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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118277
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】注出具
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/14 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A47G19/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024628
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 有里子
(72)【発明者】
【氏名】河田 香織
【テーマコード(参考)】
3B001
【Fターム(参考)】
3B001AA21
3B001BB04
3B001CC28
3B001DA02
3B001DB01
(57)【要約】
【課題】一定の量の液体を注出できるとともに、必要に応じて一定の量よりも多量の液体を注出できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、内部に液体を貯める本体部10と、使用者が液体を注出するときに手で持つための取手部20と、本体部10から側方に向かって突出する注出部40と、を備えるドリップ用ポット100である。注出部40は、使用者が取手部20を持ってドリップ用ポット100を傾けたときに所定の傾斜角度の範囲において一定の量の液体が注出され、更に傾けたときに一定の量よりも多量の液体が注出されるように複数段階で液体を注出可能に構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯める本体部と、
使用者が液体を注出するときに手で持つための取手部と、
前記本体部から側方に向かって突出する注出部と、を備える注出具であって、
前記注出部は、
使用者が前記取手部を持って該注出具を傾けたときに所定の傾斜角度の範囲において一定の量の液体が注出され、更に傾けたときに前記一定の量よりも多量の液体が注出されるように複数段階で液体を注出可能に構成されることを特徴とする注出具。
【請求項2】
前記注出部は、
該注出具を傾けたときに側面視において下側となる部分が上側に向かって凸の円弧の形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注出具。
【請求項3】
前記注出部は、
前記円弧に沿った一定の範囲において、前記円弧の中心を通るように切断した断面形状に段部が形成されているとともに前記断面形状のうち前記段部よりも下側が略同一形状であることを特徴とする請求項2に記載の注出具。
【請求項4】
前記注出部は、
前記断面形状のうち前記段部よりも下側に略V字状の溝部が形成され、
前記溝部は、
前記一定の範囲において、幅が略同一であるとともに高さが略同一であることを特徴とする請求項3に記載の注出具。
【請求項5】
前記注出部は、使用者が前記取手部を中心に該注出具を傾けたときに、前記円弧の接線が略水平となるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の注出具。
【請求項6】
前記注出部は、上側が開口しており、前記本体部に推奨する液体の量を貯めたときに、液体が前記注出部まで到達し、前記注出部まで到達した液体を上側から視認可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の注出具。
【請求項7】
前記取手部は、使用者が握ったときの人差し指と接触する部位が前記本体部の上端よりも上側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の注出具。
【請求項8】
前記注出具は、ドリップ用ポットであることを特徴とする請求項1または2に記載の注出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器等に液体を注ぐためのポット等の注出具が知られている。
特許文献1には、平口縁の隅部に凹溝が形成された注ぎ口を有するポットが開示されている。特許文献1のポットの注ぎ口は、液体を沸かすことで生じる薄膜が平口縁を内方から覆ったとしても凹溝を通って液体を注出できることから、液体の流れを維持することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-108273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポットの注ぎ口は、使用者が液体を注出している最中に手振れ等によりポットの傾きが変化した場合、一定の量の液体を注出することができず、傾きに応じて注ぎ口から注出される液体の量が変動してしまうという問題がある。一方、使用者は、一律に一定の量の液体を注出したいと所望するとは限られず、一度に多くの量の液体を注出したい場合も想定される。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、一定の量の液体を注出できるとともに、必要に応じて一定の量よりも多量の液体を注出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内部に液体を貯める本体部と、使用者が液体を注出するときに手で持つための取手部と、前記本体部から側方に向かって突出する注出部と、を備える注出具であって、前記注出部は、使用者が前記取手部を持って該注出具を傾けたときに所定の傾斜角度の範囲において一定の量の液体が注出され、更に傾けたときに前記一定の量よりも多量の液体が注出されるように複数段階で液体を注出可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一定の量の液体を注出できるとともに、必要に応じて一定の量よりも多量の液体を注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のドリップ用ポットの構成を示す側面図である。
図2】ドリップ用ポットの構成を示す平面図である。
図3】ドリップ用ポットの構成を示す正面図である。
図4】ドリップ用ポットの構成を示す斜視図である。
図5】ドリップ用ポットの構成を示す断面図である。
図6】注出部の構成を示す断面図である。
図7】注出部の断面を拡大した拡大図である。
図8】ドリップ用ポットを傾斜させたときの断面図である。
図9】ドリップ用ポットを傾斜させたときの断面図である。
図10】第2の実施形態の注出部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る注出具がドリップ用ポットである場合の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、ドリップ用ポットとは、コーヒーを抽出するドリップに収容されたコーヒー豆の粉末に湯を注ぐときに使うポットである。コーヒーを淹れる場合において、いわゆるペーパドリップ方式では、はじめにコーヒー粉末の全体に少量の湯を注ぐことによりコーヒー粉末を蒸らす蒸らし工程と、蒸らしたコーヒー粉末全体に蒸らし工程よりも多量の湯を注ぐことにより抽出する抽出工程とがある。なお、蒸らし工程では、多量の湯が注がれてしまうと抽出工程の抽出が十分に行えないために、コーヒー粉末の全体に均一に行き渡るように、一定の量の湯が注がれることが好ましい。本実施形態のドリップ用ポットは、蒸らし工程および抽出工程において複数段階で湯を注出することができる。
【0009】
<第1の実施形態>
図1はドリップ用ポット100(以下、ポット100という)の構成の一例を示す側面図である。図2はポット100の構成の一例を示す平面図である。図3はポット100の構成の一例を示す正面図である。図4はポット100を前斜め上側から見た斜視図である。図5は、図2のI-I線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。なお、各図では後述する注出部40側を前とし、取手部20側を後として図示している。また、前後方向に直交する水平方向のうち一方側を右とし、他方側を左として図示している。
ポット100は、本体部10と、取手部20と、蓋部30と、注出部40とを備える。
【0010】
本体部10は、注出部40から注出させる湯(液体)を貯めておく部位である。本体部10は、上方が開口する容器の形状である。具体的に、本体部10は外形が略円錐台形状であり、内部に湯を貯めるための貯水空間が形成される。本体部10は、IHコンロやガスコンロ等で加熱されることにより貯水空間に貯められた水が温められる。本実施形態の本体部10は、推奨する貯水容量が例えば600mlであり、コーヒーを4杯分、淹れることができる大きさである。図5では、推奨する容量の湯を貯めたときの液面Fを二点鎖線で示している。ここで、推奨する容量とは、本体部10に貯留する液体の適正容量である。推奨する容量は、ポット100を販売するときにポット100を包装するパッケージやタグ等に表記することができる。また、推奨する容量は、本体部10の側面に目盛りが付されている場合には、最も上側の目盛りの位置に液体を貯めたときの容量とすることができる。ただし、推奨する容量は、満水容量であってもよい。
【0011】
図2図5に示すように、本体部10のうち前側の側面には、注出部40と連通する複数(ここでは12個)の孔11が形成されている。図3に示すように、複数の孔11は、正面視において注出部40と本体部10とが重なり合う領域のうち主に下側に位置している。図5に示すように、複数の孔11の一部は、本体部10に推奨する容量の湯を貯めたときの液面Fよりも下側に位置する。したがって、本体部10に貯められた湯は孔11を通して注出部40まで到達する。一方、孔11が形成された本体部10の側面は、本体部10からの湯が注出部40に一度に流動しないように堰き止める堰き止め部として機能する。
なお、本体部10は、例えば、IHコンロあるいはガスコンロ等で加熱されることで水を温めることができる材質が用いられる。本実施形態の本体部10は鉄製あるいはステンレス製であるが、その他の材質であってもよい。
【0012】
取手部20は、本体部10内に貯めた湯を注出部40から注出するときに、使用者が手で持つ部位である。取手部20は、本体部10を挟んで注出部40の反対側の位置であって、本体部10の後側の側面に固定される。取手部20は側面視において、下方に開口する略アーチ状である。取手部20は、接続部21と、取手本体22とを有する。
【0013】
接続部21は、本体部10と取手本体22とを接続する部位である。接続部21は、本体部10の外側面に接続された位置から上側に向かって延出する略板状である。本実施形態の接続部21は鉄製あるいはステンレス製であるが、その他の材質であってもよい。
取手本体22は、使用者が実際に手で握る部位である。取手本体22は、接続部21の上端から上斜め後側に延出した後に曲がって下側に向かって延出する略鉤状である。また、取手本体22は、握り易くするために延出方向に対して直交する方向に切断した断面形状が略楕円形状である。図5では、使用者が取手本体22を握ったときの人差し指から小指までを二点鎖線で示している。使用者の人差し指は、取手本体22の曲部23の内側面に接するように位置する。本実施形態の取手本体22は本体部10からの熱が伝わり難くするために合成樹脂製であるが、その他の材質であってもよい。
【0014】
使用者が注出部40から湯を注出する場合には注出部40が下側になるようにポット100全体を傾斜させる。このとき、ポット100は、取手本体22の曲部23の内側面と人差し指との接点P(図5を参照)を中心にして、本体部10内に貯めた湯の重力によって傾斜することにより、湯が注出される姿勢となる。したがって、使用者はポット100の傾斜を維持させるための力を軽減させることができる。このように、本体部10内に貯めた湯の重力によってポット100を傾斜させるために、本実施形態の取手本体22の曲部23の内側面は本体部10の上端よりも上方に位置している。また、ポット100全体が大型化しないように、取手本体22の曲部23の内側面は蓋部30の上端よりも下方に位置している。
【0015】
蓋部30は、本体部10の上方の開口を閉塞する部位であり、本体部10に対して着脱可能である。蓋部30は、本体部10の上方の開口を上側から覆うことができる大きさの略円盤状である。なお、蓋部30は、本体部10に装着された状態では、注出部40を上側から覆わないように構成される。蓋部30は、蓋本体31と、摘み部33とを有する。
【0016】
蓋本体31は、下面から下側に向かって突出する略円筒状の嵌合部32を本体部10の開口に対して嵌め込むことにより取り付けられる。本実施形態の蓋本体31は鉄製あるいはステンレス製であるが、その他の材質であってもよい。
摘み部33は、蓋部30を本体部10に対して着脱するときに使用者が手で摘まむ部位である。摘み部33は、蓋本体31の中央から上方に延出する略軸状である。本実施形態の摘み部33は蓋本体31からの熱が伝わり難くするために合成樹脂製であるが、その他の材質であってもよい。
【0017】
注出部40は、本体部10に貯留する湯をポット100から外部に注出させる部位である。注出部40は、本体部10の前面から側方(前方)に向かって突出している。注出部40は、本体部10を挟んで取手部20の反対側の位置であって、本体部10の前側の側面に固定される。
注出部40の前端が湯を外部に注出させるための注ぎ口41である。注出部40は側面視において、上端が前後方向に沿って直線状であって、下側に頂点をする略三角形状である。注出部40の上端と本体部10の上端とは高さの位置が一致する。一方、注出部40の下端は、本体部10の下端の高さの位置よりも高い。
【0018】
注出部40は、左右一対の側壁42a、42bにより構成される。側壁42aと側壁42bとは前斜め下端で互いに連結されている一方、上端では互いに左右に離れている。したがって、注出部40は上側に開口部43を有している。また、図2の平面視において、注出部40の開口部43は本体部10側から注ぎ口41側に向かうにしたがって先細りになっている。注出部40の上側に開口部43を有することにより、推奨する容量の湯を本体部10に貯めたときに使用者は開口部43を通して注出部40まで到達した湯を視認可能である。また、側壁42aと側壁42bとは後端が本体部10の前側の側面に溶接等により結合されることにより、本体部10の前側の側面に固定される。側壁42aと側壁42bとの間は本体部10からの湯が注ぎ口41まで流れるための流路となる。
なお、注出部40の側壁42aと側壁42bは、1枚の鉄製あるいはステンレス製の板部材をプレス加工することにより構成することができるが、その他の材質あるいは加工方法であってもよい。
【0019】
ここで、本実施形態の注出部40は、使用者が取手部20を持ってポット100を傾けたときに少なくとも所定の傾斜角度の範囲において一定の量の湯が注出され、更に傾けたときに当該一定の量よりも多量の湯が注出されるように2段階で湯を注出可能に構成される。
【0020】
以下、具体的に、所定の傾斜角度の範囲において一定の量の湯が注出され、更に傾けたときに当該一定の量よりも多量の湯を注出できる構成について説明する。
本実施形態の注出部40は、側面視において前側斜め下部分が円弧の形状に形成される。注出部40の前側斜め下部分は、使用者がポット100を傾けたときに注出部40の下側となる部分であり、上側に向かって凸の円弧の形状に形成される。なお、具体的に、注出部40の前側斜め下部分とは、後述する底部44、段部45および溝部46の部分である。したがって、底部44、段部45および溝部46の部分が、ポット100を傾けたときに上側に向かって凸の円弧の形状に形成される。このように注出部40の前側斜め下部分を円弧の形状にすることにより、注出部40から湯を注出させるときに注出部40がドリッパーと接触することを抑制できる。
【0021】
図6(a)~(h)は、注出部40を切断した断面図であり、それぞれ図1に示すa-a線~h-h線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。ここで、a-a線~h-h線は、それぞれの位置における円弧の中心を通る直線である。a-a線は垂直に近い直線であり、h-h線になるにしたがって徐々に水平に近い直線となる。
図6(a)~(h)に示すように、注出部40の断面形状は、側壁42aと側壁42bが互いに連結された底部44から開口部43側に向かうにしたがって徐々に離れるように拡開している。
【0022】
ここで、図6のうち図6(c)、(d)、(e)に示す注出部40の断面形状は段状に形成されている。具体的には、側壁42aと側壁42bは、底部44から開口部43に向かうにしたがって徐々に離れていくが途中で急に離れるように拡開する段部45を有する。段部45は、側壁42aと側壁42bとの間の間隔が急に変化する部位である。
注出部40は、段部45よりも底部44側(下側)に略V字状の溝部46が構成され、段部45を含む開口部43側(上側)に拡開部47が構成される。
【0023】
溝部46は、底部44から段部45に向かうにしたがって一定の割合で側壁42aと側壁42bとが離れるように形成される部位である。一方、拡開部47は、段部45により側壁42aと側壁42bとが急に離れるように形成された後、開口部43に向かうにしたがって一定の割合で側壁42aと側壁42bとが離れるように形成される部位である。溝部46のみを経由して湯が流れる場合には流路面積が小さいことから少量の湯を注出させることができ、溝部46および拡開部47を経由して湯が流れる場合には拡開部47により流路面積が大きくなることから多量の湯を注出させることができる。
【0024】
本実施形態の溝部46は、少なくとも注出部40の円弧に沿った一定の範囲において略同一形状である。具体的には、図6(c)、(d)、(e)に示す溝部46は略同一形状である。更に、図6(c)、(d)、(e)以外であっても、図1に示すc-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の溝部46も略同一形状である。
図7は、図6(d)の拡大図である。図7に示すように溝部46の高さをHaとし、溝部46の幅をWaとすると、図1に示すc-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の溝部46の何れも高さHaが略同一であり、幅Waが略同一である。
注出部40において一定の範囲に亘って形成される略同一形状の溝部46は、注出部40から一定の量の湯を注出させる機能を有する。
【0025】
一方、拡開部47は、図6(c)、(d)、(e)に示すように同一形状ではない。
図7に示すように、拡開部47の高さをHbとし、拡開部47の幅をWbとすると、図1に示すc-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の溝部46の何れも高さHbが異なり、幅Wbが異なる。具体的には、図1に示すc-c線からe-e線になるにしたがって、拡開部47の高さHbが高くなるとともに、幅Wbが広くなる。
注出部40において溝部46の開口部43側に形成される拡開部47は、当該一定の量よりも多量の湯を注出させる機能を有する。
なお、注出部40は、図6(a)、(b)、(f)、(g)、(h)に示す断面形状では上述したような段部45を有しておらず、それぞれ同一形状ではない。ただし、注出部40は、図6(a)、(b)、(f)、(g)、(h)に示す断面形状でも、図6(c)、(d)、(e)と同様に、段部45と、略同一形状の溝部46とを有していてもよい。
【0026】
また、本実施形態では図1に示すように側面視において、注出部40の前側斜め下部分に形成される円弧の曲率半径は少なくともc-c線からe-e線までの範囲では略同一であり、c-c線からe-e線までの円弧の中心は図1に示す中心Oである。ここで、上述したように、c-c線~e-e線の範囲では注出部40を切断した断面形状の溝部46は略同一形状である。したがって、略同一形状の溝部46が形成される範囲では、注出部40の前側斜め下部分の円弧の曲率半径が略同一であり、円弧の中心は略同一である。
なお、本実施形態では注出部40におけるデザイン性の向上および注ぎ口41をなるだけ前側に位置させるために、円弧の曲率半径はe-e線からh-h線(本体部10)側になるにしたがって大きくなっている。ただし、円弧の曲率半径はc-c線からe-e線までの範囲以外であっても略同一であってもよい。また、本実施形態では、使用者が取手部20の曲部23の接点Pを中心にポット100を傾けたときに、円弧の接線が略水平となるように構成される。
【0027】
次に、上述したように構成されるポット100において、注出部40から湯を注出させる場合について説明する。
図8は、接点Pを中心にポット100を揺動させて第1の傾斜角度(角度α)にしたときの断面図である。ここでは、使用者が蒸らし工程において一定の量の湯を注出させようとしているものとする。
使用者は、接点Pを中心にして、本体部10内に貯めた湯の重力によってポット100を傾斜させる。図8では、図1で示したc-c線が略垂直になるまで傾斜させた状態を示している。ここでは、液面Fは、注出部40の段部45よりも低い位置であるために、本体部10からの湯は図6(c)に示す注出部40の拡開部47を経由せずに溝部46のみを経由して溝部46が満水になった状態で注出されている。図8に示すように、溝部46の円弧の接線は、一定の量の湯が注出されているときの湯の液面の位置(高さ)となる。このように、注出部40の拡開部47を経由しておらず溝部46のみを経由する湯は、蒸らし工程において適切な量が注ぎ口41から注出される。
【0028】
このとき、使用者は、注出部40の開口部43を通して注出部40まで到達した湯を上側から視認できる。したがって、使用者は、液面Fの位置を常に確認しながらポット100の傾斜角度を調整することができる。したがって、ポット100を一度に傾斜させ過ぎて多量の湯を注出させてしまうことを防止することができる。
【0029】
ここで、使用者が注ぎ口41から湯を注出している状態から手振れが生じてしまいポット100の傾斜角度が変化した場合について説明する。
ここでは、前後方向(矢印A方向)の手振れによって、c-c線が略垂直になる傾斜角度からe-e線が略垂直になる傾斜角度までの範囲(所定の傾斜角度の範囲)よりも小さい角度範囲でポット100が揺動したものとする。上述したように、c-c線~e-e線の範囲の任意の位置で切断した断面形状の溝部46は略同一形状であるために、注出部40の溝部46を経由して流動する湯の量はほぼ変化しない。したがって、使用者が所定の傾斜角度の範囲内(所定の傾斜角度の範囲内)において注ぎ口41から湯を注出している状態から、前後方向に手振れが生じても一定の量の湯を注出することができる。
【0030】
また、ポット100が矢印Aに示すように揺動することで、本体部10内の湯全体が一度に注出部40に向かって流動しようとする場合がある。このような場合であっても、本体部10内の湯は孔11を通してしか注出部40まで到達することができない。すなわち、本体部10のうち孔11が形成された上側の側面が、本体部10から注出部40に向かって一体となって流動しようとする湯を堰き止めることができるために、ポット100の傾斜角度が変化した場合であっても一定の量の湯を注出することができる。
【0031】
図9は、接点Pを中心にポット100を揺動させて第1の傾斜角度よりも更に傾けた第2の傾斜角度(角度β)にしたときの断面図である。ここでは、使用者が蒸らし工程が終了して抽出工程において多量の湯を注出させようとしているものとする。
使用者は、接点Pを中心にして、本体部10内に貯めた湯の重力を利用して取手部20を傾けることによってポット100を更に傾斜させる。図9では、液面Fが注出部40の段部45よりも高い位置であるために、本体部10からの湯は、例えば、図6(d)に示す注出部40の溝部46および拡開部47を経由して流動させることができる。このように、注出部40の溝部46および拡開部47を経由する湯は、拡開部47により流路面積が大きくなっていることから、注出工程において蒸らし工程よりも多量な量が注ぎ口41から注出される。
したがって、上述した所定の傾斜角度の範囲とは、溝部46が満水となり一定の量の湯が注出され始める角度から、液面が段部45を超えて当該一定の量よりも多量の湯を注出され始めるまでの角度である。なお、本体部10に貯留する湯の量に応じて所定の傾斜角度の範囲は変化する。本実施形態では、本体部10に推奨する容量の湯を貯留した場合、所定の傾斜角度の範囲は図8に示す角度αにおいて概ね30度から40度である。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、使用者は取手部20を持ってポット100を傾けたときに所定の傾斜角度の範囲では前後方向に手振れが生じても一定の量の液体を注出することができる。また、使用者は、必要に応じて更にポット100を傾けることにより、当該一定の量よりも多量の液体が注出されるように2段階で液体を注出可能である。また、本実施形態では、本体部10に貯留する液体の量に関わらず、2段階の液体の量を注出することができる。すなわち、溝部46が満水となり一定の量の液体が注出され始める角度から液面が段部45を超えるまでの角度で注出される液体が1段階目の液体の量であり、液面が段部45を超えてから注出される液体が2段階目の液体の量に相当する。
特に、コーヒーを淹れる場合に本実施形態のポット100を用いることにより、蒸らし工程では少量の一定の量の湯を注出することができる。このとき、前後方向に手振れが生じても、一定の量の湯を注出し続けることができる。また、蒸らし工程が終了して注出工程では、ポット100を傾けることにより注出工程に適した多量の湯を注出することができる。
【0033】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では注出部40は、使用者が取手部20を持ってポット100を傾けたときに一定の量の湯が注出され、更に傾けたときに当該一定の量よりも多量の湯が注出されるように2段階で湯を注出可能に構成される場合について説明した。本実施形態では、複数、具体的には3段階で湯が注出可能である場合について説明する。
【0034】
図10は、第2の実施形態の注出部140を切断した断面図である。図10は、図1に示すd-d線に沿って切断して矢印方向から見た断面図に相当する図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一符号を付して適宜、説明を省略する。
【0035】
図10に示すように、注出部140の断面形状は段状に形成されている。具体的には、側壁142aと側壁142bは、底部44から開口部43に向かうにしたがって急に離れるように拡開する第1の段部145と、第1の段部145から開口部43に向かうにしたがって更に急に離れるように拡開する第2の段部148とを有する。第1の段部145、第2の段部148は、側壁142aと側壁142bとの間の間隔が急に変化する部位である。
【0036】
注出部140は、第1の段部145よりも底部44側(下側)に略V字状の溝部46が構成され、第1の段部145を含み第2の段部148を含まない開口部43側(上側)に第1の拡開部147が構成され、第2の段部148を含む開口部43側(上側)に第2の拡開部149が構成される。
【0037】
第1の拡開部147は、第1の段部145により側壁142aと側壁142bとが急に離れるように形成された後、第2の段部148に向かうにしたがって一定の割合で側壁142aと側壁142bとが離れるように形成される部位である。
第2の拡開部149は、第2の段部148により側壁142aと側壁142bとが急に離れるように形成された後、開口部43に向かうにしたがって一定の割合で側壁142aと側壁142bとが離れるように形成される部位である。
【0038】
溝部46のみを経由して湯が流れる場合には流路面積が小さいことから少量の湯を注出させることができ、溝部46および第1の拡開部147を経由して湯が流れる場合には中程度の量の湯を注出させることができ、溝部46、第1の拡開部147および第2の拡開部149を経由して湯が流れる場合には多量の湯を注出させることができる。
【0039】
本実施形態の溝部46および第1の拡開部147は、少なくとも一定の範囲において略同一形状である。具体的には、図1に示すc-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断したときに断面形状の溝部46および第1の拡開部147が略同一形状である。
【0040】
図10に示すように溝部46の高さをHaとし、溝部46の幅をWaとすると、図1に示すc-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の溝部46の何れも高さHaが略同一であり、幅Waが略同一である。注出部140において一定の範囲に亘って形成される略同一形状の溝部46は、注出部140から一定の量(少量)の湯を注出させる機能を有する。
【0041】
また、第1の拡開部147の高さをHb1とし、第1の拡開部147の幅をWb1とすると、c-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の第1の拡開部147の何れも高さHb1が略同一であり、幅Wb1が略同一である。注出部140において一定の範囲に亘って形成される略同一形状の第1の拡開部147は、注出部140から一定の量(中程度の量)の湯を注出させる機能を有する。
【0042】
一方、第2の拡開部149の高さをHb2とし、第2の拡開部149の幅をWb2とすると、c-c線からe-e線になるにしたがって、第2の拡開部149の高さHb2が高くなるとともに、幅Wb2が広くなる。第2の拡開部149は、一定の量(中程度の量)よりも多量の湯を注出させる機能を有する。
【0043】
上述したように構成される注出部140から湯を注出させる場合に、液面Fが注出部140の第1の段部145よりも低くなるようにポット100を傾けたときには、溝部46のみを経由して注出されることから少量の湯が注出される。また、c-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の溝部46は略同一形状であるために、前後方向に手振れが生じても一定の量(少量)の湯を注出することができる。
また、液面が注出部140の溝部46よりも高く、第2の段部148よりも低くなるようにポット100を更に傾けたときには、溝部46および第1の拡開部147を経由して注出されることから中程度の量の湯が注出される。また、c-c線~e-e線の範囲のうち任意の位置で切断した断面形状の第1の拡開部147は略同一形状であるために、前後方向に手振れが生じても一定の量(中程度の量)の湯を注出することができる。
一方、液面が注出部140の第2の段部148に至る位置あるいは第2の段部148よりも高くなるようにポット100を更に傾けたときには、溝部46、第1の拡開部147および第2の段部148を経由して注出されることから多量の湯が注出される。
【0044】
以上のように本実施形態によれば、使用者は取手部20を持ってポット100を傾けたときに所定の傾斜角度の範囲では前後方向に手振れが生じても一定の量(少量)の液体を注出することができ、更にポット100を傾けたときに一定の量(中程度の量)の液体を注出することができる。また、使用者は、必要に応じて更にポット100を更に傾けることにより、当該一定の量(中程度の量)よりも多量の液体が注出されるように3段階で液体を注出可能である。また、本実施形態では、本体部10に貯留する液体の量に関わらず、3段階の液体の量を注出することができる。
【0045】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上述した実施形態では、注出具がポット100(ドリップ用ポット)である場合について説明したが、この場合に限られず、液体を注出するものであればよい。例えば、注出具は、花器等に水を注ぎ入れる水差しであってもよく、コップ等に水を注ぎ入れるピッチャーであってもよい。
【0046】
上述した第1の実施形態では注出部40が2段階で液体を注出可能に構成され、第2の実施形態では注出部140が3段階で液体を注出可能に構成される場合について説明したが、この場合に限られない。注出部が、複数の段部を有することにより4段階以上で液体を注出可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
100:ドリップ用ポット(注出具) 10:本体部 20:取手部 30:蓋部 40、140:注出部 43:開口部 45:段部 46:溝部 145:第1の段部 148:第2の段部
図1
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図10