IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧 ▶ 株式会社加藤建設の特許一覧

<>
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図1
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図2
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図3
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図4
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図5
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図6
  • 特開-地盤改良体出来形管理方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118279
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】地盤改良体出来形管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024630
(22)【出願日】2023-02-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月24日 第19回地盤工学会関東支部発表会にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉志
(72)【発明者】
【氏名】田屋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山中 龍
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 健二
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 陽平
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040EA04
2D040GA00
(57)【要約】
【課題】出来形図を作成できる地盤改良体出来形管理方法を提供する。
【解決手段】地盤改良体出来形管理方法は、地盤Gを撹拌して地盤改良体を構築する撹拌機12Bに取付けた測量用ターゲット14の座標を所定時間毎に計測する工程と、所定時間毎の座標から撹拌機12Bによる改良範囲を特定して、地盤改良体の出来形図を作成する工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を撹拌して地盤改良体を構築する撹拌機に取付けた測量用ターゲットの座標を所定時間毎に計測する工程と、
前記所定時間毎の前記座標から前記撹拌機による改良範囲を特定して、前記地盤改良体の出来形図を作成する工程と、
を備えた地盤改良体出来形管理方法。
【請求項2】
前記測量用ターゲットは前記撹拌機の中心から位置をずらして取付けられており、
前記座標を前記撹拌機の中心座標に置き換え、
前記所定時間毎の前記中心座標の位置を平面図上にプロットし、
前記中心座標毎に前記撹拌機の平面形状を作図して、
前記出来形図を作成する、
請求項1に記載の地盤改良体出来形管理方法。
【請求項3】
前記中心座標毎に作図された前記撹拌機の平面形状が互いに重なるように、前記撹拌機の平面形状及び攪拌速度に基づいて前記所定時間を設定する、
請求項2に記載の地盤改良体出来形管理方法。
【請求項4】
前記測量用ターゲットはプリズムであり、
前記座標は、前記プリズムを照準できる位置に配置された3次元測量機を、前記所定時間毎に作業員が操作して測量される、請求項1に記載の地盤改良体出来形管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体出来形管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、機械撹拌式地盤改良工法において、地盤改良の品質と出来形の管理を一括して行う地盤改良工法の品質管理システムが記載されている。この品質管理システムでは、GNSSアンテナや可動部センサなどを用いて、撹拌混合装置の貫入位置、貫入深度、横行移動軌跡、鉛直掘進速度及び横行移動速度をリアルタイムでモニタリングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-89562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の品質管理システムでは、地盤改良時における撹拌機の横行移動速度や移動軌跡等をリアルタイムで管理することができる。しかし、地盤改良体を構築する場合は、撹拌機の位置等をリアルタイムで管理する以外にも、地盤改良体の出来形図を作成して、地盤改良範囲を事後的に確認できるようにすることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、出来形図を作成できる地盤改良体出来形管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の地盤改良体出来形管理方法は、地盤を撹拌して地盤改良体を構築する撹拌機に取付けた測量用ターゲットの座標を所定時間毎に計測する工程と、前記所定時間毎の前記座標から前記撹拌機による改良範囲を特定して、前記地盤改良体の出来形図を作成する工程と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の地盤改良体出来形管理方法では、撹拌機に取付けた測量用ターゲットの座標を所定時間毎に計測する。これにより、撹拌機が駆動した位置の実績を記録できる。
【0008】
そして、撹拌機の座標から撹拌機による改良範囲を特定して、地盤改良体の出来形図を作成する。これにより、地盤改良体の施工範囲を図面によって把握できる。また、出来形図は、撹拌機が駆動した位置の実績に基づいて作成されるため、信頼性が高い。
【0009】
請求項2の地盤改良体出来形管理方法は、請求項1に記載の地盤改良体出来形管理方法において、前記測量用ターゲットは前記撹拌機の中心から位置をずらして取付けられており、前記座標を前記撹拌機の中心座標に置き換え、前記所定時間毎の前記中心座標の位置を平面図上にプロットし、前記中心座標毎に前記撹拌機の平面形状を作図して、前記出来形図を作成する。
【0010】
請求項2に記載の地盤改良体出来形管理方法では、測量用ターゲットの座標を撹拌機の中心座標に置き換えて出来形図を作成する。このため、測量用ターゲットの位置を任意に設定できる。例えば、地盤改良材等の飛散の影響を受けない位置や測量用ターゲットの座標計測に支障がない位置に設定できる。
【0011】
また、撹拌機の中心座標毎に、撹拌機の平面形状を作図して出来形図を作成する。これにより、撹拌機が存在した場所の実績に基づいた出来形図が作成される。このため、出来形図の信頼性を向上できる。
【0012】
請求項3の地盤改良体出来形管理方法は、請求項2に記載の地盤改良体出来形管理方法において、前記中心座標毎に作図された前記撹拌機の平面形状が互いに重なるように、前記撹拌機の平面形状及び攪拌速度に基づいて前記所定時間を設定する。
【0013】
請求項3に記載の地盤改良体出来形管理方法では、撹拌機の中心座標毎に作図された撹拌機の平面形状が互いに重なるように、測量用ターゲットの座標を測定する所定時間が設定される。
【0014】
仮に撹拌機の中心座標毎に作図された撹拌機の平面形状が互いに重ならない場合は、重ならない部分が地盤改良されているか否かを確実に特定することは難しい。一方で、撹拌機の中心座標毎に作図された撹拌機の平面形状が互いに重なる場合は、確実に地盤改良されている範囲を特定できる。このため、出来形図の信頼性をさらに向上できる。
【0015】
請求項4の地盤改良体出来形管理方法は、請求項1に記載の地盤改良体出来形管理方法において、前記測量用ターゲットはプリズムであり、前記座標は、前記プリズムを照準できる基準点に配置された3次元測量機を、前記所定時間毎に作業員が操作して測量される。
【0016】
請求項4に記載の地盤改良体出来形管理方法は、プリズム及び三次元測量機を用いた作業員の作業により実施される。すなわち、大掛かりな設備や特殊な機器を用いずに出来形を把握できる。
【0017】
なお、請求項4の地盤改良体出来形管理方法は、請求項1~3の何れか1項に記載の地盤改良体出来形管理方法において、前記測量用ターゲットはプリズムであり、前記座標は、前記プリズムを照準できる位置に配置された3次元測量機を、前記所定時間毎に作業員が操作して測量されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、出来形図を作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法が適用される地盤改良体出来形管理システムを示す立面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法において地盤に撹拌機を貫入しようとしている状態を示す立面図であり、(B)は撹拌機を貫入した状態を示す立面図であり、(C)は撹拌機を地盤中で横行させている状態を示す立面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法において撹拌機を地盤中で横行させている状態を示す平面図であり、(B)は撹拌機の横行速度の一例を示す概念図であり、(C)は別の一例を示す概念図であり、(C)は比較例を示す概念図である。
図4】(A)は本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法において撹拌機の座標をプロットした状態を示す図であり、(B)は撹拌機の座標を線分で連結した状態を示す図であり、(C)は座標の位置毎に撹拌機の外形状を描画した状態を示す図であり、(D)は座標の位置毎に描画された撹拌機の外形状を包絡する包絡線を描画した状態を示す図である。
図5】撹拌機の座標の位置毎に撹拌機の外形状を描画する方法を示した図である。
図6】(A)は撹拌機の横行方向毎に描画された、撹拌機の座標を線分で連結した折れ線を示す図であり、(B)は撹拌機の横行方向毎に描画された撹拌機の外形線の包絡線を示す図であり、(C)は出来形図を示す図である。
図7】(A)は本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法をスラリー揺動攪拌工法に適用した変形例において、撹拌機を地盤へ貫入させる直前の状態を示す立面図であり、(B)は撹拌機を地盤へ貫入した状態を示す立面図であり、(C)は次に撹拌機を地盤へ貫入する直前の状態を示す立面図であり、(D)は撹拌機を地盤へ貫入した状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0021】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
<地盤改良体出来形管理システム>
本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法は、図1に示す地盤改良体出来形管理システム10に適用される。地盤改良体出来形管理システム10は、地盤改良機12、測量用ターゲット14、三次元測量機16及び変換機20を含んで構成される。
【0023】
(地盤改良機)
地盤改良機12は、バックホー12A及びバックホー12Aのアームの先端に取り付けられた撹拌機12Bを備えている。撹拌機12Bは、地盤Gを撹拌して地盤改良体を構築することができるトレンチャである。具体的には、撹拌機12Bは、セメントやセメント系固化材などの改良材をスラリー状に混練後、地盤に噴射しながら、攪拌翼を用いて原位置土と改良材とを撹拌混合し、固化することができる。
【0024】
(測量用ターゲット)
測量用ターゲット14は、撹拌機12Bに取り付けられたプリズムである。測量用ターゲット14は、撹拌機12Bの上端に固定した固定棒14Aの上端に固定されている。
【0025】
測量用ターゲット14は、撹拌機12Bが地盤Gを攪拌している間、地盤面GLより上方に位置するように取付けられる。また、測量用ターゲット14は、撹拌機12Bが地盤Gを攪拌している間、改良材や土などが掛からない位置に取り付けることが好ましい。
【0026】
詳しくは後述するが、図3(A)に示すように、測量用ターゲット14は撹拌機12Bの中心(平面視における中心)から位置をずらして取付けられている。
【0027】
(三次元測量機)
図1に示すように、三次元測量機16は、測量用ターゲット14を照準できる位置に配置されている。三次元測量機16は、測量用ターゲット14にレーザーを照射して、測量用ターゲット14の三次元座標を取得する。三次元測量機16は、図示しない通信装置を備えており、取得された三次元座標は、変換機20へ転送される。
【0028】
三次元測量機16が配置される位置は、複数の基準点を参照した任意の位置である。複数の基準点を参照することにより、三次元測量機16の位置を特定できる。例えば、以下を参照すればよい。
・2つの敷地境界基準点の座標
・当該2つの座標を結ぶ線分と、それぞれの座標と三次元測量機16とを結ぶ線分と、の角度
【0029】
なお、三次元測量機16が、取得した三次元座標のログを記録する記憶装置や記憶媒体を備えていれば、通信装置を備えていなくてもよい。すなわち、変換機20への測量用ターゲット14の三次元座標の転送は、任意の方法で実施できる。
【0030】
(変換機)
変換機20は、出来形図作成処理がプログラムされた装置である。出来形図作成処理では、三次元測量機16から転送された測量用ターゲット14の座標(本実施形態においては、高さ方向の座標を除く二次元座標)から、後述する方法によって地盤改良体の出来形図を作成する。
【0031】
<地盤改良体出来形管理方法>
(地盤改良方法)
地盤改良機12を用いた地盤改良は、トレンチャ式中層混合処理工法とも称される地盤改良方法である。この地盤改良方法では、まず、図2(A)、(B)に示すように、攪拌翼を回転させながら撹拌機12Bを地盤Gへ貫入する。
【0032】
そして、改良材を地盤に噴射しながら原位置土と改良材とを撹拌混合する。この際、図2(C)に示すように、撹拌機12Bを地盤Gへ貫入したまま、所定の速度で横行させながら攪拌する。
【0033】
図3(A)には、地盤改良対象領域Rが平面図で示されている。撹拌機12Bは、矢印N1で示すように、地盤G中で撹拌機12Bをバックホー12Aの本体に「近づく」方向(Y方向)へ横行させたあと、矢印N2で示すように、地盤G中で撹拌機12Bをバックホー12Aの本体から「遠ざかる」方向へ横行させる。
【0034】
「遠ざかる」方向へ横行させる際は、バックホー12Aの本体をキャタピラー(登録商標)に対して回転させて、撹拌機12Bを「近づく」方向に対して傾斜した角度で横行させる。
【0035】
そして、矢印N3で示すように、「近づく」方向と「遠ざかる」方向への横行を繰り返して、地盤改良対象領域Rの地盤Gを攪拌する。
【0036】
(出来形図作成方法)
出来形図は、上述した地盤改良方法によって改良された範囲を図示する図面である。施工管理者等は、出来形図を、地盤改良対象領域Rの設計上の位置及び形状と比較することにより、地盤改良が適切に実行されているか否かを管理できる。
【0037】
(座標計測工程)
出来形図を作成するためには、まず、作業員が、三次元測量機16を用いて、測量用ターゲット14の座標P1を所定時間毎に計測する。座標P1は平面座標であり、例えば三次元測量機16が設置された基準点O1からのX方向及びY方向の距離として計測される。
【0038】
測量用ターゲット14の座標P1を計測する「所定時間」は、撹拌機12Bの平面形状及び攪拌速度に基づいて決定される。撹拌機12Bの平面形状とは、撹拌機12Bの横行方向に沿う寸法W1である。
【0039】
ここで、横行速度をV、測量用ターゲット14の座標を計測する間隔(所定時間)をTとすると、図3(B)、(C)に示すように、所定時間毎の撹拌機12Bの移動距離はVTとなる。測量用ターゲット14の座標を計測する間隔は、この移動距離VTが、寸法W1以下となるように(VT≦W1となるように)決定される。すなわち、測量用ターゲット14の座標を計測する間隔Tは、(W1/V)以下の間隔とする。
【0040】
測量用ターゲット14の座標を計測する間隔Tが(W1/V)未満であれば、図3(B)に示すように、各計測時間における撹拌機12Bの外形が重なる。例えばW1=1[m]、V=0.2[m/min]の場合、間隔Tが5[min]未満(一例として3[min])であれば、各計測時間における撹拌機12Bの外形が重なる。
【0041】
また、測量用ターゲット14の座標を計測する間隔Tが(W1/V)であれば、図3(C)に示すように、各計測時間における撹拌機12Bの外形が連なる。例えばW1=1[m]、V=0.2[m/min]の場合、間隔Tが5[min]であれば、各計測時間における撹拌機12Bの外形が重なる。
【0042】
本発明においては、間隔Tを(W1/V)としてもよいが、測定誤差を考慮して、間隔Tは(W1/V)未満とすることが好ましい。
【0043】
一方、測量用ターゲット14の座標を計測する間隔Tが(W1/V)より大きければ、図3(C)に比較例として示すように、各計測時間における撹拌機12Bの外形が離間する。
【0044】
三次元測量機16を操作する作業員は、座標P1を計測する際に、撹拌機12Bが地盤Gに貫入されていることを目視にて確認する。そして、座標P1を計測する旨を、その度毎に、撹拌機12Bを操作する作業者に対して事前に通知することが好ましい。これにより、座標P1の計測時に撹拌機12Bが予定外の位置に配置されることを抑制できる。
【0045】
なお、トレンチャ式中層混合処理工法においては、地盤改良の施工管理の一環として、撹拌機12Bが攪拌した地盤Gの深度が時間経過と共に記録される。そこで本発明においては、三次元測量機16が座標P1を計測した時間も記録しておくことが好ましい。これにより、三次元測量機16が座標P1を計測した時間に撹拌機12Bが地盤Gを攪拌していることを事後的に確認できる。
【0046】
(座標変換工程)
三次元測量機16を用いて計測された測量用ターゲット14の座標P1は、図1に示す変換機20へ送信される。変換機20は、所定時間毎に計測された測量用ターゲット14の座標P1を、撹拌機12Bの中心位置の座標P2に置き換える。座標P1を座標P2に置き換えるために、座標P2に対する座標P1の相対位置は、予め変換機20に記憶されている。
【0047】
なお、座標P2は、三次元測量機16が設置された基準点O1からのX方向及びY方向の距離としてもよいし、地盤改良対象領域Rにおける所定の基準点O2からのX方向及びY方向の距離としてもよい。座標P2を基準点O2からの距離とするために、基準点O2に対する基準点O1の相対位置は、予め変換機20に記憶されている。
【0048】
(線分描画工程)
次に、変換機20は、図4(A)に示すように、所定時間毎の座標P2の位置を平面図上にプロットする(座標p1、p2、…p6)。次いで、図4(B)に示すように、隣り合うプロット点同士を連結する線分を描画する(線分q1、q2、…q5)。なお、線分q1、q2、…q5を総称して折れ線Q2と称す。
【0049】
(撹拌機外形及び包絡線描画工程)
次に、変換機20は、図4(C)に示すように、プロット点毎に、撹拌機12Bの平面形状を描画する(外形線r1、r2、…r6)。最後に、図4(D)に示すように、プロット点毎に描画された撹拌機12Bの平面形状を包絡するアウトラインを描画する(包絡線S2)。
【0050】
図5に示すように、撹拌機12Bの平面形状を描画する工程では、外形線r1は、座標p1において、線分q1の角度と撹拌機12Bの横行方向に沿う外形線の角度とが等しくなるように描画される(角度θ1)。この角度は、任意の基準軸に対する角度である。
【0051】
外形線r2は、座標p2において、線分q1の角度と撹拌機12Bの横行方向に沿う外形線の角度とが等しくなるように描画される(角度θ2)。
【0052】
以降、外形線r[N]([N]=3、4、5、6)は、座標p[N]において、線分q[N-1]の角度と撹拌機12Bの横行方向に沿う外形線の角度とが等しくなるように描画される(角度θ[N])。
【0053】
以上の説明は、撹拌機12Bをバックホー12Aの本体から「遠ざかる」方向へ横行させる場合における、折れ線Q2及び包絡線S2の描画方法の一例である。
【0054】
図6(A)、(B)に示すように、変換機20は、撹拌機12Bをバックホー12Aの本体から「遠ざかる」方向へ横行させるそれぞれの場合と、「近づく」方向へ横行させるそれぞれの場合においても、同様の描画方法で折れ線Q[N]([N]=1、2、3、4、5、6、7)及び包絡線S[N]([N]=1、2、3、4、5、6、7)を描画する。
【0055】
(出来形図描画工程)
最後に、変換機20は、全ての包絡線S[N]の和集合となる領域を、出来形図Fとして描画する。
【0056】
なお、出来形図Fを描画する際に、座標変換工程、線分描画工程、並びに、撹拌機外形及び包絡線描画工程は、紙面に出力したりディスプレイに表示したりしてもよいが、そのような出力や表示は実行せず、変換機20の内部処理としてもよい。
【0057】
つまり、本発明における「所定時間毎の中心座標の位置を平面図上にプロットし、中心座標毎に撹拌機の平面形状を作図」する態様は、必ずしも紙面上やディスプレイ上に視認される態様で実行される必要はない。
【0058】
また、変換機20は、座標p[N]、線分q[N]、外形線r[N]、包絡線S[N]のうち、任意のものを選択し、出来形図Fと併せて紙面に出力したりディスプレイに表示したりすることもできる。これらの選択は、変換機20の操作者によって実行してもよい。
【0059】
さらに、座標p[N]、線分q[N]、外形線r[N]、包絡線S[N]及びは出来形図Fは紙面に出力される必要はなく、変換機20のディスプレイ等に表示可能なデータとすればよい。
【0060】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法では、図3(A)に示す撹拌機12Bに取付けた測量用ターゲット14の座標P1を所定時間(間隔T)(≦W1/V)毎に計測する。寸法W1は、撹拌機12Bの横行方向に沿う寸法である。また、速度Vは撹拌機12Bの横行速度である。これにより、撹拌機12Bが駆動した位置の実績を記録できる。
【0061】
そして、撹拌機12Bの座標P1から、撹拌機12Bによる改良範囲を特定して、図6(C)に示すように、地盤改良体の出来形図Fを作成する。これにより、地盤改良体の施工範囲を図面によって把握できる。また、出来形図は、撹拌機12Bが駆動した位置の実績に基づいて作成されるため、信頼性が高い。
【0062】
また、本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法では、図3(A)に示す測量用ターゲット14の座標P1を撹拌機12Bの中心の座標P2に置き換えて出来形図を作成する。このため、測量用ターゲット14の位置を任意に設定できる。例えば、地盤改良材等の飛散の影響を受けない位置や測量用ターゲットの座標計測に支障がない位置に設定できる。
【0063】
また、図4(A)~(D)に示すように、撹拌機12Bの中心の座標P2毎(座標p1、p2、…p6)に、撹拌機12Bの平面形状を作図して出来形図を作成する。これにより、撹拌機12Bが存在した場所の実績に基づいた出来形図が作成される。このため、出来形図の信頼性を向上できる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法では、図4(C)に示すように、撹拌機12Bの中心座標毎に作図された撹拌機12Bの平面形状(外形線r1、r2、…r6)が互いに重なるように、測量用ターゲット14の座標を測定する所定時間(間隔T)が設定される。
【0065】
図3(D)の比較例に示すように、仮に撹拌機12Bの中心座標毎に作図された撹拌機12Bの平面形状が互いに重ならない場合は、重ならない部分が地盤改良されているか否かを確実に特定することは難しい。
【0066】
一方で、図3(A)や図4(C)に示すように、撹拌機12Bの中心座標毎に作図された撹拌機12Bの平面形状が互いに重なる場合は、確実に地盤改良されている範囲を特定できる。このため、出来形図の信頼性をさらに向上できる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る地盤改良体出来形管理方法は、測量用ターゲット14としてのプリズム及び三次元測量機16を用いた作業員の作業により実施される。すなわち、大掛かりな設備や特殊な機器を用いずに出来形を把握できる。
【0068】
また、三次元測量機16を用いた測量用ターゲット14の座標計測では、三次元測量機16と測量用ターゲット14との間に障害物がなければ、精度高く(平均±5cm程度)座標を計測できる。
【0069】
これに対して、例えば衛星通信(GNSS:Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)を用いた測量では、地盤改良現場の近傍にある建物によって電波障害が生じる場合がある。このような電波障害が発生すると、所定時間毎の座標計測が難しい。また、座標計測の精度(平均±10cm程度)も、本発明の精度と比較して高くない場合がある。
【0070】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、二次元の出来形図を作成するものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。三次元測量機16が取得した高さ方向の座標を利用することで、変換機20は三次元の出来高図(3Dデータ)を作成することもできる。
【0071】
また、上記実施形態においては、座標計測工程を作業員が実施して、座標変換工程、線分描画工程、撹拌機外形及び包絡線描画工程及び出来形図描画工程を変換機20が実施するものとして説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0072】
例えば三次元測量機16による測量用ターゲット14の座標計測は、三次元測量機16が測量用ターゲット14を自動追尾することにより、機械的に実行してもよい。
【0073】
また、座標変換工程、線分描画工程、撹拌機外形及び包絡線描画工程及び出来形図描画工程の全てまた何れかを、作業員が実施してもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、トレンチャ式中層混合処理工法において出来形図を作成する方法について説明したが、本発明は、スラリー揺動攪拌工法において出来形図を作成することもできる。
【0075】
スラリー揺動攪拌工法では、図7(A)~(D)に示すように、リボンスクリュー型の撹拌機12Cにより、地盤Gを揺動させながら改良材と原位置土とを攪拌混合する。
【0076】
この場合、撹拌機12Cは、図7(A)、(B)に示すように地盤Gに貫入されて地盤Gを攪拌後、図7(C)に示すように地上に引き上げられ、次の貫入位置の直上に移動される。そして、図7(D)に示すように再度地盤Gに貫入されて地盤Gを攪拌する。
【0077】
スラリー揺動攪拌工法において出来形図を作成する場合も、三次元測量機16(図7には不図示)を用いて、測量用ターゲット14の座標を所定時間毎に計測する。この場合の所定時間は、撹拌機12Cを地盤Gに貫入する直前(図7(A))から、次の貫入位置において地盤Gに貫入する直前(図7(C))までの所要時間とする。すなわち、1箇所を地盤改良するために必要な時間毎に、測量用ターゲット14の座標を計測する。
【0078】
この間隔で測量用ターゲット14の座標を計測することで、撹拌機12Cの平面形状が互いに重なるように描画できる。
【符号の説明】
【0079】
12B 撹拌機
12C 撹拌機
14 測量用ターゲット
16 三次元測量機
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7