(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118307
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ΔΣ変調器およびΔΣ型A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H03M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024663
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謹司
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064BA03
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC15
5J064BC16
(57)【要約】
【課題】ΔΣ変調器の低消費電力化を可能とする技術を提供する。
【解決手段】アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣ変調器10は、デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータ16と、アナログの入力信号に応じた信号と帰還信号に応じた信号との差分に応じた信号を積分する積分回路12と、積分回路12の出力信号を量子化し、デジタルの出力信号を生成する量子化器14と、を備える。積分回路12は、直列に接続された複数の積分器を含む。複数の積分器のそれぞれは、入力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路のサンプリング結果に応じた信号を出力する増幅器とを有し、サンプリング回路によるサンプリングと増幅器による出力のホールドとが交互に繰り返されるように制御される。複数の積分器の少なくとも1つは、ホールドの時間がサンプリングの時間よりも長くなるように制御される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣ変調器であって、
前記デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、
前記アナログの入力信号に応じた信号と前記帰還信号に応じた信号との差分に応じた信号を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力信号を量子化し、前記デジタルの出力信号を生成する量子化器と、を備え、
前記積分回路は、直列に接続された複数の積分器を含み、
前記複数の積分器のそれぞれは、入力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じた信号を出力する増幅器とを有し、前記サンプリング回路によるサンプリングと前記増幅器による出力のホールドとが交互に繰り返されるように制御され、
前記複数の積分器の少なくとも1つは、前記ホールドの時間が前記サンプリングの時間よりも長くなるように制御される、
ΔΣ変調器。
【請求項2】
前記複数の積分器のうちの1段目の積分器は、前記ホールドの時間が前記サンプリングの時間よりも長くなるように制御される、
請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項3】
前記サンプリング回路は、前記サンプリングを行うためのキャパシタと、前記キャパシタに接続されたサンプリングスイッチと、前記キャパシタに接続された出力スイッチとを有し、フェーズφ1とフェーズφ2とが交互に繰り返されるように制御され、
前記フェーズφ1は、前記サンプリングスイッチがオンとなり、前記出力スイッチがオフとなり、前記キャパシタが、前記サンプリング回路に入力される信号に応じた電荷を蓄積することによって、前記サンプリングを行うフェーズであり、
前記フェーズφ2は、前記サンプリングスイッチがオフとなり、前記出力スイッチがオンとなり、前記増幅器による出力がホールドされるフェーズであり、
前記フェーズφ2の時間は、前記フェーズφ1の時間よりも長い、
請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項4】
クロック信号に基づいて第1区間と第2区間とが交互に繰り返される信号を生成し、生成した信号に基づいて前記サンプリング回路を制御する制御部をさらに備え、
前記第1区間は、前記クロック信号のMサイクル(M:自然数)に対応する、ハイまたはローの区間であり、
前記第2区間は、前記Mサイクルに続くNサイクル(N:自然数)に対応する、前記第1区間とは逆のハイまたはローの区間であり、
前記Mおよび前記Nは、N>Mを満たし、
前記制御部は、生成した信号に基づいて、前記第1区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ1となり、前記第2区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ2となるように、前記サンプリングスイッチおよび前記出力スイッチを制御する、
請求項3に記載のΔΣ変調器。
【請求項5】
クロック信号に基づく信号を生成する遅延回路と、AND回路と、前記AND回路の出力に基づいて前記サンプリング回路を制御する制御回路とを有する制御部をさらに備え、
前記遅延回路は、前記クロック信号の半サイクルをTckとして、前記クロック信号をΔT(0<ΔT<Tck)遅延させた信号を生成し、
前記AND回路は、前記クロック信号を第1入力とし、前記遅延回路が生成した信号を第2入力として、Tck-ΔTの長さの第1区間とTck+ΔTckの長さの第2区間とが交互に繰り返される信号を生成し、
前記制御回路は、前記AND回路が生成した信号に基づいて、前記第1区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ1となり、前記第2区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ2となるように、前記サンプリングスイッチおよび前記出力スイッチを制御する、
請求項3に記載のΔΣ変調器。
【請求項6】
前記複数の積分器は、遅延器による遅延を受けた信号を出力する第1積分器と、遅延器による遅延を受けていない信号を出力する第2積分器とを含み、
前記第1積分器および前記第2積分器は、前記積分回路の出力信号が収束するように配置される、
請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項7】
前記増幅器に入力されるバイアス電流を調整する電流調整回路をさらに備え、
前記増幅器は、前記バイアス電流に応じた速度で動作する、
請求項1に記載のΔΣ変調器。
【請求項8】
請求項1に記載のΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器が生成した前記デジタルの出力信号をフィルタリングするデジタルフィルタと、を備える、
ΔΣ型A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ΔΣ変調器およびΔΣ型A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号処理などにおいて、ΔΣ変調を利用したA/Dコンバータ(以下、「ΔΣ型A/Dコンバータ」ともいう。)が広く利用されている(特許文献1,2を参照)。ΔΣ型A/Dコンバータは、アナログの入力信号をオーバーサンプリングし、オーバーサンプリングした結果をデジタルフィルタで平滑化し、デジタルの出力信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-101247号公報
【特許文献2】特開2014-171035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ΔΣ型A/Dコンバータにおいてオーバーサンプリングを行うためのΔΣ変調器には、増幅器を有する積分器が用いられる。ΔΣ型A/Dコンバータの変換精度を高めるためには、この増幅器における動作電流を高める必要があった。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、ΔΣ変調器の低消費電力化を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣ変調器である。ΔΣ変調器は、デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、アナログの入力信号に応じた信号と帰還信号に応じた信号との差分に応じた信号を積分する積分回路と、積分回路の出力信号を量子化し、デジタルの出力信号を生成する量子化器と、を備える。積分回路は、直列に接続された複数の積分器を含む。複数の積分器のそれぞれは、入力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路のサンプリング結果に応じた信号を出力する増幅器とを有し、サンプリング回路によるサンプリングと増幅器による出力のホールドとが交互に繰り返されるように制御される。複数の積分器の少なくとも1つは、ホールドの時間がサンプリングの時間よりも長くなるように制御される。
【0007】
本開示の別の態様は、ΔΣ型A/Dコンバータである。ΔΣ型A/Dコンバータは、上記ΔΣ変調器と、ΔΣ変調器が生成したデジタルの出力信号をフィルタリングするデジタルフィルタと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ΔΣ変調器の低消費電力化を可能とする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るΔΣ型A/Dコンバータを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る積分器の回路図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るD/Aコンバータの回路図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係る制御部のブロック図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係る信号生成回路のブロック図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る信号生成回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る各積分器のサンプリングおよび出力の一例のタイミングチャートを示す図である。
【
図9】
図9(a)は、サンプリング時間とホールド時間とが同じである場合の積分器によるサンプリングおよび出力のタイミングチャートを示す図である。
図9(b)は、ホールド時間がサンプリング時間よりも長い場合の積分器によるサンプリングおよび出力の一例のタイミングチャートを示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係るΔΣ変調器の構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13(a)は、第4実施形態に係る積分回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図13(b)は、フェーズφ1およびフェーズφ2のそれぞれの長さを同一とした場合の積分回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図14】
図14は、第1変形例に係るサンプリング回路の回路図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係るサンプリング回路の回路図である。
【
図16】
図16(a)は、第3変形例に係る信号生成回路の回路図である。
図16(b)は、第3変形例に係る信号生成回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図17】
図17(a)は、第4変形例に係る信号生成回路の回路図である。
図17(b)は、第4変形例に係る信号生成回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係るΔΣ変調器は、アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換する。ΔΣ変調器は、デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、アナログの入力信号に応じた信号と帰還信号に応じた信号との差分に応じた信号を積分する積分回路と、積分回路の出力信号を量子化し、デジタルの出力信号を生成する量子化器と、を備える。積分回路は、直列に接続された複数の積分器を含む。複数の積分器のそれぞれは、入力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、サンプリング回路のサンプリング結果に応じた信号を出力する増幅器とを有し、サンプリング回路によるサンプリングと増幅器による出力のホールドとが交互に繰り返されるように制御される。複数の積分器の少なくとも1つは、ホールドの時間がサンプリングの時間よりも長くなるように制御される。この構成によれば、ΔΣ変調器の低消費電力化を実現できる。
【0013】
一実施形態において、複数の積分器のうちの1段目の積分器は、ホールドの時間がサンプリングの時間よりも長くなるように制御されてよい。
【0014】
一実施形態において、サンプリング回路は、サンプリングを行うためのキャパシタと、キャパシタに接続されたサンプリングスイッチと、キャパシタに接続された出力スイッチとを有し、フェーズφ1とフェーズφ2とが交互に繰り返されるように制御されてよい。フェーズφ1は、サンプリングスイッチがオンとなり、出力スイッチがオフとなり、キャパシタが、サンプリング回路に入力される信号に応じた電荷を蓄積することによって、サンプリングを行うフェーズであってよい。フェーズφ2は、サンプリングスイッチがオフとなり、出力スイッチがオンとなり、増幅器による出力がホールドされるフェーズであってよい。フェーズφ2の時間は、フェーズφ1の時間よりも長くてよい。
【0015】
一実施形態において、ΔΣ変調器は、クロック信号に基づいて第1区間と第2区間とが交互に繰り返される信号を生成し、生成した信号に基づいてサンプリング回路を制御する制御部をさらに備えてよい。第1区間は、クロック信号のMサイクル(M:自然数)に対応する、ハイまたはローの区間であってよい。第2区間は、Mサイクルに続くNサイクル(N:自然数)に対応する、第1区間とは逆のハイまたはローの区間であってよい。MおよびNは、N>Mを満たしてよい。制御部は、生成した信号に基づいて、第1区間においてサンプリング回路がフェーズφ1となり、第2区間においてサンプリング回路がフェーズφ2となるように、サンプリングスイッチおよび出力スイッチを制御してよい。
【0016】
一実施形態において、ΔΣ変調器は、クロック信号に基づく信号を生成する遅延回路と、AND回路と、AND回路の出力に基づいてサンプリング回路を制御する制御回路とを有する制御部をさらに備えてよい。遅延回路は、クロック信号の半サイクルをTckとして、クロック信号をΔT(0<ΔT<Tck)遅延させた信号を生成してよい。AND回路は、クロック信号を第1入力とし、遅延回路が生成した信号を第2入力として、Tck-ΔTの長さの第1区間とTck+ΔTckの長さの第2区間とが交互に繰り返される信号を生成してよい。制御回路は、AND回路が生成した信号に基づいて、第1区間においてサンプリング回路がフェーズφ1となり、第2区間においてサンプリング回路がフェーズφ2となるように、サンプリングスイッチおよび出力スイッチを制御してよい。
【0017】
一実施形態において、複数の積分器は、遅延器による遅延を受けた信号を出力する第1積分器と、遅延器による遅延を受けていない信号を出力する第2積分器とを含んでよい。第1積分器および第2積分器は、積分回路の出力信号が収束するように配置されてよい。
【0018】
一実施形態において、ΔΣ変調器は、増幅器に入力されるバイアス電流を調整する電流調整回路をさらに備えてよい。増幅器は、バイアス電流に応じた速度で動作してよい。
【0019】
一実施形態において、ΔΣ型A/Dコンバータは、上記ΔΣ変調器と、ΔΣ変調器が生成したデジタルの出力信号をフィルタリングするデジタルフィルタと、を備える。この構成によれば、ΔΣ変調器の低消費電力化を実現できる。
【0020】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るΔΣ型A/Dコンバータ1を示すブロック図である。ΔΣ型A/Dコンバータ1は、アナログの入力信号AinをA/D変換し、デジタル信号Doutを出力する。ΔΣ型A/Dコンバータ1は、主として、ΔΣ変調器10、デジタルフィルタ20および制御部30を備える。
【0022】
ΔΣ変調器10は、アナログの入力信号Ainをオーバーサンプリングするものであり、アナログの入力信号Ainをデジタルの出力信号Soutに変換する。デジタルフィルタ20は、ΔΣ変調器10が生成したデジタルの出力信号Soutを平滑化(フィルタリング)し、デジタル信号Doutを生成する。制御部30は、ΔΣ変調器10の動作を制御する。制御部30は、必要に応じて、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を有してよい。
【0023】
図2は、本実施形態に係るΔΣ変調器10の構成を示すブロック図である。ΔΣ変調器10は、3次の積分回路12、量子化器14およびD/Aコンバータ16を備える。
【0024】
D/Aコンバータ16は、ΔΣ変調器10のデジタルの出力信号Soutをアナログの帰還信号Sfbに変換する。
【0025】
積分回路12は、アナログの入力信号Ainに応じた信号と帰還信号Sfbに応じた信号との差分に応じた信号を積分する。積分回路12は、直列に接続された複数の積分器(具体的には、1段目の積分器121、2段目の積分器122、3段目の積分器123)、係数回路COa1~COa3,COb4および加算器ADD4を有する。なお、積分回路12の回路構成は、
図2に示す構成に限定されるものではなく、当業者には各種の変形例が存在することが理解される。たとえば、本実施形態に係る積分回路12は、3つの積分器を有するが、積分器の数は2であってよいし、4つ以上であってよい。
【0026】
1段目の積分器121は、入力信号Ainに応じた信号Ain’と、帰還信号Sfbに応じた信号Sfb’の差分に応じた信号Sa1を生成する。1段目の積分器121は、係数回路COb1,COc1、加算器ADD1および遅延器DE1を有する。係数回路COb1は、入力信号Ainに係数b1を乗じ、信号Ain’(=b1×Sin)を生成する。係数回路COc1は、帰還信号Sfbに係数-c1を乗じ、信号Sfb’(=-c1×Sfb)を生成する。加算器ADD1は、信号Ain’、信号Sfb’および1段目の積分器121の出力信号Sd1を加算して、
Sa1=b1×Sin-c1×Sfb+Sd1
で表される信号Sa1を生成する。遅延器DE1は、加算器ADD1が生成した信号Sa1を遅延させ、出力信号Sd1を生成する。
【0027】
2段目の積分器122は、係数回路COb2,COc2,COg1、加算器ADD2および遅延器DE2を有する。係数回路COb2は、入力信号Ainに係数b2を乗じた信号(=b2×Ain)を生成する。係数回路COc2は、1段目の積分器121の出力信号Sd1に係数c2を乗じた信号(=c2×Sd1)を生成する。係数回路g1は、3段目の積分器123の出力信号Sd3に係数-g1を乗じた信号(=-g1×Sd3)を生成する。加算器ADD2は、係数回路COb2,COc2,COg1が生成した信号および2段目の積分器122の出力信号Sd2を加算して、
Sa2=b2×Ain+c2×Sd1+Sd2-g1×Sd3
で表される信号Sa2を生成する。遅延器DE2は、Sa2を遅延させた出力信号Sd2を生成する。
【0028】
3段目の積分器123は、係数回路COb3,COc3、加算器ADD3および遅延器DE3を有する。係数回路COb3は、入力信号Ainに係数b3を乗じた信号(=b3×Ain)を生成する。係数回路COc3は、2段目の積分器122の出力信号Sd2に係数c3を乗じた信号(=c3×Sd2)を生成する。加算器ADD3は、係数回路COb3,COc3が生成した信号および3段目の積分器123の出力信号Sd3を加算して、
Sa3=b3×Ain+c3×Sd2+Sd3
で表される信号Sa3を生成する。遅延器DE3は、信号Sa3を遅延させた出力信号Sd3を生成する。
【0029】
係数回路COb4は、入力信号Ainに係数b4を乗じた信号(=b4×Ain)を生成する。係数回路COa1は、1段目の積分器121の出力信号Sd1に係数a1を乗じた信号(=a1×Sd1)を生成する。係数回路COa2は、2段目の積分器122の出力信号Sd2に係数a2を乗じた信号(=a2×Sd2)を生成する。係数回路COa3は、3段目の積分器123の出力信号Sd3に係数a3を乗じた信号(=a3×Sd3)を生成する。加算器ADD4は、係数回路COa1~COa3,COb4が生成した信号を加算して、
Sa4=b4×Ain+a1×Sd1+a2×Sd2+a3×Sd3
で表される出力信号Sa4を生成し、この出力信号Sa4を積分回路12の出力信号として量子化器14に入力する。
【0030】
量子化器14は、積分回路12の出力信号Sa4を量子化し、デジタルの出力信号Soutを生成する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る積分器100の回路図である。本実施形態に係る1段目の積分器121、2段目の積分器122および3段目の積分器123は、それぞれ、
図3に示す積分器100と同様の回路構成を有してよい。なお、1段目の積分器121、2段目の積分器122および3段目の積分器123の回路構成は、
図3に示す回路構成に限定されるものではなく、当業者には各種の変形例が存在することが理解される。
【0032】
積分器100は、第1入力端子102、第2入力端子104、サンプリング回路106、完全差動型の増幅器110、第1出力端子112、第2出力端子114、第3キャパシタC3および第4キャパシタC4を有する。
【0033】
サンプリング回路106は、第1入力端子102および第2入力端子104を通じて入力される信号をサンプリングする。サンプリング回路106は、後述するフェーズφ1とフェーズφ2とが交互に繰り返されるように制御される。サンプリング回路106は、基準電圧が供給される基準電圧ライン108、第1スイッチSW1~第8スイッチSW8、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を有する。
【0034】
第1スイッチSW1は、一端が第1入力端子102に接続され、他端が第1キャパシタC1の一端に接続されるように配置される。第2スイッチSW2は、一端が第2入力端子104に接続され、他端が第2キャパシタC2の一端に接続されるように配置される。第3スイッチSW3は、一端が第1キャパシタC1の一端に接続され、他端が基準電圧ライン108に接続されるように配置される。第4スイッチSW4は、一端が基準電圧ライン08に接続され、他端が第2キャパシタC2の一端に接続されるように配置される。
【0035】
第5スイッチSW5は、一端が第1キャパシタC1の他端に接続され、他端が基準電圧ライン108に接続されるように配置される。第6スイッチSW6は、一端が基準電圧ライン108に接続され、他端が第2キャパシタC2の他端に接続されるように配置される。第7スイッチSW7は、一端が第1キャパシタC1の他端に接続され、他端が第3キャパシタC3の一端に接続されるように配置される。第8スイッチSW8は、一端が第2キャパシタC2の他端に接続され、他端が第4キャパシタC4の一端に接続されるように配置される。
【0036】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第5スイッチSW5および第6スイッチSW6は、サンプリングスイッチとして機能する。第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第7スイッチSW7および第8スイッチSW8は、出力スイッチとして機能する。
【0037】
フェーズφ1では、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第5スイッチSW5および第6スイッチSW6がオンとなり、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第7スイッチSW7および第8スイッチSW8がオフとなる。このように各スイッチが動作することにより、フェーズφ1では、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2は、サンプリング回路106に入力された信号に応じた電荷をそれぞれ蓄積してサンプリングを行う。
【0038】
第3キャパシタC3は、一端が増幅器110の反転入力端子(-)に接続され、他端が第1出力端子112および増幅器110の非反転出力端子(+)に接続されるように配置される。第4キャパシタC4は、一端が増幅器110の非反転入力端子(+)に接続され、他端が第2出力端子114および増幅器110の反転出力端子(-)に接続されるように配置される。積分器100が形成する係数回路の特性は、積分器100が有するキャパシタの容量値によって決定されてよい。具体的には、1段目の積分器121の場合、係数回路COb1がもつ係数b1は、第1キャパシタC1および第3キャパシタC3の比によって決定されてよい。
【0039】
増幅器110は、サンプリング回路106のサンプリング結果に応じた信号を第1出力端子112および第2出力端子114に出力する。増幅器110は、外部から入力されるバイアス電流に応じた動作電流で動作する。増幅器110は、動作電流が大きいほど高速で動作する。
【0040】
フェーズφ2では、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第7スイッチSW7および第8スイッチSW8がオンとなり、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第5スイッチSW5および第6スイッチSW6がオフとなる。このように各スイッチが動作することにより、フェーズφ2では、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2に蓄積した電荷が、第3キャパシタC3および第4キャパシタC4に移動して蓄えられ、第3キャパシタC3および第4キャパシタC4において積分が行われる。このとき、増幅器110による出力は、ホールドされる。本実施形態では、フェーズφ2の時間は、フェーズφ1の時間より長い。
【0041】
図4は、本実施形態に係るD/Aコンバータ16の回路図である。D/Aコンバータ16は、第1入力端子160、第2入力端子162、基準電圧が供給される基準電圧ライン164、第1出力端子166、第2出力端子168、第1スイッチSW11~第12スイッチSW22、第1キャパシタC11および第2キャパシタC12を有する。
【0042】
第1スイッチSW11は、一端が第1入力端子160に接続され、他端が第1キャパシタC11の一端に接続されるように配置される。第2スイッチSW12は、一端が第2入力端子162に接続され、他端が第2キャパシタC12の一端に接続されるように配置される。第3スイッチSW13は、一端が第1キャパシタC11の一端に接続され、他端が第2入力端子162に接続されるように配置される。第4スイッチSW14は、一端が第1入力端子160に接続され、他端が第2キャパシタC12の一端に接続されるように配置される。第5スイッチSW15は、一端が第1キャパシタC11の他端に接続され、他端が基準電圧ライン164に接続されるように配置される。第6スイッチSW16は、一端が基準電圧ライン164に接続され、他端が第2キャパシタC12の他端に接続されるように配置される。
【0043】
第7スイッチSW17は、一端が第1キャパシタC11の他端に接続され、他端が第11スイッチSW21の一端に接続されるように配置される。第8スイッチSW18は、一端が第1キャパシタC11の他端に接続され、他端が第12スイッチSW22の一端に接続されるように配置される。第9スイッチSW19は、一端が第2キャパシタC12の他端に接続され、他端が第11スイッチSW21の一端に接続されるように配置される。第10スイッチSW20は、一端が第2キャパシタC12の他端に接続され、他端が第12スイッチSW22の一端に接続されるように配置される。
【0044】
第1出力端子166は、第11スイッチSW21の他端に接続される。第2出力端子168は、第12スイッチSW22の他端に接続される。第1出力端子166は、1段目の積分器121が
図3に示す積分器100で構成される場合、第7スイッチSW7の他端に接続される。第2出力端子168は、1段目の積分器121が
図3に示す積分器100で構成される場合、第8スイッチSW8の他端に接続される。
【0045】
D/Aコンバータ16では、データD(Dxは、Dの反転)に応じて、第7スイッチSW17~第10スイッチSW20のオン、オフが切り替わる。具体的には、第7スイッチSW17および第9スイッチSW19は、D=1(Dx=0)の場合にオンとなり、D=0(Dx=1)の場合にオフとなるように制御される。第8スイッチSW18および第10スイッチSW20は、Dx=1(D=0)の場合にオンとなり、Dx=0(D=1)の場合にオフとなるように制御される。これらのスイッチのオン、オフは、量子化器14によって決定されてよい。
【0046】
第1スイッチSW11、第2スイッチSW12、第5スイッチSW15および第6スイッチSW16は、フェーズφ1においてオンとなり、フェーズφ2においてオフとなるように制御される。第3スイッチSW13、第4スイッチSW14、第11スイッチSW21および第12スイッチSW22は、フェーズφ2においてオンとなり、フェーズφ1においてオフとなるように制御される。このように各スイッチが制御されることにより、フェーズφ1において第1キャパシタC11および第2キャパシタC12において、D/Aコンバータ16に入力される信号に応じた電荷がそれぞれ蓄積される。またフェーズφ2において、第1出力端子166および第2出力端子168から1段目の積分器121への出力が行われる。
【0047】
図5は、本実施形態に係る制御部30のブロック図である。制御部30は、クロック信号CKに基づいて第1区間と第2区間とが交互に繰り返される信号Ssを生成し、生成した信号に基づいてサンプリング回路106およびD/Aコンバータ16を制御できる。また、制御部30は、積分器100が有する増幅器110にバイアス電流を入力できる。本実施形態に係る制御部30は、統括回路300(電流調整回路)、電流生成回路320、信号生成回路340および信号調整回路360(制御回路)を有する。
【0048】
統括回路300は、制御部30の動作を統括する。具体的には、電流生成回路320の動作および信号生成回路340の動作を制御する。たとえば、統括回路300は、電流生成回路320が生成するバイアス電流の大きさを調整できる。
【0049】
電流生成回路320は、バイアス電流を生成する。電流生成回路320は、たとえば複数のカレントミラー回路を有してよい。電流生成回路320におけるスイッチング動作に応じて、バイアス電流の大きさが調整されてよい。バイアス電流は、積分器100が有する増幅器110に入力される。バイアス電流を小さくすることにより、増幅器110における動作電流を小さくできる。
【0050】
信号生成回路340は、積分器100が有するサンプリング回路106によるサンプリングの時間(以下、「サンプリング時間」ともいう。)および増幅器110の出力がホールドされる時間(以下、「ホールド時間」ともいう。)を制御するための信号Ssを生成する。具体的には、信号生成回路340は、統括回路300から制御信号Sconを受け、クロック信号CKに基づいて信号Ssを生成する。本実施形態に係る信号生成回路340の構成は、
図6を参照して後述する。
【0051】
信号調整回路360は、信号生成回路340が生成した信号Ssに基づいて、積分器100が有するサンプリング回路106の第1スイッチSW1~第8スイッチSW8のオン、オフを制御するための信号Sφ1,Sφ2を生成する。具体的には、信号調整回路360は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第5スイッチSW5および第6スイッチSW6を、フェーズφ1においてオンにし、フェーズφ2においてオフにするための信号Sφ1を生成してよい。また、信号調整回路360は、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第7スイッチSW7および第8スイッチSW8を、フェーズφ1においてオフにし、フェーズφ2においてオフにするための信号Sφ2を生成してよい。
【0052】
信号Sφ1,Sφ2は、D/Aコンバータ16が有する第1スイッチSW11~第6スイッチSW16、第11スイッチSW21および第12スイッチSW22のオン、オフを制御するために用いられてよい。なお、D/Aコンバータ16が有する第7スイッチSW17~第10スイッチSW20は、図示しない回路によって生成される信号に基づき制御されてよい。
【0053】
信号調整回路360は、フェーズφ1でオンとなるスイッチと、フェーズφ2でオフとなるスイッチとが同時にオンにならないように、信号Sφ1および信号Sφ2を生成してよい。これらのスイッチが同時にオンになると、積分器100が有する各キャパシタに蓄えられた電荷が意図せず移動する可能性がある。これらのスイッチが同時にオンにならないように信号Sφ1および信号Sφ2を生成することにより、キャパシタにおける意図しない電荷の移動が抑制される。
【0054】
図6は、本実施形態に係る信号生成回路340のブロック図である。信号生成回路340は、ディバイダ回路342、遅延回路344およびAND回路346を有する。
【0055】
ディバイダ回路342は、制御信号Sconを受け、クロック信号CKに基づく信号Sdiを生成する。具体的には、ディバイダ回路342は、ハイまたはローの第1区間と第1区間とは逆のハイまたはローの第2区間とが交互に続く信号Sdiを生成してよい。より具体的には、ディバイダ回路342は、クロック信号CKのMサイクル(M:自然数)に対応する区間を第1区間とし、そのMサイクルに続くNサイクル(N:自然数)に対応する区間を第2区間とするように信号Sdiを生成してよい。このとき、クロック信号CKのMサイクルがフェーズφ1の時間に対応し、クロック信号CKのNサイクルがフェーズφ2の時間に対応してよい。この場合、NをMよりも大きくすることにより、ホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることができる。
【0056】
遅延回路344は、ディバイダ回路342からの信号Sdiを遅延させ、信号Sdeを生成する。遅延回路344は、信号Sdiをクロック信号CKの半サイクルよりも短い時間で遅延させてよい。これにより、ディバイダ回路342のみでサンプリング回路106の各スイッチを制御するための信号を生成する場合よりも、より精度よく各スイッチを制御するための信号を生成できる。
【0057】
AND回路346は、ディバイダ回路342からの信号Sdiを第1入力とし、遅延回路344からの信号Sdeを第2入力として、信号調整回路360に入力される信号Ssを生成する。
【0058】
図7は、本実施形態に係る信号生成回路340の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7には、クロック信号CK、ディバイダ回路342が生成する信号Sdi、遅延回路344が生成する信号SdeおよびAND回路346が出力する信号Ssを示す。
【0059】
図7に示す例では、ディバイダ回路342は、クロック信号CKの4サイクルに対応するタイミングt1~t3の区間がハイ、その区間に続くクロック信号CKの7サイクルに対応するタイミングt3~t4の区間がローとなるように、信号Sdeを生成する。信号Sdeは、このハイの区間とローの区間とが繰り返されるように生成される。
【0060】
遅延回路344は、信号SdeをΔT遅延させる。これにより、遅延回路344が生成する信号Sdiにおいて、たとえばハイの区間は、タイミングt1からΔT遅れたタイミングt2で始まる。ここで、クロック信号CKの1サイクルの長さをTckとするとき、ΔTは、0<ΔT<Tckを満たしてよい。これにより、遅延回路344は、ディバイダ回路342単独で信号Sdeを生成する場合より、精度の良い信号を生成することが可能となる。
【0061】
AND回路346は、信号Sdeおよび信号Sdiがともにハイである区間でハイ、それ以外の区間でローとなるように、信号Ssを生成する。信号Ssは、タイミングt2~t3においてハイとなり、タイミングt3~t4においてローとなる。信号Ssがハイとなる区間の長さは、4×Tck-ΔTである。また、信号Ssがローとなる区間の長さは、7×Tc+ΔTである。信号Ssは、このハイの区間およびこのローの区間が繰り返されるように生成される。信号Ssのハイの区間は、フェーズφ1に対応し、信号Ssのローの区間は、フェーズφ2に対応する。
【0062】
図8は、本実施形態に係る1段目の積分器121、2段目の積分器122および3段目の積分器123のそれぞれのサンプリングおよび出力の一例のタイミングチャートを示す図である。タイミングt11~t12およびタイミングt13~t14においてフェーズがφ1となり、サンプリング時間Tsでサンプリングが行われる。タイミングt12~t13およびタイミングt14~t15においてフェーズがφ2となり、ホールド時間Thで増幅器110の出力がホールドされる。本実施形態では、各積分器のうちの少なくとも1つにおいて、ホールド時間Thがサンプリング時間Tsよりも長く、より具体的には、すべての積分器において、ホールド時間Thがサンプリング時間Tsよりも長い。
【0063】
図9(a)は、サンプリング時間とホールド時間とが同じである場合の積分器によるサンプリングおよび出力のタイミングチャートを示す図である。
図9(b)は、ホールド時間がサンプリング時間よりも長い場合の積分器100によるサンプリングおよび出力の一例のタイミングチャートを示す図である。
【0064】
図9(a)に示す例では、タイミングt21~t22およびタイミングt23~t24においてフェーズがφ1となり、タイミングt22~t23およびタイミングt24~t25においてフェーズがφ2となる。フェーズφ1が始まる領域Aでは、スイッチの能力がサンプリングの速度に影響を与える。またフェーズφ2が始まる領域Bでは、スイッチの能力および増幅器110の動作速度(動作電流)がホールドの速度に影響を与える。スイッチを大きくして当該スイッチの抵抗成分を小さくすることにより、スイッチの能力を向上させることができる。しかしながら、スイッチを大きくしただけでは、適切に積分器100を動作させるうえで、増幅器110の動作電流を下げることは難しい。
【0065】
そこで、本実施形態に係る積分器100は、
図9(b)に示すように、ホールド時間がサンプリング時間よりも長くなるように制御される。これにより、増幅器110に求められる動作速度を下げ、増幅器110の動作電流を下げることができる。これにより、ΔΣ型A/Dコンバータ1の低消費電力化が可能となる。
【0066】
A/Dコンバータにおいて、高精度を実現するために、ΔΣ型A/Dコンバータが使用される。高精度なA/D変換を実現するためには、増幅器において高精度に信号をセトリングさせる必要がある。このため、増幅器の動作電流を上げ、その動作速度を大きくする必要があり、結果として消費電力が大きくなる。本実施形態に係るΔΣ変調器10によれば、ホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることにより、増幅器に必要な動作速度が緩和され、必要な動作電流を下げることができ、ΔΣ変調器10の消費電力を下げることができる。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、ΔΣ変調器の構成が第1実施形態とは異なる。第2実施形態の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第1実施形態および第2実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0068】
図10は、第2実施形態に係るΔΣ変調器40の構成を示すブロック図である。
図10では、第1実施形態に係るΔΣ変調器10のと実質的に同一の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。ΔΣ変調器40は、アナログの入力信号Ainをデジタルの出力信号Sout1に変換する。第2実施形態に係るΔΣ変調器40は、第1実施形態に係る積分回路12に代えて、2次の積分回路42を有する。積分回路42は、1段目の積分器421、2段目の積分器422、係数回路COa11、COa12、COb13および加算器ADD13を有する。
【0069】
1段目の積分器421は、係数回路COb11、COc11、加算器ADD11および遅延器DE11を有する。係数回路COb11は、入力信号Ainに係数b11を乗じる。係数回路COc11は、D/Aコンバータ16の出力信号Vf1に係数-c11を乗じる。加算器ADD11は、係数回路COb11が生成した信号(=b11×Ain)と、係数回路COc11が生成した信号(=-c11×Vf1)と、1段目の積分器421の出力信号Sd11と、2段目の積分器422からの帰還信号Sg21(=-g11×Sd12)とを加算して、
Sa11=b11×Ain-c11×Vf1+Sd11-g11×Sd12
で表される信号Sa11を生成する。遅延器DE11は、信号Sa11を遅延させ、出力信号Sd11を生成する。
【0070】
2段目の積分器422は、係数回路COb12、COc12、COg11、加算器ADD12および遅延器DE12を有する。係数回路COb12は、入力信号Ainに係数b12を乗じる。係数回路COc12は、1段目の積分器421の出力信号Sd11に係数c12を乗じる。係数回路COg11は、2段目の積分器422の出力信号Sd12に係数-g11を乗じる。加算器ADD12は、係数回路COb12が生成した信号(=b12×Ain)と、係数回路COc12が生成した信号(=c12×Sd11)と、2段目の積分器422の出力信号Sd12とを加算して、
Sa12=b12×Ain+c12×Sd11+Sd12
で表される信号Sa12を生成する。遅延器DE12は、信号Sa12を遅延させ、出力信号Sd12を生成する。
【0071】
係数回路COb13は、入力信号Ainに係数b13を乗じる。係数回路COa11は、1段目の積分器421の出力信号Sd11に係数a11を乗じる。係数回路COa12は、2段目の積分器422の出力信号Sd12に係数a12を乗じる。加算器ADD13は、係数回路COb13が生成した信号と、係数回路COa11が生成した信号と、係数回路COa12が生成した信号とを加算し、
Sa13=b13×Ain+a11×Sd11+a12×Sd12
で表される信号Sa13を積分回路42の出力信号として生成する。
【0072】
第2実施形態のように積分回路42を2次としたΔΣ変調器40は、第1実施形態と同様にホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることによって、低消費電力化を実現できる。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態では、ΔΣ変調器の構成が第1実施形態とは異なる。第3実施形態の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第1~第3実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0074】
図11は、第3実施形態に係るΔΣ変調器50の構成を示すブロック図である。
図11では、第1実施形態に係るΔΣ変調器10の構成と実質的に同一の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。ΔΣ変調器50は、アナログの入力信号Ainをデジタルの出力信号Sout2に変換する。第3実施形態に係るΔΣ変調器50は、第1実施形態に係る積分回路12に代えて、4次の積分回路52を有する。積分回路52は、1段目の積分器521、2段目の積分器522、3段目の積分器523、4段目の積分器524、係数回路COa21~COa24,COb25および加算器ADD25を有する。
【0075】
1段目の積分器521は、係数回路COb21,COc21、加算器ADD21および遅延器DE21を有する。係数回路COb21は、入力信号Ainに係数b21を乗じる。係数回路COc21は、D/Aコンバータ16の出力信号Vf2に係数-c21を乗じる。加算器ADD21は、係数回路COb21が生成した信号(=b21×Ain)と、係数回路COc21が生成した信号(=-c21×Vf2)と、1段目の積分器521の出力信号Sd21と、2段目の積分器522からの帰還信号Sg21(=-g21×Sd22)とを加算し、
Sa21=b21×Ain-c21×Vf2+Sd21-g21×Sd22
で表される信号Sa21を生成する。遅延器DE21は、信号Sa21を遅延させ、出力信号Sd21を生成する。
【0076】
2段目の積分器522は、係数回路COb22,COc22,COg21、加算器ADD22および遅延器DE22を有する。係数回路COb22は、入力信号Ainに係数b22を乗じる。係数回路COc22は、1段目の積分器521の出力信号Sd21に係数c22を乗じる。係数回路COg21は、2段目の積分器522の出力信号Sd22に係数-g21を乗じて帰還信号Sg21を生成する。加算器ADD22は、係数回路COb22が生成した信号(=b22×Ain)と、係数回路COc22が生成した信号(=c22×Sd21)と、2段目の積分器522の出力信号Sd22とを加算して、
Sa22=b22×Ain+c22×Sd21+Sd22
で表されるSa22を生成する。遅延器DE22は、信号Sa22を遅延させ、出力信号Sd22を生成する。
【0077】
3段目の積分器523は、係数回路COb23,COc23、加算器ADD23および遅延器DE23を有する。係数回路COb23は、入力信号Ainに係数b23を乗じる。係数回路COc23は、2段目の積分器522の出力信号Sd22に係数c23を乗じる。加算器ADD23は、係数回路COb23が生成した信号(=b23×Ain)と、係数回路COc23が生成した信号(=c23×Sd22)と、3段目の積分器523の出力信号Sd23と、4段目の積分器524からの帰還信号Sg22(=-g22×Sd24)とを加算して、
Sa23=b23×Ain+c23×Sd22+Sd23-g22×Sd24
で表される信号Sa23を生成する。遅延器DE23は、信号Sa23を遅延させ、3段目の積分器523の出力信号Sd23を生成する。
【0078】
4段目の積分器524は、係数回路COb24,COc24,COg22、加算器ADD24および遅延器DE24を有する。係数回路COb24は、入力信号Ainに係数b24を乗じる。係数回路COc24は、3段目の積分器523の出力信号Sd23に係数c24を乗じる。係数回路COg22は、4段目の積分器524の出力信号Sd24に係数-g22を乗じて帰還信号Sg22を生成する。加算器ADD24は、係数回路COb24が生成した信号(=b24×Ain)と、係数回路COc24が生成した信号(=c24×Sd23)と、4段目の積分器524の出力信号Sd24とを加算して、
Sa24=b24×Ain+c24×Sd23+Sd24
で表される信号Sa24を生成する。遅延器DE24は、信号Sa24を遅延させ、4段目の積分器524の出力信号Sd24を生成する。
【0079】
係数回路COb25は、入力信号Ainに係数b25を乗じる。係数回路COa21は、1段目の積分器521の出力信号Sd21に係数a21を乗じる。係数回路COa22は、2段目の積分器522の出力信号Sd22に係数a22を乗じる。係数回路COa23は、3段目の積分器523の出力信号Sd23に係数a23を乗じる。係数回路COa24は、4段目の積分器524の出力信号Sd24に係数a24を乗じる。加算器ADD25は、係数回路COb25が生成した信号(=b25×Ain)と、係数回路COa21が生成した信号(=a21×Sd21)と、係数回路COa22が生成した信号(=a22×Sd22)と、係数回路COa23が生成した信号(=a23×Sd23)と、係数回路COa24が生成した信号(=a21×Sd24)とを加算して、
Sa25=b25×Ain+a21×Sd21+a22×Sd22+a23×Sd23+a24×Sd24
で表される信号Sa25を積分回路52の出力信号として生成する。
【0080】
第3実施形態のように積分回路52を4次としたΔΣ変調器50は、第1実施形態と同様にホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることによって、低消費電力化を実現できる。
【0081】
(第4実施形態)
第4実施形態では、ΔΣ変調器の構成が第1実施形態とは異なる。第4実施形態の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第1~第4実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0082】
図12は、第4実施形態に係るΔΣ変調器60の構成を示すブロック図である。
図12では、第1実施形態に係るΔΣ変調器10の構成と実質的に同一の構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。ΔΣ変調器60は、アナログの入力信号Ainをデジタルの出力信号Sout3に変換する。
【0083】
第4実施形態に係るΔΣ変調器60は、第1実施形態に係る積分回路12に代えて、3次の積分回路62を有する。ΔΣ変調器60は、1段目の積分器621、2段目の積分器622、3段目の積分器623、係数回路COa31~COa33,COb34および加算器ADD34を有する。積分回路62は、遅延器による遅延を受けた信号を出力する第1積分器と(1段目の積分器621および3段目の積分器623)、遅延器による遅延を受けていない信号を出力する第2積分器(2段目の積分器622)とを含む。第1積分器および第2積分器は、積分回路62の出力信号Sa34が収束するように配置される。
【0084】
1段目の積分器621は、係数回路COb31,COc31、加算器ADD31および遅延器DE31を有する。係数回路COb31は、入力信号Ainに係数b31を乗じる。係数回路COc31は、D/Aコンバータ16の出力信号Vf3に係数-c31を乗じる。加算器ADD31は、係数回路COb31が生成した信号(=b31×Ain)と、係数回路COc31が生成した信号(=-c31×Vf2)と、1段目の積分器621の出力信号Sd31とを加算し、
Sa31=b31×Ain-c31×Vf3+Sd31
で表される信号Sa31を生成する。遅延器DE31は、信号Sa31を遅延させ、出力信号Sd31を生成する。
【0085】
2段目の積分器622は、係数回路COb32,COc32、COg31、加算器ADD32および遅延器DE32を有する。係数回路COb32は、入力信号Ainに係数b32を乗じる。係数回路COc32は、1段目の積分器621の出力信号Sd31に係数c32を乗じる。係数回路COg31は、3段目の積分器623の出力信号Sd33に係数-g31を乗じる。遅延器DE32は、2段目の積分器622の出力信号Sa32を遅延させ、信号Sd32を生成する。加算器ADD32は、係数回路COb32が生成した信号(=b32×Ain)と、係数回路COc32が生成した信号(=c32×Sd31)と、遅延器DE32が生成した信号Sd32と、係数回路COg31が生成した信号(=-g31×Sd33)とを加算して、
Sa32=b32×Ain+c32×Sd31+Sd32-g31×Sd33
で表される出力信号Sa32を生成する。この出力信号Sa32は、遅延器DE32による遅延を受けずに3段目の積分器623に出力される。
【0086】
3段目の積分器623は、係数回路COb33,COc33、加算器ADD33および遅延器DE33を有する。係数回路COb33は、入力信号Ainに係数b33を乗じる。係数回路COc33は、2段目の積分器622の出力信号Sa32に係数c33を乗じる。加算器ADD33は、係数回路COb33が生成した信号(=b33×Ain)と、係数回路COc33が生成した信号(=c33×Sa32)と、3段目の積分器623の出力信号Sd33とを加算して、
Sa33=b33×Ain+c33×Sa32+Sd33
で表される出力信号Sa33を生成する。遅延器DE33は、出力信号Sa33を遅延させ、出力信号Sd33を生成する。
【0087】
係数回路COb34は、入力信号Ainに係数b34を乗じる。係数回路COa31は、1段目の積分器621の出力信号Sd31に係数a31を乗じる。係数回路COa32は、2段目の積分器622の出力信号Sa32に係数a32を乗じる。係数回路COa33は、3段目の積分器623の出力信号Sd33に係数a33を乗じる。加算器ADD34は、係数回路COb34が生成した信号(=b34×Ain)と、係数回路COa31が生成した信号(=a31×Sd31)と、係数回路COa32が生成した信号(=a32×Sa32)と、係数回路COa33が生成した信号(=a33×Sd33)とを加算して、
Sa34=b34×Ain+a31×Sd31+a32×Sa32+a33×Sd33
で表される信号Sa34を積分回路62の出力信号として生成する。
【0088】
図13(a)は、第4実施形態に係る積分回路62の動作の一例を示すタイミングチャートである。タイミングt41~タイミングt42およびタイミングt43~タイミングt44においてフェーズがφ1となり、タイミングt42~t43およびタイミングt44~t45においてフェーズがφ2となる。
【0089】
積分回路62は、フェーズφ2はフェーズφ1よりも長くなるように制御される。1段目の積分器621は、フェーズφ1においてサンプリングを行い、フェーズφ2において出力をホールドする。2段目の積分器622は、フェーズφ1において出力をホールドし、フェーズφ2においてサンプリングを行う。3段目の積分器623は、フェーズφ1においてサンプリングを行い、フェーズφ2において出力をホールドする。1段目の積分器621および3段目の積分器623において、ホールド時間はサンプリング時間よりも長い。このため、1段目の積分器621および3段目の積分器623において、増幅器の動作電流を小さくし、積分回路62を低消費電力化することが可能となる。特に、1段目の積分器621は、高い精度を求められ、その動作電流が大きくなる傾向にあるため、ホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることによる低消費電力化の効果は大きい。
【0090】
図13(b)は、フェーズφ1およびフェーズφ2のそれぞれの長さを同一とした場合の積分回路62の動作を示すタイミングチャートである。
図13(b)に示す例では、タイミングt51~タイミングt52およびタイミングt53~タイミングt54においてフェーズがφ1となり、タイミングt52~t53およびタイミングt54~t55においてフェーズがφ2となる。フェーズφ1およびフェーズφ2の長さは同じであり、いずれの積分器においても、サンプリング時間およびホールド時間は同じ長さである。このため、
図13(a)を参照しながら説明したような積分回路の低消費電力化を実現できない。
【0091】
(第1変形例)
第1変形例では、積分器が有するサンプリング回路の構成が第1実施形態とは異なる。第1変形例の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第1変形例および第1~第4実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0092】
図14は、第1変形例に係るサンプリング回路72の回路図である。第1変形例に係るサンプリング回路72は、第1入力端子720、第2入力端子722、基準電圧が供給される基準電圧ライン724、第1出力端子726、第2出力端子728、第1スイッチSW31~第7スイッチSW37、第1キャパシタC31および第2キャパシタC32を有する。
【0093】
第1スイッチSW31は、一端が第1入力端子720に接続され、他端が第1キャパシタC31に接続されるように配置される。第2スイッチSW32は、一端が第2入力端子722に接続され、他端が第2キャパシタC32の一端に接続されるように配置される。第3スイッチSW33は、一端が第1キャパシタC31の一端に接続され、他端が第2キャパシタC32の一端に接続されるように配置される。
【0094】
第4スイッチSW34は、一端が第1キャパシタC31の他端に接続され、他端が基準電圧ライン724に接続されるように配置される。第5スイッチSW35は、一端が基準電圧ライン724に接続され、他端が第2キャパシタC32の他端に接続されるように配置される。第6スイッチSW36は、一端が第1キャパシタC31の他端に接続され、他端が第1出力端子726に接続されるように配置される。第7スイッチSW37は、一端が第2キャパシタC32の他端に接続され、他端が第2出力端子728に接続されるように配置される。
【0095】
第1スイッチSW31、第2スイッチSW32、第4スイッチSW34および第5スイッチSW35は、サンプリングスイッチとして機能し、具体的には、フェーズφ1においてオンとなり、フェーズφ2においてオフとなるように制御される。第3スイッチSW33、第6スイッチSW36および第7スイッチSW37は、出力スイッチとして機能し、具体的には、フェーズφ2においてオンとなり、フェーズφ1においてオフとなるように制御される。
【0096】
第1変形例のようにサンプリング回路72を構成した場合にも、上記実施形態と同様にホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることにより、ΔΣ変調器の低消費電力化を実現できる。
【0097】
(第2変形例)
第2変形例では、積分器が有するサンプリング回路の構成が第1実施形態とは異なる。第2変形例の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第2変形例および第1~第4実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0098】
図15は、第2変形例に係るサンプリング回路74の回路図である。第2変形例に係るサンプリング回路74は、第1入力端子740、第2入力端子742、基準電圧が供給される基準電圧ライン744、第1出力端子746、第2出力端子748、第1スイッチSW41~第8スイッチSW48、第1キャパシタC41および第2キャパシタC42を有する。
【0099】
第1スイッチSW41は、一端が第1入力端子740に接続され、他端が第1キャパシタC41の一端に接続されるように配置される。第2スイッチSW42は、一端が第2入力端子742に接続され、他端が第2キャパシタC42の一端に接続されるように配置される。第3スイッチSW43は、一端が第1キャパシタC41の一端に接続され、他端が第2入力端子742に接続されるように配置される。第4スイッチSW44は、一端が第1入力端子740に接続され、他端が第2キャパシタC42の一端に接続されるように配置される。
【0100】
第5スイッチSW45は、一端が第1キャパシタC41の他端に接続され、他端が基準電圧ライン744に接続されるように配置される。第6スイッチSW46は、一端が基準電圧ライン744に接続され、他端が第2キャパシタC42の他端に接続されるように配置される。第7スイッチSW47は、一端が第1キャパシタC41の他端に接続され、他端が第1出力端子746に接続されるように配置される。第8スイッチSW48は、一端が第2キャパシタC42の他端に接続され、他端が第2出力端子748に接続されるように配置される。
【0101】
第1スイッチSW41、第2スイッチSW42、第5スイッチSW45および第6スイッチSW46は、サンプリングスイッチとして機能し、具体的には、フェーズφ1においてオンとなり、フェーズφ2においてオフとなるように制御される。第3スイッチSW43、第4スイッチSW44、第7スイッチSW47および第8スイッチSW48は、出力スイッチとして機能し、具体的には、フェーズφ2においてオンとなり、フェーズφ1においてオフとなるように制御される。
【0102】
第2変形例のようにサンプリング回路74を構成した場合にも、上記実施形態と同様にホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることにより、ΔΣ変調器の低消費電力化を実現できる。
【0103】
(第3変形例)
第3変形例では、制御部が有する信号生成回路の構成が第1実施形態とは異なる。第3変形例の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第3変形例ならびに第1~第4実施形態および第1,第2変形例の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0104】
図16(a)は、第3変形例に係る信号生成回路80の回路図である。第3変形例に係る信号生成回路80は、遅延回路800およびAND回路802を有する。遅延回路800は、クロック信号CK1を受け、そのクロック信号CK1を遅延させて、信号Sde1を生成する。AND回路802は、クロック信号CK1を第1入力、遅延回路800が生成した信号Sde1を第2入力として、サンプリング回路を制御するための信号Ss1を生成する。
【0105】
図16(b)は、第3変形例に係る信号生成回路80の動作の一例を示すタイミングチャートである。遅延回路800によって生成される信号Sde1は、クロック信号CK1よりもΔT1遅延する。たとえば、信号Sde1における立ち上がりのタイミングt42は、クロック信号CK1における立ち上がりのタイミングt41よりもΔT1遅延する。ここで、クロック信号CK1の半サイクルの長さをTck1とするとき、ΔT1は、0<ΔT1<Tck1を満たしてよい。
【0106】
信号Ss1は、クロック信号CK1および信号Sde1がともにハイであるときにハイとなり、その他のときにローとなるように生成される。このため、信号Ss1は、信号Sde1が立ち上がるタイミングt42からクロック信号CK1が立ち下がるタイミングt43までの区間(第1区間)がハイとなり、クロック信号CK1が立ち下がるタイミングt43から信号Sde1が立ち上がるタイミングt44までの区間(第2区間)がローとなるように生成される。信号Ss1がハイである区間の長さは、Tck1-ΔT1である。信号Ssがローである区間の長さは、Tck1+ΔT1である。信号Ss1がハイの区間をフェーズφ1とし、信号Ss1のローの区間をフェーズφ2とすることにより、ホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることができる。
【0107】
また、上記実施形態において説明した信号生成回路340と第3変形例に係る信号生成回路80とを制御部に設けてよい。この場合、積分器が有する増幅器の動作速度に応じて、使用される信号生成回路が選択されてよい。
【0108】
(第4変形例)
第4変形例では、制御部が有する信号生成回路の構成が第1実施形態とは異なる。第4変形例の他の構成は、第1実施形態と実質的に同一であってよい。第4変形例ならびに第1~第4実施形態および第1,第2変形例の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0109】
図17(a)は、第4変形例に係る信号生成回路82の回路図である。第4変形例に係る信号生成回路82は、主としてディバイダ回路820を有する。ディバイダ回路820は、第1区間と第2区間とが交互に繰り返される信号Ss2を生成する。第4変形例に係る第1区間は、クロック信号CK2のM1サイクル(M1:自然数)に対応する、ハイまたはローの区間である。第4変形例に係る第2区間は、そのM1サイクルに続くN1サイクル(N1:自然数)に対応する、第1区間とは逆のハイまたはローの区間である。ここで、M1およびN1は、N1>M1を満たす。
【0110】
図17(b)は、第4変形例に係る信号生成回路82の動作の一例を示すタイミングチャートである。信号Ss2は、ハイの区間とローの区間とが繰り返されるように生成される。具体的には、信号Ss2は、クロック信号CK2の6サイクルに対応する第1区間(タイミングt51~t52)がハイとなり、その6サイクルに続く10サイクルに対応する第2区間(タイミングt52~t53)がローとなるように信号Ss2が生成される。第1区間をフェーズφ1に対応させ、第2区間をフェーズφ2に対応させることにより、ホールド時間をサンプリング時間よりも長くすることができる。
【0111】
また、上記実施形態において説明した信号生成回路340と第4変形例に係る信号生成回路82とを制御部に設けてよい。この場合、積分器が有する増幅器の動作速度に応じて、使用される信号生成回路が選択されてよい。
【0112】
(補足)
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。また、実施形態のみでなく、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0114】
(項目1)
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣ変調器であって、
前記デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、
前記アナログの入力信号に応じた信号と前記帰還信号に応じた信号との差分に応じた信号を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力信号を量子化し、前記デジタルの出力信号を生成する量子化器と、を備え、
前記積分回路は、直列に接続された複数の積分器を含み、
前記複数の積分器のそれぞれは、入力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、前記サンプリング回路のサンプリング結果に応じた信号を出力する増幅器とを有し、前記サンプリング回路によるサンプリングと前記増幅器による出力のホールドとが交互に繰り返されるように制御され、
前記複数の積分器の少なくとも1つは、前記ホールドの時間が前記サンプリングの時間よりも長くなるように制御される、
ΔΣ変調器。
【0115】
(項目2)
前記複数の積分器のうちの1段目の積分器は、前記ホールドの時間が前記サンプリングの時間よりも長くなるように制御される、
項目1に記載のΔΣ変調器。
【0116】
(項目3)
前記サンプリング回路は、前記サンプリングを行うためのキャパシタと、前記キャパシタに接続されたサンプリングスイッチと、前記キャパシタに接続された出力スイッチとを有し、フェーズφ1とフェーズφ2とが交互に繰り返されるように制御され、
前記フェーズφ1は、前記サンプリングスイッチがオンとなり、前記出力スイッチがオフとなり、前記キャパシタが、前記サンプリング回路に入力される信号に応じた電荷を蓄積することによって、前記サンプリングを行うフェーズであり、
前記フェーズφ2は、前記サンプリングスイッチがオフとなり、前記出力スイッチがオンとなり、前記増幅器による出力がホールドされるフェーズであり、
前記フェーズφ2の時間は、前記フェーズφ1の時間よりも長い、
項目1または2に記載のΔΣ変調器。
【0117】
(項目4)
クロック信号に基づいて第1区間と第2区間とが交互に繰り返される信号を生成し、生成した信号に基づいて前記サンプリング回路を制御する制御部をさらに備え、
前記第1区間は、前記クロック信号のMサイクル(M:自然数)に対応する、ハイまたはローの区間であり、
前記第2区間は、前記Mサイクルに続くNサイクル(N:自然数)に対応する、前記第1区間とは逆のハイまたはローの区間であり、
前記Mおよび前記Nは、N>Mを満たし、
前記制御部は、生成した信号に基づいて、前記第1区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ1となり、前記第2区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ2となるように、前記サンプリングスイッチおよび前記出力スイッチを制御する、
項目3に記載のΔΣ変調器。
【0118】
(項目5)
クロック信号に基づく信号を生成する遅延回路と、AND回路と、前記AND回路の出力に基づいて前記サンプリング回路を制御する制御回路とを有する制御部をさらに備え、
前記遅延回路は、前記クロック信号の半サイクルをTckとして、前記クロック信号をΔT(0<ΔT<Tck)遅延させた信号を生成し、
前記AND回路は、前記クロック信号を第1入力とし、前記遅延回路が生成した信号を第2入力として、Tck-ΔTの長さの第1区間とTck+ΔTckの長さの第2区間とが交互に繰り返される信号を生成し、
前記制御回路は、前記AND回路が生成した信号に基づいて、前記第1区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ1となり、前記第2区間において前記サンプリング回路が前記フェーズφ2となるように、前記サンプリングスイッチおよび前記出力スイッチを制御する、
項目3に記載のΔΣ変調器。
【0119】
(項目6)
前記複数の積分器は、遅延器による遅延を受けた信号を出力する第1積分器と、遅延器による遅延を受けていない信号を出力する第2積分器とを含み、
前記第1積分器および前記第2積分器は、前記積分回路の出力信号が収束するように配置される、
項目1~5のいずれか一項に記載のΔΣ変調器。
【0120】
(項目7)
前記増幅器に入力されるバイアス電流を調整する電流調整回路をさらに備え、
前記増幅器は、前記バイアス電流に応じた速度で動作する、
項目1~6のいずれか一項に記載のΔΣ変調器。
【0121】
(項目8)
項目1~7のいずれか一項に記載のΔΣ変調器と、
前記ΔΣ変調器が生成した前記デジタルの出力信号をフィルタリングするデジタルフィルタと、を備える、
ΔΣ型A/Dコンバータ。
(符号の説明)
【0122】
1 ΔΣ型A/Dコンバータ、10 ΔΣ変調器、12 積分回路、14 量子化器、16 D/Aコンバータ、106 サンプリング回路、121,122,123 積分器、SW1~SW8 第1スイッチ~第8スイッチ、C1~C4 第1キャパシタ~第4キャパシタ、110 増幅器、20 デジタルフィルタ、30 制御部、300 統括回路、320 電流生成回路、340 信号生成回路、342 ディバイダ回路、344 遅延回路、360 信号調整回路。