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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118305
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】香味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240823BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240823BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240823BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
C11B9/00 K
A23L27/00 C
A23L27/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024661
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 康大
(72)【発明者】
【氏名】川口 賢二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 みずき
(72)【発明者】
【氏名】梁川 修
【テーマコード(参考)】
4B047
4H059
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE02
4B047LF07
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG06
4B047LG10
4B047LG12
4B047LG37
4H059BA20
4H059BC10
4H059DA09
4H059EA33
(57)【要約】
【課題】香味改善剤を提供する。
【解決手段】2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物からなる香味改善剤を提供し、当該香味改善剤は、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、飲食品用コク感改善剤、または果汁感改善剤であってよく、さらに、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、香味改善剤(ただし、2-フェニルベンズアルデヒドからなる場合はビーフ香味改善剤、ポーク香味改善剤およびチキン香味改善剤を除く)。
【請求項2】
前記香味改善剤が、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、飲食品用コク感改善剤、または果汁感改善剤である、請求項1に記載の香味改善剤。
【請求項3】
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、消費財添加用組成物(ただし、2-フェニルベンズアルデヒドのみを有効成分として含有する、ビーフ香味を改善するための消費財添加用組成物、ポーク香味を改善するための消費財添加用組成物およびチキン香味を改善するための消費財添加用組成物は除く。)。
【請求項4】
前記消費財添加用組成物が、香料組成物、飲食品用香味改善組成物、飲食品用コク感改善組成物、または果汁感改善組成物である、請求項3に記載の消費財添加用組成物。
【請求項5】
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法。
【請求項6】
請求項5に記載の消費財の香味改善方法において、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が100ppt~100ppmの範囲となるように前記化合物を添加し、前記飲食品の香味を改善する、消費財の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味改善剤、消費財添加用組成物、および消費財の香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、飲食品や香粧品における消費者の要求は高度化および多様化しているが、特に、香りに注目が集まっており、香りの特性が製品の訴求力に重要な要素となっている。例えば、配合によって、香りや味を改善することや、香りや味に持続性、天然感、コク感などを付与または増強できる香料化合物への要求が高まっている。
【0003】
これまで、香りや風味を改善可能な様々な組成物が提案されているが、例えば、ベンゼン環を2個有する化合物としては、本出願人は、2-フェニルエチルシンナメートと2-ヒドロキシ-3-メチルペンタン酸とを有効成分とする飲食品用香料組成物(特許文献1)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-228713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術も十分有用といえるが、多様化している消費財の香味を改善する要望に対応すべく、消費者製品によりよい香味を付与して既存製品の香味との差別化を可能とする、香味改善効果の高い新たな香味改善剤の開発が期待されている。
【0006】
以上より、本発明の課題は、新規な香味改善剤、消費財添加用組成物、および消費財の香味改善方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドが幅広い香味において優れた香味改善効果を奏することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
[1] 2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物からなる、香味改善剤(ただし、2-フェニルベンズアルデヒドからなる場合はビーフ香味改善剤、ポーク香味改善剤およびチキン香味改善剤を除く)。
[2] 前記香味改善剤が、香料組成物用香味改善剤、飲食品用香味改善剤、飲食品用コク感改善剤、または果汁感改善剤である、[1]に記載の香味改善剤。
[3] 2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、消費財添加用組成物(ただし、2-フェニルベンズアルデヒドのみを有効成分として含有する、ビーフ香味を改善するための消費財添加用組成物、ポーク香味を改善するための消費財添加用組成物およびチキン香味を改善するための消費財添加用組成物は除く。)。
[4] 前記消費財添加用組成物が、香料組成物、飲食品用香味改善組成物、飲食品用コク感改善組成物、または果汁感改善組成物である、[3]に記載の消費財添加用組成物。
[5] 2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、消費財に添加する工程を含む、消費財の香味改善方法。
[6] [5]に記載の消費財の香味改善方法において、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が100ppt~100ppmの範囲となるように前記化合物を添加し、前記飲食品の香味を改善する、消費財の香味改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な香味改善剤、消費財添加用組成物、および消費財の香味改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm、ppb、ppt)」、「%」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」、「質量パーセント濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味改善(香味を改善する)」には、香味を付与する(新たに加える)、および/または、香味を増強することを含み、香味を付与乃至増強した結果、香味が改善されることを意味する。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「消費財の香味改善」には、上記「香味」の定義の通り、嗅覚および味覚に寄与する「飲食品等の香味改善」と、嗅覚に寄与するが味覚に寄与しない「香粧品等の香気改善」との両方が含まれる。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0011】
(香味改善剤)
本発明の一実施の形態に係る香味改善剤(以下「本件香味改善剤」という場合がある。)は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物からなる。ただし、2-フェニルベンズアルデヒドからなるビーフ香味改善剤、ポーク香味改善剤およびチキン香味改善剤は含まれない(以下同じ。)。
【0012】
本件香味改善剤である2-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ia)で表される化合物であり、3-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ib)で表される化合物であり、4-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ic)で表される化合物である。
【0013】
【化1】
2-フェニルベンズアルデヒドは、ショウヨウダイオウ(Flavour and Fragrance Journal (1996), 11(1), 57-60)、ウラルカンゾウ(Flavour and Fragrance Journal (1990), 5(3), 157-60)から検出・同定され、また、ビーフフレーバー、チキンフレーバーおよびポークフレーバー(Shipin Yu Fajiao Gongye (2013), 39(6), 180-185)から同定された105の成分の一つとして検出されており、3-フェニルベンズアルデヒドはカンキョウ(Agricultural and Biological Chemistry (1988), 52(11), 2961-3)などから検出されており、4-フェニルベンズアルデヒドはショウガ(Agricultural and Biological Chemistry (1988), 52(11), 2961-3)やブドウ(Journal of Agricultural and Food Chemistry (2016), 64(21), 4189-4197)などから検出・同定されている。
【0014】
しかしながら、これらの化合物について、その香気特性は知られておらず、香味改善剤として使用できることも知られていなかった。本発明者らは、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドは、共通してフローラルなどに代表される特徴的な香気を呈し、2-フェニルベンズアルデヒドについては他にもグリーン、マスカット、マンゴー、ローズ、テルペン様などの多彩な香気を感じさせ、3-フェニルベンズアルデヒドについては他にもコスメティック、パウダリー、アニマリック、ゴム臭などの多彩な香気を感じさせ、4-フェニルベンズアルデヒドについてはグリーン、スイート、シナモン、コスメティック、パウダリー、スパイシーなどの多彩な香気を感じさせ、かつ2-フェニルベンズアルデヒドおよび3-フェニルベンズアルデヒドより香気が強いものであることを初めて見出した。そして、後述の実施例にその一例を示すように、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒド(以下これらを総称して「本件化合物」という場合がある。)を本件香味改善剤として各種香味の消費財等に添加することで、その消費財等の香味(香粧品等であれば香気)を改善することができることも初めて見出した。
【0015】
本件香味改善剤は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物のみからなるが、当業者が有する通常の知識に基づいて実質的にこれらの化合物のみからなればよく、例えば、これらの化合物を試薬として購入した際に残存する不純物を含むことは香味改善に影響のない限り問題ない。
【0016】
なお、本件香味改善剤は、各種香味を改善する効果が優れており、コク感を上げる効果が著しい。そのため、本件組成物は、飲食品用香味改善剤として使用することが好適であり、飲食品用コク感改善剤として使用することがさらに好適である。また、果汁感を上げる効果も著しいことから、飲食品の香味や香粧品の香気の果汁感を改善するため、果汁感改善剤として使用することが好適である。本明細書において、「コク感」とは、香味のボディ感および/またはボリューム感に富み、かつ、まろやかであり、喫食後の香味のミドル以降の余韻も十分に感じられる感覚を意味する。
【0017】
本件香味改善剤の添加対象は特に限定されないが、香料組成物に代表される消費財添加用組成物や、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品等の各種消費財を例示できる。
【0018】
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドの入手方法は特に限定されず、例えば当業者に採用可能な任意の方法で合成して得てもよいし、市販品を購入してよい。入手した2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドは、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0019】
添加対象の香味改善組成物中の本件香味改善剤の濃度(本件香味改善剤として本件化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、香味改善組成物の香味特性および/または香味改善組成物の添加対象に応じて任意に決定できるが、好ましくは、香味改善組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0020】
本件香味改善剤の添加対象である香味改善組成物としては特に限定されないが、特に好ましいものとして、フルーツ香味改善組成物(具体的には、柑橘類であればオレンジ香味改善組成物、レモン香味改善組成物、グレープフルーツ香味改善組成物、ライム香味改善組成物、ユズ香味改善組成物、カボス香味改善組成物、スダチ香味改善組成物、ハッサク香味改善組成物、シークワーサー香味改善組成物、イヨカン香味改善組成物、金柑香味改善組成物、マンダリン香味改善組成物、みかん香味改善組成物が例示でき、その他フルーツとしてはグレープ香味改善組成物(グレープとは赤ブドウ、白ブドウ、黒ブドウを含む。以下同じ。)、ピーチ香味改善組成物、ストロベリー香味改善組成物、マンゴー香味改善組成物、ペアー(洋ナシ)香味改善組成物、アップル香味改善組成物、パイナップル香味改善組成物、メロン香味改善組成物、バナナ香味改善組成物、ライチ香味改善組成物、キウイ香味改善組成物、サクランボ香味改善組成物、アンズ(アプリコット)香味改善組成物などが例示できる。)、コーヒー香味改善組成物、茶香味改善組成物(具体的には、紅茶香味改善組成物、緑茶香味改善組成物、抹茶香味改善組成物、焙じ茶香味改善組成物、ウーロン茶香味改善組成物が例示できる。)、酒類香味改善組成物(具体的には、ビール香味改善組成物、ワイン香味改善組成物、日本酒香味改善組成物、蒸留酒香味改善組成物(具体的には、焼酎香味改善組成物、ウイスキー香味改善組成物が挙げられる。)が挙げられる。)、チョコレート香味改善組成物、ココア香味改善組成物、スパイスまたはハーブ香味改善組成物(具体的には、シナモン香味改善組成物、カルダモン香味改善組成物、キャラウェイ香味改善組成物、クミン香味改善組成物、クローブ香味改善組成物、コショウ香味改善組成物、コリアンダー香味改善組成物、サンショウ香味改善組成物、シソ香味改善組成物、ショウガ香味改善組成物、スターアニス香味改善組成物、タイム香味改善組成物、ナツメグ香味改善組成物、バジル香味改善組成物、マジョラム香味改善組成物、ローズマリー香味改善組成物、ローレル香味改善組成物、オレガノ香味改善組成物が挙げられる。)、などが挙げられる。
【0021】
特に、本件香味改善剤が2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドまたはこれらの混合物からなる場合は、コーヒー、紅茶、各種フルーツ、ビール、ワイン、日本酒、蒸留酒、チョコレート、ココア、抹茶の各種香味改善組成物が好適な例として挙げられる。本件香味改善剤が4-フェニルベンズアルデヒドからなる場合は、コーヒー、紅茶、各種フルーツ、ビール、ワイン、日本酒、蒸留酒、チョコレート、スパイス、ハーブ、ココア、抹茶の各種香味改善組成物が好適な例として挙げられる。
【0022】
また、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示できる。また、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物は、さらに各種香料組成物に添加して、当該香料組成物に香味を付与し当該香料組成物の香味を改善することもできる。
【0023】
添加対象の飲食品または香粧品中の本件香味改善剤の濃度は、飲食品の香味特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、飲食品または香粧品の全体質量に対して、100ppt~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0024】
本件香味改善剤を添加可能な飲食品(本件香味改善剤を添加した香味改善組成物を添加可能な飲食品も同様である。以下同じ。)の風味は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー(洋ナシ)、グレープ、アンズ(アプリコット)などの柑橘以外の各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;チョコレート(カカオ)風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビ、オレガノなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビール、発泡酒、ノンアルコールビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
【0025】
本件香味改善剤を添加可能な飲食品の中で、最も好適な例としては、フルーツ風味飲食品(具体的には、柑橘類であればオレンジ風味飲食品、レモン風味飲食品、グレープフルーツ風味飲食品、ライム風味飲食品、ユズ風味飲食品、カボス風味飲食品、スダチ風味飲食品、ハッサク風味飲食品、シークワーサー風味飲食品、イヨカン風味飲食品、金柑風味飲食品、マンダリン風味飲食品、みかん風味飲食品が例示でき、その他フルーツであればグレープ風味飲食品、ピーチ風味飲食品、ストロベリー風味飲食品、マンゴー風味飲食品、ペアー(洋ナシ)風味飲食品、アップル風味飲食品、パイナップル風味飲食品、メロン風味飲食品、バナナ風味飲食品、ライチ風味飲食品、キウイ風味飲食品、サクランボ風味飲食品、アンズ(アプリコット)風味飲食品が例示できる。)、コーヒー風味飲食品、茶風味飲食品(具体的には、紅茶風味飲食品、緑茶風味飲食品、抹茶風味飲食品、焙じ茶風味飲食品、ウーロン茶風味飲食品が挙げられる。)、酒類風味飲食品(具体的には、ビール風味飲食品、ワイン風味飲食品、日本酒風味飲食品、蒸留酒風味飲食品(具体的には、焼酎風味飲食品、ウイスキー風味飲食品が挙げられる。)が挙げられる。)、チョコレート風味飲食品、ココア風味飲食品、スパイスまたはハーブ風味飲食品(具体的には、シナモン風味飲食品、カルダモン風味飲食品、キャラウェイ風味飲食品、クミン風味飲食品、クローブ風味飲食品、コショウ風味飲食品、コリアンダー風味飲食品、サンショウ風味飲食品、シソ風味飲食品、ショウガ風味飲食品、スターアニス風味飲食品、タイム風味飲食品、ナツメグ風味飲食品、バジル風味飲食品、マジョラム風味飲食品、ローズマリー風味飲食品、ローレル風味飲食品、オレガノ風味飲食品が挙げられる。)が挙げられる。
【0026】
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0027】
本件香味改善剤を添加可能な香粧品(本件香味改善剤を含有する香味改善組成物を添加可能な香粧品も同様である。以下同じ。)は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディ用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。
【0028】
(消費財添加用組成物)
本発明の一実施の形態に係る消費財添加用組成物(以下「本件組成物」という場合がある。)は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する。ただし、本件組成物が2-フェニルベンズアルデヒドのみを有効成分として含有する場合は、ビーフ香味を改善するための消費財添加用組成物、ポーク香味を改善するための消費財添加用組成物およびチキン香味を改善するための消費財添加用組成物は含まれない(以下同じ。)。
【0029】
本件組成物の有効成分である2-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ia)で表される化合物であり、3-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ib)で表される化合物であり、4-フェニルベンズアルデヒドは、下記式(Ic)で表される化合物である。
【0030】
【化2】
前述したように、2-フェニルベンズアルデヒドは、ショウヨウダイオウ(Flavour and Fragrance Journal (1996), 11(1), 57-60)、ウラルカンゾウ(Flavour and Fragrance Journal (1990), 5(3), 157-60)から検出・同定され、また、ビーフフレーバー、チキンフレーバーおよびポークフレーバー(Shipin Yu Fajiao Gongye (2013), 39(6), 180-185)から同定された105の成分の一つとして検出されており、3-フェニルベンズアルデヒドはカンキョウ(Agricultural and Biological Chemistry (1988), 52(11), 2961-3)などから検出されており、4-フェニルベンズアルデヒドはショウガ(Agricultural and Biological Chemistry (1988), 52(11), 2961-3)やブドウ(Journal of Agricultural and Food Chemistry (2016), 64(21), 4189-4197)などから検出・同定されている。
【0031】
しかしながら、これらの化合物について、消費財添加用組成物(特に、香料組成物、飲食品用香味改善組成物、飲食品用コク感改善組成物、果汁感改善組成物の有効成分として使用できることについては全く知られていなかった。後述の実施例にその一例を示すように、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドを有効成分とする本件組成物を各種香味の消費財に添加することで、その消費財の香味(香粧品等であれば香気)を改善することができることも初めて見出した。
【0032】
なお、本件組成物は消費財の香味を改善することから、香味改善組成物と言い換えることもできる。ここで、香味改善組成物とは、天然香料素材の抽出物、精油および/または合成香料素材を含む香料組成物(フレーバー)、呈味付与組成物等を含む概念である。例えば、「レモン香味改善組成物」とは、レモンの香味を有する香味改善組成物であって、天然香料素材であるレモン抽出物、精油および合成香料素材(代表的にはシトラールおよびその類縁体、ゲラニオール等)、ならびにこれらのいずれか一方または両方を含むレモン香料組成物(フレーバーまたはフレグランス)、レモン呈味付与組成物等が例示できる。
【0033】
本件組成物は、各種香味を改善する効果が優れており、特にコク感を上げる効果が著しい。そのため、本件組成物は、飲食品用香味改善組成物として使用することが好適であり、飲食品用コク感改善組成物として使用することがさらに好適である。また、果汁感を上げる効果も著しいことから、飲食品の香味や香粧品の香気の果汁感を改善するため、果汁感改善組成物として使用することが好適である。
【0034】
本件組成物は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドのいずれか1つ以上のみで他の成分を含まないように構成してもよいし、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドまたは4-フェニルベンズアルデヒドのいずれか1つ以上を所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。例えば、本件組成物が2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドまたは4-フェニルベンズアルデヒド以外の成分として溶媒および/または他の香気成分を含む場合、本件組成物自体を香味付与組成物(香料組成物)として使用することもできる。
【0035】
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの入手方法は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0036】
本件組成物中の2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度(これらの化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、本件組成物の添加対象である消費財の香味特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、本件組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0037】
本件組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、香料組成物、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示でき、中でも飲食品であることが好ましい。消費財の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。 例えば、本件組成物は、各種香料組成物に添加して、当該香料組成物の香味を改善することができる。本件組成物は、フルーツ風味飲食品(具体的には、柑橘類であればオレンジ風味飲食品、レモン風味飲食品、グレープフルーツ風味飲食品、ライム風味飲食品、ユズ風味飲食品、カボス風味飲食品、スダチ風味飲食品、ハッサク風味飲食品、シークワーサー風味飲食品、イヨカン風味飲食品、金柑風味飲食品、マンダリン風味飲食品、みかん風味飲食品が例示でき、グレープ風味飲食品、ピーチ風味飲食品、ストロベリー風味飲食品、マンゴー風味飲食品、ペアー(洋ナシ)風味飲食品、アップル風味飲食品、パイナップル風味飲食品、メロン風味飲食品、バナナ風味飲食品、ライチ風味飲食品、キウイ風味飲食品、サクランボ風味飲食品、アンズ(アプリコット)風味飲食品が例示できる。)、コーヒー風味飲食品、茶風味飲食品(具体的には、紅茶風味飲食品、緑茶風味飲食品、抹茶風味飲食品、焙じ茶風味飲食品、ウーロン茶風味飲食品が挙げられる。)、酒類風味飲食品(具体的には、ビール風味飲食品、ワイン風味飲食品、日本酒風味飲食品、蒸留酒風味飲食品(具体的には、焼酎風味飲食品、ウイスキー風味飲食品が挙げられる。)が挙げられる。)、チョコレート風味飲食品、ココア風味飲食品、スパイスまたはハーブ風味飲食品(具体的には、シナモン風味飲食品、カルダモン風味飲食品、キャラウェイ風味飲食品、クミン風味飲食品、クローブ風味飲食品、コショウ風味飲食品、コリアンダー風味飲食品、サンショウ風味飲食品、シソ風味飲食品、ショウガ風味飲食品、スターアニス風味飲食品、タイム風味飲食品、ナツメグ風味飲食品、バジル風味飲食品、マジョラム風味飲食品、ローズマリー風味飲食品、ローレル風味飲食品、オレガノ風味飲食品が挙げられる。)用のそれぞれとして好適に使用することができる。
【0038】
特に、本件組成物が2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドまたはこれらの混合物を有効成分として含有する場合は、その添加対象として、コーヒー、紅茶、フルーツ、ビール、ワイン、日本酒、蒸留酒、チョコレート、ココア、抹茶の各種風味飲食品が好適な添加対象例として挙げられる。本件組成物が4-フェニルベンズアルデヒドを有効成分として含有する場合は、その添加対象として、コーヒー、紅茶、フルーツ、ビール、ワイン、日本酒、蒸留酒、チョコレート、スパイス、ハーブ、ココア、抹茶の各種香味改善組成物が好適な添加対象例として挙げられる。
【0039】
本件組成物を香料組成物に添加する場合において、当該香料組成物中の、本件組成物の有効成分である本件化合物の濃度(本件化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、香料組成物の香気特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、香料組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0040】
本件組成物を消費財(例えば飲食品または香粧品)に添加する場合において、当該消費財中の、本件組成物の有効成分である本件化合物の濃度は、消費財の香味特性に応じて任意に決定できるが、好ましくは、消費財の全体質量に対して、100ppt~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0041】
(香料組成物)
本発明の一実施の形態に係る香料組成物(以下、本件香料組成物という場合がある。)は、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物の一態様、または本件組成物の一態様であり、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドを所定量含有し、着香を目的として各種物品に添加することができる。本件香料組成物は、各種物品に添加することでその物品の香味を改善することができる。
【0042】
本件香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)が挙げられる。添加対象となる物品の例としては、前述のように、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財が挙げられる。本件香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0043】
本件香料組成物中の2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度(これらの化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)は、香料組成物の添加対象に応じて任意に決定でき、前述の本件組成物と同様、有効成分である2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度を基準として添加量を調整すればよい。2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度の例として、香料組成物の全体質量に対して、1ppb~0.1%(1000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、10ppb~100ppm、100ppb~100ppm、10ppb~10ppm、100ppb~10ppmのいずれかの範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0044】
また、本件香料組成物は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドに加えて、さらに他の任意の化合物または成分を含有し得る。
【0045】
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物、天然精油、香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類または溶剤などを例示することができる。
【0046】
香料化合物等の例としては、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料(平成12年1月14日発行)」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)」、および「合成香料 化学と商品知識(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)」に記載されているものを挙げる天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0047】
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0048】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルコール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-ターピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0049】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0050】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、アセトイン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0051】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0052】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0053】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0054】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0055】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン(トリメチルピラジンなど)、アントラニル酸メチル、などが挙げられる。
【0056】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0057】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0058】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼまたはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0059】
本件香料組成物は、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物または本件組成物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に添加して調製することができる。
【0060】
本件香料組成物の形態としては、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物または本件組成物その他必要に応じて含まれる他の成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、またはその他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
【0061】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0062】
また、乳化製剤とするためには、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物または本件組成物を、水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。本件香味改善剤を添加した香味改善組成物または本件組成物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、またはカゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本件香味改善剤を添加した香味改善組成物1質量部または本件組成物1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化状態を安定させるため、係る乳化液には水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0063】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0064】
本件香料組成物は、上記以外に、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
【0065】
(消費財)
本発明の一実施の形態に係る消費財(以下、本件消費財という場合がある。)は、本件香味改善剤または本件組成物を所定量含むものである。本件消費財は、本件香味改善剤または本件組成物が有効量添加されているため、香味が改善された消費財を提供することができる。
【0066】
本件消費財の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた「本件香味改善剤を添加可能な飲食品」、および「本件香味改善剤を添加可能な香粧品」の通りである。
【0067】
本件消費財において、消費財に対する本件香味改善剤または本件組成物の添加量は、消費財の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定でき、有効成分である2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度(これらの化合物を2種以上含む場合はそれらの合計濃度。以下同じ。)を基準として添加量を調製すればよい。2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒドの濃度の具体例は、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0068】
(消費財の香味改善方法)
本発明の一実施の形態に係る消費財の香味改善方法は、2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドからなる群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)を、消費財に添加する工程を含む。
【0069】
本件化合物を消費財に有効量添加することで、その消費財の香味を改善することができる。本件化合物は本件香味改善剤として添加することもできるし、本件組成物の有効成分として添加することもできる。したがって、本実施の形態に係る消費財の香味改善方法は、本件香味改善剤または本件組成物を、消費財に添加する工程を含む、と言い換えることができる。
【0070】
本実施の形態に係る消費財の香味改善方法において、消費財に対する本件化合物(すなわち本件香味改善剤または本件組成物の添加量は、有効成分である本件化合物によって、香味が改善される有効量であればよく、消費財の種類や形態に応じて任意に設定することができる。この場合において、消費財中の本件化合物の濃度の例としては、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通りである。
【0071】
消費財の香味改善方法において、本件化合物(本件香味改善剤または本件組成物)を消費財に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物(本件香味改善剤または本件組成物)を消費財に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0072】
本実施の形態に係る消費財の香味改善方法において、好ましくは、前記消費財が飲食品であって、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が100ppt~100ppmの範囲となるように前記化合物を添加する。これにより、前記飲食品の香味を好適に改善することができる。特に好ましくは、飲食品の果汁感および/または飲食品のコク感を改善することができる。他の好ましい例として、前記消費財が香粧品であって、前記工程では、前記香粧品の全質量を基準として、前記化合物の合計濃度が100ppt~100ppmの範囲となるように前記化合物を添加する。これにより、前記香粧品の香気を好適に改善することができる。特に好ましくは、香粧品の香気の果汁感を改善することができる。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]香料組成物への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、レモン香料組成物(香味改善組成物)、グレープフルーツ香料組成物(香味改善組成物)、グレープ香料組成物(香味改善組成物)、ストロベリー香料組成物(香味改善組成物)に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0075】
市販の2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドをそれぞれ単独で含む1%エタノール溶液、1%プロピレングリコール溶液および1%MCT(炭素数8~12の脂肪酸からなる中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド))溶液をそれぞれ調製した(以下の実施例でも使用する)。
【0076】
[実施例1-1]レモン香料組成物の調整
下記表1の処方に従って、レモン基本調合香料組成物を調製した。
【0077】
【表1】
【0078】
レモン基本調合香料組成物に、本件化合物の1%エタノール溶液を、レモン基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表5に示す濃度になるように添加し、本発明品1-1~1-12の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-1~1-12の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないレモン基本調合香料組成物を対照品1-1として、本発明品1-1~1-12を対照品1-1と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0079】
[実施例1-2]グレープフルーツ香料組成物の調整
下記表2の処方に従って、グレープフルーツ基本調合香料組成物を調製した。
【0080】
【表2】
【0081】
グレープフルーツ基本調合香料組成物に、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を、グレープフルーツ基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表5に示す濃度になるように添加し、本発明品1-13~1-24の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-13~1-24の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないグレープフルーツ基本調合香料組成物を対照品1-2として、本発明品1-13~1-24を対照品1-2と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0082】
[実施例1-3]グレープ香料組成物の調整
下記表3の処方に従って、グレープ(赤ブドウ)基本調合香料組成物を調製した。
【0083】
【表3】
【0084】
グレープ基本調合香料組成物に、本件化合物の1%MCT溶液を、グレープ基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表5に示す濃度になるように添加し、本発明品1-25~1-36の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-25~1-36の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないグレープ基本調合香料組成物を対照品1-3として、本発明品1-25~1-36を対照品1-3と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0085】
[実施例1-4]ストロベリー香料組成物の調整
下記表4の処方に従って、ストロベリー基本調合香料組成物を調製した。
【0086】
【表4】
【0087】
ストロベリー基本調合香料組成物に、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を、ストロベリー基本調合香料組成物中の本件化合物の濃度が下記表5に示す濃度になるように添加し、本発明品1-37~1-48の香料組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-37~1-48の香料組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないストロベリー基本調合香料組成物を対照品1-4として、本発明品1-37~1-48を対照品1-4と比べた際の香気についてコメントさせた。
【0088】
[実施例1-5]各種香料組成物の官能評価
実施例1-1~1-4(本発明品1-1~1-48)の官能評価の結果を下記表5に示す。
【0089】
【表5】
【0090】
表5に示すように、本件化合物は、各種香料組成物の香気を改善することが確認された。
【0091】
[実施例2]フルーツ風味飲食品への添加効果1(柑橘類)
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、オレンジジュース、レモンジュース、ライムジュース、ユズジュース、みかんジュースの各種柑橘風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0092】
[実施例2-1]オレンジジュースの調製
市販のオレンジジュースに、本件化合物が下記表6の本発明品2-1~2-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-1~2-12のオレンジジュースを調製した。
【0093】
そして、得られた本発明品2-1~2-12のオレンジジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないオレンジジュースを対照品2-1として、本発明品2-1~2-12を対照品2-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-1と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品2-1に比べて著しく増加した:5点
対照品2-1に比べて大きく増加した:4点
対照品2-1に比べてある程度増加した:3点
対照品2-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-1と同等である:1点
【0094】
[実施例2-2]レモンジュースの調製
市販のレモンジュースに、本件化合物が下記表6の本発明品2-13~2-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-13~2-24のレモンジュースを調製した。
【0095】
そして、得られた本発明品2-13~2-24のレモンジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないレモンジュースを対照品2-2として、本発明品2-13~2-24を対照品2-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-2と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品2-2に比べて著しく増加した:5点
対照品2-2に比べて大きく増加した:4点
対照品2-2に比べてある程度増加した:3点
対照品2-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-2と同等である:1点
【0096】
[実施例2-3]ライムジュースの調製
市販のライムジュースに、本件化合物が下記表6の本発明品2-25~2-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-25~2-36のライムジュースを調製した。
【0097】
そして、得られた本発明品2-25~2-36のライムジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないライムジュースを対照品2-3として、本発明品2-25~2-36を対照品2-3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-3と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品2-3に比べて著しく増加した:5点
対照品2-3に比べて大きく増加した:4点
対照品2-3に比べてある程度増加した:3点
対照品2-3に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-3と同等である:1点
【0098】
[実施例2-4]ユズジュースの調製
市販のユズジュースに、本件化合物が下記表6の本発明品2-37~2-48に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-37~2-48のユズジュースを調製した。
【0099】
そして、得られた本発明品2-37~2-48のユズジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないユズジュースを対照品2-4として、本発明品2-37~2-48を対照品2-4と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-4と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品2-4に比べて著しく増加した:5点
対照品2-4に比べて大きく増加した:4点
対照品2-4に比べてある程度増加した:3点
対照品2-4に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-4と同等である:1点
【0100】
[実施例2-5]みかんジュースの調製
市販のみかんジュースに、本件化合物が下記表6の本発明品2-49~2-60に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品2-49~2-60のみかんジュースを調製した。
【0101】
そして、得られた本発明品2-49~2-60のみかんジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないみかんジュースを対照品2-5として、本発明品2-49~2-60を対照品2-5と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2-5と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品2-5に比べて著しく増加した:5点
対照品2-5に比べて大きく増加した:4点
対照品2-5に比べてある程度増加した:3点
対照品2-5に比べてわずかに増加した:2点
対照品2-5と同等である:1点
【0102】
[実施例2-6]各種飲食品の官能評価
実施例2-1~2-5(本発明品2-1~2-60)の官能評価の結果を表6に示す。
【0103】
【表6】
【0104】
表6に示すように、本件化合物は、各種フルーツ風味を改善し、特に共通して各種フルーツ風味飲料に果汁感を増強することが確認された。
【0105】
[実施例3]フルーツ風味飲食品への添加効果2
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、ピーチジュース、アップルジュース、マンゴージュース、マスカットジュース、ライチジュースの各種フルーツ風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0106】
[実施例3-1]ピーチジュースの調製
市販のピーチジュースに、本件化合物が下記表7の本発明品3-1~3-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-1~3-12のピーチジュースを調製した。
【0107】
そして、得られた本発明品3-1~3-12のピーチジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないピーチジュースを対照品3-1として、本発明品3-1~3-12を対照品3-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-1と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品3-1に比べて著しく増加した:5点
対照品3-1に比べて大きく増加した:4点
対照品3-1に比べてある程度増加した:3点
対照品3-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-1と同等である:1点
【0108】
[実施例3-2]アップルジュースの調製
市販のアップルジュースに、本件化合物が下記表7の本発明品3-13~3-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-13~3-24のアップルジュースを調製した。
【0109】
そして、得られた本発明品3-13~3-24のアップルジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないアップルジュースを対照品3-2として、本発明品3-13~3-24を対照品3-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-2と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品3-2に比べて著しく増加した:5点
対照品3-2に比べて大きく増加した:4点
対照品3-2に比べてある程度増加した:3点
対照品3-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-2と同等である:1点
【0110】
[実施例3-3]マンゴージュースの調製
市販のマンゴージュースに、本件化合物が下記表7の本発明品3-25~3-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-25~3-36のマンゴージュースを調製した。
【0111】
そして、得られた本発明品3-25~3-36のマンゴージュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないマンゴージュースを対照品3-3として、本発明品3-25~3-36を対照品3-3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-3と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品3-3に比べて著しく増加した:5点
対照品3-3に比べて大きく増加した:4点
対照品3-3に比べてある程度増加した:3点
対照品3-3に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-3と同等である:1点
【0112】
[実施例3-4]マスカットジュースの調製
市販のマスカットジュースに、本件化合物が下記表7の本発明品3-37~3-48に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-37~3-48のマスカットジュースを調製した。
【0113】
そして、得られた本発明品3-37~3-48のマスカットジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないマスカットジュースを対照品3-4として、本発明品3-37~3-48を対照品3-4と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-4と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品3-4に比べて著しく増加した:5点
対照品3-4に比べて大きく増加した:4点
対照品3-4に比べてある程度増加した:3点
対照品3-4に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-4と同等である:1点
【0114】
[実施例3-5]ライチジュースの調製
市販のライチジュースに、本件化合物が下記表7の本発明品3-49~3-60に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品3-49~3-60のライチジュースを調製した。
【0115】
そして、得られた本発明品3-49~3-60のライチジュースについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないライチジュースを対照品3-5として、本発明品3-49~3-60を対照品3-5と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3-5と比べた果汁感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<果汁感に関する評価基準>
対照品3-5に比べて著しく増加した:5点
対照品3-5に比べて大きく増加した:4点
対照品3-5に比べてある程度増加した:3点
対照品3-5に比べてわずかに増加した:2点
対照品3-5と同等である:1点
【0116】
[実施例3-6]各種飲食品の官能評価
実施例3-1~3-5(本発明品3-1~3-60)の官能評価の結果を表7に示す。
【0117】
【表7】
【0118】
表7に示すように、本件化合物は、各種フルーツ風味を改善し、特に共通して各種フルーツ飲料に果汁感を付与することが確認された。
【0119】
[実施例4] コーヒー風味飲食品への添加効果
市販のブラックコーヒーに、本件化合物が下記表8の本発明品4-1~4-12に対応する濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品4-1~4-12のブラックコーヒーを調製した。
【0120】
そして、得られた本発明品4-1~4-12のブラックコーヒーについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないブラックコーヒーを対照品4-1として、本発明品4-1~4-12を対照品4-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品4-1と比べたコク感(定義は前述のとおり)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品4-1に比べて著しく増加した:5点
対照品4-1に比べて大きく増加した:4点
対照品4-1に比べてある程度増加した:3点
対照品4-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品4-1と同等である:1点
本発明品4-1~4-12の官能評価の結果を表8に示す。
【0121】
【表8】
【0122】
表8に示すように、本件化合物は、コーヒー風味を改善し、特に共通してコク感および甘みを付与することが確認された。
【0123】
[実施例5] 各種茶風味飲食品への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、市販のペットボトル入りのストレートの紅茶、緑茶、抹茶ラテ、焙じ茶の各種茶風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0124】
[実施例5-1]紅茶の調製
市販の紅茶に、本件化合物が下記表9の本発明品5-1~5-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品5-1~5-12の紅茶を調製した。
【0125】
そして、得られた本発明品5-1~5-12の紅茶について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない紅茶を対照品5-1として、本発明品5-1~5-12を対照品5-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品5-1と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品5-1に比べて著しく増加した:5点
対照品5-1に比べて大きく増加した:4点
対照品5-1に比べてある程度増加した:3点
対照品5-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品5-1と同等である:1点
【0126】
[実施例5-2]緑茶の調製
市販の緑茶に、本件化合物が下記表9の本発明品5-13~5-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品5-13~5-24の緑茶を調製した。
【0127】
そして、得られた本発明品5-13~5-24の緑茶について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない緑茶を対照品5-2として、本発明品5-13~5-24を対照品5-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品5-2と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品5-2に比べて著しく増加した:5点
対照品5-2に比べて大きく増加した:4点
対照品5-2に比べてある程度増加した:3点
対照品5-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品5-2と同等である:1点
【0128】
[実施例5-3]抹茶ラテの調製
市販の抹茶に、本件化合物が下記表9の本発明品5-25~5-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品5-25~5-36の抹茶ラテを調製した。
【0129】
そして、得られた本発明品5-25~5-36の抹茶ラテについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない抹茶ラテを対照品5-3として、本発明品5-25~5-36を対照品5-3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品5-3と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品5-3に比べて著しく増加した:5点
対照品5-3に比べて大きく増加した:4点
対照品5-3に比べてある程度増加した:3点
対照品5-3に比べてわずかに増加した:2点
対照品5-3と同等である:1点
【0130】
[実施例5-4]焙じ茶の調製
市販の焙じ茶に、本件化合物が下記表9の本発明品5-37~5-48に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品5-37~5-48の焙じ茶を調製した。
【0131】
そして、得られた本発明品5-37~5-48の焙じ茶について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない焙じ茶を対照品5-4として、本発明品5-37~5-48を対照品5-4と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品5-4と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品5-4に比べて著しく増加した:5点
対照品5-4に比べて大きく増加した:4点
対照品5-4に比べてある程度増加した:3点
対照品5-4に比べてわずかに増加した:2点
対照品5-4と同等である:1点
【0132】
[実施例5-5]各種飲食品の官能評価
実施例5-1~5-4(本発明品5-1~5-48)の官能評価の結果を表9に示す。
【0133】
【表9】
【0134】
表9に示すように、本件化合物は、各種茶風味を改善し、特に共通してコク感および甘みを付与することが確認された。
【0135】
[実施例6] 各種酒類風味飲食品への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、市販のビールテイスト飲料、サングリア、ハイボールの各種の酒類風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0136】
[実施例6-1] ビールテイスト飲料の調製
市販のビールテイスト飲料に、本件化合物が下記表10の本発明品6-1~6-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品6-1~6-12のビールテイスト飲料を調製した。
【0137】
そして、得られた本発明品6-1~6-12のビールテイスト飲料について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないビールテイスト飲料を対照品6-1として、本発明品6-1~6-12を対照品6-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品6-1と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品6-1に比べて著しく増加した:5点
対照品6-1に比べて大きく増加した:4点
対照品6-1に比べてある程度増加した:3点
対照品6-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品6-1と同等である:1点
【0138】
[実施例6-2]サングリアの調製
市販のサングリア(赤ワインを用いたもの)に、本件化合物が下記表10の本発明品6-13~6-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品6-13~6-24のサングリアを調製した。
【0139】
そして、得られた本発明品6-13~6-24のサングリアについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないサングリアを対照品6-2として、本発明品6-13~6-24を対照品6-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品6-2と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品6-2に比べて著しく増加した:5点
対照品6-2に比べて大きく増加した:4点
対照品6-2に比べてある程度増加した:3点
対照品6-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品6-2と同等である:1点
【0140】
[実施例6-3]ハイボールの調製
市販のハイボール(アルコール度数約7%)に、本件化合物が下記表10の本発明品6-25~6-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品6-25~6-36のハイボールを調製した。
【0141】
そして、得られた本発明品6-25~6-36のハイボールについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないハイボールを対照品6-3として、本発明品6-25~6-36を対照品6-3と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品6-3と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品6-3に比べて著しく増加した:5点
対照品6-3に比べて大きく増加した:4点
対照品6-3に比べてある程度増加した:3点
対照品6-3に比べてわずかに増加した:2点
対照品6-3と同等である:1点
【0142】
[実施例6-4]各種飲食品の官能評価
実施例6-1~6-3(本発明品6-1~6-36)の官能評価の結果を表10に示す。
【0143】
【表10】
【0144】
表10に示すように、本件化合物は、各種酒類風味を改善し、特に共通してコク感を付与することが確認され、ワイン風味やウイスキー風味に対しコクのある熟成感を増強できることが確認された。
【0145】
[実施例7]カカオ風味飲食品への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、市販のチョコレートドリンク、ココアの各種カカオ風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0146】
[実施例7-1]チョコレートドリンクの調製
市販のチョコレートドリンクに、本件化合物が下記表11の本発明品7-1~7-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品7-1~7-12のチョコレートドリンクを調製した。
【0147】
そして、得られた本発明品7-1~7-12のチョコレートドリンクについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないチョコレートドリンクを対照品7-1として、本発明品7-1~7-12を対照品7-1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品7-1と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品7-1に比べて著しく増加した:5点
対照品7-1に比べて大きく増加した:4点
対照品7-1に比べてある程度増加した:3点
対照品7-1に比べてわずかに増加した:2点
対照品7-1と同等である:1点
【0148】
[実施例7-2]ココアの調製
市販のココアに、本件化合物が下記表11の本発明品7-13~7-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%プロピレングリコール溶液を添加し、本発明品7-13~7-24のココアを調製した。
【0149】
そして、得られた本発明品7-13~7-24のココアについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないココアを対照品7-2として、本発明品7-13~7-24を対照品7-2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品7-2と比べたコク感(定義は前述の通り)について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
<コク感に関する評価基準>
対照品7-2に比べて著しく増加した:5点
対照品7-2に比べて大きく増加した:4点
対照品7-2に比べてある程度増加した:3点
対照品7-2に比べてわずかに増加した:2点
対照品7-2と同等である:1点
【0150】
[実施例7-3]各種飲食品の官能評価
実施例7-1~7-2(本発明品7-1~7-24)の官能評価の結果を表11に示す。
【0151】
【表11】
【0152】
表11に示すように、本件化合物は、各種カカオ風味を改善し、特に共通してコク感を付与することが確認された。
【0153】
[実施例8]スパイスまたはハーブ風味飲食品への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、市販のコショウドレッシング、オレガノドレッシング、バジルドレッシングの各種スパイスまたはハーブ風味飲食品に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0154】
[実施例8-1]コショウドレッシングの調製
市販のコショウドレッシング(ブラックペッパー)に、本件化合物が下記表12の本発明品8-1~8-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%MCT溶液を添加し、本発明品8-1~8-12のコショウドレッシングを調製した。
【0155】
そして、得られた本発明品8-1~8-12のコショウドレッシングについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないコショウドレッシングを対照品8-1として、本発明品8-1~8-12を対照品8-1と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0156】
[実施例8-2]オレガノドレッシングの調製
市販のオレガノドレッシングに、本件化合物が下記表12の本発明品8-13~8-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%MCT溶液を添加し、本発明品8-13~8-24のオレガノドレッシングを調製した。
【0157】
そして、得られた本発明品8-13~8-24のオレガノドレッシングについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないオレガノドレッシングを対照品8-2として、本発明品8-13~8-24を対照品8-2と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0158】
[実施例8-3]バジルドレッシングの調製
市販のバジルドレッシングに、本件化合物が下記表12の本発明品8-25~8-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%MCT溶液を添加し、本発明品8-25~8-36のバジルドレッシングを調製した。
【0159】
そして、得られた本発明品8-25~8-36のバジルドレッシングについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないバジルドレッシングを対照品8-3として、本発明品8-25~8-36を対照品8-3と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0160】
[実施例8-4]各種飲食品の官能評価
実施例8-1~8-3(本発明品8-1~8-36)の官能評価の結果を表12に示す。
【0161】
【表12】
【0162】
表12に示すように、本件化合物は、各種スパイスまたはハーブ風味を改善することが確認された。
【0163】
[実施例9]フルーツ風味飲食品への添加効果
2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒドおよび4-フェニルベンズアルデヒドを、市販のバナナ風味アイス、パイナップル風味シャーベット、サクランボ風味アイス、アンズ風味ジェラートの各フルーツ風味飲食品(冷菓)に添加した際の効果について以下の通り確認した。
【0164】
[実施例9-1]バナナ風味アイスの調製
市販のバナナ風味アイスに、本件化合物が下記表13の本発明品9-1~9-12に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品9-1~9-12のバナナ風味アイスを調製した。
【0165】
そして、得られた本発明品9-1~9-12のバナナ風味アイスについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないバナナ風味アイスを対照品9-1として、本発明品9-1~9-12を対照品9-1と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0166】
[実施例9-2]パイナップル風味シャーベットの調製
市販のパイナップル風味シャーベットに、本件化合物が下記表13の本発明品9-13~9-24に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品9-13~9-24のパイナップル風味シャーベットを調製した。
【0167】
そして、得られた本発明品9-13~9-24のパイナップル風味シャーベットについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないパイナップル風味シャーベットを対照品9-2として、本発明品9-13~9-24を対照品9-2と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0168】
[実施例9-3]サクランボ風味アイスの調製
市販のサクランボ風味アイスに、本件化合物が下記表13の本発明品9-25~9-36に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品9-25~9-36のサクランボ風味アイスを調製した。
【0169】
そして、得られた本発明品9-25~9-36のサクランボ風味アイスについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないサクランボ風味アイスを対照品9-3として、本発明品9-25~9-36を対照品9-3と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0170】
[実施例9-4]アンズ風味ジェラートの調製
市販のアンズ風味ジェラートに、本件化合物が下記表13の本発明品9-37~9-48に対応する各濃度となるように、本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品9-37~9-48のアンズ風味ジェラートを調製した。
【0171】
そして、得られた本発明品9-37~9-48のアンズ風味ジェラートについて、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していないアンズ風味ジェラートを対照品9-4として、本発明品9-37~9-48を対照品9-4と比べた際の香味についてコメントさせた。
【0172】
[実施例9-5]各種飲食品の官能評価
実施例9-1~9-4(本発明品9-1~9-48)の官能評価の結果を表13に示す。
【0173】
【表13】
【0174】
表13に示すように、本件化合物は、冷菓においても、フルーツ風味を改善することが確認された。
【0175】
[実施例10]香粧品への添加効果
レモンの香り、ローズ(バラ)の香りとそれぞれ冠した2種の市販の洗濯用液体洗剤を用意し、それに対し、本件化合物が1ppmの濃度となるように本件化合物の1%エタノール溶液を添加し、本発明品10-1~10-6の洗濯用洗剤を調製した。
【0176】
そして、得られた本発明品10-1~10-6について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本件化合物を添加していない上記市販の洗濯用液体洗剤を対照品10-1(レモンの香り)、対照品10-2(ローズの香り)として、本発明品10-1~10-6をそれぞれ対応する対照品10-1~10-2と比べた際の香気の違いについてパネリストにコメントさせた。
【0177】
本発明品10-1~10-6の官能評価の結果を表14に示す。
【0178】
【表14】
【0179】
表14に示すように、本件化合物は、各種洗濯用液体洗剤の香気を改善することが確認され、香粧品においても香気改善に有効であることが確認された。
【0180】
[実施例のまとめ]
以上の実施例に示すように、本件化合物(2-フェニルベンズアルデヒド、3-フェニルベンズアルデヒド、4-フェニルベンズアルデヒド)に各種香味改善効果があることが確認された。