して前記第1の診断パラメータを推定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項7】
前記燃料タンク内の燃料の揺れが所定の上限値以上の場合に前記第1の診断パラメータの推定を禁止する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項8】
前記第1閾値及び前記第2閾値を、前記燃料タンク内の燃料の充填率が高くなるほど低く設定する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項9】
前記外気遮断弁を閉じてから前記所定時間を経過する前に前記圧力が所定の下限値に到達した場合には、前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常があると判定する請求項4に記載のパージシステムの異常判定方法。
【請求項10】
燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタと、前記キャニスタに吸着した気化燃料を内燃機関に供給するためのパージポンプを備えるパージ通路と、前記キャニスタを外気に連通させるとともに外気遮断弁が取り付けられた外気導入通路と、を含むパージシステムにおける前記ベーパ通路又は前記パージ通路の異常を判定するパージシステムの異常判定システムであって、
前記パージポンプが駆動した状態で前記外気遮断弁を閉止することで推定可能な物理量であって、第1閾値を境界として前記ベーパ通路及び前記パージ通路に異常がないと判定される第1領域と前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常の虞があると判定される第2領域に分類可能な第1の診断パラメータを推定し、
前記第1の診断パラメータが前記第2領域に含まれる場合において、前記外気遮断弁を一旦解放するとともに前記パージポンプの出力を前記第1の診断パラメータの推定時の出力よりも高い高出力に設定するとともに前記外気遮断弁を閉止し、
前記パージポンプの出力を前記高出力に設定した状態で前記外気遮断弁を閉止することで推定可能な前記物理量であって、第2閾値を境界として前記ベーパ通路及び前記パージ通路に異常がないと判定される第3領域と前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定し、
前記第2の診断パラメータが前記第4領域に含まれる場合に、前記ベーパ通路又は前記パージ通路に異常があると判定するパージシステムの異常判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パージシステムの異常判定方法、パージシステムの異常判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料タンクに接続するベーパ通路と、燃料タンクからベーパ通路を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタと、キャニスタに吸着した気化燃料を内燃機関に供給するためのパージポンプを備えるパージ通路と、キャニスタを外気に連通させるとともに外気遮断弁が取り付けられた外気導入通路と、を含み、パージポンプが駆動した状態で外気遮断弁を解放することでキャニスタが捕集した気化燃料を内燃機関に供給するパージシステムにおいて、パージポンプを駆動した状態で外気遮断弁を閉止した後におけるパージポンプの上流側の圧力に基づいてパージ通路又はベーパ通路の異常判定を行う内容を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、異常判定を行う際にパージポンプの出力を上昇させるのでその分電力消費が増加する。
【0005】
本発明は、電力消費の増加を低減するパージシステムの異常判定方法、及びパージシステムの異常判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるパージシステムの異常判定方法は、燃料タンクに接続するベーパ通路と、燃料タンクからベーパ通路を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタと、キャニスタに吸着した気化燃料を内燃機関に供給するためのパージポンプを備えるパージ通路と、キャニスタを外気に連通させるとともに外気遮断弁が取り付けられた外気導入通路と、を含むパージシステムにおけるベーパ通路又はパージ通路の異常を判定するパージシステムの異常判定方法である。この異常判定方法は、パージポンプが駆動した状態で外気遮断弁を閉止することで推定可能な物理量であって、第1閾値を境界としてベーパ通路及びパージ通路に異常がないと判定される第1領域とベーパ通路又はパージ通路に異常の虞があると判定される第2領域に分類可能な第1の診断パラメータを推定する。そして、第1の診断パラメータが第2領域に含まれる場合において、外気遮断弁を一旦解放するとともにパージポンプの出力を第1の診断パラメータの推定時の出力よりも高い高出力に設定するとともに前記外気遮断弁を閉止する。また、パージポンプの出力を高出力に設定した状態で外気遮断弁を閉止することで推定可能な物理量であって、第2閾値を境界としてベーパ通路及びパージ通路に異常がないと判定される第3領域とベーパ通路又はパージ通路に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定する。さらに、第2の診断パラメータが第4領域に含まれる場合に、ベーパ通路又はパージ通路に異常があると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1回目の異常判定において、第1の診断パラメータが第1領域に含まれる場合にベーパ通路及びパージ通路は異常なしと判定され、第2領域に含まれる場合にベーパ通路又はパージ通路は異常がある虞があると判定される。ここで、1回目の異常判定で異常なし(OK)と判定された場合、パージポンプの出力を上昇させることはないので、その分電力消費を抑制できる。2回目の異常判定において、第2の診断パラメータが第3領域に含まれる場合にベーパ通路及びパージ通路は異常なしと判定され、第4領域に含まれる場合にベーパ通路又はパージ通路に異常ありと判定される。2回目の異常判定では、パージポンプの出力を上昇させるのでベーパ通路及びパージ通路において異常の有無を高精度に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のパージシステムの異常判定システム(異常判定方法)が適用されるエンジンシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムの制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、異常判定に際に用いられる閾値と燃料タンクの充填率との関係を示すマップであって、
図3(a)は空間容積閾値(V
TH1、V
TH2)と充填率との関係、
図3(b)は圧力閾値(P
TH1、P
TH2)と充填率との関係、
図3(c)は、圧力減少速度閾値((d/dt)(P
TH1)、(d/dt)(P
TH2))と充填率との関係を示す。
【
図4】
図4は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムの制御フロー図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムにおいて、最終的にパージシステムおいて異常ありと判定する場合のタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムにおいて、最終的にパージシステムおいて異常なしと判定する場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[エンジンシステムの基本構成]
図1は、本実施形態のパージシステムの異常判定システム(異常判定方法)が適用されるエンジンシステムの全体構成を示す図である。本実施形態のパージシステムの異常判定システムは、自動車等の車両に搭載されるものである。
図1に示すように、エンジンシステムは、エンジン1、吸気通路2、エアクリーナ21、過給器22、スロットルバルブ23、燃料タンク5を備える。
【0011】
吸気通路2は、エンジン1の燃焼室に外気を供給する通路である。
【0012】
エアクリーナ21は、吸気通路2の開口部に配置され、外気に含まれる異物を除去して、当該異物が除去された外気を吸気通路2に導入する。
【0013】
過給器22は、エンジン1の排ガスにより回転するタービン(不図示)と、タービンの回転に伴い回転して外気をエンジン1側に供給するコンプレッサ(不図示)とを含む。
【0014】
スロットルバルブ23は、ドライバのアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)に基づいて外気の流量を調整する。
【0015】
またエンジンシステムに組み込まれるパージシステムは、キャニスタ3、外気導入通路4、外気遮断弁41、ベーパ通路6、パージ通路7、パージポンプ71、パージ弁72を備える。
【0016】
ベーパ通路6は、キャニスタ3と燃料タンク5の上部とを連通する。
【0017】
キャニスタ3は、ベーパ通路6を介して燃料タンク5の上部に連通し、燃料タンク5からベーパ通路6を経由して流入する気化燃料を一時的にキャニスタ3内の充填材料(例えば活性炭)に捕集するものである。
【0018】
外気導入通路4は、キャニスタ3と外気とを連通する。
【0019】
外気遮断弁41は、後述のように気化燃料を吸気通路2に供給する際は外気導入通路4を開放しているが、パージシステムの異常判定を実行する際に外気導入通路4を閉止する。
【0020】
パージ通路7は、キャニスタ3と吸気通路2(エアクリーナ21と過給器22の間となる位置)とを連通する。よって、ベーパ通路6、キャニスタ3、パージ通路7は、気化燃料を燃料タンク5から過給器22(吸気通路2)に供給する供給通路10を形成する。
【0021】
パージポンプ71は、パージ通路7に配置されている。パージポンプ71は、外気遮断弁41が解放された状態で駆動すると外気導入通路4から外気をキャニスタ3に導入し、当該外気が充填材料に捕集された気化燃料を押し出し、気化燃料とともにパージ通路7を通過して吸気通路2(エンジン1の燃焼室)に導入される。
【0022】
パージ弁72は、パージ通路7のパージポンプ71よりも下流側に配置されている。パージ弁72は通常、パージ通路7を解放しているが、後述のパージシステムの異常判定を行う場合は所定の開度にまで開度が絞られる。これにより、異常判定を行う間においてパージ弁72(パージポンプ71)から流出する気化燃料の流量を略一定にすることができる。なお、パージ弁72が解放であっても、異常判定を行う間においてパージ弁72(パージポンプ71)から流出する気化燃料の流量が略一定であれば、パージ弁72は省略してもよい。
【0023】
圧力センサ8は、パージ通路7内の圧力を検知する。なお、パージ通路7はキャニスタ3を介してベーパ通路6に連通している。よって、パージ通路7内の圧力はベーパ通路6内の圧力に対応する。
【0024】
図示は省略するが、本実施形態では、燃料タンク5に充填された液体燃料の充填率を検知するレベルゲージセンサを含む。レベルゲージセンサは、例えば液体燃料の液面に浮くフロートの高さをセンサ値として検知することで液体燃料の充填率を検知する。
【0025】
なお、液体燃料が揺さぶられている場合に液体燃料の液面の振幅に連動してフロートが高さ方向に振幅するが、フロートの高さ方向の振幅に連動してレベルゲージセンサのセンサ値も振幅する。
【0026】
コントローラ9は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータであり、車両の制御装置の一部を構成する。また、コントローラ9は、本実施形態のパージシステムの異常判定システム(異常判定方法)を実行するためのプロブラムに基づいて、各構成要素(例えばパージポンプ71、パージ弁72、外気遮断弁41)を適宜制御する。また、コントローラ9には、圧力センサ8が検知する圧力、レベルゲージセンサが検知するセンサ値(液体燃料の充填率)が入力される。
【0027】
本実施形態のパージシステムの異常判定システムでは、パージポンプ71を駆動した状態で外気遮断弁41を閉止する前の状態と閉止した後の状態の差(外気遮断弁41を閉止することで推定可能なパージ通路7に関連する物理量)に基づいてベーパ通路6又はパージ通路7の詰まりを検出する異常判定を実行する。
【0028】
例えば外気遮断弁41を閉止してから所定時間経過するまでのパージポンプ71の流量(F)と、外気遮断弁41を閉止する前のパージ通路7の圧力(P0)と外気遮断弁41を閉じてから当該所定時間経過したときの圧力(PC)に基づいて燃料タンク5(気相領域)、ベーパ通路6、キャニスタ3、パージ通路7(パージポンプ71よりも上流側の部分)の空間容積を第1の診断パラメータとして推定する。ここで空間容積はK×流量(F)/(P0-PC)により推定できる。ここでKは任意定数であり、実験により予め定める。また流量(F)はパージポンプ71の回転数と前記所定時間の積により推定できる。
【0029】
例えばベーパ通路6に詰まりが発生している場合、空間容積は、燃料タンク5(気相領域)の成分が存在しなくなる分だけ小さくなり、それが圧力(PC)の低下に反映される。よって、推定させる空間容積が所定の閾値よりも小さい場合はパージ通路7又はベーパ通路6に詰まりが発生していると判断できる。
【0030】
ここで、空間容積における燃料タンク5(気相領域)の成分は、燃料タンク5に充填される液体燃料の充填率が高くなるほど小さくなる。従って、空間容積の比較対象となる閾値は液体燃料の充填率が高くなるほど低くなるように設定される。
【0031】
ところで、キャニスタ3に捕集された気化燃料を吸気通路2に供給する際のパージポンプ71の出力は比較的低く抑えられている。よって、その出力を維持した状態で外気遮断弁41を閉止してもパージ通路7において十分な圧力低下量が得られず、詰まりの有無を明確に識別することが困難な場合がある。この場合空間容積用の閾値を適宜設定し、当該閾値よりも低い値が算出されたとしても詰まりが発生していない場合も含まれる。従って、当該閾値(第1閾値)は、少なくとも詰まりが発生していないと判断できる空間容積(圧力低下)の下限となる値に設定し、推定された空間容積(第1の診断パラメータ)と第1閾値とを対比し、空間容積が第1閾値以上となる第1領域に含まれる場合は異常なしと判定し、第1閾値よりも低い第2領域に含まれる場合は異常がある虞がある、すなわち異常ありとの仮判定(詰まりが一応発生しているとの判定)を行う。
【0032】
一方、パージポンプ71の出力を上昇させるとパージ通路7において十分な圧力低下量が得られるので詰まりの有無を明確に識別するための閾値(第2閾値)を設定することができる。このとき第2閾値は第1閾値よりも低い値に設定できる。この場合、空間容積を第2の診断パラメータとして推定して、空間容積と第2閾値とを対比し、空間容積が第2閾値以上であれば異常なしと判定し、第2閾値よりも低い場合は異常ありとの判定を行うことができる。
【0033】
例えばパージポンプ71の出力が上記のように低出力に設定し第1の診断パラメータ(推定値)として空間容積(VC1)を適用した場合、システム(ベーパ通路6及びパージ通路7)が正常であるときの第1の診断パラメータの分布範囲と、システム(ベーパ通路6又はパージ通路7)が異常であるときの第1の診断パラメータの分布範囲がそれぞれ広がることで両者の一部が互いに重なる。このとき、システムが正常であるときに取り得る第1の診断パラメータの最小値が、システムが異常であるときに取り得る第1の診断パラメータの最大値よりも低くなる。よって、システムの異常時にシステムが正常と誤判断することを回避するために、第1閾値(VTH1)は、システムが異常時に取り得る第1の診断パラメータの最大値よりも高い値に設定される。
【0034】
一方、パージポンプ71の出力を上記のように高出力に設定し第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、システム(ベーパ通路6及びパージ通路7)が正常であるときの第2の診断パラメータの分布範囲と、システム(ベーパ通路6又はパージ通路7)が異常であるときの第2の診断パラメータの分布範囲がそれぞれ狭まることで両者が互いに重なることはない。すなわち、システムが正常であるときに取り得る第1の診断パラメータの最小値が、システムが異常であるときに取り得る第1の診断パラメータの最大値よりも高くなる。従って、第2閾値(VTH2)を第1閾値(VTH1)と同じ値に設定してもシステムの異常判定の誤判断を回避できる。なお、第2閾値(VTH2)は、第1閾値(VTH1)よりも低い値であって、システムが異常であるときに取り得る第2の診断パラメータの最大値よりも高い値に設定することも可能である。
【0035】
以上より、本実施形態では、1回目の異常判定において推定された空間容積(VC1)が第1閾値(VTH1)以上の場合は異常なしと判定し、当該空間容積(VC1)が第1閾値(VTH1)よりも小さい場合は異常ありとの仮判定をして2回目の異常判定を実行する。2回目の異常判定は、パージポンプ71の出力(回転数)を上昇させ且つ空間容積の閾値を第1閾値(VTH1)よりも値の小さな第2閾値(VTH2)に設定して実行し、2回目に推定された空間容積(VC2)が第2閾値(VTH2)以上の大きさの場合は異常なしと判定し、当該空間容積(VC2)が第2閾値(VTH2)よりも低い場合は供給通路10に異常あり(ベーパ通路6又はパージ通路7に詰まりがあった)と本判定する。
【0036】
よって、1回目の判定で異常なしと判定される場合は、パージポンプ71の出力(回転数)を上昇させる必要はないので、その分電力消費を低減できる。
【0037】
上記のように、本実施形態では、異常判定で用いる診断パラメータ(物理量)として空間容積(VC)を適用するが、その他の診断パラメータとして外気遮断弁41を閉じてから所定時間経過したときに圧力センサ8が検知する圧力(PC)と、外気遮断弁41を閉じてから圧力センサ8が検知する圧力(PC)の減少速度((d/dt)(PC))(圧力(PC)の時間微分)が適用される。
【0038】
診断パラメータ(物理量)として外気遮断弁41を閉止してから所定時間経過後の圧力(PC)を適用した場合、1回目の異常判定において測定された圧力(PC1)(第1の診断パラメータ)が第1閾値(PTH1)以上の大きさの場合は異常なしと判定し、当該圧力(PC1)が第1閾値(PTH1)よりも低い大きさの場合は異常ありとの仮判定をして2回目の異常判定を実行する。2回目の異常判定は、パージポンプ71の出力(回転数)を上昇させ且つ圧力の閾値を第1閾値(PTH1)よりも値の小さな第2閾値(PTH2)に設定して実行し、2回目に測定された圧力(PC2)(第2の診断パラメータ)が第2閾値(PTH2)以上の大きさの場合は異常なしと判定し、当該圧力(PC2)が第2閾値(PTH2)よりも低い大きさの場合は供給通路10に異常ありと本判定する。
【0039】
診断パラメータ(物理量)として外気遮断弁41を閉止後の圧力(PC)の減少速度((d/dt)(PC))を適用した場合、1回目の異常判定において測定された減少速度((d/dt)(PC1))(第1の診断パラメータ)が第1閾値((d/dt)(PTH1))以下の大きさの場合は異常なしと判定し、当該減少速度((d/dt)(PC1))が第1閾値(PTH1)よりも大きい場合は異常ありとの仮判定をして2回目の異常判定を実行する。2回目の異常判定は、パージポンプ71の出力(回転数)を上昇させ且つ減少速度の閾値を第1閾値((d/dt)(PTH1))よりも値の大きな第2閾値((d/dt)(PTH2))に設定して実行し、2回目に測定された減少速度((d/dt)(PC2))(第2の診断パラメータ)が第2閾値(PTH2)以下の大きさの場合は異常なしと判定し、当該減少速度((d/dt)(PC2))が第2閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きい場合は供給通路10に異常ありと本判定する。
【0040】
なお、本実施形態の異常判定は、エンジン1が駆動し且つ車両が走行しているときにも実行可能である。これにより異常判定を実行可能な機会を増やすことができる。また、液体燃料の揺れが大きい場合は、液体燃料がベーパ通路6に入り込んでベーパ通路6を閉止し、上記の診断パラメータの算出及び測定が困難となり、パージシステムが実際には「異常なし」であっても「異常あり」と判定されるおそれがある。そこで、本実施形態では、レベルゲージセンサが検知するセンサ値の振幅が所定の上限値を超えた場合、すなわち燃料タンク5内の液体燃料の揺れが所定の上限値以上の場合には、液体燃料がベーパ通路6を閉止するおそれがあると判断して、異常判定が禁止される。これにより異常判定の誤判定を低減できる。
【0041】
[制御ブロック]
図2は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムの制御ブロック図である。
図3は、異常判定に際に用いられる閾値と燃料タンク5の充填率との関係を示すマップであって、
図3(a)は空間容積閾値(V
TH1、V
TH2)と充填率との関係、
図3(b)は圧力閾値(P
TH1、P
TH2)と充填率との関係、
図3(c)は、圧力減少速度閾値((d/dt)(P
TH1)、(d/dt)(P
TH2))と充填率との関係を示す。
【0042】
本実施形態のパージシステムの異常判定システム(異常判定方法)を実行するため、コントローラ9は、診断許可条件判定部901、診断開始判定部902、カウンタ903、外気遮断弁制御部904、パージ弁制御部905、診断パラメータ算出部906、閾値算出部907、診断判定部908、診断ステージ切替部909、パージポンプ制御部910、診断結果判定部911を含む。
【0043】
診断許可条件判定部901は、初期状態では診断許可条件フラグ(NO)を出力している。診断許可条件判定部901は、例えばエンジン1の起動を示すイグニッション信号(IGN)が入力されると、その後所定の条件が成立する(例えばエンジン1の回転数、パージポンプ71の回転数がそれぞれ所定の回転数に到達する)と診断許可条件フラグ(OK)を出力する。診断許可条件判定部901は、診断許可条件フラグ(OK)を出力後、所定時間(圧力(P0)を計測するための時間)を経過すると診断許可条件フラグ(NO)を出力する。
【0044】
カウンタ903は、診断許可条件判定部901が出力する診断許可条件フラグ(OK)が診断許可条件フラグ(NO)に切り替わると、カウントアップを開始し、フルカウントとなるとキャリー(FULL)を出力するとともにカウント値をリセットする。なお、カウントアップを開始してからフルカウントになるまでの時間は、例えば後述の空間容積を算出するため必要な所定時間(
図5の時刻t3-時刻t2)である。
【0045】
診断開始判定部902は、初期状態では診断開始フラグ(NO)を出力するが、診断許可条件判定部901が出力する診断許可条件フラグ(NO)が診断許可条件フラグ(OK)に切り替わると、診断開始フラグ(OK)を出力する。
【0046】
診断開始判定部902は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力されている場合、診断許可条件判定部901が出力する診断許可条件フラグ(NO)が診断許可条件フラグ(OK)に切り替わると、その切り替わるタイミングから所定時間(パージポンプ71の出力(回転数)を上昇させてから出力(回転数)が収束するまでの時間)経過後に診断開始フラグ(OK)を出力する。
【0047】
診断開始判定部902は、カウンタ903からキャリー(FULL)が入力されると診断開始フラグ(NO)を出力する。
【0048】
診断パラメータ算出部906は、診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(NO)が診断開始フラグ(OK)に切り替わると(
図5の時刻t1)、圧力センサ8が検知する圧力(P
0)を測定する。その後診断許可条件判定部901が出力する診断許可条件フラグ(OK)が診断許可条件フラグ(NO)に切り替わると(
図5の時刻t2)、圧力(P
0)の情報を記憶し、圧力(P
C1)の測定を開始する。ここで圧力(P
0)は、前記の時刻t1から時刻t2の間で測定された最大値となる。
【0049】
外気遮断弁制御部904は、初期状態で外気遮断弁41を開放している。外気遮断弁制御部904は、診断許可条件判定部901が出力する診断許可条件フラグ(OK)が診断許可条件フラグ(NO)に切り替わると外気遮断弁41を閉止する制御(CLOSE)を実行し、その後カウンタ903からキャリー(FULL)が入力されると外気遮断弁41を開放する制御(OPEN)を実行する。
【0050】
パージ弁制御部905は、初期状態でパージ弁72を開放している。診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(NO)が診断開始フラグ(OK)に切り替わるとパージ弁72を所定の開度に絞る制御(NARROW)を実行する。その後パージ弁制御部905は診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(OK)が診断開始フラグ(NO)に切り替わるとパージ弁72を開放する制御(OPEN)を実行する。
【0051】
診断パラメータ算出部906は、診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(OK)が診断開始フラグ(NO)に切り替わると(
図5の時刻t3)、当該切り替わったときの圧力(P
C1)を記憶する。
【0052】
第1の診断パラメータとして空間容積を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、空間容積(VC1)を算出して診断判定部908に出力する。また、第1の診断パラメータとして圧力(PC1)を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、圧力(PC1)を診断判定部908に出力する。さらに、第1の診断パラメータとして圧力(PC1)の減少速度を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、減少速度((d/dt)(PC1))を診断判定部908に出力する。なお、減少速度は(P0-PC1(時刻t3))/(時刻t3-時刻t2)により算出してもよく、また時刻t2直後の圧力(PC1)の時間微分を算出してもよい。
【0053】
診断パラメータ算出部906は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力された場合、圧力(PC1)の代わりに圧力(PC2)を測定・記録する。そして、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、空間容積(VC2)を算出して診断判定部908に出力する。また、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、圧力(PC2)を診断判定部908に出力する。さらに、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度を適用する場合、診断パラメータ算出部906は、減少速度((d/dt)(PC2))を診断判定部908に出力する。なお、減少速度は(P0-PC2(時刻t3))/(時刻t3-時刻t2)により算出してもよく、また時刻t2直後の圧力(PC2)の時間微分を算出してもよい。
【0054】
閾値算出部907は、診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(NO)が診断開始フラグ(OK)に切り替わると診断パラメータと比較する第1閾値(TH1)を診断判定部908に出力する。
【0055】
第1の診断パラメータとして空間容積(V
C1)を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(a)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて空間容積閾値(V
TH1)を算出し、当該空間容積閾値(V
TH1)を診断判定部908に出力する。
【0056】
第1の診断パラメータとして圧力(P
C1)を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(b)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて圧力閾値(P
TH1)を算出し、当該圧力閾値(P
TH1)を診断判定部908に出力する。
【0057】
第1の診断パラメータとして圧力の減少速度((d/dt)(P
C1))を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(c)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて減少速度閾値((d/dt)(P
TH1))を算出し、当該減少速度閾値((d/dt)(P
TH1))を診断判定部908に出力する。
【0058】
閾値算出部907は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力された場合において、診断開始判定部902が出力するフラグ(NO)がフラグ(OK)に切り替わると診断パラメータと比較する第2閾値(TH2)を診断判定部908に出力する。
【0059】
第2の診断パラメータとして空間容積(V
C2)を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(a)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて空間容積閾値(V
TH2)を算出し、当該空間容積閾値(V
TH2)を診断判定部908に出力する。
【0060】
第2の診断パラメータとして圧力(P
C2)を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(b)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて圧力閾値(P
TH2)を算出し、当該圧力閾値(P
TH2)を診断判定部908に出力する。
【0061】
第2の診断パラメータとして圧力(P
C2)の減少速度((d/dt)(P
C2))を適用する場合、閾値算出部907は、
図3(c)に示すマップ及び燃料タンク5の充填率に基づいて減少速度閾値((d/dt)(P
TH2))を算出し、当該減少速度閾値((d/dt)(P
TH2))を診断判定部908に出力する。
【0062】
診断判定部908は、診断開始判定部902が出力する診断開始フラグ(OK)が診断開始フラグ(NO)に切り替わると第1の診断パラメータと第1閾値とを比較して異常なし(OK)の判定、又は異常あり(NG)の仮判定(異常の虞ありの判定)を行い、第2の診断パラメータと第2閾値とを比較して異常なし(OK)の判定、又は異常あり(NG)の本判定を行う。
【0063】
診断ステージ切替部909が診断パラメータ算出部906及び閾値算出部907に診断ステージ信号(1)を出力していない場合において、第1の診断パラメータとして空間容積(VC1)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された空間容積(VC1)と、閾値算出部907から入力された空間容積閾値(VTH1)とを比較し、空間容積(VC1)が空間容積閾値(VTH1)以上の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、空間容積(VC1)が空間容積閾値(VTH1)よりも小さい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0064】
同様に、第1の診断パラメータとして圧力(PC1)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された圧力(PC1)と、閾値算出部907から入力された圧力閾値(PTH1)(第1閾値)とを比較し、圧力(PC1)が圧力閾値(PTH1)以上の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、圧力(PC1)が圧力閾値(PTH1)よりも小さい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0065】
同様に、第1の診断パラメータとして圧力(PC1)の減少速度(d/dt)(PC1)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された減少速度((d/dt)(PC1))と、閾値算出部907から入力された減少速度閾値((d/dt)(PTH1))(第1閾値)とを比較し、減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(VTH1))以下の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(PTH1))よりも大きい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0066】
診断ステージ切替部909が診断パラメータ算出部906及び閾値算出部907に診断ステージ信号(1)を出力している場合において、第1の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された空間容積(VC2)と、閾値算出部907から入力された空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)とを比較し、空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)以上の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)よりも小さい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0067】
同様に、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された圧力(PC2)と、閾値算出部907から入力された圧力閾値(PTH2)(第2閾値)とを比較し、圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)以上の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)よりも小さい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0068】
同様に、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度(d/dt)(PC2)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された減少速度((d/dt)(PC2))と、閾値算出部907から入力された減少速度閾値((d/dt)(PTH2))(第2閾値)とを比較し、減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(VTH2))以下の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【0069】
なお、診断判定部908は、外気遮断弁41を閉止してから所定時間(時刻t3-時刻t2)を経過する前に圧力(PC1、PC2)が所定の下限値(第1閾値(PTH1)及び第2閾値(PTH2)よりも低い値)に到達した場合は、異常あり(NG)との仮判定を行う。
【0070】
診断ステージ切替部909は、初期状態として診断ステージ信号(0)を保持し、これをパージポンプ制御部910に出力している。
【0071】
診断ステージ切替部909は、診断ステージ信号(0)をパージポンプ制御部910に出力している状態で診断判定部908からフラグ(OK)が入力されると診断ステージ信号(0)を診断結果判定部911に出力する。
【0072】
診断ステージ切替部909は、診断ステージ信号(0)を保持している状態で診断判定部908からフラグ(NG)が入力されると保持する診断ステージ信号(0)を診断ステージ信号(1)に切り替え、診断ステージ信号(1)を診断パラメータ算出部906、閾値算出部907、パージポンプ制御部910、及び診断結果判定部911に出力する。
【0073】
診断ステージ切替部909は、診断ステージ信号(1)を保持している状態で診断判定部908からフラグ(OK)が入力されると保持している診断ステージ信号(1)を診断ステージ信号(0)に切り替え、診断ステージ信号(0)をパージポンプ制御部910及び診断結果判定部911に出力する。
【0074】
診断ステージ切替部909は、診断ステージ信号(1)を保持している状態で診断判定部908からフラグ(NG)が入力されると保持している診断ステージ信号(1)を診断ステージ信号(2)に切り替え、診断ステージ信号(2)をパージポンプ制御部910及び診断結果判定部911に出力する。
【0075】
パージポンプ制御部910は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(0)が入力される間、パージポンプ71の出力(回転数)を通常出力(LOW)により駆動する。ここで通常出力(LOW)とはキャニスタ3に捕集された気化燃料をエンジン1に供給するのに必要な最初限度の出力である。
【0076】
パージポンプ制御部910は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力されると、パージポンプ71の出力(回転数)を通常出力(LOW)よりも高い高出力(HIGH)により駆動する。
【0077】
パージポンプ制御部910は、パージポンプ71の出力を高出力(HIGH)で駆動させているときに、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(0)又は診断ステージ信号(2)が入力されると、パージポンプ71の出力(回転数)を通常出力(LOW)に戻す。
【0078】
診断結果判定部911は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(0)が入力されると異常なし(OK)と本判定してフラグ(END)を診断許可条件判定部901に出力する。
【0079】
診断結果判定部911は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力されると検査継続(CONT.)と判定してフラグ(CONT.)を診断許可条件判定部901に出力する。
【0080】
診断結果判定部911は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(2)が入力されると異常あり(NG)と本判定してフラグ(END)を診断許可条件判定部901に出力する。
【0081】
診断許可条件判定部901は、診断結果判定部911からフラグ(CONT.)が入力されると2回目の異常判定を開始する。すなわち、診断許可条件判定部901は、診断結果判定部911からフラグ(CONT.)が入力されると即時、又は所定時間経過後に出力するフラグ(NO)をフラグ(OK)切り替えて診断開始判定部902、カウンタ903、及び外気遮断弁制御部904に出力し、その後所定時間経過後に出力するフラグ(OK)をフラグ(NO)に切り替え、フラグ(NO)をカウンタ903及び外気遮断弁制御部904に出力する。
【0082】
診断許可条件判定部901は、診断結果判定部911からフラグ(END)が入力されると異常判定を停止する。
【0083】
[制御フロー]
図4は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムの制御フロー図である。
【0084】
ステップS101において、コントローラ9(診断許可条件判定部901)は診断許可条件が成立したか否かを判断しYESであればステップS102に移行し、NOであればステップS101に留まる。ここで、診断許可条件の成立は、診断許可条件判定部901にイグニッション信号(IGN)が入力されたか否かで判断する。
【0085】
ステップS102において、コントローラ9(診断許可条件判定部901、診断開始判定部902)は、1回目の異常判定を開始する。
【0086】
ステップS103において、コントローラ9(診断判定部908)は、異常判定において異常あり(NG)の仮判定をしたか否かを判断し、YES(第1の診断パラメータが第2領域に含まれる)であればステップS104に移行し、NO(第1の診断パラメータが第1領域に含まれる)であればステップS109に移行する。
【0087】
ステップS104において、コントローラ9(閾値算出部907、パージポンプ制御部910)は、診断パラメータと比較対象となる閾値を第1閾値(TH1)から第2閾値(TH2)に切り替え、パージポンプ71の出力を通常出力(LOW)から高出力(LOW)に設定する。
【0088】
ステップS105において、コントローラ9は、パージポンプ71の出力を通常出力(LOW)から高出力(LOW)に設定されてから所定時間が経過したか否かを判断し、YESであればステップS106に移行し、NOであればステップS105に留まる。
【0089】
ステップS106において、コントローラ9(診断許可条件判定部901、診断開始判定部902)は、2回目の異常判定を開始する。
【0090】
ステップS107において、コントローラ9(診断判定部908)は、異常判定において異常あり(NG)の仮判定をしたか否かを判断し、YES(第2の診断パラメータが第4領域に含まれる)であればステップS108に移行し、NO(第2の診断パラメータが第3領域に含まれる)であればステップS109に移行する。
【0091】
ステップS108において、コントローラ9(診断結果判定部911)は供給通路10に異常あり(NG)と本判定しENDに移行する。
【0092】
ステップS109において、コントローラ9(診断結果判定部911)は供給通路10に異常なし(NG)と本判定しENDに移行する。
【0093】
[第1のタイムチャート]
図5は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムにおいて、最終的にパージシステムおいて異常ありと判定する場合のタイムチャートである。初期状態として、外気遮断弁41は開放され、パージポンプ71の出力は通常出力(LOW)に設定され、パージ弁72は開放されている。また診断ステージ信号切替部は診断ステージ信号(0)を保持している。
【0094】
時刻t1において、診断許可条件フラグが「NO」から「OK」に切り替わると、診断開始フラグも「NO」から「ON」に切り替わり、パージ弁72の開度も所定の開度(NARROW)に絞られており、パージ通路7の圧力が比較的短時間で上昇する。なお、時刻t1から時刻t2の間において圧力(P0)が測定される。
【0095】
時刻t2において、診断許可条件フラグが「OK」から「NO」に切り替わると外気遮断弁41は開放した状態(OPEN)から閉止した状態(CLOSE)に移行する。これにより、パージ通路7(供給通路10)の圧力(PC1)は単調に減少する。
【0096】
時刻t3において、診断開始フラグが「OK」から「NO」に切り替わる時点で圧力(PC1)が測定され、1回目の診断判定タイミングとなる。
【0097】
ここで、第1の診断パラメータとして空間容積(VC1)を適用する場合、1回目に算出した空間容積(VC1)が空間容積閾値(VTH1)(第1閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。第1の診断パラメータとして圧力(PC1)を適用する場合、1回目に測定した圧力(PC1)が圧力閾値(PTH1)(第1閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。第1の診断パラメータとして圧力(PC1)の減少速度(d/dt)(PC1)を適用する場合、1回目に算出した減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(PTH1))よりも大きいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。
【0098】
上記の判定により、診断ステージ信号が「0」から「1」に切り替わり、診断継続を示すフラグ(CONT.)が出力されることで診断が継続される。
【0099】
また、時刻t3において外気遮断弁41は閉止した状態(CLOSE)から解放した状態(OPEN)となり、且つパージ弁72も開放した状態(OPEN)となり、圧力(Vc)は時刻t1以前の状態に戻る。
【0100】
時刻t4において、診断許可条件フラグが再び「NO」から「OK」に切り替わると、パージポンプ71の出力が通常出力(LOW)から高出力(HIGH)に設定される。
【0101】
時刻t5において、診断開始フラグが「NO」から「OK」に切り替わり、パージ弁72の開度も所定の開度(NARROW)に絞られ、パージ通路7の圧力が比較的短時間で上昇する。時刻t5においてパージポンプ71の出力は時刻t3から上昇し高出力(HIGH)により駆動している。なお、時刻t5から時刻t6の間において圧力(P0)が再び測定される。
【0102】
時刻t6において、診断許可条件フラグが「OK」から「NO」に切り替わると外気遮断弁41は開放した状態(OPEN)から閉止した状態(CLOSE)に移行する。これにより、パージ通路7(供給通路10)の圧力(PC2)は単調に減少する。
【0103】
時刻t7において、診断開始フラグが「OK」から「NO」に切り替わる時点で圧力(PC2)が測定され、2回目の診断判定タイミングとなる。
【0104】
ここで、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、2回目に算出した空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、2回目に測定した圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度(d/dt)(PC2)を適用する場合、2回目に算出した減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。
【0105】
上記の判定により、診断ステージ信号が「1」から「2」に切り替わり、診断終了を示すフラグ(END)が出力されることで診断を終了する。また診断ステージ信号の最終値が「2」であるのでパージシステム(供給通路10)に異常あり(NG)との本判定を行うことができる。
【0106】
また、時刻t3において外気遮断弁41は閉止した状態(CLOSE)から解放した状態(OPEN)となり、且つパージ弁72も開放した状態(OPEN)となり、圧力(Vc)は時刻t1以前の状態に戻る。
【0107】
なお、時刻t3で異常あり(NG)の1回目の仮判定を行っているので、2回目の異常判定を行うため、パージ弁72を所定の開度に絞られた状態(NARROW)に維持してもよい。
【0108】
[第2のタイムチャート]
図6は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムにおいて、最終的にパージシステムおいて異常なしと判定する場合のタイムチャートである。初期状態及び時刻t1から時刻t6の状態は
図5に示す状態と同様である。
【0109】
時刻t7において、診断開始フラグが「OK」から「NO」に切り替わる時点で圧力(PC2)が測定され、2回目の診断判定タイミングとなる。
【0110】
ここで、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、2回目に算出した空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)以上と判定し、異常なし(OK)との判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、2回目に測定した圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)(第2閾値)以上と判定し、異常なし(NG)との判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度(d/dt)(PC2)を適用する場合、2回目に算出した減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))以下と判定し、異常なし(OK)との判定を行う。
【0111】
上記の判定により、診断ステージ信号が「1」から「0」に切り替わり、診断終了を示すフラグ(END)が出力されることで診断を終了する。また診断ステージ信号の最終値が「0」であるのでパージシステム(供給通路10)に異常なし(OK)との本判定を行うことができる。
【0112】
[本実施形態の効果]
本実施形態のパージシステムの異常判定方法は、燃料タンク5に接続するベーパ通路6と、燃料タンク5からベーパ通路6を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタ3と、キャニスタ3に吸着した気化燃料を内燃機関(エンジン1)に供給するためのパージポンプ71を備えるパージ通路7と、キャニスタ3を外気に連通させるとともに外気遮断弁41が取り付けられた外気導入通路4と、を含むパージシステムにおけるベーパ通路6又はパージ通路7の異常を判定するパージシステムの異常判定方法であって、パージポンプ71が駆動した状態で外気遮断弁41を閉止することで推定可能な物理量であって、第1閾値を境界としてベーパ通路6及びパージ通路7に異常がないと判定される第1領域とベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞があると判定される第2領域に分類可能な第1の診断パラメータを推定し、第1の診断パラメータが第2領域に含まれる場合において、外気遮断弁41を一旦解放するとともにパージポンプ71の出力を第1の診断パラメータの推定時の出力よりも高い高出力に設定するとともに外気遮断弁41を閉止し、パージポンプ71の出力を高出力に設定した状態で外気遮断弁41を閉止することで推定可能な物理量であって、第2閾値を境界としてベーパ通路6及びパージ通路7に異常がないと判定される第3領域とベーパ通路6又はパージ通路7に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定し、第2の診断パラメータが第4領域に含まれる場合に、ベーパ通路6又はパージ通路7に異常があると判定する。
【0113】
上記方法により、1回目の異常判定において、第1の診断パラメータが第1領域に含まれる場合にベーパ通路6及びパージ通路7は異常なしと判定され、第2領域に含まれる場合にベーパ通路6又はパージ通路7は異常がある虞があると判定される。ここで、1回目の異常判定で異常なし(OK)と判定された場合、パージポンプ71の出力を上昇させることはないので、その分電力消費を抑制できる。2回目の異常判定において、第2の診断パラメータが第3領域に含まれる場合にベーパ通路6及びパージ通路7は異常なしと判定され、第4領域に含まれる場合にベーパ通路6又はパージ通路7に異常ありと判定される。2回目の異常判定では、パージポンプ71の出力を上昇させるのでベーパ通路6及びパージ通路7において異常の有無を高精度に検知できる。
【0114】
本実施形態において、物理量は、パージポンプ71を駆動した状態で外気遮断弁41を閉止してから所定時間を経過するまでのパージポンプ71の流量(F)と、外気遮断弁41を閉じる前のパージ通路7のパージポンプ71よりもキャニスタ3側となる部分の圧力(P0)と外気遮断弁41を閉じてから所定時間を経過後の圧力(PC)との差分と、に基づいて推定される空間容積(VC)であり、第1の診断パラメータ(VC1)が第1閾値(VTH1)よりも小さい場合に第2領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞あり)と判定し、第2の診断パラメータ(VC2)が第2閾値(VTH2)よりも小さい場合に第4領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常がある)と判定する。
【0115】
上記方法により、異常判定における第1の診断パラメータとして空間容積(VC1)を用い、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を用いるので、供給通路10の異常の有無をさらに高精度に検知できる。
【0116】
本実施形態において、空間容積(VC)は、差分(P0-PC)に対する流量(F)の割合(K×F/(P0-PC))に基づいて算出する。
【0117】
上記方法により、空間容積(VC)を簡易に算出できる。
【0118】
本実施形態において、物理量は、パージポンプ71が駆動した状態で外気遮断弁41を閉止してから所定時間を経過後のパージ通路7のパージポンプ71よりもキャニスタ3側となる部分の圧力(PC)であり、第1の診断パラメータ(PC1)が第1閾値(PTH1)よりも小さい場合に第2領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞あり)と判定し、第2の診断パラメータ(PC2)が第2閾値(PC2)よりも小さい場合に第4領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常がある)と判定する。
【0119】
上記方法により、異常判定における第1の診断パラメータとして圧力(PC1)を用い、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を用いるので、簡易な方法で供給通路10の異常の有無を検知できる。
【0120】
本実施形態において、物理量は、パージポンプ71を駆動した状態で外気遮断弁41を閉止した後のパージ通路7のパージポンプ71よりもキャニスタ3側となる部分の圧力(PC)の減少速度((d/dt)(PC))であり、第1の診断パラメータ((d/dt)(PC1))が第1閾値((d/dt)(PTH1))よりも大きい場合に第2領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞あり)と判定し、第2の診断パラメータ((d/dt)(PC2))が第2閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きい場合に第4領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常がある)と判定する。
【0121】
上記方法により、異常判定における診断パラメータとして圧力(PC)の減少速度(d/dt)(PC)を用いるので、診断パラメータとして空間容積(VC)又は圧力(PC)を適用した場合に比べて異常判定のタイミングを早めることができる。
【0122】
本実施形態において、内燃機関(エンジン1)が車両に搭載されている場合において、内燃機関(エンジン1)が駆動し且つ車両が停止しているとき、又は内燃機関(エンジン1)が駆動し且つ車両が走行しているときに外気遮断弁41を閉止して第1の診断パラメータを推定する。
【0123】
上記方法により、車両が停止しているときのみならず、車両が走行しているときにも異常判定を行うので、異常判定を行う機会を増やすことができる。
【0124】
本実施形態において、燃料タンク5内の燃料(液体燃料)の揺れが所定の上限値以上の場合に第1の診断パラメータの推定を禁止する。
【0125】
上記方法により、異常判定の誤判定を低減できる。
【0126】
本実施形態において、第1閾値(VTH1、PTH1、(d/dt)(PTH1))及び第2閾値(VTH2、PTH2、(d/dt)(PTH2))を、燃料タンク5内の燃料(液体燃料)の充填率が高くなるほど低く設定する。
【0127】
上記方法により、異常判定の精度を高めることができる。
【0128】
本実施形態において、外気遮断弁41を閉じてから所定時間(時刻t3-時刻t2)を経過する前に圧力(PC)が所定の下限値(第1閾値(PTH1)及び第2閾値(PTH2)よりも低い圧力値)に到達した場合には、ベーパ通路6又はパージ通路7に異常があると判定する。
【0129】
上記方法により、処理負担を軽減できる。
【0130】
本実施形態のパージシステムの異常判定システムは、燃料タンク5に接続するベーパ通路6と、燃料タンク5からベーパ通路6を介して送られた気化燃料を捕集するキャニスタ3と、キャニスタ3に吸着した気化燃料を内燃機関(エンジン1)に供給するためのパージポンプ71を備えるパージ通路7と、キャニスタ3を外気に連通させるとともに外気遮断弁41が取り付けられた外気導入通路4と、を含むパージシステムにおけるベーパ通路6又はパージ通路7の異常を判定するパージシステムの異常判定システムであって、パージポンプ71が駆動した状態で外気遮断弁41を閉止することで推定可能な物理量であって、第1閾値を境界としてベーパ通路6及びパージ通路7に異常がないと判定される第1領域とベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞があると判定される第2領域に分類可能な第1の診断パラメータを推定し、第1の診断パラメータが第2領域に含まれる場合において、外気遮断弁41を一旦解放するとともにパージポンプ71の出力を第1の診断パラメータの推定時の出力よりも高い高出力に設定するとともに外気遮断弁41を閉止し、パージポンプ71の出力を高出力に設定した状態で外気遮断弁41を閉止することで推定可能な物理量であって、第2閾値を境界としてベーパ通路6及びパージ通路7に異常がないと判定される第3領域とベーパ通路6又はパージ通路7に異常があると判定される第4領域に分類可能な第2の診断パラメータを推定し、第2の診断パラメータが第4領域に含まれる場合に、ベーパ通路6又はパージ通路7に異常があると判定する。
【0131】
上記構成により、1回目の異常判定において、第1の診断パラメータが第1領域に含まれる場合にベーパ通路6及びパージ通路7は異常なしと判定され、第2領域に含まれる場合にベーパ通路6又はパージ通路7は異常がある虞があると判定される。ここで、1回目の異常判定で異常なし(OK)と判定された場合、パージポンプ71の出力を上昇させることはないので、その分電力消費を抑制できる。2回目の異常判定において、第2の診断パラメータが第3領域に含まれる場合にベーパ通路6及びパージ通路7は異常なしと判定され、第4領域に含まれる場合にベーパ通路6又はパージ通路7に異常ありと判定される。2回目の異常判定では、パージポンプ71の出力を上昇させるのでベーパ通路6及びパージ通路7において異常の有無を高精度に検知できる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 エンジン、3 キャニスタ、4 外気導入通路、41 外気遮断弁、5 燃料タンク、6 ペーパ通路、7 パージ通路、71 パージポンプ、9コントローラ、10 供給通路
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
一方、パージポンプ71の出力を上記のように高出力に設定し第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、システム(ベーパ通路6及びパージ通路7)が正常であるときの第2の診断パラメータの分布範囲と、システム(ベーパ通路6又はパージ通路7)が異常であるときの第2の診断パラメータの分布範囲がそれぞれ狭まることで両者が互いに重なることはない。すなわち、システムが正常であるときに取り得る第2の診断パラメータの最小値が、システムが異常であるときに取り得る第2の診断パラメータの最大値よりも高くなる。従って、第2閾値(VTH2)を第1閾値(VTH1)と同じ値に設定してもシステムの異常判定の誤判断を回避できる。なお、第2閾値(VTH2)は、第1閾値(VTH1)よりも低い値であって、システムが異常であるときに取り得る第2の診断パラメータの最大値よりも高い値に設定することも可能である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
同様に、第1の診断パラメータとして圧力(PC1)の減少速度((d/dt)(PC1))を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された減少速度((d/dt)(PC1))と、閾値算出部907から入力された減少速度閾値((d/dt)(PTH1))(第1閾値)とを比較し、減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(PTH1))以下の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(PTH1))よりも大きい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
診断ステージ切替部909が診断パラメータ算出部906及び閾値算出部907に診断ステージ信号(1)を出力している場合において、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された空間容積(VC2)と、閾値算出部907から入力された空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)とを比較し、空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)以上の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)よりも小さい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
同様に、第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度((d/dt)(PC2))を適用する場合、診断判定部908は、診断パラメータ算出部906から入力された減少速度((d/dt)(PC2))と、閾値算出部907から入力された減少速度閾値((d/dt)(PTH2))(第2閾値)とを比較し、減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))以下の場合は異常なしを示すフラグ(OK)を診断ステージ切替部909に出力し、減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きい場合は異常ありの仮判定を示すフラグ(NG)を診断ステージ切替部909に出力する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
診断結果判定部911は、診断ステージ切替部909から診断ステージ信号(1)が入力されると診断継続(CONT.)と判定してフラグ(CONT.)を診断許可条件判定部901に出力する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
ステップS104において、コントローラ9(閾値算出部907、パージポンプ制御部910)は、診断パラメータと比較対象となる閾値を第1閾値(TH1)から第2閾値(TH2)に切り替え、パージポンプ71の出力を通常出力(LOW)から高出力(HIGH)に設定する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
ステップS105において、コントローラ9は、パージポンプ71の出力を通常出力(LOW)から高出力(HIGH)に設定されてから所定時間が経過したか否かを判断し、YESであればステップS106に移行し、NOであればステップS105に留まる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
ステップS109において、コントローラ9(診断結果判定部911)は供給通路10に異常なし(OK)と本判定しENDに移行する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
[第1のタイムチャート]
図5は、本実施形態のパージシステムの異常判定システムにおいて、最終的にパージシステムおいて異常ありと判定する場合のタイムチャートである。初期状態として、外気遮断弁41は開放され、パージポンプ71の出力は通常出力(LOW)に設定され、パージ弁72は開放されている。また
診断ステージ切替部909は診断ステージ信号(0)を保持している。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
時刻t1において、診断許可条件フラグが「NO」から「OK」に切り替わると、診断開始フラグも「NO」から「OK」に切り替わり、パージ弁72の開度も所定の開度(NARROW)に絞られており、パージ通路7の圧力が比較的短時間で上昇する。なお、時刻t1から時刻t2の間において圧力(P0)が測定される。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
ここで、第1の診断パラメータとして空間容積(VC1)を適用する場合、1回目に算出した空間容積(VC1)が空間容積閾値(VTH1)(第1閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。第1の診断パラメータとして圧力(PC1)を適用する場合、1回目に測定した圧力(PC1)が圧力閾値(PTH1)(第1閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。第1の診断パラメータとして圧力(PC1)の減少速度((d/dt)(PC1))を適用する場合、1回目に算出した減少速度((d/dt)(PC1))が減少速度閾値((d/dt)(PTH1))よりも大きいと判定し、異常あり(NG)との1回目の仮判定を行う。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
また、時刻t3において外気遮断弁41は閉止した状態(CLOSE)から解放した状態(OPEN)となり、且つパージ弁72も開放した状態(OPEN)となり、圧力(Pc)は時刻t1以前の状態に戻る。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
ここで、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、2回目に算出した空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、2回目に測定した圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)よりも小さいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度((d/dt)(PC2))を適用する場合、2回目に算出した減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))よりも大きいと判定し、異常あり(NG)との2回目の仮判定を行う。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
また、時刻t3において外気遮断弁41は閉止した状態(CLOSE)から解放した状態(OPEN)となり、且つパージ弁72も開放した状態(OPEN)となり、圧力(Pc)は時刻t1以前の状態に戻る。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
ここで、第2の診断パラメータとして空間容積(VC2)を適用する場合、2回目に算出した空間容積(VC2)が空間容積閾値(VTH2)(第2閾値)以上と判定し、異常なし(OK)との判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)を適用する場合、2回目に測定した圧力(PC2)が圧力閾値(PTH2)(第2閾値)以上と判定し、異常なし(OK)との判定を行う。第2の診断パラメータとして圧力(PC2)の減少速度((d/dt)(PC2))を適用する場合、2回目に算出した減少速度((d/dt)(PC2))が減少速度閾値((d/dt)(PTH2))以下と判定し、異常なし(OK)との判定を行う。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
本実施形態において、物理量は、パージポンプ71を駆動した状態で外気遮断弁41を閉止してから所定時間を経過するまでのパージポンプ71の流量(F)と、外気遮断弁41を閉じる前のパージ通路7のパージポンプ71よりもキャニスタ3側となる部分の圧力(P
0
)と外気遮断弁41を閉じてから所定時間を経過後の圧力(PC)との差分と、に基づいて推定される空間容積(VC)であり、第1の診断パラメータ(VC1)が第1閾値(VTH1)よりも小さい場合に第2領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞あり)と判定し、第2の診断パラメータ(VC2)が第2閾値(VTH2)よりも小さい場合に第4領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常がある)と判定する。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
本実施形態において、物理量は、パージポンプ71が駆動した状態で外気遮断弁41を閉止してから所定時間を経過後のパージ通路7のパージポンプ71よりもキャニスタ3側となる部分の圧力(PC)であり、第1の診断パラメータ(PC1)が第1閾値(PTH1)よりも小さい場合に第2領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常の虞あり)と判定し、第2の診断パラメータ(PC2)が第2閾値(P
TH2
)よりも小さい場合に第4領域に含まれる(ベーパ通路6又はパージ通路7に異常がある)と判定する。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
上記方法により、異常判定における診断パラメータとして圧力(PC)の減少速度((d/dt)(PC))を用いるので、診断パラメータとして空間容積(VC)又は圧力(PC)を適用した場合に比べて異常判定のタイミングを早めることができる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
1 エンジン、3 キャニスタ、4 外気導入通路、41 外気遮断弁、5 燃料タンク、6 ベーパ通路、7 パージ通路、71 パージポンプ、9コントローラ、10 供給通路