(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118322
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】通信システム、方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240823BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024680
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀧尻 豊
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】1つのサービスから他のサービスへの変更の際に不具合が発生することを抑制する。
【解決手段】デバイスにおける消耗品の残量に応じて消耗品を発注する第1サービスおよび第2サービスを提供する際に、対象のデバイスの消耗品の残量を管理する。第1サービスでは、対象のデバイスの消耗品の残量が第1閾値以下になった場合に、消耗品を発注し、第2サービスでは、対象のデバイスの消耗品の残量が第2閾値以下になった場合に、消耗品を発注する。特定のデバイスを対象とするサービスを第2サービスから第1サービスに変更する変更要求を取得する場合に、特定のデバイスを用いた第2サービスにおける消耗品の発注に関連する特定情報を取得し、特定情報を用いて、特定のデバイスを対象とする第1サービスのための第1閾値を設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗品を消費するデバイスと通信可能に接続され、デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第1サービスを提供するサーバであって、
対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が第1閾値以下になった場合に、前記消耗品の発注を行う発注処理部と、
特定のデバイスを対象とするサービスを、前記第1サービスとは異なるサービスであり前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第2サービスから前記第1サービスに変更する変更要求を取得する要求取得部と、
前記変更要求を取得する場合に、前記特定のデバイスを用いた前記第2サービスにおける前記消耗品の発注に関連する特定情報を取得する特定情報取得部と、
前記特定情報を用いて、前記第1閾値を設定する閾値設定部と、
を備えるサーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のサーバであって、
前記特定情報は、前記第2サービスにおける前記消耗品の消費に関する第2サービス履歴情報を含み、
前記閾値設定部は、前記第2サービス履歴情報を用いて第1基準閾値を調整することによって前記第1閾値を設定する、サーバ。
【請求項3】
請求項2に記載のサーバであって、
前記第2サービスでは、対象のデバイスの前記消耗品の残量が第2閾値以下になった場合に、前記消耗品の発注が行われ、
前記第2閾値は、前記第2サービスにおける前記消耗品の消費に関する第2サービス履歴情報を用いて、第2基準閾値を調整することによって設定され、
前記特定情報は、前記第2サービスにおいて前記特定のデバイスのために設定された前記第2閾値を含み、
前記閾値設定部は、前記第2閾値に基づいて前記第1閾値を設定する、サーバ。
【請求項4】
請求項3に記載のサーバであって、さらに、
前記第1閾値が取り得る第1範囲内の値と、前記第2閾値が取り得る第2範囲内の値と、の間の対応関係を示す対応情報を格納する格納部を備え、
前記閾値設定部は、前記対応情報を参照して、前記特定のデバイスのために設定された前記第2閾値に対応する前記第1閾値を設定する、サーバ。
【請求項5】
請求項1に記載のサーバであって、さらに、
前記第1サービスの開始後に、前記第1サービスにおける前記消耗品の消費に関する第1サービス履歴情報を用いて、前記第1閾値を変更する閾値変更部を備える、サーバ。
【請求項6】
請求項5に記載のサーバであって、
前記閾値変更部は、前記閾値設定部によって設定される前記第1閾値と、前記第1サービス履歴情報を用いて設定される閾値と、を前記第1サービスの開始からの経過期間に基づく重みを用いて合成して得られる値を、変更後の前記第1閾値として算出する、サーバ。
【請求項7】
請求項6に記載のサーバであって、
前記閾値変更部は、前記経過期間が基準期間を超えた場合に、前記閾値設定部によって設定される前記第1閾値を用いずに、前記第1サービス履歴情報を用いて、前記第1閾値を設定する、サーバ。
【請求項8】
請求項1に記載のサーバであって、さらに、
前記第2サービスにおける前記特定のデバイスのための前記消耗品の現在の発注状況を示すステータス情報を取得するステータス取得部と、
前記第1サービスの開始後に、前記消耗品の発注状況を管理し、前記ステータス情報の更新を行うステータス更新部と、
を備え、
前記ステータス情報は、前記発注状況が、前記消耗品の発注完了から前記消耗品の補給の完了までの複数の段階のいずれであるかを示す情報である、サーバ。
【請求項9】
消耗品の発注システムであって、
前記消耗品を消費するデバイスと通信可能に接続され、デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第1サービスを提供する第1サーバと、
前記消耗品を消費するデバイスと通信可能に接続され、デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注するサービスであり、前記第1サービスとは異なる第2サービスを提供する第2サーバと、
を備え、
前記第1サーバは、対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が第1閾値以下になった場合に、前記消耗品を発注し、
前記第2サーバは、対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が前記第1閾値とは異なる第2閾値以下になった場合に、前記消耗品を発注し、
前記第1サーバは、さらに、
特定のデバイスを対象とするサービスを前記第2サービスから前記第1サービスに変更する変更要求を取得する場合に、前記特定のデバイスを用いた前記第2サービスにおける前記消耗品の発注に関連する特定情報を前記第2サーバから取得し、
前記特定情報を用いて、前記第1閾値を設定する、発注システム。
【請求項10】
消耗品の発注に関する方法であって、
デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第1サービスを提供する際に、対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が第1閾値以下になった場合に、前記消耗品を発注し、
デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注するサービスであり、前記第1サービスとは異なる第2サービスを提供する際に、対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が前記第1閾値とは異なる第2閾値以下になった場合に、前記消耗品を発注し、
特定のデバイスを対象とするサービスを前記第2サービスから前記第1サービスに変更する変更要求を取得する場合に、前記特定のデバイスを用いた前記第2サービスにおける前記消耗品の発注に関連する特定情報を取得し、
前記特定情報を用いて、前記特定のデバイスを対象とする前記第1サービスのための前記第1閾値を設定する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
定額制や従量制などの印刷サービスが利用されている。例えば、特許文献1の技術では、印刷サービスの契約に基づく印刷を実行するプリンタは、サーバから有効化指示を受信すると、印刷サービスの契約に基づく印刷を有効化する。例えば、プリンタは、印刷枚数やインク残量を示す情報をサーバに送信し、サーバは、これらの情報に基づいて、インクカートリッジの発送処理等を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、1つの印刷サービスから他の印刷サービスへの変更については、何ら考慮されていない。このために、サービスの変更が発生する場合には、例えば、ユーザに不利益が発生する可能性があった。
【0005】
本明細書は、1つのサービスから他のサービスへの変更の際に、不具合が発生することを抑制できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]消耗品を消費するデバイスと通信可能に接続され、デバイスにおける前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第1サービスを提供するサーバであって、対象のデバイスの前記消耗品の残量を管理し、対象のデバイスの前記消耗品の残量が第1閾値以下になった場合に、前記消耗品の発注を行う発注処理部と、特定のデバイスを対象とするサービスを、前記第1サービスとは異なるサービスであり前記消耗品の残量に応じて前記消耗品を発注する第2サービスから前記第1サービスに変更する変更要求を取得する要求取得部と、前記変更要求を取得する場合に、前記特定のデバイスを用いた前記第2サービスにおける前記消耗品の発注に関連する特定情報を取得する特定情報取得部と、前記特定情報を用いて、前記第1閾値を設定する閾値設定部と、を備えるサーバ。
【0008】
上記構成によれば、特定のデバイスを対象とするサービスが第2サービスから第1サービスに変更される際に、第2サービスにおける消耗品の発注に関連する特定情報を用いて、第1サービスにおける消耗品の発注に用いられる第1閾値を設定する。この結果、例えば、特定のデバイスを用いた第2サービスの利用状況等を考慮した適切な第1閾値が設定され得る。したがって、第2サービスから第1サービスへの変更の際に、特定のサービスのユーザに不利益が発生する等の不具合を抑制できる。
【0009】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、消耗品を発注する第1サービスを提供するサーバ、消耗品の発注システム、消耗品の発注に関する方法、これらのサーバ、システム、方法、あるいは、デバイスの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.実施例
A-1.システム1000の構成
図1は、システム1000の構成を示すブロック図である。システム1000は、プリンタ100と、プリンタ100のユーザが所有する端末装置200と、第1サーバ300Aと、第2サーバ300Bと、を備える。
【0012】
プリンタ100は、印刷材としてインクを消費して印刷を行うデバイスである。プリンタ100は、プリンタ100のコントローラとして、CPU110と、DRAMなどの揮発性記憶装置120と、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置130と、を備えている。また、プリンタ100は、画像を表示する液晶ディスプレイなどの表示部140と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部150と、印刷機構170と、通信インタフェース(IF)180と、を備えている。
【0013】
通信IF180は、インターネットITに接続するためのインタフェース、例えば、イーサネット(登録商標)に準拠した有線のインタフェースや、Wi-Fi規格に準拠した無線のインタフェースである。
【0014】
CPU110は、データ処理を行う演算装置(プロセッサ)である。揮発性記憶装置120は、CPU110が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域を提供する。不揮発性記憶装置130には、プリンタ100を制御するためのコンピュータプログラムPGpと、後述する各種の情報が記録される情報データベースIBと、が格納されている。
【0015】
コンピュータプログラムPGpは、本実施例では、プリンタ100の製造時に不揮発性記憶装置130に予め格納されて提供される。これに代えて、コンピュータプログラムPGpは、例えば、インターネットITを介して接続されたサーバからダウンロードされる形態、あるいは、CD-ROMなどに記録された形態で提供され得る。
【0016】
CPU110は、コンピュータプログラムPGpを実行することによって、プリンタ100を制御する各種の処理を実行する。例えば、CPU110は、印刷機構170を制御して、印刷機構170に画像を印刷させる印刷処理を実行する。また、CPU110は、第1サーバ300Aや第2サーバ300Bと協働して、ユーザに対して後述する第1印刷サービスや第2印刷サービスを提供するための処理を実行する。これらの印刷サービスについては、後述する。
【0017】
印刷機構170は、CPU110の制御に従って、印刷を実行する。本実施例の印刷機構170は、インクタンク190に収容された複数種類のインク(例えば、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインク)を色材として用いて、画像を記録媒体に印刷するインクジェット方式の印刷機構である。これに代えて、印刷機構170は、トナーカートリッジに収容されたトナーを色材として用いて、画像を記録媒体に印刷する電子写真方式の印刷機構であっても良い。
【0018】
端末装置200は、図示しないCPUとメモリと表示部(例えば、液晶ディスプレイ)とを備える計算機であり、例えば、スマートフォンである。変形例では、端末装置200は、パーソナルコンピュータやタブレットコンピュータであっても良い。端末装置200は、図示しない所定の通信インタフェース、例えば、Wi-Fi規格や移動体通信の規格(例えば、LTE規格)に準拠した無線の通信インタフェースを備えている。端末装置200には、アプリケーションプログラムAPがインストールされている。アプリケーションプログラムAPは、印刷サービスに関連する処理を端末装置200のCPUに実現させる。以下、アプリケーションプログラムAPを実行することによって、端末装置200のCPUが実現する機能を「端末アプリケーション」とも呼ぶ。端末アプリケーションは、例えば、第1印刷サービスや第2印刷サービスのために必要なユーザ情報(例えば、ユーザのクレジットカード番号などの決済情報)を第1サーバ300Aや第2サーバ300Bに送信する処理を実行する。
【0019】
第1サーバ300Aおよび第2サーバ300Bは、例えば、印刷サービスを提供する事業者(例えば、プリンタ100の製造や販売を行う事業者)が運用する計算機、例えば、クラウドサーバである。
【0020】
第1サーバ300Aは、第1サーバ300AのコントローラとしてのCPU310と、DRAMなどの揮発性記憶装置320と、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置330と、通信インタフェース(IF)380と、を備えている。通信IF380は、例えば、イーサネット(登録商標)に準拠した有線のインタフェースである。
【0021】
CPU310は、データ処理を行う演算装置(プロセッサ)である。揮発性記憶装置320は、CPU310が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域を提供する。不揮発性記憶装置330には、コンピュータプログラムPGsAと、後述する各種の情報が記録される第1管理データベースDBaと、が格納されている。
【0022】
コンピュータプログラムPGsAは、例えば、印刷サービスを運用する事業者によってアップロードされる形態で提供される。第1サーバ300AのCPU310は、コンピュータプログラムPGsAを実行することによって、第1印刷サービスに関する処理、例えば、後述するサービス変更処理や第1印刷サービスを提供する処理を実行する。
【0023】
第2サーバ300Bは、図示は省略するが、第1サーバ300Aと同様に、構成310、320、330、380を備えている。ただし、第2サーバ300Bの不揮発性記憶装置330には、コンピュータプログラムPGsAとは異なるコンピュータプログラムPGsBと、第1管理データベースDBaとは異なる第2管理データベースDBbと、が格納されている。
【0024】
コンピュータプログラムPGsBは、例えば、印刷サービスを運用する事業者によってアップロードされる形態で提供される。第2サーバ300BのCPU310は、コンピュータプログラムPGsBを実行することによって、第2印刷サービスに関する処理、例えば、後述するサービス変更処理や第2印刷サービスを提供する処理を実行する。
【0025】
なお、
図1では、1つのプリンタ100および端末装置200のみが図示されているが、第1サーバ300Aや第2サーバ300Bは、多数のユーザに対して、多数のプリンタを用いて印刷サービスを提供している。以下では、1つのプリンタ100と端末装置200とに対する印刷サービスについて各種の処理を説明するが、これらの処理は、サービスに用いられる複数のプリンタ(以下、対象プリンタとも呼ぶ。例えば、プリンタ100)について、それぞれ、独立して実行される。また、プリンタ100がモノクロプリンタである場合は、使用されるインクの種類数は1であるが、カラープリンタである場合には、インクの種類数は、複数(例えば、CMYKの4個)である。インクに関する処理(例えば、インクボトルの発注や発注状況の管理)は、インクの種類ごとに独立して実行される。以下では、対象プリンタは、プリンタ100であるとし、プリンタ100で用いられるインクの種類は1つであるとして説明する。
【0026】
A-2.印刷サービスの概要
図2は、印刷サービスの説明図である。第1印刷サービスと第2印刷サービスは、いずれも、プリンタ100のインクタンク190内のインクの残量を管理し、インクタンク190に補充するためのインクを収容するインクボトルをプリンタ100のユーザに配送するサービスである。
図2(A)には、インクタンク配送処理の概略を示すフローチャートが図示されている。インクタンク配送処理は、定期的に、例えば、1日に一度、サービスを提供するサーバ(例えば、サーバ300A、300B)によって実行される。
【0027】
S100では、プリンタ100のインク残量情報を管理データベース(例えば、
図1のDBa、DBb)から取得する。インク残量情報は、インクタンク190内のインクの残量を示す情報であり、管理データベースに記録されるプリンタ管理情報(後述)に含まれている。プリンタ100は、定期的に(例えば、1分ごと)に、もしくは、印刷を行う度に、インク残量情報を、サービスを提供するサーバ(例えば、サーバ300A、300B)に送信する。サーバは、インク残量情報をプリンタ100から受信する度に、管理データベースに記録されるインク残量情報を更新している。
【0028】
S110では、サーバは、インク残量情報によって示されるインク残量が発注閾値TH以下であるか否かを判断する。インク残量が発注閾値TH以下である場合には(S110:YES)、サーバは、発注処理を実行する。例えば、サーバは、インクボトルを発注するための情報、例えば、(インクボトルの種類を示すコードと、発注するインクボトルの納品先(例えば、住所と宛名)を示す情報)を、インクボトルの配送業者宛に送信する。サーバは、配送処理において、必要な場合には、インクボトルの発注の可否を確認する電子メールを、プリンタ100のユーザ宛に送信する。この場合には、サーバは、インクボトルの発注を許可する返信を受信した場合に、インクボトルを発注し、インクボトルの発注を拒否する返信を受信した場合に、インクボトルを発注しない。インク残量が閾値THを超えている場合には(S110:NO)、サーバは、S110の発注処理をスキップする。
【0029】
図2(B)には、第1印刷サービスと第2印刷サービスの比較表が示されている。第1印刷サービスの課金方式は、定額制である。例えば、第1印刷サービスでは、一月あたりの所定の印刷可能枚数(例えば、数100枚~数万枚)までの印刷料金は、月払いの定額料金である。第1印刷サービスでは、印刷可能枚数を超えた場合には、超過枚数に応じて料金が加算される。プリンタのメンテナンスと補充用のインクボトルの料金は、定額料金に含まれている。
【0030】
第2印刷サービスの課金方式は、従量制である。例えば、第2印刷サービスでは、ユーザは、所望の印刷予定枚数分の料金を前払いし、前払い済みの印刷予定枚数分の印刷を行うことができる。プリンタのメンテナンスと補充用のインクボトルの料金は、印刷料金に含まれている。
【0031】
第1印刷サービスでは、インクボトルの発注は、ユーザの確認を得ることなく、自動的に行われる。これは、仮にユーザの確認を要するとすると、ユーザの確認が遅れた場合には、ユーザへのインクボトルの到着が遅れる場合があるためである。インクボトルの到着が遅れると、プリンタ100のインクが枯渇して、ユーザは、印刷可能枚数分の印刷が可能であるにも拘わらずに、印刷できない不都合が生じる。この場合には、定額料金を支払っているにも拘わらずに、印刷できないため、ユーザの損失が大きくなる。このために、定額制の第1印刷サービスでは、上述した発注処理(S120)にて、ユーザへの確認は行われない。
【0032】
第2印刷サービスでは、インクボトルの発注は、ユーザの確認を得た後に行われる。定額制の第1印刷サービスの印刷枚数は、例えば、プランごとに概ね一定であることが想定されるが、従量制の第2印刷サービスの印刷枚数は、ユーザ間で大きく異なり得る。すなわち、第2印刷サービスでは、ユーザ間で印刷枚数のバラツキが、第1印刷サービスよりも大きいと考えられる。また、定額制の第1印刷サービスのユーザは、毎月、一定量の印刷を行う場合が多いのに対して、従量制の第2印刷サービスのユーザでは、時期によって、印刷枚数が多い時期もあれば、印刷枚数が少ない場合もあることが想定される。このために、自動的にインクボトルを配送すると、印刷をほとんど行う予定がないユーザに、インクボトルが届けられ、ユーザに該インクボトルを保管する負担が生じる場合がある。また、従量制の第2印刷サービスでは、インクが枯渇して印刷ができなかったとしても、印刷枚数が減った分は印刷料金も減るために、定額制の第1印刷サービスと比較して不利益が少ない。このために、従量制の第2印刷サービスでは、上述した発注処理(S120)にて、自動的にインクボトルの配送を行わず、ユーザへの確認後にインクボトルの配送が行われる。
【0033】
図2(C)には、各印刷サービスで用いられる発注閾値の説明図が示されている。発注閾値は、例えば、インク残量が、インクタンク190にインクが残存している割合(単位は%)で示される場合には、0~100の範囲の値である。第1印刷サービスにて用いられる第1発注閾値TH1mは、第1閾値範囲RG1内の値に定められる。第1閾値範囲RG1は、第1初期値TH1を中心とした2×ΔTH1の範囲である。すなわち、第1発注閾値TH1mは、(TH1-ΔTH1)≦TH1m≦(TH1+ΔTH1)の値である。ΔTH1は、第1発注閾値TH1mの調整幅であり、第1調整幅ΔTH1とも呼ぶ。
【0034】
第1発注閾値TH1mは、第1印刷サービスの開始時は、原則として初期値TH1に設定される。その後は、第1発注閾値TH1mは、調整アルゴリズムによって、第1閾値範囲RG1の範囲内で調整される。調整アルゴリズムは、第1印刷サービスの利用履歴に基づいて第1発注閾値TH1mを調整する。例えば、月当たりのインクの消費量が多いほど、TH1mは、大きくなるように調整される。例えば、月当たりのインクの消費量と、初期値TH1からの調整量と、の対応関係を示すテーブルから調整量を取得することで、第1発注閾値TH1mが決定される。詳細は省略するが、例えば、月当たりのインクの消費量は、印刷履歴情報から算出されるインク消費実績や印刷枚数に基づいて推定される。これによって、インクの枯渇を抑制しつつ、ユーザのインクボトルの在庫量が過度に多くならないような適切なタイミングでインクボトルが発注できるように、第1発注閾値TH1mが設定される。
【0035】
第2印刷サービスにて用いられる第2発注閾値TH2mは、第2閾値範囲RG2内の値に定められる。第2閾値範囲RG2は、第2初期値TH2を中心とした2×ΔTH2の範囲である。すなわち、第2発注閾値TH2mは、(TH2-ΔTH2)≦TH2m≦(TH2+ΔTH2)の値である。ΔTH2は、第2発注閾値TH2mの調整幅であり、第2調整幅ΔTH2とも呼ぶ。
【0036】
第2発注閾値TH2mは、第2印刷サービスの開始時は、原則として初期値TH2に設定される。その後は、上述した第1発注閾値TH1mと同様に、第2発注閾値TH2mは、第2印刷サービスの利用履歴に基づく調整アルゴリズムによって、第1閾値範囲RG1の範囲内で調整される。
【0037】
第1発注閾値の初期値TH1は、第2発注閾値の初期値TH2よりも大きい(
図2(B)、(C))。すなわち、第1印刷サービスでは、第2印刷サービスと比較して、インクタンク190にインクが多く残存した状態で、インクボトルの発注が行われやすい。定額制の第1印刷サービスでは、上述のように、インクが枯渇した場合のユーザの不利益が大きいので、インクボトルの発注を第2印刷サービスよりも早めに行うためである。
【0038】
第2調整幅ΔTH2は、第1調整幅ΔTH1よりもよりも大きい(
図2(B)、(C))。第2印刷サービスでは、上述のように、ユーザ間で印刷枚数のバラツキが、第1印刷サービスよりも大きいと考えられるためである。
【0039】
A-3.管理データベース
図3は管理データベースの説明図である。第1管理データベースDBaと第2管理データベースDBbとの基本的な構成は同じであるので、
図3の管理データベースDBを参照して、基本的な構成を説明し、第1管理データベースDBaと第2管理データベースDBbとの違いについては、適宜に説明する。
【0040】
管理データベースDBは、アカウントテーブルATと、デバイス登録テーブルDTと、サービス情報テーブルSTと、を含んでいる。
【0041】
アカウントテーブルATは、ユーザ情報が登録されるテーブルである。ユーザ情報は、印刷サービスのユーザのアカウントと、該アカウントに関連付けられる情報と、を含む。本実施例では、ユーザ情報は、
図2に示すように、アカウントIDと、パスワードと、ユーザ名と、決済情報と、を含む。
図2の例では、プリンタ100の管理ユーザのアカウントID「AC_a」、パスワード「PW_a」、ユーザ名「KEN」、決済情報「SI_a」が記録されている。図示は、省略するが、アカウントテーブルATには、印刷サービスに必要な他のユーザ情報が含まれる。他のユーザ情報は、例えば、ユーザの住所(インクボトルの郵送先)、メールアドレスを含む。決済情報は、例えば、印刷サービスによって異なり得る。例えば、定額制の第1印刷サービスでは、決済方法は、例えば、クレジットカードによる決済が想定される。この場合には、決済情報は、例えば、クレジットカード番号を含む。従量制の第2印刷サービスでは、クレジットカードによる決済に加えて、プリペイドカードによる決済が想定される。この場合には、決済情報は、例えば、プリペイドカート番号と、プリペイドカードの残高情報と、を含む。
【0042】
デバイス登録テーブルDTには、アカウントIDと、デバイス情報と、が対応付けて記録されるテーブルである。デバイス情報は、デバイスを識別するデバイスIDと、モデル情報等を含む。これによって、アカウントIDによって識別されるユーザと、印刷サービスを利用する際に用いる1以上のプリンタと、が対応付けられる。
図2の例では、プリンタ100のユーザのアカウントID「AC_a」がプリンタ100のデバイスID「DID_a」やモデル情報「MI_a」と対応付けて記録されている。
【0043】
サービス情報テーブルSTは、印刷サービスに用いられるプリンタごとに、印刷サービスに関連する情報が記録されるテーブルである。サービス情報テーブルSTには、プリンタを識別するデバイスIDに対応付けて、プリンタ管理情報と、上述した発注閾値と、発注情報等が記録されている。プリンタ管理情報は、例えば、上述したインク残量情報と、印刷履歴情報と、プリンタの状態(正常、エラー等)を示すステータス情報と、を含む。
【0044】
印刷履歴情報は、プリンタ100において実行された印刷の履歴を示す情報であり、例えば、印刷枚数と印刷日時とが対応付けられた情報である。印刷は消耗品であるインクを消費して行われるので、印刷履歴情報は、インクの消費に関する履歴情報である、と言うことができる。また、インクの消費に応じてインクの発注が行われるので、印刷履歴情報は、インクの発注に関する情報である、とも言うことができる。印刷履歴情報は、例えば、上述した発注閾値の調整や、印刷料金に応じた印刷可能枚数のカウントのために用いられる。例えば、サーバは、プリンタ100から定期的に印刷履歴情報を受信することで、管理データベースDBに記録される印刷履歴情報を更新する。
【0045】
発注情報は、インクボトルの発注状況を示すステータス情報である。インクボトルの発注状況は、インクボトルの発注から、該インクボトルを用いてインクタンク190にインクが補給されるまでの複数の段階のいずれかを示す。複数の段階は、例えば、「発注完了」「配送完了」「補給完了」の3つの段階を含む。「発注完了」は、インクボトルの発注が行われ、かつ、発注済みのインクボトルがユーザに届いていない段階である。「配送完了」は、発注済みのインクボトルがユーザに届けられ、かつ、該インクボトルを用いてインクタンク190にインクが補給されていない段階である。サーバは、自身がインクボトルの発注処理(
図2(A))を実行することに応じて発注ステータスを「発注完了」に更新する。サーバは、例えば、配送業者のサーバからインクボトルの配送が完了したことを示す通知を受信することに応じて発注ステータスを「配送完了」に更新する。サーバは、例えば、プリンタ100からインクタンク190にインクが補給されたことを示す通知を受信することに応じて発注ステータスを「補給完了」に更新する。
【0046】
A-4.サービス変更処理
図4、
図5は、サービス変更処理のシーケンス図である。サービス変更処理は、プリンタ100を用いて利用するサービスを、複数の印刷サービスのうちの一のサービスから他のサービスに変更する処理である。以下では、プリンタ100を用いて第2印刷サービスを利用している状態から、プリンタ100を用いて第1印刷サービスを利用する状態へと変更する場合を例として説明する。
【0047】
図4のサービス変更処理が開始される時点では、ユーザは、プリンタ100を用いて第2印刷サービスを利用している。このために、第2管理データベースDBbのアカウントテーブルATには、該ユーザのアカウントID等のユーザ情報が記録されている。第2管理データベースDBbのデバイス登録テーブルDTには、該ユーザのアカウントIDと、プリンタ100のデバイスIDとが対応付けて記録されている。第2管理データベースDBbのサービス情報テーブルSTには、プリンタ100のデバイスIDと対応付けて、第2印刷サービスにおける印刷履歴情報等のプリンタ管理情報や、第2印刷サービスにて使用された第2発注閾値TH2mや、第2印刷サービスにおけるインクボトルの発注状況を示す発注情報が記録されている。
【0048】
図4のS1では、端末装置200(端末アプリケーション)は、ユーザの操作に基づいて、サービス変更指示を、現在利用中の第2印刷サービスを提供する第2サーバ300Bに送信する。サービス変更指示は、第2印刷サービスの利用を終了し、第1印刷サービスの利用を開始する指示である。サービス変更指示には、プリンタ100のデバイスIDと、ユーザのアカウントIDと、が含められる。
【0049】
第2サーバ300Bは、サービス変更指示を受信すると、S2にて、サービス変更要求を、変更先の印刷サービスを提供するサーバ、本実施例では、第1サーバ300Aに送信する。サービス変更要求には、ユーザ情報と、デバイス情報と、が含められる。ユーザ情報は、サービス変更指示に含まれるアカウントIDを含むユーザ情報であり、第2管理データベースDBbのアカウントテーブルATに記録されている。デバイス情報は、サービス変更指示に含まれるデバイスIDを含むデバイス情報であり、第2管理データベースDBbのデバイス登録テーブルDTに記録されている。第1サーバ300Aは、受信したサービス変更要求に含まれるユーザ情報およびデバイス情報を第1管理データベースDBaのアカウントテーブルATおよびデバイス登録テーブルDTに記録する。
【0050】
S4では、第1サーバ300Aは、サービス変更処理の対象となるプリンタ100の発注情報(
図2)を要求する発注情報要求を第2サーバ300Bに送信する。第2サーバ300Bは、発注情報要求を受信すると、S6にて、プリンタ100の発注情報を第1サーバ300Aに送信する。
【0051】
S8では、第1サーバ300Aは、追加のユーザ情報が必要であるか否かを判断する。例えば、印刷サービスによって、必要なユーザ情報は異なる場合がある。例えば、第2印刷サービスでは、プリペイドカードでの支払いが行われており、第1印刷サービスでは、プリペイドカードでの支払いに対応していない場合には、第1印刷サービスでの支払いのための情報、例えば、クレジットカード番号が必要になる。この場合には、追加のユーザ情報が必要であると判断される。
【0052】
追加のユーザ情報が必要である場合には(S8:YES)、第1サーバ300Aは、S10にて、追加ユーザ情報要求を端末装置200に送信する。追加ユーザ情報要求は、例えば、端末装置200の端末アプリケーションに送信される。端末装置200は、追加ユーザ情報要求を受信すると、S12にて、追加ユーザ情報を第1サーバ300Aに送信する。例えば、追加ユーザ情報要求には、追加ユーザ情報を入力するためのWEBページのURL(Uniform Resource Locator)が含まれている。端末装置200は、ユーザの操作に基づいて、該WEBページにアクセスする。ユーザが該WEBページの入力欄に追加ユーザ情報を入力すると、端末装置200は、該追加ユーザ情報を第1サーバ300Aに送信する。追加のユーザ情報が必要でない場合には(S8:NO)、第1サーバ300Aは、S10、S12の処理をスキップする。
【0053】
S14では、第1サーバ300Aは、変更前の印刷サービス、本実施例では、第2印刷サービスにおける印刷履歴情報を要求する履歴情報要求を、第2サーバ300Bに送信する。第2サーバ300Bは、履歴情報要求を受信すると、S16にて、第2管理データベースDBbのサービス情報テーブルSTに格納されているプリンタ100の印刷履歴情報を第1サーバ300Aに送信する。
【0054】
S18では、第1サーバ300Aは、第1印刷サービスを開始するために必要な情報を全て取得したか否かを判断する。必要な情報が取得できなかった場合には(S18:NO)、第1サーバ300Aは、S22にて、第1印刷サービスへの変更を拒否することを示す変更拒否通知を第2サーバ300Bに送信する。
【0055】
第2サーバ300Bは、変更拒否通知を受信すると、S24にて、変更失敗通知を端末装置200に送信する。変更失敗通知は、第1印刷サービスへの変更に失敗したことを示す通知である。
【0056】
必要な情報が取得できた場合には(S18:YES)、第1サーバ300Aは、
図5のS26にて、第1印刷サービスへの変更を許可することを示す変更許可通知を第2サーバ300Bに送信する。
【0057】
第2サーバ300Bは、変更許可通知を受信すると、S28にて、第2印刷サービスを終了するためのサービス終了処理を実行する。
図6は、サービス終了処理のフローチャートである。S210では、第2サーバ300Bは、プリンタ100の発注情報が補給完了とは異なるステータスを示しているか否かを判断する。本実施例では、プリンタ100の発注情報が補給完了とは異なるステータスは、「発注完了」と「配送完了」との2種類である。
【0058】
発注情報が補給完了とは異なるステータスを示している場合には(S210:YES)、S220にて、第2サーバ300Bは、発注情報を補給完了に変更する。これは、インクボトルの発注からインクの補給完了までのステータスの管理を、後述するように、第1サーバ300Aが引き継ぐために、第2サーバ300Bは、ステータスの管理を行う必要がないためである。発注情報が補給完了を示している場合には(S210:NO)、S220はスキップされる。
【0059】
サービス終了処理後のS30では、第2サーバ300Bは、第2印刷サービスから第1サービスへの変更が完了したことを示す変更完了通知を端末装置200に送信する。端末装置200は、例えば、変更完了通知を表示部にすることで、ユーザに変更の完了を知らせても良い。
【0060】
第1サーバ300Aは、変更許可通知を送信すると、S32にて、第1印刷サービスを開始するためのサービス開始処理を実行する。
図7は、サービス開始処理のフローチャートである。S300では、第1サーバ300Aは、第2印刷サービスの発注情報の引継処理を実行する。具体的には、第1サーバ300Aは、
図4のS6にて受信した発注情報を、プリンタ100のデバイスIDと対応付けて第1管理データベースDBaのサービス情報テーブルSTに記録する。これによって、これ以降は、第1サーバ300Aが、プリンタ100のインクボトルの発注状況の管理を実行する。
【0061】
S310では、第1サーバ300Aは、第2印刷サービスの印刷履歴情報を用いて、第1印刷サービスの第1発注閾値TH1mを設定する。第1発注閾値TH1mは、上述したように、印刷履歴情報を用いて、調整アルゴリズムに従って設定される。設定された第1発注閾値TH1mは、第1管理データベースDBaのサービス情報テーブルSTに、プリンタ100のデバイスIDと対応付けて記録される。
【0062】
S320、S330では、第1サーバ300Aは、インクボトルの発注要否を判断する。S320では、第1サーバ300Aは、プリンタ100の現在のインク残量を第2サーバ300Bから取得する。S330では、第1サーバ300Aは、プリンタ100の現在のインク残量が、S310にて新たに設定された第1発注閾値TH1m以下であるか否かを判断する。現在のインク残量が第1発注閾値TH1m以下である場合には(S330:YES)、第1サーバ300Aは、インクボトルの発注処理を実行する。インク残量が第1発注閾値TH1mを超えている場合には(S330:NO)、第1サーバ300Aは、S340の発注処理をスキップする。
【0063】
サービス開始処理後の
図5のS34では、第1サーバ300Aとプリンタ100との間で、第1印刷サービスのための初期設定処理が実行される。例えば、第1サーバ300Aからプリンタ100に対して、プリンタ100が定期的に第1サーバ300Aに送信すべき情報の種類、送信先(URL)などの情報が送信される。
【0064】
初期設定処理が終了すると、S35に示すように、第1印刷サービスのサービス処理が開始される。すなわち、プリンタ100は、印刷履歴情報やインク残量情報を第1サーバ300Aに定期的に送信する。第1サーバ300Aは、インク残量情報に基づいて、プリンタ100のインク残量を管理し、プリンタ100のインク残量が第1発注閾値TH1m以下になった場合には、インクボトルの発注処理を実行する。第1サーバ300Aは、第1管理データベースDBaに記録される発注情報を用いて、プリンタ100のインクボトルの発注状況を管理する。第1サーバ300Aは、例えば、プリンタ100や配送業者のサーバから送信される情報に基づいて、インクボトルの発注状況の更新を実行する。
【0065】
第1印刷サービスのサービス処理が開始された後は、S36に示すように、第1サーバ300Aは、閾値変更処理を実行する。閾値変更処理は、プリンタ100の印刷履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mを変更する処理である。閾値変更処理は、第1印刷サービスの開始後、所定間隔(例えば、数日)ごとに定期的に実行される。
【0066】
図8は、閾値変更処理のフローチャートである。S410では、第1サーバ300Aは、サービス変更後の印刷履歴情報を用いて、変更後閾値THbを設定する。例えば、第1サーバ300Aは、第1印刷サービスの開始後は、プリンタ100から受信される印刷履歴情報をサービス情報テーブルSTに記録している。変更後閾値THbは、新たな印刷履歴情報を用いて、調整アルゴリズムに従って設定される。変更後閾値の設定は、
図7のS310にて、第2印刷サービスの印刷履歴情報を用いて第1発注閾値TH1mを設定する際と同じアルゴリズムに従って行われる。
【0067】
S420では、第1サーバ300Aは、変更後経過期間Tpが基準期間Trを超えたか否かを判断する。変更後経過期間Tpは、第1印刷サービスの開始から現在までの期間である。基準期間Trは、例えば、調整アルゴリズムにて十分に適切な第1発注閾値TH1mを算出するために必要な印刷履歴情報を収集するために必要な期間に設定される。
【0068】
変更後経過期間Tpが基準期間Trを超えている場合には(S420:YES)、S440にて、第1サーバ300Aは、S410にて設定した変更後閾値THbを第1発注閾値TH1mに設定する。この場合には、第1印刷サービスにおける印刷履歴情報が十分に蓄積されているので、第1印刷サービスにおける印刷履歴情報だけを用いて設定された変更後閾値THbは、適切な第1発注閾値TH1mとして用いることができると考えられる。
【0069】
変更後経過期間Tpが基準期間Trを超えていない場合には(S420:NO)、S430にて、第1サーバ300Aは、変更前閾値THaと、S410にて設定した変更後閾値THbと、を用いて、第1発注閾値TH1mを設定する。変更前閾値THaは、
図6のサービス開始処理のS110にて設定された第1発注閾値TH1mである。すなわち、変更前閾値THaは、第2印刷サービスにおける印刷履歴情報を用いて設定される閾値である。
【0070】
なお、第1発注閾値TH1mは、変更前閾値THaと変更後閾値THbとを、変更後経過期間Tpに応じた重みWa、Wbを用いて合成することによって算出される。具体的には、第1発注閾値TH1mは、以下の式(1)-(3)によって算出される。
【0071】
TH1m=Wa×THa+Wb×THb …(1)
Wa=(Tr-Tp)/Tr …(2)
Wb=Tp/Tr …(3)
【0072】
閾値変更処理によって、新たな第1発注閾値TH1mが設定された後は、該第1発注閾値TH1mを用いてインクボトルを発注するか否かの判断が実行される。
【0073】
以上説明した本実施例によれば、第1サーバ300Aは、プリンタ100のインク残量を管理し、プリンタ100のインク残量が第1発注閾値TH1m以下になった場合に、インクボトルの発注を行う(
図2(A))。第1サーバ300Aは、プリンタ100を対象とするサービスを、第2印刷サービスから、自身が提供する第1印刷サービスに変更するサービス変更要求を取得する(
図4のS2)。第1サーバ300Aは、サービス変更要求を取得する場合に、プリンタ100を用いた第2印刷サービスにおける印刷履歴情報を取得する(
図4のS16)。プリンタ100は、該履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mを設定する(
図5のS32、
図7のS310)。この結果、例えば、プリンタ100を用いた第2印刷サービスの利用状況等を考慮した適切な第1発注閾値TH1mが設定され得る。したがって、第2印刷サービスから第1印刷サービスへの変更の際に、プリンタ100のユーザに不利益が発生する等の不具合を抑制できる。例えば、プリンタ100のユーザが大量の印刷を行う場合には、仮に第1発注閾値TH1mが初期値TH1に設定されると、インクボトルの発注が遅れて、インクの枯渇が発生する場合がある。この場合に、本実施例では、第2印刷サービスで大量に印刷を行っていることを示す印刷履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mが初期値TH1よりも大きな値に設定される。したがって、インクボトルの発注のタイミングが早くなり、インクの枯渇を抑制できる。あるいは、例えば、プリンタ100のユーザが少量の印刷しか行わない場合には、仮に第1発注閾値TH1mが初期値TH1に設定されると、インクボトルの発注が早すぎ、ユーザの手元におけるインクの在庫が過剰になる場合がある。この場合に、本実施例では、第2印刷サービスで少量の印刷しか行っていないことを示す印刷履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mが初期値TH1よりも小さな値に設定される。したがって、インクボトルの発注のタイミングが遅くなり、インクの在庫が過剰になることを抑制できる。
【0074】
さらに、本実施例によれば、サーバ300Aは、インクの消費に関する履歴情報である印刷履歴情報を用いて初期値TH1を調整することによって第1発注閾値TH1mを設定する(
図2(C)、
図7のS310)。この結果、第2印刷サービスにおけるインクの消費の実績を考慮して適切な第1発注閾値TH1mを設定することができる。したがって、上述したインクの枯渇やインクの過剰な在庫を抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施例によれば、第1サーバ300Aは、第1印刷サービスの開始後に、第1印刷サービスにおける印刷履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mを変更する(
図5のS36、
図8)。この結果、第1印刷サービスの開始後に、第1印刷サービスにおけるインクの消費の実績を考慮して、第1発注閾値TH1mを適切に変更することができる。例えば、利用する印刷サービスの変更を契機に、ユーザの印刷量が変化することもある。このような場合であっても、ユーザのインクの消費実績の変化に対応して、第1発注閾値TH1mを適切に変更できる。
【0076】
さらに、本実施例によれば、第1サーバ300Aは、第2印刷サービスの印刷履歴情報を用いて設定される変更前閾値THaと、第1印刷サービスの印刷履歴情報を用いて設定される変更後閾値THbと、を変更後経過期間Tpに基づく重みWa、Wbを用いて合成して得られる値を、変更後の第1発注閾値TH1mとして算出する(
図8のS430、上記式(1)~(3))。この結果、第1印刷サービスの開始からの十分な期間が経過していなくても、適切な第1発注閾値TH1mを算出できる。
【0077】
さらに本実施例によれば、第1サーバ300Aは、変更後経過期間Tpが基準期間Trを超えた場合に、第2印刷サービスの印刷履歴情報を用いて設定される変更前閾値THaを用いずに、第1印刷サービスの印刷履歴情報を用いて、第1発注閾値TH1mを設定する(
図8のS440)。この結果、第1印刷サービスの開始からの十分な期間が経過した後は、換言すれば、第1印刷サービスにおいて十分な印刷履歴情報が蓄積された後は、第1印刷サービスの印刷履歴情報を用いて、適切な第1発注閾値TH1mを設定できる。
【0078】
さらに、本実施例によれば、第1サーバ300Aは、第2印刷サービスにおけるプリンタ100のためのインクボトルの現在の発注状況を示す発注情報を取得する(
図4のS6)。第1サーバ300Aは、第1印刷サービスの開始後に、インクボトルの発注状況を管理し、発注情報の更新を行う。この結果、第2印刷サービスにおけるインクボトルの発注状況を引き継いで管理することができるので、第2印刷サービスと第1印刷サービスとの間で、インクボトルの発注の重複などの不具合が発生することを抑制できる。また、第2印刷サービスにおけるインクボトルの発注状況がどのような状況であっても、第2印刷サービスから第1印刷サービスへの変更を速やかに行うことができる。
【0079】
以上の説明から解るように、本実施例のインクは、消耗品の例であり、プリンタは、消耗品を消費するデバイスの例であり、印刷履歴情報は、特定情報の例である。
【0080】
B.変形例
(1)上記実施例では、サービス開始処理において、サービス変更後の第1発注閾値TH1mを最初に設定する際に、サービス変更前の第2印刷サービスにおける印刷履歴情報が用いられる。これに限らず、サービス開始処理における第1発注閾値TH1mの設定には、他の情報が用いられても良い。
【0081】
変形例では、
図4のS14にて、第1サーバ300Aは、履歴情報要求に代えて、第2印刷サービスでプリンタ100のために用いられた第2発注閾値TH2mを要求する閾値要求を、第2サーバ300Bに送信する。
図4のS16では、第1サーバ300Aは、印刷履歴情報に代えて、第2管理データベースDBbのサービス情報テーブルSTに記録されている第2発注閾値TH2mを第1サーバ300Aに送信する。変形例では、該第2発注閾値TH2mが第1発注閾値TH1mを最初に設定する際に用いられる。
【0082】
図9は、変形例の説明図である。
図9(A)のフローチャートに示すように、変形例では、
図7のS310に代えて、S310Bの処理が実行される。
図9(A)の他の処理は、
図7と同一である。S310Bでは、第1サーバ300Aは、第2サーバ300Bから受信した第2発注閾値TH2mを用いて、第1発注閾値TH1mを設定する。
【0083】
図9(B)に示すように、第2印刷サービスの第2閾値範囲RG2の上限値と第2発注閾値TH2mとの差分をLbとし、第2発注閾値TH2mと第2閾値範囲RG2の下限値との差分をLaとする。また、第1印刷サービスの第1閾値範囲RG1の上限値と設定すべき第1発注閾値TH1mとの差分をMbとし、第1発注閾値TH1mと第1閾値範囲RG1の下限値との差分をMaとする。この場合に、第1サーバ300Aは、差分Laと差分Lbとの比率と、差分Maと差分Mbとの比率と、が等しくなるように、第1発注閾値TH1mを設定する。
【0084】
例えば、
図9(C)に示すように、第2閾値範囲RG2内の複数個の閾値TH2(k)(kは1以上の整数)に対応する第1閾値範囲RG1内の複数個の閾値TH1(k)を予め算出して、該対応関係を規定したルックアップテーブルLUTが予め生成される。第1サーバ300Aの不揮発性記憶装置330には、該ルックアップテーブルLUTが格納されている。第1サーバ300Aは、ルックアップテーブルLUTを参照することで、第2サーバ300Bから受信した第2発注閾値TH2mに対応する第1発注閾値TH1mを特定する。そして、第1サーバ300Aは、特定された第1発注閾値TH1mを、第1印刷サービスの開始時の最初の第1発注閾値TH1mとして設定する。
【0085】
このように変形例では、第2サーバ300Bから取得された第2発注閾値TH2mに基づいて第1発注閾値TH1mが設定される。本変形例によれば、実施例と同様に、適切な第1発注閾値TH1mが設定できる。例えば、上述のように、第2発注閾値TH2mは、第2印刷サービスにおける印刷実績を反映して決定されている。このために、第2発注閾値TH2mに基づいて第1発注閾値TH1mを設定することで、第2印刷サービスにおける印刷実績を間接的に反映した適切な第1発注閾値TH1mを設定することができる。
【0086】
また、変形例では、第1発注閾値TH1mと第2発注閾値TH2mとの対応関係を規定したルックアップテーブルLUTを参照して、適切な第1発注閾値を容易に設定することができる。なお、ルックアップテーブルLUTを用いることなく、計算式によって、第1発注閾値が算出されても良い。
【0087】
(2)なお、第2印刷サービスにおける印刷履歴情報や第2発注閾値TH2mとは異なる情報を用いて、第1印刷サービスの開始時の最初の第1発注閾値TH1mが設定されても良い。例えば、第2印刷サービスにおけるインクボトルの平均発注間隔に基づいて、第1印刷サービスの開始時の最初の第1発注閾値TH1mが設定されても良い。この場合には、例えば、インクボトルの平均発注間隔が短いほど、大きな第1発注閾値TH1mが設定される。
【0088】
(3)上述したサービス変更処理およびサービス変更後の処理は、適宜に変更され得る。例えば、印刷サービスの種類によっては、変更後のサービス処理が開始された後は、閾値変更処理を行わなくても良い。あるいは、閾値変更処理は、十分に印刷履歴情報が蓄積された後に行われても良い。この場合には、常に、
図8のS410にて設定された変更後閾値が、新たな第1発注閾値TH1mに設定される。
【0089】
(4)例えば、第1サーバ300Aは、第2サーバ300Bから印刷履歴情報が取得できない場合であっても、サービスの変更を拒否せずに、サービスの変更を許可しても良い。この場合には、例えば、第1印刷サービスの開始時の最初の第1発注閾値TH1mは、初期値TH1に設定される。
【0090】
(5)変更前の印刷サービスにて発注が行われたインクボトルの発注ステータスの管理は、変更後の印刷サービスを提供するサーバに引き継がなくても良い。この場合には、例えば、変更前の印刷サービスを提供するサーバが、インクボトルの発注ステータスを管理し、全ての発注ステータスが「補給完了」になった時点で、変更後の印刷サービスを提供するサーバに、その旨を通知しても良い。変更後の印刷サービスを提供するサーバは、該通知を受信してから、新たなインクボトルの発注処理を開始しても良い。
【0091】
(6)上記実施例にて、第1サービスや第2サービスは、プリンタを用いて提供されるサービスに限らず、何らかの消耗品を消費する他の様々なデバイス、例えば、水を供給するウォーターサーバ、燃料を消費して動作する各種のデバイスを用いて提供されるサービスであっても良い。
【0092】
(7)上記実施例では、第1印刷サービスと第2印刷サービスとは、それぞれ、別のサーバによって提供される。これに代えて、1つのサーバが、第1印刷サービスと第2印刷サービスとを提供しても良い。また、アカウントテーブルATを管理するアカウント管理サーバと、デバイス登録テーブルDTとサービス情報テーブルSTとを管理し、サービスを提供するサーバと、は別のサーバであっても良い。この場合には、例えば、アカウント管理サーバと、第1印刷サービスを提供するサーバと、第2印刷サービスを提供するサーバと、の3つのサーバによって、第1、第2印刷サーバが提供されても良い。
【0093】
(8)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0094】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100…プリンタ,1000…システム,110…CPU,120…揮発性記憶装置,130…不揮発性記憶装置,140…表示部,150…操作部,170…印刷機構,180…通信IF,190…インクタンク,200…端末装置,300A…第1サーバ,300B…第2サーバ,310…CPU,310…構成,320…揮発性記憶装置,330…不揮発性記憶装置,380…通信IF,AP…アプリケーションプログラム,AT…アカウントテーブル,DBa…第1管理データベース,DBb…第2管理データベース,DT…デバイス登録テーブル,IB…情報データベース,IT…インターネット,LUT…ルックアップテーブル,PGp,PGsA,PGsB…コンピュータプログラム,ST…サービス情報テーブル