(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118287
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240823BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240823BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H05K3/46 N
B32B7/025
B32B27/00 B
H05K3/46 T
H05K3/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024640
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】秋本 裕
【テーマコード(参考)】
4F100
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AB10E
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5E316AA12
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5E316HH33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電正接が低く、スミア除去性に優れる絶縁層を有する回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路基板の製造方法は、第1面2a及び第2面2bを有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×10
11Ω/sq.以下であり、プラスチックフィルム及び帯電防止層を有する支持体2と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層3と、を含む支持体付き樹脂シート1を、基材に、樹脂組成物層が基材と接合するように積層する工程と、樹脂組成物層を硬化させ、絶縁層を形成する工程と、支持体及び絶縁層に孔を形成する工程と、デスミア処理をする工程と、支持体を剥離する工程と、絶縁層上に導体層を形成する工程と、をこの順で含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1面及び第2面を有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層と、を含む支持体付き樹脂シートを、基材に、樹脂組成物層が基材と接合するように積層する工程、
(B)樹脂組成物層を硬化させ、絶縁層を形成する工程、
(C)支持体及び絶縁層に孔を形成する工程、
(D)デスミア処理をする工程、
(E)支持体を剥離する工程、及び
(G)絶縁層上に導体層を形成する工程、をこの順で含む、回路基板の製造方法。
【請求項2】
工程(D)は、ドライデスミア処理を行う、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
ドライデスミア処理におけるガス種が、フッ素原子を含むガス、N2及びO2のいずれかを含む、請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
工程(C)にて形成される孔のトップ径が、100μm以下である、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
支持体が、プラスチックフィルムを含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートのいずれかを含む、請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
プラスチックフィルムが、ポリエチレンナフタレートを含む、請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
プラスチックフィルム上に、表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である帯電防止層を含む、請求項5に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
絶縁層の誘電正接が、0.005以下である、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
樹脂組成物層が、活性エステル系硬化剤、及びラジカル重合性化合物のいずれかを含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項11】
工程(G)にて絶縁層上に導体層を形成する前に、
(F)絶縁層の表面の粗化処理を行う工程、を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項12】
第1面及び第2面を有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層と、を含む支持体付き樹脂シートであって、支持体が、ポリエチレンナフタレートを含む支持体付き樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に広く使用されている回路基板は、電子機器の小型化、高機能化のために、回路配線の微細化、高密度化が求められている。
【0003】
回路基板の製造技術としては、内層基板に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法では、例えば、特許文献1に記載されているように、絶縁層は、例えば支持体と樹脂組成物層を含む支持体付き樹脂シート等を用いて樹脂組成物層を内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化させることにより形成される。次いで、形成された絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成し、ビアホール内部のスミア(樹脂残渣)の除去を行う(デスミア処理)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、回路配線のさらなる微細化の観点から、回路基板に用いられる絶縁層は、誘電正接が低いことに加えて、導通信頼性を確保するためにスミア除去性を有することが求められている。
【0006】
しかし、本発明者らは、絶縁層の誘電正接を低くするとスミア除去性が劣る、即ち誘電正接とスミア除去性とはトレードオフの関係にあることを知見した。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、誘電正接が低く、スミア除去性に優れる絶縁層を有する回路基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ビアホール内部のスミアを除去する方法として乾式デスミア処理を行う方法があるが、本発明者らの鋭意検討の結果、樹脂組成物層の硬化物(絶縁層)の誘電正接が低いと、乾式デスミア処理を行う際に静電気が発生し、この静電気の影響により乾式デスミア処理を行ってもビアホール内部のスミアの除去が困難になることを見出した。本発明者らは、上記の課題につき鋭意検討した結果、樹脂組成物層とは反対側の面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体を含む支持体付き樹脂シートを用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)第1面及び第2面を有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層と、を含む支持体付き樹脂シートを、基材に、樹脂組成物層が基材と接合するように積層する工程、
(B)樹脂組成物層を硬化させ、絶縁層を形成する工程、
(C)支持体及び絶縁層に孔を形成する工程、
(D)デスミア処理をする工程、
(E)支持体を剥離する工程、及び
(G)絶縁層上に導体層を形成する工程、をこの順で含む、回路基板の製造方法。
[2] 工程(D)は、ドライデスミア処理を行う、[1]に記載の回路基板の製造方法。
[3] ドライデスミア処理におけるガス種が、フッ素原子を含むガス、N2及びO2のいずれかを含む、[2]に記載の回路基板の製造方法。
[4] 工程(C)にて形成される孔のトップ径が、100μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[5] 支持体が、プラスチックフィルムを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[6] プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートのいずれかを含む、[5]に記載の回路基板の製造方法。
[7] プラスチックフィルムが、ポリエチレンナフタレートを含む、[5]又は[6]に記載の回路基板の製造方法。
[8] プラスチックフィルム上に、表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である帯電防止層を含む、[5]~[7]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[9] 絶縁層の誘電正接が、0.005以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[10] 樹脂組成物層が、活性エステル系硬化剤、及びラジカル重合性化合物のいずれかを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[11] 工程(G)にて絶縁層上に導体層を形成する前に、
(F)絶縁層の表面の粗化処理を行う工程、を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[12] 第1面及び第2面を有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層と、を含む支持体付き樹脂シートであって、支持体が、ポリエチレンナフタレートを含む支持体付き樹脂シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誘電正接が低く、スミア除去性に優れる絶縁層を有する回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明における支持体付き樹脂シートの一例を説明するための概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明における支持体付き樹脂シートの他の実施形態の一例を説明するための概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明における支持体付き樹脂シートの他の実施形態の一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
本発明の回路基板の製造方法について詳細に説明する前に、本発明の回路基板の製造方法において使用される支持体付き樹脂シートについて説明する。
【0014】
[支持体付き樹脂シート]
支持体付き樹脂シートは、第1面及び第2面を有する支持体と、支持体の第2面と接合している樹脂組成物層とを含み、支持体の第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である。
【0015】
図1に支持体付き樹脂シートの一例の概略断面図を示す。支持体付き樹脂シート1は、第1面2a及び第2面2bを有する支持体2と、支持体2の第2面2bと接合している樹脂組成物層3を含む。支持体2の第2面2bは、支持体2の最外面であって、樹脂組成物層3と接合している側の面を表す。支持体2の第1面2aは、支持体2の厚み方向において第1面2aに対して反対側の最外面である。樹脂組成物層3は、支持体2の第2面2bと直に接しており、支持体2と樹脂組成物層3との間には他の層は設けられていない。
図1に示す例において、支持体2は、支持体2の第2面2bを有するプラスチックフィルム21と、支持体2の第1面2aを有する帯電防止層22とを含む多層構造を有している。
【0016】
したがって、支持体付き樹脂シート1の一実施形態は、プラスチックフィルム21及び帯電防止層22を含む支持体2と、プラスチックフィルム21と接合している樹脂組成物層3とを有し、帯電防止層22の面(第1面)2aの表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である。
【0017】
支持体2の第1面2aの表面抵抗率(即ち、帯電防止層22の面の表面抵抗率)は、1.0×1011Ω/sq.以下であり、好ましくは1.0×109Ω/sq.以下、より好ましくは1.0×107Ω/sq.以下である。下限は特に制限はないが、好ましくは1.0×102Ω/sq.以上、より好ましくは1.0×103Ω/sq.以上、さらに好ましくは1.0×105Ω/sq.以上である。上記したが、樹脂組成物層3の硬化物の誘電正接が低いと、乾式デスミア処理を行う際に静電気が発生し、この静電気の影響によりビアホール等の孔(図示せず)内部のスミアの除去が困難になる。支持体付き樹脂シート1の第1面2aの表面抵抗率を斯かる範囲にすることで静電気の影響が抑制されるので、静電気が発生してもビアホール等の孔の内部のスミアの除去が可能になり、その結果、誘電正接が低い樹脂組成物層の硬化物を用いても、スミア除去性を向上させることが可能になる。表面抵抗率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0018】
支持体2の第2面2bの表面抵抗率は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1.0×1013Ω/sq.以下、より好ましくは1.0×1011Ω/sq.以下、さらに好ましくは1.0×109Ω/sq.以下である。下限は好ましくは1.0×102Ω/sq.以上、より好ましくは1.0×104Ω/sq.以上、さらに好ましくは1.0×106Ω/sq.以上である。表面抵抗率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0019】
支持体付き樹脂シートにおける支持体は、
図2に一例を示すように、樹脂組成物層3とプラスチックフィルム21との間に離型層23を含んでいてもよい。この場合、支持体2は、第2面2bを有する離型層23、プラスチックフィルム21、及び第1面2aを有する帯電防止層22を含む多層構造を有する。また、支持体付き樹脂シートにおける支持体は、
図3に一例を示すように、第1面2aから順に帯電防止層22、プラスチックフィルム21、導電層24、及び離型層23の順で積層されてなる支持体であってもよい。この場合、支持体2は、第2面2bを有する離型層23、導電層24、プラスチックフィルム21、及び第1面2aを有する帯電防止層22を含む多層構造を有する。
【0020】
<支持体>
支持体付き樹脂シートは支持体を有する。支持体は、好ましくは、プラスチックフィルム及び帯電防止層を有する。また、支持体は、必要に応じて離型層及び導電層を有していてもよい。
【0021】
-プラスチックフィルム-
プラスチックフィルムは、プラスチック材料からなるフィルムを用いることができる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートのいずれかを含むことが好ましく、ポリエチレンナフタレート又はポリエチレンテレフタレートを含むことがより好ましい。
【0022】
プラスチックフィルムは、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ルミラー(東レ社製)、ダイアホイル(三菱ケミカル社製)、テオネックス(東洋紡社製)等が挙げられる。
【0023】
プラスチックフィルムの厚さは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
【0024】
-帯電防止層、導電層-
帯電防止層、及び導電層は、ビアホール等の孔の内部のスミアを除去するためにドライエッチング(デスミア処理)を行う際に発生する静電気の影響を抑制するために導電性を高める機能を有し、通常、プラスチックフィルムの表面に形成される。
【0025】
帯電防止層、及び導電層は、表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下となるように、帯電防止剤を含む材料を含みうる。帯電防止剤としては、有機系の帯電防止剤、無機系の帯電防止剤が挙げられる。
【0026】
有機系の帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型カチオン性化合物、スルホン基含有アニオン性化合物、エーテル型ノニオン系界面活性剤、帯電防止ポリマー等が挙げられる。
【0027】
第4級アンモニウム塩型カチオン性高分子化合物は、例えば、トリメチル・ラウリルアンモニウムメチルサルフェート、エチル・ジメチル・ステアリルアンモニウムエチルサルフェート、エチル・ジメチル・オレイルアンモニウムエチルサルフェート、エチル・ジメチル・ラウリルアンモニウムエチルサルフェート、エチル・ジメチル・ステアリルアンモニウムメタスルホニウム、エチル・ジメチル・ラウリルアンモニウムメタスルホニウム等が挙げられる。
【0028】
スルホン基含有アニオン化合物は、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0029】
エーテル型ノニオン系界面活性剤は、例えば、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルエステル、ノニルフェノールエーテルエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
帯電防止ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系帯電防止ポリマー、ポリアニリン系帯電防止ポリマー、ポリピロール系帯電防止ポリマー、ポリアセチレン系帯電防止ポリマー、ポリフェニレンサルファイド系帯電防止ポリマー等が挙げられる。帯電防止ポリマーは市販品を用いてもよく、市販品としては、新中村化学工業社製の「WS-52R」等が挙げられる。
【0031】
無機系の帯電防止剤としては、例えば、アルミニウム、銅等の金属;これら金属の酸化物等が挙げられ、アルミニウム及び銅のいずれかが好ましい。
【0032】
帯電防止層の厚さは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは5000nm以下、より好ましくは3000nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。
【0033】
導電層の厚さは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
【0034】
支持体付き樹脂シートが導電層を有する場合、導電層は帯電防止層と同じ材料であってもよく、異なっていてもよい。また、導電層は帯電防止層と同じ表面抵抗率を有していてもよく、異なっていてもよい。
【0035】
帯電防止層及び導電層は、例えば、上述した帯電防止剤と、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂等の公知の樹脂とを含む塗液を、プラスチックフィルム上に塗布することにより形成することができる。また、無機系の帯電防止剤は、例えば、プラスチックフィルム上に、アルミニウム、銅等の金属を、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法で帯電防止層又は導電層を形成することができる。
【0036】
-離型層-
支持体付き樹脂シートが離型層を含む場合、離型層は、無機離型層および有機離型層が挙げられ、有機離型層が好ましい。
【0037】
無機離型層としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法で形成される金属層、又は金属箔を用いてよい。無機離型層に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、鉛、ニッケル等が挙げられ、アルミニウムが好ましい。
【0038】
有機離型層は、フッ素樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂等の1種以上の有機高分子を含む離型層を好適に使用し得る。
【0039】
支持体付き樹脂シートが離型層を含む場合、離型層の厚さは、絶縁層から支持体を容易に剥離し得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下である。
【0040】
離型層を備える支持体を用いる場合は、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付きプラスチックフィルムを使用してもよい。離型層付きプラスチックフィルムの離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付きプラスチックフィルムは、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0041】
離型層付きプラスチックフィルムを使用する場合、離型層付きプラスチックフィルム全体の厚さは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
【0042】
支持体の厚さとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは12μm以上、より好ましくは18μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0043】
<樹脂組成物層>
支持体付き樹脂シートは、樹脂組成物層を有する。樹脂組成物層を熱硬化させることで絶縁層を形成できる。通常、絶縁層は、樹脂組成物層の硬化物を含み、好ましくは樹脂組成物層の硬化物のみを含む。
【0044】
樹脂組成物層の厚みとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0045】
樹脂組成物層に含まれる成分は、その硬化物が十分な硬度を有し、誘電正接が低く、絶縁性を有するものが好ましい。斯かる樹脂組成物層に含まれる成分としては、例えば、(a)活性エステル系硬化剤、及び(b)ラジカル重合性化合物のいずれかが挙げられる。樹脂組成物層は、必要に応じて、さらに(c)エポキシ樹脂、(d)無機充填材、(e)硬化促進剤、(f)硬化剤((a)成分に該当するものは除く)、(g)熱ラジカル剤、(h)熱可塑性樹脂、(i)有機充填材、及び(j)その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
本発明において、樹脂組成物層中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、樹脂組成物層中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0047】
-(a)活性エステル系硬化剤-
樹脂組成物層は、一実施形態において、(a)活性エステル系硬化剤を含む。(a)活性エステル系硬化剤は、通常、後述する(c)エポキシ樹脂との反応により結合を形成して、樹脂組成物層を硬化させうる。樹脂組成物層は、通常、(a)成分と(c)とを組み合わせて使用することでめっきとの間のピール強度に優れる硬化物を得ることができる。(a)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(a)活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0049】
具体的には、(a)成分としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤等が挙げられる。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0050】
中でも(a)成分としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、及びナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0051】
(a)成分の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤として「HP-B-8151-62T」、「EXB9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB-8150-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、「PC1300-02-65T」(エア・ウォーター社製);りん含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);「EXB-8500-65T」(DIC社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0052】
(a)成分の活性エステル基当量は、誘電正接を低くできるとともに、ピール強度に優れた硬化物を得る観点から、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、1当量の活性エステル基を含む活性エステル系硬化剤の質量である。
【0053】
(c)エポキシ樹脂と(a)活性エステル系硬化剤との量比は、[活性エステル系硬化剤の活性基の合計数]/[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]の比率で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(c)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「活性エステル系硬化剤の活性基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(a)活性エステル系硬化剤の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で除した値を全て合計した値である。(c)エポキシ樹脂と(a)活性エステル系硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
【0054】
(a)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましく10質量%以上である。また、上限は好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0055】
-(b)ラジカル重合性化合物-
樹脂組成物層の一実施形態として、(b)ラジカル重合性化合物を含む。この(b)成分としての(b)ラジカル重合性化合物には、上述した(a)成分に該当するものは含めない。(b)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(b)ラジカル重合性化合物としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。(b)ラジカル重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点からは、(b)ラジカル重合性化合物は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、マレイミド樹脂がより好ましい。
【0057】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、(1)「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)、「SLK6895-T90」(信越化学工業社製)などの、脂肪族骨格(好ましくはダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格)を含むマレイミド樹脂;(2)発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;(3)「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーのほか、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0059】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、スチレンモノマーのほか、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0060】
(b)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0061】
-(c)エポキシ樹脂-
樹脂組成物層は、(a)成分に組み合わせて、(c)成分として(c)エポキシ樹脂を含有していてもよい。この(c)成分としての(c)エポキシ樹脂には、上述した(a)~(b)成分に該当するものは含めない。(c)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(c)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
樹脂組成物層は、(c)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(c)エポキシ樹脂100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0064】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物層は、(c)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいることが好ましい。
【0065】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0067】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂がより好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0069】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0070】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000H」、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(c)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0072】
(c)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0073】
(c)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは150~3000、さらに好ましくは200~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0074】
(c)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0075】
-(d)無機充填材-
樹脂組成物層は、(d)成分として(d)無機充填材を含有していてもよい。(d)無機充填材を樹脂組成物層に含有させることで、誘電正接が低い硬化物を得ることが可能になる。
【0076】
(d)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物層に含まれる。(d)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(d)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(d)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(d)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0078】
(d)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(d)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。(d)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0079】
(d)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。(d)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、さらにより好ましくは30m2/g以下、特に好ましくは10m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0080】
(d)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0081】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0082】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0083】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物層の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0084】
(d)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0085】
(d)無機充填材の含有量は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0086】
-(e)硬化促進剤-
樹脂組成物層は、(c)成分に組み合わせて、(e)硬化促進剤を含んでいてもよい。この(e)成分としての(e)硬化促進剤には、上述した(a)~(d)成分に該当するものは含めない。(e)硬化促進剤は、(c)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0087】
(e)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進させる化合物を用いることができる。このような(e)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(e)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0089】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0090】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0091】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0092】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0093】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0094】
(e)硬化促進剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0095】
<(f)硬化剤>
樹脂組成物層は、(f)硬化剤を含んでいてもよい。この(f)成分としての(f)硬化剤には、上述した(a)~(e)成分に該当するものは含めない。(f)硬化剤は、通常、(c)エポキシ樹脂との反応により結合を形成して、樹脂組成物を硬化させうる。(f)硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。(f)硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0096】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0097】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0098】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0099】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0100】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0101】
(f)成分として硬化剤を含有する場合、(c)エポキシ樹脂と(a)活性エステル系硬化剤及び(f)硬化剤との量比は、[(c)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(a)活性エステル系硬化剤及び(f)硬化剤の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「(a)活性エステル系硬化剤及び(f)硬化剤の活性基の合計数」とは、樹脂組成物層中に存在する活性エステル系硬化剤及び硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(a)成分、(c)成分、及び(f)成分の量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0102】
(f)成分として硬化剤を含有する場合、(c)エポキシ樹脂とすべての(f)硬化剤との量比は、[(c)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(f)硬化剤の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:1の範囲が好ましく、1:0.03~1:0.5がより好ましく、1:0.05~1:0.3がさらに好ましい。ここで、「(f)硬化剤の活性基の合計数」とは、樹脂組成物層中に存在する(f)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(c)成分及び(f)成分との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0103】
(f)硬化剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0104】
-(g)熱ラジカル剤-
樹脂組成物層は、(b)成分に組み合わせて、(g)熱ラジカル剤を含んでいてもよい。(g)熱ラジカル剤は、通常(b)成分におけるラジカル重合性不飽和基の架橋を促進させる機能を有する。この(g)成分としての(g)熱ラジカル剤には、上述した(a)~(f)成分に該当するものは含めない。(g)熱ラジカル剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0105】
(g)熱ラジカル剤としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0106】
(g)熱ラジカル剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルD」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0107】
(g)熱ラジカル剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0108】
-(h)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物層は、(h)成分として、(h)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。この(h)成分としての(h)熱可塑性樹脂には、上述した(a)~(g)成分に該当するものは含めない。(h)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
(h)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0110】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0111】
ポリイミド樹脂の具体例としては、荒川化学工業社製の「PIAD100H」、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0112】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0113】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0114】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0115】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0116】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0117】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0118】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0119】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0120】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0121】
(h)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0122】
(h)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0123】
-(i)有機充填材-
樹脂組成物層は、(i)成分として(i)有機充填材を含んでいてもよい。この(i)成分としての(i)有機充填材には、上述した(a)~(h)成分に該当するものは含めない。(i)有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0124】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0125】
(i)有機充填材の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0126】
-(j)その他の添加剤-
樹脂組成物は、上述した(a)~(i)成分に組み合わせて、更に任意の不揮発成分として、(j)その他の添加剤を含んでいてもよい。(j)その他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;第三級アミン類等の光重合開始助剤;ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類等の光増感剤;が挙げられる。(j)その他の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
<(k)溶剤>
樹脂組成物層は、上述した(a)~(j)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に任意の揮発性成分として、(k)溶剤を含んでいてもよい。(k)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(k)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
(k)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0129】
<その他の層>
一実施形態において、支持体付き樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0130】
<支持体付き樹脂シートの製造方法>
支持体付き樹脂シートは、例えば、樹脂組成物層に含まれる成分を溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて、予め帯電防止層等を形成した支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。溶剤については上述したものを用いることができる。
【0131】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で1分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0132】
支持体付き樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0133】
本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層を、200℃で90分間熱硬化させて得られた硬化物は、低い誘電正接を有する。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。樹脂組成物層の硬化物(絶縁層)の誘電正接は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下である。下限は、特に限定されないが、0.0001以上でありうる。誘電正接は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0134】
本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物は、支持体の第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下であるから、スミア除去性に優れるという特性を示す。硬化物の最大スミア長としては、好ましくは2μm未満、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。下限は特に限定されないが、0.001μm以上等とし得る。「最大スミア長」とは、ビア底面の円周から円中心へのスミアの最大長さを意味する。スミア除去性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0135】
本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層を、100℃で30分間、170℃で30分間硬化させた硬化物は、通常、めっきとの間のピール強度を高くすることができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、めっき導体層との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。絶縁層及び導体層の間のピール強度は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.4kgf/cm以上、さらに好ましくは0.5kgf/cm以上である。ピール強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。ピール強度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0136】
[回路基板の製造方法]
本発明の回路基板の製造方法は、
(A)第1面及び第2面を有し、該第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体と、該支持体の第2面と接合している樹脂組成物層と、を含む支持体付き樹脂シートを、基材に、樹脂組成物層が基材と接合するように積層する工程、
(B)樹脂組成物層を熱硬化させ、絶縁層を形成する工程、
(C)支持体及び絶縁層に孔を形成する工程、
(D)デスミア処理をする工程、
(E)支持体を剥離する工程、及び
(G)絶縁層上に導体層を形成する工程、をこの順で含む。
【0137】
このような回路基板の製造方法では、誘電正接が低く、スミア除去性に優れる絶縁層を有する絶縁層を有する回路基板を製造可能になる。また、通常は、めっき導体層との間のピール強度に優れる絶縁層を有する回路基板も製造可能になる。
【0138】
また、本発明の回路基板の製造方法は、必要に応じて、工程(E)の後、工程(G)において絶縁層上に導体層を形成するの前に、下記工程(F)を含んでいてもよい。
(F)絶縁層の表面を粗化処理を行う工程。
【0139】
<工程(A)>
工程(A)では、支持体付き樹脂シートを準備する。そして、この支持体付き樹脂シートと基材とを、支持体付き樹脂シートにおける樹脂組成物層が基材と接合するように積層する。支持体付き樹脂シートについては上記したとおりである。
【0140】
基材としては、通常、板状の基材を用いる。以下、この基材を「内層基板」ということがある。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板を備える部材を用いうる。また、前記の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものを用いてもよい。このように回路を含む内層基板を「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。
【0141】
樹脂組成物層と内層基板との積層は、例えば、支持体側から支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を支持体付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に支持体付き樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0142】
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0143】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0144】
積層の後に、大気圧下、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された支持体付き樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0145】
<工程(B)>
工程(B)では、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を使用してよい。樹脂組成物層は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させてもよいが、通常は、加熱により熱硬化させる。
【0146】
樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物層に含まれる成分の種類によっても異なるが、一実施形態において、例えば、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0147】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0148】
<工程(C)>
工程(C)では、支持体及び絶縁層に孔を形成する。通常、孔として、絶縁層を貫通するビアホールを形成する。孔の形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。
【0149】
工程(C)を行うことで形成可能となる孔の開口径(トップ径)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、70μm以下であり、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、30μm以上、40μm以上である。ここで、孔の開口径(トップ径)とは、絶縁層の表面での孔の開口の直径をいう。
【0150】
孔の形成方法としては、レーザー光の照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、レーザー光の照射が好ましい。
【0151】
孔の形成に用いられ得るレーザー光源としては、例えば、CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)、UV-YAGレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
【0152】
レーザー光を照射するにあたって、ショット数としては、孔の加工性を向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。ショット数を上記範囲内とするために、レーザーのエネルギー及びパルス幅を一定値以上にすることが好ましい。レーザーの出力は、好ましくは0.1W以上、より好ましくは0.3W以上、さらに好ましくは0.5W以上であり、好ましくは30W以下、より好ましくは10W以下、さらに好ましくは5W以下である。また、レーザーのパルス幅は、好ましくは1μsec以上、より好ましくは5μsec以上、さらに好ましくは10μsec以上であり、好ましくは40μsec以下、より好ましくは35μsec以下、さらに好ましくは30μsec以下である。
【0153】
孔の形成は、市販されているレーザー装置を用いて実施することができる。市販されている炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」、三菱電機社製「ML605GTWII」、三菱電機社製「605GTWIII(-P)」、松下溶接システム社製の基板穴あけレーザー加工機が挙げられる。また、UV-YAGレーザー装置としては、例えば、ビアメカニクス社製「LU-2L212/M50L」等が挙げられる。
【0154】
<工程(D)>
工程(C)で絶縁層に孔を形成すると、その孔内にスミアと呼ばれる樹脂残渣が生成しうる。工程(D)では、絶縁層の孔内のスミアを除去するデスミア処理を行う。本発明では、支持体の第1面の表面抵抗率が1.0×1011Ω/sq.以下である支持体を有する支持体付き樹脂シートを用いる。よって、絶縁層の誘電正接が低くても、静電気の発生を抑制することができ、その結果、スミア除去性に優れるようになる。
【0155】
工程(D)におけるデスミア処理としては、通常、乾式デスミア処理(ドライデスミア処理)を行う。
【0156】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、プラズマ発生装置内にガスを導入して発生させたプラズマを用いて絶縁層を処理することで、孔内に生じたスミアを除去する。プラズマの発生方法としては特に制限はなく、マイクロ波によりプラズマを発生させるマイクロ波プラズマ、高周波を用いた高周波プラズマ、大気圧下で発生させる大気圧プラズマ、真空下で発生させる真空プラズマ等が挙げられ、真空下で発生させる真空プラズマが好ましい。
【0157】
乾式デスミア処理におけるガス種(プラズマ化するガス種)としては、孔内のスミアを除去し得る限り特に限定されず、例えば、フッ素原子を含むガス、N2及びO2のいずれかを含むガスを用いることが好ましい。フッ素原子を含むガスとしては、例えば、F2、CF4、C2F6、SF6等が挙げられる。この場合、フッ素原子を含むガス、N2及びO2のいずれかに加えて、Ar等の他のガスを含んでもよい。中でも、スミア除去性を向上させる観点から、ガス種としては、フッ素原子を含むガス、N2及びO2のいずれかを含むことが好ましく、フッ素原子を含むガス、及びO2を含むことがより好ましく、O2と、N2及びCF4の少なくとも一方とを含む混合ガスがさらに好ましく、O2及びCF4を含む混合ガスが特に好ましい。
【0158】
ガス種として混合ガスを用いる場合、その混合比(N2及びO2のいずれかを含むガス/その他のガス:単位はsccm)としては、スミア除去性を向上させる観点から、好ましくは1/0.01~1/100、より好ましくは1/0.5~1/10、さらに好ましくは1/1~1/5である。
【0159】
乾式デスミア処理の時間は特に限定されないが、好ましくは30秒間以上、より好ましくは60秒間以上、90秒間以上又は120秒間以上である。該乾式デスミア処理の時間の上限は、デスミア処理後に表面粗度の小さい絶縁層を実現し易い観点から、好ましくは10分間以下、より5分間以下である。
【0160】
乾式デスミア処理は、市販の乾式デスミア処理装置を使用して実施することができる。市販の乾式デスミア処理装置の中でも、回路基板の製造用途に好適な例として、オックスフォード・インストゥルメンツ社製のプラズマドライエッチング装置、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0161】
工程(D)では、乾式デスミア処理の後、必要に応じて湿式デスミア処理を行ってもよい。湿式デスミア処理については後述する工程(G)と同じである。
【0162】
<工程(E)>
工程(D)終了後、工程(E)にて支持体を剥離する。これにより、誘電正接が低く、孔内のスミアの残留が抑制された絶縁層を得ることが可能になる。工程(E)を行うことで、絶縁層の表面が露出し、該露出面に導体層を形成することが可能になる。支持体の剥離方法は公知の方法を使用することができる。
【0163】
<工程(F)>
本発明の回路基板の製造方法は、必要に応じて、工程(E)の後、工程(G)にて絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層の表面を粗化処理する工程を含んでいてもよい。粗化処理の手順、条件は特に限定されない。工程(F)での粗化処理は、乾式粗化処理、及び湿式粗化処理のいずれかであってもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、湿式粗化処理が好ましい。乾式粗化処理については工程(D)における乾式デスミア処理と同じである。
【0164】
湿式粗化処理は、例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0165】
湿式粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0166】
湿式粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0167】
湿式粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0168】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm未満、さらに好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは100nm未満であり得る。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0169】
<工程(G)>
工程(G)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0170】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0171】
導体層の厚さは、所望の回路基板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0172】
導体層は、乾式めっき又は湿式めっきにより絶縁層上に導体層を形成することが好ましく、湿式めっきにより導体層を形成することが好ましい。乾式めっきとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式めっきとしては、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成する方法、等が挙げられる。
【0173】
工程(G)では、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0174】
絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0175】
本発明の回路基板の製造方法は、必要に応じて、工程(A)~工程(G)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層回路基板を製造してもよい。
【実施例0176】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に指定が無い場合の温度条件、圧力条件及び湿度条件は、室温(25℃)、大気圧(1atm)及び50%RHである。
【0177】
<表面抵抗率の測定>
実施例及び比較例で使用した支持体の第1面及び第2面の表面抵抗率(Ω/sq.)は、表面抵抗率測定装置(ADCMT社製デジタル超高抵抗・微少電流計「5451」とADVANTEST社製レジスティビティ・チェンバ「R12704A」)を用いて測定した。
【0178】
<帯電防止用コーティング剤の作製>
帯電防止ポリマー(新中村化学工業社製、「WS-52R」)1部、ポリエステル系樹脂(東洋紡社製、バイナールMD-1200)2部、水系ウレタン樹脂(第一工業社製、「E-37」)2部、水50部、イソプロピルアルコール45部を混合し、帯電防止用コーティング剤を作製した。
【0179】
<作製例1:支持体Aの作製>
非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理した離型層を有するPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)を用意した。PETフィルムの離型層と接する面とは反対側の面に、帯電防止用コーティング剤を、帯電防止層の厚みが300nmとなるように均一に塗布することで、離型層、プラスチックフィルム、及び帯電防止層をこの順に有する支持体A(厚さ約38μm)を作製した。支持体Aにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×1013Ω/sq.であり、帯電防止層表面(第1面)の表面抵抗率は1.0×109Ω/sq.であった。
【0180】
<作製例2:支持体Bの作製>
PETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)に帯電防止用コーティング剤を帯電防止層の厚みが200nmとなるように均一に塗布し、続いて非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を実施した。さらに、反対面に帯電防止用コーティング剤を帯電防止層の厚みが200nmとなるように均一に塗布して離型層、帯電防止層、プラスチックフィルム、及び帯電防止層をこの順に有する支持体B(厚さ約38μm)を作製した。支持体Bにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×108Ω/sq.であり、帯電防止層表面(第1面)の表面抵抗率は1.0×109Ω/sq.であった。
【0181】
<作製例3:支持体Cの作製>
PETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)にアルミを厚みが60nmとなるように蒸着した。さらに反対面に非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を実施し、離型層、プラスチックフィルム、及び帯電防止層をこの順に有する支持体C(厚さ約38μm)を作製した。支持体Cにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×1013Ω/sq.であり、帯電防止層表面(第1面)の表面抵抗率は1.0×107Ω/sq.であった。
【0182】
<作製例4:支持体Dの作製>
PETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)に銅を厚みが120nmとなるように蒸着した。さらに反対面に非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を実施し、離型層、プラスチックフィルム、及び帯電防止層をこの順に有する支持体D(厚さ約38μm)を作製した。支持体Dにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×1013Ω/sq.であり、帯電防止層表面(第1面)の表面抵抗率は1.0×106Ω/sq.であった。
【0183】
<作製例5:支持体Eの作製>
作製例1において、非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理した離型層を有するPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)を、非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理した離型層を有するPENフィルム(東洋紡社製「製品名テオネックスQ83」、厚さ25μm)に変えた。以上の事項以外は作製例1と同様にして支持体Eを作製した。支持体Eにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×1013Ω/sq.であり、帯電防止層表面(第1面)の表面抵抗率は1.0×109Ω/sq.であった。
【0184】
<作製例6:支持体Fの作製>
非シリコーン系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理した離型層を有するPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm)を支持体Fとした。支持体Fにおける離型層表面(第2面)の表面抵抗率は1.0×1013Ω/sq.であり、PETフィルムの離型層と接する側の面とは反対側の面(第1面)の表面抵抗率は1.0×1014Ω/sq.であった。
【0185】
<調製例1:樹脂組成物1の調製>
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032SS」、エポキシ当量約144g/eq.)8部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」、エポキシ当量約290g/eq.)15部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)5部をトルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238g/eq.、固形分62質量%のトルエン溶液)42部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、固形分50%のトルエン溶液)6部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)3部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))150部、コア-シェル型ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」)1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物1を得た。
【0186】
<調製例2:樹脂組成物2の調製>
ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)60部、ビスマレイミド樹脂(Designer Molecules社製「BMI1500」、マレイミド基当量約752g/eq.)10部、変性オリゴフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、固形分65%のトルエン溶液)10部、2官能アクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326g/eq.)5部、熱ラジカル発生剤(日油社製「パーブチルD」)1部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))120部、トルエン20部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物2を得た。
【0187】
<調製例3:樹脂組成物3の調製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」、エポキシ当量約290g/eq.)40部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)30部をトルエン30部、MEK30部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量223g/eq.、固形分65質量%のトルエン溶液)100部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-1356」、水酸基当量約146g/eq.、固形分60%のMEK溶液)10部、ビスマレイミド樹脂(Designer Molecules社製「BMI689」、マレイミド基当量約345g/eq.)6部、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」の固形分10%のMEK溶液)5部、無機充填材(アミン系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm))280部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物3を得た。
【0188】
<誘電正接の測定>
実施例で作成した樹脂シートから保護フィルムを剥がして、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離した。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0189】
【表1】
*表中、(a)~(i)成分の含有量は、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0190】
[実施例1]
(1)支持体付き樹脂シートの作製
支持体Aの離型層の面上に、調製した樹脂組成物1を乾燥後の樹脂組成物層の厚さが25μmとなるように均一に塗布した。その後、70℃から95℃で3分間乾燥することにより、離型層上に樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層の離型層と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を貼り合わせた。これにより、支持体A(帯電防止層、プラスチックフィルム、離型層)、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順に有する支持体付き樹脂シートを得た。
【0191】
(2)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、パナソニック社製R1515A)の両面をメック社製CZ8201にて0.5μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0192】
(3)支持体付き樹脂シートのラミネート(工程(A))
支持体付き樹脂シート1から保護フィルムを剥離し、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0193】
(4)樹脂組成物層の硬化(工程(B))
ラミネートされた樹脂組成物層を130℃で30分間、次いで170℃で30分間の硬化条件で樹脂組成物層を硬化させ、絶縁層を形成した。
【0194】
(5)ビアホールの形成(工程(C))
ビアメカニクス社製CO2レーザー加工機(LC-2E21B/1C)を使用し、マスク径1.60mm、フォーカスオフセット値0.050、パルス幅25μsec、パワー0.66W、アパーチャー13、ショット数2、バーストモードの条件で支持体及び絶縁層に穴あけして、絶縁層表面におけるビアホールのトップ径(直径)が50μmのビアホールを形成した。
【0195】
(6-1)乾式デスミア処理(工程(D))
絶縁層を形成した内層回路基板を、支持体を含む状態のまま、真空プラズマエッチング装置(Tepla社製100-E PLASMA SYSTEM)を使用し、O2/CF4(混合ガス比)=25/75、真空度100Paの条件にて5分間乾式デスミア処理を行った。乾式デスミア処理後の内層回路基板を評価基板Aと称する。
【0196】
(7-1)支持体の剥離及び導体層の形成(工程(E)及び工程(G))
評価基板Aの支持体を剥離した後、PdCl2を含む無電解めっき液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。めっき導体層を形成した後の内層回路基板を評価基板Bと称する。
【0197】
<ビアホール底部のスミア除去性の評価>
評価基板Aの支持体を剥離した後、ビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定するとともに、以下の基準で評価した。
○:最大スミア長が2μm未満
×:最大スミア長が2μm以上
【0198】
<めっき導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定>
評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC-50C-SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0199】
[実施例2]
実施例1において、(6-1)乾式デスミア処理後、以下の(6-2)湿式デスミア処理及び(7-2)導体層の形成を行うことで内層回路基板を作製した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0200】
(6-2)支持体の剥離及び湿式デスミア処理(工程(E)及び工程(F))
(6-1)乾式デスミア処理にて評価基板Aを得た後、支持体を剥離し、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で10分間浸漬し、次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。この工程後の内層回路基板を評価基板Cとする。
【0201】
(7-2)導体層の形成(工程(G))
評価基板Cの湿式デスミア処理を施した面上に、PdCl2を含む無電解めっき液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。導体層を形成した後の内層回路基板を評価基板Dと称する。
【0202】
<ビアホール底部のスミア除去性の評価>
評価基板Cのビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定するとともに、以下の基準で評価した。
○:最大スミア長が2μm未満
×:最大スミア長が2μm以上
【0203】
<めっき導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定>
評価基板Dの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC-50C-SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0204】
[実施例3]
実施例1において、
1)(1)支持体付き樹脂シートの作製における樹脂組成物1を、樹脂組成物2に変え、
2)(7-1)導体層の形成を、以下に示す(7-3)導体層の形成に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0205】
(7-3)支持体の剥離及び導体層の形成(工程(E)及び工程(G))
評価基板Aの支持体を剥離した後、スパッタリング(E-400S、キャノンアネルバ社製)により、チタン層30nm、さらに銅層300nmを形成した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を200℃にて60分間行った。導体層を形成した後の内層回路基板を評価基板Bと称する。
【0206】
[実施例4]
実施例1において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Bに変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0207】
[実施例5]
実施例4において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における樹脂組成物1を、樹脂組成物3に変えた。以上の事項以外は実施例4と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0208】
[実施例6]
実施例1において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Cに変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0209】
[実施例7]
実施例3において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Cに変えた。以上の事項以外は実施例3と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0210】
[実施例8]
実施例3において、
1)(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Dに変え、
2)(1)支持体付き樹脂シートの作製における樹脂組成物2を、樹脂組成物1に変えた。
以上の事項以外は実施例3と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0211】
[実施例9]
実施例1において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Eに変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0212】
[比較例1]
実施例1において、(1)支持体付き樹脂シートの作製における支持体Aを、支持体Fに変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして内層回路基板を作製し、スミア除去性及びピール強度を評価した。
【0213】