(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118309
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】高炉内装入物の表面プロフィール検出装置
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20240823BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20240823BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240823BHJP
F27D 3/10 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C21B7/24 301
C21B5/00 312
F27D21/00 A
F27D3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024665
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】593207271
【氏名又は名称】株式会社WADECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱野 早衛
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
4K055
4K056
【Fターム(参考)】
4K012BB00
4K012BC10
4K015KA04
4K055AA01
4K055FA02
4K055FA10
4K056AA01
4K056BC01
4K056CA02
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】高炉内に堆積している装入面以外の不要な領域を走査せず、短時間で装入面を走査するか、又は走査時間を短縮せず測定点を増やして、より正確にプロフィールを検出する。
【解決手段】鉄鉱石やコークス、石灰等の装入物が供給される高炉の開口部を通じて、炉内に堆積している装入面に向けて検出波を送信し、装入面で反射された検出波を受信して装入面の表面プロフィールを検出する検出装置であって、検出波を送信し、受信する送受信手段と、検出波を、高炉の周方向に走査する周方向走査手段と、検出波を、高炉の径方向に走査する径方向走査手段とを備え、周方向走査手段と径方向走査手段とを協働し、前記検出波で高炉の周方向に走査しながら高炉の径方向に走査させるとともに、装入面の全部または一部の領域のみを走査するように、検出波の送信角度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石やコークス、石灰等の装入物が供給される高炉において、前記高炉に開口した開口部を通じて、炉内に堆積している前記装入物の装入面に向けて検出波を送信し、前記装入面で反射された前記検出波を受信して前記装入物の表面プロフィールを検出する検出装置であって、
前記検出波を送信し、受信する送受信手段と、
前記検出波を、前記高炉の周方向に走査する周方向走査手段と、
前記検出波を、前記高炉の径方向に走査する径方向走査手段と、
を備え、前記周方向走査手段と前記径方向走査手段とを協働し、前記検出波で前記高炉の周方向に走査しながら、前記高炉の径方向に走査させるとともに、
前記装入面の全部または一部の領域のみを前記検出波で走査するように、前記検出波の送信角度を制御する、
ことを特徴とする高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項2】
炉壁近傍の領域の前記装入面の高さから前記検出波の送信角度を求め、前記送信角度を基準にして走査領域を決める、
ことを特徴とする請求項1に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項3】
操作領域を装入面に限定して無駄な走査時間を排除することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項4】
計測時間を増やし測定点を増やすことを特徴とする請求項3に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項5】
前記径方向走査手段は角度可変反射板を備えるとともに、
前記周方向走査手段は回転板を備えており、
前記角度可変反射板の傾斜角度を、前記回転板の回動角度により制御することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項6】
前記径方向走査手段は角度可変反射板を備えるとともに、
前記周方向走査手段は回転板を備えており、
前記角度可変反射板の傾斜角度を、前記回転板の回動角度により制御することを特徴とする請求項3に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【請求項7】
前記径方向走査手段は角度可変反射板を備えるとともに、
前記周方向走査手段は回転板を備えており、
前記角度可変反射板の傾斜角度を、前記回転板の回動角度により制御することを特徴とする請求項4に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内の鉄鉱石やコークス、石灰等(以下、まとめて「装入物」ともいう。)の表面プロフィールを検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、装入物の堆積状態を適正にして、炉内のガスの流れを安定させることにより、燃料費低減や炉体の長寿命化が可能となる。適正な堆積状態を得るためには、これら装入物の表面プロフィールを短時間で正確に測定し、予め求めておいた理論的な堆積状態、即ち「理論堆積プロフィール」となるように装入物を補給する必要がある。
【0003】
このような高炉の装入物の表面プロフィールを検出するために、本出願人も先に特許文献1に示す検出装置を提案している。特許文献1に記載の検出装置では、検出波の反射面高炉側への傾斜角度を可変にした角度可変反射板と、角度固定反射板とを用いるとともに、角度可変反射板及び角度固定反射板を、高炉の開口部と水平に回動する回転板に取り付け、回転板を回動させることにより、高炉内に堆積していている装入物の表面プロフィールを線状または面状に、迅速に検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、検出装置を高炉に設置した状態を示す模式図である。図示されるように、高炉1の炉頂には、炉心軸Cの線上に、装入物20を装入するためのシュート(図示せず)が存在しているため、検出装置100は炉頂付近の傾斜部1aに設置しなければならない。
【0006】
特許文献1の検出装置では、回転板を回動させながら、角度可変反射板の傾斜角度により高炉1の径方向に検出波を送信する構成となっている。そのため、
図1に示すように、検出装置100を高炉1の傾斜部1aに設置すると、
図2に示すように、測定点Pは楕円状に分布する。なお、
図2は測定点Pを高炉1の炉頂から見た図であり、測定点Pの集合が走査領域Sであり、楕円状となる。
【0007】
また、検出装置100の設置位置や角度可変反射板の傾斜角度によっては、
図1に点線で示す検出波Moのように、装入物20の装入面21ではなく、装入面21よりも上方の側壁1bに至ることもある。そのため、
図2に斜線で示すように、本来測定すべき装入面21以外の範囲まで走査することになり、無駄な走査時間を要することになる。
【0008】
また、
図2に検出装置100の測定中心を符号Pcで示すが、楕円状の走査領域Sでは、測定中心Pcより右側に行くほど、即ち、検出装置100から高炉1の側壁1b側に離れるほど測定点Pの間隔が大きくなっている。それに伴い、高炉1の側壁1bに近いほど、測定点Pの密度が粗になり、装入面21の検出精度が低くなる。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高炉内に堆積している装入面以外の不要な領域を走査せず、短時間で装入面を走査するか、又は走査時間を短縮せず測定点を増やして、より正確にプロフィールを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、下記(1)の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置を提供する。
【0011】
(1) 鉄鉱石やコークス、石灰等の装入物が供給される高炉において、前記高炉に開口した開口部を通じて、炉内に堆積している前記装入物の装入面に向けて検出波を送信し、前記装入面で反射された前記検出波を受信して前記装入物の表面プロフィールを検出する検出装置であって、
前記検出波を送信し、受信する送受信手段と、
前記検出波を、前記高炉の周方向に走査する周方向走査手段と、
前記検出波を、前記高炉の径方向に走査する径方向走査手段と、
を備え、前記周方向走査手段と前記径方向走査手段とを協働し、前記検出波で前記高炉の周方向に走査しながら、前記高炉の径方向に走査させるとともに、
前記装入面の全部または一部の領域のみを前記検出波で走査するように、前記検出波の送信角度を制御する、
ことを特徴とする高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【0012】
また、高炉内装入物の表面プロフィール検出装置に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(5)に関する。
【0013】
(2) 炉壁近傍の領域の前記装入面の高さから前記検出波の送信角度を求め、前記送信角度を基準にして走査領域を決める、
ことを特徴とする(1)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(3) 操作領域を装入面に限定して無駄な走査時間を排除することを特徴とする(1)または(2)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(4) 計測時間を増やし測定点を増やすことを特徴とする(3)に記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
(5) 前記径方向走査手段は角度可変反射板を備えるとともに、
前記周方向走査手段は回転板を備えており、
前記角度可変反射板の傾斜角度を、前記回転板の回動角度により制御することを特徴とする(1)~(4)の何れか1つに記載の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置。
【0014】
なお、以降の説明において、「高炉内装入物の表面プロフィール検出装置」を、単に「検出装置」ともいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高炉内装入物の表面プロフィール検出装置では、周方向走査手段及び径方向走査手段を共に稼働して、検出波を高炉の周方向に走査しながら、高炉の径方向への走査を行うことにより、装入面の全面の表面プロフィールを検出することができる。その際、装入面のみを走査するように、周方向走査手段及び径方向走査手段による検出波の送信角度を調整するため、装入面以外の不要な領域を走査せず、無駄な走査時間を無くして短時間で検出することができる。
【0016】
また、検出装置から離れるほど測定点が粗になっているが、本発明によれば走査領域を装入面に限定したり計測時間を増やすことで測定点を増やし、高炉の側壁に近くても検出精度は改善される。そのため、より正確な表面プロフィールを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、検出装置を高炉に設置した状態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、炉頂から見た走査領域を示す図である。
【
図3】
図3は、検出装置の一例を示す要部断面図である。
【
図4】
図4は、検出装置の他の例を示す要部断面図である。
【
図5】
図5は、走査領域の補正方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、走査領域を補正した後に得られる、回転板の回動角度と角度可変反射板の傾斜角度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
検出装置は、検出波を高炉の周方向に走査する周方向走査手段と、検出波を高炉の径方向に走査する径方向走査手段とを備え、周方向走査手段及び径方向走査手段を共に稼働して検出波を高炉の周方向に走査しながら、高炉の径方向への走査を行う構成になっている。
【0020】
このような検出装置の例として、
図3に示す要部断面図で示す検出装置100を挙げることができる。なお、
図3に示す検出装置100は、特許文献1の第1実施形態を参照することができる。
【0021】
検出装置100は、
図1に示すように、高炉1の炉頂付近の傾斜部1aの開口部2に設置される。この検出装置100は、
図3に示すように、回転軸110を中心にして、符号Yで示すように高炉1の開口部2に対して水平に回転する回転板120を備える。なお、本実施形態において、回転板120は、高炉1の開口部2に対して水平に回転するものとしているが、必ずしもこれに限られるものではなく、高炉1の開口部2に対して若干の傾斜角を有した状態で回転するものであってもよい。
【0022】
回転板120は、その中央部が開口した円環状の円板である。この回転板120の中央部の開口を、符号121で示す。
【0023】
回転軸110は、円筒状で、その内部にアンテナ135を収容しており、回転板120の開口121と同心状に取り付けられる。アンテナ135は、導波管133を介して検出波M(マイクロ波やミリ波)の送受信手段130に接続している。導波管133は、連結棒114の送受信手段130側の上端部分が分離しており、送受信手段130が回転しない構成となっている。この分離部分を符号180で示すが、検出波Mが漏洩しないように、隙間の間隔を検出波Mの波長未満に設定している。
【0024】
なお、図示は省略するが、導波管133のアンテナ135側の部分を、回転軸110よりフリーにして回転軸110が回転しても導波管133が回転しないようにしてもよく、この場合は分離部分180が不要になる。
【0025】
また、導波管133は、回転軸110の軸線と一致している。なお、アンテナ135には、検出波Mの指向性を高めるために、アンテナ面に、例えばフッ素樹脂等からなる誘電体レンズ136を付設してもよい。また、アンテナ135をパラボラアンテナ又はカセグレンアンテナにすることにより、検出装置100の全体としての、
図3中の縦方向の寸法を小さくすることができ、誘電体レンズ136を省略することもできる。
【0026】
回転軸110の外周面にはギア112が設けられており、ギア112には、モータ113のギア155が噛合している。したがって、モータ113を駆動させることにより、回転軸110が図中の符号Yで示すように回動し、それに伴って回転板120が、回転軸110と同方向に、高炉1の開口部2に対して水平に回転する。
【0027】
このように、回転板120の回転とともに検出波Mが高炉1の周方向に走査され、回転板120及びその駆動系が「周方向走査手段」に相当する。
【0028】
回転板120の下方の、高炉1の開口部2との間の空間には、炉内に検出波Mを送信し、受信するための角度固定反射板138と、角度可変反射板140とが配設されている。
【0029】
角度固定反射板138は、その反射面の傾斜角度が45°に固定されている反射板であり、第1の角度固定反射板138A、第2の角度固定反射板138B、及び第3の角度固定反射板138Cで構成されている。
第1の角度固定反射板138Aは、回転板120の開口121を通じてアンテナ135のアンテナ面(図の例では誘電体レンズ136)と対向している。
第2の角度固定反射板138Bは、第1の角度固定反射板138Aと対向配置しており、第2の角度固定反射板138Bとは第3の角度固定反射板138Cが対向配置している。
そのため、
図3中の一点鎖線で示すように、アンテナ135から送信された検出波Mは、第1の角度固定反射板138Aで反射されて第2の角度固定反射板138Bに送られ、第2の角度固定反射板138Bで反射された後、第3の角度固定反射板138Cに送られる。そして、第3の角度固定反射板138Cで反射されて、角度可変反射板140に送られる。
【0030】
これら第1の角度固定反射板138A、第2の角度固定反射板138B及び第3の角度固定反射板138Cは、例えば、回転板120から高炉1の開口部2に向かって垂下する固定部材(図示せず)に取り付けられる。
【0031】
角度可変反射板140は、反射面140aの傾斜角度が
図3中の符号Xで示す方向に可変する反射板である。この角度可変反射板140では、反射面140aとは反対側の面(裏面)の中心に、リンク機構117の第1リンク117aが固定されており、第1リンク117aには第2リンク117bが連結している。また、第2リンク117bには、回転軸110の開口121を通じて回転軸110の内部を貫通する連結棒114が連結しており、連結棒114の第2リンク117bとは反対側の端部にラックギア118が形成されている。
【0032】
連結棒114は、アンテナ135と送受信手段130とを接続する導波管133を内管とする外管部114aを有し、外管部114aの外周面にラックギア118が形成されている。このラックギア118には、モータ125のギア119が噛合しており、モータ125を駆動することによりギア119が回転し、ラックギア118で直線運動に変換される。ここで、モータ125には、エンコーダ126が接続しており、モータ125の回転量、更にはギア119の回転量が検出される。
【0033】
また、連結棒114は、回転軸110の内部で、アンテナ135を避けるように回転板120に向かって延びる中間部114bを有している。外管部114aの回転軸110側の端部は外方に屈曲しており、この屈曲部分に中間部114bが連続している。
【0034】
更には、中間部114bは、回転板120の開口121を通じて高炉1の開口部2に延びる下端部114cを有している。この下端部114cが、リンク機構117の第2リンク117bに連結している。
【0035】
連結棒114はこのように構成され、モータ125の回転がギア119を通じてラックギア118により直線運動に変換され、
図3中に符号Hで示すように、連結棒114が角度可変反射板140の側、あるいは反対側へと直線状に移動する。
【0036】
また、角度可変反射板140の直径両端には、支軸(図示せず)が突設しており、支軸が回動自在に支持されている。そして、支持腕が、回転板120に取り付けられた支持腕保持棒145に取り付けられている。
【0037】
そして、連結棒114が角度可変反射板140の側へと移動(
図3中の下降方向)すると、リンク機構117を介して角度可変反射板140の反射面140aが側壁1bを向くように傾斜し、連結棒114が角度可変反射板140とは反対側へと移動(
図3中の上昇方向)すると、リンク機構117を介して角度可変反射板140の反射面140aが高炉1の軸線C(
図1参照)を向くように傾斜する。すなわち、連結棒114の下降及び上昇により、角度可変反射板140の反射面140aの傾斜を、
図3中の符号X方向に変えることができる。
【0038】
それに伴って、角度固定反射板138の第3の角度固定反射板138Cから角度可変反射板140に送られた検出波Mは、符号Zで示すように
図3中における左右方向に振られ、回転板120の径方向に沿った線状となって炉内に送られる。
【0039】
このように、角度可変反射板140により検出波Mが高炉1の径方向に走査され、角度可変反射板140及びその駆動系が「径方向走査手段」に相当する。
【0040】
検出波Mは、
図1に示す装入面21で反射され、送信時と同経路を辿って送受信手段130で受信される。送受信は、例えばFM-CW方式で行うことができる。すなわち、送受信手段130に接続するアンテナ135から送信され、角度固定反射板138A~138Cで反射されて角度可変反射板140に送られ、角度可変反射板140から所定の角度で送信された検出波M(送信波)は、高炉1の開口部2を通じて炉内へと送られた後、装入面21で反射され、その反射波が逆の経路(すなわち、角度可変反射板140→角度固定反射板138C~138A→アンテナ135→送受信手段130)を辿って、送受信手段130で検波される。そして、送信波と反射波との周波数差(ビート周波数)から送受信手段130と装入面21との間の距離情報が得られる。
【0041】
なお、モータ113に接続するエンコーダ150により、回転板120の回転位置に相当する回転軸110の回動角度が検出されるため、走査領域における検出波Mの位置情報が得られる。また、エンコーダ126によるモータ125及びギア119の回転量から、角度可変反射板140の反射面140aの傾斜角度が検出され、回転板120の径方向における位置情報が検出される。これら距離情報と位置情報とから、装入面21の全面にわたって表面プロフィールが得られる。
【0042】
また、角度固定反射板138及び角度可変反射板140を用いる代わりに、
図4に示すような、フェーズドアレイモジュール160を回転板120に取り付ける構成とすることもできる。
【0043】
図4に示すように、フェーズドアレイモジュール160は、n個のアンテナ素子161(1)~161(n)を移相器162に接続したものであり、個々のアンテナ素子161(1)~161(n)は、検出波Mの位相を制御するための移相器162にマイクロストリップライン(図示せず)で接続されている。そして、フェーズドアレイモジュール160は、移相器162からのアンテナ素子161(1)~161(n)への各移相量を変えることによりアンテナ素子161(1)~161(n)の指向性(検出波Mの送受信方向)を変えて、アンテナ素子161(1)~161(n)の連設方向(すなわち、
図4における左右方向)に沿った線状の走査を行う。
【0044】
フェーズドアレイモジュール160は、アンテナ素子161(1)~161(n)のアンテナ端面161aが高炉1の開口部2を向くように、かつ、アンテナ素子161(1)~161(n)の連設方向が回転板120の径方向に沿うように、回転板120に取り付けられる。フェーズドアレイモジュール160の回転板120への取り付けは、アンテナ端面161aを結ぶ線が回転板120の板面に対して角度αをなすように傾斜していてもよいし、アンテナ端面161aを結ぶ線と回転板120の板面とが平行、すなわち角度α=0としてもよい。
【0045】
このように、フェーズドアレイモジュール160により検出波Mが高炉1の径方向に走査され、n個のアンテナ素子161(1)~161(n)及び移相器162が「径方向走査手段」に相当する。また、上記と同様に、回転板120及びその駆動系が、「周方向走査手段」に相当する。
【0046】
これら検出装置100は
図1に示すように高炉1の傾斜部1aに設置されるため、走査領域Sが
図2に示すような楕円状となる。そこで本発明では、装入面21のみを走査して無駄な範囲を走査しないように、径方向走査手段及び周方向走査手段を以下のように制御する。なお、以降の説明では、
図3に示した、径方向走査手段として角度可変反射板140、周方向走査手段として回転板120を備える構成の検出装置100を基に説明する。また、
図1と同様に、シュートの図示を省略している。
【0047】
[走査領域の補正方法]
まず、角度可変反射板140の予め設定した傾斜角度θ(例えば50°)にて、装入面21の全面の表面プロフィールを測定する。そして、得られた表面プロフィールから、装入面21の炉壁近辺の高さを求める。この炉壁近辺の高さは、
図5に示す炉壁近辺領域Tに現れることから、「炉壁部高さ」と呼ぶ。
【0048】
次いで、上記で求めた炉壁部高さとなる測定点Pにおける角度可変反射板140の傾斜角度θ′を求める。そして、
図5に示すように、角度可変反射板140の傾斜角度を傾斜角度θ′に変更し、装入面21の全面を測定する。
【0049】
なお、角度可変反射板140の傾斜角度θ′は、回転板120の回動角度、例えば
図5の例では、検出装置100に対して遠い側(測定中心Pcの右側)の傾斜角度θ′1と、近い側(測定中心Pcの左側)の傾斜角度θ′2とで異なる。また、高炉1の操業とともに、装入面21の位置(高さ)が徐々に図中の下方へと変化する。更には、シュートから炉内に装入物20が装入される度に装入面21の位置(高さ)が図中の上方へと変化する。そこで、角度可変反射板140の傾斜角度θ′で径方向に走査しながら、回転板120の所定回動角度毎に、装入面21の炉壁部高さを測定して角度可変反射板140の傾斜角度θ′を調整する。
【0050】
上記のようにして得られた、回転板120が一周する間における角度可変反射板140の傾斜角度θ′の関係を、
図6に示す。
図6では、回動角度を横軸に、傾斜角度θ′を縦軸にして示すが、図示されるように、回動角度毎に傾斜角度θ′が変化し、回動角度0°から回動角度90°に向けて傾斜角度θ′が徐々に大きくなり、回動角度90°を超えると回動角度が大きくなるのに従って傾斜角度θ′が徐々に小さくなり、回動角度180°まで減少する。回動角度180°を超えると、回動角度が大きくなるのに従って傾斜角度θ′が徐々に大きくなる。その後、回動角度270°を超えると、回動角度が大きくなるのに従って傾斜角度θ′が徐々に小さくなり、一周して回動角度360°になると回動角度0°と同じ傾斜角度θ′に戻る。
【0051】
このように、本発明によれば、回転板120の回動角度に応じて、角度可変反射板140の傾斜角度を変えることにより、走査領域Sを装入面21のみとすることができ、無駄な走査時間を排除することができる。さらに、走査時間を無駄な走査時間を排除する前の走査時間に戻せば計測点を増やすことが出来る。送受信手段130は一定間隔ごとに送信信号を送っているので計測時間を増やすと測定点Pも増加し、検出精度が改善される。
【0052】
なお、上記の補正時期は、通常の測定の前に毎回行ってよいし、時間短縮のために所定の回数毎に行ってもよい。
【0053】
なお、
図4に示したフェーズドアレイ方式の検出装置では、移相器162からの各アンテナ素子161(1)~161(n)の連設方向への移相範囲を変えることで同様のことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 高炉
1a 傾斜部
1b 側壁
2 開口部
20 装入物
21 装入面
100 検出装置
110 回転軸
113 モータ(回転手段)
114 連結棒
117 リンク機構
120 回転板
130 送受信手段
135 アンテナ
138 角度固定反射板
138A 第1の角度固定反射板
138B 第2の角度固定反射板
138C 第3の角度固定反射板
140 角度可変反射板
160 フェーズドアレイモジュール
161(1)~161(n) アンテナ素子
162 移相器