(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118320
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】結晶欠陥評価装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240823BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01N21/88 H
G01N21/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024678
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】502093771
【氏名又は名称】セラミックフォーラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 亮
【テーマコード(参考)】
2G051
4M106
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA05
2G051BA11
2G051BB01
2G051BB07
2G051CA04
2G051CB02
2G051CC07
4M106AA01
4M106BA06
4M106CA18
4M106CB19
4M106DH12
4M106DH31
4M106DH40
4M106DJ28
(57)【要約】
【課題】本発明は、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる結晶欠陥評価装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る結晶欠陥評価装置は、半導体ウェハの結晶欠陥を評価する結晶欠陥評価装置であって、上記半導体ウェハの表面又は裏面に光線を照射する光照射部と、上記半導体ウェハ表面からの反射光又は透過光を集光する対物レンズと、上記対物レンズを通過した光線をフィルタリングする光学フィルタ部と、上記光学フィルタ部を通過した光線を結像させる結像レンズと、上記結像レンズを通過した光線の結像位置に配置されるカメラとを備え、上記光照射部が、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、上記光学フィルタ部が、複数種の光学素子から1の光学素子を選択可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの結晶欠陥を評価する結晶欠陥評価装置であって、
上記半導体ウェハの表面又は裏面に光線を照射する光照射部と、
上記半導体ウェハ表面からの反射光又は透過光を集光する対物レンズと、
上記対物レンズを通過した光線をフィルタリングする光学フィルタ部と、
上記光学フィルタ部を通過した光線を結像させる結像レンズと、
上記結像レンズを通過した光線の結像位置に配置されるカメラと
を備え、
上記光照射部が、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、
上記光学フィルタ部が、複数種の光学素子から1の光学素子を選択可能に構成されている結晶欠陥評価装置。
【請求項2】
上記対物レンズ及び上記結像レンズの光軸が固定されており、
上記光学フィルタ部が、上記複数種の光学素子を装着したレボルバを有し、
上記レボルバの回転により、選択された1の光学素子が上記光軸上に移動可能に構成されている請求項1に記載の結晶欠陥評価装置。
【請求項3】
上記光照射部が、
上記半導体ウェハの表面に照射され、上記半導体ウェハ表面からの反射光として観測される光線を照射するフォトルミネセンス観察用光源と、
上記半導体ウェハの裏面に偏光されて照射され、上記半導体ウェハ表面からの透過光として観測される光線を照射する偏光観察用光源と
を有する請求項1又は請求項2に記載の結晶欠陥評価装置。
【請求項4】
上記半導体ウェハの表面に上記対物レンズの焦点が位置するように、上記対物レンズ又は上記半導体ウェハを移動させるオートフォーカスユニットを備える請求項1又は請求項2に記載の結晶欠陥評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶欠陥評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスが様々な分野で用いられている。この半導体デバイスは半導体ウェハ上に絶縁膜や電極等を積層することで形成される。
【0003】
半導体デバイスの性能は、主として半導体ウェハ自体の持つ特性により決まる。この半導体ウェハに結晶欠陥があると、この結晶欠陥により、例えば半導体中の電子や正孔の移動が阻害され、半導体ウェハが本来持つ特性を発揮できなくなる。このため、半導体ウェハの結晶欠陥を含む領域に構成された半導体デバイスは、所望の特性を得られないおそれがある。従って、半導体デバイスの製造にあたっては、まず基板となる半導体ウェハの結晶欠陥の有無が検査される。そして、結晶欠陥が発見されればその結晶欠陥の種類や状態を確認すべく観察がなされる。
【0004】
結晶欠陥は種々の方法で観察される。例えば出願人は、照射光を円偏光として半導体ウェハに照射し、直線偏光子を通過させてその透過光を観察する結晶欠陥検出装置を提案している(特開2020-188142号公報)。
【0005】
上記結晶欠陥検出装置は、一度の観察で、クロスニコルに配置された2つの直線偏光子を用いた従来の方法では検出できないような結晶欠陥まで観察することができる。つまり、上記結晶欠陥検出装置は、より網羅的に結晶欠陥を抽出することができるから、半導体ウェハの結晶欠陥の多寡を、容易かつ精度よく判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記結晶欠陥検出装置は、網羅的に結晶欠陥を抽出することができる故に、その欠陥の発生要因が異なるものが同時に観察されることとなる。例えば結晶欠陥の低減を図ることを考えた場合、その発生要因により対策が異なるため、結晶欠陥の発生要因の分類が必要となる。
【0008】
この場合、特定の結晶欠陥のみ抽出可能な別の手段で観察を行う必要が生じる。そして、異なる種類の結晶欠陥検出装置で観察された結果を突き合わせて、結晶欠陥の主たる発生要因を特定していくといった作業に頼る場合が多い。例えば上記結晶欠陥検出装置により観察された結晶欠陥の全体観察画像に写っている個々の結晶欠陥と、特定の発生要因に起因する結晶欠陥のみを抽出した要因観察画像に写っている個々の結晶欠陥とを一対一対応させる作業が行われる。
【0009】
ところが、この作業は困難を極める。結晶欠陥は半導体ウェハを拡大して観察するため、画像に半導体ウェハのごく一部しか写っておらず、かつ半導体ウェハは一般に鏡面であり目印もないため、両者の画像の位置合わせが容易ではない。また、特定の結晶欠陥のみ抽出可能な方法で観察した上記要因観察画像には、要因が異なる結晶欠陥は写っていない。このため、1つの画像の1つの結晶欠陥が、他の画像、つまり上記全体観察画像のどの結晶欠陥と対応するのか対応関係を構築することが容易ではない。1つの画像では、複数の点状で表示される結晶欠陥が、他の画像では連続した線状の結晶欠陥として観察されるということもあり得るため、さらに対応関係の構築は困難を極めることとなる。
【0010】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる結晶欠陥評価装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る結晶欠陥評価装置は、半導体ウェハの結晶欠陥を評価する結晶欠陥評価装置であって、上記半導体ウェハの表面又は裏面に光線を照射する光照射部と、上記半導体ウェハ表面からの反射光又は透過光を集光する対物レンズと、上記対物レンズを通過した光線をフィルタリングする光学フィルタ部と、上記光学フィルタ部を通過した光線を結像させる結像レンズと、上記結像レンズを通過した光線の結像位置に配置されるカメラとを備え、上記光照射部が、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、上記光学フィルタ部が、複数種の光学素子から1の光学素子を選択可能に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結晶欠陥評価装置は、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る結晶欠陥評価装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の結晶欠陥評価装置の光学フィルタ部の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2の光学フィルタ部で用いられるレボルバを示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図1の結晶欠陥評価装置により観察される透過偏光観察像のイメージ図である。
【
図5】
図5は、
図1の結晶欠陥評価装置により観察される単一ショックレー積層欠陥像のイメージ図である。
【
図6】
図6は、
図1の結晶欠陥評価装置により観察される二重ショックレー積層欠陥像のイメージ図である。
【
図7】
図7は、
図1の結晶欠陥評価装置により観察される基底面転位像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る結晶欠陥評価装置は、半導体ウェハの結晶欠陥を評価する結晶欠陥評価装置であって、上記半導体ウェハの表面又は裏面に光線を照射する光照射部と、上記半導体ウェハ表面からの反射光又は透過光を集光する対物レンズと、上記対物レンズを通過した光線をフィルタリングする光学フィルタ部と、上記光学フィルタ部を通過した光線を結像させる結像レンズと、上記結像レンズを通過した光線の結像位置に配置されるカメラとを備え、上記光照射部が、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、上記光学フィルタ部が、複数種の光学素子から1の光学素子を選択可能に構成されている。
【0016】
当該結晶欠陥評価装置は、光照射部が複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、光学フィルタ部が複数種の光学素子から1の光学素子を選択可能に構成されているので、半導体ウェハを固定したまま光源と光学素子との組み合わせを変更することで、結晶欠陥の全体像あるいは特定の要因に起因する結晶欠陥の画像を複数得ることができる。半導体ウェハは固定されており、かつ各画像は同一のカメラで撮影できるので、得られた複数の画像の位置合わせを容易に行うことができる。従って、当該結晶欠陥評価装置は、画像間で写っている結晶欠陥を容易に対応づけできるので、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる。
【0017】
上記対物レンズ及び上記結像レンズの光軸が固定されており、上記光学フィルタ部が、上記複数種の光学素子を装着したレボルバを有し、上記レボルバの回転により、選択された1の光学素子が上記光軸上に移動可能に構成されているとよい。このように上記対物レンズ及び上記結像レンズの光軸を固定し、レボルバの回転により、選択された1の光学素子を上記光軸上に移動可能に構成することで、異なる光学素子で撮影された画像を、より容易に位置合わせすることができる。
【0018】
上記光照射部が、上記半導体ウェハの表面に照射され、上記半導体ウェハ表面からの反射光として観測される光線を照射するフォトルミネセンス観察用光源と、上記半導体ウェハの裏面に偏光されて照射され、上記半導体ウェハ表面からの透過光として観測される光線を照射する偏光観察用光源とを有するとよい。偏光観察用光源を用いることで、結晶欠陥の全体観察画像を容易かつ精度よく取得することができる。また、フォトルミネセンス観察用光源を用いることで、特定の要因に起因する結晶欠陥を容易かつ精度よく取得することができる。従って、上記光照射部を用いることで、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易かつ精度よく特定できる。
【0019】
上記半導体ウェハの表面に上記対物レンズの焦点が位置するように、上記対物レンズ又は上記半導体ウェハを移動させるオートフォーカスユニットを備えるとよい。このように上記オートフォーカスユニットを備えることで、対物レンズと半導体ウェハとの位置合わせを容易に行うことができる。このため、複数の画像取得の作業効率を高められる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る結晶欠陥評価装置について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示す結晶欠陥評価装置1は、半導体ウェハWの結晶欠陥を評価する結晶欠陥評価装置である。当該結晶欠陥評価装置1は、光照射部10と、対物レンズ20と、光学フィルタ部30と、結像レンズ40と、カメラ50と、XYステージ60と、オートフォーカスユニット70とを備える。
【0022】
<半導体ウェハ>
測定対象となる半導体ウェハWは特に限定されないが、当該結晶欠陥評価装置1は、六方晶系の半導体ウェハ、特にそのC面の検査に好適に用いることができる。また、半導体ウェハWは、可視光に対して透明であるものが好ましい。このような半導体ウェハWとしては、六方晶系のもの、例えばSiC(4H-SiC、6H-SiC、8H-SiC)、GaN、AlN等を挙げることができる。
【0023】
特にSiC、GaN、AlNのように開発途上にある半導体ウェハにおいては、Si単結晶基板のように極めて単結晶性の高い半導体ウェハとは異なり、結晶欠陥が様々な形態で存在し得る。当該結晶欠陥評価装置1は、様々な種類の結晶欠陥を分類できるので、このような開発途上にある半導体ウェハに対して特に有効である。
【0024】
半導体ウェハWの直径としては、必ずしも限定されるものではないが、半導体ウェハWの直径の下限としては、0.5インチが好ましく、1インチがより好ましい。一方、半導体ウェハWの直径の上限としては、8インチが好ましく、6インチがより好ましい。半導体ウェハWの直径が上記下限未満であると、1枚の半導体ウェハWに対して評価コストが高くなり過ぎるおそれがある。逆に、半導体ウェハWの直径が上記上限を超えると、当該結晶欠陥評価装置1が大型化するため、当該結晶欠陥評価装置1の製造コストが高くなり過ぎるおそれがある。
【0025】
半導体ウェハWの平均膜厚としては、必ずしも限定されるものではないが、半導体ウェハWの平均膜厚の下限としては、200μmが好ましく、350μmがより好ましい。一方、半導体ウェハWの平均膜厚の上限としては、700μmが好ましく、500μmがより好ましい。半導体ウェハWの平均膜厚が上記下限未満であると、半導体ウェハWの取扱いが困難となるおそれがある。一方、半導体ウェハWの平均膜厚が上記上限を超えると、半導体ウェハWへの照射光に対する透過光の減衰が大きくなり易く、当該結晶欠陥評価装置1の測定感度が低下するおそれがある。なお、半導体ウェハWの平均膜厚の上限は、測定対象とする半導体ウェハWの透明度にも依存し、半導体ウェハWが透明度の高いものであれば膜厚が上述の上限よりも大きいものであっても、高い精度で評価することが可能である。ここで、「平均膜厚」とは、任意の10点で測定した膜厚の平均値を指す。
【0026】
なお、半導体ウェハWは、後述するXYステージ60に載置される。
【0027】
<光照射部>
光照射部10は、半導体ウェハWの表面又は裏面に光線を照射する。光照射部10は、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成されている。
【0028】
当該結晶欠陥評価装置1では、
図1に示すように、光照射部10が、フォトルミネセンス観察用光源11と、偏光観察用光源12とを有する。フォトルミネセンス観察用光源11と偏光観察用光源12とは、同時に選択されることはなく、排他的に用いられる。つまり、光照射部10は、波長又は偏光の異なる光源である2種類の光源(フォトルミネセンス観察用光源11及び偏光観察用光源12)から1の光源を選択可能に構成されている。
【0029】
(フォトルミネセンス観察用光源)
フォトルミネセンス観察用光源11は、半導体ウェハWの表面に照射され、半導体ウェハW表面からの反射光として観測される光線を照射する。このようにフォトルミネセンス観察用光源11を用いることで、特定の要因に起因する結晶欠陥を容易かつ精度よく取得することができる。
【0030】
フォトルミネセンス観察用光源11は、所望の波長の光線を出光できる光源を準備してもよいが、
図1に示すように、例えば可視光線を出光可能な光源本体11aと、光源本体11aの出光方向前方に配置される光学フィルタ11bとを有し、光学フィルタ11bにより所望の波長の光線を出光可能としてもよい。
【0031】
光学フィルタ11bを用いる場合、光源本体11aには、LED、ハロゲンランプ等公知の光源を用いることができる。また、光学フィルタ11bには、特定の波長の光線を出光可能なバンドパスフィルタ(BPF)や、特定の波長より長い波長を出光可能なロングパスフィルタ(LPF)などを用いることができる。例えば半導体ウェハWがSiCである場合、350nm以上360nm以下の波長の光線を含むように光学フィルタ11bを設定するとよい。
【0032】
なお、当該結晶欠陥評価装置1では、フォトルミネセンス観察用光源11は、1種類の光線を出光できるものであるが、波長の異なる複数の光線から1の光線を選択して出光可能に構成してもよい。
【0033】
(偏光観察用光源)
偏光観察用光源12は、半導体ウェハWの裏面に偏光されて照射され、半導体ウェハW表面からの透過光として観測される光線を照射する。このように偏光観察用光源12を用いることで、結晶欠陥の全体観察画像を容易かつ精度よく取得することができる。従って、フォトルミネセンス観察用光源11と偏光観察用光源12とを有する光照射部10を用いることで、半導体ウェハWの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易かつ精度よく特定できる。
【0034】
偏光観察用光源12は、例えば
図1に示すように、可視光線を出光可能な光源本体12aと、光源本体12aの出光方向前方に配置される光学フィルタ12bと、光学フィルタ12bを通過した光線を変更する偏光板12cとを有する構成とすることができる。
【0035】
光源本体12aには、LED、ハロゲンランプ等公知の光源を用いることができる。半導体ウェハWがSiCである場合、光源本体12aは、波長400nm以上800nm以下の範囲の光を含むとよい。
【0036】
光学フィルタ12bは、半導体ウェハWの偏光観察を行うために必要な波長の光線を選択するためのフィルタであり、BPFやLPFが用いられる。例えば半導体ウェハWがSiCである場合、530nmの波長の光線が含まれるように選択され、中でも530nmの単色光となるBPFが好ましい。
【0037】
偏光板12cは、自然光から直線偏光に変換する直線偏光子とすることができる。つまり、直線偏光子である偏光板12cを通過した光線は、光の進行方向に直交する1つの平面(偏光面)上でのみ振動する横波となる。直線偏光子としては、公知のフィルム偏光子やプリズム偏光子を用いることができる。
【0038】
偏光板12cを直線変更子と位相差板との組み合わせとしてもよい。この場合、位相差板は1/4波長板とされる。光源本体12aからの光線は、直線偏光子と、1/4波長位相差板とをこの順に通過することで円偏光に変換される。
【0039】
なお、当該結晶欠陥評価装置1では、偏光観察用光源12は、1種類の光線を出光できるものであるが、波長又は偏光の異なる複数の光線から1の光線を選択して出光可能に構成してもよい。
【0040】
<対物レンズ、結像レンズ>
対物レンズ20は、半導体ウェハW表面からの反射光又は透過光を集光する。結像レンズ40は、光学フィルタ部30を通過した光線を結像させる。この対物レンズ20及び結像レンズ40は、公知の凸レンズである。
【0041】
対物レンズ20及び結像レンズ40の光軸Mは固定されている。すなわち対物レンズ20及び結像レンズ40は、その中心軸に沿ってのみ移動可能である。
【0042】
<光学フィルタ部>
光学フィルタ部30は、対物レンズ20を通過した光線をフィルタリングする。光学フィルタ部30は、複数種の光学素子31から1の光学素子31を選択可能に構成されている。
【0043】
当該結晶欠陥評価装置1では、
図2及び
図3に示すように、光学フィルタ部30は、複数種(
図3では6種類)の光学素子31を装着したレボルバ32と、レボルバ32を収納する第1筐体33と、レボルバ32の回転を制御する制御部(不図示)を収納する第2筐体34とを有する。
【0044】
レボルバ32は、例えば薄い円柱状であり、複数種の光学素子31はその中心軸の回りに周状に配置されている。光学素子31は、偏光板又は光学フィルタである。半導体ウェハWがSiCである場合、光学素子31は、例えば直線偏光板、波長390nmのBPF、波長420nmのBPF、波長480nmのBPF、波長500nmのLPF及び波長750nmのLPFとすることができる。観察される欠陥によっては、波長465nmのBPF、波長550nmのLPF、波長560nmのLPFなどを採用してもよい。
【0045】
レボルバ32は、第1筐体33内に収納されている。第1筐体33は、例えば円筒状であり、レボルバ32に装着された1の光学素子31を光線が通過できるように窓33aが設けられている。なお、光学フィルタ部30は、窓33aが
図1の光軸M上に位置するように、配置される。
【0046】
レボルバ32は、第1筐体33内で回転可能であり、光学フィルタ部30は、レボルバ32の回転により、選択された1の光学素子31が光軸M上に移動可能に構成されている。つまり、レボルバ32の回転により、選択された1の光学素子31が、窓33aの位置に移動する。
【0047】
このように対物レンズ20及び結像レンズ40の光軸Mを固定し、レボルバ32の回転により、選択された1の光学素子31を光軸M上に移動可能に構成することで、異なる光学素子31で撮影された画像を、より容易に位置合わせすることができる。
【0048】
なお、
図2の光学フィルタ部30では、第1筐体33及び第2筐体34は一体的に構成されているが、第1筐体33と第2筐体34とを別体で形成し、両者を信号線で結線する構成とすることもできる。
【0049】
<カメラ>
カメラ50は、結像レンズ40を通過した光線の結像位置に配置される。
【0050】
カメラ50は、結像させた像を観察するための道具である。カメラ50としては、特に限定されるものではなく、公知のカメラを用いることができる。
【0051】
<XYステージ>
XYステージ60は、半導体ウェハWを下方から支持する架台であり、XY方向に可動するとともに光軸M方向にも移動可能に構成される。
【0052】
XYステージ60は、XY方向に移動することで、光照射部10からの光線が照射される半導体ウェハWの位置を変えることができるので、当該結晶欠陥評価装置1は、半導体ウェハWの面内を網羅的に観察することができる。
【0053】
XYステージ60は、光軸M方向にも移動可能である。後述するオートフォーカスユニット70と連動させることで、対物レンズ20の焦点を半導体ウェハWの表面に容易に位置させることができる。
【0054】
XYステージ60は、下方から照射される偏光観察用光源12からの光線が半導体ウェハW裏面に照射されるように構成される。
図1に示すXYステージ60は、半導体ウェハWが載置される位置に貫通孔61が設けられており、上記光線がXYステージ60を光軸M方向(XYステージ60の厚さ方向)に通過可能に構成されている。あるいは、XYステージ60の少なくとも半導体ウェハWが載置される領域を、偏光観察用光源12からの光線に対して透明な材質で構成してもよい。
【0055】
<オートフォーカスユニット>
オートフォーカスユニット70は、半導体ウェハWの表面に対物レンズ20の焦点が位置するように、半導体ウェハWを移動させる。
【0056】
具体的には、オートフォーカスユニット70は、対物レンズ20の焦点の位置と半導体ウェハWの表面の光軸M方向位置とが一致するようにXYステージ60を調整する。
【0057】
可視光で透明な半導体ウェハWの表面を肉眼で見つけ出すことは困難である。このようにオートフォーカスユニット70を備えることで、対物レンズ20と半導体ウェハWとの位置合わせを容易に行うことができる。このため、複数の画像取得の作業効率を高められる。
【0058】
オートフォーカスユニット70としては、特に限定されず、レーザを用いた公知のオートフォーカス機構を用いることができる。なお、レーザ光の波長としては、互いの干渉を抑止するため光照射部10とは異なる波長を用いるとよい。例えば光照射部10として、上述したSiCウェハの場合のように、400nm以上600nm以下の波長を用いる場合であれば、レーザ光の波長としては近赤外域の波長、例えば600nm以上700nm以下の波長を用いるとよい。
【0059】
オートフォーカスユニット70として、レーザを用いた公知のオートフォーカス機構を用いる場合、
図1に示すように、オートフォーカスユニット70は、ユニット本体71と、ハーフミラー72とを有する構成とするとよい。
【0060】
ユニット本体71は、光軸Mの側方に配置され、光軸Mに対して垂直にレーザ光を照射可能に構成される。また、ユニット本体71は、レーザ光の照射位置近傍に反射して戻ってくるレーザ光を検知可能な受光素子を有している。
【0061】
ハーフミラー72は、上記レーザ光が対物レンズ20を介して半導体ウェハWの表面に照射されるように、レーザ光の角度を変える。また、半導体ウェハWの表面で反射したレーザ光は、対物レンズ20を経て、ハーフミラー72で方向を変えられ、ユニット本体71の受光素子に戻るように構成される。
【0062】
ハーフミラー72は、光線を透過することもできるので、結晶欠陥の観察時には、光照射部10からの光線が光軸M方向に最大限透過する角度に調整されるとよい。このとき、レーザ光はオフ(消光)される。あるいは、結晶欠陥の観察時にハーフミラー72が収納される構成を採用することもできる。ハーフミラー72は光照射部10からの光線を妨げない位置に収納される。この場合、ハーフミラー72に代えて通常の(光線を透過しない)鏡を用いることもできる。
【0063】
また、半導体ウェハWをXYステージ60によりXY方向に移動させた場合、半導体ウェハWのそりによって半導体ウェハWの表面が対物レンズ20の焦点の位置からずれてしまう場合が生じ得る。このような場合にあっては、オートフォーカスユニット70を備えることで、半導体ウェハWのそりを検知し、その大きさに従って半導体ウェハWの光軸M方向の位置を調整することで、半導体ウェハWの表面が対物レンズ20の焦点の位置からずれてしまうことを抑止できる。従って、半導体ウェハWにそりがある場合であっても、像がぼけることなく、結晶欠陥の評価を行うことができる。
【0064】
<結晶欠陥の評価>
当該結晶欠陥評価装置1は、光照射部10で選択される光源と、光学フィルタ部30で選択される光学素子31との組み合わせで、種々の結晶欠陥を評価できる。例として、上述した半導体ウェハWがSiCである場合を例にとり説明する。フォトルミネセンス観察用光源11は350nm以上360nm以下の波長の光線を含む光源であり、偏光観察用光源12は直線偏光された530nmの単色光を含む光源である。光学素子31は、直線偏光板、波長390nmのBPF、波長420nmのBPF、波長480nmのBPF、波長500nmのLPF及び波長750nmのLPFである。
【0065】
(透過観察)
光照射部10として偏光観察用光源12を選択し、光学フィルタ部30の光学素子31として直線偏光板を選択する。なお、光学素子31の直線偏光板は、偏光観察用光源12の直線偏光とは直交するように配置されている。この組み合わせにおいて、
図4に示すような透過偏光観察像が得られる。この像は、半導体ウェハWに含まれる結晶欠陥を総合的に抽出することができる。
【0066】
(単一ショックレー積層欠陥)
光照射部10としてフォトルミネセンス観察用光源11を選択し、光学フィルタ部30の光学素子31として波長420nmのBPFを選択する。この条件により単一ショックレー(Single Shockley)積層欠陥を観察することができ、例えば
図5のような観察像を得ることができる。
【0067】
このとき半導体ウェハWの位置は変えない。従って、透過偏光観察像と同じ位置関係で単一ショックレー積層欠陥の観察像を得ることができる。他の画像についても同様である。
【0068】
(二重ショックレー積層欠陥)
光照射部10をフォトルミネセンス観察用光源11としたままで、光学フィルタ部30の光学素子31として波長480nmのBPFを選択する。この条件により二重ショックレー(Double Shockley)積層欠陥を観察することができ、例えば
図6のような観察像を得ることができる。
【0069】
(基底面転位)
光照射部10をフォトルミネセンス観察用光源11としたままで、光学フィルタ部30の光学素子31として波長750nmのLPFを選択する。この条件により基底面転位欠陥(BPD:Basal Plane Dislocation)を観察することができ、例えば
図7のような観察像を得ることができる。
【0070】
(その他)
同様に、光照射部10をフォトルミネセンス観察用光源11としたままで、光学フィルタ部30の光学素子31として波長390nmのBPFを選択すると、らせん転位(TSD:Threading Screw Dislocation)及び刃状転位(TED:Threading Edge Dislocation)を観察することができる。また、光学素子31として波長480nmのBPFを選択すると、三重ショックレー(Triple Shockley)積層欠陥を観察でき、波長500nmのLPFを選択すると、フランク(Frank)型積層欠陥を観察できる。
【0071】
(評価)
各観察像は、半導体ウェハWの位置を変えずに取得する限り、直接重ね合わせが可能である。例えば、透過偏光観察像(
図4)に、単一ショックレー積層欠陥像(
図5)、二重ショックレー積層欠陥像(
図6)、基底面転位像(
図7)をそれぞれ重ね合わせると、
図8から
図10に示すように、両者を重ね合わせた像が得られる。また、透過偏光観察像(
図4)に、単一ショックレー積層欠陥像(
図5)、二重ショックレー積層欠陥像(
図6)及び基底面転位像(
図7)の全てを重ね合わせると、
図11に示す像が得られる。
【0072】
透過偏光観察像では、結晶欠陥が総合的に観察され、
図4に示すように、結晶欠陥は異なる模様として観察される(
図4では、結晶欠陥A~Eの5種類の模様が観察されている)。これらは異なる要因によって欠陥が形成されていると考えられるが、当該結晶欠陥評価装置1では個々の結晶欠陥の発生要因を容易に特定できる。例えば、
図10及び
図11を参照すると、透過偏光観察像(
図4)の結晶欠陥Aは、主に基底面転位に起因していると判断できる。
図8、
図10及び
図11を参照すると、結晶欠陥Bは、基底面転位及び二重ショックレー積層欠陥に起因しているのに対し、結晶欠陥Cは、主に二重ショックレー積層欠陥に起因していると判断できる。さらに、
図7及び
図11を参照すると、結晶欠陥D、Eは、単一ショックレー積層欠陥に起因していると推察される。また、単一ショックレー積層欠陥には、透過偏光観察像のいずれの結晶欠陥にも対応しないものも存在している。
【0073】
上述の結果を踏まえると、
図4~
図11の観察例で示したウェハ(エピウェハ)では、エピ中に発生している基底面転位は貫通螺旋転位(TSD)クラスタに結晶歪が影響して形成されているが、二重ショックレー結晶欠陥は、TSDクラスタやインクルージョンが引き起こす結晶歪が誘因となってエピ中に発生しているものと考えられる。
【0074】
<利点>
当該結晶欠陥評価装置1は、光照射部10が複数種の光源から1の光源を選択可能に構成され、光学フィルタ部30が複数種の光学素子31から1の光学素子31を選択可能に構成されているので、半導体ウェハWを固定したまま光源と光学素子31との組み合わせを変更することで、結晶欠陥の全体像あるいは特定の要因に起因する結晶欠陥の画像を複数得ることができる。半導体ウェハWは固定されており、かつ各画像は同一のカメラ50で撮影できるので、得られた複数の画像の位置合わせを容易に行うことができる。従って、当該結晶欠陥評価装置1は、画像間で写っている結晶欠陥を容易に対応づけできるので、半導体ウェハWの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる。
【0075】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0076】
上記実施形態では、光照射部がフォトルミネセンス観察用光源と偏光観察用光源とを有する場合を説明したが、波長又は偏光の異なる複数種の光源から1の光源を選択可能に構成されている限り、光照射部がいずれか一方のみを有する構成も本発明の意図するところである。
【0077】
上記実施形態では、オートフォーカスユニットが、半導体ウェハの表面に対物レンズの焦点が位置するように半導体ウェハを移動させる場合を説明したが、対物レンズを移動させてもよく、あるいは対物レンズと半導体ウェハとの両方を移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の結晶欠陥評価装置は、半導体ウェハの結晶欠陥の全体像と、個々の結晶欠陥の発生要因とを容易に特定できる。
【符号の説明】
【0079】
1 結晶欠陥評価装置
10 光照射部
11 フォトルミネセンス観察用光源
11a 光源本体
11b 光学フィルタ
12 偏光観察用光源
12a 光源本体
12b 光学フィルタ
12c 偏光板
20 対物レンズ
30 光学フィルタ部
31 光学素子
32 レボルバ
33 第1筐体
33a 窓
34 第2筐体
40 結像レンズ
50 カメラ
60 XYステージ
61 貫通孔
70 オートフォーカスユニット
71 ユニット本体
72 ハーフミラー
W 半導体ウェハ
M 光軸
A、B、C、D、E 結晶欠陥