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  • 特開-複合加工機 図1
  • 特開-複合加工機 図2
  • 特開-複合加工機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011835
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】複合加工機
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/12 20060101AFI20240118BHJP
   B23B 5/36 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B23F5/12
B23B5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114108
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045BA04
3C045DA03
(57)【要約】
【課題】長尺なワークの外周面に沿って形成された突出部を損傷することなく、突出部に隣接する位置に歯車を製造することが可能な複合加工機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の複合加工機100の構成は、突出部310を外周面に有する長尺なワーク300の外周面において、ワーク300の長手方向で突出部310に隣接する位置に歯車を成形する複合加工機100であって、ワーク300を回転可能に支持するワーク主軸110と、工具を支持する工具主軸130と、工具主軸130の軸に対してラジアル方向にワーク300を切削する姿勢で取り付けられた工具である切削チップ200と、を備え、ワーク主軸110と工具主軸130とを工具主軸130のラジアル方向に相対的に繰り返し移動させることにより突出部310に隣接する位置に歯車を成形する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出部を外周面に有する長尺なワークの前記外周面において、該ワークの長手方向で前記突出部に隣接する位置に歯車を成形する複合加工機であって、
前記ワークを回転可能に支持するワーク主軸と、
工具を支持する工具主軸と、
前記工具主軸の軸に対してラジアル方向に前記ワークを切削する姿勢で取り付けられた前記工具である切削チップと、
を備え、
前記ワーク主軸と前記工具主軸とを前記工具主軸のラジアル方向に相対的に繰り返し移動させることにより前記突出部に隣接する位置に前記歯車を成形することを特徴とする複合加工機。
【請求項2】
前記ワーク主軸および前記工具主軸の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記ワークのうち前記歯車を成形する位置に前記切削チップが近づく方向に前記ワーク主軸と前記工具主軸とを相対移動させて前記ワークを切削する送り工程と、
前記切削チップが前記ワークから離れる方向に前記工具主軸を移動させて前記切削チップと前記ワークとを離間させる逃がし工程と、
前記ワーク主軸と前記工具主軸とを前記送り工程と反対方向に相対移動させて前記切削チップを前記送り工程の前の位置に戻す戻し工程と、
次の前記送り工程の切込量に合わせて前記切削チップが前記ワークに近づく方向に前記工具主軸を移動させる切込み工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の複合加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出部を有する長尺なワークの突出部に隣接する位置に歯車を成形する複合加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、NC旋盤のような旋削加工が可能な装置と、スカイビング加工が可能な装置とを一体化した複合加工機が実用化されている。複合加工機を用いて行う加工の1つとして、ワークの外周面に歯車を創成する場合がある。
【0003】
厳密には複合加工機ではないが、例えば特許文献1には、「工作機械の回転主軸に着脱可能に設けられる工具本体と、前記工具本体に設けられ、旋削位置である先端が前記回転主軸の軸線と同軸上に設けられる旋削用切れ刃と、を備える、旋削用工具」が開示されている。特許文献1では、旋削用工具を用いて筒状の工作物Wの外周面を切削加工し、その後、切削加工した外周面に歯車を創成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-23001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークが長尺であって、加工位置がワークの端部から離れている場合(ワークの中途位置に加工する場合)には、シェーパ加工を用いるとシャンクが長くなりすぎて工作精度が低下する。この場合はスカイビング加工を採用することが考えられるが、さらに加工位置の近傍に周状等の突出部を有する場合がある。スカイビング加工では、加工条件に基づいてスカイビングカッタが切削後に抜けるために必要な距離が算出されるが、突出部に隣接する歯車の位置がその算出された距離よりも近い場合、スカイビングカッタが抜ける際に突出部が削られてしまう。このため特許文献1の技術は、長尺なワークの突出部に隣接する位置に歯車を製造する際には適用することができず、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、長尺なワークの外周面に沿って形成された突出部を損傷することなく、突出部に隣接する位置に歯車を製造することが可能な複合加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の複合加工機の代表的な構成は、突出部を外周面に有する長尺なワークの外周面において、ワークの長手方向で突出部に隣接する位置に歯車を成形する複合加工機であって、ワークを回転可能に支持するワーク主軸と、工具を支持する工具主軸と、工具主軸の軸に対してラジアル方向にワークを切削する姿勢で取り付けられた工具である切削チップと、を備え、ワーク主軸と工具主軸とを工具主軸のラジアル方向に相対的に繰り返し移動させることにより突出部に隣接する位置に歯車を成形する。
【0008】
上記複合加工機は、ワーク主軸および工具主軸の動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、ワークのうち歯車を成形する位置に切削チップが近づく方向にワーク主軸と工具主軸とを相対移動させてワークを切削する送り工程と、切削チップがワークから離れる方向に工具主軸を移動させて切削チップとワークとを離間させる逃がし工程と、ワーク主軸と工具主軸とを送り工程と反対方向に相対移動させて切削チップを送り工程の前の位置に戻す戻し工程と、次の送り工程の切込量に合わせて切削チップがワークに近づく方向に工具主軸を移動させる切込み工程とを繰り返すとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長尺なワークの外周面に沿って形成された突出部を損傷することなく、突出部に隣接する位置に歯車を製造することが可能な複合加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態にかかる複合加工機の構成を概略的に説明する図である。
図2図1に示す切削チップの概略的な三面図である。
図3】本実施形態の複合加工機による歯車の成形について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる複合加工機100の構成を概略的に説明する図である。図1に示すように本実施形態の複合加工機100は、制御部104、ワーク主軸110、テールストック120、工具主軸130および切削チップ200を含んで構成される。制御部104は、ワーク主軸110および工具主軸130を含め、複合加工機100の全体の動作を制御する。
【0013】
ワーク主軸110は、ワーク300の一端を回転可能に支持する。ワーク主軸110は、固定ベッド102上に配置されていて、ワーク300の軸心方向であるワーク軸Cを中心として回転可能であり、ワーク軸Cと平行な方向であるZ軸方向に移動可能である。テールストック120は、固定ベッド102上に配置されていて、ワーク300の他端を支持する。テールストック120は、ワーク主軸110と連動してZ軸方向に移動可能である。
【0014】
工具主軸130は、工具(本実施形態では切削チップ200を例示)を支持する。工具主軸130は、X軸方向(ワーク軸Cに対して水平方向に離接する方向:図中前後方向)およびY軸方向(Z軸に対して鉛直方向に離接する方向:図中上下方向)に移動可能である。また工具主軸130は、A方向(ワーク軸Cと平行な鉛直平面内での回転)に旋回可能である。
【0015】
図2は、図1に示す切削チップ200の概略的な三面図である。図2(a)は、切削チップ200の平面図である。図2(b)は、切削チップ200の側面図である。図2(c)は、切削チップ200の下面図である。切削チップ200は、工具主軸130に支持される工具であり、図2(a)-(c)に示すホルダ250を介して工具主軸130に支持される。
【0016】
図2(a)-(c)に示すように切削チップ200は、ホルダ250に固定される本体部210、および本体部210の下面に形成された切刃220を有する。切削チップ200は、工具主軸130の軸であるB軸方向(図1参照)に対してラジアル方向にワーク300を切削する姿勢で取り付けられている。また図2(c)に示すようにチップ取付ガイド250aはV字形状となっている。これにより、切削チップ200の交換再現性を高めることができる。
【0017】
本実施形態では、工具主軸130(B軸)とワーク軸Cとを直交方向にして切削を行う。そして加工方向(切削方向)は、工具主軸130のラジアル方向(ワーク軸Cの軸方向)である。
【0018】
図3は、本実施形態の複合加工機100による歯車の成形について説明する図である。本実施形態の複合加工機100は、ワーク主軸110と工具主軸130とを工具主軸130のラジアル方向に相対的に繰り返し移動させることにより、外周面302に周状の突出部310を有する長尺なワーク300のうち、突出部310に隣接する位置に歯車を成形する。以下、ワーク300のうち、歯車を成形する位置(部位)を凸部320と称する。
【0019】
なお本実施形態では、長尺なワーク300の外周面302に周状の突出部310が形成されている構成を例示したが、これに限定するものではない。突出部310は、ワーク300の外周面302において連続して形成されていてもよいし、ワーク300の外周面302の一部に形成されていてもよい。
【0020】
凸部320に歯車を成形する際には、まず図3(a)に示すように凸部320に対して突出部310とは反対側に切削チップ200が配置された状態から、切削チップ200がワーク300の凸部320に近づく方向(図中のD1方向)にワーク主軸110を移動させ、凸部320の上面322を切削チップ200によって切削する(送り工程)。
【0021】
凸部320の上面322が切削されたら、図3(b)に示すように切刃220が突出部310に接触する前にワーク主軸110の移動を停止する。そして切削チップ200がワーク300から離れる方向(図中のD2方向)に工具主軸130を移動させ、切削チップ200とワーク300とを離間させる(逃がし工程)。
【0022】
続いてワーク主軸110を送り工程と反対の方向(図中のD3方向)に移動させ、切削チップ200が凸部320に対して突出部310とは反対側に位置するようにワーク300を配置する(戻し工程)。その後、次の送り工程のストロークの切込量に合わせて切削チップ200がワーク300に近づく方向(図中のD4方向)に工具主軸130を移動させる(切込み工程)。
【0023】
上述した送り工程、逃がし工程、戻し工程および切込み工程を繰り返し、凸部320の上面322に成形された切込み(歯)が所定の深さに達したら、ワーク主軸110を回転させ、ワーク300の回転割り出しを行う。そして送り工程から切込み工程までを再度繰り返すことにより、次の歯溝の切削を行う。これを繰り返して、凸部320の全周に歯車が成形される。
【0024】
上記説明したように本実施形態の複合加工機100によれば、工具主軸130のラジアル方向に切削することによってワーク300の外周面に歯車を成形する。これにより、突出部310を損傷することなく、突出部310に隣接する位置に歯車を成形することができる。したがって、高品質で信頼性の高い製品を製造することが可能となる。
【0025】
また図3では、中空のワーク300を例示している。中空のワーク300では、転造加工によって歯車を製造しようとするとワーク300が変形してしまうおそれがある。これに対し本実施形態の複合加工機100であれば、ワーク300の軸方向の切削であるから、中空ワークをつぶす方向の荷重がかからない。したがって本実施形態の複合加工機100は、中空のワーク300の変形を防ぎつつ歯車の成形を行うことが可能である。
【0026】
なお、図3に示す中空のワーク300は例示にすぎず、これに限定するものではない。本実施形態の複合加工機100は、中実のワークに対して歯車を製造する場合にも好適に用いることが可能である。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、突出部を有する長尺なワークの突出部に隣接する位置に歯車を成形する複合加工機として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…複合加工機、102…固定ベッド、104…制御部、110…ワーク主軸、120…テールストック、130…工具主軸、200…切削チップ、210…本体部、220…切刃、250…ホルダ、250a…チップ取付ガイド、300…ワーク、302…外周面、310…突出部、320…凸部、322…上面
図1
図2
図3