(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118326
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ロボットシステム、および、ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/02 20060101AFI20240823BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240823BHJP
【FI】
G01C15/02
G05D1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024687
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 伸治
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB03
5H301CC10
5H301DD01
5H301FF09
5H301FF11
(57)【要約】
【課題】より正確にロボットの移動先の墨出しの位置を計測する。
【解決手段】墨出しロボットシステム1は、作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、墨出しロボット2の位置を計測する追尾型三次元計測器4と、基準芯または/および既知点を用いて、CAD図面の座標における追尾型三次元計測器4の位置を確定する位置確定部と、基準芯または/および既知点のうち2つの組み合わせを用いて、CAD図面の座標系を追尾型三次元計測器4の座標系に変換する変換部と、CAD図面の座標系にて、墨出しロボット2の移動先として指定された目標位置に応じて、基準芯および既知点のうち2つ以上を特定し、変換部を用いて、CAD図面の座標系における目標位置を、追尾型三次元計測器4の座標系に変換する座標計算部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、ロボットの位置を計測する測量機と、
前記基準芯または/および前記既知点を用いて、作業現場図面の座標における前記測量機の位置を確定する位置確定部と、
前記基準芯または/および前記既知点のうち2つ以上の組み合わせを用いて、前記作業現場図面の座標系を前記測量機の座標系に変換する変換部と、
前記作業現場図面の座標系にて、前記ロボットの移動先として指定された目標位置に応じて、前記基準芯および前記既知点のうち2つ以上を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換する座標計算部と、
前記ロボットを移動させる走行駆動部と、
前記走行駆動部を制御して、前記目標位置に、前記ロボットを移動させる制御部と、
を有することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記座標計算部は、前記基準芯および前記既知点のうち前記目標位置から最も距離が近い2つ以上を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記座標計算部は、前記基準芯のうち前記目標位置から最も距離が近い縦横2本を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換する、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記作業現場における目標位置と、各基準芯または/および各既知点との距離を計算する距離計算部、
を有することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記距離計算部は、前記作業現場における目標位置から基準芯への垂線により、基準芯までの距離を計算する、
ことを特徴とする請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記座標計算部は、墨出しデータに含まれている任意の墨点に対して前記ロボットが墨出しする際に、前記作業現場図面の座標における墨点の位置を前記目標位置として、前記測量機の座標における墨点の位置を計算して、墨出し位置を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記墨出しデータに含まれる墨点に対して前記ロボットの走行順路を設定する順路設定部、
を有することを特徴とする請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項8】
測量機により、作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、ロボットの位置を計測するステップと、
位置確定部により、前記基準芯または/および前記既知点を用いて、作業現場図面の座標における前記測量機の位置を確定するステップと、
変換部により、前前記基準芯または/および前記既知点のうち2つ以上の組み合わせを用いて、前記作業現場図面の座標系を前記測量機の座標系に変換するステップと、
座標計算部により、前記作業現場図面の座標系にて、前記ロボットの移動先として指定された目標位置に応じて、前記基準芯および前記既知点のうち2つ以上を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換するステップと、
制御部が、前記ロボットを移動させる走行駆動部を制御して、前記目標位置に、前記ロボットを移動させるステップと、
を有することを特徴とするロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステム、および、ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備工事では、墨出し作業が行われる。「墨出し」とは、設置する機器のアンカ位置や、天吊り機器のアンカ位置、付帯機器の架台位置等の、工事の基準となる基準芯や墨出し点を建築物の床面や壁面等に印すことをいう。設備工事では、作業者が基準芯や墨出し点に沿って様々な機器を設置するため、基準芯や墨出し点を正確に印すことは重要である。
【0003】
従来の墨出し作業は、作業者が墨つぼから墨を含んだ糸を引き出し、墨出しを行うべき位置(墨出し位置)の近傍に糸を張り、糸を弾いて床面や壁面等に基準芯を付けることで行われていた。その際に、作業者は、基準となる複数個所同士を結ぶように糸を張ることで、墨出し位置を決定していた。このような従来の墨出し作業では、作業者は正確な墨出し位置に墨出しするための熟練を要し、更に手作業に伴う人為的なミスが発生する可能性があった。
【0004】
そこで、墨出しするに際して、作業者は、光学式の計測器を用いて正確な墨出し位置を計測し、その墨出し位置に墨出しするようになっている。これにより、作業者が墨出しに熟練していなくても、所定の精度が担保されるようになった。しかしながら、このような墨出し作業であっても作業者が手作業で墨出しすることには変わりないため、所定の工数が発生し、かつ、依然として人為的なミスが発生する可能性があった。
【0005】
そこで、近年では、自律的に走行して墨出し作業を行う墨出しロボットの使用が試みられつつある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された墨出しロボットによれば、設備工事の墨出し作業を省力化することができ、墨出しに伴う人為的なミスの発生を抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている発明では、測量機の位置設定に用いた2本の基準芯(縦1本と横1本)を基に、墨出しする点の位置(XY座標)を計算する。しかし、この方法では、基準芯と墨点との距離が遠くなるほど、誤差が大きくなるという欠点がある。基準芯が斜めになっていても、それを基準にするためである。
【0008】
また、現場の職人は、たとえ図面と現場の基準芯とのずれがあっても、最寄りの基準芯からの距離が正しくなるように墨打ちする。つまり、ロボットの動作と職人の運用とにギャップがある。
そこで、本発明は、より正確にロボットの移動先の墨出しの位置を計測することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明のロボットシステムは、作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、ロボットの位置を計測する測量機と、前記基準芯または/および前記既知点を用いて、作業現場図面の座標における前記測量機の位置を確定する位置確定部と、前記基準芯または/および前記既知点のうち2つの組み合わせを用いて、前記作業現場図面の座標系を前記測量機の座標系に変換する変換部と、前記作業現場図面の座標系にて、前記ロボットの移動先として指定された目標位置に応じて、前記基準芯および前記既知点のうち2つ以上を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換する座標計算部と、前記ロボットを移動させる走行駆動部と、前記走行駆動部を制御して、前記目標位置に、前記ロボットを移動させる制御部と、を有する。
【0010】
本発明のロボットの制御方法は、測量機により、作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、ロボットの位置を計測するステップと、位置確定部により、前記基準芯または/および前記既知点を用いて、作業現場図面の座標における前記測量機の位置を確定するステップと、変換部により、前前記基準芯または/および前記既知点のうち2つの組み合わせを用いて、前記作業現場図面の座標系を前記測量機の座標系に変換するステップと、座標計算部により、前記作業現場図面の座標系にて、前記ロボットの移動先として指定された目標位置に応じて、前記基準芯および前記既知点のうち2つ以上を特定し、前記変換部を用いて、前記作業現場図面の座標系における前記目標位置を、前記測量機の座標系に変換するステップと、制御部が、前記ロボットを移動させる走行駆動部を制御して、前記目標位置に、前記ロボットを移動させるステップと、を有する。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より正確にロボットの移動先の墨出しの位置を計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】墨出しロボットシステムの機能構成を示す図である。
【
図4】コントローラの動作を示すフローチャートである。
【
図5】コントローラの動作を示すフローチャートである。
【
図11】変換行列を算出する処理のフローチャートである。
【
図13】CAD図面における墨出しロボットが移動する墨点・中継点を示すマップである。
【
図14】CAD図面における墨点と最寄りの基準芯を示すマップである。
【
図15】CAD図面における墨点と最寄りの基準芯または既知点を示すマップである。
【
図16】CAD図面における墨点と最寄りの基準芯または既知点を示すマップである。
【
図17】変換行列を用いた場合の基準芯・既知点の位置の確定処理のフローチャートである。
【
図18】CAD図面における器械点の決定動作を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、墨出しロボットシステム1の機能構成を示す図である。
図2は、墨出しロボット2の概略を示す斜視図である。
本実施形態に開示される墨出しロボットシステム1は、追尾型三次元計測器4で計測された位置情報に基づいて作業現場を走行する墨出しロボット2と、墨出しロボット2のオペレータにより操作されるコントローラ3を備える。
【0014】
図2に示すように、墨出しロボット2は、フレーム20、プリンタ22、プリンタ移動部212、墨出しロボット制御部210、走行駆動部211、車輪21F,21Rを備える。走行駆動部211は、車輪21Fを駆動することで、フレーム20を移動させる。プリンタ移動部212は、フレーム20に対してプリンタ22を前後左右上下に移動可能とする。プリンタ22は、床面に対して墨出し印字を行う。墨出しロボット制御部210は、プリンタ22とプリンタ移動部212と、走行駆動部211を制御することで、作業現場における墨点の位置(目標位置)に、墨出しロボット2を移動させる。
【0015】
計測ターゲット23は、例えばプリズムとして構成される。計測ターゲット23は、プリンタ22の垂直上方に設置されている。したがって、計測ターゲット23の位置は、プリンタ22の印字位置を指し示す。計測ターゲット駆動部213は、計測ターゲット23とプリンタ22の位置を同時に移動させる。計測ターゲット23の位置変化は、追尾型三次元計測器4によって検出され、これにより墨出しロボット2の現在の印字可能位置が算出される。
【0016】
図1に戻り説明を続ける。追尾型三次元計測器4は、例えば、自動追尾型三次元測量機であり、作業現場の基準芯または/および既知点、ならびに、墨出しロボット2の作業現場における位置を計測して、その位置計測結果(位置情報)を墨出しロボット制御部210へ通知する。追尾型三次元計測器4は、自身の座標系における計測対象の位置を計測する。
コントローラ3は、墨出しロボット2の墨出しロボット制御部210と通信して、墨出しロボット制御部210に墨出し処理を指示するものである。
【0017】
墨出しロボット制御部210は、通信部24を用いて、追尾型三次元計測器4およびコントローラ3との間で情報を送受信する。墨出しロボット制御部210は、基本墨出し情報と、基本墨出し情報に対応する編集可能情報とで構成された墨出し情報を記憶する。
コントローラ3は、墨出し情報作成部52が作成した墨出し情報を現場管理サーバ53から取り込むと、編集可能情報を作業者が編集するための編集画面を表示する。コントローラ3は、編集画面における操作結果に基づきカスタマイズされた墨出し情報を生成し墨出しロボット制御部210へ送信する。墨出しロボット制御部210は、カスタマイズされた墨出し情報に従って墨出し印字を行う。
なお、コントローラ3が、墨出しロボット2の墨出しロボット制御部210と通信し、墨出しロボット制御部210の画面をリモートデスクトップ等の手段を用いてタッチパネルディスプレイ34に表示してもよい。
【0018】
本開示に係る墨出しロボットシステム1によれば、墨出しロボット2の走行が難しかった構造物に近いエリア内でも墨出しできる可能性が増加するため、墨出しロボット2による墨出し作業の効率が改善する。
【0019】
《コントローラ3》
コントローラ3について説明する。コントローラ3は、例えば、タブレット型パーソナルコンピュータ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、携帯電話(スマートフォンを含む。)、携帯情報端末、時計型ウェアラブル端末、眼鏡型ウェアラブル端末のように構成される。
【0020】
コントローラ3は、墨出しロボット2と双方向通信するとともに、追尾型三次元計測器4とも双方向通信する。コントローラ3は、墨出し情報作成部52から墨出し情報を取得し、取得した墨出し情報をカスタマイズした墨出し情報を墨出しロボット2へ送信する。墨出し情報作成部52は、三次元CAD(Computer Aided Design)データを記憶するCADデータ記憶部51から取得した三次元CADデータに基づいて墨出し情報を作成する。墨出しロボット2は、カスタマイズされた墨出し情報に応じた墨出し印字を行う。
【0021】
コントローラ3は、例えば、プロセッサ31、RAM32、大容量記憶部33、タッチパネルディスプレイ34、通信部35を備えており、これら各回路部はバスで相互に通信可能に接続されている。
演算装置としてのプロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit)に限らず、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などでもよい。複数の演算装置を備えてもよい。
【0022】
RAM32は、プロセッサ31により読み書きされるコンピュータプログラムおよびデータを記憶する。RAM32は、例えば、DRAM(Dynamic RAM)またはSRAM(Static RAM)などで構成される。
大容量記憶部33は、比較的大容量の記憶装置で構成されており、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスクなどが使用される。
【0023】
タッチパネルディスプレイ34は、ディスプレイの上に透明なタッチパネルが積層されて構成されている。タッチパネルディスプレイ34は、各種情報を表示すると共に、作業者の操作情報を受け付ける。
通信部35は、例えば無線LAN(Local Area Network)などを用いて、墨出しロボット2、追尾型三次元計測器4、墨出し情報作成部52、現場管理サーバ53との間で通信する装置である。無線に限らず、赤外線または音波を用いて情報を伝送してもよい。無線通信と有線通信のいずれかまたは両方を用いてもよい。
【0024】
《墨出しロボット2》
以下、墨出しロボット2について説明する。墨出しロボット2は、作業現場に配備されて、所定の墨出し位置に移動して墨出し印字を自動で行うロボットである。作業現場としては、例えば、ビル等の建設現場、道路等の土木現場等がある。
【0025】
墨出しロボット2は、作業者がコントローラ3に入力した操作指令にしたがって、追尾型三次元計測器4で計測された位置情報を利用して自律的に走行する。追尾型三次元計測器4で計測された墨出しロボット2の位置情報は、墨出しロボット2に送信される。墨出しロボット2は、予定された墨出し点(墨出し印字位置)に移動すると、墨出し情報に応じた墨出し印字をプリンタ22により実行する。ここで墨出し点は、墨出しロボット2の移動先の墨出しの位置である。
【0026】
墨出しロボット2は、フレーム20、車輪21F,21R、プリンタ22、計測ターゲット23、通信部24、操作ボタン25を備える。墨出しロボット2は更に、前方センサ26、バンパセンサ27F,27R、下方センサ28、墨出しロボット制御部210、走行駆動部211、プリンタ移動部212、計測ターゲット駆動部213、バッテリ(不図示)を備える。
【0027】
墨出しロボット制御部210は、墨出し印字するための情報である「墨出し情報」を記憶し、墨出しロボット2を統括制御する装置である。
プリンタ22は、墨出しロボット制御部210の制御により、墨出し印字を行う装置である。走行駆動部211は、墨出しロボット2を走行させて移動させる装置である。プリンタ移動部212は、フレーム20に設置されたプリンタ22を二次元方向あるいは三次元方向に移動させる装置である。
【0028】
計測ターゲット23は、墨出しロボット2から取り外して使用することもできる。作業者は、墨出しロボット2では墨点に印字できない場合に、計測ターゲット23を墨出しロボット2から取り外して所望の位置に置き、追尾型三次元計測器4によって位置を計測することもできる。なお、壁や床などを実測する場合にも、計測ターゲット23を墨出しロボット2から取り外して使用する。壁や床などの実測が終わったら、計測ターゲット23は、再び墨出しロボット2に取り付けられる。
【0029】
墨出しロボット制御部210には、通常の計算機の機能を有する情報機器を使用することができる。すなわち、墨出しロボット制御部210は、記憶部と演算処理部を備える(いずれも不図示)。演算処理部は、通信部24を介してコントローラ3と通信可能に接続される。
【0030】
記憶部は、墨出しロボット2の全体の制御を行う制御プログラム、墨出し情報、および動作に必要な情報を記憶する。演算処理部は、制御プログラムに従って、墨出しロボット2を墨出し位置まで移動させ、プリンタ22の位置を墨出し位置に合わせた後で、プリンタ22を駆動し、墨出し情報に応じた墨出し印字を行わせる。プリンタ22の全体は、プリンタ移動部212により作業現場の平面上(床面上)を前後左右に移動する。すなわち、プリンタ22およびプリンタ移動部212は、全体としてXYプロッタのように動作する。XYプロッタ型のプリンタ22およびプリンタ移動部212に代えて、走行駆動部211に3軸アームロボットを搭載し、3軸アームロボットのアーム先端にプリントヘッドを取り付けてもよい。
【0031】
フレーム20には、下方に車輪21F,21Rが設けられている。走行駆動部211が車輪21F,21Rを駆動することで、墨出しロボット2が移動する。走行駆動部211は、前後の車輪21F,21Rのうちいずれか一方を駆動させる前輪駆動方式または後輪駆動方式であってもよく、車輪21F,21Rの全てを駆動させる四輪駆動方式であってもよい。走行駆動部211は、車輪21F,21Rに代えて、クローラを駆動するものであってもよい。
【0032】
操作ボタン25は、フレーム20に設けられており、作業者により必要に応じて手動操作される。操作ボタン25は、例えば、電源スイッチ、停止スイッチ(いずれも不図示)である。
【0033】
墨出しロボット2は、作業現場を安全に走行するために、安全を確保するための前方センサ26と、バンパセンサ27F,27Rと、下方センサ28を備える。前方センサ26は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)などから構成されており、墨出しロボット2の進行方向にある物体を検知する。バンパセンサ27F,27Rは、フレーム20の前後に設けられたバンパ201に設けられ。バンパ201が物体に接触したことを検知する。
図2では前側のバンパ201のみ図示している。下方センサ28は、作業現場の床面の凹凸および開口部などを検知する。墨出しロボット2は、図示したセンサ以外のセンサ、例えば、三次元カメラ、超音波センサ、放射温度計などを搭載してもよい。
【0034】
上述のように、プリンタ移動部212は、フレーム20上に配置されて、下方にプリンタ22が取り付けられている。プリンタ移動部212は、墨出しロボット制御部210による位置決め制御により、プリンタ22を墨出し印字位置に移動させて位置決めする。本実施形態におけるプリンタ移動部212は、プリンタ22をXYの二次元方向(平面方向)に移動させるとともに、Z方向(垂直方向)にも移動させることができる。このように移動可能な理由は、プリンタ22の印字ヘッドを墨出し面(床面、壁、天井)への印字に適した位置に位置決めするためである。
【0035】
墨出しロボット制御部210は、墨出し情報に含まれる墨出し位置(目標印字位置)と追尾型三次元計測器4で計測された墨出しロボット2の位置情報とに基づいて、墨出しロボット2を墨出し位置(墨出し点)まで移動させて位置決めする。墨出しロボット2が墨出し位置に到達すると、墨出しロボット制御部210は、プリンタ移動部212により、プリンタ22を墨出し点(墨出し印字位置)に高精度に位置決めさせる。そして、プリンタ22は、所定の内容を墨出し点に印字する。
【0036】
上述の追尾型三次元計測器4は、墨出しロボット2に取り付けられた計測ターゲット23をレーザ光で追尾する。追尾型三次元計測器4は、計測ターゲット23からの反射光を利用して、三次元空間における計測ターゲット23の位置、すなわち墨出しロボット2の位置を計測する。
【0037】
追尾型三次元計測器4は、墨出しロボット2に取り付けられた計測ターゲット23の位置を計測することで、測量機座標における墨出しロボット2の位置を精度よく計測する。追尾型三次元計測器4は、レーザ光を利用したもの限らず、墨出しロボット2の位置を計測できるものであればどのようなものでも使用できる。追尾型三次元計測器4により計測された墨出しロボット2の位置は、墨出しロボット2の墨出し位置への移動制御(位置決め)に使用するために、墨出しロボット制御部210へ送信される。コントローラ3からの指令情報により、必要に応じてコントローラ3にも送信される。
【0038】
上述の通り、コントローラ3は、墨出しロボット2および追尾型三次元計測器4との間で情報を送受信して、墨出しロボット2および追尾型三次元計測器4の動作を制御するコンピュータ端末である。本実施例におけるコントローラ3は、墨出しロボット制御部210から受信した墨出し情報に基づき、コントローラ3側において作業者の操作により墨出し情報を編集する(カスタマイズする)機能を備えている。そのため、コントローラ3は、墨出しロボット制御部210との間で情報の送受信を行い、墨出し情報を墨出しロボット制御部210と共有可能である。コントローラ3は、「墨出し情報」における基本墨出し情報である「墨出し基本情報」と、カスタマイズのための「編集可能情報」とを取り込み、作業者が操作するための編集画面を表示する機能と、編集画面を利用して作業者が選択操作するための操作機能を備えている。
【0039】
《ロボット制御装置の構成》
以下、
図3を参照して、本実施形態に係るコントローラ3の構成について説明する。
図3は、コントローラ3のブロック図である。
【0040】
図3に示すように、コントローラ3は、動作を制御するプロセッサ31と、各種のプログラムとデータを記憶する大容量記憶部33と、外部装置と通信を行う通信部35と、入力手段と表示手段とを兼用するタッチパネルディスプレイ34とを有している。
【0041】
プロセッサ31は、操作受付部31aと、読込部31bと、器械点設定部31cと、墨出し設定部31dと、測量機操作部31eと、ロボット操作部31fと、走行範囲設定部31gと、順路設定部31hと、通信制御部31iと、画面制御部31jと、位置確定部31kと、変換部31lと、座標計算部31mと、距離計算部31nとを具現化する。
【0042】
操作受付部31aは、操作者による操作を受け付ける。
読込部31bは、外部装置から墨出しデータ332を読み込む。本実施形態では、墨出し情報作成部52から墨出しデータを読み込む。
【0043】
器械点設定部31cは、作業現場図面の座標系と測量機の座標系との変換座標を作成するために、作業現場図面の測量機の座標位置と実際の作業現場の測量機の座標位置とを一致させる処理を行う。なお、器械点とは、測量機である追尾型三次元計測器4の作業現場図面の座標における位置を指す。
墨出し設定部31dは、任意の墨出し点に対して墨出しを実行するように墨出しロボット2に設定する。
【0044】
測量機操作部31eは、測量機である追尾型三次元計測器4を操作する。
ロボット操作部31fは、墨出しロボット2を操作する。
走行範囲設定部31gは、墨出しロボット2の走行範囲を設定する。
【0045】
順路設定部31hは、墨出しの実行が設定された墨出し点に対して、例えばダイクストラ法などにより墨出しロボット2の走行順路を設定する。
通信制御部31iは、通信部35の動作を制御する。
画面制御部31jは、表示画面を作成してタッチパネルディスプレイ34に表示させる。
【0046】
位置確定部31kは、基準芯または/および既知点を用いて、作業現場図面の座標における測量機の位置を確定する。
変換部31lは、2つ以上の基準芯または/および既知点を用いて、作業現場図面の座標と測量機の座標とを相互に変換する変換行列を作成する。変換部31lが変換行列を作成するタイミングは、墨出し実行前であることが望ましい。これにより墨出しロボットシステム1は、墨出し動作を短時間に実行することができる。なお、これに限られず、変換部31lは、目標位置に応じた2つ以上の基準芯または/および既知点を特定して、その2つ以上の基準芯または/および既知点を用いて、作業現場図面の座標と測量機の座標とを相互に変換する変換行列を作成してもよく、限定されない。
【0047】
座標計算部31mは、CAD図面の座標系にて、墨出しロボット2の移動先として指定された目標位置に応じて、基準芯および前記既知点のうち2つ以上を特定し、変換部31lを用いて、CAD図面の座標系における目標位置を、測量機の座標系に変換する。なお、変換部31lと座標計算部31mは、プロセッサ31ではなく、墨出しロボット制御部210が具現化してもよく、限定されない。
【0048】
距離計算部31nは、移動先である墨点または中継点(目標位置)と、各基準芯または/および各既知点との距離を計算する。距離計算部31nは、移動先の墨出しの位置から基準芯への垂線により、基準芯までの距離を計算する。なお、距離計算部31nは、プロセッサ31ではなく、墨出しロボット制御部210が具現化してもよく、限定されない。
【0049】
プロセッサ31を構成するはCPU(Central Processing Unit)、大容量記憶部33に予め格納されたロボット制御プログラム331を実行することにより、これらを実現する。
【0050】
大容量記憶部33には、ロボット制御プログラム331が予め格納されている。また、大容量記憶部33には、例えば、墨出しデータ332や、墨出しロボット2の走行経路を指定する走行経路データ333が記憶される。
【0051】
《コントローラ3の動作》
以下、
図4を参照して、コントローラ3の動作について説明する。
図4は、コントローラ3の動作を示すフローチャートである。
図4は、作業現場図面を含むCAD図面データから墨出しデータ332を作成する場合の動作を示している。
【0052】
墨出しデータ332の作成者は、例えば作業現場の施工主等から作業現場図面を含むCAD図面データを入手した場合に、CAD図面データを墨出し情報作成部52に読み込ませ、CAD図面データに基づく墨出しデータ332を作成させる。コントローラ3の操作者は、墨出しデータ332をコントローラ3に読み込み、墨出しデータ332を用いて走行経路データ333を作成して墨出し作業を実行する。
図4は、その場合の墨出しデータ332の作成処理を示している。
図5は、墨出しロボット2による墨出し作業の一例を示している。
【0053】
図4に示すように、墨出しデータ332の作成者は、墨出し情報作成部52を操作して墨出しデータ332の作成を開始する。
【0054】
このとき、まず、墨出し情報作成部52は、操作者の操作に基づいて、CAD図面データ(墨出し用図面データ)の読み込みを行う(ステップS405)。
次に、墨出し情報作成部52は、操作者の操作に基づいて、基準芯、ロボットが走行できない禁止エリア、柱などの壁エリア、墨出し点の指定などの自動取り込みを行う(ステップS410)。
【0055】
次に、墨出し情報作成部52は、操作者の操作に基づいて、墨出しデータ332を切り出す領域の指定、名称や座標値の確認・編集処理を受け付ける(ステップS415)。
次に、墨出し情報作成部52は、操作者の操作に基づいて、所定のデータ形式の墨出しデータ332を現場管理サーバ53に出力して現場管理サーバ53に保存させ(ステップS420)、
図4の処理を終了する。
【0056】
図5は、コントローラ3の動作を示すフローチャートである。
墨出しデータ332が現場管理サーバ53に保存された後、コントローラ3の操作者は、任意のタイミングで、コントローラ3を操作して墨出しロボット2による墨出し作業を開始する。
【0057】
このとき、まず、コントローラ3のプロセッサ31は、操作者の操作に基づいて、現場管理サーバ53からの墨出しデータ332(墨出し用図面データ)の読み込みを行う(ステップS505)。墨出しデータ332は、大容量記憶部33に格納される。
次に、プロセッサ31は、操作者の操作に基づいて、既知点および/または基準芯の計測処理、変換行列の作成処理、器械点の設定処理、座標変換処理などを行う(ステップS510)。なお、変換行列とは、作業現場図面の座標と測量機の座標とを相互に変換するものである。器械点とは、測量機の位置を指すものである。
【0058】
次に、プロセッサ31は、操作者の操作に基づいて、墨出しロボット2の走行範囲の指定を行う(ステップS515)。
次に、プロセッサ31は、操作者の操作に基づいて、自動的に墨出しロボット2の走行経路及び順路を表すデータの作成と座標変換を行う(ステップS520)。
次に、プロセッサ31は、墨出し完了が完了したら、自動的に墨出し完了・登録処理を行い(ステップS525)、
図5の処理を終了する。
【0059】
このようなコントローラ3は、墨出しロボット2の走行経路および順路を表すデータの作成を自動的に行うことができるため、操作者の負担を軽減することができる。
【0060】
墨出し作業の実行に際して、コントローラ3は、例えば、
図6から
図10に示す表示画面をタッチパネルディスプレイ36に表示して、操作者による操作を受け付ける。これら
図6から
図10までに示した画面は、複数の基準芯または既知点を計測するときの画面である。
【0061】
図6は、器械点設定選択画面61を示す図である。
墨出しロボットシステム1は、基準芯を2本計測した後、2つの器械点の候補を算出して、2つの器械点の候補から何れか1つを選択することで、器械点を設定する。その後の処理でも、候補としての器械点は2つ算出されるが、最初に設定した器械点に近いものを次の器械点として選択してゆく。
器械点設定選択画面61には、マップ619が表示され、ガイダンスとして「基準芯、既知点を計測します。「基準芯計測へ」または「既知点計測へ」を押してください。図面データを追加・変更する場合は、「図面編集」を押してください。」が表示されている。このマップ619には、各基準芯、各墨点などが表示されている。なおマップ619には、既知点が表示されていてもよい。
【0062】
器械点設定選択画面61には、図面編集ボタン611、器械点変更ボタン614、基準芯計測ボタン615、既知点計測ボタン616、計測確認ボタン617、墨出し事前準備ボタン613、戻るボタン612が表示されている。
【0063】
図面編集ボタン611がタップされると、不図示の図面編集画面に遷移する。
器械点変更ボタン614がタップされると、不図示の器械点変更画面に遷移する。
基準芯計測ボタン615がタップされると、
図7の基準芯選択画面62に遷移する。
既知点計測ボタン616がタップされると、
図8の既知点選択画面63に遷移する。
計測確認ボタン617がタップされると、不図示の計測確認画面に遷移する。
墨出し事前準備ボタン613がタップされると、不図示の墨出し事前準備確認画面に遷移して、電源オン直後の初期状態に戻る。
【0064】
戻るボタン612がタップされると、この器械点設定選択画面61を呼び出す前の画面に戻る。
【0065】
図7は、基準芯選択画面62を示す図である。
基準芯選択画面62には、マップ629が表示され、ガイダンスとして「X軸方向またはY軸方向の基準芯を1つ選択し、「計測に進む」を押してください。」が表示されている。
基準芯選択画面62には、クリアボタン621、基準芯テーブル622、器械点設定選択ボタン623、墨出し事前準備ボタン624、計測ボタン625、テキストボックス626が表示されている。
【0066】
基準芯テーブル622内を検索する場合、テキストボックス626に検索文字を入力すると、検索文字と一致した行のみ基準芯テーブル622に表示される。
クリアボタン621がタップされると、検索された行がクリアされる。
【0067】
器械点設定選択ボタン623がタップされると、
図6の器械点設定選択画面61に戻る。
墨出し事前準備ボタン624がタップされると、不図示の墨出し事前準備確認画面に遷移する。
計測ボタン625がタップされると、
図9の基準芯計測画面64に遷移する。
【0068】
図8は、既知点選択画面63を示す図である。
既知点選択画面63には、マップ639が表示され、ガイダンスとして「既知点を1つ選択し、「計測に進む」を押してください。」が表示されている。
既知点選択画面63には、クリアボタン631、既知点テーブル632、器械点設定選択ボタン633、墨出し事前準備ボタン634、計測ボタン635、テキストボックス636が表示されている。
【0069】
既知点テーブル632内を検索する場合、テキストボックス636に検索文字を入力すると、既知点テーブル632は、検索文字と一致した行のみに絞り込まれる。
クリアボタン631がタップされると、検索された行がクリアされる。
器械点設定選択ボタン633がタップされると、
図6の器械点設定選択画面61に戻る。
【0070】
墨出し事前準備ボタン634がタップされると、不図示の墨出し事前準備確認画面に遷移する。
計測ボタン635がタップされると、不図示の既知点計測画面に遷移する。
【0071】
図9は、基準芯計測画面64を示す図である。
基準芯計測画面64には、測量機とプリズムとの関係が示された649が表示され、ガイダンスとして「プリズムを基準芯に置いた後、測量機をプリズムの方向に向け「計測」を押してください。2点以上計測した後、「計測確認に進む」を押してください。」が表示されている。
【0072】
基準芯計測画面64には、計測テーブル641が表示され、測量機である追尾型三次元計測器4を操作する左旋回ボタン6421、右旋回ボタン6422、計測ボタン6423と、計測テーブル641を操作する選択行解除ボタン6424と、全削除ボタン6425が表示されている。更に基準芯計測画面64には、計測対象選択ボタン643と、墨出し事前準備ボタン644と、計測確認ボタン645が表示されている。
【0073】
左旋回ボタン6421がタップされると、追尾型三次元計測器4が左に旋回する。
右旋回ボタン6422がタップされると、追尾型三次元計測器4が右に旋回する。
計測ボタン6423がタップされると、追尾型三次元計測器4により、計測ターゲット23のプリズム位置の計測が行われる。
【0074】
計測テーブル641は、作業現場に印された基準芯の何れかに置かれたプリズムである計測ターゲット23の位置の計測結果を示している。
選択行解除ボタン6424がタップされると、計測テーブル641の選択中の行が削除される。
【0075】
全削除ボタン6425がタップされると、計測テーブル641の全ての行が削除される。
計測対象選択ボタン643がタップされると、
図7の基準芯選択画面62に遷移する。
墨出し事前準備ボタン644がタップされると、不図示の墨出し事前準備確認画面に遷移する。
計測確認ボタン645がタップされると、不図示の計測確認画面に遷移する。
【0076】
図10は、墨出し点確認画面65を示す図である。
図10は、墨出し点選択の後の確認画面である。
墨出し点確認画面65には、マップ659が表示され、ガイダンスとして「墨出しする点を確認し、問題無ければ「墨出し」を押してください。基準芯および既知点を手動で選択する場合は、墨点を選択し、「基準芯/既知点選択変更」を押してください。」が表示されている。
【0077】
墨出し点確認画面65には、測量機である追尾型三次元計測器4を操作する左旋回ボタン6521、右旋回ボタン6522、サーチボタン6523と、墨点テーブル651と、墨点テーブル651を操作する基準芯/既知点選択変更ボタン6531と、ホームポジション設定ボタン6532と、作業時間予測ボタン6533と表示されている。更に墨出し点確認画面65には、戻るボタン653と、墨出しボタン655と、経路優先チェックボックス6561と、指定順序優先チェックポックス6562と、「すぐに墨出しする」チェックボックス6563とが表示されている。
【0078】
左旋回ボタン6521がタップされると、追尾型三次元計測器4が左に旋回する。
右旋回ボタン6522がタップされると、追尾型三次元計測器4が右に旋回する。
サーチボタン6523がタップされると、追尾型三次元計測器4により、計測ターゲット23のプリズム位置の計測が行われる。
【0079】
墨点テーブル651は、墨点の座標と形状と墨出し状況が記載されたテーブルである。
墨点テーブル651で墨点が選択され、基準芯/既知点選択変更ボタン6531がタップされると、
図19の基準芯/既知点選択画面66に遷移する。これにより、所望の基準芯または/および既知点と墨点とを結びつけることができる。
【0080】
ホームポジション設定ボタン6532がタップされると、不図示のホームポジション選択画面に遷移する。
作業時間予測ボタン6533がタップされると、墨出しに掛かる予測作業時間が表示される。
【0081】
経路優先チェックボックス6561がチェックされると、墨点の印字順序よりも最短時間の経路を優先して墨出しが行われる。指定順序優先チェックポックス6562がチェックされると、最短時間の経路よりも墨点の印字順序を優先して墨出しが行われる。「すぐに墨出しする」チェックボックス6563がチェックされると、墨出しボタン655のタップと共に、すぐさま墨出しが行われる。
【0082】
戻るボタン653がタップされると、この墨出し点確認画面65に遷移する前の画面に戻る。
墨出しボタン655がタップされると、一連の墨出し作業が行われる。
【0083】
図11は、作業現場図面の座標を、測量機の座標に変換する一例の変換行列を算出する処理のフローチャートである。
コントローラ3のプロセッサ31は、墨出しロボット2が墨出しを実施する前に、墨点および各中継点に対し、計測した基準芯および既知点のうち2つ以上を選択して、作業現場図面の座標と測量機の座標とを相互に変換する変換行列を計算する。これにより、墨出し中の変換行列の計算処理が不要となる。
【0084】
最初、コントローラ3のプロセッサ31は、測量機による基準芯・既知点の計測処理を行う(ステップS10)。これにより、測量機座標系における基準芯・既知点の位置が確定できる。その後、プロセッサ31は、器械点の設定処理を行う(ステップS11)。
コントローラ3のプロセッサ31は、基準芯および既知点の2つの組み合わせについてステップS12からS14までの処理を繰り返す。
【0085】
そしてプロセッサ31は、変換部31lにより、2つの基準芯および既知点の計測値を用いて、作業現場図面の座標から測量機の座標に変換する変換行列を計算する(ステップS13)。
【0086】
そしてプロセッサ31は、基準芯および既知点の2つの組み合わせについて処理を繰り返したか否かを判定する(ステップS14)。
プロセッサ31は、移動対象の墨点と中継点について何れかが未処理ならば、ステップS12に戻る。プロセッサ31は、基準芯および既知点の2つの組み合わせについて処理を繰り返したならば、
図11の処理を終了する。
【0087】
なお、コントローラ3のプロセッサ31は、墨出しを開始した後、基準芯および既知点の2つの組み合わせについて変換行列を計算してから、その墨点または中継点に墨出しロボット2を移動させてもよく、限定されない。プロセッサ31は、計測した基準芯および既知点が多いと、変換行列の組み合わせが多くなり、処理時間がかかってしまうため、墨出しを開始する前に変換行列を計算しておくことが望ましい。
【0088】
移動先の墨点または中継点から基準芯または既知点までの距離は、距離計算部31nが計算する。距離計算部31nは、この結果を元に使用する変換行列を決定する。距離計算部31nは、墨点70,72~74だけでなく、禁止エリアを避けて通る中継点71も同様にして、最も距離が近い2つの基準芯および既知点を決定して、対応する変換行列を決定する。
【0089】
図12は、変換行列を用いた場合の墨出し処理のフローチャートである。
追尾型三次元計測器4は基準芯または既知点を計測し、プロセッサ31は、測量機である追尾型三次元計測器4の位置を確定させる。
図11に示すように、プロセッサ31は、CAD図面(作業現場図面)上のどの位置に追尾型三次元計測器4が設置されているかを算出し、基準芯および既知点の計測値に基づき、事前に測量機座標とCAD図面座標の変換行列を作成しておく。この時、基準芯または既知点を複数(例えは、3つ以上)計測しておく。この状態にて、プロセッサ31は、墨出しロボット2による墨出し処理を開始させる。
【0090】
墨出しロボットシステム1は、移動対象の墨点と中継点についてステップS20からS27までの処理を繰り返す。
コントローラ3のプロセッサ31は、次の移動対象の墨点・中継点に最も近い基準芯および既知点のうち2つを特定する(ステップS21)。ここで基準芯を2つ特定する場合、垂直に交差する組合せとする。基準芯と既知点を特定する場合、既知点は基準芯から所定距離以上離れていることが望ましい。
【0091】
次にプロセッサ31は、座標計算部31mにより、特定した2つの基準芯および既知点に応じた変換行列を特定する(ステップS22)。そしてプロセッサ31は、CAD図面(作業現場図面)上の墨点・中継点の位置を、追尾型三次元計測器4(測量機)の座標系における墨点・中継点の位置に変換する(ステップS23)。座標計算部31mが計算した追尾型三次元計測器4(測量機)の座標系における墨点・中継点の位置は、墨出しロボット2に送信される。
【0092】
そして墨出しロボット制御部210は、走行駆動部211を制御して、自身を墨点または中継点まで移動させる(ステップS24)。ここで墨点または中継点は、測量機の座標系なので、自身の位置と容易に照合可能である。
【0093】
そして、墨出しロボット制御部210は、墨出しロボット2の移動先が墨点であるか否かを判定する(ステップS25)。墨出しロボット制御部210は、墨出しロボット2の移動先が墨点ならば、ステップS26に進み、墨出しを実行したのちにステップS27に進む。墨出しロボット2の移動先が中継点ならば、ステップS27に進む。
【0094】
ステップS27にて、墨出しロボット制御部210は、移動対象の墨点と中継点について移動処理を繰り返したか否かを判定する。
墨出しロボット制御部210は、何れかの移動対象の墨点と中継点について未移動ならば、ステップS20に戻る。
図13でいうと、墨出しロボット2は、墨点70→中継点71→墨点72→墨点73→墨点74について移動する。墨出しロボット制御部210は、全ての移動対象の墨点と中継点について移動を繰り返したならば、
図12の処理を終了する。
【0095】
図13は、CAD図面において、墨出しロボット2が作業現場にて移動する墨点・中継点を示す図である。
建築現場または工事現場などの作業現場には、例えば壁または柱などの構造物5が存在する場合がある。構造物5の中には、壁や柱などの恒久的物体以外に、比較的長期間存在する一時的構造物もあり得る。構造物5は、墨出しロボット2が進入できない禁止エリアである。基準芯A~Dは、縦方向に引かれた基準芯である。基準芯11~13は、横方向に引かれた基準芯である。
【0096】
本実施例では、墨出しロボット2が禁止エリアを回避する経路をとるため、墨点70と墨点72との間に中継点71を設定する。墨出しロボット2は、直前の作業位置である墨点70から中継点71へ移動する。墨出しロボット2は、中継点71に到達すると、墨点72に向けて移動し、以降、墨点73,74に順次移動する。
【0097】
図14は、CAD図面における墨点76と最寄りの基準芯を示すマップである。
図14のマップには、縦方向の基準芯A,Bと、横方向の基準芯11,12が引かれており、墨点76が示されている。
距離X
Aは、墨点76から基準芯Aまでの距離である。距離X
Bは、墨点76から基準芯Bまでの距離であり、距離X
Aよりも距離X
Bの方が小さい。
距離Y
1は、墨点76から基準芯11までの距離である。距離Y
2は、墨点76から基準芯12までの距離であり、距離Y
2よりも距離Y
1の方が小さい。
これらを総合して、墨点76を墨出しするにあたり、基準芯11と基準芯Bとで作成した変換行列が採用される。
【0098】
図15は、CAD図面における墨点77と最寄りの基準芯または既知点を示すマップである。
図15のマップには、縦方向の基準芯A,Bと、横方向の基準芯11,12が引かれており、既知点Kと墨点77が示されている。
【0099】
距離XAは、墨点77から基準芯Aまでの距離である。距離XBは、墨点77から基準芯Bまでの距離であり、距離XBよりも距離XAの方が小さい。
距離Y1は、墨点77から基準芯11までの距離である。距離Y2は、墨点77から基準芯12までの距離であり、距離Y2よりも距離Y1の方が小さい。距離XYKは、墨点77から既知点Kまでの距離であり、距離XAと距離Y1の何れよりも大きい。
【0100】
これらを総合して、墨点77を墨出しするにあたり、基準芯11と基準芯Aで作成した変換行列が採用される。
【0101】
図16は、CAD図面における墨点78と最寄りの基準芯または既知点を示すマップである。
図16のマップには、縦方向の基準芯A,Bと、横方向の基準芯11,12が引かれており、既知点Lと墨点78が示されている。
【0102】
距離XAは、墨点78から基準芯Aまでの距離である。距離XBは、墨点78から基準芯Bまでの距離であり、距離XBよりも距離XAの方が小さい。
距離Y1は、墨点78から基準芯11までの距離である。距離Y2は、墨点78から基準芯12までの距離であり、距離Y2よりも距離Y1の方が小さい。距離XYLは、墨点78から既知点Lまでの距離であり、距離Y2よりも小さい。
これらを総合して、墨点78を墨出しするにあたり、基準芯Aと既知点Lで作成した変換行列が採用される。
【0103】
図17は、変換行列を用いた場合の基準芯・既知点の位置の確定処理のフローチャートである。
図17の確定処理の前処理として、予め基準芯を計測しておく。基準芯の計測は、基準芯上の複数点の位置を計測することで行われる。
その後、プロセッサ31は、墨出し点/中継点から最も近い縦横の基準芯を特定する(ステップS30)。そして、プロセッサ31は、特定した縦横2本の基準芯を用いて、予め作成された変換行列を特定する(ステップS31)。
【0104】
プロセッサ31は、特定された変換行列に基づき、墨出し点/中継点の測量機座標系の位置を特定し(ステップS32)、
図17の処理を終了する。これにより、プロセッサ31は、縦横の基準芯に応じた器械点を特定可能である。
【0105】
図18は、CAD図面における器械点の決定動作を示すマップである。
計測済みの基準芯Bと基準芯12を元に算出した候補は、2つの器械点81,82である。2本の基準芯に基づき器械点の位置を特定するため、器械点の候補が2つとなる。これら2つの候補の器械点81,82のうち、器械点設定で算出した器械点83に近いものが採用される。ここでは器械点82の方が器械点83に近いため、これを採用している。なお、
図18の決定動作に限定されず、元の変換行列の値に近い変換行列を採用する方式でもよく、また操作者が手動で器械点を選択する方式でもよい。
更に3本の基準芯に基づき器械点の位置を特定する場合には、器械点の位置は一意に特定できるため、このような方式を採用してもよい。
【0106】
図19は、基準芯/既知点選択画面66を示す図である。
基準芯/既知点選択画面66には、マップ669が表示され、ガイダンスとして「基準芯、既知点を2つ選択してください。自動選択にチェックを入れると、ロボットが自動的に使用する基準芯、既知点を選択します。」が表示されている。
【0107】
基準芯/既知点選択画面66には、自動選択チェックボックス661と、基準芯テーブル662と、既知点テーブル663と、戻るボタン664と、完了ボタン665とが表示されている。
【0108】
自動選択チェックボックス661がチェックされると、各墨点に対応した基準芯または/および既知点が自動選択される。
基準芯テーブル662は、計測済みの基準芯の情報が示されたテーブルである。
既知点テーブル663は、計測済みの既知点の情報が示されたテーブルである。
戻るボタン664がタップされると、この基準芯/既知点選択画面66を呼び出す前の画面に戻る。完了ボタン665がタップされると、
図10の墨出し点確認画面に遷移する。
【0109】
図20は、計測対象選択画面67を示す図である。
計測対象選択画面67には、マップ679が表示され、ガイダンスとして「計測する対象を選択してください。」が表示されている。
【0110】
計測対象選択画面67には、基準芯チェックボックス671と、既知点チェックボックス672と、墨点チェックポックス673と、地点チェックボックス674と、クリアボタン675と、選択テーブル676と、計測ボタン677とが表示されている。
【0111】
選択テーブル676には、選択した計測対象の情報が表示され、ここでは墨点の情報が表示されている。そして選択テーブル676の第2行目が強調表示され、第2行目の情報が選択されていることを示している。そして、ユーザが計測ボタン677をタップすると、
図21の確認計測画面68に遷移する。
【0112】
基準芯チェックボックス671をタップすると、選択テーブル676に基準芯の情報が表示される。既知点チェックボックス672をタップすると、選択テーブル676に既知点の情報が表示される。墨点チェックポックス673をタップすると、選択テーブル676に墨点の情報が表示される。地点チェックボックス674をタップすると、選択テーブル676が消去される。
【0113】
図21は、確認計測画面68を示す図である。
確認計測画面68には、マップ689が表示され、ガイダンスとして「プリズムを計測したい地点に置いた後、測量機をプリズムの方に向け、計測してください。」が表示されている。
【0114】
確認計測画面68には、詳細ボタン6811と、測量機を操作する右旋回ボタン6812、左旋回ボタン6813、サーチボタン6814と,固定ボタン6821、切替ボタン6822が表示される。更に確認計測画面68には、基準芯/既知点選択変更ボタン6815と、測量機ベクトル683と、「計測値と比較」チェックボックス684と、戻るボタン685と、完了ボタン686とが表示される。
【0115】
右旋回ボタン6812がタップされると、追尾型三次元計測器4が右に旋回する。
左旋回ボタン6813がタップされると、追尾型三次元計測器4が左に旋回する。
サーチボタン6814がタップされると、追尾型三次元計測器4により、計測ターゲット23のプリズム位置が探索される。
【0116】
詳細ボタン6811がタップされると、
図20の計測対象画面で選択した墨点等の詳細情報が表示される。固定ボタン6821がタップされると、測量機位置6816を上方向に固定したままとする。切替ボタン6822がタップされると、測量機ベクトル683の表示方法を切り替える。
【0117】
測量機ベクトル683は、
図20の計測対象選択画面67の選択テーブル676で選択した基準芯等の方向を示すものである。
「計測値と比較」チェックボックス684がチェックされると、例えば計測済の基準芯の値と計測ターゲット23のプリズム位置とを比較する。
基準芯/既知点選択変更ボタン6815がタップされると、
図22の基準芯/既知点選択画面66に遷移する。戻るボタン685がタップされると、
図20の計測対象選択画面67に戻る。完了ボタン686がタップされると、確認計測を完了する。
【0118】
図22は、基準芯/既知点選択画面66を示す図である。
基準芯/既知点選択画面66には、マップ669が表示されている。このマップ669には、選択された基準芯が強調表示されている。それ以外は、
図19の基準芯/既知点選択画面66と同様である。
【0119】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0120】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0121】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)~(d)のようなものがある。
【0122】
(a)本発明は墨出しロボットに限定されず、測量機でロボットの位置を計測する任意のシステムに適用してもよい。
(b)既知点とは、追尾型三次元計測器4を設置したのちに計測ターゲット23で位置を計測した任意の点でよく、限定されない。
(c)基準芯は、ロボットによって印された基準芯であってもよく、作業者が手作業で印した基準芯であってもよく、限定されない。
(d)各機能部は、墨出しロボット制御部210がプログラムを実行することで具現化されてもよく、コントローラ3のプロセッサ31がプログラムを実行することで具現化されてもよく、限定されない。
【符号の説明】
【0123】
1 墨出しロボットシステム (ロポットシステム)
2 墨出しロボット
20 フレーム
210 墨出しロボット制御部 (制御部)
211 走行駆動部
212 プリンタ移動部
213 計測ターゲット駆動部
21F,21R 車輪
22 プリンタ
23 計測ターゲット
24 通信部
25 操作ボタン
26 前方センサ
27F バンパセンサ
27R バンパセンサ
28 下方センサ
201 バンパ
3 コントローラ
31 プロセッサ
32 RAM
33 大容量記憶部
34 タッチパネルディスプレイ
35 通信部
31a 操作受付部
31b 読込部
31c 器械点設定部
31d 墨出し設定部
31e 測量機操作部
31f ロボット操作部
31g 走行範囲設定部
31h 順路設定部
31i 通信制御部
31j 画面制御部
31k 位置確定部
31l 変換部
31m 座標計算部
31n 距離計算部
332 墨出しデータ
331 ロボット制御プログラム
333 走行経路データ
4 追尾型三次元計測器 (測量機)
5 構造物
51 CADデータ記憶部
52 墨出し情報作成部
53 現場管理サーバ
70,72~74 墨点
71 中継点
A~D 基準芯
11~13 基準芯